(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ステータの検査方法及び検査システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/52 20200101AFI20230120BHJP
G01N 27/06 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G01R31/52
G01N27/06 Z
(21)【出願番号】P 2019165210
(22)【出願日】2019-09-11
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2018190556
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110001117
【氏名又は名称】弁理士法人ぱてな
(72)【発明者】
【氏名】猪飼 健介
(72)【発明者】
【氏名】安谷屋 拓
(72)【発明者】
【氏名】平野 泰三
(72)【発明者】
【氏名】杉本 亘
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-202339(JP,A)
【文献】特開2004-347609(JP,A)
【文献】特開昭62-180282(JP,A)
【文献】特開2011-058864(JP,A)
【文献】特開2005-274234(JP,A)
【文献】特開2010-223883(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 31/50-31/74、
31/327-31/34、
H01F 41/00-41/04、
41/08、
41/10、
H02K 11/00-11/40、
15/00-15/02、
15/04-15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査方法であって、
検査室内に密閉状態で前記ステータを収納する収納工程と、
前記収納工程後、前記検査室内を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後、電気伝導性を有する検査液
を前記検査室内に供給し、前記検査液に前記ステータを浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程後、前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査工程とを備えていることを特徴とするステータの検査方法。
【請求項2】
前記浸漬工程と前記検査工程との間に、前記検査室内を大気に開放する大気開放工程を行う請求項1記載のステータの検査方法。
【請求項3】
絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査システムであって、
内部に密閉状態で前記ステータを収納可能であり、電気伝導性を有する検査液に前記ステータを浸漬可能な検査室が形成された検査容器と、
前記検査室と減圧通路によって連通し、前記検査室を減圧可能な減圧装置と、
前記検査室と液体供給通路によって連通し、前記検査液を貯留する液体タンクと、
前記減圧通路を開閉可能な第1開閉弁と、
前記液体供給通路を開閉可能な第2開閉弁と、
少なくとも前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を制御する制御装置と、
前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査装置とを備え、
前記制御装置は、前記ステータが収納された前記検査室内に前記検査液がない状態で、前記第2開閉弁を閉じるとともに前記第1開閉弁を開き、
前記検査室が所定の真空度になった時点で、前記第1開閉弁を閉じるとともに前記第2開閉弁を開
いて前記検査液を前記検査室内に供給し、
前記検査室内で前記ステータが前記検査液に浸漬された時点で、前記第2開閉弁を閉じ、前記検査装置を作動させることを特徴とするステータの検査システム。
【請求項4】
前記検査室内を大気開放可能な大気開放弁を備え、
前記制御装置は、前記検査室内で前記ステータが前記検査液に浸漬された時点で、前記第2開閉弁を閉じた後、前記大気開放弁により前記検査室内を大気開放し、前記検査装置を作動させる請求項3記載のステータの検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステータの検査方法及び検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
モータ等を構成するステータはコイルを有し、コイルは絶縁被覆導線からなっている。絶縁被覆導線の具体例は、導線としての銅線にエナメルからなる絶縁層が被覆されたエナメル線である。絶縁被覆導線の絶縁層にピンホール、傷等の目視不能な欠陥があると、電気伝導性のある雰囲気でコイルに短絡を生じ、モータ等の本来の機能が損なわれてしまう。
【0003】
特許文献1には、このようなステータの検査に供し得る減圧加熱槽が開示されている。この減圧加熱槽によってステータの良否の検査を行なう場合、まず検査室を有する検査容器を用意し、電気伝導性を有する検査液を検査室内に供給する。そして、検査室内にステータを収納し、検査液にステータを浸漬する。この後、検査室内を減圧し、コイルを含むステータの内部に存在する空気を気泡として排除する。そして、絶縁抵抗値や漏れ電流量を測定することにより、ステータからの検査液を介した漏電を検査する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、発明者らの確認によれば、上記従来の検査方法では、ステータの良否の検査精度が低く、検査に長時間を要するとともに、検査時間を一定にし難い。
【0006】
すなわち、この検査方法では、検査液にステータを浸漬した後で検査室内を減圧しているため、気泡とともに検査液の成分が揮発し易い。このため、検査毎に検査液の電気伝導率が変化し、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量が変化し易いことから、高い検査精度を確保できない。
【0007】
また、この検査方法では、ステータが検査液に浸漬された後に検査室内を減圧することから、ステータの内部に浸透した検査液から空気が移動し難く、所定の真空度を実現するまでに長時間を要する。また、検査液に含有される空気量にばらつきがあり得ることから、検査時間もばらつき易い。
【0008】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、ステータの良否を高い検査精度、短時間かつ安定した時間で行なうことができるステータの検査方法及び検査システムを提供することを解決すべき課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のステータの検査方法は、絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査方法であって、
検査室内に密閉状態で前記ステータを収納する収納工程と、
前記収納工程後、前記検査室内を減圧する減圧工程と、
前記減圧工程後、電気伝導性を有する検査液を前記検査室内に供給し、前記検査液に前記ステータを浸漬する浸漬工程と、
前記浸漬工程後、前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査工程とを備えていることを特徴とする。
【0010】
本発明の検査方法では、収納工程、減圧工程、浸漬工程及び検査工程の順に実行するため、減圧工程時に検査液の成分が揮発することはなく、検査毎に検査液の電気伝導率が変化し難い。このため、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量は変化せず、高い検査精度を確保できる。
【0011】
また、この検査方法では、ステータを収納した検査室の減圧工程を行なった後で浸漬工程を行なうことから、検査液を供給するだけでコイルを含むステータの内部まで検査液を迅速に浸透させることができる。このため、従来よりも短時間で所定の真空度を実現できる。また、検査液を減圧工程に供さないことから、減圧時間が安定する。
【0012】
したがって、本発明のステータの検査方法によれば、ステータの良否を高い検査精度、短時間かつ安定した時間で行なうことができる。
【0013】
また、本発明のステータの検査システムは、絶縁被覆導線からなるコイルを有するステータの検査システムであって、
内部に密閉状態で前記ステータを収納可能であり、電気伝導性を有する検査液に前記ステータを浸漬可能な検査室が形成された検査容器と、
前記検査室と減圧通路によって連通し、前記検査室を減圧可能な減圧装置と、
前記検査室と液体供給通路によって連通し、前記検査液を貯留する液体タンクと、
前記減圧通路を開閉可能な第1開閉弁と、
前記液体供給通路を開閉可能な第2開閉弁と、
少なくとも前記第1開閉弁及び前記第2開閉弁を制御する制御装置と、
前記ステータからの前記検査液を介した漏電を検査する検査装置とを備え、
前記制御装置は、前記ステータが収納された前記検査室内に前記検査液がない状態で、前記第2開閉弁を閉じるとともに前記第1開閉弁を開き、
前記検査室が所定の真空度になった時点で、前記第1開閉弁を閉じるとともに前記第2開閉弁を開いて前記検査液を前記検査室内に供給し、
前記検査室内で前記ステータが前記検査液に浸漬された時点で、前記第2開閉弁を閉じ、かつ前記検査装置を作動させることを特徴とする。
【0014】
本発明の検査システムでは、制御装置は、ステータが収納された検査室内に検査液がない状態で、第2開閉弁を閉じるとともに第1開閉弁を開く。このため、検査室には液体タンクから検査液が供給されず、検査室は減圧装置によって減圧される。このため、検査液の成分が減圧装置によって揮発することはない。また、検査液を減圧しないことから、従来よりも短時間かつ安定した時間で所定の真空度を実現できる。
【0015】
そして、制御装置は、検査室が所定の真空度になった時点で、第1開閉弁を閉じるとともに第2開閉弁を開く。このため、検査室は所定の真空度に維持され、検査室に液体タンクから検査液が供給される。このため、検査液がステータを浸漬し、検査液がコイルを含むステータの内部まで迅速に浸透する。
【0016】
次いで、制御装置は、検査室内でステータが検査液に浸漬された時点で、第2開閉弁を閉じ、かつ検査装置を作動させる。このため、検査室への検査液の供給が停止され、ステータからの検査液を介した漏電が検査される。この際、検査液の電気伝導率は検査毎で変化し難いことから、基準となる絶縁抵抗値や漏れ電流量は変化せず、高い検査精度を確保できる。
【0017】
したがって、本発明のステータの検査システムによれば、ステータの良否を高い検査精度、短時間かつ安定した時間で行なうことができる。
【0018】
本発明のステータの検査方法では、浸漬工程と検査工程との間に、検査室内を大気に開放する大気開放工程を行うことが好ましい。
【0019】
本発明のステータの検査システムは、検査室内を大気開放可能な大気開放弁を備えていることが好ましい。そして、制御装置は、検査室内でステータが検査液に浸漬された時点で、第2開閉弁を閉じた後、大気開放弁により検査室内を大気開放し、検査装置を作動させることが好ましい。
【0020】
この場合、減圧下で検査液が含有する僅かな気泡について、検査液に大気圧を作用させて検査液から排除することができるため、減圧下で検査工程を行うよりも高い検査精度を確保できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明のステータの検査方法及び検査システムによれば、ステータの良否を高い検査精度、短時間かつ安定した時間で行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施例の検査方法及び検査システムによる工程表である。
【
図2】
図2は、実施例の検査システムを示し、収納工程時の模式断面図である。
【
図3】
図3は、実施例の検査システムに係り、モータハウジング等の断面図である。
【
図4】
図4は、実施例の検査システムに係り、クラスタブロック等の一部拡大断面図である。
【
図5】
図5は、ステータと検査装置とを示す模式図である。
【
図6】
図6は、実施例の検査システムを示し、減圧工程時の模式断面図である。
【
図7】
図7は、実施例の検査システムを示し、浸漬工程、大気開放工程及び検査工程時の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を具体化した実施例を図面を参照しつつ説明する。実施例では、車両用電動圧縮機のモータ部に採用されるステータ1(
図1、3、6、7参照)の良否を検査する。
【0024】
実施例の検査方法は、
図1に示すように、収納工程S1、減圧工程S2、浸漬工程S3、大気開放工程S4及び検査工程S5を実行する。この際、実施例の検査システムを用いる。この検査システムは、検査容器3と、真空ポンプ5と、液体タンク7と、第1開閉弁9と、第2開閉弁16と、制御装置13と、検査装置15とを備えている。
【0025】
検査容器3は、
図2及び
図3に示すように、モータハウジング3aと、蓋体3bとからなる。モータハウジング3aは車両用電動圧縮機の外郭の一部をなすものである。このモータハウジング3aは、上方に開口3dを有して有底筒状をなしている。モータハウジング3aのモータ室3c内には、ステータ1が焼き嵌めによって固定されている。モータハウジング3aの側壁の下端には外部とモータ室3cとを連通する吸入口3eが形成されている。モータ室3cが本発明の検査室とされる。
【0026】
蓋体3bは樹脂製である。蓋体3bは、モータハウジング3aの開口3dに上方から嵌合されて開口3dを閉塞し、モータ室3cを密閉可能である。モータ室3cは、
図2に示す検査液17が液体タンク7から供給されることにより、ステータ1を浸漬可能になっている。検査液17としては、一定の電気伝導率に調整された水、フッ素系不活性液体と導電性液体との混合液、食塩水等を採用することができる。
【0027】
蓋体3bには、モータ室3c内に連通する液体供給通路8b、減圧通路19b及び大気開放通路20が設けられている。液体供給通路8bは液体タンク7と接続された液体供給通路8aと接続されるようになっており、減圧通路19bは真空ポンプ5と接続された減圧通路19aと接続されるようになっている。大気開放通路20はモータ室3cと大気とを連通しており、途中には大気開放弁21が設けられている。また、蓋体3bには、モータ室3cの圧力を検知可能な圧力センサ25が設けられている。
【0028】
ステータ1は、
図3及び
図4に示すように、コイル1a、コア1b、クラスタブロック1c、チューブ1d、ターミナル1e及び封止部材1f、1gを有している。
【0029】
コイル1aは銅線にエナメルからなる絶縁層が被覆されたエナメル線からなっている。コア1bは複数のスロットを有し、各スロットにコイル1aが設けられている。クラスタブロック1cは、モータハウジング3a内に保持されている。クラスタブロック1cは樹脂製であり、内部に3本の通路を有している。
【0030】
図4に示すように、コイル1aから延出されたエナメル線からなる2本ずつ3組のリード1iは、クラスタブロック1cの手前で樹脂製のチューブ1d内にそれぞれ挿通されている。各チューブ1dはクラスタブロック1cの各通路内でそれぞれターミナル1eに保持され、各チューブ1d内のリード1iの銅線はターミナル1eに電気的に接続されている。
【0031】
各ターミナル1eには通電ピン29が挿通されている。各通電ピン29は、モータハウジング3aの外側において、電動圧縮機駆動用のインバータと接続されるためのものである。
【0032】
封止部材1fとクラスタブロック1cとの間は樹脂製のシール剤によって封止されている。こうして、このステータ1では、チューブ1dとリード1iとの間隙のみが均圧通路となっている。封止部材1gは、3本の通電ピン29を挿通させるモータハウジング3aの通孔3fに嵌合され、各通電ピン29を封止できるようになっている。
【0033】
図2に示すように、検査容器3は、モータハウジング3aの吸入口3eに連通する第1回収路10aによってろ過装置12に連通されている。ろ過装置12は第2回収路10bによって液体タンク7に連通している。第1回収路10a及び第2回収路10bには、図示しない液送ポンプが設けられている。
【0034】
液体タンク7は、検査容器3のモータ室3cから回収した検査液17を真空状態で貯留している。液体タンク7内には、検査液17の温度を調整するヒータ7aが設けられている。液体供給通路8a、8bは、液体タンク7の底部とモータ室3cとを連通している。液体供給通路8aには第2開閉弁16が設けられている。
【0035】
第1回収路10aには、吸入口3eを開いてモータ室3cと第1回収路10a内とを連通できるとともに、吸入口3eを閉じてモータ室3cを密閉できる電磁開閉装置14が設けられている。
【0036】
実施例の検査システムは、各検査容器3に減圧通路19a、19bによって接続される真空ポンプ5も備えている。減圧通路19aには、第1開閉弁9が設けられている。真空ポンプ5は変圧装置としての減圧装置に相当し、減圧通路19a、19bは変圧通路に相当する。真空ポンプ5は第1開閉弁9が開いておれば、モータ室3cを所定の真空度以上に減圧可能である。
【0037】
検査装置15は、
図5に示すように、モータハウジング3aに接続された接続端子27と、ステータ1と接続される通電ピン29と接続された接続端子31と電気的に接続されている。コイル1aは三相からなり、Y結線されている。このため、接続端子31は、
図4に示すように、クラスタブロック1c内の一つのターミナル1eと電気的に接続されている。検査装置15は、
図5に示すように、抵抗計15aと、補正回路15bとを有している。
【0038】
補正回路15bは、抵抗計15a側の接続点P1と接続端子27側の接続点P2との間に設けられている。接続点P1には抵抗R1を有する導線L1が接続されている。導線L1には、抵抗R1より接続点P2側において、導線L2~L4が並列に接続されている。導線L2には抵抗R2が設けられている。導線L3には、抵抗R1側に位置するコンデンサC1と、接続点P2側に位置する抵抗R3とが設けられている。導線L4にはコンデンサC2が設けられている。この補正回路15bは、抵抗計15aと接続端子27との間を流れる吸収電流における時間と絶縁抵抗値との変化特性を平準化する。抵抗計15aは、接続端子31と補正回路15bとの間の絶縁抵抗値を検出し、ステータ1からの検査液17を介した漏電を検査する。
【0039】
この検査システムは、制御装置13も備えている。制御装置13は、真空ポンプ5及び検査装置15と電気的に接続されている。また、モータハウジング3aは重量計33上に載置されている。制御装置13は重量計33及び圧力センサ25とも電気的に接続されている。また、第1、2開閉弁9、16、大気開放弁21及び電磁開閉装置14も制御装置13と電気的に接続されている。制御装置13はこれらを制御する。
【0040】
この検査システムによってステータ1の良否の検査を行なう。まず、
図1及び
図2に示すように、収納工程S1として、検査室としてのモータ室3c内にステータ1を収納する。この際、
図3に示すように、ステータ1はモータハウジング3aのモータ室3c内に既に固定されている。
図4に示すように、クラスタブロック1cに設けられた3本の通電ピン29は、モータハウジング3aに形成された通孔3f及び封止部材1gからモータハウジング3a外に突出されている。3本の通電ピン29の1本に接続端子31を接続する。
【0041】
この後、
図6に示すように、蓋体3bを閉じる。この際、制御装置13は、モータ室3c内に検査液17がない状態で、第1開閉弁9及び第2開閉弁16を閉じている。また、制御装置13は、電磁開閉装置14を作動させ、吸入口3eを閉じている。
【0042】
次いで、
図1及び
図6に示すように、減圧工程S2として、制御装置13は、真空ポンプ5を作動するとともに、第1開閉弁9を開く。このため、モータ室3cには液体タンク7から検査液17が供給されず、モータ室3cは真空ポンプ5によって減圧される。このため、検査液17の成分が真空ポンプ5によって揮発することはない。また、検査液17を減圧しないことから、従来よりも短時間かつ安定した時間で所定の真空度を実現できる。
【0043】
制御装置13は、圧力センサ25からの信号によってモータ室3cが所定の真空度になったか否かを判断し、モータ室3cが所定の真空度になれば、
図1及び
図7に示すように、浸漬工程S3を実行する。この際、まず、制御装置13は、第1開閉弁9を閉じるとともに真空ポンプ5の作動を停止する。このため、モータ室3cは所定の真空度に維持される。
【0044】
この後、制御装置13は第2開閉弁16を開く。このため、モータ室3cに液体タンク7から検査液17が供給される。このため、検査液17がステータ1を浸漬し始める。この際、モータハウジング3aに設けられる蓋体3bに液体供給通路8a、8bが設けられているため、液体タンク7内の検査液17を容易にモータ室3cに供給することができる。また、ヒータ7aは液体タンク7内の検査液17を予め加熱している。このため、モータ室3c内において、ステータ1を焼き嵌めしているモータハウジング3aの温度と検査液17の温度とが早期に均温になり、絶縁抵抗値のバラツキを早期に無くしている。
【0045】
次いで、制御装置13は、重量計33からの信号によって検査液17がステータ1を浸漬したか否かを判断し、検査液17がステータ1を浸漬する量だけ供給されれば、第2開閉弁16を閉じる。このため、モータ室3cへの検査液17の供給が停止される。こうして、検査液17を真空状態で管理する。
【0046】
図1に示すように、浸漬工程S3後、制御装置13は大気開放弁21を開き、モータ室3c内を大気に開放する大気開放工程S4を行う。この際、減圧下で検査液17が含有する僅かな気泡について、検査液17に大気圧を作用させて検査液17から排除する。
【0047】
大気開放工程S4後、制御装置13は、まず、モータ室3c内の検査液17の電気伝導率を測定する。この電気伝導率が一定範囲内であれば、検査装置15を作動させ、検査工程S5を実行する。具体的には、抵抗計15aによって絶縁抵抗値を検出し、ステータ1からの検査液17を介した漏電を検査する。
【0048】
こうして、この検査方法及び検査システムでは、収納工程S1、減圧工程S2、浸漬工程S3、大気開放工程S4及び検査工程S5の順に実行するため、減圧工程S2時に検査液17の成分が揮発することはなく、検査毎に検査液17の電気伝導率が変化し難い。このため、基準となる絶縁抵抗値は変化せず、高い検査精度を確保できる。
【0049】
また、この検査方法及び検査システムでは、ステータ1を収納したモータ室3cの減圧工程S2を行なった後で浸漬工程S3を行なうことから、検査液17を供給するだけでコイル1aを含むステータ1の内部まで検査液17を迅速に浸透させることができる。このため、従来よりも短時間で所定の真空度を実現できる。また、検査液17を減圧工程S2に供さないことから、減圧時間が安定する。
【0050】
さらに、この検査方法及び検査システムでは、浸漬工程S3と検査工程S5との間に大気開放工程S4を行っているため、減圧下で検査液17が含有する僅かな気泡も排除し、高い検査精度を確保できる。
【0051】
したがって、この検査方法及び検査システムによれば、ステータ1の良否を高い検査精度、短時間かつ安定した時間で行なうことができる。
【0052】
また、この実施例では、ステータ1が固定されたモータハウジング3aを検査容器3の一部として用いてるため、検査後に車両用電動圧縮機の組み付けを迅速に行なうことができる。
【0053】
以上において、本発明を実施例に即して説明したが、本発明は上記実施例に制限されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更して適用できることはいうまでもない。
【0054】
例えば、実施例では、車両用電動圧縮機のモータ部に使用されるステータ1の良否を検査したが、本発明では、他のモータに使用されるステータやオルタネータ等に使用されるステータの良否を検査することも可能である。また、ステータは、クラスタブロック1c等を有していなくてもよく、コアやハウジングを有していなくてもよい。
【0055】
更には、モータハウジング3aを検査容器とせず、別途の検査容器にステータを収納して検査をしてもよい。
【0056】
液体タンク7と検査容器3との間に液送ポンプを設けてもよい。また、検査装置15は、接続端子27と通電ピン29との間の漏れ電流量を検出してステータ1の良否を検査することも可能である。ヒータ7aの代わりに検査液を温度調整する他の温調手段を採用することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明はモータ等の生産設備に利用可能である。
【符号の説明】
【0058】
1a…コイル
1…ステータ
3…検査容器
3c…検査室(モータ室)
S1…収納工程
S2…減圧工程
17…検査液
S3…浸漬工程
S4…大気開放工程
S5…検査工程
19a、19b…減圧通路
5…減圧装置(真空ポンプ)
8a、8b…液体供給通路
7…液体タンク
9…第1開閉弁
16…第2開閉弁
13…制御装置
15…検査装置
21…大気開放弁