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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】監視システム
(51)【国際特許分類】
   B61L 23/00 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
B61L23/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021503408
(86)(22)【出願日】2019-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2019048319
(87)【国際公開番号】W WO2020179168
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2021-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2019040059
(32)【優先日】2019-03-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】藤井 幸
(72)【発明者】
【氏名】住吉 正紀
【審査官】大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173694(WO,A1)
【文献】特開2018-152737(JP,A)
【文献】特開2012-129908(JP,A)
【文献】特開2012-173843(JP,A)
【文献】特開2006-273123(JP,A)
【文献】特開2011-253241(JP,A)
【文献】特表2008-502538(JP,A)
【文献】特開2008-269048(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0039633(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の経路を移動する複数の移動体で撮影した画像データを受信して解析するシステム制御装置を備えた監視システムであって、
前記移動体には、画像を撮影する先頭のカメラ及び最後尾のカメラと、線路の異常を検出するセンサと、前記撮影された画像データ及び前記センサの計測データを位置情報と共に前記システム制御装置に送信する制御部が設けられ、
前記システム制御装置が、前記移動体からの画像データ及び前記計測データを前記位置情報に対応付けて記憶すると共に、前記計測データに基づいて異常箇所を検出すると、前記異常箇所が含まれる計測データに対応した位置情報を付して、前記移動体の後続の移動体に当該位置の撮影を前記先頭のカメラ及び前記最後尾のカメラで行う指示を送信し、
前記後続の移動体の制御部が、前記システム制御装置からの指示を受信すると、前記後続の移動体に設けられた前記先頭のカメラ及び前記最後尾のカメラに前記指示された位置の撮影を行わせることを特徴とする監視システム。
【請求項2】
システム制御装置が、異常箇所が検出された第1の経路に隣接する第2の経路を走行する移動体に対して、前記異常箇所が撮影可能となるよう先頭のカメラ及び最後尾のカメラの向きを指定して撮影を行う指示を送信し、
前記第2の経路を走行する移動体の制御部が、前記先頭のカメラ及び最後尾のカメラに、前記指定された向きで撮影を行わせることを特徴とする請求項記載の監視システム。
【請求項3】
システム制御装置が、第2の経路を走行する移動体に対して、異常箇所を拡大するようズームの値を指定して撮影を行う指示を送信し、
前記第2の経路を走行する移動体の制御部が、前記移動体に設けられた先頭のカメラ及び最後尾のカメラに、前記指定されたズームの値で撮影を行わせることを特徴とする請求項記載の監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車等の移動体に搭載したカメラを用いて設備の監視を行う監視システムに係り、データの欠落を防ぎ、不具合が発見された場合には、より詳細なデータを取得できる監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、主に鉄道において、メンテナンスのために、検査専用の検測車両を用いずに、輸送業務に使用される車両(営業車)に設置されたカメラや検測機器を用いて設備の監視を行う監視システムがある。
営業車に搭載したカメラや検測機器を用いた監視は、検測車両を用いた検査に比べて簡便であるため、高頻度で行うことができるものである。
【0003】
[関連技術]
尚、列車等の設備の監視を行うシステムも従来技術としては、特許第5165649号公報「鉄道架線設備の状態監視システム」(特許文献1)、特開2011-30577号公報「列車を活用した地上整備の劣化箇所検知システム」(特許文献2)がある。
【0004】
特許文献1には、先行列車が、カメラで撮影された画像を画像処理したデータと、正常時の鉄道架線設備のデータとを比較して異常の有無を検知し、異常検知箇所の詳細な調査を行うと判定した場合には、後行列車へ異常個所の詳細な調査指令を送信する状態監視システムが記載されている。
【0005】
特許文献2には、後行列車は、先行列車から受信した劣化箇所情報を参照して、先行列車よりも精度を高めて劣化箇所のデータを取得し、中央指令所等に配信する劣化箇所検知システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5165649号公報
【文献】特開2011-30577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の監視システムでは、営業車で検査(監視、撮影)を実施するため、種々の要因で検査データが取得できなかったり、不具合が発見されても、当該営業車が例えば後戻りして再度その箇所の検査を実施することはできず、データが欠落したり、詳細なデータが取得できないことがあり、不便であるという問題点があった。
【0008】
尚、特許文献1及び特許文献2には、列車からの画像を受信して解析するシステム制御装置が、後続車に対して欠落箇所の撮影を指示することや、隣接する線路を走行する列車に異常箇所の撮影を指示することは記載されていない。
【0009】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、営業車を用いた監視において、データの欠落を防ぎ、不具合が発見された場合には、より詳細なデータを取得できる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
また、本発明は、所定の経路を移動する複数の移動体で撮影した画像データを受信して解析するシステム制御装置を備えた監視システムであって、移動体には、画像を撮影する先頭のカメラ及び最後尾のカメラと、線路の異常を検出するセンサと、撮影された画像データ及びセンサの計測データを位置情報と共にシステム制御装置に送信する制御部が設けられ、システム制御装置が、移動体からの画像データ及び計測データを位置情報に対応付けて記憶すると共に、計測データに基づいて異常箇所を検出すると、異常箇所が含まれる計測データに対応した位置情報を付して、移動体の後続の移動体に当該位置の撮影を先頭のカメラ及び最後尾のカメラで行う指示を送信し、後続の移動体の制御部が、システム制御装置からの指示を受信すると、当該後続の移動体に設けられた先頭のカメラ及び最後尾のカメラに指示された位置の撮影を行わせることを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、システム制御装置が、異常箇所が検出された第1の経路に隣接する第2の経路を走行する移動体に対して、異常箇所が撮影可能となるよう先頭のカメラ及び最後尾のカメラの向きを指定して撮影を行う指示を送信し、第2の経路を走行する移動体の制御部が、先頭のカメラ及び最後尾のカメラに、指定された向きで撮影を行わせることを特徴としている。
【0015】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、システム制御装置が、第2の経路を走行する移動体に対して、異常箇所を拡大するようズームの値を指定して撮影を行う指示を送信し、第2の経路を走行する移動体の制御部が、移動体に設けられた先頭のカメラ及び最後尾のカメラに、指定されたズームの値で撮影を行わせることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
また、本発明によれば、所定の経路を移動する複数の移動体で撮影した画像データを受信して解析するシステム制御装置を備えた監視システムであって、移動体には、画像を撮影する先頭のカメラ及び最後尾のカメラと、線路の異常を検出するセンサと、撮影された画像データ及びセンサの計測データを位置情報と共にシステム制御装置に送信する制御部が設けられ、システム制御装置が、移動体からの画像データ及び計測データを位置情報に対応付けて記憶すると共に、計測データに基づいて異常箇所を検出すると、異常箇所が含まれる計測データに対応した位置情報を付して、移動体の後続の移動体に当該位置の撮影を先頭のカメラ及び最後尾のカメラで行う指示を送信し、後続の移動体の制御部が、システム制御装置からの指示を受信すると、当該後続の移動体に設けられた先頭のカメラ及び最後尾のカメラに指示された位置の撮影を行わせることを特徴としているので、異常箇所が検出された場合に、後続の移動体で画像を取得して情報を収集し、解析することができる効果がある。
【0019】
また、本発明によれば、システム制御装置が、異常箇所が検出された第1の経路に隣接する第2の経路を走行する移動体に対して、異常箇所が撮影可能となるよう先頭のカメラ及び最後尾のカメラの向きを指定して撮影を行う指示を送信し、第2の経路を走行する移動体の制御部が、先頭のカメラ及び最後尾のカメラに、指定された向きで撮影を行わせる上記監視システムとしているので、異常箇所を、異なる角度から撮影してより詳細な情報を取得することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本システムの概略構成図である。
図2】本システムの第1の実施の形態に係る動作の概略を示す模式説明図である。
図3】画像欠落チェックの処理を示すフローチャートである。
図4】第3の監視システムにおける異常箇所の撮影の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る監視システム(本監視システム)は、移動体(車両)が走行中に沿線設備の画像を撮影して、位置情報と共に制御装置(サーバ)に送信し、サーバが画像に異常(欠落や画質の不良を含む)を検出すると、後続の移動体に、異常が検出された位置の画像を撮影するよう指示したり、不鮮明な場合には撮影パラメータを調整して撮影するよう指示し、後続の移動体が指示に従って撮影するものであり、鮮明な画像を取りこぼしなく取得して、設備の状態を確実に監視することができるものである。
【0022】
また、本監視システムは、移動体(車両)が走行中に沿線設備の画像を撮影して、位置情報と共に制御装置(サーバ)に送信し、サーバが画像に基づいて沿線設備の異常を検出すると、後続の移動体又は隣接経路を走行する移動体に対して、当該異常が検出された位置に合わせて、カメラの向きを指定して撮影するよう指示し、後続の移動体又は隣接経路の移動体が当該指示に従って撮影するものであり、異常検出箇所について、多様な角度の画像を取得して、詳細な情報を得ることができるものである。
【0023】
[本システムの概略構成:図1
本システムの概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本システムの概略構成図である。
本システムは、鉄道の沿線設備(線路、架線等)の監視を行うものであり、検査用の検測車ではなく、乗客の輸送業務に用いられる営業車に搭載した検査機器を用いるものである。営業車による監視は、検測車に比べて簡便で、頻度を高くすることが可能であり、本システムでは、このことを利用して監視(検査)をより良好に行うものである。
ここでは、検査として、監視カメラで撮影した画像に基づいて沿線設備を監視する場合について説明する。また、鉄道に限らず、モノレールや、定期的に同一経路を運行する路線バスやタクシー等に適用することも可能である。
【0024】
図1に示すように、本システムは、検査用列車10に搭載された各種機材と、システム制御装置20とを備え、検査用列車10とシステム制御装置20とは、地上アンテナ21及びネットワーク22を介して通信を行う。
検査用列車10は営業車であり、検査用の機器を搭載している。具体的には、検査用列車10には、GPS(Global Positioning System)アンテナ11と、先頭と最後尾に設置された監視カメラ12と、車両の下面に搭載された加速度センサ13、車上子14、レーザセンサ15と、制御部16と、車上アンテナ17が搭載されている。
また、営業車10が走行する線路近傍には、地上子18が設けられている。
【0025】
GPSアンテナ11は、GPS衛星からの信号に基づいて、列車の位置情報を取得する。図1の例では検査用列車10の先頭車両に設けられているが、それに加えて最後尾の車両に搭載してもよい。
【0026】
監視カメラ12は、設備(例えば線路)の画像を撮影するものであり、動画像でも静止画像でもよい。ここでは静止画像を例として説明する。
加速度センサ13は、走行方向に直交する横方向の加速度を検出して、横揺れを検知する。横方向の揺れは、線路の変形等の異常によって生じる場合がある。
車上アンテナ17は、地上アンテナ21と無線通信を行う。
【0027】
車上子14は、地上に設けられた地上子18との間で通信を行い、地上子18の上を通過するとパルスを生成して、制御部16に送信する。制御部16は、パルスの数をカウントして車上子14の位置(検査用列車10の位置)を検知する。地上子18の位置は既知である。
車上子14及び地上子18を用いた位置情報の取得は、GPS信号が得られないトンネル内や地下空間等で特に有効である。
レーザセンサ15は、線路面の傷や線路の高さ等を測定し、結果を制御部16に出力する。レーザセンサ15のデータは、後述するように、システム制御部20において、例えば予め設定された正常範囲を逸脱した場合に、異常箇所として判定される。
【0028】
制御部16は、上述した各部に接続されて各部の制御を行うと共に、車上アンテナ17、地上アンテナ21を介してシステム制御局20との間で通信を行う。
具体的には、制御部16は、監視カメラ12で撮影した画像データ、加速度センサ13からの加速度データ、レーザセンサ15の計測データに、GPSアンテナ11で取得した位置情報及び時刻情報を対応付けて、システム制御局20に送信する。位置情報としては、車上子14を用いて算出した位置情報もある。
また、制御部16は、システム制御装置20から送信される指示を受信して、それに従って各部を制御し、撮影や送信を行わせる。
【0029】
システム制御装置20は、画像データを記憶するデータベースを備え、例えばメンテナンス用の端末(図示せず)からの要求に応じて画像データを閲覧させるサーバ装置である。システム制御装置20は、基本的に、処理を行う制御部と、処理プログラムやデータを記憶する記憶部と、ネットワーク等に接続するインタフェース部とを備えている。
後述する実施の形態で説明する各種の処理は、制御部が、記憶部に記憶された処理プログラムを起動することによって実行されるものである。
【0030】
本システムのシステム制御装置20は、走行中の検査用列車10からの画像データ、加速度データ、レーザセンサ15のデータ、位置情報等を受信して、対応付けて記憶し、解析を行う。
そして、解析によって不具合(画像の欠落等を含む)が検出されると、後続列車や隣接する経路を走行する列車に対して、画像撮影の指示を送信する。この制御が本システムの特徴となっており、第1~第3の実施の形態として説明する。
【0031】
[第1の実施の形態]
まず、本システムの第1の実施の形態について図2を用いて説明する。図2は、本システムの第1の実施の形態に係る動作の概略を示す模式説明図である。
図2(a)は、本システムが適用される経路の概略を示しており、駅1と駅2の間に、撮影区間として区間A,B,C,D,Eの5つの区間が設けられている。検査用列車10の制御部16には、各区間における撮影箇所の位置情報が予め設定されており、GPSアンテナ11からの位置情報が、設定された撮影箇所の位置情報と一致すると、制御部16が指示を出力して監視カメラ12に撮影を行わせるようになっている。
【0032】
そして、検査用列車10が駅1から駅2に向かって走行した場合、図2(b)に示すように、区間Aの画像データ101、区間Bの画像データ102、区間Cの画像データ103、区間Dの画像データ104、区間Eの画像データ105が撮影され、制御部16から位置情報と共に車上アンテナ17を介してシステム制御装置20に送信される。
【0033】
システム制御装置20では、検査用列車10から送信された画像データを記憶して解析し、画像データの欠落があるかどうかを検出する。そして、欠落を検出すると、当該区間(ここでは区間C)の撮影を行うように、後続の検査用列車10(後続車)に指示を送信する。つまり、システム制御装置20は、画像データの位置情報が予め設定された位置情報の分存在するかを確認し、画像データの欠落を検出する。なお、システム制御装置20は画像データの撮影時間情報に基づいて画像データの欠落を検出してもよい。
そして、図2(c)に示すように、後続車では区間Cで撮影が行われ、画像データ106が取得されて、システム制御装置20に送信される。
これにより、本システムでは、取りこぼしなく検査用の映像データが取得できるものである。
【0034】
尚、検査用列車10は、図1に示した構成を備えた列車であり、営業車の一部(又は全部)が検査用列車10である。通常、同一路線区を走行する検査用列車10は複数本あるが、全ての検査用列車10が常時検査(撮影)を行うのではなく、例えば日ごとや時間ごとに当番に指定された特定の列車が検査を行うようになっている。
そのため、検査用列車10であっても、当番に指定されていない列車は、通常走行中は撮影を行っておらず、図2(c)のように、システム制御装置20からの指示があった場合にのみ撮影を行うものである。
【0035】
[画像欠落チェックの処理:図3
次に、システム制御装置20における画像欠落チェックの処理について図3を用いて説明する。図3は、画像欠落チェックの処理を示すフローチャートである。
図3に示すように、システム制御装置20は、営業車(検査用列車10)からの画像受信を待ち受け(S1)、受信しない場合には(Noの場合)、処理S1を繰り返す。
処理S1において画像データを受信した場合には(Yesの場合)、システム制御装置20は、画像をチェックし(S2)、画像が欠落しているかどうかを判断する(S3)。欠落していない場合(Noの場合)には、処理S1に戻って画像を待ち受ける。
【0036】
処理S3で画像が欠落していた場合(Yesの場合)には、システム制御装置20は欠落していた撮影箇所を特定し、後続の検査用列車10に対して、当該撮影箇所(欠落箇所)の撮影を指示し(S4)、処理S1に移行する。
このようにして、システム制御装置20における画像欠落チェックの処理が行われる。
【0037】
また、後続の検査用列車10を含む全ての営業走行中の検査用列車10は、検査の当番の時間帯でなくても、システム制御装置20からの指示を常時受信している。
そして、図3の処理S4で送信された撮影指示が自己宛てであると判断すると、制御部16の制御によって、指定された欠落箇所の撮影を行い、システム制御装置20に当該画像を送信する。
これにより、第1の実施の形態に係る監視システムでは、画像を取りこぼすことなく取得できるものである。
【0038】
[第1の実施の形態の効果]
第1の実施の形態に係る監視システムによれば、システム制御装置20が、検査用列車10からの画像データをチェックして、画像が欠落している場合、当該欠落した画像の撮影位置を付して後続車に当該撮影位置の撮影を行うよう指示し、後続車が、指示に従って撮影を行うようにしているので、画像の取りこぼしを防ぎ、沿線設備の画像をもれなく取得して、確実に監視を行うことができる効果がある。
【0039】
[第2の実施の形態]
次に、本システムの第2の実施の形態について説明する。
本システムでは、営業車によって撮影を行うが、走行時間帯によっては、影の影響や太陽の映り込み、又は反射等により鮮明な映像が撮影できない場合がある。
第2の実施の形態は、このように、取得した画像の画質が良好ではない場合に、撮影の条件を調整して再度撮影を行い、鮮明な画像の取得を図るものである。
【0040】
第2の実施の形態では、システム制御装置20は、受信した画像の画質をチェックする。チェック項目としては、白飛び、黒つぶれ、コントラスト低下、ブレ等がある。
白飛び、黒つぶれ、コントラスト低下をチェックする場合、システム制御装置20は、まず画像の輝度ヒストグラムを作成し、その形状から、白飛び、黒つぶれ、コントラスト低下を判定する。
【0041】
システム制御装置20は、予め各現象に対応する判定基準を記憶しており、作成した輝度ヒストグラムを判定基準と比較して、白飛び、黒つぶれ、コントラスト低下の不具合が発生しているかどうかを判断する。
例えば、白飛びの場合には、輝度ヒストグラムが著しく高輝度側に偏ったものとなり、逆に黒つぶれの場合には、著しく低輝度側に偏ったものとなる。コントラスト低下の場合には、全体的にやや低輝度寄りとなる。
【0042】
そして、システム制御装置20は、白飛びが発生していると判断すると、後続車に対して、当該画像の撮影箇所の情報と、レンズの絞りやWD(Wide Dynamic Range)の強度を強くするよう、これらのパラメータについてのパラメータ調整値を付して、撮影の指示を送信する。
これにより、後続の検査用列車10では、パラメータ調整値に従ってレンズの絞りやWDを調整し、指定された撮影箇所の画像を撮影してシステム制御装置20に送信する。
【0043】
また、黒つぶれ又はコントラスト低下が発生していると判断された場合、システム制御装置20は、後続車に対して、照明ON(点灯)、蓄積、輝度補正ON等のパラメータ調整値を付して撮影の指示を送信する。
【0044】
このように、システム制御装置20で画質不良を改善するようパラメータ調整値を指示して後続車に撮影させることにより、後続車で撮影された画像は、白飛び・黒つぶれ・コントラスト低下が改善されたものとなる。
【0045】
また、ブレについては、画像における物体のエッジをチェックして、2重(多重)になっていないかどうかを判断する。
エッジが多重になっていて、ブレが発生したと判断された場合には、システム制御装置20は、シャッタースピードを速くする等のパラメータ調整値を付して、後続車に撮影指示を送信する。
【0046】
更に、1本後ろの後続車で撮影された画像における画質の改善が不十分であったり、調整が過度となってしまった場合には、システム制御装置20は、画質を更に良好とするように、パラメータ調整値を上げ下げして微調整し、2本後ろの後続車に送信する。
尚、パラメータ調整を行っても鮮明な画像が撮影できなかった場合には、別の時間帯や別の日(天候)の鮮明な画像を収集することで、メンテナンスに必要なデータベース(正常時の画像)を作成することが可能となる。
【0047】
[第2の実施の形態の効果]
第2の実施の形態に係る監視システムによれば、システム制御装置20が、画質の不良を検出すると、画質を良好にするようにパラメータ調整値を指定して、当該パラメータ調整値を付して後続車に画質不良となった撮影箇所の撮影を指示し、後続車が指示に従ってパラメータを調整して撮影を行うようにしているので、後続車では画質が改善された画像を撮影でき、鮮明な画像を取得して沿線設備の監視を行うことができる効果がある。
【0048】
[第3の実施の形態]
次に、本システムの第3の実施の形態について説明する。
第3の実施の形態では、異常(不具合)が検出された箇所について、別の角度からも画像を撮影して、より詳細な情報を取得できるようにしたものである。
【0049】
第3の実施の形態では、システム制御装置20は、検査用列車10から送信された加速度センサ13のデータに基づいて不具合を検出する。
具体的には、線路に変形等があった場合には横揺れが大きくなるため、システム制御装置20は、加速度センサ13からの横方向の加速度をチェックし、しきい値を超えた場合に不具合発生と判定する。
【0050】
また、システム制御装置20は、レーザセンサ15からの測定値が正常範囲から外れた場合に不具合発生と判定してもよい。
そして、システム制御装置20は、加速度センサ13(又はレーザセンサ15)のデータに対応付けられた位置情報に基づいて、異常箇所の位置を特定して、後続車や隣接する線路を走行する検査用列車10に撮影を指示する。
【0051】
[異常箇所の撮影の動作概略:図4
第3の実施の形態に係る監視システム(第3の監視システム)の動作の概略について図4を用いて説明する。図4は、第3の監視システムにおける異常箇所の撮影の動作を示す説明図である。
図4では、列車31,32が線路Aを左側に向かって走行し、隣接する線路Bを、列車33が右側に向かって走行しているものとする。図4の線路Bでは、列車33の先頭部分と、移動後の列車33(33′として記載)の最後尾部分を示している。尚、列車31~33は、いずれも検査用列車である。
【0052】
まず、列車31は先頭の監視カメラ(図示せず)で画像を撮影し、画像データ、加速度センサ13のデータ、レーザセンサ15のデータを取得し、各データに位置情報を付してシステム制御装置20に送信する。
システム制御装置20は、列車31の加速度センサ13の測定によって異常が検出されると、当該列車31に対して、最後尾の監視カメラ310bで異常箇所の撮影を行うよう指示する。
【0053】
列車31の制御部16は、指示を受信すると、移動した位置で最後尾のカメラ310bによって撮影を行う。
最後尾にもGPSアンテナを備えている場合には、最後尾のGPSアンテナで取得した位置情報が指示された異常箇所の位置情報と一致した場合に、撮影を行うようにすることも可能である。
【0054】
更に、システム制御装置20は、後続車である列車32に対して、異常箇所の位置情報を付して、先頭の監視カメラ320a及び最後尾の監視カメラ(図示せず)で撮影を行うよう指示を送信する。
【0055】
更にまた、システム制御装置20は、隣接する線路Bを走行中の列車33に対しても当該異常箇所の撮影を行うよう指示する。
その場合、列車33は、隣接する線路Aの異常箇所を斜め横から撮影することになるため、システム制御装置20は、列車33に対して監視カメラの角度を、隣接する線路Aの方向に変えるよう指示する。
【0056】
具体的には、システム制御装置20は、各列車の監視カメラの位置と走行方向、線路Aと線路Bの位置関係等に基づいて、各監視カメラが異常箇所の方向を向くようにカメラの向きのパラメータ調整値を送信する。システム制御装置20には、予め各線路の形状や位置関係、列車の走行方向が記憶されている。
【0057】
例えば、システム制御装置20は、列車33の先頭の監視カメラ330aを、正面から右に特定の角度だけ向きを変え、最後尾の監視カメラ330bを、正面から左に特定の角度だけ向きを変えるよう、列車33に指示する。上下方向の角度を変えることも可能である。
【0058】
これにより、列車33では、走行中に指示に従って監視カメラ330a,330bの方向を変えておき、指定された位置に達した場合に撮影を行うことで、線路Aにおける不具合箇所を、線路Aを走行する列車とは別の角度から撮影することができ、状態を詳細に調べることができるものである。
【0059】
更に、システム制御装置20は、列車33が異常箇所にある程度近づいたら、列車33の現在の位置と異常箇所の位置情報とに基づいて、カメラ330aの方向を連続的に変化させつつ、撮影(静止画、又は動画)を行わせるように指示を出力してもよい。
同様に、異常箇所から離れていく際には、カメラ330bの角度を連続的に変化させつつ、撮影を行わせるように制御する。
【0060】
更にまた、システム制御装置20から、ズームのパラメータ調整値を適宜指示することで、異常箇所を拡大して撮影させるようにしてもよい。
尚、ここでは、隣接する線路Bを走行する列車を1本のみ示したが、複数本に対して指示を出力して、角度やズームを変えて撮影を行わせてもよい。
【0061】
[異常検出の別の方法]
第3の実施の形態において、システム制御装置20が沿線設備の異常を検出する際に、別の方法を用いてもよい。
例えば、システム制御装置20が、全ての撮影箇所について予め正常な状態の画像データをデータベースに記憶しておき、検査用車両10から受信した画像データと、データベースに記憶された同じ撮影箇所の正常な画像とを比較する。
比較には、例えばパターンマッチングが用いられ、正常な画像との相関が低い場合に、異常と判断する。
【0062】
更に、AI(Artificial Intelligence;人工知能)を利用して、予め多くの画像データを用いて、正常な状態を示す画像と異常な状態を示す画像とを学習させたモデルを構築しておき、検査用車両10からの画像データについて当該モデルで正常/異常を判定するようにしてもよい。
【0063】
[第3の実施の形態の効果]
第3の実施の形態に係る監視システムによれば、システム制御装置20が、加速度センサの測定値等に基づいて異常を検出すると、当該異常検出箇所の位置に応じて、後続車や隣接する線路を走行する検査用列車10に対して、監視カメラ12の向きやズームを制御するパラメータ調整値を付して、当該異常検出箇所の撮影を指示し、後続車や隣接線路を走行する検査用車両10は、指示に従って撮影を行うようにしているので、異常検出箇所について、異なる角度や拡大率で撮影した複数の画像を取得でき、異常箇所について詳細な情報が得られ、良好なメンテナンスを行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、データの欠落を防ぎ、不具合が発見された場合には、より詳細なデータを取得できる監視システムに適している。
【符号の説明】
【0065】
10,31,32,33,33′…検査用列車、 11…GPSアンテナ、 12,310b,20a,330a,330b…監視カメラ、 13…加速度センサ、 14…車上子、 15…レーザセンサ、 16…制御部、 17…車上アンテナ、 18…地上子、 20…システム制御装置、 21…地上アンテナ、 22…ネットワーク、 101,102,103,104,105,106…画像データ
図1
図2
図3
図4