(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-18
(45)【発行日】2023-01-26
(54)【発明の名称】機械の移動軸の速度を較正するための装置
(51)【国際特許分類】
G01B 21/00 20060101AFI20230119BHJP
B23Q 17/00 20060101ALI20230119BHJP
B23Q 23/00 20060101ALI20230119BHJP
【FI】
G01B21/00 Z
B23Q17/00 A
B23Q23/00
(21)【出願番号】P 2022511361
(86)(22)【出願日】2020-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2020070405
(87)【国際公開番号】W WO2021032382
(87)【国際公開日】2021-02-25
【審査請求日】2022-06-13
(31)【優先権主張番号】102019122654.6
(32)【優先日】2019-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】509197276
【氏名又は名称】エムウントハー インプロセス メステクニク ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴィエスト クリストフ
【審査官】續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-534681(JP,A)
【文献】国際公開第2018/115071(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0317942(US,A1)
【文献】特表2017-503157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/00
B23Q 17/00
B23Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(1,33)の移動軸の速度を較正または正規化するための装置(7,23,28)であって、前記機械(1,33)は、工作機械または測定機の形態をとり、前記装置(7,23,28)は、測定器(9)と測定機構とを有し、該測定機構は、第1および第2の測定要素(20,21)を有し、該第1および第2の測定要素(20,21)は、前記測定機構上において、互いから規定の既知の間隔をおいて存在し、
前記測定機構は、前記機械(1,33)の工作物受容部(34)上に配置されるように設計され、前記測定器(9)は、前記機械(1,33)の工具受容部上に配置されるように設計され、前記測定器(9)は、既知の設定頻度で測定を行うように設計され、前記装置(7,23,28)は、該装置(7,23,28)が前記機械(1,33)上に配置された状態で、前記測定器(9)を前記機械(1,33)の移動軸の既知の設定速度で前記第1の測定要素(20)から前記第2の測定要素(21)まで移動させるときに
、前記測定器(9)が、前記測定要素(20,21)のそれぞれと相互作用するように設計されるか、
または
、
前記測定器(9)は、前記測定要素(20,21)のそれぞれを検出し、前記装置(7,23,28)は、各場合において相互作用時点もしくは取得時点を特定し、
前記装置(7,23,28)は、第1の相互作用時点または取得時点に始まり、第2の相互作用時点に至るまでの、または第2の取得時点に至るまでの、前記測定器(9)による測定の回数を取得するように設計され、
前記装置(7,23,28)はさらに、前記測定の回数の前記取得によって、前記機械(1,33)の前記移動軸の前記既知の設定速度に対する、前記測定器(9)による2回の異なる測定の空間的間隔を特定するように設計される、
装置。
【請求項2】
前記装置(7,23,28)は、2つの前記相互作用時点の間または2つの前記取得時点の間の時間的間隔を判定するように設計され、前記装置(7,23,28)はさらに、前記時間的間隔の前記判定によって、前記機械(1,33)の前記移動軸の前記既知の設定速度に対する、前記測定器(9)による2回の異なる測定の空間的間隔を特定するように設計されることを特徴とする
、請求項1に記載の装置(7,23,28)。
【請求項3】
前記測定器(9)とは異なる測定部材(36)が、前記相互作用時点または前記取得時点を判定することを目的として設けられることを特徴とする、
請求項1または請求項2に記載の装置(7,23,28)。
【請求項4】
前記測定部材(36)が前記測定器(9)上に配置されるように設計されること、および、前記測定器(9)が前記測定部材(36)を配置するように設計されることを特徴とする、請求項3に記載の装置(7,23,28)。
【請求項5】
前記装置(7,23,28)が前記機械(1,33)上に配置された前記状態で、前記測定器(9)によるさらなる測定が、前記機械(1,33)の前記移動軸の前記既知の設定速度で行われることを特徴とする
、請求項
1~4のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項6】
前記装置(7,23,28)は、監視ユニット(14)と記憶ユニット(16)とを有し、前記装置(7,23,28)は、前記機械(1,33)の前記移動軸の前記既知の設定速度に対する、前記測定器(9)による2回の異なる測定の特定された前記空間的間隔を、前記機械(1,33)の前記移動軸の前記既知の設定速度とともに、読み出し可能な形式で前記記憶ユニット(16)に記憶することを特徴とする
、請求項
1~5のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項7】
測定要素は、較正球(25,26)の形態で、または光電バリア(29,30)の形態で、存在することを特徴とする
、請求項
1~6のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項8】
前記装置(7,23,28)の前記測定要素(20,21)の全ては同様の設計であることを特徴とする
、請求項
1~7のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項9】
前記装置(7,23,28)は、前記較正球(25,26)との前記相互作用から、前記較正球(25,26)の中心を特定するように設計されることを特徴とする
、請求項7に記載の装置(7,23,28)。
【請求項10】
前記装置(7,23,28)は、タイミングユニット(17)を有し、前記装置(7,23,28)は、該装置(7,23,28)の前記タイミングユニット(17)を前記機械(1,33)の計時装置と同期させるように設計されることを特徴とする
、請求項
1~9のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項11】
前記装置(7,23,28)が前記機械(1,33)上に配置された前記状態で、前記装置(7,23,28)は、トリガに始まる前記装置(7,23,28)による複数回の測定と、2回の異なる測定の特定された前記空間的間隔と、前記機械(1,33)の複数の前記移動軸の既知の移動方向と、を前記測定器(9)の複数の機械位置に割り当てるように設計され、前記トリガにおける前記測定器(9)の前記機械位置は、前記装置(7,23,28)には既知であることを特徴とする
、請求項
1~10のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)。
【請求項12】
請求項
1~11のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)を備える、測定システム(8)。
【請求項13】
請求項
1~12のいずれか1項に記載の装置(7,23,28)を備えた、また
は請求項12に記載の測定システム(8)を備えた
、工作機械または測定機である、機械(1,33)。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[技術水準]
複数の測定値を走査取得するための測定システムが知られている。
【0002】
既知の測定システムは、工作機械または測定機の機械軸上に配置できるように設計された光学測定器を備える。光学測定器によって、例えば、複数の測定値を時系列で連続して取得することができる。測定中に測定器を測定対象物の上方で移動させることによって、測定器の移動の間に測定対象物の様々な点を測定器で正確に測定することができる。このようにして、例えば、測定対象物の高さプロファイルを生成することができる。
【0003】
このような既知の測定システムにおいては、生成される複数の測定値を、対象物の複数の測定点、すなわち複数の測定座標に適合させることは、比較的複雑である。既知の測定システムでは、測定中の測定器の移動速度は、測定点を判定する精度と相関関係を有する。測定点をより正確に判定しようとするほど、測定の進行はより遅くなり、逆に、測定がより速く行われるほど、測定点の判定はより不正確になる。
[本発明の目的および利点]
本発明の根底をなす目的は、機械の移動軸の速度を較正または正規化するための代替装置を利用可能にすることである。例えば、提案する装置によれば、測定システムの測定器の改善された較正、または改善された正規化が実現できる。特に、本発明の目的は、機械の移動軸の速度を較正または正規化するための装置を備えた、改良された測定システムを利用可能にすることである。
【0004】
この目的は、請求項1に記載の特徴によって達成される。
【0005】
本発明の有利かつ適切な実施形態は、従属請求項に明記される。
【0006】
本発明は、機械の移動軸の速度を較正または正規化するための装置をその出発点とし、この機械は、工作機械または測定機の形態をとる。
【0007】
本発明の本質的な態様は、以下の事実に見ることができる。すなわち、本装置は、測定器と測定機構とを有し、測定機構は、第1および第2の測定要素を有し、第1および第2の測定要素は、互いから規定かつ既知の間隔をおいて測定機構上に存在し、測定機構は、機械の工作物受容部上に配置されるように設計され、測定器は、機械の工具受容部上に配置されるように設計され、測定器は、既知の設定頻度で測定を行うように設計され、装置は、装置が機械上に配置された状態で、測定器を第1の測定要素から第2の測定要素まで機械の移動軸の既知の設定速度で移動させるときに、装置、特に測定器が、測定要素のそれぞれと相互作用するように、または、装置、特に測定器が、測定要素のそれぞれを検出して、その過程で装置が各場合において相互作用時点もしくは取得時点を特定するように、設計され、装置は、第1の相互作用時点に始まり、または第1の取得時点に始まり、第2の相互作用時点に至るまでの、または第2の取得時点に至るまでの、測定器による測定の回数を特定するように設計され、装置はさらに、測定の回数の特定によって、機械の移動軸の既知の設定速度に対する、測定器による2回の異なる測定の空間的間隔、特に実際の空間的間隔を特定するように設計される。有利には、2回の異なる測定の間の実際の空間的間隔に基づいて、かつ、測定が行われた既知の各時刻に基づいて、機械の移動軸の実際の速度を特定することができる。
【0008】
この機械は、例えばCNCマシニングセンタの形態で存在する。例えば、工作機械は、旋削および/またはフライス盤の形態をとる。工作機械は、互いに対して移動可能な複数の機械軸を有利には含む。例えば、工作機械は、3軸または5軸の工作機械の形態をとる。例えば、測定機は、座標測定機の形態をとる。
【0009】
機械の移動軸の移動速度は、有利には一定である。特に、機械の移動軸の設定速度は一定である。例えば、工作物受容部は、機械の移動軸上に存在する。例えば、工作物受容部は、機械の工作台上に形成されたものである。工作台が、移動不可能な態様で存在することも考えられる。機械の全ての移動軸の互いに対する相対運動は、有利には既知である。
【0010】
機械の工具受容部は、機械のさらなる移動軸上に有利には配置され、その移動軸は、工作物受容部が存在する機械の移動軸とは有利には異なる。測定器は、好ましくは、測定器を工作物受容部上に取り付けるための取り付け部材を備える。
【0011】
測定器の移動方向および/または移動速度は、好ましくは、測定機構との関連において考慮される。それに対応して、測定中に、環境、例えば測定器が配置された機械の環境に対して、測定器が固定位置に存在し、代わりに、測定機構を測定器に対して、かつ/または環境に対して、移動させることが考えられる。測定器と測定機構の両方を互いに対して、かつ環境に対して、移動させることも考えられる。
【0012】
測定器は、好ましくは、測定要素のそれぞれと相互作用するように設計される。例えば、測定要素と測定器とは互いに影響を及ぼし合う。
【0013】
例えば、測定器は、測定の過程において測定値を、特に複数の測定値を、生成する。測定器は、特定の頻度で、例えば特定の走査速度で、複数の測定値を有利には生成する。この特定の頻度は、設定頻度として予め定めることが有利には可能である。しかしながら、予め定められた設定頻度が、実際の頻度とは、例えば複数の測定値が測定器によって生成される現実の実際の頻度とは、異なることが考えられる。
【0014】
測定値は、例えば、測定器と、測定要素または測定対象物との間の空間的間隔の形態で取得可能である。時間区間内に、測定器は、互いから時間的に離隔した複数の測定を有利には発生させる。例えば、装置は、2つの相互作用時点の間の区間における、測定器による測定の回数を特定するように設計され、これらの相互作用時点は、例えば、区間の範囲を定めるとともに、区間内に含まれる。例えば、複数の測定値の生成頻度は、区間内の測定の回数と、区間の時間的長さとの比率である。区間境界上または区間境界における測定値は、区間内の測定の回数に有利にはカウントされる。設定頻度(および特に、実際の頻度)は、例えば、20Hzと1000Hzとの間となる。
【0015】
例えば、装置は、2つの相互作用時点の間における、測定器による測定の回数を特定する。装置は、特に第1の相互作用時点を含めた、第1の相互作用時点に始まり、特に第2の相互作用時点を含めた、第2の相互作用時点に至るまでの、測定器による測定の回数を特定するように有利には設計される。装置が、測定器による正確に2つの測定、すなわち、第1の相互作用時点における第1の測定と、第2の相互作用時点における第2の測定と、を特定することが考えられる。このようにして、機械の既知の設定速度での2つの測定の間の空間的間隔を特定または判定する目的において、時間基準(例えば、タイミングユニット)を省略できる。
【0016】
同様に利点であることが判明しているのは、装置が、2つの相互作用時点の間または2つの取得時点の間の時間的間隔を判定するように設計され、装置がさらに、その時間的間隔の判定によって、機械の移動軸の既知の設定速度に対する、測定器による2回の異なる測定の空間的間隔を、特に実際の空間的間隔を、特定するように設計されることである。
【0017】
装置は、好ましくは、2つの相互作用時点の間または2つの取得時点の間に行われる測定の回数を特定するように設計される。例えば、装置は、第1の相互作用時点から第2の相互作用時点に至るまで、または第1の取得時点から第2の取得時点に至るまでに行われる測定の回数を特定するように設計される。装置は、特定された測定の回数と、2つの測定要素の既知の間隔と、2つの相互作用時点の間または2つの取得時点の間の特定された時間的間隔と、に基づいて、測定器による2回の異なる測定の空間的間隔を特定するように有利には設計される。測定器は、例えば既知の実際の頻度で、一定の時間的間隔にて連続して測定を行うように有利には設計される。
【0018】
例えば、装置は、2つの相互作用時点の間または2つの取得時点の間の時間的間隔に基づいて、かつ、2つの測定要素の互いからの既知の間隔に基づいて、工具受容部上に配置された測定器の実際の移動速度(例えば、実際の速度)を特定するように設計される。装置は、測定機構に対する、工具受容部上に配置された測定器の実際の移動速度を特定するように有利には設計される。
【0019】
さらに、利点であることが判明しているのは、測定器とは異なる測定部材が、相互作用時点または取得時点の判定を目的として設けられることである。相互作用時点を判定することを目的として、測定器が測定要素と相互作用する(例えば、協働する)のではなく、装置の、測定器とは異なる測定部材が、この目的のために設けられることが考えられる。
【0020】
測定部材が、例えば較正マンドレルとして、ピンの態様で設計されることが考えられる。測定要素は、光電バリアの形態で、または検知要素の形態で、有利には存在する。例えば、測定要素(例えば、光電バリア)は、測定器が第1の測定要素から第2の測定要素まで移動する過程において、測定器、特に測定部材を検出し、それにより、相互作用時点または取得時点、例えばトリガ、を生ずる。このようにして、第1の測定要素から第2の測定要素までの、測定器または測定部材の実際の平均速度を特定することができる。
【0021】
本発明の有利な構成では、測定器は、非接触の方法で動作する測定器の形態をとる。
【0022】
測定器は、例えば、測定センサの形態で存在する。測定器は、例えば、共焦点色距離センサ、レーザスキャナ、ラインスキャナ、および/または画像形成測定器、例えばCCDセンサ、の形態をとる。例えば、測定器は、ラインスキャナの形態で存在する。測定器は、好ましくは、レーザ三角測量スキャナの形態をとる。測定器は、走査型測定器、例えばスキャナの形態で有利には存在する。例えば、測定中に、測定器は、点ごと、線ごと、または列ごとに複数の測定値を生成する。測定器が、干渉計測法および/またはホログラフィー測定法を用いることも考えられる。
【0023】
測定器が、接触型測定センサ、特に触覚的に動作する測定センサの形態をとることも考えられる。例えば、測定器は、触覚的に動作する測定センサの検知要素の撓みの大きさ、および/または、触覚的に動作する測定センサの検知要素の力を特定するように設計される。
【0024】
利点であることがさらに判明しているのは、測定要素が較正球の形態で、または光電バリアの形態で存在することである。測定要素は、互いから離隔して較正標準器上に有利には存在する。測定要素がスイッチング素子、例えばスイッチの形態をとることも考えられる。測定要素がCCDセンサを有することが、さらに考えられる。
【0025】
測定要素が測定対象物、例えば基準対象物の形態で存在することが考えられる。測定要素は、例えば較正球の形態で存在し得る。測定要素が球形、角形、例えば長方形、円錐形、または楕円形で存在することも考えられる。特に、測定要素は、アーチファクト(人工物)の形態で存在する。アーチファクトは、相互作用時点または取得時点の特定を可能にする目的で、例えば、測定器との相互作用のために特別に調整および設計されたものである。
【0026】
装置が、較正球との相互作用から較正球の中心を特定するように設計されることは、同様に利点である。
【0027】
例えば、測定器は、第1の測定要素から第2の測定要素までの移動の過程で、2つの測定要素を検出する。例えば、測定器は、2つの測定要素を正確に測定する。例えば、測定器は、測定要素の表面を、例えば較正球の表面を検出する。有利には、測定要素の表面の幾何学的設計は、装置には既知である。装置は、好ましくは、測定要素による測定の複数の測定値を、測定要素の既知の表面に適合させるするように設計される。このようにして、例えば、測定要素の基準値を特定することができる。測定要素の基準値は、例えば、較正球の球心である。基準値は、相互作用時点または取得時点を有利には構成する。
【0028】
測定部材が測定器上に配置されるように設計されること、および、測定器が測定部材を配置するように設計されることも利点である。例えば、測定部材は、測定器と一体的に存在する。例えば、測定部材は取り付け部材を備え、測定器は、測定部材を測定器上に配置するための取り付け要素を備える。例えば、測定部材は、測定器上にねじ取り付け可能な形態で存在する。測定部材が、測定器上に締め付け、接着、または磁気的配置可能であることも考えられる。相互作用時点または取得時点を特定する目的で、最初に測定部材を機械の工具受容部上に配置し、特定した後で、測定部材を工具受容部から取り外し、測定器を工具受容部上に配置することが同様に考えられる。
【0029】
さらに、利点であるのは、装置が監視ユニットと記憶ユニットとを有し、装置が、機械の移動軸の既知の設定速度に対する、測定器による2回の異なる測定の特定された空間的間隔を、機械の移動軸の既知の設定速度とともに、読み出し可能な形式で記憶ユニットに記憶することである。装置は、測定器の既知の設定速度に対する、測定器による2回の異なる測定の特定された空間的間隔を、測定器の既知の設定速度とともに、読み出し可能な形式で記憶ユニットに有利には記憶する。例えば、装置はまた、特定された空間的間隔に加えて、測定器の現実の実際の速度も記憶するように設計される。
【0030】
有利な改良例では、装置は、装置が機械上に配置された状態で、測定器によるさらなる測定が、機械の移動軸の既知の設定速度で行われるように設計される。
【0031】
上述した、測定器の移動軸の速度を機械の設定速度に較正または正規化すること(特に、測定器を機械の移動軸の設定速度に較正または正規化すること、特に複数回の測定を互いに対して正規化すること)に基づくことにより、設定速度で装置を用いてさらに測定を行う過程において、測定対象物を比較的正確に測定することが可能である。
【0032】
装置の有利な改良例では、装置の測定要素の全ては同様の設計である。例えば、装置の測定要素の全ては同一である。例えば、装置は、正確に2つの測定要素、正確に3つの測定要素、または正確に4つの測定要素を備える。測定要素の全ては、既知の間隔をおいて有利には存在する。
【0033】
装置がタイミングユニットを有し、装置が装置のタイミングユニットを機械の計時装置と同期させるように設計されることは、さらなる利点である。例えば、装置は監視ユニットを備える。監視ユニットは、算術論理演算装置の形態で有利には存在する。監視ユニットは、例えば、マイクロコントローラまたはマイクロプロセッサを備える。監視ユニットは、機械の制御ユニットに接続されることが有利には可能である。機械の制御ユニットは、例えば、数値制御、例えばCNC(コンピュータによる数値制御)の形態をとる。監視ユニットは、装置のタイミングユニットを機械の計時装置と同期させるように有利には設計される。このようにして、機械の、特に測定器の、移動軸の速度の比較的正確な較正または正規化が、設定速度にて実現可能である。
【0034】
有利な実施形態の変形例では、装置が機械上に配置された状態で、装置は、トリガに始まる装置による複数回の測定と、2回の異なる測定の特定された空間的間隔と、機械の複数の移動軸の既知の移動方向と、を測定器の複数の機械位置に割り当てるように設計され、トリガの時における測定器の機械位置は、装置には既知である。
【0035】
装置、特に監視ユニットは、特に、測定器の現在の機械位置が装置によって読み出し可能であるように、機械に接続されることが有利には可能である。例えば、機械位置の照会時と、装置による機械位置の受信時との間の時間的遅滞、例えば遅延は、装置には既知である。
【0036】
装置が測定に割り当てる各機械座標は、好ましくは機械上に配置された測定器の機械座標である。機械上に配置された測定器の機械座標は、例えば正規化によって、測定対象物の位置座標に変換されることが有利には可能である。測定対象物の位置座標は、有利には、測定器が測定対象物を正確に測定して、それにより測定を生じた測定点である。
【0037】
装置が、トリガまたはトリガ信号を、トリガの時に取得された第1の測定とともに装置の記憶ユニットに記憶し、トリガと第1の測定との時間的関係が装置には既知である、ということも提案される。
【0038】
トリガと、測定器からの測定の受信との間の遅延または遅滞時間は、有利には装置に既知である。特に、この遅延またはこの遅滞は一定である。このようにして、関連する測定点に、例えば機械座標に、測定を割り当てることが可能となっている。
【0039】
例えば、トリガがもたらされた後、測定器は、測定の取得を終了する。例えば、第1の測定は、測定取得のうち(時間的に見て)最後に生成された測定である。例えば、第1の測定は、監視ユニットによって処理された測定取得のうち(時間的に見て)最後の測定である。
【0040】
監視ユニットが、トリガ信号をインターフェースを介して機械の制御ユニットに伝えるように設計されることがさらに提案される。このようにして、機械の軸方向運動を制御することができ、特に、機械の移動軸の運動を、トリガに起因して停止させることができる。
【0041】
さらなる利点は、装置が、トリガの時に取得された第1の機械座標、特に機械上に配置された測定器の機械座標を、機械から読み出すように設計され、トリガと第1の機械座標との時間的関係が装置には既知であり、監視ユニットが、第1の機械座標と第1の測定との間の時間的関係を確立するように設計される、ということである。このようにして、正確に測定されるべき測定対象物の高さプロファイルの生成が実現可能となる。
【0042】
本発明の有利な実施形態の変形例は、上述した変形例の1つに係る測定器および装置を備える測定システムである。
【0043】
本発明の別の有利な実施形態は、上述した変形例の1つに係る装置を備えた、または上記したような測定システムを備えた、特に工作機械または測定機である、機械である。
【0044】
同様に利点であるのは、第1の測定と第1の機械座標との相関関係から始めて、複数の機械座標、特に測定器の複数の機械座標を、複数の測定の取得中または取得時に、測定器の移動速度、特に実際の移動速度、および、測定器の移動方向が既知であるという事実のみによって、測定器によって取得されるさらなる複数の測定に割り当てるように装置が設計されることである。こうすることで、この装置により、比較的短い測定時間で、測定対象物の比較的正確な測定を実現できる。
[図面の説明]
複数の例示的実施形態を、以下の概略図を参照して、さらなる詳細および利点の記述により、さらに詳細に明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】装置を備えた測定システムを具備する機械の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0046】
図1は、概略的に図示された筐体2と、工作台3と、移動軸4と、制御ユニット5とを備えた機械1を示す。機械1は、例えば制御ユニット5上に存在するメモリモジュール6を例えば備える。装置7が、例示的に工作台3上に配置されている。
【0047】
測定システム8が、機械1上に有利には配置されている。測定システム8は、測定器9と、第1のインターフェース10と、第2のインターフェース11と、例えば第3のインターフェース12とを備える。測定システム8は、例えば、送受信ユニット13をさらに備える。送受信ユニット13は、例えば、制御モジュール15を備えた監視ユニット14を有する。測定システム8は、記憶ユニット16とタイミングユニット17とをさらに備え得る。
【0048】
図1に記載の実施形態の変形例では、測定器8は、例示的に、信号線18を用いてインターフェース10および11を介して送受信ユニット13に結合される。信号線18は、例えば、無線伝送チャネルの形態で存在する。信号線18は、例えば、無線リンクまたは無線チャネルの形態をとる。信号線18が、光接続、例えば光線チャネルの形態をとることも考えられる。さらに、送受信ユニット13は、インターフェース12を用いてさらなる信号線19を介して機械1に、特に機械1の制御ユニット5に、接続される。
【0049】
インターフェース12が、標準インターフェース、例えばUSBインターフェースまたはネットワークインターフェースの形態をとることも、さらに考えられる。例えば、このインターフェース12は、監視ユニット14を用いて、機械1の位置座標を照会するように設計される。
【0050】
装置7は、第1の測定要素20および第2の測定要素21を備える。2つの測定要素20および21は、較正球の形態で有利には存在する。2つの測定要素20および21は、例えば、較正標準器22上に配置される。較正標準器22は、特に環境温度変化に対して、比較的、長さが不変の形態で有利には存在する。
【0051】
2つの測定要素20および21は、互いから既知の一定の間隔aをおいて較正標準器22上に配置される。測定要素20および21の互いからの間隔aは、例えば、較正球の形態をとる第1の測定要素20の球心を通る垂線から、較正球の形態をとる第2の測定要素21の球心を通る垂線まで延びている。
【0052】
機械の、特に測定器9の、移動軸の速度を正規化または較正する目的で、測定器9を、特に第1の測定要素20から第2の測定要素21までの間隔aの延び方向に沿って、移動軸4によって有利には移動させる。
【0053】
図2は、装置23の変形例を示す。装置23は、較正球25および26が互いから離隔して配置された較正標準器24を備える。較正球25および26の互いからの間隔は、既知であるとともに、較正標準器24に起因して、有利には比較的一定である。
図2に記載の装置23は、さらに、レーザ三角測量スキャナ27の形態である測定器を備える。測定の過程において、レーザ三角測量スキャナ27は、一列に隣り合って存在する複数の測定値を取得し、その列は、有利にはレーザ三角測量スキャナ27の移動方向に対して直角に延びる。
【0054】
レーザ三角測量スキャナ27を用いた較正を目的として、レーザ三角測量スキャナ27を、既知の有利には一定である移動速度で、特に既知の設定速度で、方向Xに移動させる。この過程において、レーザ三角測量スキャナ27は、較正球25および26を検出する。レーザ三角測量スキャナ27は、測定によって、特に複数回の測定によって、較正球25および26を有利には検出する。較正球25および26の既知の直径に基づいて、装置23は、複数回の測定に基づいて、較正球25および26の表面を複数回の測定に適合させるように設計され、その結果、各場合において、較正球25および26の球心を判定することができる。較正球25および26の球心間の間隔は、有利には装置23には既知である。装置23はさらに、レーザ三角測量スキャナ27を第1の較正球25の中心から第2の較正球26の中心まで移動させている間に行われた測定の回数を判定するように設計される。例えば、装置23はまた、較正球25および26の球心間の既知の間隔と、較正球25および26の球心間における確定した測定の回数と、に基づいて、2つの測定間の間隔を判定するように設計される。このようにして、レーザ三角測量スキャナ27は、既知の設定速度に対して較正されることができる。
【0055】
図3は、装置28のさらなる変形例を示す。装置28は、第1の光電バリア29の形態である第1の測定要素と、第2の光電バリア30の形態である第2の測定要素と、を備える。第1および第2のの光電バリア29および30は、互いから規定の既知の間隔をおいて、較正標準器31に固定される。較正標準器31は、さらに、工作物受容部34によって機械33の工作台32に固定される。
【0056】
測定マンドレル36の形態である測定部材は、機械33の工具受容部35上に配置される。装置28のこの変形例では、相互作用時点は、測定マンドレル36が光電バリア29および30を通過移動して、光電バリア29および30がそれにより測定マンドレル36を検出して各々が相互作用時点を生ずることによって、特定される。このようにして、測定マンドレル36の、すなわち機械33の機械軸の、実際の平均移動速度を特定することができる。
[参照符号一覧]
1…機械、2…筐体、3…工作台、4…移動軸、5…制御ユニット、6…メモリモジュール、7…装置、8…測定システム、9…測定器、10…インターフェース、11…インターフェース、12…インターフェース、13…送受信ユニット、14…監視ユニット、15…制御モジュール、16…記憶ユニット、17…タイミングユニット、18…信号線、19…信号線、20…測定要素、21…測定要素、22…較正標準器、23…装置、24…較正標準器、25…較正球、26…較正球、27…レーザ三角測量スキャナ、28…装置、29…光電バリア、30…光電バリア、31…較正標準器、32…工作台、33…機械、34…工作物受容部、35…工具受容部、36…測定マンドレル。