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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 33/36 20200101AFI20230120BHJP
   D06F 33/34 20200101ALI20230120BHJP
【FI】
D06F33/36
D06F33/34
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017246046
(22)【出願日】2017-12-22
(65)【公開番号】P2019111035
(43)【公開日】2019-07-11
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻野 圭則
【審査官】沖田 孝裕
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107488995(CN,A)
【文献】特開昭62-292195(JP,A)
【文献】特開平10-151291(JP,A)
【文献】特開2017-192409(JP,A)
【文献】特開昭62-292193(JP,A)
【文献】特開2017-070539(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 33/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽と、
前記洗濯槽の内部空間の高さ寸法を検知する高さ寸法検知部と、
前記洗濯槽内の水位を検知する水位検知部と、
前記洗濯槽内に給水する給水部と、
前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌する攪拌部と、
前記高さ寸法検知部および水位検知部の検知結果に基づいて、前記給水部および攪拌部を制御する制御部とを含み、
前記制御部は、
(1)給水に先立ち、前記洗濯槽が空のときの内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により検知して、検知した寸法を第1高さ寸法Daとし、
(2)前記洗濯槽に洗濯物が収容されたときの内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により検知して、検知した寸法を第2高さ寸法Dbとし、
(3)第1高さ寸法Daと、第2高さ寸法Dbとにより洗濯物の高さ寸法Hを決定し、かつ、洗い工程で前記攪拌部により発生させる水流の初期値Si及び上限値Smaxを決定
し、
(4)前記給水部により前記洗濯槽内への給水を開始させ、
(5)前記高さ寸法検知部により洗濯物が収容されたときの内部空間の高さ寸法を検知して、第2高さ寸法Dbを更新し、
(6)前記第1高さ寸法Daと、更新した第2高さ寸法Dbと、前記水位検知部が検知する水位Lとに基づいて、前記洗濯槽内が、水の水面が洗濯物の上端よりも高い位置にある状態Aになったか否かを監視し、
(7)前記洗濯槽内が前記状態Aになったときには、前記洗濯槽内の水位が所定の水位になるまで前記給水部による給水を継続させ、
(8)前記洗濯槽内が前記状態Aにならないときは、前記水位検知部の検知結果に基づいて前記洗濯槽内に洗いに必要な量の水が溜まったか否かを判別し、溜まったと判別したときには前記決定した水流の初期値Siを引き上げ、
(9)前記給水部による前記洗濯槽内への給水を停止して、
洗い工程を開始させる、洗濯機。
【請求項2】
前記制御部は、前記洗い工程の実行中において、
所定の時間が経過する毎に、前記洗濯槽内が前記状態Aであるか否かを判別し、前記洗濯槽内が前記状態Aでないときは、前記洗濯槽内に生じる水流を、予め定める水流の上限値未満の範囲内において、前記攪拌部により増加させる、請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記制御部は、
前記(2)前記洗濯槽に洗濯物が収容されたときの内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により検知して、検知した寸法を第2高さ寸法Dbとする場合において、
前記攪拌部を駆動させて前記洗濯槽に収容された洗濯物を攪拌して、内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により複数回検知して、第2高さ寸法Dbを決定する、請求項1または2に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯機では、筐体内における洗濯槽の上方に撮像装置が設けられる。洗濯機の制御部は、給水前および給水後のそれぞれのタイミングに撮像装置によって洗濯槽内を撮影し、給水前の画像データと、給水後の画像データとを比較して、洗濯槽内の洗濯物において水の濡れ具合の悪い部分があるか否かを判定する。制御部は、洗濯物において濡れ具合の悪い部分が給水口の下方付近にくるようにモータによって洗濯槽を回転させた後に、給水口から注水を行う。これにより、洗濯物において濡れ具合の悪い部分に給水口からの水が掛かりやすくなるので、濡れ具合の改善が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-83106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の洗濯機のように画像データを用いても、洗濯物における濡れ具合を正確に判定できないおそれがある。また、給水口から繰り返し注水しても、洗濯物において濡れ具合の悪い部分に給水口からの水が掛からなければ、濡れ具合が改善されないうえに、使用水量が必要以上に増加するおそれがある。また、給水口からの水によって濡れ具合が改善された洗濯物が洗濯槽内で浮くと、今度は、この洗濯物において水面からはみ出た部分の濡れ具合が悪化するので、この状態では洗濯物を効果的に洗濯することが困難である。
【0005】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、洗濯物を適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる洗濯機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、洗濯物を収容し、水が溜められる洗濯槽と、前記洗濯槽の内部空間の高さ寸法を検知する高さ寸法検知部と、前記洗濯槽内の水位を検知する水位検知部と、前記洗濯槽内に給水する給水部と、前記洗濯槽内の洗濯物を攪拌する攪拌部と、前記高さ寸法検知部および水位検知部の検知結果に基づいて、前記給水部および攪拌部を制御する制御部とを含み、前記制御部は、(1)給水に先立ち、前記洗濯槽が空のときの内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により検知して、検知した寸法を第1高さ寸法Daとし、(2)前記洗濯槽に洗濯物が収容されたときの内部空間の高さ寸法を前記高さ寸法検知部により検知して、検知した寸法を第2高さ寸法Dbとし、(3)第1高さ寸法Daと、第2高さ寸法Dbとにより洗濯物の高さ寸法Hを決定し、かつ、洗い工程で前記攪拌部により発生させる水流の初期値Si及び上限値Smaxを決定し、(4)前記給水部により前記洗濯槽内への給水を開始させ、(5)前記高さ寸法検知部により洗濯物が収容されたときの内部空間の高さ寸法を検知して、第2高さ寸法Dbを更新し、(6)前記第1高さ寸法Daと、更新した第2高さ寸法Dbと、前記水位検知部が検知する水位Lとに基づいて、前記洗濯槽内が、水の水面が洗濯物の上端よりも高い位置にある状態Aになったか否かを監視し、(7)前記洗濯槽内が前記状態Aになったときには、前記洗濯槽内の水位が所定の水位になるまで前記給水部による給水を継続させ、(8)前記洗濯槽内が前記状態Aにならないときは、前記水位検知部の検知結果に基づいて前記洗濯槽内に洗いに必要な量の水が溜まったか否かを判別し、溜まったと判別したときには前記決定した水流の初期値Siを引き上げ、(9)前記給水部による前記洗濯槽内への給水を停止して、洗い工程を開始させる、洗濯機である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、洗濯機では、空のときの洗濯槽の内部空間の第1高さ寸法と、洗濯物を収容したときの洗濯槽の内部空間の第2高さ寸法と、洗濯物を収容して水が溜められたときの洗濯槽内の水位とに基いて、洗濯槽内における洗濯物と水面との位置関係が判定される。洗濯槽内において水面から所定距離以上低い水没位置にあると判定された洗濯物は、全体が濡れた状態にあるので、第1の勢いの水流でも効果的に洗濯できる。一方、水没位置にないと判定された洗濯物は、水面からはみ出すことによって濡れ具合の悪い部分を有するおそれがあるので、第1の勢いよりも強い第2の勢いの水流によって、全体が濡れるように洗濯される。このように、洗濯物が水没位置にあってもなくても、この洗濯物を適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。
【0011】
また、本発明によれば、洗濯物が水没位置にあるか否かの判定は、給水中に行われ、この判定の完了に応じて給水が停止される。これにより、洗濯物が水没位置にある場合には、必要以上の給水が行われないし、洗濯物が水没位置にない場合であっても、判定後に追加の給水は行われない。水没位置にない洗濯物は、追加の給水がなくても、第2の勢いの水流によって全体が濡れるように洗濯される。そのため、洗濯物が水没位置にあってもなくても、使用水量の増加を抑制しつつ、この洗濯物を適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。
【0012】
また、本発明によれば、洗濯物が水没位置にあるか否かの判定は、給水後の洗濯中にも行われるので、当初は水没位置にあって第1の勢いの水流による洗濯が開始されたものの洗濯途中で水没位置にないと判定された洗濯物は、第1の勢いよりも強い第2の勢いの水流によって、全体が濡れるように洗濯される。このように、洗濯物が洗濯途中で水没位置から移動しても、この洗濯物を適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。
【0013】
また、本発明によれば、第2高さ寸法と第1高さ寸法との差に相当する洗濯物の高さ寸法が、この洗濯物の上面部における凹凸によってばらついても、撹拌部がこの洗濯物を撹拌することによって当該凹凸が小さくなる。これにより、洗濯物の高さ寸法のばらつきが小さくなるので、第2高さ寸法のばらつきも小さくなる。そのため、値が安定した第2高さ寸法に基いて、洗濯槽内における洗濯物と水面との位置関係を正確に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機の模式的な縦断面右側面図である。
図2図2は、洗濯機の電気的構成を示すブロック図である。
図3図3は、給水に伴う洗濯機内の変化を説明するための模式図である。
図4図4は、洗濯機において実行される洗い工程を示すフローチャートである。
図5図5は、洗い工程の途中の処理を示すフローチャートである。
図6図6は、洗い工程の後のすすぎ工程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯機1の模式的な縦断面右側面図である。図1における上下方向を洗濯機1の上下方向Zといい、図1における左右方向を洗濯機1の前後方向Yという。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。前後方向Yのうち、図1における左側を前側Y1といい、図1における右側を後側Y2という。洗濯機1は、筐体2と、外槽3と、洗濯槽4と、水流発生部および撹拌部の一例としてのパルセータ5と、モータ6と、伝達機構7とを含む。
【0016】
筐体2は、例えば金属製であり、ボックス状に形成される。筐体2の上面2Aには、筐体2の内外を連通させる開口部2Bが形成される。上面2Aには、開口部2Bを開閉する扉10が設けられる。上面2Aにおいて開口部2Bの周囲、詳しくは前側Y1の領域には、液晶操作パネルなどで構成された操作部11が設けられる。洗濯機1の使用者は、操作部11を操作することによって、洗濯機1で実行される洗濯運転についての運転条件を選択したり、洗濯機1に対して洗濯運転の開始や停止などを指示したりすることができる。
【0017】
外槽3は、例えば樹脂製であり、有底円筒状に形成される。外槽3は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁3Aと、円周壁3Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁3Bと、円周壁3Aの上側Z1側の端縁を縁取りつつ円周壁3Aの円中心側へ張り出したリング状の環状壁3Cとを有する。環状壁3Cの内側には、円周壁3Aの中空部分に上側Z1から連通する出入口3Dが形成される。出入口3Dは、筐体2の開口部2Bに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。環状壁3Cには、出入口3Dを開閉する扉12が設けられる。底壁3Bは、略水平に延びる円板状に形成され、底壁3Bの円中心位置には、底壁3Bを貫通した貫通孔3Eが形成される。
【0018】
外槽3の環状壁3Cには、水道水の蛇口につながった給水路13が上側Z1から接続される。給水路13の途中には、給水部の一例としての給水弁14が設けられる。外槽3の底壁3Bには、排水路15が下側Z2から接続される。排水路15の途中には、排水弁16が設けられる。排水弁16が閉じた状態で給水弁14が開くと、給水路13から外槽3内に給水されることによって、外槽3内に水が溜められる。給水弁14が閉じると、給水が停止する。排水弁16が開くと、外槽3内の水が排水路15から機外に排出される。
【0019】
洗濯槽4は、例えば金属製であり、外槽3よりも一回り小さい有底円筒状に形成され、内部に洗濯物を収容することができる。洗濯槽4は、外槽3内に同軸状で収容される。外槽3内に収容された状態の洗濯槽4は、その中心軸をなして上下方向Zに延びる軸線Jを中心として回転可能である。洗濯槽4は、上下方向Zに沿って配置された略円筒状の円周壁4Aと、円周壁4Aの中空部分を下側Z2から塞いだ底壁4Bとを有する。
【0020】
円周壁4Aの内周面は、洗濯槽4の内周面である。円周壁4Aの内周面の上端部は、円周壁4Aの中空部分を上側Z1に露出させる出入口4Cである。出入口4Cは、外槽3の出入口3Dに対して下側Z2から対向し、連通した状態にある。使用者は、開放された開口部2B、出入口3Dおよび出入口4Cを介して、洗濯槽4に対して上側Z1から洗濯物を出し入れする。
【0021】
洗濯槽4の円周壁4Aおよび底壁4Bには、貫通孔4Dが複数形成され、外槽3内の水は、貫通孔4Dを介して外槽3と洗濯槽4との間で行き来して、洗濯槽4内にも溜められる。そのため、外槽3内の水位と洗濯槽4内の水位とは、一致する。
【0022】
洗濯槽4の底壁4Bは、外槽3の底壁3Bに対して上側Z1に間隔を隔てて略平行に延びる円板状に形成され、底壁4Bにおいて軸線Jと一致する円中心位置には、底壁4Bを貫通した貫通孔4Eが形成される。底壁4Bには、貫通孔4Eを取り囲みつつ軸線Jに沿って下側Z2へ延び出た管状の支持軸17が設けられる。支持軸17は、外槽3の底壁3Bの貫通孔3Eに挿通されて、支持軸17の下端部は、底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0023】
パルセータ5は、いわゆるパルセータであり、軸線Jを円中心とする円盤状に形成され、洗濯槽4内において底壁4Bに沿って洗濯槽4と同心状に配置される。パルセータ5において洗濯槽4の出入口4Cを臨む上面には、放射状に配置される複数の羽根5Aが設けられる。パルセータ5には、その円中心から軸線Jに沿って下側Z2へ延びる回転軸18が設けられる。回転軸18は、支持軸17の中空部分に挿通されて、回転軸18の下端部は、外槽3の底壁3Bよりも下側Z2に位置する。
【0024】
モータ6は、インバータモータなどの電動モータである。モータ6は、筐体2内において、外槽3の下側Z2に配置される。モータ6は、軸線Jを中心として回転する出力軸19を有し、発生した駆動力を出力軸19から出力する。伝達機構7は、支持軸17および回転軸18のそれぞれの下端部と、モータ6から上側Z1に突出した出力軸19の上端部との間に介在される。伝達機構7は、モータ6が出力軸19から出力する駆動力を、支持軸17および回転軸18の一方または両方に対して選択的に伝達する。伝達機構7として、公知のものが用いられる。モータ6からの駆動力が支持軸17および回転軸18に伝達されると、洗濯槽4およびパルセータ5は、モータ6の駆動力を受けて軸線Jまわりに回転する。
【0025】
図2は、洗濯機1の電気的構成を示すブロック図である。洗濯機1は、判定部、水流発生部、給水部、撹拌部の一例としての制御部21を含む。制御部21は、例えば、CPU22と、ROMやRAMなどのメモリ23と、タイマ24とを含むマイコンとして構成され、筐体2内に内蔵される(図1参照)。
【0026】
前述したモータ6、伝達機構7、操作部11、給水弁14および排水弁16のそれぞれは、制御部21に対して電気的に接続される。制御部21は、モータ6を駆動させたり、停止させたりする。制御部21は、伝達機構7を制御することによって、モータ6の駆動力の伝達先を支持軸17および回転軸18の一方または両方へと切り替える。使用者が操作部11を操作して運転条件などについて選択すると、制御部21は、その選択を受け付ける。制御部21は、給水弁14および排水弁16の開閉を制御する。洗濯機1は、制御部21に対して電気的に接続された扉ロック機構25、回転数読取装置26、水位検知部27および高さ寸法検知部28をさらに含む。
【0027】
扉ロック機構25は、筐体2において開口部2Bの付近に設けられて、爪(図示せず)と、この爪を進退させるソレノイドなどのアクチュエータ(図示せず)とを含む(図1参照)。制御部21は、ソレノイドの動作を制御することによって、爪を進退させる。爪が進出すると、閉じた扉10に係合するので、扉10が閉じた状態でロックされる。爪が退避すると扉10に係合しなくなるので、扉10のロックが解除される。
【0028】
回転数読取装置26は、モータ6の回転数、厳密には、モータ6における出力軸19の回転数を読み取る装置であり、例えばホールICで構成される。回転数読取装置26が読み取った回転数は、リアルタイムで制御部21に入力される。制御部21は、入力された回転数に基いて、モータ6に印加する電圧のデューティ比を制御することによって、所望の回転数で回転するようにモータ6を制御する。なお、洗濯槽4およびパルセータ5のそれぞれの回転数は、モータ6の回転数と同じであってもよいし、伝達機構7での減速比などの所定の定数をモータ6の回転数に乗じて得られる値であってもよい。いずれにせよ、回転数読取装置26は、モータ6の回転数を読み取ることによって、洗濯槽4およびパルセータ5のそれぞれの回転数も読み取る。
【0029】
水位検知部27は、外槽3内の水位つまり洗濯槽4内の水位を検知する水位センサであって、例えば外槽3に取り付けられる(図1参照)。水位検知部27として、一般的な水位センサを用いることができる。この実施形態における水位検知部27は、一例として、外槽3内の圧力に基いて洗濯槽4内の水位を検知する圧力式水位センサである。
【0030】
高さ寸法検知部28は、超音波や赤外線などを用いた距離センサである。高さ寸法検知部28は、洗濯槽4の内部空間を上側Z1から臨む位置に配置され、ステー29を介するなどによって外槽3の例えば円周壁3Aに固定される(図1参照)。高さ寸法検知部28は、洗濯槽4の内部空間の高さ寸法Dを上側Z1から検知する。洗濯槽4の内部空間とは、洗濯槽4内に存在する物体よりも上側Z1の空間であり、高さ寸法Dは、高さ寸法検知部28から当該物体までの上下方向Zの距離である。なお、高さ寸法Dは、洗濯槽4の上端つまり出入口4Cから当該物体までの上下方向Zの距離であってもよい。
【0031】
高さ寸法Dに関して、以下では、パルセータ5を洗濯槽4の底壁4Bの一部とみなしてもよい。図3を参照して、洗濯槽4が空つまり無負荷のときにおける高さ寸法Dは、高さ寸法検知部28と底壁4Bとの上下方向Zの間隔であり、当該間隔を第1高さ寸法Daという(洗濯機1Aを参照)。洗濯槽4内に洗濯物Qが収容されることによって負荷が発生すると、高さ寸法Dは、洗濯物Qの大きさに応じて小さくなる。この場合の高さ寸法Dは、洗濯槽4が洗濯物Qを収容したときにおける高さ寸法検知部28と洗濯物Qとの上下方向Zの間隔であり、当該間隔を第2高さ寸法Dbという(洗濯機1Bを参照)。このように洗濯槽4内に洗濯物Qが収容されただけの状態、つまり給水の開始前の状態における第2高さ寸法Dbと第1高さ寸法Daとの差は、当該洗濯物Qの高さ寸法Hに相当する。高さ寸法Hは、上下方向Zにおける底壁4Bから洗濯物Qの上端までの距離である。洗濯物Qは、1つだけの衣類に限らず、複数の衣類のまとまりを指してもよい。
【0032】
洗濯槽4が洗濯物Qを収容した状態において給水弁14が開いて給水が始まると、洗濯槽4に水が溜まっていくことによって水面Wが上昇し、水位Lは、水位検知部27によって検知される(洗濯機1Cを参照)。洗濯槽4内に溜まった水の水面Wが洗濯物Qの上端よりも高い位置にあるときにおける洗濯槽4内の状態を状態Aという(洗濯機1Dを参照)。状態Aでは、前述した第2高さ寸法Dbは、高さ寸法検知部28と水面Wとの上下方向Zの間隔であり、第2高さ寸法Dbと水位Lとの合計が第1高さ寸法Daと一致する。状態Aにおける洗濯物Qは、洗濯槽4の底壁4Bから離れずに水没した状態にある。
【0033】
一方、水面Wが洗濯物Qの上端よりも低い位置にあるときにおける洗濯槽4内の状態を状態Bという(洗濯機1Cおよび1Eを参照)。状態Bでは、前述した第2高さ寸法Dbは、高さ寸法検知部28と洗濯物Qとの上下方向Zの間隔のままであり、第2高さ寸法Dbと水位Lとの合計が第1高さ寸法Daよりも小さい。状態Bにおける洗濯物Qは、洗濯槽4の底壁4Bから離れて水面Wまで浮き上がった状態にある。
【0034】
制御部21は、モータ6、伝達機構7、給水弁14および排水弁16の動作を制御することによって、洗濯運転を実行する。洗濯運転は、洗濯物Qを洗う洗い工程と、洗い工程の後に洗濯物Qをすすぐすすぎ工程と、すすぎ工程の後に洗濯槽4を回転させて洗濯物Qを脱水する脱水工程とを有する。なお、洗濯機1は、脱水工程の後に洗濯物Qを乾燥させる乾燥工程も実行する洗濯乾燥機であってもよい。
【0035】
図4のフローチャートを参照して、洗い工程が始まった直後の洗濯機1は空であり(図3の洗濯機1A参照)、制御部21は、高さ寸法検知部28によって第1高さ寸法Daを検知つまり測定する(ステップS1)。使用者が扉10および扉12を開いて洗濯物Qを洗濯槽4内に投入してこれらの扉を閉じ、扉ロック機構25が閉位置の扉10をロックすると、制御部21は、洗濯物Qの高さ寸法H、ならびに、今回の洗い工程においてこれから洗濯槽4内で発生させる水流の勢いの設定値Sについての初期値Siおよび上限値Smaxを決定する(ステップS2)。なお、使用者は、洗濯物Qの投入に前後して、洗剤を洗濯槽4内に投入してもよい。
【0036】
H、SiおよびSmaxを決定する手順に関して、具体的には、図5のフローチャートを参照して、制御部21は、まず、高さ寸法検知部28によって第2高さ寸法Db(図3の洗濯機1B参照)を複数回検知する(ステップS21)。このとき、制御部21は、モータ6によって洗濯槽4を低速回転させてもよく、この場合には、静止した高さ寸法検知部28によって、洗濯槽4の回転方向において異なる複数の位置のそれぞれにおける第2高さ寸法Dbが検知される。次に、制御部21は、ステップS21で複数回検知した第2高さ寸法Dbと、ステップS1で測定した第1高さ寸法Daとによって、高さ寸法H(=Da-Db)を複数回算出する(ステップS22)。
【0037】
次に、制御部21は、算出した複数の高さ寸法Hのなかから最大値Hmaxおよび最小値Hminを抽出し、最大値Hmaxと最小値Hminとの差が所定の閾値γを下回るか否かを確認する(ステップS23)。閾値γは、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。洗濯物Qの上面部の凹凸が小さい場合には、最大値Hmaxと最小値Hminとの差が閾値γを下回るので(ステップS23でYES)、制御部21は、最大値Hmaxを今回の高さ寸法Hに決定する(ステップS24)。
【0038】
一方、洗濯物Qの上面部の凹凸が大きい場合には、最大値Hmaxと最小値Hminとの差が閾値γを下回らないので(ステップS23でNO)、制御部21は、モータ6によってパルセータ5を回転させる(ステップS25)。これにより、パルセータ5上の洗濯物Qが撹拌されることによって、洗濯物Qの上面部の凹凸がならされて小さくなる。その後、制御部21は、ステップS21からS23の処理を再度実施する。パルセータ5の回転後に再度求めた最大値Hmaxと最小値Hminとの差が閾値γを下回ると(ステップS23でYES)、制御部21は、この最大値Hmaxを今回の高さ寸法Hに決定する(ステップS24)。なお、最大値Hmaxと最小値Hminとの差が閾値γを下回るまで、ステップS21からS23およびS25の処理が繰り返される。
【0039】
制御部21は、ステップS24で決定した洗濯物Qの高さ寸法Hに基いて、洗濯物Qの量、いわゆる負荷量を決定する(ステップS26)。洗濯物Qの高さ寸法Hと負荷量との関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。制御部21は、ステップS26で決定した洗濯物Qの負荷量に基いて、今回の洗い工程で発生させる水流の勢いの設定値Sについての初期値Siおよび上限値Smaxを決定する(ステップS27)。設定値Sは、例えば下限値Sminをレベル1として上限値Smaxをレベル5として、レベル1~レベル5までの5段階の中から設定できる。設定値Sは、具体的にはモータ6の回転数つまりモータ6への通電時間に対応し、設定値Sが上限値Smax側へ引き上げられる度に、当該通電時間が長くなって当該回転数が増加するので、水流の勢いが段階的に強くなる。洗濯物Qの負荷量と、下限値Sminから上限値Smaxまでの各レベルの設定値Sとの関係は、実験などで予め求められてメモリ23に記憶される。初期値Siとして、レベル1の下限値Sminが採用されてもよいし、中間の強さであるレベル3の設定値Sが採用されてもよい。
【0040】
図4に戻り、制御部21は、このように高さ寸法H、初期値Siおよび上限値Smaxを決定すると、給水弁14を開いて洗濯槽4内への給水を開始する(ステップS3)。排水弁16は閉じた状態にあるので、洗濯槽4内の水位Lが上昇する(図3の洗濯機1C参照)。給水中において、制御部21は、高さ寸法検知部28によって最新の第2高さ寸法Dbを繰り返し検知し、水位検知部27によって最新の水位Lを繰り返し検知し、第1高さ寸法Daと第2高さ寸法Dbと水位Lとに基いて、洗濯槽4内が状態A(図3の洗濯機1D参照)になったか否かを監視する(ステップS4)。
【0041】
洗濯槽4内が状態Aになった場合には(ステップS4でYES)、制御部21は、水位Lが洗濯物Qの高さ寸法Hよりも所定の高さαだけ高い位置を上回ったか否かを確認する(ステップS5)。高さαは、洗濯物Qが完全に水没した状態にあるか否かを判定するための閾値として実験などで予め求められた正の値であって、メモリ23に記憶される。水位Lが高さ寸法Hと高さαとの合計よりも大きい場合には(ステップS5でYES)、必要な量の水が洗濯槽4内に溜まって、洗濯槽4内の洗濯物Qは、水面Wから所定距離以上低い水没位置にあって完全に水没した状態にあり、洗濯槽4の底壁4Bから離れて浮き上がる可能性はほとんど無い。
【0042】
この場合、制御部21は、給水弁14を閉じて洗濯槽4への給水を停止し、洗濯槽4が静止した状態で、モータ6によってパルセータ5を回転させる(ステップS6)。これにより、洗濯槽4内では、初期値Siに応じた勢いの水流が発生する。洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転するパルセータ5や水流によって撹拌される。そのため、洗濯物Qから汚れが除去される。つまり、洗濯物Qが洗われる。なお、洗剤が洗濯槽4内に投入された場合には、洗濯物Qの汚れが洗剤によって分解される。
【0043】
洗濯槽4内が状態Aでない場合、つまり、状態B(図3の洗濯機1E参照)のままである場合には(ステップS4でNO)、制御部21は、水位Lが洗濯物Qの高さ寸法Hと所定の高さβとの合計に相当する位置を上回ったか否かを確認する(ステップS7)。高さβは、洗濯物Qが水面W近くまで浮いた状態にあるか否かを判定するための閾値として実験などで予め求められた正の値であって、メモリ23に記憶される。高さβと、前述した高さαとは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。水位Lが高さ寸法Hと高さβとの合計以下である場合には(ステップS7でNO)、必要な量の水が洗濯槽4内に溜まった状態になく、洗濯槽4内の水位Lが低いので、制御部21は、給水を継続する。
【0044】
洗濯槽4内が状態Bのまま、必要な量の水が洗濯槽4内に溜まると、洗濯槽4の底壁4Bから離れて浮き上がった洗濯物Qの上端が水面W付近にあり、水位Lが高さ寸法Hと高さβとの合計よりも大きくなる。この場合には(ステップS7でYES)、制御部21は、水流の勢いについての設定値Sを、当初の初期値Siから一段階引き上げる(ステップS8)。そして、制御部21は、ステップS6において、給水を停止して、引き上げ後の設定値Sに応じた勢いの水流での洗いを開始する。
【0045】
このように、制御部21は、ステップS4、S5、S7およびS8では、第1高さ寸法Daと第2高さ寸法Dbと水位Lとに基いて、洗濯槽4内における洗濯物Qと水面Wとの位置関係を給水中に判定する。そして、制御部21は、判定の完了に応じて、給水を停止する(ステップS6)。洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にあるという判定結果に基いて、ステップS6からの洗いでは、初期値Siに応じた第1の勢いの水流を洗濯槽4内に発生させる。一方、制御部21は、洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にないという判定結果に基いて、ステップS6からの洗いでは、ステップS8にて初期値Siから引き上げられた設定値Sに応じた第2の勢いの水流を洗濯槽4内に発生させる。第2の勢いは、第1の勢いよりも強い。また、ステップS6での洗い開始時における水位Lは、事前に決められた訳でなく、当該判定の度に個別に決定される。
【0046】
制御部21は、ステップS6での洗い開始からの経過時間を、タイマ24によって計測する。今回の洗い工程として設定された洗い時間が経過すると(ステップS9でYES)、制御部21は、モータ6によるパルセータ5の回転を停止させて、排水弁16を開き、洗濯槽4の排水を行う(ステップS10)。これにより、洗い工程が終了する。
【0047】
洗い時間が経過する前では(ステップS9でNO)、制御部21は、所定時間ΔTが経過する度に(ステップS11でYES)、洗濯槽4内が状態Aにあるか否かを確認する(ステップS12)。洗濯槽4内が状態Aにあれば(ステップS12でYES)、制御部21は、水流の勢いが現状のまま洗いを継続してもよいし、水流の勢いについての設定値Sを下限値Smin側、詳しくは初期値Siまで引き下げてから洗いを継続してもよい。洗濯槽4内が状態Aになければ(ステップS12でNO)、制御部21は、メモリ23に設定された所定のフラグを0から1に変更して(ステップS13)、現在の水流の勢いについての設定値Sが上限値Smaxよりも小さいか否かを確認する(ステップS14)。設定値Sが上限値Smaxであれば(ステップS14でNO)、制御部21は、現状を維持する。設定値Sが上限値Smaxよりも小さければ(ステップS14でYES)、制御部21は、設定値Sを、現状から一段階引き上げる(ステップS15)。これにより、勢いが一段階強くなった水流によって、洗い時間の経過まで洗濯物Qの洗いが継続される。なお、設定値Sの引き上げ後も洗濯槽4内が状態Aになければ、設定値Sがさらに引き上げられてもよい。
【0048】
このように、制御部21は、給水中だけでなく、給水後の洗い中にも、洗濯槽4内における洗濯物Qと水面Wとの位置関係を判定する(ステップS12)。そして、洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にあるという判定結果に基いて(ステップS12でYES)、その後の洗いでは、強さが現状と同等以下の第1の勢いの水流を洗濯槽4内に引き続き発生させる。一方、制御部21は、洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にないという判定結果に基いて(ステップS12でNO)、その後の洗いでは、引き上げられた設定値Sに応じた第2の勢いの水流を洗濯槽4内に発生させる(ステップS15)。ここでの第2の勢いは、第1の勢いよりも強い。
【0049】
図6のフローチャートを参照して、洗い工程後のすすぎ工程が始まると、制御部21は、前述したフラグが1であるか否か、つまり、洗い中の洗濯槽4内が状態Bであった履歴の有無を確認する(ステップS31)。フラグが1でない、つまり0である場合には(ステップS31でNO)、洗い中の洗濯槽4内は常に状態Aであったので、制御部21は、今回のすすぎ工程においてこれから洗濯槽4内で発生させる水流の勢いの設定値Sを初期値Siに設定してから(ステップS32)、給水を開始する(ステップS33)。フラグが1である場合には(ステップS31でYES)、制御部21は、これから洗濯槽4内で発生させる水流の勢いの設定値Sを初期値Siから一段階引き上げてから(ステップS34)、給水を開始する(ステップS33)。つまり、制御部21は、洗い工程での判定結果を利用して、すすぎ工程における初期の設定値Sを設定する。なお、制御部21は、ステップS34において、フラグを1から0にリセットする。
【0050】
給水開始後、洗濯槽4内の水位Lが、洗い工程での給水停止時つまり洗い開始時(ステップS6)における水位と同じすすぎ開始水位に到達すると(ステップS35でYES)、制御部21は、洗濯槽4への給水を停止し、洗濯槽4が静止した状態で、モータ6によってパルセータ5を回転させる(ステップS36)。これにより、洗濯槽4内では、設定値Sに応じた勢いの水流が発生する。洗濯槽4内の洗濯物Qは、回転するパルセータ5や水流に撹拌されることによって、すすがれる。
【0051】
制御部21は、ステップS36でのすすぎ開始からの経過時間を、タイマ24によって計測する。今回のすすぎ工程として設定されたすすぎ時間が経過すると(ステップS37でYES)、制御部21は、モータ6によるパルセータ5の回転を停止させて洗濯槽4の排水を行う(ステップS38)。これにより、すすぎ工程が終了する。
【0052】
すすぎ時間が経過する前では(ステップS37でNO)、制御部21は、所定時間ΔTが経過する度に(ステップS39でYES)、洗濯槽4内が状態Aにあるか否かを確認する(ステップS40)。洗濯槽4内が状態Aにあれば(ステップS40でYES)、制御部21は、水流の勢いを変えることなくすすぎを継続してもよいし、水流の勢いについての設定値Sを例えば初期値Siまで引き下げてからすすぎを継続してもよい。洗濯槽4内が状態Aになければ(ステップS40でNO)、現在の水流の勢いについての設定値Sが上限値Smaxよりも小さいか否かを確認する(ステップS41)。設定値Sが上限値Smaxであれば(ステップS41でNO)、制御部21は、現状を維持する。設定値Sが上限値Smaxよりも小さければ(ステップS41でYES)、制御部21は、設定値Sを、現状から一段階引き上げる(ステップS42)。これにより、勢いが一段階強くなった水流によって、すすぎ時間の経過まで洗濯物Qのすすぎが継続される。なお、設定値Sの引き上げ後も洗濯槽4内が状態Aになければ、設定値Sがさらに引き上げられてもよい。
【0053】
このように、制御部21は、すすぎ中に、洗濯槽4内における洗濯物Qと水面Wとの位置関係を判定する(ステップS40)。そして、洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にあるという判定結果に基いて(ステップS40でYES)、その後のすすぎでは、強さが現状と同等以下の第1の勢いの水流を洗濯槽4内に引き続き発生させる。一方、制御部21は、洗濯槽4内の洗濯物Qが水没位置にないという判定結果に基いて(ステップS40でNO)、その後のすすぎでは、引き上げられた設定値Sに応じた第2の勢いの水流を洗濯槽4内に発生させる(ステップS42)。ここでの第2の勢いは、第1の勢いよりも強い。
【0054】
すすぎ工程は、複数回実施されてもよい。すすぎ工程後の脱水工程では、制御部21は、排水弁16を開いた状態で、洗濯槽4を高速回転させる。この高速回転により生じた遠心力によって、洗濯槽4内の洗濯物が脱水される。脱水により洗濯物から染み出た水は、排水路15から機外に排出される。なお、脱水工程は、洗濯運転の最後に実行される最終脱水工程とは別の中間脱水工程として、洗い工程およびすすぎ工程のそれぞれの後に実施されてもよい。
【0055】
以上のように、洗濯機1では、空のときの洗濯槽4の内部空間の第1高さ寸法Daと、洗濯物Qを収容したときの洗濯槽4の内部空間の第2高さ寸法Dbと、洗濯物Qを収容して水が溜められたときの洗濯槽4内の水位Lとに基いて、洗濯槽4内における洗濯物Qと水面Wとの位置関係が判定される。洗濯槽4内において水面Wから所定距離以上低い水没位置にあると判定された洗濯物Qは、全体が濡れた状態にあるので、第1の勢いの水流でも効果的に洗濯できる。一方、水没位置にないと判定された洗濯物Qは、水面Wからはみ出すことによって濡れ具合の悪い部分を有するおそれがあるので、第1の勢いよりも強い第2の勢いの水流によって、全体が濡れるように洗濯される。
【0056】
そして、洗濯機1では、前述した判定によって洗濯槽4内における洗濯物Qの浮き具合が推定され、その浮き具合に応じて水流の勢いが調整されることによって洗濯物Qの濡れ具合が改善される。そのため、洗濯物Qが水没位置にあってもなくても、この洗濯物Qを、濡れ具合の悪い部分が存在しないように適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。また、このような水流によって洗剤が水に効果的に溶けるので、洗剤の溶け残りを抑制できる。さらに、水流によって洗濯物Qを水没させた状態で洗濯できるので、水面Wに泡が残留することも抑制できる。
【0057】
洗い工程では、洗濯物Qが水没位置にあるか否かの判定(ステップS4、S5およびS7)は、給水中に行われ、この判定の完了に応じて給水が停止される(ステップS6)。これにより、洗濯物Qが水没位置にある場合には、必要以上の給水が行われないし、洗濯物Qが水没位置にない場合であっても、判定後に追加の給水は行われない。水没位置にない洗濯物Qは、追加の給水がなくても、第2の勢いの水流によって全体が濡れるように洗濯される。そのため、洗濯物Qが水没位置にあってもなくても、使用水量の増加を抑制しつつ、この洗濯物Qを適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。
【0058】
洗濯物Qが水没位置にあるか否かの判定は、給水後の洗濯中にも定期的に行われる(ステップS12およびS40)。そのため、当初は水没位置にあって第1の勢いの水流による洗濯が開始されたものの洗濯途中で水没位置にないと判定された洗濯物Qは、第1の勢いよりも強い第2の勢いの水流によって、全体が濡れるように洗濯される(ステップS15およびS42)。このように、洗濯物Qが洗濯途中で水没位置から移動しても、この洗濯物Qを適切に濡らすことによって効果的に洗濯できる。
【0059】
第2高さ寸法Dbと第1高さ寸法Daとの差に相当する洗濯物Qの高さ寸法Hが、洗濯物Qの上面部における凹凸によってばらついても、撹拌部がこの洗濯物Qを撹拌することによって当該凹凸が小さくなる(ステップS25)。これにより、洗濯物Qの高さ寸法Hのばらつきが小さくなるので、第2高さ寸法Dbのばらつきも小さくなる。そのため、値が安定した第2高さ寸法Dbに基いて、洗濯槽4内における洗濯物Qと水面Wとの位置関係を正確に判定することができる(ステップS4、S5およびS7)。
【0060】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0061】
例えば、洗濯運転の終了後も洗濯物Qが取り出されずに放置されると、高さ寸法検知部28が検知する高さ寸法Dは、第1高さ寸法Da(図3の洗濯機1Aを参照)とは異なる値になる。そこで、洗濯運転終了後から一定時間が経過しても高さ寸法検知部28が第1高さ寸法Daを検知しない場合には、制御部21は、洗濯物Qの取り忘れがあると判断して、その旨を操作部11における表示やブザーなどによって使用者に報知してもよい。また、洗濯槽4やパルセータ5が停止した状態で高さ寸法Dが変化した場合には、制御部21は、洗濯槽4内に動物などが存在すると判断して、その旨を使用者に報知してもよい。
【0062】
また、前述したステップS21~S23およびS25(図5参照)において、洗濯槽4内の洗濯物Qの高さ寸法Hを複数回測定して、そのばらつきが所定範囲内におさまるように洗濯物Qをならす処理は、脱水工程の開始時や、洗濯運転の終了時に行われてもよい。この場合、脱水工程では、高さ寸法Hのばらつきが洗濯物Qの偏りに相当するので、洗濯物Qをほぐすことによって洗濯物Qの偏りを低減できる。洗濯運転の終了時には、洗濯物Qをほぐすことによって洗濯物Qの皴を低減することができる。
【0063】
洗濯物Qの投入や給水に応じて洗濯槽4の上下方向Zが下側Z2へずれるおそれがあるが、前述した実施形態では、高さ寸法検知部28は、洗濯槽4を支持する外槽3に固定されるので、洗濯槽4の位置がずれても、高さ寸法Dを正確に検知できる。なお、洗濯槽4の位置ずれが、高さ寸法検知部28による検知精度に影響を及ぼさないのであれば、高さ寸法検知部28は、外槽3でなく、筐体2に固定されてもよい。また、前述したステップS21において洗濯槽4の回転方向において異なる複数の位置のそれぞれにおける第2高さ寸法Dbを検知するために、複数の高さ寸法検知部28が当該回転方向に並んで配置されてもよい。この場合、これらの高さ寸法検知部28が、外槽3や筐体2でなく、洗濯槽4に固定されて洗濯槽4と一体回転してもよい。
【0064】
また、洗濯機1は、洗濯槽4の軸線Jが上下方向Zに沿って垂直に延びるように配置された縦型の洗濯乾燥機であるが(図1参照)、洗濯機1には、軸線Jが上下方向Zに対して若干傾斜して配置された構成も含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1 洗濯機
4 洗濯槽
5 パルセータ
14 給水弁
21 制御部
27 水位検知部
28 高さ寸法検知部
D 洗濯槽の内部空間の高さ寸法
Da 第1高さ寸法
Db 第2高さ寸法
H 洗濯物の高さ寸法
Hmax 最大値
Hmin 最小値
L 水位
Q 洗濯物
W 水面
γ 閾値
図1
図2
図3
図4
図5
図6