(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】電動ルーツポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/02 20060101AFI20230120BHJP
F04C 18/18 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
F04C29/02 311K
F04C18/18 A
(21)【出願番号】P 2019136205
(22)【出願日】2019-07-24
【審査請求日】2021-11-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】篠田 史也
(72)【発明者】
【氏名】正木 大輔
(72)【発明者】
【氏名】平野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】柏 真太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼荷 直樹
【審査官】大瀬 円
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-185519(JP,A)
【文献】特開2017-133392(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/02
F04C 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸及び従動軸と、
前記駆動軸に固定される駆動ギアと、
前記従動軸に固定されるとともに前記駆動ギアと噛合する従動ギアと、
前記駆動軸に設けられる駆動ロータと、
前記従動軸に設けられるとともに前記駆動ロータと噛合する従動ロータと、
前記駆動軸を回転させる電動モータと、
前記ハウジング内に形成され、前記電動モータを収容するモータ室と、
前記ハウジング内に形成され、前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともにオイルが封入されたギア室と、
前記ハウジング内に形成され、前記駆動ロータ及び前記従動ロータを収容するロータ室と、を備え、
前記モータ室、前記ギア室、及び前記ロータ室が前記駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されており、
前記ハウジングは、
前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記モータ室とを隔てる第1隔壁と、
前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記ロータ室とを隔てる第2隔壁と、を有している電動ルーツポンプであって、
前記第1隔壁の前記ギア室側の端面、及び前記第2隔壁の前記ギア室側の端面の少なくとも一方には、前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記駆動ギアの外径と前記従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点と少なくとも対向し、且つ、前記駆動軸の回転軸線及び前記従動軸の回転軸線の両方を通過する仮想平面から前記交点の位置側の領域に配置される逃げ凹部が形成され
、
前記逃げ凹部は、前記第1隔壁の前記ギア室側の端面、及び前記第2隔壁の前記ギア室側の端面にそれぞれ形成されていることを特徴とする電動ルーツポンプ。
【請求項2】
前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記逃げ凹部の開口縁における前記仮想平面に最も近い部位は、前記仮想平面上に位置していることを特徴とする請求項
1に記載の電動ルーツポンプ。
【請求項3】
筒状のハウジングと、
前記ハウジングに互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸及び従動軸と、
前記駆動軸に固定される駆動ギアと、
前記従動軸に固定されるとともに前記駆動ギアと噛合する従動ギアと、
前記駆動軸に設けられる駆動ロータと、
前記従動軸に設けられるとともに前記駆動ロータと噛合する従動ロータと、
前記駆動軸を回転させる電動モータと、
前記ハウジング内に形成され、前記電動モータを収容するモータ室と、
前記ハウジング内に形成され、前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともにオイルが封入されたギア室と、
前記ハウジング内に形成され、前記駆動ロータ及び前記従動ロータを収容するロータ室と、を備え、
前記モータ室、前記ギア室、及び前記ロータ室が前記駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されており、
前記ハウジングは、
前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記モータ室とを隔てる第1隔壁と、
前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記ロータ室とを隔てる第2隔壁と、を有している電動ルーツポンプであって、
前記第1隔壁の前記ギア室側の端面、及び前記第2隔壁の前記ギア室側の端面の少なくとも一方には、前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記駆動ギアの外径と前記従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点と少なくとも対向し、且つ、前記駆動軸の回転軸線及び前記従動軸の回転軸線の両方を通過する仮想平面から前記交点の位置側の領域に配置される逃げ凹部が形成され、
前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記逃げ凹部の開口縁における前記仮想平面に最も近い部位は、前記仮想平面上に位置していることを特徴とする電動ルーツポンプ。
【請求項4】
前記逃げ凹部は、前記逃げ凹部の開口縁から前記駆動軸の回転軸線方向に延びる延在面と、前記延在面から起立して前記回転軸線方向に対して交差する方向に延びる起立面と、を有することを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の電動ルーツポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ルーツポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
電動ルーツポンプのハウジングには、駆動軸及び従動軸が互いに平行に配置された状態で回転可能に支持されている。駆動軸は、電動モータの駆動によって回転する。駆動軸には駆動ギアが固定されており、従動軸には駆動ギアと噛合する従動ギアが固定されている。また、駆動軸には駆動ロータが設けられるとともに、従動軸には駆動ロータと噛合する従動ロータが設けられている。そして、電動モータの駆動によって駆動軸が回転すると、互いに噛合された駆動ギア及び従動ギアを介して従動軸が駆動軸に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ及び従動ロータが互いに噛合された状態でそれぞれ逆回転し、電動ルーツポンプは、駆動ロータ及び従動ロータの回転によって流体の吸入及び吐出を行う。
【0003】
例えば特許文献1のルーツポンプのように、ハウジング内には、電動モータを収容するモータ室と、駆動ギア及び従動ギアを収容するギア室と、駆動ロータ及び従動ロータを収容するロータ室とが形成されている。モータ室、ギア室、及びロータ室は、駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。この場合、ハウジングは、駆動軸の回転軸線方向でギア室とモータ室とを隔てる第1隔壁と、駆動軸の回転軸線方向でギア室とロータ室とを隔てる第2隔壁と、を有している。ギア室内には、駆動ギア及び従動ギアの潤滑及び温度上昇の抑制のために、オイルが封入されている。そして、駆動ギア及び従動ギアは、オイルに浸されながら回転することにより、焼き付いたり磨耗したりすることなく高速回転が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば、氷点下のような外気温度が低い低温環境下で、電動ルーツポンプを起動させる場合、ギア室内に封入されているオイルの温度が低下しているため、駆動ギア及び従動ギアは、粘度の高いオイルを掻き上げながら回転することになる。そして、粘度の高いオイルが駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込むと、駆動ギアと従動ギアとの間で噛み込まれた粘度の高いオイルが駆動ギア及び従動ギアの回転の抵抗になるため、駆動ギア及び従動ギアがスムーズに回転しなくなってしまう。かといって、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量が過剰に減ってしまうと、駆動ギア及び従動ギアの焼き付きや摩耗が生じ易くなってしまうため、駆動ギア及び従動ギアの耐久性が悪化してしまう。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、駆動ギア及び従動ギアの耐久性を維持しつつも、低温環境下で起動する際に駆動ギア及び従動ギアをスムーズに回転させることができる電動ルーツポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電動ルーツポンプは、筒状のハウジングと、前記ハウジングに互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸及び従動軸と、前記駆動軸に固定される駆動ギアと、前記従動軸に固定されるとともに前記駆動ギアと噛合する従動ギアと、前記駆動軸に設けられる駆動ロータと、前記従動軸に設けられるとともに前記駆動ロータと噛合する従動ロータと、前記駆動軸を回転させる電動モータと、前記ハウジング内に形成され、前記電動モータを収容するモータ室と、前記ハウジング内に形成され、前記駆動ギア及び前記従動ギアを収容するとともにオイルが封入されたギア室と、前記ハウジング内に形成され、前記駆動ロータ及び前記従動ロータを収容するロータ室と、を備え、前記モータ室、前記ギア室、及び前記ロータ室が前記駆動軸の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されており、前記ハウジングは、前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記モータ室とを隔てる第1隔壁と、前記駆動軸の回転軸線方向で前記ギア室と前記ロータ室とを隔てる第2隔壁と、を有している電動ルーツポンプであって、前記第1隔壁の前記ギア室側の端面、及び前記第2隔壁の前記ギア室側の端面の少なくとも一方には、前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記駆動ギアの外径と前記従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点と少なくとも対向し、且つ、前記駆動軸の回転軸線及び前記従動軸の回転軸線の両方を通過する仮想平面から前記交点の位置側の領域に配置される逃げ凹部が形成されている。
【0008】
駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点においては、駆動ギア及び従動ギアそれぞれによって掻き上げられたオイルが互いに勢いよく衝突する。ここで、第1隔壁のギア室側の端面、及び第2隔壁のギア室側の端面の少なくとも一方には、駆動軸の回転軸線方向から見たときに、駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点と少なくとも対向する逃げ凹部が形成されている。これによれば、駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点において衝突したオイルの一部が、逃げ凹部へ流入するため、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量を減らすことができる。したがって、電動ルーツポンプを低温環境下で起動する際に、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれる粘度の高いオイルの量を減らすことができる。
【0009】
また、逃げ凹部は、駆動軸の回転軸線及び従動軸の回転軸線の両方を通過する仮想平面から駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点の位置側の領域に配置されている。ここで、第1隔壁のギア室側の端面、及び第2隔壁のギア室側の端面の少なくとも一方において、例えば、逃げ凹部が、駆動軸の回転軸線方向から見たときに、駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点と対向する部分から、仮想平面を跨いで駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い終わり側の交点の位置側の領域まで延びている場合を考える。このような場合に比べると、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれているオイルが逃げ凹部に流入し難くなる。したがって、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量が過剰に減ってしまうことを抑制することができ、駆動ギア及び従動ギアの焼き付きや摩耗が生じ難くなる。以上のことから、駆動ギア及び従動ギアの耐久性を維持しつつも、電動ルーツポンプを低温環境下で起動する際に駆動ギア及び従動ギアをスムーズに回転させることができる。
【0010】
上記電動ルーツポンプにおいて、前記逃げ凹部は、前記第1隔壁の前記ギア室側の端面、及び前記第2隔壁の前記ギア室側の端面にそれぞれ形成されているとよい。
これによれば、駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側の交点において衝突したオイルの一部が、両逃げ凹部へそれぞれ流入するため、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。したがって、電動ルーツポンプを低温環境下で起動する際に、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれる粘度の高いオイルの量を効率良く減らすことができる。
【0011】
上記電動ルーツポンプにおいて、前記駆動軸の回転軸線方向から見たときに、前記逃げ凹部の開口縁における前記仮想平面に最も近い部位は、前記仮想平面上に位置しているよい。
【0012】
このように、逃げ凹部の開口縁における駆動軸の回転軸線及び従動軸の回転軸線の両方を通過する仮想平面に最も近い部位が、仮想平面上に位置している構成によれば、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量が過剰に減ってしまうことを抑制しつつも、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。
【0013】
上記電動ルーツポンプにおいて、前記逃げ凹部は、前記逃げ凹部の開口縁から前記駆動軸の回転軸線方向に延びる延在面と、前記延在面から起立して前記回転軸線方向に対して交差する方向に延びる起立面と、を有するとよい。
【0014】
これによれば、駆動ギアの外径と従動ギアの外径の噛み合い始め側において衝突して逃げ凹部へ流入したオイルの一部が、逃げ凹部の開口縁から延在面に沿いながら起立面に向けて流れるため、逃げ凹部に流入したオイルが逃げ凹部内に留まり易い。したがって、逃げ凹部に流入したオイルが、逃げ凹部からギア室内へすぐに還流してしまうことを抑制することができるため、駆動ギアと従動ギアとの間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、駆動ギア及び従動ギアの耐久性を維持しつつも、低温環境下で起動する際に駆動ギア及び従動ギアをスムーズに回転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態における電動ルーツポンプを示す平断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、電動ルーツポンプを具体化した一実施形態を
図1~
図9にしたがって説明する。本実施形態の電動ルーツポンプは、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池に水素を供給する燃料電池用水素ポンプとして用いられる。
【0018】
図1に示すように、電動ルーツポンプ10のハウジング11は、モータハウジング12、ギアハウジング13、ロータハウジング14、及びカバー部材15を有する筒状である。モータハウジング12は、板状の底壁12aと、底壁12aの外周部から筒状に延びる周壁12bと、を有する有底筒状である。ギアハウジング13は、板状の底壁13aと、底壁13aの外周部から筒状に延びる周壁13bと、を有する有底筒状である。ギアハウジング13は、モータハウジング12の周壁12bの開口側の端部に連結されている。ギアハウジング13の底壁13aは、モータハウジング12の周壁12bの開口を閉塞している。
【0019】
ロータハウジング14は、板状の底壁14aと、底壁14aの外周部から筒状に延びる周壁14bと、を有する有底筒状である。ロータハウジング14は、ギアハウジング13の周壁13bの開口側の端部に連結されている。ロータハウジング14の底壁14aは、ギアハウジング13の周壁13bの開口を閉塞している。カバー部材15は、板状である。カバー部材15は、ロータハウジング14の周壁14bの開口側の端部に連結され、底壁14aと対向するとともに周壁14bを閉塞している。モータハウジング12の周壁12bの軸心方向、ギアハウジング13の周壁13bの軸心方向、及びロータハウジング14の周壁14bの軸心方向はそれぞれ一致している。
【0020】
電動ルーツポンプ10は、ハウジング11に互いに平行に配置された状態で回転可能に支持される駆動軸16及び従動軸17を有している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向は、各周壁12b,13b,14bの軸心方向に一致している。駆動軸16には、円板状の駆動ギア18が固定されている。従動軸17には、駆動ギア18と噛合する円板状の従動ギア19が固定されている。駆動軸16には駆動ロータ20が設けられている。従動軸17には駆動ロータ20と噛合する従動ロータ21が設けられている。
【0021】
電動ルーツポンプ10は、駆動軸16を回転させる電動モータ22を備えている。電動モータ22は、ハウジング11内に形成されたモータ室23に収容されている。モータ室23は、モータハウジング12の底壁12a、モータハウジング12の周壁12b、及びギアハウジング13の底壁13aによって区画されている。電動モータ22は、駆動軸16に一体回転可能に止着された円筒状のモータロータ22aと、モータハウジング12の周壁12bの内周面に固定されるとともにモータロータ22aを取り囲む円筒状のステータ22bと、を有している。ステータ22bは、図示しないティースに捲回されたコイル22cを有している。そして、電動モータ22は、コイル22cに電力が供給されることにより駆動して、モータロータ22aが駆動軸16と一体的に回転する。
【0022】
ハウジング11内には、駆動ギア18及び従動ギア19を収容するギア室24が形成されている。ギア室24は、ギアハウジング13の底壁13a、ギアハウジング13の周壁13b、及びロータハウジング14の底壁14aによって区画されている。駆動ギア18及び従動ギア19は、互いに噛合した状態でギア室24に収容されている。ギア室24には、オイルが封入されている。オイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の潤滑及び温度上昇の抑制に寄与する。駆動ギア18及び従動ギア19は、オイルに浸されながら回転することにより、焼き付いたり磨耗したりすることなく高速回転が可能になっている。
【0023】
ハウジング11内には、駆動ロータ20及び従動ロータ21を収容するロータ室25が形成されている。ロータ室25は、ロータハウジング14の底壁14a、ロータハウジング14の周壁14b、及びカバー部材15によって区画されている。駆動ロータ20及び従動ロータ21は、互いに噛合した状態でロータ室25に収容されている。本実施形態において、モータ室23、ギア室24、及びロータ室25は、駆動軸16の回転軸線方向においてこの順に並んで配置されている。
【0024】
ギアハウジング13の底壁13aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とモータ室23とを隔てる第1隔壁として機能している。ロータハウジング14の底壁14aは、駆動軸16の回転軸線方向でギア室24とロータ室25とを隔てる第2隔壁として機能している。
【0025】
駆動軸16は、ギアハウジング13の底壁13a及びロータハウジング14の底壁14aを貫通している。従動軸17は、ロータハウジング14の底壁14aを貫通している。ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのモータ室23側の壁面を形成する第1隔壁の端面、即ち第1隔壁のギア室24側の端面である。ロータハウジング14の底壁14aの外面14eは、ギア室24における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向でのロータ室25側の壁面を形成する第2隔壁の端面、即ち第2隔壁のギア室24側の端面である。
【0026】
ギアハウジング13の底壁13aには、駆動軸16を回転可能に支持する第1軸受26を収容する円孔状の第1軸受収容凹部27が形成されている。第1軸受収容凹部27は、円孔状の大径孔271を介してギアハウジング13の底壁13aの内底面13eに開口している。したがって、第1軸受収容凹部27の開口縁は、大径孔271の軸線方向の長さ分だけ、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eから離間している。大径孔271の孔径は、第1軸受収容凹部27の孔径よりも僅かに大きい。第1軸受収容凹部27に収容される第1軸受26は、大径孔271の軸線方向の長さ分だけ、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eから離間した位置に配置されている。
【0027】
駆動軸16は、大径孔271及び第1軸受収容凹部27を貫通している。また、第1軸受収容凹部27の底面27aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とモータ室23との間をシールする環状の第1シール部材28が収容される円孔状の第1シール収容凹部29が形成されている。よって、ギアハウジング13の底壁13aには、第1シール収容凹部29が形成されている。第1シール収容凹部29は、第1軸受収容凹部27に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第1軸受26と第1軸受収容凹部27の底面27aとの間には、環状の第1スペーサ30が配置されている。
【0028】
ロータハウジング14の底壁14aの外面14eには、駆動軸16を回転可能に支持する第2軸受31を収容する円孔状の第2軸受収容凹部32が形成されている。第2軸受収容凹部32の開口縁は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eに連続している。駆動軸16は、第2軸受収容凹部32を貫通している。また、第2軸受収容凹部32の底面32aには、駆動軸16が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第2シール部材33が収容される円孔状の第2シール収容凹部34が形成されている。よって、ロータハウジング14の底壁14aには、第2シール収容凹部34が形成されている。第2シール収容凹部34は、第2軸受収容凹部32に連通している。また、駆動軸16の回転軸線方向における第2軸受31と第2軸受収容凹部32の底面32aとの間には、環状の第2スペーサ35が配置されている。
【0029】
ロータハウジング14の底壁14aの外面14eには、従動軸17を回転可能に支持する第3軸受36を収容する円孔状の第3軸受収容凹部37が形成されている。第3軸受収容凹部37の開口縁は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eに連続している。従動軸17は、第3軸受収容凹部37を貫通している。また、第3軸受収容凹部37の底面37aには、従動軸17が貫通するとともにギア室24とロータ室25との間をシールする環状の第3シール部材38が収容される円孔状の第3シール収容凹部39が形成されている。よって、ロータハウジング14の底壁14aには、第3シール収容凹部39が形成されている。第3シール収容凹部39は、第3軸受収容凹部37に連通している。また、従動軸17の回転軸線方向における第3軸受36と第3軸受収容凹部37の底面37aとの間には、環状の第3スペーサ40が配置されている。
【0030】
ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、従動軸17の一端部を回転可能に支持する第4軸受41を収容する円孔状の第4軸受収容凹部42が形成されている。第4軸受収容凹部42の開口縁は、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eに連続している。従動軸17の一端部は、第4軸受収容凹部42内に配置され、第4軸受41に回転可能に支持されている。従動軸17の他端部は、第3軸受収容凹部37及び第3シール収容凹部39を貫通してロータ室25に突出している。従動軸17の他端部には従動ロータ21が取り付けられており、従動軸17の他端部は自由端になっている。よって、従動軸17は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0031】
モータハウジング12の底壁12aの内底面12eには、駆動軸16の一端部を回転可能に支持する第5軸受43を収容する円筒状の軸受部44が形成されている。駆動軸16の一端部は、軸受部44の内側に配置され、第5軸受43に回転可能に支持されている。駆動軸16の他端部は、第1シール収容凹部29、第1軸受収容凹部27、ギア室24、第2軸受収容凹部32、及び第2シール収容凹部34を貫通してロータ室25に突出している。駆動軸16の他端部には駆動ロータ20が取り付けられており、駆動軸16の他端部は自由端になっている。よって、駆動軸16は、ハウジング11に片持ち支持されている。
【0032】
図2に示すように、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が二葉状(瓢箪状)に形成されている。駆動ロータ20は、二条の山歯20aと、両山歯20aの間に形成された谷歯20bと、を有している。従動ロータ21は、二条の山歯21aと、両山歯21aの間に形成された谷歯21bと、を有している。
【0033】
そして、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動ロータ20の山歯20aと従動ロータ21の谷歯21bとの噛合、及び駆動ロータ20の谷歯20bと従動ロータ21の山歯21aとの噛合を繰り返しながらロータ室25内を回転可能になっている。駆動ロータ20は、
図2に示す矢印R1の方向に回転し、従動ロータ21は、
図2に示す矢印R2の方向へ回転する。
【0034】
ロータハウジング14の周壁14bには、ロータ室25を挟んで対向する位置に吸入口45及び吐出口46がそれぞれ形成されている。吸入口45及び吐出口46は、ロータ室25と外部とを連通する。
【0035】
吸入口45と吐出口46とを結ぶ直線方向Z1は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線L1,L2のそれぞれに対して垂直に交差する。電動ルーツポンプ10は、吸入口45が重力方向下向きに開口するように載置され、直線方向Z1は重力方向と一致する。
図2において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。
【0036】
電動モータ22の駆動によって駆動軸16が回転すると、互いに噛合された駆動ギア18及び従動ギア19のギア連結を介して従動軸17が駆動軸16に対して逆回転する。これにより、駆動ロータ20及び従動ロータ21が互いに噛合された状態でそれぞれ逆回転し、電動ルーツポンプ10は、駆動ロータ20及び従動ロータ21の回転によって、吸入口45を介したロータ室25への流体の吸入、及び吐出口46を介したロータ室25からの流体の吐出を行う。
【0037】
図3に示すように、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、第1凹部51が形成されている。また、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eには、第1凹部51と駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向で対向する第2凹部52が形成されている。
図3において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。
【0038】
図4に示すように、第1凹部51は、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eにおいて、駆動軸16の回転軸線L1及び従動軸17の回転軸線L2の両方を通過する仮想平面Sよりも吐出口46側の部位に形成されている。
図4において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cは、仮想平面Sよりも吐出口46側の面131cと、仮想平面Sよりも吸入口45側の面132cと、二つの面131c,132c同士を接続する左右一対の円弧状の接続面133c,134cと、を有している。ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cは、ギア室24の内周面を形成している。
【0039】
第1凹部51は、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cにおける仮想平面Sよりも吐出口46側の面131cに連続して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に延びる第1内面51aを有している。第1内面51aは、第1凹部51を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cにおける仮想平面Sよりも吐出口46側の面131cに沿って延びている。第1凹部51を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときの、第1内面51aの一端縁E1は、第4軸受収容凹部42に対して、吐出口46側に位置しており、第1内面51aの他端縁E2は、第1軸受収容凹部27に対して、吐出口46側に位置している。
【0040】
第1凹部51は、第1内面51aの一端縁E1に連続するとともに一端縁E1から離間するにつれて第4軸受収容凹部42に向けて弧状に湾曲して延びる第2内面51bを有している。第2内面51bは、第1凹部51を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たとき、第1内面51aの他端縁E2に対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。
【0041】
第1凹部51は、第2内面51bにおける第1内面51aとは反対側の端縁に連続するとともに第2内面51bから離間するにつれて第1軸受収容凹部27に向けて延びる第3内面51cを有している。第3内面51cは、第4軸受収容凹部42の内周面42bに沿って延びる弧状に湾曲する湾曲面である。
【0042】
第1凹部51は、第1内面51aの他端縁E2に連続するとともに他端縁E2から離間するにつれて第1軸受収容凹部27に向けて弧状に湾曲して延びる第4内面51dを有している。第4内面51dは、第1凹部51を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たとき、第1内面51aの一端縁E1に対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。
【0043】
第1凹部51は、第4内面51dにおける第1内面51aとは反対側の端縁に連続するとともに第4内面51dから離間するにつれて第4軸受収容凹部42に向けて延びる第5内面51eを有している。第5内面51eは、第1軸受収容凹部27の内周面27bに沿って延びる弧状に湾曲する湾曲面である。
【0044】
第1凹部51は、第3内面51cにおける第2内面51bとは反対側の端縁と第5内面51eにおける第4内面51dとは反対側の端縁とを繋ぐ第6内面51fを有している。第6内面51fは、第1内面51aに対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。第1凹部51を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときの第6内面51fの頂点は、第1凹部51における重力方向の最下部51gである。
【0045】
図5に示すように、第2凹部52は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eにおいて、仮想平面Sよりも吐出口46側の部位に形成されている。
図5において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。
【0046】
第2凹部52は、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13c(
図5において二点鎖線で示す)における仮想平面Sよりも吐出口46側の面131cに連続して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に延びる第1内面52aを有している。第1内面52aは、第2凹部52を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cにおける仮想平面Sよりも吐出口46側の面131cに沿って延びている。第2凹部52を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときの、第1内面52aの一端縁E11は、第2軸受収容凹部32に対して、吐出口46側に位置しており、第1内面52aの他端縁E12は、第3軸受収容凹部37に対して、吐出口46側に位置している。
【0047】
第2凹部52は、第1内面52aの一端縁E11に連続するとともに一端縁E11から離間するにつれて第2軸受収容凹部32に向けて弧状に湾曲して延びる第2内面52bを有している。第2内面52bは、第2凹部52を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たとき、第1内面52aの他端縁E12に対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。
【0048】
第2凹部52は、第2内面52bにおける第1内面52aとは反対側の端縁に連続するとともに第2内面52bから離間するにつれて第3軸受収容凹部37に向けて延びる第3内面52cを有している。第3内面52cは、第2軸受収容凹部32の内周面32bに沿って延びる弧状に湾曲する湾曲面である。
【0049】
第2凹部52は、第1内面52aの他端縁E12に連続するとともに他端縁E12から離間するにつれて第3軸受収容凹部37に向けて弧状に湾曲して延びる第4内面52dを有している。第4内面52dは、第2凹部52を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たとき、第1内面52aの一端縁E11に対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。
【0050】
第2凹部52は、第4内面52dにおける第1内面52aとは反対側の端縁に連続するとともに第4内面52dから離間するにつれて第2軸受収容凹部32に向けて延びる第5内面52eを有している。第5内面52eは、第3軸受収容凹部37の内周面37bに沿って延びる弧状に湾曲する湾曲面である。
【0051】
第2凹部52は、第3内面52cにおける第2内面52bとは反対側の端縁と第5内面52eにおける第4内面52dとは反対側の端縁とを繋ぐ第6内面52fを有している。第6内面52fは、第1内面52aに対して離間するとともに仮想平面Sへと近づく方向へ膨出する湾曲面である。第2凹部52を駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときの第6内面52fの頂点は、第2凹部52における重力方向の最下部52gである。
【0052】
図6に示すように、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向において、第1凹部51の第6内面51fと第2凹部52の第6内面52fとは、その一部分が交差している。そして、第1凹部51における重力方向の最下部51gと第2凹部52における重力方向の最下部52gとは、仮想平面Sに最も近い箇所に位置している。さらに、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、両最下部51g,52gは、駆動ギア18と従動ギア19との噛合部47に対して吐出口46側に位置している。
図6において、直線方向Z1の上向きが吐出口46側であり、直線方向Z1の下向きが吸入口45側である。
【0053】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1凹部51の第1内面51aの一端縁E1と他端縁E2との間に第2凹部52の第1内面52aの他端縁E12が位置している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2凹部52の第1内面52aの一端縁E11と他端縁E12との間に第1凹部51の第1内面51aの他端縁E2が位置している。よって、第1凹部51の第4内面51dは、第2凹部52の第2内面52bよりも噛合部47に近い位置にあり、第2凹部52の第4内面52dは、第1凹部51の第2内面51bよりも噛合部47に近い位置にある。
【0054】
第1凹部51及び第2凹部52は、駆動ギア18と従動ギア19との間に挟まれる領域において、少なくとも一部が重複している。第1凹部51及び第2凹部52は、駆動ギア18と従動ギア19との間に挟まれる領域において、仮想平面Sとの最短距離がそれぞれ一致している。
【0055】
本実施形態において、駆動ギア18は、
図6に示す矢印R3の方向に回転し、従動ギア19は、
図6に示す矢印R4の方向へ回転する。つまり、駆動ギア18及び従動ギア19は、ギアハウジング13の周壁13bの内周面13cにおける左右一対の接続面133c,134cに対して、吸入口45側から吐出口46側に向けてそれぞれ回転するように、電動モータ22の駆動が制御されている。
【0056】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、噛合部47における駆動ギア18と従動ギア19との噛み合い始めの位置P1は、駆動軸16の回転軸線L1及び従動軸17の回転軸線L2の両方を通過する仮想平面Sよりも吐出口46側に位置している。したがって、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18と従動ギア19との噛み合い始めの位置P1は、仮想平面Sよりも重力方向上側に位置している。
【0057】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、噛合部47における駆動ギア18と従動ギア19との噛み合い終わりの位置P2は、駆動軸16の回転軸線L1及び従動軸17の回転軸線L2の両方を通過する仮想平面Sよりも吸入口45側に位置している。したがって、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18と従動ギア19との噛み合い終わりの位置P2は、仮想平面Sよりも重力方向下側に位置している。
【0058】
噛合部47は、噛み合い始めの位置P1と噛み合い終わりの位置P2との間で、駆動ギア18の歯先と従動ギア19の歯先とが交差する部分である。駆動ギア18の歯先は、駆動軸16の回転軸線L1を中心とした仮想円C1上に位置している。駆動ギア18の外径は、仮想円C1の外径に一致している。従動ギア19の歯先は、従動軸17の回転軸線L2を中心とした仮想円C2上に位置している。従動ギア19の外径は、仮想円C2の外径に一致している。そして、両仮想円C1,C2が噛み合い始めの位置P1側で交差する点は、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1である。また、両仮想円C1,C2が噛み合い終わりの位置P2側で交差する点は、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い終わり側の交点Q2である。
【0059】
ギア室24に封入されているオイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により、駆動ギア18と接続面133cとの隙間、及び従動ギア19と接続面134cとの隙間を介してギア室24の吐出口46側に向けて掻き上げられる。吐出口46側は重力方向上側でもあるので、ギア室24に封入されているオイルは、重力に逆らうように掻き上げられる。駆動ギア18によって掻き上げられたオイルと、従動ギア19によって掻き上げられたオイルとは、ギア室24内において、噛合部47に対して吐出口46側で互いに衝突して第1凹部51及び第2凹部52にそれぞれ流入する。
【0060】
図7に示すように、第1凹部51の内面は、第1凹部51の底面51hと第6内面51fとを繋ぐ平坦面51kを有している。また、ギアハウジング13の底壁13aには、第1凹部51から第1シール収容凹部29へオイルを供給する第1油供給通路53が形成されている。第1油供給通路53は、第1孔53a及び第1溝53bから構成されている。第1孔53aは、直線状に延びるとともに一端が平坦面51kに開口し、他端が第1軸受収容凹部27の内周面27bにおける底面27a側の端部に開口している。第1孔53aの他端は、第1スペーサ30の外周面に対して駆動軸16の径方向で重なっている。第1溝53bは、第1軸受収容凹部27の底面27aに形成されており、一端が第1孔53aの他端に連通するとともに他端が第1シール収容凹部29に連通している。そして、第1凹部51内のオイルは、第1孔53a及び第1溝53bを介して第1シール収容凹部29に供給される。なお、第1孔53aの孔径は、第1凹部51に流入したオイルが第1凹部51に貯留可能な孔径に絞られている。
【0061】
図8に示すように、ロータハウジング14の底壁14aには、第2凹部52から第2シール収容凹部34へオイルを供給する第2油供給通路54が形成されている。第2油供給通路54は、第2孔54a及び第2溝54bから構成されている。第2孔54aは、直線状に延びるとともに一端が第2凹部52の第6内面52fにおける第3内面52c寄りに開口し、他端が第2軸受収容凹部32の内周面32bにおける底面32a側の端部に開口している。第2孔54aの他端は、第2スペーサ35の外周面に対して駆動軸16の径方向で重なっている。第2溝54bは、第2軸受収容凹部32の底面32aに形成されており、一端が第2孔54aの他端に連通するとともに他端が第2シール収容凹部34に連通している。そして、第2凹部52内のオイルは、第2孔54a及び第2溝54bを介して第2シール収容凹部34に供給される。なお、第2孔54aの孔径は、第2凹部52に流入したオイルが第2凹部52に貯留可能な孔径に絞られている。
【0062】
図9に示すように、ロータハウジング14の底壁14aには、第2凹部52から第3シール収容凹部39へオイルを供給する第3油供給通路55が形成されている。第3油供給通路55は、第3孔55a及び第3溝55bから構成されている。第3孔55aは、直線状に延びるとともに一端が第2凹部52の第6内面52fにおける第5内面52e寄りに開口し、他端が第3軸受収容凹部37の内周面37bにおける底面37a側の端部に開口している。第3孔55aの他端は、第3スペーサ40の外周面に対して従動軸17の径方向で重なっている。第3溝55bは、第3軸受収容凹部37の底面37aに形成されており、一端が第3孔55aの他端に連通するとともに他端が第3シール収容凹部39に連通している。そして、第2凹部52内のオイルは、第3孔55a及び第3溝55bを介して第3シール収容凹部39に供給される。なお、第3孔55aの孔径は、第2凹部52に流入したオイルが第2凹部52に貯留可能な孔径に絞られている。
【0063】
図3及び
図4に示すように、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eには、逃げ凹部としての第1逃げ凹部61が形成されている。第1逃げ凹部61の開口縁は、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eに連続している。第1逃げ凹部61は、第1逃げ凹部61の開口縁から駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に延びる延在面としての第1延在面62と、第1延在面62から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して直交する方向に延びる起立面としての第1起立面63と、を有している。第1起立面63は、第1延在面62における第1逃げ凹部61の開口縁とは反対側の縁部から起立している。
【0064】
図4に示すように、第1延在面62は、第1凹部51の第5内面51eに連続し、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と第1軸受収容凹部27との間に向けて延びる第1面62aを有している。また、第1延在面62は、第1凹部51の第6内面51fに連続し、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と第4軸受収容凹部42との間に向けて延びる第2面62bを有している。さらに、第1延在面62は、第1面62aにおける第1凹部51とは反対側の端縁と第2面62bにおける第1凹部51とは反対側の端縁とを接続する第3面62cを有している。第3面62cは、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1凹部51に対して遠ざかるように窪む湾曲面である。第1逃げ凹部61は、第1凹部51に連通している。
【0065】
第3面62cは、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1よりも仮想平面S寄りに位置している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第3面62cにおける仮想平面Sに最も近い部位は、仮想平面S上に位置している。したがって、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位は、仮想平面S上に位置している。そして、第1延在面62は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61における仮想平面Sに最も近い部位を含んでいる。第1延在面62は、仮想平面Sから駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。
【0066】
第1起立面63は、第1面62aにおける第1逃げ凹部61の開口縁とは反対側の縁部、第2面62bにおける第1逃げ凹部61の開口縁とは反対側の縁部、及び第3面62cにおける第1逃げ凹部61の開口縁とは反対側の縁部それぞれに連続している。第1起立面63は、第1凹部51の第6内面51fの大部分、及び第1凹部51の第5内面51eの一部分に連続している。第1起立面63は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と対向している。したがって、第1逃げ凹部61は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と少なくとも対向し、且つ、仮想平面Sから駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。
【0067】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の一部分は、大径孔271の一部分に重なっており、第1逃げ凹部61は、大径孔271に連通している。また、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1面62aの一部は、第1軸受収容凹部27の内周面27b上に位置している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2面62b全体は、第4軸受収容凹部42に対して、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1寄りに離間している。
図7に示すように、第1逃げ凹部61における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向の長さは、大径孔271の軸線方向の長さと同じである。
【0068】
図3及び
図5に示すように、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eには、逃げ凹部としての第2逃げ凹部65が形成されている。第2逃げ凹部65の開口縁は、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eに連続している。第2逃げ凹部65は、第2逃げ凹部65の開口縁から駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に延びる延在面としての第2延在面66と、第2延在面66から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して直交する方向に延びる起立面としての第2起立面67と、を有している。第2起立面67は、第2延在面66における第2逃げ凹部65の開口縁とは反対側の縁部から起立している。
【0069】
図5に示すように、第2延在面66は、第2凹部52の第6内面52fにおける第3内面52c寄りの部位に連続し、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と第2軸受収容凹部32との間に向けて延びる第1面66aを有している。また、第2延在面66は、第2凹部52の第6内面52fにおける第5内面52e寄りの部位に連続し、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と第3軸受収容凹部37との間に向けて延びる第2面66bを有している。さらに、第2延在面66は、第1面66aにおける第2凹部52とは反対側の端縁と第2面66bにおける第2凹部52とは反対側の端縁とを接続する第3面66cを有している。第3面66cは、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2凹部52に対して遠ざかるように窪む湾曲面である。第2逃げ凹部65は、第2凹部52に連通している。
【0070】
第3面66cは、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1よりも仮想平面S寄りに位置している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第3面66cにおける仮想平面Sに最も近い部位は、仮想平面S上に位置している。したがって、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位は、仮想平面S上に位置している。そして、第2延在面66は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65における仮想平面Sに最も近い部位を含んでいる。第2延在面66は、仮想平面Sから駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。
【0071】
第2起立面67は、第1面66aにおける第2逃げ凹部65の開口縁とは反対側の縁部、第2面66bにおける第2逃げ凹部65の開口縁とは反対側の縁部、及び第3面66cにおける第2逃げ凹部65の開口縁とは反対側の縁部それぞれに連続している。第2起立面67は、第2凹部52の第6内面52fに連続している。第2起立面67は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と対向している。したがって、第2逃げ凹部65は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と少なくとも対向し、且つ、仮想平面Sから駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。
【0072】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1面66a全体は、第2軸受収容凹部32に対して、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1寄りに離間している。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2面66b全体は、第3軸受収容凹部37に対して、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1寄りに離間している。
【0073】
駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向において、第1逃げ凹部61の第1面62aと第2逃げ凹部65の第1面66aとは互いに重なり合う位置に配置されている。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向において、第1逃げ凹部61の第2面62bと第2逃げ凹部65の第2面66bとは互いに重なり合う位置に配置されている。駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向において、第1逃げ凹部61の第3面62cと第2逃げ凹部65の第3面66cとは互いに重なり合う位置に配置されている。
【0074】
図8及び
図9に示すように、第2逃げ凹部65は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向において、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eから、第2油供給通路54の第2孔54aにおける第2凹部52に対する開口縁の手前、及び第3油供給通路55の第3孔55aにおける第2凹部52に対する開口縁の手前まで延びている。
【0075】
次に、本実施形態の作用について説明する。
電動ルーツポンプ10の運転時では、駆動ギア18及び従動ギア19がギア室24内のオイルを掻き上げることにより、オイルが第1凹部51及び第2凹部52に流入する。具体的には、ギア室24に封入されているオイルは、駆動ギア18及び従動ギア19の回転により、駆動ギア18と接続面133cとの隙間、及び従動ギア19と接続面134cとの隙間を介してギア室24の吐出口46側に向けて掻き上げられる。駆動ギア18によって掻き上げられたオイルと、従動ギア19によって掻き上げられたオイルとは、ギア室24内において、噛合部47に対して吐出口46側で互いに衝突して第1凹部51及び第2凹部52にそれぞれ流入する。
【0076】
このとき、第1凹部51の第4内面51dは、第2凹部52の第2内面52bよりも噛合部47に近い位置にあり、第2凹部52の第4内面52dは、第1凹部51の第2内面51bよりも噛合部47に近い位置にある。よって、第1凹部51の第4内面51d及び第2凹部52の第4内面52dは、噛合部47に対して吐出口46側で互いに衝突して飛散したオイルを受け止めて、第1凹部51及び第2凹部52における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向への流れを促進させる。これにより、第1凹部51及び第2凹部52にオイルが貯留され易くなる。
【0077】
図6において仮想線で示すように、電動ルーツポンプ10の運転停止時において、ギア室24内のオイルの液面L10が、例えば、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線L1,L2付近に位置するまで、ギア室24内にオイルが封入されていたとする。この場合であっても、電動ルーツポンプ10の運転時においては、ギア室24内のオイルが第1凹部51及び第2凹部52に流入する分だけ、
図6において実線で示すように、ギア室24内のオイルの液面L10が下がる。したがって、駆動ギア18及び従動ギア19の撹拌抵抗が低減される。
【0078】
第1凹部51に流入したオイルは第1油供給通路53を介して第1シール収容凹部29に供給され、第2凹部52に流入したオイルは第2油供給通路54を介して第2シール収容凹部34に供給されるとともに第3油供給通路55を介して第3シール収容凹部39に供給される。このとき、第1凹部51及び第2凹部52は、駆動ギア18と従動ギア19との間に挟まれる領域において、少なくとも一部が重複しているため、ギア室24から第1凹部51及び第2凹部52にオイルが均等に分配され易くなっている。
【0079】
さらに、第1凹部51において仮想平面Sに最も近い最下部51gと第2凹部52において仮想平面Sに最も近い最下部52gに関し仮想平面Sとの距離がそれぞれ等しい。つまり、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第1凹部51及び第2凹部52は、駆動ギア18と従動ギア19との間に挟まれる領域において、駆動軸16の回転軸線L1及び従動軸17の回転軸線L2の両方を含む仮想平面Sとの最短距離がそれぞれ一致している。このため、ギア室24から第1凹部51及び第2凹部52にオイルが均等に分配され易くなっている。よって、第1シール収容凹部29、第2シール収容凹部34、及び第3シール収容凹部39にそれぞれ収容されている第1シール部材28、第2シール部材33、及び第3シール部材38へオイルが安定供給される。
【0080】
また、第1油供給通路53の第1溝53bは、第1軸受収容凹部27の底面27aに形成されているため、重力に従って第1凹部51から第1孔53aを介して第1溝53bから流れ出るオイルは、第1軸受収容凹部27にも供給される。よって、第1軸受26へオイルが安定供給される。第2油供給通路54の第2溝54bは、第2軸受収容凹部32の底面32aに形成されているため、重力に従って第2凹部52から第2孔54aを介して第2溝54bから流れ出るオイルは、第2軸受収容凹部32にも供給される。よって、第2軸受31へオイルが安定供給される。第3油供給通路55の第3溝55bは、第3軸受収容凹部37の底面37aに形成されているため、重力に従って第2凹部52から第3孔55aを介して第3溝55bから流れ出るオイルは、第3軸受収容凹部37にも供給される。よって、第3軸受36へオイルが安定供給される。
【0081】
例えば、氷点下のような外気温度が低い低温環境下で、電動ルーツポンプ10を起動させる場合、ギア室24内に封入されているオイルの温度が低下しているため、駆動ギア18及び従動ギア19は、粘度の高いオイルを掻き上げながら回転することになる。駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1においては、駆動ギア18及び従動ギア19それぞれによって掻き上げられたオイルが互いに勢いよく衝突する。
【0082】
そして、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1において衝突したオイルの一部は、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65それぞれへ流入する。これにより、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量が減少し、電動ルーツポンプ10を低温環境下で起動する際に、駆動ギア18及び従動ギア19がスムーズに回転する。
【0083】
上記実施形態では以下の効果を得ることができる。
(1)駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1において衝突したオイルの一部が、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65それぞれへ流入するため、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量を減らすことができる。したがって、電動ルーツポンプ10を低温環境下で起動する際に、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれる粘度の高いオイルの量を減らすことができる。
【0084】
また、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65は、仮想平面Sから駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。ここで、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eにおいて、第1逃げ凹部61が、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径との噛み合い始め側の交点Q1と対向する部分から、仮想平面Sを跨いで駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い終わり側の交点Q2の位置側の領域まで延びている場合を考える。また、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eにおいて、第2逃げ凹部65が、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1と対向する部分から、仮想平面Sを跨いで駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い終わり側の交点Q2の位置側の領域まで延びている場合を考える。
【0085】
このような場合に比べると、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれているオイルが第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65に流入し難くなる。したがって、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量が過剰に減ってしまうことを抑制することができ、駆動ギア18及び従動ギア19の焼き付きや摩耗が生じ難くなる。以上のことから、駆動ギア18及び従動ギア19の耐久性を維持しつつも、電動ルーツポンプ10を低温環境下で起動する際に駆動ギア18及び従動ギア19をスムーズに回転させることができる。
【0086】
(2)ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eに第1逃げ凹部61が形成されており、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eに第2逃げ凹部65が形成されている。これによれば、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1において衝突したオイルの一部が、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65へそれぞれ流入するため、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。したがって、電動ルーツポンプ10を低温環境下で起動する際に、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれる粘度の高いオイルの量を効率良く減らすことができる。
【0087】
(3)駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位、及び第2逃げ凹部65の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位は、仮想平面S上にそれぞれ位置している。このような構成によれば、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量が過剰に減ってしまうことを抑制しつつも、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。
【0088】
(4)第1逃げ凹部61は、第1逃げ凹部61の開口縁から駆動軸16の回転軸線方向に延びる第1延在面62と、第1延在面62から起立して駆動軸16の回転軸線方向に対して直交する方向に延びる第1起立面63と、を有している。第1延在面62は、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61における仮想平面Sに最も近い部位を含む。また、第2逃げ凹部65は、第2逃げ凹部65の開口縁から駆動軸16の回転軸線方向に延びる第2延在面66と、第2延在面66から起立して駆動軸16の回転軸線方向に対して直交する方向に延びる第2起立面67と、を有している。第2延在面66は、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65における仮想平面Sに最も近い部位を含む。
【0089】
これによれば、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1において衝突して第1逃げ凹部61へ流入したオイルの一部が、第1逃げ凹部61の開口縁から第1延在面62に沿いながら第1起立面63に向けて流れるため、第1逃げ凹部61に流入したオイルが第1逃げ凹部61内に留まり易い。また、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1において衝突して第2逃げ凹部65へ流入したオイルの一部が、第2逃げ凹部65の開口縁から第2延在面66に沿いながら第2起立面67に向けて流れるため、第2逃げ凹部65に流入したオイルが第2逃げ凹部65内に留まり易い。したがって、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65にそれぞれ流入したオイルが、第1逃げ凹部61及び第2逃げ凹部65からギア室24内へすぐに還流してしまうことを抑制することができるため、駆動ギア18と従動ギア19との間に噛み込まれるオイルの量を効率良く減らすことができる。
【0090】
(5)第1軸受収容凹部27に収容される第1軸受26は、大径孔271の軸線方向の長さ分だけ、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eから離間した位置に配置されている。そして、第1逃げ凹部61における駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向の長さは、大径孔271の軸線方向の長さと同じである。これによれば、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の第1面62aの一部が、第1軸受収容凹部27の内周面27b上に位置していたとしても、第1逃げ凹部61が第1軸受収容凹部27内に収容されている第1軸受26に干渉してしまうことが回避されている。したがって、第1逃げ凹部61が第1軸受26に干渉してしまうことを回避しつつも、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の第1面62aを、第1軸受収容凹部27に可能な限り近づけることができる。その結果、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61において、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1に対して第1軸受収容凹部27側に位置する領域を極力広く確保することができる。
【0091】
(6)電動ルーツポンプ10を低温環境下で起動する際に、駆動ギア18及び従動ギア19をスムーズに回転させることができるため、電動モータ22の消費電力を低減させることができる。
【0092】
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0093】
○ 実施形態において、第1逃げ凹部61の第1起立面63が、第1延在面62から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して斜交する方向に延びていてもよい。要は、第1起立面63は、第1延在面62から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して交差する方向に延びていればよい。
【0094】
○ 実施形態において、第2逃げ凹部65の第2起立面67が、第2延在面66から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して斜交する方向に延びていてもよい。要は、第2起立面67は、第2延在面66から起立して駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に対して交差する方向に延びていればよい。
【0095】
○ 実施形態において、第1逃げ凹部61は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位を含む部分から離間するにつれて第1凹部51に近づくように延びるテーパ面を有する構成であってもよい。この場合、第1延在面62は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61における仮想平面Sに最も近い部位を含んでいない。
【0096】
○ 実施形態において、第2逃げ凹部65は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位を含む部分から離間するにつれて第2凹部52に近づくように延びるテーパ面を有する構成であってもよい。この場合、第2延在面66は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65における仮想平面Sに最も近い部位を含んでいない。
【0097】
○ 実施形態において、第1逃げ凹部61の第1面62aと第2逃げ凹部65の第1面66aとが、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向で重なっていなくてもよく、互いにずれた位置に配置されていてもよい。
【0098】
○ 実施形態において、第1逃げ凹部61の第2面62bと第2逃げ凹部65の第2面66bとが、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向で重なっていなくてもよく、互いにずれた位置に配置されていてもよい。
【0099】
○ 実施形態において、第1逃げ凹部61の第3面62cと第2逃げ凹部65の第3面66cとが、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向で重なっていなくてもよく、互いにずれた位置に配置されていてもよい。この場合、例えば、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位が、仮想平面Sよりも駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。また、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第2逃げ凹部65の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位が、仮想平面Sよりも駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1の位置側の領域に配置されている。
【0100】
○ 実施形態において、駆動軸16の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位、及び第2逃げ凹部65の開口縁における仮想平面Sに最も近い部位の両方が、仮想平面S上にそれぞれ位置していなくてもよい。
【0101】
○ 実施形態において、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向から見たときに、第1逃げ凹部61の第1面62aの一部が、第1軸受収容凹部27の内周面27b上に位置していなくてもよい。そして、第1面62a全体が、第1軸受収容凹部27の内周面27bに対して、駆動ギア18の外径と従動ギア19の外径の噛み合い始め側の交点Q1寄りに離間していてもよい。
【0102】
○ 実施形態において、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13eに第1逃げ凹部61が形成されていなくてもよい。
○ 実施形態において、ロータハウジング14の底壁14aの外面14eに第2逃げ凹部65が形成されていなくてもよい。要は、ギアハウジング13の底壁13aの内底面13e、及びロータハウジング14の底壁14aの外面14eの少なくとも一方に逃げ凹部が形成されていればよい。
【0103】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21は、駆動軸16及び従動軸17の回転軸線方向に直交する断面視が、例えば、三葉状であったり、四葉状であったりしてもよい。
【0104】
○ 実施形態において、駆動ロータ20及び従動ロータ21が、例えば、ヘリカル形状であってもよい。
○ 実施形態において、電動ルーツポンプ10は、燃料ガスである水素と酸化剤ガスである空気に含まれる酸素とを化学反応させて発電を行う燃料電池に水素を供給する燃料電池用水素ポンプでなくてもよく、その他の用途で用いられるものであってもよい。
【符号の説明】
【0105】
Q1,Q2…交点、S…仮想平面、10…電動ルーツポンプ、11…ハウジング、13a…第1隔壁として機能する底壁、13e…端面である内底面、14a…第2隔壁として機能する底壁、14e…端面である外面、16…駆動軸、17…従動軸、18…駆動ギア、19…従動ギア、20…駆動ロータ、21…従動ロータ、22…電動モータ、23…モータ室、24…ギア室、25…ロータ室、61…逃げ凹部としての第1逃げ凹部、62…延在面としての第1延在面、63…起立面としての第1起立面、65…逃げ凹部としての第2逃げ凹部、66…延在面としての第2延在面、67…起立面としての第2起立面。