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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】固体電解コンデンサおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01G 9/012 20060101AFI20230120BHJP
   H01G 9/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
H01G9/012 303
H01G9/012 307
H01G9/012 305
H01G9/00 290E
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019509191
(86)(22)【出願日】2018-03-13
(86)【国際出願番号】 JP2018009613
(87)【国際公開番号】W WO2018180437
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017065868
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106116
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100131495
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 健児
(72)【発明者】
【氏名】黒川 明成
(72)【発明者】
【氏名】大形 徳彦
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-141209(JP,A)
【文献】特開平10-106889(JP,A)
【文献】特開2004-311976(JP,A)
【文献】特開2009-130155(JP,A)
【文献】特開2005-093820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/00
H01G 9/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、および互いに対向する一対の端面を含む少なくとも1つの多孔質焼結体と、
前記少なくとも1つの多孔質焼結体に部分的に埋設され、前記一対の主面の一方から延びる金属製リードと、
前記少なくとも1つの多孔質焼結体の表面上に形成された誘電体層と、
前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、
前記金属製リードに電気的に接続される第1の端子と、
前記固体電解質層に電気的に接続される第2の端子と、を備え、
前記第1の端子は、前記一対の側面と略平行に延びる第1の端子実装部と、前記一対の端面と略平行に延び、互いに対向する一対のアーム部と、前記第1の端子実装部と前記一対のアーム部との間に配置される折曲部と、を有し、
前記第2の端子は、前記固体電解質層に電気的に接続される端子接続部と、前記一対の側面と略平行に延びる第2の端子実装部を有し、
前記金属製リードは、前記一対のアーム部の間に狭持された状態で前記一対のアーム部のそれぞれに接触することにより、前記一対のアーム部のそれぞれと電気的に接続され、
前記金属製リードは、前記第1の端子の前記折曲部とは離間している、固体電解コンデンサ。
【請求項2】
前記第1の端子の前記一対のアーム部は、前記金属製リードと接続され、互いに対向する一対の接続面を有し、前記一対の接続面は凹凸を有する、請求項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの多孔質焼結体は、複数の多孔質焼結体であり、
前記複数の多孔質焼結体のそれぞれの前記金属製リードが、前記一対のアーム部の任意の位置において、前記一対のアーム部のそれぞれと電気的に接続される、請求項1または2のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【請求項4】
前記一対の端面の面積は、前記一対の側面の面積より狭小である、請求項1~のいずれか1項に記載の固体電解コンデンサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体電解コンデンサおよびその製造方法に関し、特に、単一の金属板から形成される陽極端子および陰極端子を有する固体電解コンデンサおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の小型化および軽量化に伴って、小型かつ大容量の高周波用コンデンサが求められている。これまでにも、等価直列抵抗(ESR)が小さく、周波数特性が優れた数多くの固体電解コンデンサが提案されている。固体電解コンデンサは、一般的には、コンデンサ素子と、これを封止する樹脂外装体と、コンデンサ素子に電気的に接続され、樹脂外装体の外部に露出する陽極端子および陰極端子と、を備える。また、コンデンサ素子は、陽極端子に電気的に接続された金属製リードの一部が埋設された陽極体と、陽極体の表面に形成された誘電体層と、誘電体層の表面に形成された固体電解質層とを有する。陽極体は、タンタル、ニオブ、チタンなどの弁作用金属粒子を焼結した多孔質焼結体で構成されている。
【0003】
例えば特許文献1には、フレームを折り曲げ加工された陽極側接続部の先端が、コンデンサ素子の金属製リードと電気的に接続されることが記載されている。一般に、固体電解コンデンサに内蔵されるコンデンサ素子の静電容量すなわち外形寸法(とりわけ厚み)は、ユーザが必要とする電気的仕様に応じて大きく異なる。したがって、特許文献1に記載の陽極側接続部は、要求される静電容量を得るために必要な厚みに応じて、外形寸法を変更する必要がある。しかしながら、コンデンサ素子の異なる外形寸法に合わせて、用いられる陽極端子および陰極端子の外形寸法を変更する場合、陽極端子および陰極端子を製造する打抜金型を個別に作製する必要があり、製造コストが増大する。また必要とされる静電容量を得るために、複数のコンデンサ素子を積層した後に樹脂外装体で封止する場合も、増大する厚みに応じた陽極端子および陰極端子を設計・加工することは、生産性の向上を阻害するものである。
【0004】
一方、特許文献2には、複数のコンデンサ素子を積層された固体電解コンデンサにおいて、各コンデンサ素子から平行に延びる複数の陽極リードが、陽極端子に溶接されたL字状の陽極接続片の側面にレーザ溶接または抵抗溶接されることが記載されている。このとき、陽極リードは陽極接続片と接触している必要があり、陽極接続片が陽極リードに向かって押圧した状態で溶接される。図10は、特許文献2に記載のコンデンサ素子110(陽極リード102を含む)および陽極接続片107を上から見た平面図である。また、図10(a)は、陽極接続片107が陽極リード102に向かって適正な圧力F1で押圧した状態で溶接された場合を示し、図10(b)は、例えば陽極リード102のコンデンサ素子110に対する埋設位置にばらつきが生じて、陽極リード102が陽極接続片107の中心に対して僅かに逸脱した位置に配置された場合など、陽極接続片107が陽極リード102に向かって過剰な圧力F2で押圧した状態で溶接された場合を示す。図10(b)から明らかなように、陽極接続片107が陽極リード102に対して僅かでも逸脱した位置に配置された場合、陽極リード102は大きく湾曲する。このとき陽極リード102がコンデンサ素子110から突出する部分(すなわち陽極リード102の根元部分)に大きなストレスが生じ、コンデンサ素子110に割れ(クラック)が発生する虞がある。
【0005】
他方、特許文献3には、陽極ワイヤを陽極リードフレームの立ち上がり部と折曲部に接触させることにより、接触面積を増大させ、陽極ワイヤと陽極リードフレームとの接続を強固にし、固体電解コンデンサの等価直列抵抗(ESR)を低減させることが記載されている。しかしながら、特許文献3に記載の陽極ワイヤは、陽極リードフレームの立ち上がり部と折曲部に接触させる必要があるため、特許文献1に関して上記説明したように、コンデンサ素子または陽極ワイヤの異なる外形寸法に合わせて、陽極リードフレームの立ち上がり部と折曲部を加工する必要があり、製造コストが増大する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2014-204059号公報
【文献】特開2004-253615号公報
【文献】特開2009-200369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明に係る態様は、さまざまな厚みを有するコンデンサ素子および積層された複数のコンデンサ素子に適用可能な陽極端子および陰極端子を有する、汎用性、生産性および信頼性の高い固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る第1の態様は、固体電解コンデンサを提供するものであって、この固体電解コンデンサは、少なくとも1つの多孔質焼結体と、金属製リードと、前記少なくとも1つの多孔質焼結体の表面上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、前記金属製リードに電気的に接続される第1の端子と、前記固体電解質層に電気的に接続される第2の端子と、を備える。前記少なくとも1つの多孔質焼結体は、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、および互いに対向する一対の端面を含む。前記金属製リードは、前記少なくとも1つの多孔質焼結体に部分的に埋設され、前一対の主面の一方から延びる。前記第1の端子は、前一対の側面と略平行に延びる第1の端子実装部と、前一対の端面と略平行に延び、互いに対向する一対のアーム部と、前記第1の端子実装部と前記一対のアーム部との間に配置される折曲部と、を有する。前記第2の端子は、前記固体電解質層に電気的に接続される端子接続部と、前記一対の側面と略平行に延びる第2の端子実装部を有する。前記金属製リードは、前記一対のアーム部のそれぞれと電気的に接続される。
【0009】
本発明に係る第2の態様は、固体電解コンデンサを提供するものであって、この固体電解コンデンサは、少なくとも1つの多孔質焼結体と、金属製リードと、前記少なくとも1つの多孔質焼結体の表面上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、前記金属製リードに電気的に接続される第1の端子と、前記固体電解質層に電気的に接続される第2の端子と、を備える。前記少なくとも1つの多孔質焼結体は、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、および互いに対向する一対の端面を含む。前記金属製リードは、前記少なくとも1つの多孔質焼結体に部分的に埋設され、前一対の主面の一方から延びる。前記第1の端子は、前一対の側面と略平行に延びる第1の端子実装部と、前一対の主面と略平行に延びるスロット部を有する立設部と、を有する。前記第2の端子は、前記固体電解質層に電気的に接続される端子接続部前記一対の側面と略平行に延びる第2の端子実装部を有する。前記金属製リードは、前記スロット部の対向する一対の接続のそれぞれと電気的に接続される。
【0010】
本発明に係る第3の態様は、固体電解コンデンサの製造方法を提供するものであって、この製造方法は、以下の第1~第5工程を備える。第1工程では、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、および互いに対向する一対の端面を含む少なくとも1つの多孔質焼結体と、前記少なくとも1つの多孔質焼結体に部分的に埋設され、前一対の主面の一方から延びる金属製リードと、前記少なくとも1つの多孔質焼結体の表面上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、を備えたコンデンサ素子を形成する。第2工程では、単一の金属板から第1の端子金属板および第2の端子金属板を形成する。第3工程では、前一対の側面と略平行に延びる第1の端子実装部と、前一対の端面と略平行に延び、互いに対向する一対のアーム部と、前記第1の端子実装部と前記一対のアーム部との間に配置される折曲部と、を有する第1の端子を、前記第1の端子金属板から形成する。第4工程では、前記固体電解質層に電気的に接続される端子接続部と、前記一対の側面と略平行に延びる第2の端子実装部を有する第2の端子を、前記第2の端子金属板から形成する。第5工程では、前記金属製リードを前記一対のアーム部で狭持した状態で、前記金属製リードを前記一対のアーム部のそれぞれと電気的に接続する。
【0011】
本発明に係る第4の態様は、固体電解コンデンサの製造方法を提供するものであって、この製造方法は、以下の第1~第5工程を備える。第1工程では、互いに対向する一対の主面、互いに対向する一対の側面、および互いに対向する一対の端面を含む少なくとも1つの多孔質焼結体と、前記少なくとも1つの多孔質焼結体に部分的に埋設され、前一対の主面の一方から延びる金属製リードと、前記少なくとも1つの多孔質焼結体の表面上に形成された誘電体層と、前記誘電体層上に形成された固体電解質層と、を備えたコンデンサ素子を形成する。第2工程では、単一の金属板から第1の端子金属板および第2の端子金属板を形成する。第3工程では、前一対の側面と略平行に延びる第1の端子実装部と、前一対の主面と略平行に延びるスロット部を有する立設部と、を有する第1の端子を、前記第1の端子金属板から形成する。第4工程では、前記固体電解質層に電気的に接続される端子接続部と、前記一対の側面と略平行に延びる第2の端子実装部を有する第2の端子を、前記第2の端子金属板から形成する。第5工程では、前記金属製リードを前記スロット部の対向する一対の接続面で狭持した状態で、前記金属製リードを前記スロット部の前記一対の接続面のそれぞれと電気的に接続する。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る態様によれば、さまざまな厚みを有するコンデンサ素子および積層された複数のコンデンサ素子に適用可能な陽極端子および陰極端子を有する、汎用性、生産性および信頼性の高い固体電解コンデンサおよびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施形態に係る固体電解コンデンサ(樹脂外装体を省略)の斜視図である。
図2】厚みの異なるコンデンサ素子を有する固体電解コンデンサの断面図である。
図3】第1の実施形態に係る、単一の金属板を打抜加工した後の陽極端子および陰極端子を示す平面図である。
図4】第1の実施形態に係る陽極端子およびコンデンサ素子(金属製リードを含む)の概略図である。
図5】3つのコンデンサ素子をZ方向に積層してなる固体電解コンデンサの図2と同様の断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る固体電解コンデンサ(樹脂外装体を省略)の斜視図である。
図7】第2の実施形態に係る陽極端子ならびに陰極端子および固体電解コンデンサの断面図であり、陽極端子7および陰極端子9のハッチングを省略して示す。
図8】第2の実施形態に係る、単一の金属板を打抜加工した後の陽極端子および陰極端子を示す平面図である。
図9】第2の実施形態に係る陽極端子およびコンデンサ素子(金属製リードを含む)の概略図である。
図10】従来技術に係るコンデンサ素子(陽極リードを含む)および陽極接続片を上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
添付図面を参照して本発明に係る固体電解コンデンサの実施形態を以下説明する。各実施形態の説明において、理解を容易にするために方向を表す用語(たとえば「上下」、「左右」、「前後」、および「X,Y,Z」など)を適宜用いるが、これは説明のためのものであって、これらの用語は本発明を限定するものでない。なお各図面において、固体電解コンデンサの各構成部品の形状または特徴を明確にするため、これらの寸法を相対的なものとして図示し、必ずしも同一の縮尺比で表したものではない。
【0015】
[実施形態1]
<固体電解コンデンサ>
図1図5を参照して、本発明の第1の実施形態に係る固体電解コンデンサについて以下説明する。図1は、多孔質焼結体(陽極体)1を含むコンデンサ素子10、多孔質焼結体(陽極体)1に埋設される金属製リード2、および第1の実施形態に係る陽極端子7ならびに陰極端子9を示す固体電解コンデンサ20(樹脂外装体11を図示せず)の斜視図である。また図2(a)および(b)は、厚みの異なるコンデンサ素子10を有する固体電解コンデンサ20のXZ平面に平行な断面図であり、陽極端子7および陰極端子9のハッチングを省略して示す。
【0016】
固体電解コンデンサ20は、図1に示すように、対向する3つの平面を含む略六面体の外形形状を有し、図2の断面図で示すように、コンデンサ素子10と、コンデンサ素子10を封止する樹脂外装体11と、樹脂外装体11の外部に露出する陽極端子7および陰極端子9とを備える。またコンデンサ素子10は、多孔質焼結体(陽極体)1と、その内部に埋設された埋設部2aおよびその外部に突出する延出部2bを含む略円筒状の金属製リード2と、多孔質焼結体(陽極体)1の表面に形成された誘電体層3と、誘電体層3の表面に形成された固体電解質層4と、固体電解質層4を覆う陰極層(導電性カーボン層5および銀ペースト層6)とを有する。
【0017】
金属製リード2の延出部2bは、詳細後述するように、陽極端子7の対向する一対のL字状のアーム部7cの間に狭持された状態で、抵抗溶接等によって陽極端子7に電気的に接続される(図1)。一方、コンデンサ素子10の銀ペースト層6は、樹脂外装体11内において導電性接着材8(例えば熱硬化性樹脂と金属粒子との混合物)を介して陰極端子9に電気的に接続される。また陽極端子7および陰極端子9の一部、樹脂外装体11から露出し、その下面が樹脂外装体11の底面と同一平面上に配設されるように折曲加工されている(図2)。
【0018】
<多孔質焼結体(陽極体)>
多孔質焼結体(陽極体)1は、YZ平面に平行な第1および第2の主面22a,22bと、XY平面に平行な上側面24aおよび下側面24bと、XZ平面に平行な前端面26aおよび後端面26bとを有する(図1)。また多孔質焼結体1は、上述のとおり、その内部に埋設された埋設部2aと、第1の主面22aからX方向に延びる延出部2bとを含む金属製リード2を有する。多孔質焼結体(陽極体)1および金属製リード2は、たとえばタンタル、ニオブ、チタン、またはこれらの合金などの同種の弁作用金属粒子で形成されるが、本発明はこれらの弁作用金属粒子に限定されるものではない。
【0019】
多孔質焼結体(陽極体)1は、詳細図示しないが、次の工程により形成される。
【0020】
まず、多孔質焼結体(陽極体)1の第1および第2の主面22a,22bに対向配置される一対の第1の固定金型部品と、多孔質焼結体(陽極体)1の前端面26aおよび後端面26bに対向配置される一対の第2の固定金型部品との間に画定された成型空間内に弁作用金属粒子を充填する。
【0021】
次に、一対の第1の固定金型部品の一方に設けた(多孔質焼結体1の第1の主面22aに対向する)貫通孔に金属製リード2を挿通する。択一的には、金属製リード2を第1の固定金型部品の貫通孔に挿通した後に、成型空間内に弁作用金属粒子を充填してもよい。
【0022】
さらに、上側面24aおよび下側面24bに対向配置される一対の押圧金型部品(「パンチ部品」ともいう。)を用いてZ方向に互いに弁作用金属粒子を押圧(加圧成型)して、焼結する。したがって、本発明に係る多孔質焼結体(陽極体)1は、押圧金型部品が弁作用金属粒子を押圧する方向(すなわちZ方向)に扁平し、前端面26aおよび後端面26bは、上側面24aおよび下側面24bより狭小となるように加圧成型される。
【0023】
<誘電体層>
誘電体層3は、多孔質焼結体(陽極体)1を構成する導電性材料の表面を酸化することにより、酸化被膜として形成することができる。具体的には、金属製リード2をキャリアバー(図示せず)に溶接し、多孔質焼結体(陽極体)1を懸垂させる。このように懸垂させた多孔質焼結体(陽極体)1を、電解水溶液(例えば、リン酸水溶液)が満たされた化成槽(化成装置)に浸漬させ、突出した金属製リード2を化成槽の陽極(図示せず)に接続し、電解水溶液を化成槽の極に接続して、多孔質焼結体(陽極体)1の陽極酸化を行うことにより、陽極体1の表面に弁作用金属の酸化被膜からなる誘電体層3を形成することができる。
【0024】
<固体電解質層>
固体電解質層4は、誘電体層3を覆うように形成されている。固体電解質層4は、例えば、二酸化マンガン、導電性高分子などで構成されている。導電性高分子を含む固体電解質層4は、例えば、誘電体層3が形成された多孔質焼結体(陽極体)1に、モノマーまたはオリゴマーを含浸させた後、化学重合もしくは電解重合によりモノマーやオリゴマーを重合させることにより、または誘電体層3が形成された多孔質焼結体(陽極体)1に、導電性高分子の溶液または分散液を含浸させ、乾燥させることにより、誘電体層3上に形成する。このとき、誘電体層3の形成工程と同様、金属製リード2をキャリアバーに溶接した状態で、固体電解質層4を誘電体層3上に形成してもよい。
【0025】
<陽極端子および陰極端子>
陽極端子7および陰極端子9は、単一の金属板を打抜(プレス)加工により形成される。図3は、単一の金属板を打抜(プレス)加工した後の陽極端子7および陰極端子9を示す平面図である。陽極端子7は、陽極端子実装部7a、陽極折曲部7b、および一対のL字状のアーム部7cを有する。一方、陰極端子9は、陰極端子実装部9a、陰極折曲部9b、および陰極端子接続部9cを有する。陽極端子7および陰極端子9は、図3の点線部に沿って谷折に、一点鎖線に沿って山折に折り曲げられて、陽極端子実装部7a、陽極折曲部7b、ならびに一対のアーム部7c、および陰極端子実装部9a、陰極折曲部9b、ならびに陰極端子接続部9cが形成される。陽極端子7の陽極端子実装部7aと陰極端子9の陰極端子実装部9aは、その下面が樹脂外装体11の底面と同一平面上に配設されるように折り曲げられる。したがって、図1に示すように、陽極端子7の陽極端子実装部7aは、多孔質焼結体1の側面24a,24b(XY平面)と略平行に延び、陽極折曲部7bは、多孔質焼結体1の主面22a,22b(YZ平面)と略平行に延び、一対のL字状のアーム部7cは、多孔質焼結体1の端面26a,26b(XZ平面)と略平行に延びている。なお本願において、「部材Aが部材Bと略平行に延びる」という記載は、部材Aが部材Bと完全に平行に延びる構成ならびに部材Aが部材Bと実質的に平行に延びる構成、および部材Aが部材Bに沿って延びる構成を表現するものである。具体的には、「部材Aが部材Bと略平行に延びる」とは、部材Bに対する部材Aの延びる方向の角度が10度未満であることを意味する。
【0026】
こうして構成された陽極端子7は、対向する一対のアーム部7cの間であって、Z方向の任意の位置において、金属製リード2を一対のアーム部7cの間に狭持した状態で(Y方向およびその反対方向から一対のアーム部7cで押圧した状態で)、金属製リード2に抵抗溶接されることにより電気的に接続される(図1)。このとき、金属製リード2は陽極折曲部7bとは離間するように構成されており、陽極折曲部7bのZ方向の寸法を小さく設計することにより、より薄型の固体電解コンデンサ20を実現することができる。
【0027】
一方、陰極端子9は、樹脂外装体11内において導電性接着材8(例えば熱硬化性樹脂と金属粒子との混合物)を介して固体電解質層4上の銀ペースト層6に電気的に接続され
る(図2)。また陰極端子実装部9aおよび陽極端子実装部7aは、その下面が樹脂外装体11の底面と同一平面上に配設されている。
【0028】
図3(a)に示すように単一の金属板を打抜加工することにより、陽極端子7および陰極端子9を形成する場合、陽極端子7のL字状のアーム部7cのX方向の寸法を大きくするほど、陰極端子接続部9cと銀ペースト層6との接触面積が小さくなり、固体電解コンデンサ20の等価直列抵抗(ESR)が増大する傾向がある。そこで択一的には、図3(b)に示すように、陰極端子接続部9cを矩形形状に拡張して、陰極端子接続部9cと銀ペースト層6との十分な接触面積を確保するように陽極端子7および陰極端子9を形成してもよい。
【0029】
図4は、陽極端子7およびコンデンサ素子10(金属製リード2を含む)をX方向とは反対の方向から見た概略図である。図4(a)および図4(b)に示すコンデンサ素子10は、図2(a)および図2(b)に対応するものであり、これらのコンデンサ素子10はともにZ方向に扁平するが、図4(a)のコンデンサ素子10は図4(b)のコンデンサ素子10より扁平しており、すなわち図2(a)の固体電解コンデンサ20は図2(b)の固体電解コンデンサ20より薄型である。
【0030】
前掲特許文献1に係る陽極端子は、固体電解コンデンサに用いられるコンデンサ素子の厚み(Z方向の寸法)に応じて、異なる寸法を有するように設計する必要があった。しかしながら、本発明によれば、図2(a)および図2(b)に示すように、静電容量などの求められる電気的仕様に応じてコンデンサ素子10の厚み(Z方向の寸法)が異なる場合であっても、すなわちコンデンサ素子10から延びる金属製リード2のZ方向の位置に関係なく、同一の陽極端子7および陰極端子9を利用することができる。したがって、本発明によれば、厚みの異なるコンデンサ素子10ごとに陽極端子7および陰極端子9を製造する打抜金型を個別に作製する必要がなく、製造コストを低減させることができる。
【0031】
また前掲特許文献2に係る陽極端子は、溶接時、陽極接続片から水平方向に過大なストレスを受けて大きく湾曲し(図10参照)、コンデンサ素子110に割れ(クラック)を発生させる虞があった。しかしながら本発明によれば、上述のように、金属製リード2を一対のアーム部7cの間でY方向の両側から押圧した状態で、金属製リード2に抵抗溶接するので、溶接時に金属製リード2がアーム部7cから水平方向にストレスを受けることはなく、実質的にストレスを軽減することができる。
【0032】
図5は、3つのコンデンサ素子10a~10cをZ方向に積層してなる固体電解コンデンサ20の図2(a)と同様の断面図である。図5のアーム部7cは、図2(a)のアーム部7cより長くする必要があるが、陽極端子7および陰極端子9を図3(b)のように単一の金属板から形成するように設計しておくことにより、アーム部7cの長さを容易に調整することができる。よって本発明によれば、陽極端子7および陰極端子9を製造する打抜金型を個別に作製する必要がなく、製造コストを低減させることができる。さらに、固体電解コンデンサ20が積層された複数のコンデンサ素子10を有する場合であっても、各コンデンサ素子10から延びるそれぞれの金属製リード2を、Z方向の任意の位置において、対向する方向に押圧するアーム部7cに抵抗溶接できる。よって本発明によれば、溶接時に各金属製リード2がアーム部7cから受けるストレスを実質的に軽減して、歩留まり、すなわち生産性の高い固体電解コンデンサ20を実現することができる。
【0033】
さらに、溶接時に金属製リード2を一対のアーム部7cの間で位置決めしやすくするために、金属製リード2が対向するアーム部7cの接続面に凹凸を設けてもよい。アーム部7cの接続面の凹凸は、金属製リード2の位置決めを容易にするものであれば任意の形態を有していてもよく、Z方向に沿って形成された波形表面もしくはジグザク表面、またはプレス加工によって形成された網目表面であってもよい。
【0034】
[実施形態2]
図6は、本発明の第2の実施形態に係る固体電解コンデンサ20を示す、図1と同様の斜視図である。また図7は、第2の実施形態に係る陽極端子37ならびに陰極端子39および固体電解コンデンサ20のXZ平面に平行な断面図であり、陽極端子37および陰極端子39のハッチングを省略して示す。第2の実施形態に係る固体電解コンデンサ20は、陽極端子37および陰極端子39の形態および構造が異なる点を除き、第1の実施形態に係る固体電解コンデンサ20と同様の構成を有するので、重複する内容については説明を省略する。
【0035】
<陽極端子および陰極端子>
第2の実施形態に係る陽極端子37および陰極端子39は、第1の実施形態と同様、単一の金属板を打抜(プレス)加工により形成される。図8は、単一の金属板を打抜(プレス)加工した後の陽極端子37および陰極端子39を示す平面図である。陽極端子37は、陽極端子実装部37aおよび陽極立設部37bを有し、陰極端子39は、陰極端子実装部39a、陰極折曲部39b、および陰極端子接続部39cを有する。陽極端子37および陰極端子39は、図7に示す黒塗り三角の頂点で示す支点の周りに谷折に折り曲げられて、陽極端子実装部37aならびに陽極立設部37b、および陰極端子実装部39a、陰極折曲部39b、ならびに陰極端子接続部39cが形成される。陽極端子37の陽極端子実装部37aと陰極端子39の陰極端子実装部39aは、その下面が樹脂外装体11の底面と同一平面上に配設されるように折り曲げられる。したがって、陽極端子37の陽極端子実装部37aは、多孔質焼結体1の側面24a,24b(XY平面)と略平行に延び、陽極立設部37bは、多孔質焼結体1の主面22a,22b(YZ平面)と略平行に延びている。
【0036】
第2の実施形態に係る陽極端子37の陽極立設部37bは、図6に示すように、多孔質焼結体1の主面22a,22b(YZ平面)と略平行に延びるスロット部40を有する。またスロット部40のY方向の幅は、金属製リード2の直径と略等しく、金属製リード2をスロット部40内に挿入したとき、金属製リード2がスロット部40の対向する接続面と接触するように構成されている。このように陽極端子37は、陽極立設部37bのスロット部40内のZ方向の任意の位置において、金属製リード2をスロット部40で狭持した状態で抵抗溶接されることにより、金属製リード2と電気的に接続される(図6)。このとき金属製リード2は、Z方向の厚みを有するコンデンサ素子10の略中央に配置され、スロット部40がZ方向に十分な長さを有するので、スロット部40の閉口端および陽極端子実装部37aと接触することはない。
【0037】
一方、陰極端子39は、樹脂外装体11内において導電性接着材8(例えば熱硬化性樹脂と金属粒子との混合物)を介して固体電解質層4上の銀ペースト層6に電気的に接続される(図7)。また陰極端子実装部39aおよび陽極端子実装部37aは、その下面が樹脂外装体11の底面と同一平面上に配設されている。
【0038】
実施形態2によれば、実施形態1と同様、所望の電気的仕様に応じて、コンデンサ素子10のZ方向の厚みが変更された場合(図9(a)および(b)および参照)、または複数のコンデンサ素子10が積層された場合(図示せず)でも、1つまたはそれ以上の金属製リード2は、スロット部40のZ方向の任意の位置において、容易に陽極端子37と電気的に接続することができる。換言すると、コンデンサ素子10のZ方向の厚みが変更された場合、または複数のコンデンサ素子10が積層された場合でも、金属製リード2のZ方向の位置に関係なく、同一の陽極端子37および陰極端子39を利用することができる。したがって、本発明によれば、厚みの異なるコンデンサ素子10ごとに陽極端子37および陰極端子39を製造する打抜金型を個別に作製する必要がなく、固体電解コンデンサ20を安価に生産することができる。
【0039】
また実施形態2によれば、上述のように、金属製リード2をスロット部40で狭持した状態で抵抗溶接されることにより電気的に接続されるので、溶接時に金属製リード2がスロット部40から受けるストレスを解消または実質的に軽減することができる。
【0040】
さらに実施形態2に係る陰極端子39は、実施形態1に係る陰極端子9に比して、より長い金属板を用いて形成する必要があるが、図7に示すように、コンデンサ素子10(その銀ペースト層6)との接触面積を増大させることができる点において有利である。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、さまざまな厚みを有する固体電解コンデンサを組み立てるために、同一の陽極端子および陰極端子を利用することができる。
【符号の説明】
【0042】
1…多孔質焼結体(陽極体)、2…金属製リード、3…誘電体層、4…固体電解質層、5…導電性カーボン層、6…銀ペースト層、7…陽極端子、7a…陽極端子実装部、7b…陽極折曲部、7c…L字状のアーム部、8…導電性接着材、9…陰極端子、9a…陰極端子実装部、9b…陰極折曲部、9c…陰極端子接続部、10…コンデンサ素子、11…樹脂外装体、20…固体電解コンデンサ、22a…第1の主面、22b…第2の主面、24a…上側面、24b…下側面、26a…前端面、26b…後端面、37…陽極端子、39…陰極端子、39a…陰極端子実装部、39b…陰極折曲部、39c…陰極端子接続部、40…スロット部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10