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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】導電性積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 18/20 20060101AFI20230120BHJP
   C23C 18/16 20060101ALI20230120BHJP
   C23C 18/31 20060101ALI20230120BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20230120BHJP
   C23C 18/40 20060101ALI20230120BHJP
   C23C 18/52 20060101ALI20230120BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20230120BHJP
   B32B 37/02 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C23C18/20 A
C23C18/16 A
C23C18/31 A
C23C18/34
C23C18/40
C23C18/52 B
B32B15/08 J
B32B37/02
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018228673
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020090711
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】504203354
【氏名又は名称】株式会社タッチパネル研究所
(72)【発明者】
【氏名】御子柴 均
【審査官】池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-007840(JP,A)
【文献】特開2017-133082(JP,A)
【文献】特開平05-125552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 18/00-20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)透明基材表面に、除去可能な層を設け、次いで該層に透明基材表面にまで達する深さの多数の微細線の溝を形成する工程(微細線溝形成工程)、
(2)該層を有する透明基材表面に、真空紫外光を照射して、親水性基が形成された紫外光照射基材を得る工程(紫外光照射工程)、
(3)紫外光照射基材に触媒付与し、次いで該層が除去されない条件で金属Aのめっき処理を施す工程(金属Aのめっき処理工程)、
(4)該層を該層上の金属Aと共に除去し、透明基材表面に金属Aからなる多数の微細線を形成する工程(金属Aからなる微細線形成工程)、
(5)金属Aからなる微細線に触媒付与し、金属Bのめっき処理を施す工程(金属Bのめっき処理工程)よりなることを特徴とする導電性積層体の製造方法。
【請求項2】
前記真空紫外光は150~200nmの波長を有する請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項3】
前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリシクロオレフィン(PCO)またはガラスより形成されたフィルム、シート或いはこれらの複合体である請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項4】
前記金属Aおよび金属Bからなる多数の微細線は、1~50μmの幅を有する請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項5】
前記金属Aおよび金属Bからなる多数の微細線は、ギャップ間隔(隣り合う2つの微細線の中心の間隔)が5~3000μmである請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項6】
前記触媒はパラジウム(Pd)である請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項7】
前記金属Aのめっき処理は、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)または金(Au)を使用した無電解めっき処理である請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【請求項8】
前記金属Bのめっき処理は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)または金(Au)を使用した無電解めっき処理である請求項1記載の導電性積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性積層体の製造方法およびその利用に関する。さらに詳しくは、構
造が比較的簡単であり安価に加工でき、かつ生産性に優れた方法で作製することが
可能な導電性積層体の製造方法およびそれを利用したタッチパネル、ELライト、
電磁波シールドフィルムおよび発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
導電性積層体は、比較的簡単な構造を有し、安価であり、かつ加工性に優れてい
ることからタッチパネル、ELライト、電磁波シールドフィルムや発熱体などの材
料として利用されている。
例えば、タッチパネルは比較的簡単な構造を有し、安価であり、指入力が可能で
あることから市場が拡大し、広い分野で利用されている。殊に静電容量式タッチパ
ネルは携帯電話型の小型のものを中心として、その利用が広がっている。現在一般
に市販されている静電容量式タッチパネルは、その多くがITO膜(インジウム・
錫酸化物膜)からなる導電性フィルムを電極基板として使用したものである。IT
O膜からなる導電性フィルムを使用したタッチパネルは小型のものに限られ、大型
画面のものに使用することは不適当である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一方タッチパネルは、比較的大型画面用の需要が多いことから、それに対応した
大型サイズの導電性フィルムの開発が進められている。大型サイズの導電性フィル
ムを得る方法の1つは、透明フィルムの表面に導電性金属の微細線を多数形成させ
る方法である。この方法は、例えば透明フィルムの表面に、導電性金属(具体的に
はCu、Ag、Auなど)の微粉末を含むインク(ドープ)を使用してグラビアオ
フセット印刷法などの印刷法により微細線を形成する方法、あるいは透明フィルム
全面に形成した金属膜(具体的にはCuなど)を使用してフォトリソグラフィ、エ
ッチング加工法により、導電性金属の微細線を形成させる方法である。
これらの加工法により形成された導電性金属の微細線は、1つの線の幅が細くて
数μm、通常細くて5μm程度である。また上記方法のうち、グラビアオフセット
印刷法などの印刷法では加工枚数が増えると線幅が広がる問題があり、フォトリソ
グラフィ、エッチング加工法では、加工公差が±2μm程度あり、さらに微細線化
すると断線する恐れがある。導電性金属の微細線は、その製造過程で断線した部分
が発生しないこと、また使用中に断線や破損が起らないことが要求される。現在の
グラビアオフセット印刷法などの印刷法、フォトリソグラフィ、エッチング加工法
では、断線のない導電性金属の微細線を形成させる方法、実用的使用において断線
や破損の起らない導電性金属の微細線を大型画面上に形成させる工業的方法として
は、技術的に限界があった。
下記特許文献1には、導電性金属線の断線や破損が一部で起ったとしても、全体
として導電性の特性を損失しない方法として、多数の導電性金属線を形成させる際
隣接する2~6本、好ましくは3~5本が一組の導電ラインを形成するように、網
状化したパターンを形成する方法および導電性金属線フィルムが提案されている。
このフィルムは、導電性金属線を或る程度細く形成させ、仮に一部断線や破損が起
こったとしても、網状化パターンにより導電性の損失を補填しようとするものであ
る。
【課題を解決するための手段】
【0004】
そこで本発明者は導電性金属の微細線を透明フィルムの表面に形成する手段と
して、グラビアオフセット印刷法などの印刷法、フォトリソグラフィ、エッチング
加工法以外の方法について研究を進めた。その1つの方法として、無電解めっき法
に着目した。プラスチック表面に無電解めっき法により金属めっきする方法はそれ
自体知られている方法である。この方法は、多くの場合プラスチック表面に金属め
っきにより皮膜を形成することを目的としており、金属微細線を精密に設計したパ
ターンで形成させることを意図したものではない。
本発明者は、透明フィルムの疎水性表面に親水性の微細線のパターンを形成させ
さらにこの親水性微細線上に触媒を付着させることができれば、この微細線上に導
電性金属の微細線を施すことが可能であるとの推定のもとに研究を重ねた結果、下
記の知見が得られた。
(i)疎水性表面を有する透明フィルムの表面に、フォトマスクを介して、一定波
長の紫外光を照射すると、親水性基を有する多数の微細線のパターンが形成される
こと
(ii)形成された微細線上に触媒を容易に付与することができること
(iii)触媒を付与された微細線パターン上に無電解メッキ処理すれば、多数の導
電性金属の微細線パターンが透明フィルム上に形成されること、および
(iv)かくして形成された導電性フィルムは、微細線が細くても断線や破損が極め
て少なく、精密な導電性金属の微細線パターンを有していること
本発明者は、前記知見に基づいて
『(1)疎水性表面を有する透明フィルムの表面に、フォトマスクを介して真空紫
外光を照射して、該透明フィルムの表面に親水性基を有する多数の微細線が形成さ
れた紫外光照射フィルムを得る工程(紫外光照射工程)、
(2)得られた紫外光照射フィルムの多数の微細線上に触媒を付与する工程(触媒
付与工程)および
(3)次いで得られた触媒が付与された多数の微細線に導電性金属メッキ処理を施
す工程(メッキ処理工程)よりなることを特徴とする導電性フィルムの製造方法』
を見出し先に提案した(特願2016-015837号明細書参照)。
【0005】
本発明者は、前記した先に提案した方法において更なる改良について研究を進め
た。その結果、紫外光照射工程において、透明基材表面上に本来疎水性機能を有す
る樹脂を積層した後、真空紫外光を照射し、その樹脂表面に親水性基からなる多数
の微細線を形成すること、更にめっき処理工程において、触媒が付与された多数の
微細線に金属A、金属Bを順次積層することにより、透明基材自体の疎水性のレベ
ルを気にすることなく導電性積層体の基板として利用できることが分かった。更に
触媒が付与された多数の微細線に金属A、金属Bを順次積層することにより、真空
紫外光の遮蔽部へのめっき皮膜付着を抑制できることが分かった。すなわち、透明
基材表面上に本来疎水性機能を有する樹脂を積層し、その樹脂表面に親水性基から
なる多数の微細線が形成され、かつその微細線上に金属A、金属Bが順次積層され
た導電性積層体は、タッチパネル、ELライト、電磁波シールドフィルムや発熱体
の材料として極めて有効に利用できることを見出し、先に提案した。
【0006】
すなわち、先に提案した発明によれば下記導電性積層体およびそれを利用した部
品・部材(タッチパネル、ELライト、電磁波シールドフィルム、発熱体)が提供
される(特願2018-208814号明細書参照)。
(I)透明基材表面に、本来疎水性機能を有する樹脂を積層し、かつその樹脂表面
に親水性基からなる多数の微細線が形成され、かつその微細線上には金属A、金属
Bが順次積層されていることを特徴とする導電性積層体。
(II)前記親水性基からなる多数の微細線は、前記本来疎水性機能を有する樹脂の
表面に真空紫外光を照射することにより形成されたものである前記(I)項記載の
導電性積層体。
(III)前記本来疎水性機能を有する樹脂は、ポリエチレンテレフタレート(PE
T)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリシ
クロオレフィン(PCO)、ポリパラキシリレン(PPX)またはフッ素樹脂より
なることを特徴とする前記(I)項記載の導電性積層体。
(IV)前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナ
フタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート
(PMMA)、ポリシクロオレフィン(PCO)またはガラスより形成されている
前記(I)項記載の導電性積層体。
(V)前記多数の微細線は、1~50μmの幅を有する前記(I)項記載の導電性
積層体。
(VI)前記多数の微細線は、ギャップ間隔(隣り合う2つの微細線の中心の間隔)
が5~3000μmである前記(I)項記載の導電性積層体。
(VII)前記金属Aは、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)また
は金(Au)である前記(I)項記載の導電性積層体。
(VIII)前記金属Bは、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)または金(A
u)である前記(I)項記載の導電性積層体。
(IX)前記(I)項記載の導電性積層体を使用したタッチパネル。
(X)前記(I)項記載の導電性積層体を使用したELライト。
(XI)前記(I)項記載の導電性積層体を使用した電磁波シールドフィルム。
(XII)前記(I)項記載の導電性積層体を使用した発熱体。
【0007】
前記提案した発明によれば、透明基材自体の疎水性のレベルを気にすることなく
目的に合った透明基材を導電性積層体の基板として利用でき、更に比較的安価で加
工できかつ生産性に優れた方法で作製することが可能な導電性積層体およびそれを
利用したタッチパネル、ELライト、電磁波シールドフィルムおよび発熱体を提供
することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2013-54708号公報(特許第5734799号)
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記提案に対して更に改良を加え、加工を簡素にし、かつ製品の品質の向上を目的とすることにより到達したものである。
すなわち、本発明によれば下記導電性積層体の製造方法が提供される。
(I)(1)透明基材表面に、除去可能な層を設け、次いで該層に透明基材表面にまで達する深さの多数の微細線の溝を形成する工程(微細線溝形成工程)、
(2)該層を有する透明基材表面に、真空紫外光を照射して、親水性基が形成された紫外光照射基材を得る工程(紫外光照射工程)、
(3)紫外光照射基材に触媒付与し、次いで該層が除去されない条件で金属Aのめっき処理を施す工程(金属Aのめっき処理工程)、
(4)該層を該層上の金属Aと共に除去し、透明基材表面に金属Aからなる多数の微細線を形成する工程(金属Aからなる微細線形成工程)、
(5)金属Aからなる微細線に触媒付与し、金属Bのめっき処理を施す工程(金属Bのめっき処理工程)よりなることを特徴とする導電性積層体の製造方法。

(II)前記真空紫外光は150~200nmの波長を有する前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(III)前記透明基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)、ポリシクロオレフィン(PCO)またはガラスより形成されたフィルム、シート或いはこれらの複合体である前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(IV)前記金属Aおよび金属Bからなる多数の微細線は、1~50μmの幅を有する前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(V)前記金属Aおよび金属Bからなる多数の微細線は、ギャップ間隔(隣り合う2つの微細線の中心の間隔)が5~3000μmである前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(VI)前記触媒はパラジウム(Pd)である前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(VII)前記金属Aのめっき処理は、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)または金(Au)を使用した無電解めっき処理である前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。

(VIII)前記金属Bのめっき処理は、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)または金(Au)を使用した無電解めっき処理である前記(I)記載の導電性積層体の製造方法。
【0010】
本発明の導電性積層体は、透明基材表面に親水性基からなる多数の微細線が形成
され、かつその微細線上には金属A、金属Bが順次積層されている構造を有するも
のである。
前記透明基材としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレン
ナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタアクリレー
ト(PMMA)、ポリシクロオレフィン(PCO)またはガラスより形成されたフ
ィルム、シート或いはこれらの複合体が好ましいがこれらの中でPET、PEN、
PC、PCOが特に好ましい。
前記透明基材の表面に、先ず除去可能な層を設け、次に該層に透明基材表面にま
で達する深さの多数の微細線の溝を形成する。除去可能な層としてフォトレジスト
が挙げられる。透明基材表面にフォトレジストを形成し、フォトマスク越しに紫外
光を照射後、現像を行うことにより、フォトレジストに透明基材表面にまで達する
深さの多数の微細線が形成される。この方法は金属膜のエッチングを行う方法と比
較して簡素であり、かつ加工精度が良い。
次いでに該層を有する透明基材表面に真空紫外光を照射して、親水性基を形成す
る。次に金属Aのめっき処理を施した後、該層を該層上の金属Aと共に除去する。
結果として、透明基材表面に多数の親水性基からなる微細線を下地とした金属Aの
微細線が形成されることになる。次に金属A上に金属Bが積層される。
最初に透明基材上の該層に多数の微細線溝が形成されているため、紫外光照射工
程、金属Aのめっき処理工程共に簡素になり、かつ製品の品質が向上する。
多数の微細線の幅は、1~50μm、好ましくは1~40μm、特に好ましくは
1~30μmである。多数の微細線のギャップ間隔(隣り合う微細線の中心線の間
隔)が5~3000μm、好ましくは10~2500μmとなるように設計される
ことが望ましい。
【0011】
真空紫外光の波長は、150~200nmの範囲であればよい。
真空紫外光の照射は、微細線の親水性基の割合が充分に親水性を有する量である
ことが肝要である。
親水性基からなる微細線を形成させるための真空紫外光の照射の割合は、照射す
る前の透明基材表面の疎水性の割合によっても好ましい値が変化する。すなわち、
照射前の透明基材表面のぬれ張力の特性値に対して照射後の親水性基からなる微
細線のぬれ張力の特性値が10mN/m以上、好ましくは15mN/m以上高くな
るように、真空紫外光を照射することが有利である。
前記微細線上に積層される金属Aとして、パラジウム(Pd)、ニッケル(Ni
)、銀(Ag)または金(Au)が望ましく、金属Bとして、銅(Cu)、ニッケ
ル(Ni)、銀(Ag)または金(Au)が望ましい。
本発明の前記した導電性積層体は、その導電性の機能を用いて種々の部品・部材
の材料として利用できるが、とりわけタッチパネル、ELライト、電磁波シールド
フィルム、或いは発熱体として使用することができる。
以下実施例を掲げて本発明を詳述する。
実施例1及び比較例1
【0012】
[試験用透明基材]
帝人株式会社製「ポリカーボネートフィルム ピュアエース C110-10
0」を、実施例1の透明基材として用いた。透明基材の片面に、除去可能な層とし
て、ニッコー・マテリアルズ株式会社製「ドライフィルム ALPHO 25A3
10」をラミネートした。次にフォトマスク越しに紫外光を照射後、炭酸ナトリウ
ム水溶液を用いて現像を行い、除去可能な層に透明基材表面にまで達する深さの多
数の微細線の溝を形成した。
実施例1の透明基材の微細線溝を形成した面に、真空紫外光(150-200n
m)を、合成石英ガラス板(信越石英株式会社製SUPRASIL-F310、厚
さ2.8mm)越しに、大気中で5分間照射した。

[触媒付与溶液、無電解ニッケルめっき浴および無電解銅めっき浴]

触媒付与溶液の組成を下表に示す。

無電解ニッケルめっき浴の組成を下表に示す。

無電解銅めっき浴の組成を下表に示す。
【0013】
実施例1の透明基材を上記触媒付与溶液に40℃で5分間浸漬後、室温で1分間
水洗した。
次に、無電解ニッケルめっき浴にpH8.0、70℃で1分間浸漬後水洗した。
次に、水酸化ナトリウム水溶液(3%)に、45℃で10分間浸漬後水洗し、除
去可能な層をニッケル皮膜共に除去することにより、透明基材上にニッケルの微細
線を形成した。
次に、パラジウムイオン酸性水溶液に10秒間浸漬後水洗した。
引き続いて、無電解銅めっき浴に25℃で12分間浸漬後、室温で1分間水洗し
た。
透明基材を乾燥後、光学顕微鏡にて、銅めっき皮膜の付着状態を観察した。元々
除去可能な層の微細線溝があった個所にのみ銅めっき皮膜が付着しており、それ以
外には銅めっき皮膜が付着していないことが確認された。銅めっき皮膜の線幅は約
5μm、ニッケル皮膜と銅めっき皮膜を合わせた厚さは約0.4μmであった。
一方、東レ株式会社製ポリプロピレンフィルム「トレファンBO #50-25
00H」を比較例1の試験用透明基材として用いた。比較例1の透明基材にはドラ
イフィルムが密着しないため、比較例1の透明基材の片面に真空紫外光(150-
200nm)を、フォトマスク(クロムマスク、基板:信越石英株式会社製SUP
RASIL-F310、厚さ2.8mm)越しに、大気中で5分間照射した。
次に、比較例1の透明基材を上記触媒付与溶液に40℃で5分間浸漬後、室温で
1分間水洗した。
次に、無電解ニッケルめっき浴にpH8.0、70℃で1分間浸漬後水洗した。
次に、水酸化ナトリウム水溶液(0.4%)に1分間浸漬後水洗した。
次に、パラジウムイオン酸性水溶液に10秒間浸漬後水洗した。
引き続いて、無電解銅めっき浴に25℃で12分間浸漬後、室温で1分間水洗し
た。比較例1の透明基材には、真空紫外光の透過部、遮蔽部に係らず銅めっき皮膜
は付着していなかった。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1は、除去可能な層の微細溝形成工程を示すものである。
【0015】
図2は、真空紫外光照射工程を示すものである。
【0016】
図3は、金属Aのめっき処理工程を示すものである。
【0017】
図4は、金属Aからなる微細線形成工程を示すものである。
【0018】
図5は、金属Bのめっき処理工程を示すものである。
【符号の説明】
【0019】
1: 透明基材
2: 除去可能な層
3: 親水性基
4: 金属A
5: 金属B
図1
図2
図3
図4
図5