(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】積層ユニットの接着方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/46 20060101AFI20230119BHJP
【FI】
H05K3/46 G
H05K3/46 Q
(21)【出願番号】P 2021541350
(86)(22)【出願日】2019-08-19
(86)【国際出願番号】 JP2019032219
(87)【国際公開番号】W WO2021033227
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】110000992
【氏名又は名称】弁理士法人ネクスト
(74)【代理人】
【識別番号】100162237
【氏名又は名称】深津 泰隆
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】榊原 亮
(72)【発明者】
【氏名】富永 亮二郎
【審査官】小林 大介
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-235236(JP,A)
【文献】特開2017-130553(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0042034(US,A1)
【文献】特開2012-243829(JP,A)
【文献】特開2003-017834(JP,A)
【文献】特開2008-159955(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1積層ユニット及び第2積層ユニットを、3次元積層造形により形成する積層ユニット形成工程と、
前記第1積層ユニットの第1接着面と前記第2積層ユニットの第2接着面との間に隙間を設けて、前記第1積層ユニットと前記第2積層ユニットを組み合わせる組立工程と、
前記第1積層ユニットと前記第2積層ユニットを組み合わせた状態で、
組み合わせた積層ユニットの外周面に形成される前記隙間の開口に接着剤を塗布し、前記開口から前記隙間内へ前記接着剤を浸透させ前記第1接着面と前記第2接着面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記第1接着面と前記第2接着面に塗布した前記接着剤に熱を加えることで前記接着剤を硬化させ、前記第1積層ユニットに対して前記第2積層ユニットを固定する硬化工程と、
を含
み、
前記積層ユニット形成工程において、
前記第1接着面又は前記第2接着面を凹ませた溝部を形成し、電子部品を収容する収容部を前記第1積層ユニットに形成し、
前記収容部は、
前記隙間に比べて大きな空間を前記第2接着面との間に形成し、
前記組立工程において、
前記溝部により、前記第1接着面と前記第2接着面の間に前記隙間を形成し、
前記溝部は、
前記接着剤を塗布される前記隙間の開口と、前記収容部を連通する、積層ユニットの接着方法。
【請求項2】
前記積層ユニット形成工程において、
一方向に並ぶ複数の前記溝部を形成し、
複数の前記溝部の各々は、
前記接着剤を塗布される前記隙間の開口と、前記収容部を連通する、請求項1に記載の
積層ユニットの接着方法。
【請求項3】
前記積層ユニット形成工程において、
前記第1積層ユニットに貫通孔を形成し、
前記貫通孔は、
前記収容部における前記電子部品を配置する底部と、前記第1積層ユニットの外部を接続し、
前記組立工程において、
前記貫通孔を通じて前記隙間を前記第1積層ユニットの外部に接続し、
前記隙間は、
前記接着剤を塗布される前記隙間の開口と、前記貫通孔とを連通する、請求項1又は請求項2に記載の積層ユニットの接着方法。
【請求項4】
前記積層ユニット形成工程において、
前記第2接着面に近づく方向へ突出した突部を、前記第1接着面に形成し、
前記組立工程において、
前記突部を前記第2接着面に接触させることで、前記第1接着面と前記第2接着面の間に前記隙間を形成する、請求項1
乃至請求項3の何れか1項に記載の積層ユニットの接着方法。
【請求項5】
前記第1積層ユニットは、
前記第1接着面を有する絶縁層を有し、
前記積層ユニット形成工程は、
硬化性樹脂を吐出する吐出工程と、
前記吐出工程により吐出した前記硬化性樹脂を、平坦化装置により平坦化する平坦化工程と、
前記平坦化工程により平坦化した前記硬化性樹脂を硬化する硬化工程と、を含み、前記吐出工程、前記平坦化工程、前記硬化工程を繰り返し実行し、前記絶縁層を形成し、前記平坦化工程によって前記絶縁層の前記第1接着面に第1凹凸部を形成し、
前記組立工程において、
前記第1接着面に形成した前記第1凹凸部を前記第2接着面に接触させることで、前記第1接着面と前記第2接着面の間に前記隙間を形成する、請求項1乃至請求
項4の何れか1項に記載の積層ユニットの接着方法。
【請求項6】
前記積層ユニット形成工程において、
凹凸を有する粗面フィルムの上に前記第1積層ユニットを形成し、前記粗面フィルムに面した前記第1接着面に第2凹凸部を形成し、
前記組立工程において、
前記第1接着面に形成した前記第2凹凸部を前記第2接着面に接触させることで、前記第1接着面と前記第2接着面の間に前記隙間を形成する、請求項1乃至請求
項5の何れか1項に記載の積層ユニットの接着方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複数の積層ユニットを接着する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、3次元積層造形に関し、種々の技術が提案されている。例えば、下記特許文献1には、3次元積層造形により電子部品や電子回路を含んだ積層ユニットを形成する技術が開示されている。特許文献1に記載された製造方法では、任意の積層ユニットの上に、他の積層ユニットを搭載し、2つの積層ユニットを互いに固定することで、1つの3次元積層電子デバイスを製造している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した2つの積層ユニットを接着剤で固定する場合、例えば、ノズルから積層ユニットの接着面へ接着剤を吐出する方法では、積層ユニットの電子回路などに接着剤が付着する可能性があり、導通不良などが発生する問題がある。そのため、電子回路などへの接着剤の付着を避けるため、積層ユニットの構造などに応じて、接着剤を吐出する位置や塗布する量を細かく調整する必要が生じる。
【0005】
本開示は、上述した点を鑑みてなされたものであり、接着剤が電子回路に付着することを抑制しつつ、積層ユニットの接着面に接着剤を塗布することができる積層ユニットの接着方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書は、第1積層ユニット及び第2積層ユニットを、3次元積層造形により形成する積層ユニット形成工程と、前記第1積層ユニットの第1接着面と前記第2積層ユニット
の第2接着面との間に隙間を設けて、前記第1積層ユニットと前記第2積層ユニットを組み合わせる組立工程と、前記第1積層ユニットと前記第2積層ユニットを組み合わせた状態で、組み合わせた積層ユニットの外周面に形成される前記隙間の開口に接着剤を塗布し、前記開口から前記隙間内へ前記接着剤を浸透させ前記第1接着面と前記第2接着面に前記接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記第1接着面と前記第2接着面に塗布した前記接着剤に熱を加えることで前記接着剤を硬化させ、前記第1積層ユニットに対して前記第2積層ユニットを固定する硬化工程と、を含み、前記積層ユニット形成工程において、前記第1接着面又は前記第2接着面を凹ませた溝部を形成し、電子部品を収容する収容部を前記第1積層ユニットに形成し、前記収容部は、前記隙間に比べて大きな空間を前記第2接着面との間に形成し、前記組立工程において、前記溝部により、前記第1接着面と前記第2接着面の間に前記隙間を形成し、前記溝部は、前記接着剤を塗布される前記隙間の開口と、前記収容部を連通する、積層ユニットの接着方法を開示する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、第1及び第2積層ユニットを組み合わせる際に、2つの積層ユニットの第1及び第2接着面の間に隙間を設けておく。その隙間の開口に接着剤を塗布することで、塗布した接着剤を毛管現象等により隙間内へ浸透させることができる。特に、3次元積層造形では、例えば、数十μmの隙間など、毛管現象を発生させるのに必要な極めて狭い隙間を精度良く容易に形成できる。そして、第1及び第2接着面に接着剤を塗布しておき、その接着剤に熱を加えて硬化させることで、第1積層ユニットに対して第2積層ユニットを固定することができる。これにより、開口から隙間内へ接着剤を浸透させる一方、毛管現象等が作用する隙間内だけで接着剤の進行を止めることができ、第1積層ユニットや第2積層ユニットに設けられた電子回路に接着剤が付着することを抑制し、絶縁不良などの不具合の発生を抑制できる。また、隙間の開口に接着剤を塗布することで、隙間内へ接着剤を浸透させることができるため、接着面へ接着剤を直接塗布等する必要がなくなり、積層ユニットの構造などに応じて、接着剤を塗布する位置や量を細かく調整する必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態に係わる積層ユニット形成装置を示す図である。
【
図2】第1実施形態に係わる制御装置を示すブロック図である。
【
図3】第1実施形態に係わる制御装置を示すブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係わる3次元積層電子デバイスの製造工程の流れを示すフローチャートである。
【
図5】第1実施形態に係わる3次元積層電子デバイスの製造工程を示す断面図である。
【
図6】第1実施形態に係わる3次元積層電子デバイスの製造工程を示す断面図である。
【
図7】第1実施形態に係わる3次元積層電子デバイスを示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係わる組み立て後の積層ユニットに接着剤を塗布する状態を示す図である。
【
図9】第1実施形態に係わる第1積層ユニットの上面を模式的に示す図である。
【
図10】第1実施形態に係わる接着剤が浸透する組み立て後の積層ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【
図11】第1実施形態に係わる3次元積層電子デバイスの断面を模式的に示す断面図である。
【
図12】別例の接着剤塗布ユニットの構成を示す模式図である。
【
図13】別例の第1積層ユニットの上面を模式的に示す図である。
【
図14】第2実施形態に係わる第1積層ユニットの上面を模式的に示す図である。
【
図15】第2実施形態に係わる組み立て後の積層ユニットの断面を模式的に示す断面図である。
【
図16】第3実施形態に係わる製造工程を示す図である。
【
図17】第4実施形態に係わる製造工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の好適な第1実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0010】
(1)積層ユニット形成装置の構成
図1に積層ユニット形成装置10を示す。積層ユニット形成装置10は、搬送装置20と、第1造形ユニット22と、第2造形ユニット24と、装着ユニット26と、第3造形ユニット200と、接着剤塗布ユニット205と、制御装置27(
図2,
図3参照)を備える。それら搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット200、接着剤塗布ユニット205は、積層ユニット形成装置10のベース28の上に配置されている。ベース28は、平面視において概して長方形状をなしている。以下の説明では、ベース28の長手方向をX軸方向、ベース28の短手方向をY軸方向、X軸方向及びY軸方向の両方に直交する方向をZ軸方向と称して説明する。
【0011】
搬送装置20は、X軸スライド機構30と、Y軸スライド機構32とを備えている。そのX軸スライド機構30は、X軸スライドレール34と、X軸スライダ36とを有している。X軸スライドレール34は、X軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。X軸スライダ36は、X軸スライドレール34によって、X軸方向にスライド可能に保持されている。さらに、X軸スライド機構30は、電磁モータ38(
図2参照)を有しており、電磁モータ38の駆動により、X軸スライダ36をX軸方向の任意の位置に移動させる。また、Y軸スライド機構32は、Y軸スライドレール50と、ステージ52とを有している。Y軸スライドレール50は、Y軸方向に延びるように、ベース28の上に配設されている。Y軸スライドレール50の一端部は、X軸スライダ36に連結されている。そのため、Y軸スライドレール50は、X軸方向に移動可能とされている。ステージ52は、Y軸スライドレール50によって、Y軸方向にスライド可能に保持されている。Y軸スライド機構32は、電磁モータ56(
図2参照)を有しており、電磁モータ56の駆動により、ステージ52をY軸方向の任意の位置に移動させる。これにより、ステージ52は、X軸スライド機構30及びY軸スライド機構32の駆動により、ベース28上の任意の位置に移動する。
【0012】
ステージ52は、基台60と、保持装置62と、昇降装置64とを有している。基台60は、平板状に形成され、上面に基材70が載置される。保持装置62は、X軸方向における基台60の両側部に設けられている。保持装置62は、基台60に載置された基材70のX軸方向の両縁部を挟むことで、基台60に対して基材70を固定的に保持する。また、昇降装置64は、基台60の下方に配設されており、基台60をZ軸方向で昇降させる。
【0013】
第1造形ユニット22は、ステージ52の基台60に載置された基材70の上に回路配線を造形するユニットであり、第1印刷部72と、焼成部74とを有している。第1印刷部72は、インクジェットヘッド76(
図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に、導電性インクを線状に吐出する。導電性インクは、例えば、主成分としてナノメートルサイズの金属(銀など)の微粒子を溶媒中に分散させたものを含み、熱により焼成されることで硬化する。金属ナノ粒子の表面は、例えば、分散剤によりコーティングされており、溶媒中での凝集が抑制されている。
【0014】
尚、インクジェットヘッド76は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式によって複数のノズルから導電性インクを吐出する。また、導電性インクを吐出する装置としては、複数のノズルを備えるインクジェットヘッドに限らず、例えば、1つのノズルを備えたディスペンサーでも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類は、銀に限らず、銅、金等でも良い。また、導電性インクに含まれる金属ナノ粒子の種類数は、1種類に限らず、複数種類でも良い。
【0015】
焼成部74は、照射装置78(
図2参照)を有している。照射装置78は、例えば、基材70の上に吐出された導電性インクを加熱する赤外線ヒータを備えている。導電性インクは、赤外線ヒータから熱を付与されることで焼成され、回路配線を形成する。ここでいう導電性インクの焼成とは、例えば、エネルギーを付与することによって、溶媒の気化や金属ナノ粒子の保護膜、つまり、分散剤の分解等が行われ、金属ナノ粒子が接触又は融着することで、導電率が高くなる現象である。そして、導電性インクを焼成することで、回路配線を形成することができる。尚、導電性インクを加熱する装置は、赤外線ヒータに限らない。例えば、積層ユニット形成装置10は、導電性インクを加熱する装置として、赤外線ランプ、レーザ光を導電性インクに照射するレーザ照射装置、あるいは導電性インクを吐出された基材70を炉内に入れて加熱する電気炉を備えても良い。
【0016】
また、第2造形ユニット24は、基台60に載置された基材70の上に絶縁層を造形するユニットであり、第2印刷部84と、硬化部86とを有している。第2印刷部84は、インクジェットヘッド88(
図2参照)を有しており、基台60に載置された基材70の上に紫外線硬化樹脂を吐出する。紫外線硬化樹脂は、紫外線の照射により硬化する樹脂である。尚、インクジェットヘッド88が紫外線硬化樹脂を吐出する方式は、例えば、圧電素子を用いたピエゾ方式でもよく、樹脂を加熱して気泡を発生させ複数のノズルから吐出するサーマル方式でも良い。
【0017】
硬化部86は、平坦化装置90(
図2参照)と、照射装置92(
図2参照)とを有している。平坦化装置90は、インクジェットヘッド88によって基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂の上面を平坦化するものである。平坦化装置90は、例えば、紫外線硬化樹脂の表面を均しながら余剰分の樹脂を、ローラもしくはブレードによって掻き取ることで、紫外線硬化樹脂の厚みを均一にさせる。また、照射装置92は、光源として水銀ランプもしくはLEDを備えており、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、基材70の上に吐出された紫外線硬化樹脂が硬化し、絶縁層を形成することができる。
【0018】
また、装着ユニット26は、基台60に載置された基材70の上に、電子部品やプローブピンを装着するユニットであり、供給部100と、装着部102とを有している。供給部100は、テーピング化された電子部品を1つずつ送り出すテープフィーダ110(
図2参照)を複数有しており、各供給位置において、電子部品を供給する。さらに、供給部100は、プローブピンが立った状態で並べられたトレイ201(
図2参照)を有しており、トレイ201からピックアップされることが可能な状態でプローブピンを供給する。電子部品は、例えば、温度センサ等のセンサ素子である。また、プローブピンは、1つの積層ユニットの電子回路と、他の積層ユニットの電子回路とを電気的に接続する部材である。プローブピンとしては、軸方向へストローク可能なものが好ましい。ここでいう積層ユニットとは、後述するように、積層ユニット形成装置10によって形成するユニットであって、電子回路を有する3次元積層電子デバイスを複数に分割したユニットである。
【0019】
尚、プローブピンは、軸方向にストロークしない(変位しない)構成でも良い。また、電子部品の供給は、テープフィーダ110による供給に限らず、トレイによる供給でも良い。また、プローブピンの供給は、トレイ201による供給に限らず、テープフィーダによる供給でも良い。また、電子部品とプローブピンの供給は、テープフィーダによる供給とトレイによる供給との両方、あるいはそれ以外の供給でも良い。
【0020】
装着部102は、装着ヘッド112(
図2参照)と、移動装置114(
図2参照)とを有している。装着ヘッド112は、電子部品、又はプローブピンを吸着保持するための吸着ノズルを有している。吸着ノズルは、正負圧供給装置(図示省略)から負圧が供給されることで、エアの吸引により電子部品等を吸着保持する。そして、正負圧供給装置から僅かな正圧が供給されることで、電子部品等を離脱する。また、移動装置114は、テープフィーダ110の供給位置又はトレイ201と、基台60に載置された基材70との間で、装着ヘッド112を移動させる。これにより、装着部102は、吸着ノズルにより電子部品等を保持し、吸着ノズルによって保持した電子部品等を、基材70の上に配置する。
【0021】
また、第3造形ユニット200は、基台60に載置された基材70の上に、導電性ペーストを塗布するユニットである。導電性ペーストは、例えば、マイクロサイズの金属粒子(マイクロフィラなど)を、樹脂製の接着剤に含めた粘性流体である。マイクロサイズの金属マイクロ粒子は、例えば、フレーク状態の金属(銀など)である。金属マイクロ粒子は、銀に限らず、金、銅などや複数種類の金属でも良い。接着剤は、例えば、エポキシ系の樹脂を主成分として含んでいる。導電性ペーストは、加熱により硬化し、例えば、回路配線に接続される接続端子の形成に使用される。接続端子とは、後述するように、電子部品の部品端子に接続する接続端子(バンプ)、外部機器などに接続する電極パッド(露出パッドなど)、プローブピンの接触箇所に設けられるピン端子、積層方向に回路配線を導通させるスルーホールなどである。
【0022】
また、第3造形ユニット200は、導電性ペーストを吐出(塗布)する装置としてディスペンサー202を有する。尚、導電性ペーストを塗布する装置は、ディスペンサーに限らず、スクリーン印刷装置やグラビア印刷装置でも良い。
【0023】
ディスペンサー202は、絶縁層の貫通孔内や絶縁層の表面等に導電性ペーストを吐出する。貫通孔に充填された導電性ペーストは、例えば、第1造形ユニット22の焼成部74によって加熱され硬化することで接続端子やスルーホールを形成する。また、絶縁層の表面に塗布された導電性ペーストは、例えば、焼成部74によって加熱され硬化することで、接続端子等を形成する。
【0024】
導電性ペーストは、加熱されることで接着剤(樹脂など)が硬化し、フレーク状の金属同士が接触した状態で硬化する。導電性ペーストを硬化する方法は、加熱による方法に限らず、接着剤として紫外線硬化樹脂を用いて紫外線により硬化する方法でも良い。
【0025】
また、接着剤塗布ユニット205は、積層ユニットに接着剤を塗布するユニットである。接着剤は、例えば、エポキシ系の樹脂を主成分として有する熱硬化性の樹脂である。接着剤の硬化温度は、電子回路(電子部品や回路配線)を保護する観点では、例えば、80℃以下の温度が好ましい。
【0026】
接着剤塗布ユニット205は、接着剤を貯留する浴槽206と、複数の積層ユニットを組み合わせたものを把持するロボットアーム207と、を備えている。接着剤塗布ユニット205は、ロボットアーム207によって把持した積層ユニットを、浴槽206に浸すことで積層ユニットに接着剤を塗布する。本実施形態の積層ユニット形成装置10は、任意の積層ユニットの接着面と、他の積層ユニットの接着面との間に隙間を形成する。これにより、毛管現象により積層ユニットの間に接着剤を浸透させる。そして、積層ユニット形成装置10は、浸透させた接着剤に熱を加えて硬化することで、複数の積層ユニットを互いに固定し、所望の構造を有する3次元積層電子デバイスを製造する。
【0027】
また、制御装置27は、
図2及び
図3に示すように、コントローラ120と、複数の駆動回路122と、記憶装置124とを備えている。複数の駆動回路122は、
図2に示すように、上記電磁モータ38,56、保持装置62、昇降装置64、インクジェットヘッド76、照射装置78、インクジェットヘッド88、平坦化装置90、照射装置92、テープフィーダ110、装着ヘッド112、移動装置114に接続されている。さらに、複数の駆動回路122は、
図3に示すように、第3造形ユニット200、ロボットアーム207に接続されている。コントローラ120は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、複数の駆動回路122に接続されている。記憶装置124は、RAM、ROM、ハードディスク等を備えており、積層ユニット形成装置10の制御を行う制御プログラム126が記憶されている。コントローラ120は、制御プログラム126をCPUで実行することで、搬送装置20、第1造形ユニット22、第2造形ユニット24、装着ユニット26、第3造形ユニット200、接着剤塗布ユニット205等の動作を制御可能となっている。以下の説明では、コントローラ120が、制御プログラム126を実行して各装置を制御することを、単に「装置が」と記載する場合がある。例えば、「コントローラ120がステージ52を移動させる」とは、「コントローラ120が、制御プログラム126を実行し、駆動回路122を介して搬送装置20の動作を制御して、搬送装置20の動作によってステージ52を移動させる」ことを意味している。
【0028】
(2)3次元積層電子デバイスの製造方法
本実施形態の積層ユニット形成装置10は、上記した構成によって、回路配線、接続端子、電子部品、及びプローブピンなどを含んだ積層ユニットを複数造形し、複数の積層ユニットを組み立てることで3次元積層電子デバイスを製造する。詳述すると、
図4は、3次元積層電子デバイスの製造工程の流れを示すフローチャートである。
図5及び
図6は、3次元積層電子デバイスの製造工程を示す断面図である。
図7は、3次元積層電子デバイス150を示す断面図である。尚、
図5及び
図6に示す製造工程や3次元積層電子デバイス150(積層ユニットの数や構造)は、一例である。一例として、
図7に示すように、第1積層ユニット218A、第2積層ユニット218B、第3積層ユニット218Cの3つの積層ユニット218を積層した3次元積層電子デバイス150を製造する場合について説明する。第1~第3積層ユニット218A~218Cは、例えば、円板形状をなしている。3次元積層電子デバイス150は、第1~第3積層ユニット218A~218Cを積み上げた円柱形状をなしている。
【0029】
図4に示すように、3次元積層造形による3次元積層電子デバイス150の製造工程130は、積層ユニット形成工程P10と、組立工程P12と、接着剤塗布工程P13と、硬化工程P15とを含んでいる。積層ユニット形成工程P10では、上記した積層ユニット形成装置10によって、基材70の上に、第1~第3積層ユニット218A,218B,218Cを形成する。これに対して、組立工程P12、接着剤塗布工程P13、硬化工程P15では、第1~第3積層ユニット218A,218B,218Cを上下方向に積み上げた後、積み上げた第1~第3積層ユニット218A,218B,218Cを接着剤で固定することによって、3次元積層電子デバイス150(
図7参照)を製造する。尚、以下の説明において、第1~第3積層ユニット218A~218Cを区別せずに総称する場合は、積層ユニット218と表記する。
【0030】
コントローラ120は、制御プログラム126を実行し積層ユニット形成装置10の各装置を制御することで、積層ユニット形成工程P10を実行する。積層ユニット形成工程P10は、絶縁層形成処理S10と、回路配線形成処理S20と、接続端子形成処理S30と、実装処理S40とを有している。尚、上記の各処理S10,S20,S30,S40の実行順序は、3次元積層電子デバイス150(つまり、第1~第3積層ユニット218A~218C)の積層構造等によって決定される。そのため、上記の各処理S10,S20,S30,S40は、それらの表記順で繰り返されるものでない。
【0031】
例えば、ユーザが、ステージ52の基台60に基材70をセットし、積層ユニット形成装置10に対して
図4に示す製造工程130の開始を指示する。また、
図5に示すように、基材70の上には、例えば、熱を加えることによって剥離する剥離フィルム71が貼り付けられている。コントローラ120は、剥離フィルム71の上に各積層ユニット218を形成する。後述するように、この剥離フィルム71を、造形後に加熱することで、各積層ユニット218を基材70から剥離することができる。尚、基材70のステージ52へのセットや剥離フィルム71の基材70への貼り付けは、積層ユニット形成装置10が自動で実行しても良い。例えば、積層ユニット形成装置10は、接着剤塗布ユニット205のロボットアーム207により基材70のセットや剥離フィルム71の貼り付けを行なっても良い。また、基材70のセットや剥離フィルム71の貼り付けは、人が手作業で行なっても良い。
【0032】
コントローラ120は、
図4に示す絶縁層形成処理S10を実行する場合、基材70がセットされたステージ52を第2造形ユニット24の下方に移動させる。
図4に示すように、絶縁層形成処理S10は、吐出処理S11、平坦化処理S13、及び硬化処理S15を含んでいる。コントローラ120は、吐出処理S11において、第2造形ユニット24を制御し、インクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を基材70の上に薄膜状に吐出する。続いて、コントローラ120は、平坦化処理S13において、硬化部86の平坦化装置90を制御し、基材70の上に吐出した紫外線硬化樹脂を、ローラなどにより膜厚が均一となるように平坦化する。続いて、コントローラ120は、硬化処理S15において、硬化部86の照射装置92を制御し、平坦化された紫外線硬化樹脂に紫外線を照射する。これにより、紫外線硬化樹脂が硬化する。コントローラ120は、紫外線硬化樹脂の吐出処理S11、平坦化処理S13、硬化処理S15を繰り返して、各積層ユニット218の絶縁層220を基材70上に形成する(
図5参照)。
【0033】
また、コントローラ120は、絶縁層形成処理S10において、電子部品96(
図5参照)を収容する収容部222、プローブピン99(
図5参照)を挿入するピン挿入孔223を形成する。収容部222は、例えば、下方に向かって絶縁層220を凹ませた凹部である。ピン挿入孔223は、例えば、上下方向に沿って形成された円筒形状の穴である。コントローラ120は、例えば、収容部222やピン挿入孔223の位置に合わせて、インクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂を吐出するのを停止し、絶縁層220に対して凹部や穴を形成して収容部222やピン挿入孔223を形成する。
【0034】
また、コントローラ120は、回路配線形成処理S20を実行する場合、ステージ52を第1造形ユニット22の下方に移動させる。コントローラ120は、第1造形ユニット22を制御し、インクジェットヘッド76から導電性インクを、剥離フィルム71の上、絶縁層220の上面、接続端子の上などに吐出し、吐出した導電性インクを照射装置78で加熱することで、回路配線225(
図5参照)を形成する。
【0035】
また、コントローラ120は、接続端子形成処理S30を実行する場合、ステージ52を第3造形ユニット200の下方に移動させる。コントローラ120は、第3造形ユニット200を制御して、ディスペンサー202から導電性ペーストを、剥離フィルム71の上、絶縁層220の上面、回路配線225の上、収容部222の底部、ピン挿入孔223の底部などに吐出する。コントローラ120は、吐出した導電性ペーストを、第1造形ユニット22の照射装置78で加熱することで、接続端子227(
図5参照)を形成する。
【0036】
例えば、
図5に示すように、コントローラ120は、接続端子227として、部品接続端子227A、ピン端子227B、電極パッド227Cを形成する。部品接続端子227Aは、例えば、電子部品96の部品端子96Aと接続される接続端子227である。また、ピン端子227Bは、例えば、プローブピン99の下端と接続される接続端子227である。電極パッド227Cは、例えば、各積層ユニット218の電子回路をプローブピン99の上端に電気的に接続するためや、3次元積層電子デバイス150を外部機器と接続するための接続端子227である。コントローラ120は、プローブピン99に接続する電極パッド227Cを絶縁層220の下面から露出するように形成する場合、例えば、先に貫通孔を有する絶縁層220を形成しておき、絶縁層220の貫通孔に導電性ペーストを吐出(充填)して下面から露出する電極パッド227Cを形成する。あるいは、コントローラ120は、先に電極パッド227Cを剥離フィルム71上に形成してから、電極パッド227Cの周りを絶縁層220で埋めても良い。各接続端子227は、回路配線225によって電気的に接続され、電子回路を構成している。尚、本開示における電子回路とは、例えば、上記した電子部品96、回路配線225、接続端子227、プローブピン99等を接続した回路の一部又は全体を意味している。
【0037】
コントローラ120は、上記した絶縁層形成処理S10で形成する絶縁層220、回路配線形成処理S20で形成する回路配線225、接続端子形成処理S30で形成する接続端子227のそれぞれの形状、位置、数等を適宜変更して第1~第3積層ユニット218A~218Cを基材70(剥離フィルム71)上にまとめて造形する。尚、コントローラ120は、第1~第3積層ユニット218A~218Cをまとめて基材70上に形成しなくとも良い。また、コントローラ120は、4つ以上の積層ユニット218をまとめて基材70上に形成しても良い。
【0038】
また、コントローラ120は、積層ユニット218を造形する過程で、実装処理S40を適宜実行する。
図5に示すように、コントローラ120は、装着ユニット26を制御して、電子部品96を収容部222に配置する。また、コントローラ120は、装着ユニット26を制御して、プローブピン99をピン挿入孔223内に配置する。制御プログラム126には、例えば、3次元積層電子デバイス150(各積層ユニット218)をスライスした各層の三次元のデータが設定されている。コントローラ120は、制御プログラム126のデータに基づいて、回路配線形成処理S20等の各製造工程を実行し積層ユニット218を形成する。また、コントローラ120は、制御プログラム126のデータに基づいて、電子部品96やプローブピン99を配置する層や位置等の情報を検出し、検出した情報に基づいて電子部品96やプローブピン99を各積層ユニット218に配置する。
【0039】
コントローラ120は、例えば、第3造形ユニット200を制御して導電性ペーストを吐出した後、装着ユニット26を制御して電子部品96の部品端子96Aが導電性ペーストに接触するように、電子部品96を収容部222に配置する。コントローラ120は、電子部品96を配置した後、導電性ペーストを硬化することで部品接続端子227Aと部品端子96Aを接続し、絶縁層220に対して電子部品96を固定する。尚、コントローラ120は、電子部品96を配置した後に、電子部品96の部品端子96Aの上に導電性ペーストを吐出して硬化して部品接続端子227Aを形成しても良い。
【0040】
また、
図5に示すように、コントローラ120は、例えば、第3造形ユニット200を制御して、ピン挿入孔223の底部に導電性ペーストを吐出する。コントローラ120は、第1造形ユニット22の照射装置78により導電性ペーストを硬化することで、ピン挿入孔223の底部にピン端子227Bを形成する。コントローラ120は、装着ユニット26を制御し、プローブピン99の下端が硬化したピン端子227Bに接触するように、プローブピン99をピン挿入孔223内に配置する。このようにして所望の構造の各積層ユニット218を3次元積層造形により造形する。
【0041】
次に、コントローラ120は、組立工程P12において、上記した積層ユニット218の組み立てを行なう。コントローラ120は、基材70上の剥離フィルム71を加熱し、剥離フィルム71(基材70)と各積層ユニット218とを分離する。積層ユニット形成装置10は、第1造形ユニット22の焼成部74により剥離フィルム71を加熱して、各積層ユニット218を基材70(剥離フィルム71)から剥離する。尚、剥離フィルム71を加熱する方法は、焼成部74を用いる方法に限らない。例えば、積層ユニット形成装置10は、電気炉を備え、基材70を電気炉内に入れて剥離フィルム71を加熱して各積層ユニット218を剥離フィルム71から分離しても良い。あるいは、積層ユニット形成装置10は、赤外線ランプ等で基材70に直接熱を加えて基材70を温めることで、剥離フィルム71を剥離しても良い。また、基材70と積層ユニット218の分離方法は、剥離フィルム71を用いる方法に限らない。例えば、基材70と積層ユニット218との間に、熱によって溶ける部材(サポート材など)を配置し、その部材を溶かして分離しても良い。また、基材70の上に剥離フィルム71を貼り付けずに、基材70の上に積層ユニット218を直接造形しても良い。即ち、剥離フィルム71を用いなくとも良い。
【0042】
そして、
図6に示すように、組立工程P12において、最下層の第1積層ユニット218Aの上に、中間の第2積層ユニット218Bを搭載し、第2積層ユニット218Bの上に第3積層ユニット218Cを搭載する。複数の積層ユニット218を積み上げて組み立てる作業は、積層ユニット形成装置10が自動で実行する。例えば、コントローラ120は、焼成部74を制御して剥離フィルム71を加熱した後、接着剤塗布ユニット205のロボットアーム207を制御して、剥離フィルム71から各積層ユニット218を剥がす。コントローラ120は、ロボットアーム207を制御して、例えば、第1~第3積層ユニット218A~218Cを順番に剥離フィルム71から剥離し、作業台の上に積み上げて組み立てる。尚、基材70と、各積層ユニット218の分離や、各積層ユニット218を組み立てる作業は、人が手作業で行なっても良い。
【0043】
コントローラ120は、ロボットアーム207により第1~第3積層ユニット218A~218Cを組み立てると、接着剤塗布工程P13を実行し、組み立てた第1~第3積層ユニット218A~218Cに接着剤を塗布する。尚、以下の説明では、組み立てた第1~第3積層ユニット218A~218Cを、組み立て後の積層ユニット218と称して説明する。
図8は、組み立て後の積層ユニット218に接着剤を塗布する状態を示している。
図8に示すように、接着剤塗布ユニット205のロボットアーム207は、例えば、組み立て後の積層ユニット218を、積層方向(
図6における上下方向)の両側から挟んで固定する。
【0044】
接着剤塗布ユニット205の浴槽206内には、接着剤231が貯留されている。ここで、本実施形態の積層ユニット形成装置10は、
図6に示すように、各積層ユニット218の上面233と、下面234を接触させて1つの3次元積層電子デバイス150を組み立てる。この際に、上面233と下面234との間に隙間が形成されるように、積層ユニット形成装置10は、各積層ユニット218の上面233に溝部235(
図8参照)を、3次元積層造形により形成する。これにより、
図8に示すように、組み立て後の積層ユニット218を接着剤231に浸した際に、毛管現象により、浴槽206に貯留された接着剤231を溝部235に浸透させることができる。
【0045】
詳述すると、
図9は、第1積層ユニット218Aの上面233を模式的に示している。
図10は、接着剤231が浸透する組み立て後の積層ユニット218の断面を模式的に示している。
図9は、
図10に示す組み立て後の積層ユニット218を、一点鎖線で示すA-A線において、矢印の向きで見た上面を示している。尚、
図9及び
図10は、図面が繁雑となるのを避けるため、組み立て後の積層ユニット218を簡略化して図示している。また、
図9は、溝部235の形状を分かり易く示すため、溝部235を実際の大きさよりも大きく図示している。
【0046】
また、以下の説明では、第1積層ユニット218Aの上面233について主に説明するが、第2積層ユニット218Bの上面233についても同様に溝部235を形成することができる。また、溝部235を形成する面は、上面233に限らず、下面234でも良い。また、溝部235を上面233と下面234の両方に形成しても良い。従って、溝部235は、複数の積層ユニット218を組み立てる際に、任意の積層ユニット218と、他の積層ユニット218を接着する様々な接着面に設けることができる。
【0047】
図9に示すように、溝部235は、円形をなす上面233において、例えば、直径方向と平行な方向へ複数個形成されている。溝部235の深さは、例えば、20μm~150μmが好ましい。この溝部235の深さは、上面233と下面234とを接触させた際に、溝部235によって形成される隙間の幅と略同一である。溝部235の幅は、例えば、溝部235の深さと同程度となっている。溝部235は、ピン挿入孔223や収容部222と接続されている。溝部235は、第1積層ユニット218Aの収容部222と、第2積層ユニット218Bの下面234で形成される空間(
図10参照)に接続されている。また、溝部235は、第1積層ユニット218Aのピン挿入孔223と、第2積層ユニット218Bの下面234で形成される空間(
図10参照)に接続されている。
図10に示すように、組み立て後の積層ユニット218では、上面233と下面234の間に、溝部235によって隙間が形成される。組み立て後の積層ユニット218の側面237には、隙間の開口235Aが開口している。
【0048】
図8に示すように、接着剤塗布ユニット205のロボットアーム207は、組み立て後の積層ユニット218の側面237を浴槽206に浸す。ロボットアーム207は、例えば、数mm~数cmほどの深さまで第1~第3積層ユニット218A~218Cを浸し、その状態を一定時間だけ維持する。接着剤231は、毛管現象により溝部235の開口235Aから溝部235のより奥へと浸透していく。従って、側面237の開口235Aを、浴槽206へ浸す時間は、接着剤231が、溝部235内へ浸透するのに必要な時間である。尚、各積層ユニット218に接着剤231を塗布する作業は、人が手作業で行なっても良い。
【0049】
図11は、3次元積層電子デバイス150の断面図、即ち、接着剤231を硬化した後の断面図を示してる。
図11の拡大図で示すように、隙間内へ浸透した接着剤231は、収容部222やピン挿入孔223で形成される空間、即ち、溝部235で形成される隙間に比べて広い空間と接続される部分において進行を停止し、硬化している。これは、狭い溝部235内を進行していた接着剤231の進行が、広い空間に接続される部分で接着剤231の表面張力によって抑制されるためである。
【0050】
従って、本実施形態の製造工程130では、積層ユニット形成工程P10において、電子部品96を収容する収容部222を第1積層ユニット218Aに形成する。この収容部222は、隙間に比べて大きな空間を下面234との間に形成する。これによれば、隙間(溝部235)内へ浸透してきた接着剤231が、隙間から収容部222内へ移動しようとしても、接着剤231の表面張力等により収容部222への進行が抑制される。従って、収容部222内の電子部品96への接着剤231の付着を抑制できる。
【0051】
上記したように、接着剤231の進行は、収容部222やピン挿入孔223によって抑制される。このため、溝部235は、収容部222やピン挿入孔223と接続される位置であっても形成できる、即ち、3次元積層電子デバイス150のデザインに係わらず設けることができる。換言すれば、接着強度を向上できるより良い位置があれば、その位置に溝部235を設け、上面233を下面234に強固に固定できる。
【0052】
また、
図9に示す例では、
図9における右側の開口235Aから接着剤231を浸透させても、収容部222によって進行を抑制され、
図9における左側の溝部235内へは接着剤231が進行しない。そこで、ロボットアーム207は、
図8に矢印で示すように、側面237の一部を接着剤231に浸して一定時間だけ経過した後、他の溝部235の開口235Aを浴槽206に浸すために、組み立て後の積層ユニット218を回転させる。ロボットアーム207は、接着剤231に面する側面237(開口235A)を変更して、別の開口235A(例えば、
図9の左側の溝部235の開口235A)から接着剤231を浸透させる。
【0053】
また、
図10及び
図11に示す例では、溝部235内へ進行する接着剤231が、組み立て後の積層ユニット218の間を埋める。このような構成では、開口235Aから内部へ進行する接着剤231によって、溝部235内や収容部222内等の空気の逃げ場がなくなり、接着剤231の進行が妨げられる可能性がある。そこで、
図10及び
図11に示すように、コントローラ120は、開口235Aに対して溝部235の内側(奥側)となる位置に、空気の抜け穴として貫通孔239を形成する。貫通孔239は、例えば、収容部222、ピン挿入孔223の上部に相当する位置や底部に相当する位置に形成される。この場合、貫通孔239は、収容部222やピン挿入孔223の内部空間を、組み立て後の積層ユニット218の外部と接続する。コントローラ120は、例えば、
図4に示す絶縁層形成処理S10において、紫外線硬化樹脂の吐出を所定位置で停めるなどして、貫通孔239を積層ユニット218の所望の位置に形成することができる。
【0054】
従って、本開示の製造工程130では、積層ユニット形成工程P10の絶縁層形成処理S10において、第1積層ユニット218Aに貫通孔239を形成する。組立工程P12において、その貫通孔239を通じて隙間(溝部235)を第1積層ユニット218Aの外部に接続する。これによれば、第1積層ユニット218Aに貫通孔239を形成し、第1及び第2積層ユニット218A,218Bを組み立てた際に、この貫通孔239を通じて隙間を外部に接続する。これにより、接着剤塗布工程P13において隙間の開口235Aに接着剤231を塗布し、開口235Aを接着剤231で閉じたとしても、隙間内の空気が貫通孔239から外へ出て行くことで、接着剤231を隙間内へ円滑に浸透させることができる。このため、接着剤231を塗布する位置を細かく調整する必要がなくなり、接着剤塗布工程P13におけるコントローラ120の処理内容を簡素化できる。
【0055】
また、積層ユニット形成工程P10の絶縁層形成処理S10において、下面234から離れる方向へ上面233を凹ませた溝部235を、第1積層ユニット218Aに形成する。そして、組立工程P12において、溝部235により、上面233と下面234の間に隙間を形成する。これによれば、積層ユニット形成工程P10において、3次元積層造形により溝部235を形成し、その溝部235により上面233及び下面234を離して隙間を形成することができる。これにより、3次元積層造形により、所望の位置、幅、深さ等の溝部235をデザインすることができ、接着剤231を塗布する位置や塗布量を変更することができる。
【0056】
次に、
図4に示すように、コントローラ120は、接着剤塗布工程P13を実行して組み立て後の積層ユニット218に接着剤231を塗布すると、硬化工程P15を実行して接着剤231を硬化させる。例えば、
図8に示すように、ロボットアーム207は、積層ユニット218に面する部分に加熱装置としてヒータ241を備える。ロボットアーム207は、例えば、1つの側面237を接着剤231に浸して溝部235内に接着剤231を浸透させた後、組み立て後の積層ユニット218を浴槽206から引き上げる。ロボットアーム207は、組み立て後の積層ユニット218を回転させて接着剤231が充填された溝部235の開口235Aを上方に向ける。これにより、接着剤231は、毛管現象に加え、重力によっても溝部235の奥へ浸透して行く。そして、ロボットアーム207は、ヒータ241により組み立て後の積層ユニット218を加熱する。これにより、溝部235内に充填された接着剤231が硬化し、上面233と下面234を接着される。
【0057】
ロボットアーム207は、加熱した後、一定時間だけ経過し、組み立て後の積層ユニット218が冷えた後、再度、別の開口235A(接着剤231が浸透していない溝部235の開口235A)を浴槽206に浸し、接着剤231を浸透させた後、引き上げた後にヒータ241で加熱する。これにより、第1~第3積層ユニット218A~218Cが互いに接着され固定されることで、3次元積層電子デバイス150が形成される。ロボットアーム207は、例えば、組立工程P12で加熱して浮かせた剥離フィルム71を基材70から取り除き、接着剤231を硬化した3次元積層電子デバイス150、即ち、完成後の接着剤231を基材70に載置する。コントローラ120は、基材70を外部に搬出することで、完成した3次元積層電子デバイス150をユーザに受け渡すことができる。
【0058】
尚、接着剤231を硬化する手段や手順は、上記したヒータ241を用いる方法に限らない。例えば、コントローラ120は、ロボットアーム207を制御して、接着剤231を溝部235に充填した後、組み立て後の積層ユニット218を第1造形ユニット22まで運んで、焼成部74により組み立て後の積層ユニット218を加熱しても良い。この場合、ロボットアーム207は、ヒータ241を備えなくとも良い。あるいは、接着剤231の加熱を、人がヒータなどを用いて手作業で実施しても良い。このようにして本実施形態の積層ユニット形成装置10は、
図4に示す製造工程130を実行することで、各積層ユニット218を接着剤231で固定し、3次元積層電子デバイス150を製造することができる。
【0059】
また、組み立て後の積層ユニット218に接着剤231を塗布する方法は、
図8に示す浴槽206に浸す方法に限らない。
図12は、別例の接着剤塗布ユニット205の構成を示している。
図12に示すように、接着剤塗布ユニット205は、一対のアーム243と、接着剤231を吐出するノズル245とを備える構成でも良い。接着剤塗布ユニット205は、例えば、一対のアーム243によって組み立て後の積層ユニット218を積層方向の両側から挟み、接着剤231を導入したい溝部235の開口235Aを上面に向ける。接着剤塗布ユニット205は、ノズル245から開口235Aへ接着剤231を吐出することで、接着剤231を溝部235内へ浸透させる。この場合、接着剤231を、毛管現象に加え、重力によっても溝部235の奥へ浸透させることができる。
【0060】
また、
図9に示す溝部235の数、形状等は、一例である。
図13は、別例の第1積層ユニット218Aの上面233を模式的に示す図である。
図13に示すように、溝部235は、上面233の平面方向の幅を広げ、
図9に示す複数の溝部235を1つにまとめた構成でも良い。この場合にも、溝部235の深さ(
図13の紙面直交方向の高さ)を、例えば、数μm~数百μmにすることで、毛管現象により接着剤を溝部235内へ浸透させることができる。
【0061】
(3)第2実施形態
次に、本開示の第2実施形態について説明する。
図14は、第2実施形態に係わる第1積層ユニット218Aの上面233を模式的に示す図である。
図15は、第2実施形態に係わる組み立て後の積層ユニット218の断面を模式的に示す断面図である。上記した第1実施形態では、3次元積層造形により溝部235を形成し、上面233を下面234から離間する方向へ凹ませた。これに対し、第2実施形態では、上面233に突部247を形成することで隙間を形成する。以下の説明では、上記した第1実施形態と同様の構成については、同一符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0062】
詳述すると、コントローラ120は、
図4の絶縁層形成処理S10において、例えば、紫外線硬化樹脂を吐出して積層し、突部247を上面233に形成する。例えば、第1積層ユニット218Aの上面233に形成された突部247は、第2積層ユニット218Bの下面234と接触し、第1積層ユニット218Aの上面233と第2積層ユニット218Bの下面234との間に隙間を形成する。同様に、第2積層ユニット218Bの上面233の突部247は、第3積層ユニット218Cの下面234との間に隙間を形成する。このため、突部247の高さ(突出量)は、例えば、20μm~150μmが好ましい。突部247の数は、特に限定されないが、離れた位置に複数個設けることで、より均等な幅の隙間を形成することができる。
【0063】
また、
図14に示すように、突部247を上面233の中央や外周部分に分散して設けることで、上面233と下面234との間に、1つの連続した隙間を形成することができる。これにより、側面237の一方側の開口235Aから接着剤231を浸透させることで、隙間の全体、即ち、上面233及び下面234の全体へ接着剤231を塗布することができる。また、側面237の一方側の開口235Aを接着剤231で塞いだとしても、他の側面の開口235Aから隙間内の空気を吐き出すことができる。このため、
図11に示す貫通孔239を設けなくとも、隙間内の空気を抜き、毛管現象により接着剤231を隙間内へ円滑に進入させることができる。
【0064】
従って、第2実施形態の製造工程130では、積層ユニット形成工程P10の絶縁層形成処理S10において、下面234に近づく方向(
図15では上方)へ突出した突部247を、上面233に形成する。また、組立工程P12において、突部247を下面234に接触させることで、上面233と下面234の間に隙間を形成する。これによれば、3次元積層造形により上面233に突部247を形成し、その突部247を下面234に接触させることで上面233及び下面234を離して隙間を形成することができる。これにより、3次元積層造形により、所望の位置、高さ、数等の突部247をデザインすることができ、接着剤231を塗布する位置や塗布量を変更することができる。
【0065】
尚、第2実施形態において、
図11に示す空気の抜け穴用の貫通孔239を、積層ユニット218に設けても良い。また、突部247を、下面234に設けても良い。また、突部247を、上面233と下面234の両方に設けても良い。また、第1実施形態と第2実施形態とを組み合わせて、溝部235と突部247の両方を、積層ユニット218に形成しても良い。
【0066】
(4)第3実施形態
次に、本開示の第3実施形態について説明する。
図16は、第3実施形態に係わる製造工程を示す図である。尚、図面が繁雑となるのを避けるため、
図16では、第3積層ユニット218Cの図示を省略している。第3実施形態では、
図4に示す平坦化処理S13により、隙間を形成する。詳述すると、
図16に示すように、製造工程130(
図4参照)の吐出処理S11では、第1積層ユニット218Aの絶縁層220(
図7参照)を形成する際に、第2造形ユニット24のインクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂の液滴249を吐出する。次に、平坦化処理S13において、例えば、平坦化装置90のローラによって、吐出した液滴249で形成された凹凸を均して平坦化する。
【0067】
この平坦化処理S13では、平坦化装置90によって平坦化する頻度、平坦化装置90の構造、平坦化装置90から液滴249へ付与する荷重、平坦化装置90の移動速度など、様々な条件によって、平坦化処理S13の精度(水平な平面を形成できる精度)が異なってくる。このため、吐出処理S11、平坦化処理S13、硬化処理S15を繰り返して実行した第1積層ユニット218Aの上面233には、平坦化処理S13の精度に応じた凹凸(以下、第1凹凸部251という)が形成される。第1凹凸部251は、例えば、
図16に示すように、波を打ったような湾曲した上面233を形成する。第1凹凸部251の高低差は、例えば、1μm~10μmである。組立工程P12において、任意の積層ユニット218の上面233は、他の積層ユニット218の下面234に第1凹凸部251を接触させることで、第1凹凸部251の高低差に応じた隙間を下面234との間に形成する。第3実施形態では、このような平坦化処理S13で形成した第1凹凸部251を利用して隙間を形成し、毛管現象により隙間内へ接着剤231を浸透させ、接着を行なう。
【0068】
従って、第3実施形態では、第1積層ユニット218Aは、上面233を有する絶縁層220を有する。積層ユニット形成工程P10の絶縁層形成処理S10は、紫外線硬化樹脂(硬化性樹脂の一例)を吐出する吐出処理S11と、吐出処理S11により吐出した紫外線硬化樹脂を、平坦化装置90により平坦化する平坦化処理S13と、平坦化処理S13により平坦化した紫外線硬化樹脂を硬化する硬化処理S15と、を含む。製造工程130は、吐出処理S11、平坦化処理S13、硬化処理S15を繰り返し実行し、絶縁層220を形成し、平坦化処理S13によって絶縁層220の上面233に第1凹凸部251を形成する。そして、組立工程P12において、上面233に形成した第1凹凸部251を下面234に接触させることで隙間を形成する。
【0069】
3次元積層造形において吐出した紫外線硬化樹脂をローラやスキージにより平坦化すると、吐出された紫外線硬化樹脂の液滴249が一定量平坦化される一方、平坦化の精度に応じた凹凸が形成される。そこで、この平坦化によって形成される第1凹凸部251を意図的に形成しておき、その第1凹凸部251を利用して上面233及び下面234を離して隙間を形成することができる。これにより、平坦化によって形成される凹凸の大きさ、高低差等により、接着剤231を塗布する位置や塗布量を変更することができる。
【0070】
尚、
図16では、図示を省略しているが、第3実施形態において、
図11に示す空気の抜け穴用の貫通孔239を、各積層ユニット218に設けても良い。また、第1実施形態の溝部235、及び第2実施形態の突部247の少なくとも一方と、平坦化処理S13による第1凹凸部251を組み合わせて隙間を形成しても良い。また、第1実施形態、第2実施形態、後述する第4実施形態において、平坦化処理S13を実行しなくとも良い。
【0071】
(5)第4実施形態
次に、本開示の第4実施形態について説明する。
図17は、第4実施形態に係わる製造工程を示す図である。第4実施形態では、剥離フィルム71として粗面フィルムを用いることで、隙間を形成する。詳述すると、
図17に示す粗面フィルム253の上面には、微細な凹凸255が形成されている。粗面フィルム253の表面粗さRzは、例えば、1.2μm~8.0μmである。粗面フィルム253は、例えば、銅箔を主成分として含むフィルムであり、熱を加えることで基材70から剥離する。尚、粗面フィルム253は、銅箔フィルムに限らず、樹脂性のフィルムにブラスト加工を施して、表面を粗くしたものでも良い。また、フィルム状の部材を用いずに、表面の粗い金属板等を用いても良い。
【0072】
詳述すると、
図17に示すように、製造工程130(
図4参照)の吐出処理S11では、第1積層ユニット218Aの絶縁層220(
図7参照)を形成する際に、第2造形ユニット24のインクジェットヘッド88から紫外線硬化樹脂の液滴249を、粗面フィルム253の上に吐出する。コントローラ120は、吐出処理S11、平坦化処理S13、硬化処理S15(
図4参照)を繰り返し実行し、粗面フィルム253上に第1積層ユニット218Aの絶縁層220を形成する。これにより、第1積層ユニット218Aの粗面フィルム253に面する面には、粗面フィルム253の凹凸255に応じた第2凹凸部257が形成される。
【0073】
第4実施形態では、例えば、組立工程P12において、この粗面フィルム253に面する面を、第1積層ユニット218Aの上面233として、第2積層ユニット218Bの下面234と接触させる。これにより、第2凹凸部257を下面234に接触させることで、上面233と下面234との間に、第2凹凸部257の高さ等に応じた隙間を形成することができる。尚、図面が繁雑となるのを避けるため、
図17は、第3積層ユニット218Cの図示を省略している。
【0074】
従って、第4実施形態では、絶縁層形成処理S10において、凹凸255を有する粗面フィルム253の上に第1積層ユニット218Aを形成し、粗面フィルム253に面した上面233に第2凹凸部257を形成する。組立工程P12において、上面233に形成した第2凹凸部257を下面234に接触させることで、上面233と下面234の間に隙間を形成する。
【0075】
表面が粗い粗面フィルム253の上に、3次元積層造形によって第1積層ユニット218Aを形成すると、粗面フィルム253に面した面に、粗面フィルム253の粗さに応じた第2凹凸部257を形成することができる。そこで、この粗面フィルム253によって形成される第2凹凸部257を意図的に形成しておき、その第2凹凸部257を利用して上面233及び下面234を離して隙間を形成することができる。これにより、粗面フィルム253によって形成される凹凸の大きさ、高低差等により、接着剤231を塗布する位置や塗布量を変更することができる。
【0076】
尚、
図17では、図示を省略しているが、第4実施形態において、
図11に示す空気の抜け穴用の貫通孔239を、各積層ユニット218に設けても良い。また、第1実施形態の溝部235、第2実施形態の突部247、第3実施形態の第1凹凸部251の少なくとも1つと、第4実施形態の第2凹凸部257を組み合わせて隙間を形成しても良い。例えば、中間の第2積層ユニット218Bを、粗面フィルム253の上に形成し、下面234に第2凹凸部257を形成し、第2積層ユニット218Bの上面を平坦化装置90で均して第1凹凸部251を形成しても良い。これにより、第2積層ユニット218Bに対する加工のみで、第2積層ユニット218Bと第1積層ユニット218Aの間の隙間、第2積層ユニット218Bと第3積層ユニット218Cの間の隙間を形成することができる。
【0077】
(6)まとめ
以上詳細に説明したように、上記各実施形態の積層ユニット218の製造工程130は、積層ユニット形成工程P10、組立工程P12、接着剤塗布工程P13、硬化工程P15を含む。積層ユニット形成工程P10では、第1積層ユニット218A及び第2積層ユニット218Bを、3次元積層造形により形成する。組立工程P12では、第1積層ユニット218Aの上面233と第2積層ユニット218Bの下面234との間に隙間を設けて、第1積層ユニット218Aと第2積層ユニット218Bを組み合わせる。接着剤塗布工程P13では、第1積層ユニット218Aと第2積層ユニット218Bを組み合わせた状態で、隙間の開口235Aに接着剤231を塗布し、開口235Aから隙間内へ接着剤231を浸透させ上面233と下面234に接着剤231を塗布する。硬化工程P15は、上面233と下面234に塗布した接着剤231に熱を加えることで接着剤231を硬化させ、第1積層ユニット218Aに対して第2積層ユニット218Bを固定する。
【0078】
これによれば、第1及び第2積層ユニット218A,218Bを組み合わせる際に、上面233及び下面234の間に隙間を設けておく。その隙間の開口235Aに接着剤231を塗布することで、塗布した接着剤231を毛管現象等により隙間内へ浸透させることができる。特に、3次元積層造形では、例えば、数十μmの隙間など、毛管現象を発生させるのに必要な極めて狭い隙間を精度良く容易に形成できる。そして、上面233及び下面234に接着剤231を塗布しておき、その接着剤231に熱を加えて硬化させることで、第1積層ユニット218Aに対して第2積層ユニット218Bを固定することができる。これにより、開口235Aから隙間内へ接着剤231を浸透させる一方、毛管現象等が作用する隙間内だけで接着剤231の進行を止めることができ、第1積層ユニット218Aや第2積層ユニット218Bに設けられた電子回路(電子部品96、プローブピン99、回路配線225、接続端子227など)に接着剤231が付着することを抑制し、絶縁不良などの不具合の発生を抑制できる。また、隙間の開口235Aに接着剤231を塗布することで、隙間内へ接着剤231を浸透させることができるため、接着面(上面233及び下面234)へ接着剤231を直接塗布等する必要がなくなり、積層ユニット218の構造などに応じて、接着剤231を塗布する位置や量を細かく調整する必要がなくなる。尚、本開示の電子回路とは、例えば、電子部品96、電子部品96等に接続される接続端子227、接続端子227を他の接続端子227等に接続する回路配線225、回路配線225を他の回路配線225に接続するスルーホール、積層ユニット218間を接続するプローブピン99など、積層ユニット218内で電気的に接続された回路を構成する各部材を少なくとも1つ含む概念である。
【0079】
因みに、上記各実施形態において、上面233は、第1接触面の一例である。下面234は、第2接触面の一例である。吐出処理S11は、吐出工程の一例である。平坦化処理S13は、平坦化工程の一例である。硬化処理S15は、硬化工程の一例である。
【0080】
(7)変更例
尚、本開示は上記各実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
例えば、隙間を形成する方法は、上記した第1~第4実施形態に示す方法に限らない。例えば、上面233と下面234の間に、金属のスペーサを配置して隙間を形成しても良い。
また、本開示における第1及び第2接触面は、上面233や下面234など、方向によって規定されるものではなく、2つの積層ユニット218を接着する面である。従って、第1積層ユニット218Aと第2積層ユニット218Bを左右方向で接着する場合、例えば、第1積層ユニット218Aの右側面が第1接着面となり、第2積層ユニット218Bの左側面が第2接触面となる。
また、上記各実施形態では、上面233を、第1接触面として採用したが、下面234を第1接触面として採用しても良い。即ち、下面234に、溝部235、突部247、第1凹凸部251、第2凹凸部257の少なくとも1つを形成しても良い。
また、本開示の硬化性樹脂は、紫外線硬化樹脂に限らず、例えば、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂でも良い。
また、積層ユニット218は、電子部品96を収容する収容部222やプローブピン99を収容するピン挿入孔223を備えなくとも良い。例えば、積層ユニット218は、隙間より薄い電子部品96や短いプローブピン99を上面233に表面実装しても良い。
上記した積層ユニット形成装置10の構成は一例であり、適宜変更可能である。例えば、積層ユニット形成装置10は、電子部品96を装着するための装着ユニット26を備えなくとも良い。
また、本開示の3次元積層造形法としては、インクジェット法以外に、例えば、熱溶解積層法などを採用できる。
【符号の説明】
【0081】
10 積層ユニット形成装置
90 平坦化装置
96 電子部品
130 製造工程
218A 第1積層ユニット
218B 第2積層ユニット
220 絶縁層
222 収容部
231 接着剤
233 上面(第1接触面)
234 下面(第2接触面)
235 溝部
235A 開口
239 貫通孔
247 突部
251 第1凹凸部
253 粗面フィルム
257 第2凹凸部
P10 積層ユニット形成工程
P12 組立工程
P13 接着剤塗布工程
P15 硬化工程
S11 吐出処理(吐出工程)
S13 平坦化処理(平坦化工程)
S15 硬化処理(硬化工程)