(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】中継通信における通信経路の管理のための第1の中継装置、通信方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 40/24 20090101AFI20230119BHJP
H04W 92/20 20090101ALI20230119BHJP
H04W 16/32 20090101ALI20230119BHJP
H04M 3/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
H04W40/24
H04W92/20 110
H04W16/32
H04M3/00 D
(21)【出願番号】P 2022030144
(22)【出願日】2022-02-28
(62)【分割の表示】P 2018054512の分割
【原出願日】2018-03-22
【審査請求日】2022-03-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000208891
【氏名又は名称】KDDI株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武田 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】邵 校
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康友
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸吾
【審査官】石田 信行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-212714(JP,A)
【文献】特開2017-092823(JP,A)
【文献】特開2015-222922(JP,A)
【文献】特開2011-254132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00 - 99/00
H04B 7/24 - 7/26
H04M 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御装置と、第1の中継装置と、第2の中継装置とを含む無線通信システムにおける前記第1の中継装置であって、
前記第1の中継装置および前記第2の中継装置が前記制御装置によって実行される通信に係る通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、前記第1の中継装置が前記通信リンクのうち前記制御装置と前記第2の中継装置との間の通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、
前記第1の中継装置は、前記通信リンクにおける前記制御装置と前記第1の中継装置との間の少なくとも一部の区間の切断を検出したことを示す情報を、前記第2の中継装置へ送信する、ことを特徴とする第1の中継装置。
【請求項2】
前記
第1の中継装置は、前記情報を、前記通信リンクと異なる無線通信回線により、前記制御装置へ送信することを特徴とする請求項1に記載の第1の中継装置。
【請求項3】
前記
第1の中継装置は、前記制御装置から、前記通信リンクと異なる無線通信回線により、前記通信リンクにおける切断を検出した前記区間の前記通信リンクの再構築を指示する信号を受信することを特徴とする請求項2に記載の第1の中継装置。
【請求項4】
前記
第2の中継装置は、前記第1の中継装置から受信した前記情報を前記第1の中継装置とは異なる他の中継装置へ送信する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の第1の中継装置。
【請求項5】
制御装置と、第1の中継装置と、第2の中継装置とを含む無線通信システムにおける前記第1の中継装置によって実行される通信方法であって、
前記第1の中継装置および前記第2の中継装置が前記制御装置によって実行される通信に係る通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、前記第1の中継装置が前記通信リンクのうち前記制御装置と前記第2の中継装置との間の通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、
前記通信方法は、前記第1の中継装置が、前記通信リンクにおける前記制御装置と前記第1の中継装置との間の少なくとも一部の区間の切断を検出したことを示す情報を、前記第2の中継装置へ送信することを含む、ことを特徴とする通信方法。
【請求項6】
コンピュータを、請求項1から4のいずれか1項に記載の第1の中継装置として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中継通信における通信経路の管理技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第3世代パートナーシッププロジェクト(3GPP)において、基地局装置と遠方の端末との間の通信を可能とするための中継通信技術が議論されている(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】3GPP TR 36.806、V9.0.0、2010年3月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の中継装置を含み、複数の無線リンクの区間を含んだ通信経路を用いて中継通信が行われることが想定される。このような中継通信では、一部の区間が切断された場合に、その区間の無線リンクを形成している通信装置(基地局装置または中継装置)は、その切断を認識することができるが、通信経路上の他の通信装置がこの切断を認識することができない。このため、通信経路の一部の区間が切断されているにもかかわらず、その切断を認識できない通信装置が中継通信を試行して、無線リソースや消費電力が浪費されてしまいうる。また、通信経路の管理を行う制御装置がこの切断を認識できないと、通信経路の再構成を行うこともできず、通信ができない時間が長期化してしまいうる。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、中継通信における通信経路の状態を適切に管理するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様による第1の中継装置は、制御装置と、第1の中継装置と、第2の中継装置とを含む無線通信システムにおける前記第1の中継装置であって、前記第1の中継装置および前記第2の中継装置が前記制御装置によって実行される通信に係る通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、前記第1の中継装置が前記通信リンクのうち前記制御装置と前記第2の中継装置との間の通信リンクの少なくとも一部の間の中継を行い、前記第1の中継装置は、前記通信リンクにおける前記制御装置と前記第1の中継装置との間の少なくとも一部の区間の切断を検出したことを示す情報を、前記第2の中継装置へ送信する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中継通信における通信経路の状態を適切に管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】中継伝送を伴う無線通信システムの構成例を示す図である。
【
図2】制御装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】無線通信システムで実行される処理の流れの例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0010】
(システム構成)
図1は、本実施形態に係る無線通信システムの構成例を示している。本無線通信システムは、基地局装置101と、複数の中継装置102~104、及び端末装置105を含んで構成される。
図1の例では、基地局装置101と端末装置105との間の通信が、中継装置102~104によって中継される。なお、
図1は一例であり、例えば、基地局装置101と端末装置105との間で通信を中継する中継装置の数は3つに限られない。また、
図1では、基地局装置101と端末装置105との間の通信リンクのみを図解しているが、複数の端末装置に対してそれぞれ別個の通信リンクが設定されうる。本実施形態では、基地局装置101を頂点とするツリー型のネットワークトポロジが用いられるものとする。なお、通信リンクを構成する複数の区間111は、例えば第5世代のセルラ通信方式(NR、New Radio)によって形成されるものとする。なお、各中継装置と基地局装置101との間には、中継に関する通信リンクとは別に、例えばロングタームエボリューション(LTE)による無線通信回線112が利用可能である。例えば、各中継装置は、LTEによる無線通信回線112を介して、基地局装置101との間で制御通信を行い、NRを用いてユーザデータの伝送を行うように構成されうる。
【0011】
ここで、中継装置102と中継装置103との間の区間の無線リンクが意図せず切断された場合に、基地局装置101や中継装置104がその切断を認識することができない。このため、中継装置102と中継装置103との間の区間の無線リンクが切断されているにもかかわらず、中継装置104が端末装置105からのデータの中継を継続し、又は、基地局装置101が端末装置105宛てのデータを中継装置102に対して送信し続けてしまいうる。
図1のようなツリー型のネットワークトポロジが用いられる場合、切断された区間を迂回する通信経路が設定されていないため、基地局装置101と端末装置105との間の通信が切断されてしまう。そして、基地局装置101は、例えば、端末装置105からの確認応答を受信できないことを以て通信リンクのいずれかの区間が切断されたことを認識することとなる。これによれば、切断の認識に時間がかかるのに加え、通信リンクのどこの区間が切断されたかを基地局装置101が認識することができない。これに対して、例えば、中継装置103が、中継装置104に対して、中継装置102との間の通信区間が切断されたことを通知し、中継装置102がその通信区間が切断されたことを基地局装置101に通知しうる。しかしながら、この場合、例えば、中継装置104からさらに不図示の複数の中継装置による中継経路が構成される場合、それらの中継装置に対して中継装置102と中継装置103との間の区間の切断を順次通知しなければならなくなる。また、切断されたのが基地局装置101から離れた区間である場合、その切断の通知を基地局装置101まで届かせるために、多数の区間において、切断を通知する無線信号を送信しなければならなくなる。すなわち、中継による通信リンクの一部の区間が切断された場合に、その切断を通信リンクに沿って通知していくと、多くの区間でそれぞれ別個に設定された無線リソースが使用されることとなり、無線リソースの浪費につながる場合がある。また、通信リンクに沿った通知は、通信リンクの長さが長くなるほど、その通知が完了するまでの時間が長期化してしまいうる。
【0012】
このため、本実施形態では、例えば、中継装置102と中継装置103との間の通信区間の無線リンクが切断された場合に、中継装置103がその切断を検出したことを示す情報を、LTEの無線通信回線112を用いて基地局装置101へ通知する。すなわち、基地局装置101と端末装置105との間の中継による通信リンクの一部の区間が切断された場合、その区間の通信を行う中継装置のうち基地局装置101から見て下流側の中継装置が、基地局装置101との間で直接通信することができる無線通信回線を用いて、その切断を基地局装置101へ通知する。なお、基地局装置101から見て上流側の中継装置(例えば中継装置102)が基地局装置101に対してこの通知を行ってもよい。基地局装置101は、この通知を受信すると、通知の送信元の中継装置より下流側の中継装置に対して、LTEの無線通信回線112を用いて、その中継装置の上流側の通信区間の無線リンクが切断されたことを通知する。このとき、切断された区間より下流側の区間で中継動作を実行している中継装置が複数存在する場合、それらの中継装置に対して一斉に切断の通知を行ってもよい。これにより、中継による通信リンクによって順次切断の通知を行う場合と比して、無線リソースの浪費の抑制や通知の完了までの時間の短縮を図ることができる。
【0013】
また、基地局装置101は、中継装置から切断の通知を受信した場合に、その通知に含められた又はその通知と別個に通知された切断の理由を受信しうる。これによれば、基地局装置101は、切断の理由に応じて、端末装置105との間の通信リンクの維持のための様々な制御を実行することができる。
【0014】
例えば、基地局装置101は、通知された理由が、切断された区間の無線リンクの無線品質の劣化である場合、その区間の無線リンクを形成していた中継装置に対して、信号の送信電力を上げてその区間の無線リンクの再確立を行うための指示信号を送信しうる。すなわち、基地局装置101は、中継装置から無線品質の劣化が原因でその中継装置が確立していた通信区間の無線リンクが切断したことの通知を受信すると、その中継装置と、その通信区間における中継装置の相手装置との少なくともいずれかに対して、送信電力を上げて無線リンクを再確立することを指示する指示信号を送信しうる。送信電力を上げることにより無線品質の劣化が改善されることによって切断された区間の通信リンクが再確立された場合、それまでに確立されていた基地局装置101と端末装置105との間の通信リンクを維持することができる。
【0015】
また、基地局装置101は、通知された理由が、切断された区間の無線リンクの無線品質の劣化である場合、その区間の無線リンクを形成していた中継装置に対して、使用周波数又は通信タイミングを変更してその区間の無線リンクの再確立を行うための指示信号を送信しうる。すなわち、切断された区間において通信に使用されていた周波数チャネルやタイムスロットで干渉や周波数選択性の伝送路の影響によって無線品質が劣化していた場合に、使用周波数や通信タイミングを変更することによって無線品質が改善する場合がある。このため、基地局装置101は、切断された通信区間の無線リンクを構成していた中継装置及びその相手装置の少なくともいずれかに、使用周波数や通信タイミングを変更してその通信区間の無線リンクの再確立の試行を指示する。このような使用周波数や通信タイミングの変更により、無線品質の劣化が改善され、切断された区間の無線リンクが再確立された場合、それまでに確立されていた基地局装置101と端末装置105との間の通信リンクを維持することができる。
【0016】
なお、基地局装置101は、無線リンクが切断された際にその無線リンクの切断理由と共にその切断の際の使用周波数又は通信タイミングを示す情報を、その切断された無線リンクを構成していた中継装置から受信しうる。そして、基地局装置101は、切断理由が無線品質の劣化である場合に、この切断の際の使用周波数又は通信タイミングと異なる周波数又はタイミングを用いて無線リンクを再確立することを指示する指示信号を、切断された通信区間の無線リンクを構成していた中継装置及びその相手装置の少なくともいずれかに送信しうる。これによれば、基地局装置101は、切断された通信区間の周囲の他の無線リンクで使用されていない周波数や通信タイミングを指定することができ、無線リンクの再確立が成功する確率を向上させることができる。
【0017】
一方、基地局装置101は、中継装置から通知された無線リンクの切断の理由が、その無線リンクをその中継装置と共に確立していた相手装置の故障である場合、その相手装置を含まずに端末装置105との間の通信リンクを構築するための指示を、中継装置へ送信しうる。中継装置は、この指示を受信すると、例えば、周囲の中継装置との間の無線品質を測定して接続先を探索しうる。なお、基地局装置101は、この指示に、中継装置の周囲に存在する他の中継装置の情報を含めて送信しうる。なお、基地局装置101は、中継装置の周囲に存在する他の中継装置のうち、基地局装置101との間の通信区間におけるホップ数(中継される回数)が所定数以下の装置の情報を送信しうる。ここでの所定数は、例えば、基地局装置101から切断された区間までのホップ数に対応する数でありうる。これによれば、切り替え後の通信リンクのホップ数が多くなりすぎることを防ぐことができる。中継装置は、周囲の他の中継装置の情報を受信した場合、その情報で示される他の中継装置の中から、無線品質が良好な他の中継装置を探索し、発見された他の中継装置との間で無線リンクを確立して、通信リンクを再構築しうる。
【0018】
なお、基地局装置101は、例えば、通信リンクを構成する複数の中継装置の全てに対して、通信リンクの再構築を行わせるための指示信号を送信しうる。基地局装置101は、例えば、通信リンクに含まれる区間のうちの所定数以上の区間の無線リンクが切断した場合に、このような通信リンクの再構築を行うための指示信号を送信しうる。これによれば、通信リンクの一部のみを改善するだけでは十分でない場合や、通信リンクの一部経路を他の経路に切り替えた場合に通信品質が劣化する場合などに、通信リンクをリセットして再構築することで、最適化された通信リンクを構成することができるようになる。なお、この場合、基地局装置101は、全ての中継装置から周囲の他の中継装置または基地局装置101との間の無線品質の報告を受けて、基地局装置101が構成すべき通信リンク(通信経路)を決定しうる。このとき、基地局装置101は、各中継装置についての位置情報と通信能力の情報を事前に取得しておき、通信リンクを構成する中継装置をその情報に基づいて選択し、選択された中継装置に対して通信リンクの再構築を行わせるための指示信号を送信しうる。例えば、基地局装置101は、各中継装置に対して、その装置が接続すべき相手装置の情報を通知しうる。この場合、中継装置が通知された相手装置との間で無線リンクを確立することで、基地局装置101から端末装置105までの通信リンクが再構築される。なお、通信能力の情報は対応周波数と対応通信方式との少なくともいずれかを含みうる。例えば、対応周波数が多いほど周囲の他の装置との間の干渉を抑制可能であるということができ、その中継装置が構成した無線リンクの無線品質が劣化した場合の無線品質の改善が可能であると言える。また、対応通信方式によって、他の装置との接続を確立することができるか否か、又は、高速通信に対応可能であるかを判定することができる。基地局装置101は、これらの情報に基づいて、適切に中継による通信リンクを確立することができるようになる。
【0019】
基地局装置101は、通信リンクの再構築を行う場合、再構築を行うタイミングの情報をさらに送信しうる。これによれば、各中継装置が別個のタイミングで通信リンクを切り替える動作を行うことによって、各区間における2つの装置が互いに共通のタイミングで無線リンクの確立処理を実行することができ、通信リンクの再構築を確実に行うことができる。また、このような共通のタイミングを用いることにより、一部区間が再構築後の通信リンクに対応し、その他の区間が再構築前の通信リンクに対応するような事象を防ぐことができる。
【0020】
なお、本実施形態では、基地局装置101が、基地局装置101と端末装置105との間の通信のための通信リンクを管理する制御装置として動作するが、これに限られない。例えば、基地局装置101と有線接続可能なネットワークノード等が、基地局装置101と端末装置105との間の通信リンクを管理する制御装置として機能してもよい。
【0021】
以下では、このような基地局装置101(制御装置)及び中継装置の構成例と、これらの装置によって実行される処理の流れの例について説明する。
【0022】
(ハードウェア構成)
図2に、基地局装置101及び中継装置102~104のハードウェア構成例を示す。基地局装置101及び中継装置102~104は、一例において、
図2に示すようなハードウェア構成を有し、例えば、CPU201、ROM202、RAM203、外部記憶装置204、及び通信回路205を有する。基地局装置101及び中継装置102~104では、例えばROM202、RAM203及び外部記憶装置204のいずれかに記録された、上述のような基地局装置101及び中継装置102~104の各機能を実現するプログラムがCPU201により実行される。
【0023】
そして、基地局装置101及び中継装置102~104は、例えばCPU201により通信回路205を制御して、他の装置と通信を行う。なお、基地局装置101の通信回路205は、例えば、有線回線を通じて、他の基地局装置や他のネットワークノード(例えば、外部の処理装置131)と通信を行うことができる。また、基地局装置101の通信回路205は、1つ以上(複数)のビームを形成して中継装置102~104との間で、LTEやNRによる無線通信を行うことができる。基地局装置101は、いずれかの中継装置(
図1の例では中継装置102)とNR及びLTEの両方で接続し、その中継装置による中継を含んで形成される通信リンクの一部区間の中継を行う他の中継装置との間でLTEにより接続を確立しうる。すなわち、基地局装置101は、中継による通信リンクの最初の1ホップ目の中継装置との間では、LTEでの直接接続と共にNRでの直接接続を確立し、2ホップ目以降の中継装置との間では、LTEでの直接接続と、NRでの中継リンクによる間接的な接続を確立する。なお、
図2の構成において、基地局装置101及び中継装置102~104は、1つの通信回路205を有するような概略図を示しているが、複数の通信回路を有してもよい。例えば、基地局装置101は、有線通信のための第1の通信回路と、NRでの無線通信のための第2の通信回路と、LTEでの無線通信のための第3の通信回路とを有しうる。また、中継装置102~104は、例えば、NR用の第1の通信回路と、LTE用の第2の通信回路とを有してもよい。
【0024】
なお、基地局装置101及び中継装置102~104は、各機能を実行する専用のハードウェアを備えてもよいし、一部をハードウェアで実行し、プログラムを動作させるコンピュータでその他の部分を実行してもよい。また、全機能がコンピュータとプログラムにより実行されてもよい。
【0025】
(機能構成)
図3に、基地局装置101の機能構成例を示す。基地局装置101は、例えば、第1通信部301、第2通信部302、及び通信リンク管理制御部303を有する。第1通信部301は、例えばNR規格に準拠した無線通信プロトコルで無線通信を行う。第2通信部302は、例えばLTE規格に準拠した無線通信プロトコルで無線通信を行う。通信リンク管理制御部303は、第1通信部301による通信に用いられる1つ以上の中継装置を含んで形成された中継リンクの管理と制御とを、第2通信部302を用いて行う。
【0026】
通信リンク管理制御部303は、例えば、通信リンクが形成された際に、その中継リンクを構成する中継装置の情報を記憶して管理する。例えば、通信リンク管理制御部303は、1つの通信リンクが1つ以上の中継装置によって構成された際に、その通信リンクを識別する情報と中継装置を識別する情報とを対応付けて記憶しうる。また、通信リンク管理制御部303は、例えば、中継リンクの少なくとも一部の区間の無線リンクが切断された場合に、その無線リンクを確立していた中継装置から、切断が検出されたことの通知を、第2通信部302を介して受信する。通信リンク管理制御部303は、無線リンクの切断が検出されたことの通知を受信すると、それに応じて、その無線リンクを含んだ中継リンクでの通信を抑制するように第1通信部301を制御しうる。例えば、通信リンク管理制御部303は、切断された無線リンクよりも下流側の中継装置に接続されている端末装置宛てのデータの送信を停止するように第1通信部301を制御する。例えば、通信リンク管理制御部303は、通信リンクの確立時に記憶した通信リンクを構成する中継装置の情報に基づいて、切断された無線リンクよりも下流側の中継装置と、その中継装置に接続中の端末装置を特定して、特定された端末装置宛ての信号を第1通信部301で送信しないようにしうる。
【0027】
また、通信リンク管理制御部303は、無線リンクの切断が検出されたことの通知を受信すると、その通知と共に又はその通知と別の信号によって、切断の理由を示す情報を、第2通信部302を介して受信しうる。そして、通信リンク管理制御部303は、その受信した理由に応じて、通信リンクを維持又は再構築するための指示信号を、第2通信部302を介して送信してもよい。なお、このとき、通信リンク管理制御部303は、通信リンクの確立時に記憶した通信リンクを構成する中継装置の情報に基づいて、例えば、通知の送信元と共に切断された無線リンクを構築していた中継装置など、指示信号を送信すべき対象の中継装置を特定しうる。通信リンク管理制御部303は、例えば、切断の理由が無線品質の劣化である場合、送信電力の増加や、使用周波数又は通信タイミングの変更を行って無線リンクを再確立することを指示して、確立されていた通信リンクを維持するようにする。このとき、通信リンク管理制御部303は、切断時に使用されていた周波数やタイムスロットと異なる周波数やタイムスロットを、使用すべき周波数やタイムスロットとして指定する情報を含んだ指示信号を生成して送信するようにしてもよい。この場合、通信リンク管理制御部303は、例えば無線リンクが確立された時点で又はその無線リンクが切断された際に、切断された無線リンクで切断時に使用されていた周波数やタイムスロットの情報を取得してもよい。また、通信リンク管理制御部303は、切断理由が中継装置の故障である場合は、その中継装置を含まないように通信リンクの再構築を行うようにしてもよい。さらに、通信リンク管理制御部303は、通信リンクのうちの所定数以上の区間が切断されたこと等に応じて、通信リンクを形成する全ての中継装置に対して通信リンクの再構築を行わせるための指示を、第2通信部302を介して送信してもよい。例えば、通信リンク管理制御部303は、通信リンクの確立時に記憶した情報に基づいて通信リンクを構成する中継装置を特定し、その特定された中継装置の全てに対して通信リンクの再構築を行わせるための指示を送信しうる。このとき、通信リンク管理制御部303は、通信リンクを再構築するタイミングの情報を、第2通信部302を介して送信しうる。また、通信リンク管理制御部303は、複数の中継装置のそれぞれについての位置情報と通信能力の情報を事前に収集しておき、その情報に基づいて、再構築後の通信リンクを形成する中継装置を選択し、それらの中継装置に対して通信リンクの再構築の指示信号を送信するようにしうる。なお、通信能力は、例えば対応周波数と対応通信方式との少なくともいずれかを含みうる。これにより、複数の中継装置の位置や能力に基づいて、適切に通信リンクの再構築を行うことが可能となる。
【0028】
続いて、
図4に、中継装置102~104の機能構成例を示す。各中継装置は、一例において、第1通信部401、第2通信部402、切断検出部403、及び切断理由判定部404を有する。第1通信部401は、例えばNR規格に準拠した無線通信プロトコルで無線通信を行う。第1通信部401は、例えば、中継による通信リンクにおいて、基地局装置101側(上流側)の装置(基地局装置101又は他の中継装置)との間の無線リンクを確立しながら、通信リンクの末端でない限りにおいて基地局装置101と反対側の中継装置との間の無線リンクを確立して、通信の中継を行う。また、第1通信部401は、端末装置105との間で通信を行いうる。第2通信部402は、例えばLTE規格に準拠した無線通信プロトコルで、基地局装置101と無線通信を行う。切断検出部403は、例えば、中継による通信リンクにおいて自装置が確立した無線リンクのうち、上流側の無線リンクが切断された場合にその検出を行う。なお、切断検出部403は、下流側の無線リンクの切断を検出してもよい。切断検出部403は、切断を検出すると、無線リンクが切断されたことを、第2通信部402を介して基地局装置101へ通知する。なお、切断検出部403は、下流側の無線リンクの切断を検出した場合には、第1通信部401を用いて通信リンクの切断されていない区間を介して基地局装置101へ通知してもよい。切断理由判定部404は、自装置と他の装置との間で確立された無線リンクが切断された場合に、その無線リンクが切断された理由を判定し、無線リンクが切断されたことの通知に含めて、又は無線リンクが切断されたことの通知とは別個の信号によって、その判定結果を基地局装置101へ通知しうる。なお、切断検出部403又は切断理由判定部404は、切断時に使用されていた周波数やタイムスロットの情報を基地局装置101に通知してもよい。また、第2通信部402は、第1通信部401の対応周波数や対応通信方式等の情報を基地局装置101に通知してもよい。
【0029】
(処理の流れ)
続いて、
図1の無線通信システムにおいて実行される処理の流れの例について、
図5を用いて説明する。なお、
図5の処理例は一例であり、これらの処理の一部のみが実行されてもよいし、これらの処理に加えて他の処理が追加的に実行されてもよく、また、処理の順序が入れ替えられてもよい。また、
図5では、中継通信にNR規格に準拠する通信方式が用いられるものとし、各中継装置と基地局装置101とを直接接続するためのNR規格と異なる無線通信回線は、LTE規格に準拠する通信方式で確立されているものとする。なお、
図5において、括弧書きで示される「NR」及び「LTE」は、その信号がNRとLTEとのいずれかの無線通信回線で送受信されるかを示している。
【0030】
まず、基地局装置101と端末装置105との間で通信可能となるように、NRを用いた中継通信リンクが確立される(S501)。S501の処理は、例えば、端末装置105宛てのデータが基地局装置101において発生した場合や、端末装置105から例えばLTE回線を用いて基地局装置101へのアクセスがあった場合に実行されうる。また、S501の処理は、予め実行されていてもよい。すなわち、例えば発生するトラフィック量の地理的分布と中継装置の位置の分布等に基づいてNRによる中継通信リンクがS501のようにして予め設定されうる。そして、各中継装置(この場合は中継装置104)のサービスエリア内に端末装置105が進入したことに少なくとも基づいて、基地局装置101と端末装置105との中継通信リンクを用いた通信リンクが確立されてもよい。NRを用いた中継通信リンクが確立されると、基地局装置101と端末装置105との間ではデータの送受信を行うことができる(S502)。
【0031】
その後、例えば、中継通信リンクのうち、中継装置102と中継装置103との間の無線リンクが切断されたものとする(S503)。すると、中継装置103は、この無線リンクの切断を検出し、LTEによって切断が検出されたことを基地局装置101へ通知する(S504)。そして、基地局装置101は、中継通信リンクのうち、中継装置102及び中継装置103より下流側の中継装置104に対して、LTEによって中継通信リンクが上流側で切断したことを通知する(S505)。これにより、基地局装置101及び下流側の中継装置104は、中継通信リンクがその時点において使用できない状態であることを知ることができる。このため、基地局装置101は、例えば端末装置105に対して送信すべきデータが存在する場合などに、NRを用いずに、LTEを用いてデータを送信しうる(不図示)。なお、中継装置102が無線リンクの切断を検出して、基地局装置101にその切断を通知してもよい。この場合、中継装置102は、LTEによって切断が検出されたことを基地局装置101へ通知してもよいし、LTEに代えてNRを用いてもよい。中継装置102は、中継通信リンクにおいて、切断された無線リンクを構築する2つの中継装置のうちの基地局装置101側の中継装置であるため、NRによって基地局装置101に情報を送信することができるからである。
【0032】
なお、中継装置103(中継装置102)は、S504の切断の通知と共に又はこの通知とは別個に、切断の理由を基地局装置101に通知しうる(S506)。なお、中継装置103(中継装置102)は、例えばS504又はS506のタイミングで切断時の使用周波数と使用タイムスロットとの少なくともいずれかを基地局装置101に通知しうる。なお、例えばS501の中継通信リンクの確立時に、これらの情報が各中継装置から基地局装置101に通知されてもよい。基地局装置101は、この切断の理由を受信すると、その理由に応じた再確立指示を中継装置102及び中継装置103へ送信する(S507)。各理由に応じた再確立指示は上述の通りであるため、ここでは説明しない。中継装置102及び中継装置103は、その後に、NRによる無線リンクの再確立を行う(S508)。この無線リンクの再確立により、基地局装置101と端末装置105との間のNRによる通信が可能となる。なお、例えば中継装置102が故障している場合などでは、基地局装置101は、中継装置103に対して、中継装置102とは異なる中継装置を介して又は直接、基地局装置101との間の通信リンクを確立するための指示信号を送信しうる。この場合、中継装置103は、例えば、基地局装置101に直接的又は間接的に接続されている他の中継装置または基地局装置101との間で無線リンクを確立する。これにより、基地局装置101は、中継装置102を含まない通信リンクによって端末装置105との間でのNRによる通信を行うことができるようになる。なお、以下では、中継装置102と中継装置103との間の無線リンクが再確立されたものとする。
【0033】
その後、中継装置102と中継装置103との間の無線リンクの切断と、中継装置103と中継装置104との間の無線リンクの切断とが併発したものとする(S509)。すると、例えばそれぞれの無線リンクにおける下流側の中継装置(中継装置103及び中継装置104)が、無線リンクが切断されたことの通知をLTEで基地局装置101へ送信する(S510)。本例では、中継装置104より下流側の中継装置が存在しないため、下流側の中継装置への基地局装置101による切断の通知は行われない。基地局装置101は、所定数(例えば2)以上の無線リンクが切断されたことに応じて、通信リンクの再確立を行うことを決定する。このとき、基地局装置101は、例えば、各中継装置の位置や通信能力等の情報に基づいて、どのようなトポロジで通信リンクを確立するかを決定する。ここでは、例えば、基地局装置101は、中継装置102と中継装置104との間に無線リンクが確立される通信リンクを確立すると決定する(S511)。この場合、基地局装置101は、中継装置102及び中継装置104に対して無線リンクを確立するための指示信号を送信することによって、中継通信リンクの再構築を行う(S512)。なお、この指示信号には、中継通信リンクの再構築のタイミングの情報を含めてもよい。また、再構築のタイミングの情報は別個に送信されてもよい。中継通信リンクが再構築されることにより、基地局装置101と端末装置105との間のデータ通信を実行することが可能となる。
【0034】
以上のような構成により、中継通信リンクの一部の区間が切断された場合に、基地局装置101と、その区間より下流側の無線リンクを確立していた中継装置とが、中継通信リンクが切断されたことを認識することができる。また、基地局装置101は、切断理由や切断された区間の数に応じて切断された区間における無線リンクの再確立や中継通信リンク全体の再構築を指示することができ、端末装置105との間のNRによる通信を再開することが可能となる。