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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】造形方法及び造形装置
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/10 20060101AFI20230119BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230119BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230119BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20230119BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20230119BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20230119BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20230119BHJP
【FI】
H05K3/10 D
B33Y10/00
B33Y30/00
B29C64/112
B29C64/393
B33Y50/02
B29C64/209
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021525536
(86)(22)【出願日】2019-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2019023641
(87)【国際公開番号】W WO2020250416
(87)【国際公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【弁理士】
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】塚田 謙磁
(72)【発明者】
【氏名】竹内 佑
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-078405(JP,A)
【文献】特開2015-094881(JP,A)
【文献】特表2017-516295(JP,A)
【文献】特開平05-337951(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/10
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B29C 64/112
B29C 64/393
B33Y 50/02
B29C 64/209
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1硬化性粘性流体を吐出する第1吐出工程と、
前記第1吐出工程により吐出した前記第1硬化性粘性流体を、平坦化装置により平坦化する平坦化工程と、
前記平坦化工程により平坦化した前記第1硬化性粘性流体を硬化する第1硬化工程と、
前記第1吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、硬化層を形成する硬化層形成工程と、
前記硬化層の表面上に第2硬化性粘性流体を吐出する第2吐出工程と、
前記第2吐出工程により吐出した前記第2硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化せずに硬化することで、前記硬化層の表面に平滑面を形成する第2硬化工程と、
前記平滑面の上に金属粒子を含む流体を吐出する第3吐出工程と、
前記第3吐出工程により吐出した前記金属粒子を含む流体を硬化し、前記平滑面の上に金属製の導体を形成する第3硬化工程と、
を含み、
前記平坦化装置は、
前記第1硬化性粘性流体の表面を均しながら前記第1硬化性粘性流体の前記表面を平坦化し、
前記第2吐出工程において吐出された前記第2硬化性粘性流体は、
表面張力によるレベリング効果により前記硬化層の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化する、造形方法。
【請求項2】
前記第2吐出工程において、
前記硬化層の表面に形成された凹凸の大きさに応じた吐出量で、前記第2硬化性粘性流体を吐出する、請求項1に記載の造形方法。
【請求項3】
前記第2硬化性粘性流体は、
紫外線硬化樹脂であり、
前記第2吐出工程の前記第2硬化性粘性流体を加熱する加熱工程を含み、
前記第2硬化工程において、
前記加熱工程により加熱した前記第2硬化性粘性流体を硬化する、請求項1又は請求項2に記載の造形方法。
【請求項4】
前記第1硬化性粘性流体は、
絶縁性を有する樹脂であり、
前記第1硬化工程において、
前記硬化層として、絶縁性を有する絶縁層を形成し、
前記第3硬化工程において、
前記導体として、前記平滑面に金属配線を形成する、請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の造形方法。
【請求項5】
前記第2吐出工程で吐出する前記第2硬化性粘性流体の液滴の大きさが、前記第1吐出工程で吐出する前記第1硬化性粘性流体の液滴の大きさと異なる、請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の造形方法。
【請求項6】
吐出装置と、
平坦化装置と、
硬化装置と、
制御装置と、
を備え、
前記制御装置は、
第1硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出させる第1吐出部と、
前記第1吐出部により吐出した前記第1硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化させる平坦化部と、
前記平坦化部により平坦化した前記第1硬化性粘性流体を、前記硬化装置により硬化させる第1硬化部と、
前記第1吐出部、前記平坦化部、前記第1硬化部による処理を繰り返し実行し、硬化層を形成する硬化層形成部と、
前記硬化層の表面上に、前記吐出装置により第2硬化性粘性流体を吐出させる第2吐出部と、
前記第2吐出部により吐出した前記第2硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化せずに前記硬化装置により硬化させることで、前記硬化層の表面に平滑面を形成する第2硬化部と、
前記平滑面の上に、前記吐出装置により金属粒子を含む流体を吐出させる第3吐出部と、
前記第3吐出部により吐出した前記金属粒子を含む流体を、前記硬化装置により硬化させ、前記平滑面の上に金属製の導体を形成する第3硬化部と、
を備え
前記平坦化装置は、
前記第1硬化性粘性流体の表面を均しながら前記第1硬化性粘性流体の前記表面を平坦化し、
前記第2吐出部が吐出した前記第2硬化性粘性流体は、
表面張力によるレベリング効果により前記硬化層の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化する、造形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性粘性流体及び金属粒子を含む流体を用いて造形を行う造形方法及び造形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化樹脂などの硬化性粘性流体によって構造物を形成するための技術が開発されている。詳しくは、吐出装置によって硬化性粘性流体を吐出し、その硬化性粘性流体に紫外線等を照射することで硬化させる。これにより、硬化性粘性流体の硬化層が形成される。下記特許文献1では、硬化性粘性流体を吐出した後に、吐出した硬化性粘性流体の表面をローラなどの平坦化装置によって平坦化する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-67118号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
平坦化装置によって平坦化した硬化性粘性流体の表面には、微細な凹凸が形成される場合がある。例えば、表面には、硬化性粘性流体の液滴の大きさに起因した凹凸が形成される。硬化性粘性流体の液滴の大きさに起因した凹凸の高低差は、例えば、±10μm(マイクロメートル)となる場合があり、ローラなどの大きさに比べて極めて小さくなる。このため、ローラなどの平坦化装置では、十分に平坦化を図れず、平坦化処理を実行した後の硬化性粘性流体の表面には、微細な凹凸が残される虞がある。
【0005】
ここで、平坦化した硬化性粘性流体を硬化した硬化層の表面に、金属粒子を含む流体を吐出し硬化することで金属製の導体を造形した場合、表面の凹凸によって造形される導体の厚みが不均一となる。その結果、厚みのある箇所は焼成時に内部まで十分金属化されないもしくは導体厚みのばらつきにより抵抗値が不均一になる、あるいは導体の高周波特性が低下する虞がある。
【0006】
本開示は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、硬化性粘性流体で造形した硬化層の平坦化と、金属粒子を含む流体で造形した導体の特性の向上の両立が図れる造形方法及び造形装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の造形方法は、第1硬化性粘性流体を吐出する第1吐出工程と、前記第1吐出工程により吐出した前記第1硬化性粘性流体を、平坦化装置により平坦化する平坦化工程と、前記平坦化工程により平坦化した前記第1硬化性粘性流体を硬化する第1硬化工程と、前記第1吐出工程、前記平坦化工程、前記第1硬化工程を繰り返し実行し、硬化層を形成する硬化層形成工程と、前記硬化層の表面上に第2硬化性粘性流体を吐出する第2吐出工程と、前記第2吐出工程により吐出した前記第2硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化せずに硬化することで、前記硬化層の表面に平滑面を形成する第2硬化工程と、前記平滑面の上に金属粒子を含む流体を吐出する第3吐出工程と、前記第3吐出工程により吐出した前記金属粒子を含む流体を硬化し、前記平滑面の上に金属製の導体を形成する第3硬化工程と、を含み、前記平坦化装置は、前記第1硬化性粘性流体の表面を均しながら前記第1硬化性粘性流体の前記表面を平坦化し、前記第2吐出工程において吐出された前記第2硬化性粘性流体は、表面張力によるレベリング効果により前記硬化層の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化する
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の造形装置は、吐出装置と、平坦化装置と、硬化装置と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、第1硬化性粘性流体を前記吐出装置により吐出させる第1吐出部と、前記第1吐出部により吐出した前記第1硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化させる平坦化部と、前記平坦化部により平坦化した前記第1硬化性粘性流体を、前記硬化装置により硬化させる第1硬化部と、前記第1吐出部、前記平坦化部、前記第1硬化部による処理を繰り返し実行し、硬化層を形成する硬化層形成部と、前記硬化層の表面上に、前記吐出装置により第2硬化性粘性流体を吐出させる第2吐出部と、前記第2吐出部により吐出した前記第2硬化性粘性流体を、前記平坦化装置により平坦化せずに前記硬化装置により硬化させることで、前記硬化層の表面に平滑面を形成する第2硬化部と、前記平滑面の上に、前記吐出装置により金属粒子を含む流体を吐出させる第3吐出部と、前記第3吐出部により吐出した前記金属粒子を含む流体を、前記硬化装置により硬化させ、前記平滑面の上に金属製の導体を形成する第3硬化部と、を備え、前記平坦化装置は、前記第1硬化性粘性流体の表面を均しながら前記第1硬化性粘性流体の前記表面を平坦化し、前記第2吐出部が吐出した前記第2硬化性粘性流体は、表面張力によるレベリング効果により前記硬化層の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化する
【発明の効果】
【0009】
これによれば、第1吐出工程、平坦化工程、第1硬化工程を繰り返し実行することで、表面を平坦化した硬化層を形成する。この硬化層の平坦化された表面には、平坦化装置では解消できない微細な凹凸が形成される場合がある。そこで、硬化層の表面上に第2硬化性粘性流体を吐出し、吐出した第2硬化性粘性流体を、平坦化装置により平坦化せずに硬化する。これにより、硬化層の表面に吐出された第2硬化性粘性流体は、レベリング効果により硬化層の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化し、例えば表面凹凸が±1μm以下の平滑面を形成する。そして、この平滑面に金属粒子を含む流体を吐出して硬化することで、より均一な厚みの(電気的特性の高い)導体を硬化層上に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の造形装置を示す図である。
図2】制御装置を示すブロック図である。
図3】造形処理の内容を示すフローチャートである。
図4】インクジェットヘッドから紫外線硬化樹脂を吐出している状態を示す模式図である。
図5】紫外線硬化樹脂を平坦化装置により平坦化している状態を示す模式図である。
図6】平坦化した紫外線硬化樹脂を硬化部により硬化して絶縁層を形成している状態を示す模式図である。
図7】表面を平坦化された絶縁層を示す模式図である。
図8】絶縁層の表面に第2紫外線硬化樹脂を吐出している状態を示す模式図である。
図9】第2紫外線硬化樹脂を加熱している状態を示す模式図である。
図10】表面を平滑化された絶縁層を示す模式図である。
図11】平滑面に金属インクを吐出している状態を示す模式図である。
図12】金属配線を形成している状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1.造形装置10の構成)
図1は、本開示の造形装置を具体化した一実施形態の造形装置10を示している。本実施形態の造形装置10は、搬送装置20と、造形ユニット22と、装着ユニット23と、検査ユニット24と、制御装置26(図2参照)とを備えている。搬送装置20、造形ユニット22、装着ユニット23、検査ユニット24は、造形装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0012】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。
【0013】
また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸方向におけるY軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。これにより、Y軸スライドレール50は、X軸スライダ36のスライド移動にともなって、X軸方向に移動可能とされている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によってY軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上において、X軸方向及びY軸方向の任意の位置に移動可能となっている。
【0014】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面にベース部材70(図4参照)が載置される。ベース部材70は、例えば、鉄やステンレスなどの金属製の板である。保持装置62は、基台60のX軸方向の両側部に設けられている。そして、基台60に載置されたベース部材70のX軸方向の両縁部が、保持装置62によって挟まれることで、ベース部材70が基台60に対して固定的に保持される。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向に昇降させる。
【0015】
造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置されたベース部材70の上に構造物を造形するユニットであり、印刷部72と、硬化部74とを有している。印刷部72は、図4に示すように、インクジェットヘッド75を有しており、基台60に載置されたベース部材70の上に、流体を薄膜状に吐出する。インクジェットヘッド75が吐出する流体としては、紫外線によって硬化する紫外線硬化樹脂76(図4参照)を採用することができる。紫外線硬化樹脂76は、本願の第1及び第2硬化性粘性流体の一例である。なお、硬化性粘性流体としては、紫外線硬化樹脂の他に、熱硬化性樹脂などの他の粘性流体を採用することができる。
【0016】
また、インクジェットヘッド75は、紫外線硬化樹脂76の他に、例えば、金属インク77(図11参照)を吐出可能となっている。金属インク77は、本願の金属粒子を含む流体の一例である。金属インク77は、例えば、ナノメートルサイズの金属(銀など)の微粒子を溶剤中に分散させたものであり、熱により焼成され硬化する。金属微粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、溶剤中での凝集が抑制されている。
【0017】
インクジェットヘッド75は、紫外線硬化樹脂76を吐出する場合、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから紫外線硬化樹脂76を吐出する、あるいは紫外線硬化樹脂76を加熱して気泡を発生させノズルから吐出するサーマル方式によって複数のノズルから紫外線硬化樹脂76を吐出する。また、インクジェットヘッド75は、金属インク77を吐出する場合、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから金属インク77を吐出する。なお、吐出装置としては、複数のノズルを備えるインクジェットヘッド75に限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、インクジェットヘッド75は、金属インク77を吐出するノズルと、紫外線硬化樹脂76を吐出するノズルとを別々に備えてもよく、2つの粘性流体を吐出するノズルを共用しても良い。以下の説明では、紫外線硬化樹脂76と金属インク77とを総称する場合、粘性流体と記載する場合がある。
【0018】
図2に示すように、硬化部74は、平坦化装置78と、照射装置81と、ヒータ82とを有している。平坦化装置78は、インクジェットヘッド75によってベース部材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂76や金属インク77の上面を平坦化する装置である。平坦化装置78は、ローラ79と、回収部80とを有している(図5参照)。ローラ79は、例えば、円柱形状をなし、平坦化装置78の制御に基づいて、流動可能な状態の粘性流体(紫外線硬化樹脂76や金属インク77)の表面を回転しながら移動し、表面を平坦化する。回収部80は、例えば、ローラ79の表面に向かって突出するブレードを有しており、ブレードで掻き取った粘性流体を貯めて排出する。回収部80は、例えば、回収した粘性流体を廃液タンクに排出する。平坦化装置78は、粘性流体の表面を均しながら余剰分の粘性流体を掻き取ることで、粘性流体の表面を平坦化する。
【0019】
なお、平坦化装置78は、ローラ79によって平坦化を行なう構成に限らない。例えば、平坦化装置78は、スキージなどの板状の部材を粘性流体の表面に当て、平坦化を行なう構成でも良い。あるいは、平坦化装置78は、ブラシやレーキを用いて、粘性流体の表面を均す構成でも良い。また、回収部80は、回収した粘性流体を、再度、供給タンクに戻しても良い。また、平坦化装置78による平坦化は、粘性流体の吐出ごとに実行しなくとも良い。例えば、特定の層の形成時のみ平坦化を実行しても良い。
【0020】
また、照射装置81は、例えば、ベース部材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂76に紫外線を照射する。紫外線硬化樹脂76は、紫外線の照射により硬化し、薄膜状の絶縁層86を形成する(図6図7参照)。また、ヒータ82は、吐出された紫外線硬化樹脂76や金属インク77を加熱する装置である。本実施形態の紫外線硬化樹脂76は、加熱することで粘性が低下する性質を有する。造形装置10は、後述する加熱処理(図3のS21参照)において、紫外線硬化樹脂76を加熱して粘性を低下させ、より効果的に平滑化を実行する。
【0021】
また、金属インク77は、ヒータ82から熱を付与されることで焼成し、金属配線を形成する。金属インク77の焼成とは、例えば、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属微粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属微粒子が接触又は融着をすることで、導電率が高くなる現象である。そして、金属インクを焼成することで、金属配線を形成することができる。造形方法の詳細については、後述する。なお、金属インク77を加熱する装置は、ヒータ82に限らない。例えば、造形装置10は、金属インク77を加熱する装置としてレーザ光を金属インク77に照射するレーザ照射装置や、金属インク77を吐出された絶縁層86を炉内に入れて加熱する雰囲気炉を備えても良い。
【0022】
また、図1に示す装着ユニット23は、例えば、造形ユニット22によって造形した金属配線に接続される各種の電子部品を装着するユニットであり、装着部83と、供給部84とを備えている。装着部83は、例えば、電子部品を吸着する吸着ノズル(図示略)を有しており、吸着ノズルで保持した電子部品を装着する。供給部84は、例えば、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダを複数有しており、装着部83へ電子部品を供給する。なお、供給部84は、テープフィーダを備える構成に限らず、トレイから電子部品をピックアップして供給するトレイ型の供給装置でもよい。
【0023】
装着ユニット23は、例えば、ステージ52の移動にともなって、装着部83の下方の位置にベース部材70が移動してくると、装着部83を供給部84の部品供給位置まで移動させるとともに、供給部84を駆動させて必要な部品を供給させる。そして、装着部83は、吸着ノズルによって供給部84の部品供給位置から電子部品を吸着保持し、ベース部材70上に造形された絶縁層86の上に装着する。
【0024】
検査ユニット24は、造形ユニット22及び装着ユニット23によって造形された構造物を検査するユニットである。検査ユニット24は、例えば、カメラ等の撮像装置を備える。制御装置26は、検査ユニット24で撮像した画像データに基づいて、電子部品が正常に実装されているか否かを判断することができる。
【0025】
また、本実施形態の検査ユニット24は、後述する平滑面93(図10参照)を検査するための装置を備えている。例えば、検査ユニット24は、平滑面93の面粗度を計測可能な共焦点レーザ顕微鏡を備えている。制御装置26は、検査ユニット24の共焦点レーザ顕微鏡で計測した結果に基づいて、平滑面93の凹凸の良否を判断、即ち、所望の状態まで平滑化を実行できているか否かを判断することができる。検査の詳細については後述する。また、造形装置10は、平滑面93を検査する装置(検査ユニット24など)を備えなくとも良い。
【0026】
図2に示すように、制御装置26は、コントローラ102と、複数の駆動回路104と、記憶装置106とを備えている。複数の駆動回路104は、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド75、平坦化装置78、照射装置81、ヒータ82、装着部83、供給部84、検査ユニット24に接続されている。コントローラ102は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路104に接続されている。記憶装置106は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、造形装置10の制御を行う制御プログラム107が記憶されている。コントローラ102は、制御プログラム107をCPUで実行することで、搬送装置20、造形ユニット22等の動作を制御することが可能となっている。
【0027】
本実施形態の造形装置10は、上述した構成によって、粘性流体として紫外線硬化樹脂76や金属インク77を硬化させることで、絶縁層86(図7参照)や金属配線95(図12参照)を形成する。造形装置10は、絶縁層86や金属配線95の形状を変更することで、任意の形状の構造物を造形することが可能となっている。また、造形装置10は、造形する過程で装着ユニット23によって電子部品を実装する。例えば、制御プログラム107には、構造物をスライスした各層の三次元のデータが設定されている。コントローラ102は、制御プログラム107のデータに基づいて、粘性流体を吐出、硬化等させて構造物を形成する。また、コントローラ102は、制御プログラム107のデータに基づいて電子部品を配置する層や位置等の情報を検出し、検出した情報に基づいて電子部品を実装する。
【0028】
(2.造形装置10の動作)
以下の説明では、造形装置10の動作の一例として、絶縁層の上に金属配線を造形する造形処理について説明する。図2は、造形処理の内容を示すフローチャートである。制御装置26は、例えば、造形開始の指示を受け付けると、制御プログラム107内の所定のプログラムを実行し、図2に示す造形処理を開始する。また、以下の説明では、コントローラ102が、制御プログラム107を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「コントローラ102が基台60を移動させる」とは、「コントローラ102が、制御プログラム107を実行し、駆動回路104を介して搬送装置20の動作を制御して、搬送装置20の動作によって基台60を移動させる」ことを意味している。
【0029】
まず、ステージ52の基台60にベース部材70がセットされる。ベース部材70のセットは、人が実施しても良く、造形装置10が自動で実行しても良い。コントローラ102は、搬送装置20を制御し、ベース部材70をセットされたステージ52を、造形ユニット22の下方に移動させる。図3のS11に示す第1吐出処理において、コントローラ102は、印刷部72のインクジェットヘッド75を制御して、紫外線硬化樹脂76をベース部材70の上に吐出する(図4参照)。図4は、インクジェットヘッド75から紫外線硬化樹脂76を吐出している状態を示す模式図である。インクジェットヘッド75は、ベース部材70の上に紫外線硬化樹脂76を薄膜状に吐出する。なお、コントローラ102は、S11におけるインクジェットヘッド75による吐出を、例えば、X軸方向に沿って1回の走査(1パス)だけ実行しても良く、複数回の走査を実行しても良い。
【0030】
次に、S13の平坦化処理において、コントローラ102は、薄膜状の紫外線硬化樹脂76の上面において平坦化装置78のローラ79を回転させ、平坦化を行う。コントローラ102は、図5の矢印で示すように、ベース部材70を移動させる方向と逆方向にローラ79を移動させ、ベース部材70とローラ79との動作を同期させて平坦化処理を実行する。ローラ79は、流動可能な状態の紫外線硬化樹脂76を掻き上げて回収部80により回収しつつ、紫外線硬化樹脂76の表面を平坦化させる。なお、上記したベース部材70とローラ79の動作方向等は一例である。例えば、コントローラ102は、ベース部材70と同一方向へローラ79を動かしても良く、ベース部材70の位置を固定してローラ79だけを移動させても良い。また、コントローラ102は、ローラ79を前転させながら前進させても良く、後転させながら前進させても良い。あるいは、コントローラ102は、ローラ79を回転させなくとも良い。
【0031】
次に、S15の第1硬化処理において、コントローラ102は、平坦化した紫外線硬化樹脂76に対して、照射装置81により紫外線を照射する。図6に示すように、照射装置81は、薄膜状に広がった紫外線硬化樹脂76(図5参照)に対し紫外線を照射することで、紫外線硬化樹脂76を硬化し、絶縁性を有する絶縁層86を形成する。これにより、表面86Aが平坦化された絶縁層86を形成することができる。
【0032】
次に、コントローラ102は、表面86Aが平坦化された所望の絶縁層86を形成できたか否かを判断する(S17)。コントローラ102は、例えば、制御プログラム107や外部からの操作入力で指定された厚みや形状等となるまでの間、S17において否定判断する(S17:NO)。コントローラ102は、例えば、インクジェットヘッド75から吐出する紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさ、S11~S15を実行した回数などに基づいて、形成済みの絶縁層86の厚みや形状等を判断することができる。コントローラ102は、S11~S15の処理を繰り返し実行することで絶縁層86を積層し、表面86Aが平坦化され、且つ所望の形状(厚みや形など)の絶縁層86を形成する。なお、コントローラ102は、S11を実行するごとにS13の平坦化処理を実行しなくとも良い。例えば、コントローラ102は、S11及びS15を複数回実行するごとに、S13の平坦化処理を実行しても良い。
【0033】
また、コントローラ102は、S17において、表面86Aが平坦化され、且つ所望の形状の絶縁層86を形成できたと判断すると(S17:YES)、S19の第2吐出処理において、平坦化した絶縁層86の表面86Aを平滑化するために、表面86Aに紫外線硬化樹脂76を再度、吐出する。
【0034】
ここで、S11~S15を繰り返し実行することで、表面86Aを平坦化した絶縁層86を形成することができる。図7は、表面を平坦化された絶縁層86を模式的に示している。図7に示すように、平坦化した絶縁層86の表面86Aには、例えば、インクジェットヘッド75のノズルから吐出する紫外線硬化樹脂76の量の差や、紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさなどに起因して微細な凹凸91が形成される。この凹凸91の高さは、例えば、±10μmとなる可能性があり、ローラ79の大きさに比べて極めて小さくなる。従って、絶縁層86の表面86Aをローラ79で平坦化したとしても、微細な凹凸91まで平坦化することは困難となる。本願では、この微細な凹凸91が形成された面を平坦化された面と定義する。また、この微細な凹凸91を減らす、又は表面の凹凸が±1μm以下となった(元々の凹凸91がなくなったと擬制できる)面を平滑化された平滑面と定義する。
【0035】
表面86Aに凹凸91が形成されることで、この表面86Aに金属配線を形成した場合、形成される金属配線の厚みにばらつきが発生する。あるいは、厚みの大きい部分で金属配線が完全に焼成されない(金属微粒子が接触又は融着しない)ことで、金属配線の導電率が低下する虞がある。結果として、金属配線の抵抗値が均一性となり、所望の高周波特性を得ることが困難となる。
【0036】
そこで、コントローラ102は、平坦化した絶縁層86の表面86Aに、再度、紫外線硬化樹脂76を吐出して凹凸91を減らす、又はなくす平滑化を実行する。コントローラ102は、図3のS19の第2吐出処理において、平坦化された表面86Aに、インクジェットヘッド75により紫外線硬化樹脂76を吐出する(図8参照)。図8の細かい円は、凹凸91を模式的に示している。以下の説明では、S11の第1吐出処理の紫外線硬化樹脂76と、S19の第2吐出処理の紫外線硬化樹脂76を区別する場合、S19の紫外線硬化樹脂76を、第2紫外線硬化樹脂76Aと称する。
【0037】
コントローラ102は、S19の第2紫外線硬化樹脂76Aの吐出量を、凹凸91の大きさに応じた量とする。コントローラ102は、検査ユニット24により凹凸91の高さ、高低差等を計測し、第2紫外線硬化樹脂76Aの吐出量を自動で設定する。例えば、コントローラ102は、形成される凹凸91の高さが高い(溝が深い)場合、インクジェットヘッド75の吐出量を増やす処理を実行する。あるいは、ユーザが、絶縁層86の試作品を製造して凹凸91の高さ等を計測し、凹凸91の高さ等を制御プログラム107に設定しても良い。そして、コントローラ102は、制御プログラム107に設定された高さ等の情報に基づいて第2紫外線硬化樹脂76Aの吐出量を設定しても良い。尚、第2紫外線硬化樹脂76Aの吐出量の調整方法は、インクジェットヘッド75から吐出する単位面積当たりの吐出量を変更する他に、例えば、インクジェットヘッド75から吐出する液滴の大きさ、S19の1回の工程で基台60(ベース部材70)上をインクジェットヘッド75が走査する走査回数を変更することで行なうことができる。従って、これらの3つの条件を予め設定することでも、第2紫外線硬化樹脂76Aの吐出量を最適な量(凹凸91の大きさに応じた量)に調整することが可能である。
【0038】
従って、本実施形態のコントローラ102は、S19の第2吐出処理において、絶縁層86(硬化層の一例)の表面86Aに形成された凹凸91の大きさに応じた吐出量で、第2紫外線硬化樹脂76A(第2硬化性粘性流体の一例)を吐出する。これによれば、平滑化を行なう第2吐出処理では、第1硬化処理(S15)で形成した絶縁層86の表面86Aの凹凸91の大きさ、例えば、凹凸91の高さ、凹凸91の幅、凹凸91の高低差などに応じた吐出量の吐出を実行する。これにより、第2吐出処理において、第2紫外線硬化樹脂76Aを適量だけ吐出し、絶縁層86の表面86Aの凹凸91をより効果的に平滑化することができる。なお、コントローラ102は、凹凸91の大きさに関係なく、一定の吐出量で第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出しても良い。また、コントローラ102は、凹凸91の大きさに応じて、吐出量以外を変更しても良い。例えば、コントローラ102は、S19の実行回数、インクジェットヘッド75の走査回数等を、凹凸91の大きさに応じて変更しても良い。例えば、コントローラ102は、凹凸91が高い(溝が深い)場合、インクジェットヘッド75の走査回数を増やしても良い。
【0039】
次に、コントローラ102は、図9に示すように、吐出した第2紫外線硬化樹脂76Aを、ヒータ82により加熱する(S21の加熱処理)。本実施形態の第2紫外線硬化樹脂76Aは、加熱されることで粘性が低下し、流動性が向上する性質を有する。コントローラ102は、後述するS23の第2硬化処理において、S21の加熱処理により加熱した第2紫外線硬化樹脂76Aを硬化する。即ち、コントローラ102は、S23の第2硬化処理により第2紫外線硬化樹脂76Aを硬化する前に、第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱する。第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱することで、第2紫外線硬化樹脂76Aの粘性を低下させ流動性を上げる効果が期待できる。これにより、第2紫外線硬化樹脂76Aの流動性を上げることで、第2紫外線硬化樹脂76Aが凹凸91の表面に広がり易くなり、凹凸91の隙間へより入り込み易くなることで、より効果的に平滑化することができる。
【0040】
なお、第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱する方法は、上記したヒータ82に限らない。例えば、第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出した絶縁層86を、雰囲気炉に入れて、第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱しても良い。また、インクジェットヘッド75が、吐出する前の第2紫外線硬化樹脂76Aをノズル内で加熱して、加熱した第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出しても良い。
【0041】
次に、コントローラ102は、加熱した第2紫外線硬化樹脂76Aに対し硬化処理を実行する(S23)。即ち、コントローラ102は、第2紫外線硬化樹脂76Aに対してはローラ79による平坦化処理を実行せずに、硬化処理を実行する。コントローラ102は、表面86Aに吐出した第2紫外線硬化樹脂76Aに対し、照射装置81から紫外線を照射して硬化を実行する(図6参照)。これにより、図10に示すように、表面86Aに吐出された第2紫外線硬化樹脂76Aは、レベリング効果により表面86Aの微細な凹凸91の上に広がって平滑化し、平滑面93を形成する。ここでいうレベリング効果とは、表面張力により液体の表面積がなるべく小さくなる現象である。液体の粘度にも左右されるが時間の経過にともなって、第2紫外線硬化樹脂76Aにより形成した薄膜が平坦な(より均一な)膜厚に変化する。第2紫外線硬化樹脂76Aは、表面86Aに吐出されることで塗れ広がり、凹凸91を埋めるように広がる。また、第2紫外線硬化樹脂76Aは、紫外線を照射され、粘度が上昇することで、凹凸91を埋めるように硬化する。これにより、形成される平滑面93は、凹凸91を減らした面、あるいはなくなった面となる。
【0042】
次に、コントローラ102は、所望の平滑面93を形成できたか否かを判断する(S25)。コントローラ102は、例えば、予め設定された回数だけS19~S23の処理を繰り返し実行すると、S25において肯定判断する(S25:YES)。この場合、コントローラ102は、予め設定された回数までS25で否定判断し(S25:NO)、S19~S23の処理を繰り返し実行することで、所望の厚みや形状の第2紫外線硬化樹脂76Aの層(平滑面93)を形成することができる。
【0043】
なお、S25における判断基準は、予め設定された回数に限らない。例えば、コントローラ102は、検査ユニット24により平滑面93の面粗度を計測し、所定の面粗度以下となった場合に、S25において肯定判断しても良い。あるいは、コントローラ102は、試験的に平滑面93の形成を実行し、所望の面粗度以下となるS19~S23の繰り返し回数を自動で検出しても良い。そして、コントローラ102は、予め検出した回数、即ち、所望の面粗度以下となる回数だけS19~S23を実行するように、S25において用いる回数を設定しても良い。
【0044】
尚、コントローラ102は、例えば、S11で吐出する紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさと、S19で吐出する第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを変更しても良い。即ち、コントローラ102は、所謂、マルチドロップ方式により一度に複数の紫外線硬化樹脂76の吐出を実行しても良い。これにより、液滴の差によってより効果的に平滑化することが可能となる。
【0045】
従って、コントローラ102は、S19の第2吐出処理で吐出する第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを、S11の第1吐出処理で吐出する紫外線硬化樹脂76(第1硬化性粘性流体の一例)の液滴の大きさと異なる大きさにしても良い。これによれば、第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを、紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさに比べて大きくすることで、凹凸91の大きさ、高さ等に比べて第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを相対的に大きくすることが可能となる。第2紫外線硬化樹脂76Aをより広範囲に塗り広げ、平滑化処理の効率を向上できる。逆に、第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを、紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさに比べて小さくすることで、凹凸91の隙間に第2紫外線硬化樹脂76Aが入り込み易くなり、より効果的に平滑化することができる。尚、コントローラ102は、S11の紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさと、S19の第2紫外線硬化樹脂76Aの液滴の大きさを同一にしても良い。
【0046】
次に、コントローラ102は、所望の厚みや形状の第2紫外線硬化樹脂76Aの層(平滑面93)を形成すると(S25:YES)、平滑面93に金属配線を形成する。コントローラ102は、例えば、制御プログラム107の三次元データに基づいて、平滑面93の所定箇所に金属配線を形成する。詳述すると、S27の第3吐出処理において、コントローラ102は、インクジェットヘッド75を制御して、絶縁層86の平滑面93に金属インク77を薄膜状に吐出する(図11参照)。S29の第3硬化処理において、コントローラ102は、平滑面93に吐出した金属インク77を、ヒータ82によって加熱し焼成する(図12参照)。コントローラ102は、S31において、所望の厚みや形状の金属配線95を形成できたか否かを判断する。コントローラ102は、例えば、予め設定された回数までS31で否定判断し(S31:NO)、S27、S29を繰り返し実行することで所望の金属配線95を形成する。ここでいう所望の金属配線95とは、必要としている厚み、形状や、電気的特性を満たす金属配線95である。コントローラ102は、予め設定された回数までS27、S29を繰り返し実行すると、S31で肯定判断し(S31:YES)、S33を実行する。これにより、金属配線95を平滑面93に形成された絶縁層86(配線基板)を造形することができる。
【0047】
ここで、凹凸91が形成された表面86Aに、金属インク77を吐出及び硬化させて金属配線95を形成すると、金属配線95の厚みが、凹凸91によって不均一となる。そして、金属配線95の抵抗値の増大、断線、高周波特性の低下などの不具合が生じる虞がある。これに対し、本実施形態の造形装置10では、表面86Aの微細な凹凸91までを低減し、低減した平滑面93に金属インク77を吐出等することで、より均一な厚みの金属配線95を形成することができる。その結果、金属配線95の抵抗値を所望の値まで低減し、断線の発生を抑制することができる。
【0048】
また、コントローラ102は、本願の硬化層として、絶縁性を有する絶縁層86を形成し、導体として、平滑面93に金属配線95を形成する。これによれば、電気的な抵抗値の均一化を図り、高周波特性を向上した金属配線95を、絶縁層86の上に形成することができる。
【0049】
コントローラ102は、S33において、その他の処理を実行する。例えば、コントローラ102は、装着ユニット23を制御して、金属配線95と接続されるように、電子部品を絶縁層86上に配置する。あるいは、コントローラ102は、絶縁層86や金属配線95の造形がさらに必要な場合、S11からの処理を再度実行しても良い。また、コントローラ102は、検査ユニット24を制御して、完成した構造物(電子部品を装着された絶縁層86など)の検査を実行しても良い。コントローラ102は、S33を実行すると、図3に示す造形処理を終了する。これにより、所望の構造物を造形することができる。
【0050】
上記した実施形態によれば、以下の効果を奏する。
造形装置10のコントローラ102は、紫外線硬化樹脂76を吐出する第1吐出処理(S11)と、S11の処理により吐出した紫外線硬化樹脂76を、平坦化装置78により平坦化する平坦化処理(S13)と、S13の処理により平坦化した紫外線硬化樹脂76を硬化する第1硬化処理(S15)と、を実行する。コントローラ102は、S11、S13、S15を繰り返し実行し(S17:NO)、絶縁層86を形成する。コントローラ102は、絶縁層86の表面86A上に第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出する第2吐出処理(S19)と、S19の処理により吐出した第2紫外線硬化樹脂76Aを、平坦化装置78により平坦化せずに硬化することで、絶縁層86の表面86Aに平滑面93を形成する第2硬化処理(S23)と、を実行する。コントローラ102は、平滑面93の上に金属インク77を吐出する第3吐出処理(S27)と、S27の処理により吐出した金属インク77を硬化し、平滑面93の上に金属配線95を形成する第3硬化処理(S29)と、を実行する。
【0051】
これによれば、第1吐出処理(S11)、平坦化処理(S13)、第1硬化処理(S15)を繰り返し実行することで、表面86Aを平坦化した絶縁層86を形成する。この絶縁層86の平坦化された表面86Aには、平坦化装置78では解消できない微細な凹凸が形成される場合がある。そこで、絶縁層86の表面86A上に第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出し、吐出した第2紫外線硬化樹脂76Aを、平坦化装置78により平坦化せずに硬化する。これにより、絶縁層86の表面86Aに吐出された第2紫外線硬化樹脂76Aは、レベリング効果により絶縁層86の表面の微細な凹凸の上に広がって平滑化し、平滑面93を形成する。
【0052】
ここで、仮に、平坦化装置78を用いずに(即ち、平坦化工程を実行せずに)、第1硬化性粘性流体(紫外線硬化樹脂76など)の吐出と硬化を繰り返して硬化層(絶縁層86など)を形成した場合、硬化層の表面は、表面張力の影響で端部や境界部で盛り上がり、全体として波を打ったようなうねりのある面が形成される。その結果、硬化層の表面上に金属粒子を含む流体を吐出して導体を形成すると、形成された導体は、硬化層の表面に沿ってうねった形状や流体が流れて厚みが不均一となり、電気的特性が低下する虞がある。
【0053】
そこで、本実施形態の造形装置10では、一定の厚みの絶縁層86(硬化層の一例)を平坦化しながら形成する。次に、形成した絶縁層86の表面86Aに第2紫外線硬化樹脂76Aを吐出し、平坦化せずに硬化することで、平坦化した絶縁層86の上に、凹凸のないあるいは少ない平滑面93を形成できる。そして、この平滑面93に金属インク77(金属粒子を含む流体の一例)を吐出して硬化することで、より均一な厚みの(電気的特性の高い)金属配線95を絶縁層86上に形成できる。
【0054】
なお、制御装置26のコントローラ102は、図2に示すように、第1吐出部110と、平坦化部111と、第1硬化部112と、硬化層形成部113と、第2吐出部115と、第2硬化部116と、第3吐出部117と、第3硬化部118、加熱部119を有している。第1吐出部110等は、例えば、コントローラ102のCPUにおいて制御プログラム107を実行することで実現される処理モジュールである。なお、第1吐出部110等を、ソフトウェアで構成せずに、ハードウェアで構成しても良い。
【0055】
第1吐出部110は、第1硬化性粘性流体をインクジェットヘッド75により吐出させる機能部である。平坦化部111は、第1吐出部110により吐出した第1硬化性粘性流体を、平坦化装置78により平坦化させる機能部である。第1硬化部112は、平坦化部111により平坦化した第1硬化性粘性流体を、硬化部74により硬化させる機能部である。硬化層形成部113は、第1吐出部110、平坦化部111、第1硬化部112による処理を繰り返し実行し、硬化層を形成する機能部である。第2吐出部115は、硬化層の表面86A上に、インクジェットヘッド75により第2硬化性粘性流体を吐出させる機能部である。第2硬化部116は、第2吐出部115により吐出した第2硬化性粘性流体を、平坦化装置78により平坦化せずに硬化部74により硬化させることで、絶縁層86の表面86Aに平滑面93を形成する機能部である。第3吐出部117は、平滑面93の上に、インクジェットヘッド75により金属粒子を含む流体を吐出させる機能部である。第3硬化部118は、第3吐出部117により吐出した金属粒子を含む流体を、硬化部74により硬化させ、平滑面93の上に金属製の導体を形成する機能部である。加熱部119は、第2吐出工程の第2硬化性粘性流体を加熱する機能部である。
【0056】
因みに、上記実施例において、硬化部74は、硬化装置の一例である。インクジェットヘッド75は、吐出装置の一例である。紫外線硬化樹脂76は、第1硬化性粘性流体の一例である。金属インク77は、金属粒子を含む流体の一例である。絶縁層86は、硬化層の一例である。金属配線95は、導体の一例である。コントローラ102は、制御装置の一例である。S11は、第1吐出工程の一例である。S13は、平坦化工程の一例である。S15は、第1硬化工程の一例である。S11、S13、S15を繰り返し実行する処理は、硬化層形成工程の一例である。S19の処理は、第2吐出工程の一例である。S23の処理は、第2硬化処理の一例である。S27の処理は、第3吐出工程の一例である。S29の処理は、第3硬化工程の一例である。S21の処理は、加熱工程の一例である。
【0057】
(3.その他)
なお、本開示は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。
本願の第1硬化性粘性流体及び第2硬化性粘性流体は、紫外線硬化樹脂76に限らず、光、熱等により硬化する種々の硬化性粘性流体を採用することが可能である。従って、第1硬化性粘性流体及び第2硬化性粘性流体を硬化させる方法は、紫外線に限らない。
また、第1硬化性粘性流体と第2硬化性粘性流体は、異なる種類の硬化性粘性流体でも良い。
また、本願の金属粒子を含む流体は、銀を含む金属インク77に限らず、他の金属を含む流体を採用することができる。
また、上記実施形態では、検査ユニット24によって平滑面93の面粗度を計測することで、平滑化の度合いを検査したが、検査方法は、これに限らない。例えば、造形装置10は、形成した金属配線95の抵抗値を測定して、平滑化の度合い(造形した金属配線95の良否)を判断しても良い。
また、コントローラ102は、第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱する加熱処理(S21)を実行しなくとも良い。コントローラ102は、第2紫外線硬化樹脂76Aを加熱せずに硬化しても良い。
また、コントローラ102は、S33のその他の処理を実行しなくとも良い。コントローラ102は、例えば、装着ユニット23による電子部品の装着や、検査ユニット24による構造物の検査を実行しなくとも良い。
上記実施形態では、本開示の造形装置として配線基板を製造する造形装置10を採用したが、これに限らない。本開示の製造装置としては、第1硬化性粘性流体及び第2硬化性粘性流体の上に導体を形成する様々な製造装置を採用できる。
また、第2紫外線硬化樹脂76Aと紫外線硬化樹脂76の液滴の大きさは同じでも良い。
【符号の説明】
【0058】
10 造形装置、26 制御装置、102 コントローラ(制御装置)、74 硬化部(硬化装置)、75 インクジェットヘッド(吐出装置)、76 紫外線硬化樹脂(第1硬化性粘性流体)、76A 第2紫外線硬化樹脂(第2硬化性粘性流体)、77 金属インク(金属粒子を含む流体)、78 平坦化装置、86 絶縁層(硬化層)、86A 表面、93 平滑面、95 金属配線(導体)、110 第1吐出部(第1吐出工程)、111 平坦化部(平坦化工程)、112 第1硬化部(第1硬化工程)、113 硬化層形成部(硬化層形成工程)、115 第2吐出部(第2吐出工程)、116 第2硬化部(第2硬化工程)、117 第3吐出部(第3吐出工程)、118 第3硬化部(第3硬化工程)、119 加熱部(加熱工程)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12