(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】メタン発酵槽、メタン発酵システム及びメタン発酵処理方法
(51)【国際特許分類】
C02F 11/04 20060101AFI20230120BHJP
B09B 3/00 20220101ALI20230120BHJP
【FI】
C02F11/04 A
B09B3/00
(21)【出願番号】P 2018212263
(22)【出願日】2018-11-12
【審査請求日】2021-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 紀子
(72)【発明者】
【氏名】張 振亜
(72)【発明者】
【氏名】楊 暁静
(72)【発明者】
【氏名】王 迪
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-090204(JP,A)
【文献】特開2015-057951(JP,A)
【文献】特開2015-044171(JP,A)
【文献】特開2017-185453(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0055884(US,A1)
【文献】特開2013-034958(JP,A)
【文献】特開2018-093826(JP,A)
【文献】特開2009-248041(JP,A)
【文献】特開2005-046788(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 11/00-11/20
B09B 1/00-5/00
B09C 1/00-1/10
C02F 3/28-3/34
B01F 21/00-25/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させる発酵部と、
直径1μm以下の
二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつの気泡を含む第1の水を前記発酵部に供給する第1供給部と、
直径1μm以下の
空気の気泡を含む第2の水を前記発酵部に供給する第2供給部と、
を備え
、
前記第1供給部では、前記第1の水の供給量が調整可能であり、
前記第2供給部では、前記第2の水の供給量が調整可能である、
メタン発酵槽。
【請求項2】
前記有機性廃棄物は、難分解性有機物を含む請求項1に記載のメタン発酵槽。
【請求項3】
前記第1の水及び前記第2の水の気泡の濃度は、6×10
7particles/ml以上5×10
9particles/ml以下である請求項1又は2に記載のメタン発酵槽。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のメタン発酵槽と、
前記第1供給部を介して前記発酵部に供給する前記第1の水を作製する第1水作製装置と、
前記第2供給部を介して前記発酵部に供給する前記第2の水を作製する第2水作製装置と、
を有するメタン発酵システム。
【請求項5】
前記第1供給部による前記第1の水の供給量を調節するとともに、前記第2供給部による前記第2の水の供給量を調節する制御装置を有する請求項4に記載のメタン発酵システム。
【請求項6】
前記メタン発酵槽の硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを検出する第1検出装置、及び、pHを検出する第2検出装置の少なくともひとつを備え、
前記制御装置は、前記第1検出装置が検出する硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつ、並びに、前記第2検出装置が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、前記第1供給部による前記第1の水の供給量と、前記第2供給部による前記第2の水の供給量と、を調節する請求項5に記載のメタン発酵システム。
【請求項7】
前記制御装置は、前記発酵部の前記培養液の直径1μm以下の気泡の濃度を推定する推定部と、前記推定部が推定した濃度に基づいて前記第1の水及び前記第2の水の供給量を調節する制御部と、を備える請求項5又は6に記載のメタン発酵システム。
【請求項8】
前記制御部は、前記発酵部の前記培養液の直径1μm以下の気泡の濃度が2×10
7particles/ml以上2×10
8particles/ml以下となるように、前記第1の水及び前記第2の水の供給量を調節する請求項7に記載のメタン発酵システム。
【請求項9】
前記メタン発酵槽から発生したバイオガスから硫黄酸化物を除去して精製後バイオガスとする脱硫装置を備える請求項4から8のいずれか一項に記載のメタン発酵システム。
【請求項10】
前記第1供給部が供給する前記第1の水の気泡は、前記精製後バイオガスの燃焼により排出される二酸化炭素を含む請求項9に記載のメタン発酵システム。
【請求項11】
前記第1供給部及び前記第2供給部の少なくとも一方から前記第1の水及び前記第2の水の少なくともいずれかが供給され、かつ、前記メタン発酵槽に投入される前の有機性廃棄物をスラリー化するスラリータンクを備える請求項4から10のいずれか一項に記載のメタン発酵システム。
【請求項12】
前記メタン発酵槽から発生した消化液を固液分離し、かつ、前記消化液の固液分離によって得られた液体を前記スラリータンクに供給する消化液処理装置を備える請求項11に記載のメタン発酵システム。
【請求項13】
前記第1供給部及び前記第2供給部の少なくとも一方から前記第1の水及び前記第2の水の少なくともいずれかが供給され、かつ、前記メタン発酵槽に投入される前の有機性廃棄物を加水分解する前発酵槽を備える請求項4から12のいずれか一項に記載のメタン発酵システム。
【請求項14】
前記メタン発酵槽から発生した消化液を固液分離し、かつ、前記消化液の固液分離によって得られた液体を前記前発酵槽に供給する消化液処理装置を備える請求項13に記載のメタン発酵システム。
【請求項15】
前記第1供給部及び前記第2供給部の少なくとも一方が供給する前記第1の水及び前記第2の水の少なくともいずれかは、前記消化液の固液分離によって得られた前記液体を含む請求項12又は14に記載のメタン発酵システム。
【請求項16】
嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵処理方法であって、
メタン発酵中に、直径1μm以下の
二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつの気泡を含む第1の水と、直径1μm以下の
空気の気泡を含む第2の水と、を前記有機性廃棄物に供給し
、
前記第1の水の供給量は、調整可能であり、
前記第2の水の供給量は、調整可能である、
メタン発酵処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メタン発酵槽、メタン発酵システム及びメタン発酵処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
嫌気性下で嫌気性微生物の生物処理によって、有機性廃棄物をメタンガスに転換するメタン発酵処理方法が知られている。例えば、特許文献1には、有機物を嫌気性微生物で分解しメタン発酵させてメタンガスを生成するメタン発酵システムの一例が記載されている。
【0003】
また、特許文献2及び3には、メタン発酵処理の後に残った有機残渣を可溶化するために、マイクロバブルを有機残渣に接触させる廃棄物処理システムの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5870343号公報
【文献】特開2017-121603号公報
【文献】特開2018-130656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来では、メタン発酵槽の温度を高めて嫌気性微生物を活性化させる、発酵槽の滞留時間を長くする、及び、予め有機性廃棄物に粉砕、酸発酵、加水分解及び亜臨界処理等の前処理を施すことによって、有機性廃棄物の分解を促進させていた。しかしながら、上記の方法では、有機性廃棄物分解の促進に限界があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、有機性廃棄物の分解を促進させることのできるメタン発酵槽、メタン発酵システム及びメタン発酵処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示の一態様は、嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させる発酵部と、直径1μm以下の気泡を含む水を発酵部に供給する水供給部と、を備えるメタン発酵槽である。
【0008】
なお、本開示の上記のメタン発酵槽の態様において、有機性廃棄物は、難分解性有機物を含むことが好ましい。
【0009】
なお、本開示の上記のメタン発酵槽の態様において、直径1μm以下の気泡は、空気、二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつを含むことが好ましい。
【0010】
なお、本開示の上記のメタン発酵槽の態様において、直径1μm以下の気泡を含む水の気泡の濃度は、6×107particles/ml以上5×109particles/ml以下であることが好ましい。
【0011】
本開示の他の一様態は、上記のメタン発酵槽と、発酵部に供給する直径1μm以下の気泡を含む水を作製する水作製装置と、を有するメタン発酵システムである。
【0012】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、水供給部による直径1μm以下の気泡を含む水の供給量を調節する制御装置を有することが好ましい。
【0013】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、メタン発酵槽の硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを検出する第1検出装置、及び、pHを検出する第2検出装置の少なくともひとつを備え、水供給部は、二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつの直径1μm以下の気泡を含む水を供給する第1供給部と、空気の直径1μm以下の気泡を含む水を供給する第2供給部と、を有し、制御装置は、第1検出装置が検出する硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつ、及び、第2検出装置が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、第1供給部による直径1μm以下の気泡を含む水の供給量と、第2供給部による直径1μm以下の気泡を含む水の供給量と、を調節することが好ましい。
【0014】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、制御装置は、発酵部の培養液の直径1μm以下の気泡の濃度を推定する推定部と、推定部が推定した濃度に基づいて直径1μm以下の気泡を含む水の供給量を調節する制御部と、を備えることが好ましい。
【0015】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、制御部は、発酵部の培養液の直径1μm以下の気泡の濃度が2×107particles/ml以上2×108particles/ml以下となるように、直径1μm以下の気泡を含む水の供給量を調節することが好ましい。
【0016】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、メタン発酵槽から発生したバイオガスから硫黄酸化物を除去して精製後バイオガスとする脱硫装置を備えることが好ましい。
【0017】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、直径1μm以下の気泡は、精製後バイオガスの燃焼により排出される二酸化炭素を含むことが好ましい。
【0018】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、直径1μm以下の気泡を含む水が供給され、かつ、メタン発酵槽に投入される前の有機性廃棄物をスラリー化するスラリータンクを備えることが好ましい。
【0019】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、メタン発酵槽から発生した消化液を固液分離し、かつ、消化液の固液分離によって得られた液体をスラリータンクに供給する消化液処理装置を備えることが好ましい。
【0020】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、直径1μm以下の気泡を含む水が供給され、かつ、メタン発酵槽に投入される前の有機性廃棄物を加水分解する前発酵槽を備えることが好ましい。
【0021】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、メタン発酵槽から発生した消化液を固液分離し、かつ、消化液の固液分離によって得られた液体を前発酵槽に供給する消化液処理装置を備えることが好ましい。
【0022】
なお、本開示の上記のメタン発酵システムの態様において、直径1μm以下の気泡を含む水は、消化液の固液分離により得られた液体を含むことが好ましい。
【0023】
本開示の他の一様態は、嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵処理方法であって、メタン発酵中に直径1μm以下の気泡を含む水を有機性廃棄物に供給するメタン発酵処理方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、有機性廃棄物の分解を促進させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本実施形態のメタン発酵槽及びメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図2】
図2は、メタン発酵の過程を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、
図1に示すメタン発酵システムによるメタン発酵方法のフローチャートである。
【
図4】
図4は、バッチ試験におけるメタン生成量を示すグラフである。
【
図5】
図5は、バッチ試験における難分解性有機物の最終的な分解率を示すグラフである。
【
図6】
図6は、バッチ試験における難分解性有機物を含む有機性廃棄物からのメタン生成量を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第1変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図8】
図8は、第2変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図9】
図9は、第3変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図10】
図10は、第4変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図11】
図11は、第5変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【
図12】
図12は、第6変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係るメタン発酵槽及びメタン発酵システムの実施形態について図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態の記載に限定されるものではない。また、以下の実施形態における構成要素には、当業者が置換可能且つ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0027】
(実施形態)
図1は、本実施形態のメタン発酵槽及びメタン発酵システムを示す模式図である。本実施形態のメタン発酵システム1は、嫌気性条件下で活動する嫌気性微生物により、有機性廃棄物を分解し、メタン(CH
4)及び二酸化炭素(CO
2)を含むバイオガスを発生させるメタン発酵を行うシステムである。この有機性廃棄物は、例えば、有機汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、又は動植物性残渣等である。メタン発酵システム1によって発生したバイオガスは、精製された後、エネルギーとして利用される。
【0028】
図1に示すメタン発酵システム1は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。なお、
図1では、「ウルトラファインバブル」を「UFB」と省略して記載している(以降の図面も同様である)。
【0029】
分別粉砕機10は、メタン発酵を円滑に行うための前処理設備である。分別粉砕機10は、投入された廃棄物を、有機性廃棄物と発酵不適物とに分別して、発酵不適物を除外する。発酵不適物は、例えば、金属、鉱物、プラスチック、紙類、環境を汚染する物質を含む電池等である。分別粉砕機10は、有機性廃棄物を粗粉砕し、ペースト化する。分別粉砕機10は、配管11によりスラリータンク20に接続する。粗破砕された有機性廃棄物は、配管11を通じてスラリータンク20に供給される。
【0030】
スラリータンク20は、メタン発酵を円滑に行うための前処理設備である。スラリータンク20は、分別粉砕機10から供給された有機性廃棄物を微粉砕してスラリー化する。ここで、スラリータンク20は、スラリー化された有機性廃棄物が、所定の濃度になるまで、希釈水を加えて攪拌し、適宜濃度調節を行う。所定の濃度に調整された有機性廃棄物は、配管21を通じてメタン発酵槽100に供給される。スラリータンク20からメタン発酵槽100への有機性廃棄物の供給は、所定量ずつであることが好ましい。
【0031】
メタン発酵槽100は、スラリータンク20から供給された有機性廃棄物を分解してバイオガスを生成するメタン発酵を行う。メタン発酵槽100は、例えば箱形又は円筒形等である。メタン発酵槽100は、密封された密閉構造である。メタン発酵槽100の内部は、無酸素状態(嫌気条件下)に保たれる。メタン発酵槽100は、発酵部110と、ウルトラファインバブル水供給部120と、を有する。
【0032】
発酵部110は、微生物群を含む培養液を含む。微生物群は、嫌気性条件下で活動する嫌気性微生物を含む。嫌気性微生物は、メタン菌を含む。メタン菌は、嫌気下条件でメタンを合成する古細菌であり、後述のメタンガス形成工程(
図2の第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16)を担う。発酵部110は、嫌気性微生物により、スラリータンク20から供給された有機性廃棄物を分解し、メタン及び二酸化炭素を含むバイオガスを発生させる。メタン発酵槽100の内部は、メタン菌が好適に繁殖できる環境に温度、pH等の条件が維持されることが好ましい。
【0033】
本実施形態において、メタン発酵槽100は、第1検出装置160と、第2検出装置170とを有する。第1検出装置160は、発酵部110の上方の気相部に設けられる。第1検出装置160は、メタン発酵により生じた硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを検出する。第2検出装置170は、発酵部110に設けられる。第2検出装置170は、pHを検出する。さらに、メタン発酵槽100は、温度計が設けられてもよい。第1検出装置160により、硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを測定することで、発酵部110におけるメタン発酵の反応の様子を検出することが可能である。第2検出装置170により、pHを測定することで、発酵部110におけるメタン発酵の反応の様子を検出することが可能である。さらに、温度計により、発酵部110の温度を測定することで、発酵部110におけるメタン発酵の反応の様子を検出することが可能である。これらの検出結果は、後述の制御装置150に送られる。なお、本実施形態においては、第1検出装置160及び第2検出装置170を設けたが、いずれか一方のみを設けてもよい。第1検出装置160及び第2検出装置170の配置は、本実施形態に限定されない。
【0034】
発酵部110の上方の気相部は、脱硫装置50に接続する配管51が連通する。発酵部110にてメタン発酵によって発生したバイオガスは、配管51を通じて脱硫装置50に供給される。発酵部110の下方には、消化液処理装置40に連通する配管41が接続している。発酵部110にてメタン発酵を行った後の発酵残渣である消化液は、配管41を通じて消化液処理装置40に供給される。
【0035】
図2において、メタン発酵の原理について説明する。
図2は、メタン発酵の過程を示すフローチャートである。メタン発酵において、有機性廃棄物の分解からメタンを含むバイオガスの発生までの工程は、主に、加水分解工程S10と、酸生成工程S12と、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16と、に大別される。加水分解工程S10は、水溶液中の溶質が水分子と反応しておこす分解反応が生じる。酸生成工程S12、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16は、メタン菌等の嫌気性微生物が作用して反応が生じる。ここで、有機性廃棄物は、タンパク質、炭水化物(多糖)、脂質、繊維、繊維質等の高分子有機物である。
【0036】
まず、加水分解工程S10で、高分子有機物は低分子有機物に分解される。分解された低分子有機物は、アミノ酸、糖類(単糖)及び長鎖脂肪酸等である。タンパク質は、アミノ酸に分解される。炭水化物は、糖類に分解される。脂質は、糖類及び長鎖脂肪酸に分解される。繊維、繊維質等は、糖類に分解される。
【0037】
次に、酸生成工程S12で、加水分解により低分子となった物質は、酢酸(CO3COOH)、二酸化炭素及び水素(H2)等に分解される。アミノ酸は、アンモニア(NH3)及び酢酸、酪酸(CH3(CH2)2COOH)、プロピオン酸(CH3CH2COOH)等の短鎖脂肪酸等に分解される。糖類は、ピルビン酸(CH3COCOOH)等に分解され、水素、二酸化炭素、酢酸及びその他の中間生成物等が生成される。この中間生成物は、酢酸及び水素等に分解される。長鎖脂肪酸は、酢酸等に分解される。
【0038】
最後に、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16で、メタン菌が、メタン、二酸化炭素、水等を生成する。第1メタンガス形成工程S14では、酢酸が、メタン及び二酸化炭素に分解される。第2メタンガス形成工程S16では、水素及び二酸化炭素から、メタンが生成される。
【0039】
なお、上記では、メタン発酵がメタン発酵槽100の内部のみで行われるものとして説明した。ここで、メタン発酵槽100に供給された有機性廃棄物は、
図1に示すスラリータンク20にてスラリー化している。つまり、メタン発酵槽100に供給される有機性廃棄物は加水された状態の高分子有機物である。有機性廃棄物に、加水分解工程S10の触媒となりうる好気性微生物群又は酵素が予め含まれている場合、加水分解工程S10の一部は、スラリータンク20の内部でも行われる。さらに、有機性廃棄物に、酸生成工程S12の触媒となりうる嫌気性微生物群又は酵素が予め含まれている場合、酸生成工程S12の一部は、スラリータンク20の内部でも行われる。
【0040】
図1に示すウルトラファインバブル水供給部120は、ウルトラファインバブル水作製装置200(UFB水作製装置)からメタン発酵槽100の発酵部110にウルトラファインバブル水(UFB水)を供給する。ウルトラファインバブル水供給部120は、メタン発酵槽100とウルトラファインバブル水作製装置200とを接続する配管121と、配管121を開閉するバルブ122とを有する。ウルトラファインバブル水は、直径1μm以下の気泡を含む水溶液、いわゆるウルトラファインバブルを含む水溶液である。ウルトラファインバブルは、直径1μm以下、好ましくは1nm以上1μm以下、さらに好ましくは30nm以上400nm以下の気泡である。
【0041】
ウルトラファインバブル水がメタン発酵槽100に添加されることによって、メタン発酵槽100の内部の物質の移動性が向上する。ウルトラファインバブルが有機性廃棄物に付着することによって、メタン発酵槽100の発酵部110に存在する微生物群は、ウルトラファインバブルと接触しやすくなる。ウルトラファインバブルには酸素が含まれるため、嫌気性微生物にとってウルトラファインバブルとの接触はストレスとなる。また、ウルトラファインバブルにより液中の活性酸素種(ROS:reactive oxygen species)の濃度が増加する。活性酸素種としては、ヒドロキシルラジカル、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロペルオキシルラジカル、過酸化水素、一重項酸素等がある。微生物周辺及び微生物中における活性酸素種の濃度がその微生物にとって致命傷にならない程度まで増加すると、微生物の一次代謝及び二次代謝が活性化すると共に二次代謝による生成物が増加する。また、当該生成物には難分解性物質の分解に寄与する酵素も含まれる場合がある。また、ウルトラファインバブルが微生物と接触することにより、メタン発酵槽100中に含まれるカリウム、亜鉛、鉄及びマンガンの少なくともひとつの元素が微生物に吸収されやすくなり、微生物に含まれる元素濃度が上昇し、微生物が活性化する。これらにより、有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解が促進されると共に、メタンの発生量が増加する。
【0042】
なお、メタン発酵に用いる培養液として、直径が数μm以上数100μm以下の気泡(マイクロバブル)を含む水を用いることは難しい。これは、マイクロバブルを含む水は酸素溶解度が高く、メタン発酵槽内の培養液が嫌気性微生物の生育しにくい環境になるためである。これに対し、ウルトラファインバブルは体積がきわめて小さく、酸素含有量が少ないため、ウルトラファインバブル水において、嫌気性微生物の生育が可能である。また、ウルトラファインバブルは、マイクロバブルと比較して寿命が長い。このため、本実施形態のメタン発酵システム1では、ウルトラファインバブル水を必要量のみ生成し、メタン発酵槽100へ添加することで消費エネルギーを低減することができる。
【0043】
また、有機性廃棄物に難分解性物質が含まれる場合、メタン発酵反応が進まなかった残渣物が残存しやすい。このため、従来は、反応系の圧力を高める、温度を上昇させる等により、難分解性物質のメタン発酵反応を促進させていた。しかしながら、本実施形態のように、ウルトラファインバブル水を用いることで、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の初期発酵速度を向上させ、分解を促進させると共に、メタンの発生量を増加させ、残差物の量を減少させることが可能である。
【0044】
制御装置150は、ウルトラファインバブル水供給部120によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節する。制御装置150は、推定部151と、制御部152とを有する。推定部151は、発酵部110の培養液のウルトラファインバブルの濃度を推定する。例えば、推定部151は、メタン発酵槽100へ供給したウルトラファインバブル水の量と、発酵部110の培養液量と、ウルトラファインバブル水をメタン発酵槽100に供給して経過した時間に基づいて、培養液のウルトラファインバブルの濃度を推定する。制御部152は、推定部151が推定した濃度に基づいてウルトラファインバブル水の供給量を調節することができる。制御部152は、バルブ122の開閉を操作して、ウルトラファインバブル水供給部120によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節できる。
【0045】
制御装置150は、第1検出装置160及び第2検出装置170に電気的に接続する。制御装置150は、第1検出装置160に、メタン発酵により生じた硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを測定させ、測定結果を取得する。制御装置150は、制御装置150は、第2の検出装置に、pHを測定させ、測定結果を取得する。さらに、メタン発酵槽100が、温度計を有する場合、制御装置150は、温度計に電気的に接続し、発酵部110の温度を取得する。制御装置150は、第1検出装置160、第2検出装置170及び温度計の測定結果に基づいて、メタン発酵の反応の様子を検出する。制御装置150は、ウルトラファインバブル水作製装置200からメタン発酵槽100に供給するウルトラファインバブル水の量を、メタン発酵の反応の様子に合わせて制御することができる。
【0046】
メタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の添加は、スラリータンク20からメタン発酵槽100に有機性廃棄物が供給された時、又はスラリータンク20からメタン発酵槽100に有機性廃棄物が供給された後に行うことが好ましい。これにより、ウルトラファインバブルの濃度が低下する前にウルトラファインバブルが有機性廃棄物に付着する。メタン発酵槽100に添加されるウルトラファインバブル水は、メタン発酵槽100の発酵部110の培養液の容量に対して10vol%以上であることが好ましい。発酵部110の培養液のウルトラファインバブルの濃度は、2×107particles/ml以上2×108particles/ml以下であることが好ましい。ウルトラファインバブルの濃度とは、単位体積あたりの水に存在するウルトラファインバブルの数である。ウルトラファインバブルの濃度が2×107particles/mlであることは、1mlのウルトラファインバブル水に2×107個のウルトラファインバブルが存在することを意味する。ウルトラファインバブルの濃度は、Malvern Panalytical社製のナノ粒子解析システム“NanoSight”、株式会社島津製作所製のナノ粒子径分布測定装置“SALD-7500nano”等で測定することができる。
【0047】
ウルトラファインバブル水作製装置200は、ウルトラファインバブル水供給部120がメタン発酵槽100の発酵部110に供給するウルトラファインバブル水を作製する。ウルトラファインバブル水作製装置200は、ウルトラファインバブル発生装置201(UFB水発生装置)と、ウルトラファインバブル水タンク202(UFB水タンク)と、気体源Gと、水源Wと、を有する。
【0048】
気体源Gは、ウルトラファインバブルを形成する気体をウルトラファインバブル発生装置201に供給する。この気体は、特に限定されない。気体は、例えば、空気、二酸化炭素、水素、酸素、窒素(N2)等である。
【0049】
水源Wは、ウルトラファインバブル水を形成する液体をウルトラファインバブル水タンク202に供給する。この液体は、例えば、水道水、井水、雨水、河川水、消化液、排水処理水等である。
【0050】
ウルトラファインバブル水のウルトラファインバブルの濃度は、6×107particles/ml以上5×109particles/ml以下であることが好ましい。例えば、1.5Lの液体に対して、ウルトラファインバブル水作製装置200を30分間稼働させることによって、好適な濃度のウルトラファインバブル水を作製する。ウルトラファインバブル水の生成方法は、特に限定されない。例えば、ウルトラファインバブル水の生成方法としては、ポンプ又は攪拌機等を用いて流体の流れを作り、その中にガスを取り込み、スタティックミキサー、エジェクター、ベンチュリー等の各装置・器具の中を、ガスを含む流体を高速で通過させることで、内部のガスを微粒子化してファインバブルを発生させる方法がある。また、容器内に流体を入れ、スタティックミキサー、エジェクター、ベンチュリー等の各種装置を通過させたガスを流体中に放出する方法等がある。前者は、旋回流方式、スタティックミキサー方式、エジェクター方式、ベンチュリー方式、加圧溶解方式、キャビテーション方式があり、後者は細孔方式、超細孔方式、攪拌機等の回転体を入れてバブルを発生させる回転方式、超音波方式、パルス磁場印加方式等がある。ウルトラファインバブル水作製装置200によって生成されたウルトラファインバブル水は、ウルトラファインバブル水タンク202に貯蔵され、配管121を通ってメタン発酵槽100の発酵部110に供給される。なお、本実施形態では、ウルトラファインバブル水をメタン発酵槽100のみに供給しているが、さらにスラリータンク20に供給してもよい。
【0051】
図1に示す消化液処理装置40は、メタン発酵槽100の発酵部110にてメタン発酵を行った後の発酵残渣である消化液を処理する装置である。消化液処理装置40は、例えば、生物処理槽、固液分離機、排水処理装置、脱水装置及び乾燥装置等を有する。消化液処理装置40は、消化液を固体と液体とに分離する固液分離を行う。分離された固体は、例えば、堆肥化して農地等に還元することができる。分離された液体は、そのまま、又は排水処理を行った後、スラリータンク20に戻される。なお、スラリータンク20に戻す液体に、本実施形態のウルトラファインバブル水を添加してもよい。
【0052】
脱硫装置50は、メタン発酵槽100の発酵部110にてメタン発酵によって発生したバイオガスを、配管51を通じて導入する。脱硫装置50は、バイオガスから硫黄酸化物(SOx)を除去して精製後バイオガスとする。精製後バイオガスは、配管61を通じてガスホルダ60に供給される。
【0053】
ガスホルダ60は、精製後バイオガスを一時貯留する。精製後バイオガスは、発電設備70に送出される。発電設備70は、例えば、ボイラー又は発電機等である。発電設備70は、精製後バイオガスを燃焼させて電力等のエネルギーを発生させ、二酸化炭素を排出する。なお、精製後バイオガスをそのまま燃料として使用することも可能である。また、ガスホルダ60及び発電設備70の間に、ガス流量計を設けることで、発電設備70に供給するガスの流量を制御することができる。
【0054】
図3において、メタン発酵システム1によるメタン発酵方法について説明する。
図3は、
図1に示すメタン発酵システムによるメタン発酵方法のフローチャートである。
【0055】
まず、廃棄物が分別粉砕機10に投入されると、分別粉砕機10は、廃棄物を有機性廃棄物と発酵不適物とに分別する(ステップS20)。除外された発酵不適物は、任意の方法で適切に処分される。分別粉砕機10は、ステップS20で分別された有機性廃棄物を粗粉砕し、ペースト化する(ステップS22)。
【0056】
ペースト化した有機性廃棄物は、スラリータンク20に供給される。スラリータンク20は、有機性廃棄物を微粉砕してスラリー化する(ステップS24)。ここで、スラリータンク20は、スラリー化された有機性廃棄物が、所定の濃度になるまで、希釈水を加えて攪拌し、適宜濃度調節を行う。
【0057】
所定の濃度に調整された有機性廃棄物がメタン発酵槽100の発酵部110に供給されると、ウルトラファインバブル水供給部120は、発酵部110にウルトラファインバブル水を添加する(ステップS26)。添加するウルトラファインバブル水の供給量は、制御装置150がバルブ122を開閉することによって調整する。ウルトラファインバブル水のウルトラファインバブルは、有機性廃棄物及び微生物に付着して、発酵部110に存在する微生物群を活性化させる。また、加水分解酵素に付着することで、加水分解酵素の活性を高める。
【0058】
発酵部110の有機性廃棄物は、メタン発酵により分解し、バイオガスを生成する(ステップS28)。上述したように、発酵部110に供給された有機性廃棄物は、加水分解工程S10と、酸生成工程S12と、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16と、により分解されてバイオガスを生成する。
【0059】
ステップS28で生成されたバイオガスは、発酵部110上方の気相部から脱硫装置50に導入される。脱硫装置50は、バイオガスから硫黄酸化物を除去して精製後バイオガスとする(ステップS30)。精製後バイオガスは、ガスホルダ60に一時貯留された後、発電設備70に送出される。
【0060】
図4から
図6において、ウルトラファインバブル水の添加によるメタン発酵の促進効果について説明する。
図4は、バッチ試験におけるメタン生成量を示すグラフである。
図5は、バッチ試験における難分解性有機物の最終的な分解率を示すグラフである。
図6は、バッチ試験における難分解性有機物を含む有機性廃棄物からのメタン生成量を示すグラフである。
【0061】
図4は、培養液を充填した瓶をメタン発酵槽100に見立て、有機性廃棄物として汚泥20gをメタン発酵させた場合の、汚泥に含まれる有機物量(g)(VS:Volatole Solids)あたりのメタン生成量(ml)を示している。汚泥1gの成分は、全固形物量(TS:Total Solids)が0.378gであり、有機物量が0.15gである。汚泥には、水又はウルトラファインバブル水を添加している。比較例として、汚泥にウルトラファインバブル水ではない水を添加する場合、添加する水は、蒸留水(DW:Distiled Water)又は水道水(TW:Tap Water)である。添加するウルトラファインバブル水を形成する気体は、空気、二酸化炭素、水素又は窒素である。なお、
図4では、空気を含むウルトラファインバブル水を「Air-UFBW」と記載し、二酸化炭素を含むウルトラファインバブル水を「CO
2-UFBW」と記載し、水素を含むウルトラファインバブル水を「H
2-UFBW」と記載し、窒素を含むウルトラファインバブル水を「N
2-UFBW」と記載している。
【0062】
図4に示すように、ウルトラファインバブル水を添加しない場合に比べて、ウルトラファインバブル水を添加した場合、メタン生成量は増加する。つまり、ウルトラファインバブル水を添加した場合、有機性廃棄物の分解速度及び分解量が向上する。
【0063】
表1に、汚泥をメタン発酵させた場合の、汚泥に含まれる有機物量(VS)1gあたりの酵素活性ユニット(EU:Enzyme Unit)を示す。測定した酵素は、アルカリフォスターゼ(Alkaline phosphatase)、酸性フォスターゼ(Acid phosphatase)、グルコシダーゼ(α-glycosidase)、及びプロテアーゼ(Protease)の4つの加水分解酵素である。汚泥には、蒸留水又は20vol%の窒素を含むウルトラファインバブル水を添加している。なお、表1では、窒素を含むウルトラファインバブル水を「N2-UFBW」と記載している。また、表1における全てのデータは、3回の試験の平均値±標準偏差として示される。
【0064】
表1に示すように、汚泥のメタン発酵に、蒸留水を添加する場合に比べて、20vol%の窒素を含むウルトラファインバブル水を添加した場合、4つの加水分解酵素の活性が約14~17%向上する。つまり、窒素を含むウルトラファインバブル水を添加することにより、メタン発酵槽100又は前発酵槽30(後述の第3変形例を参照)において行われる加水分解工程S10の速度及び処理量が増加する。
【0065】
【0066】
図5は、培養液を充填した瓶をメタン発酵槽100に見立て、有機性廃棄物としてリグニンを含む難分解性有機物をメタン発酵させた場合の、分解前のリグニンの量に対する平衡状態における分解されたリグニンの量の百分率(%)を示している。
図6は、培養液を充填した瓶をメタン発酵槽100に見立て、有機性廃棄物としてリグニンを含む難分解性有機物をメタン発酵させた場合の、単位重量(g)の全有機炭素(TOC:Total Oganic Carbon)あたりのメタン生成量(ml)を示している。
図5及び
図6において、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の成分は、酢酸が90%であり、リグニンが10%である。難分解性有機物を含む有機性廃棄物には、水又はウルトラファインバブル水を添加している。比較例として、難分解性有機物を含む有機性廃棄物にウルトラファインバブル水ではない水を添加する場合、添加する水は、蒸留水である。添加するウルトラファインバブル水を形成する気体は、二酸化炭素又は窒素である。なお、
図5及び
図6では、二酸化炭素を含むウルトラファインバブル水を「CO
2-UFBW」と記載し、窒素を含むウルトラファインバブル水を「N
2-UFBW」と記載している。
【0067】
図5に示すように、蒸留水を添加した場合に比べて、ウルトラファインバブル水を添加した場合、難分解性有機物の最終的な分解量は増加する。
図6に示すように、蒸留水を添加した場合に比べて、ウルトラファインバブル水を添加した場合、平衡状態における総メタン生成量は増加する。また、初期のメタン生成速度及び生成量が向上する。つまり、難分解性有機物の初期発酵速度が向上し、初期分解速度、初期分解量及び総分解量が促進する。
【0068】
以上で説明したように、本実施形態のメタン発酵槽100は、嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させる発酵部110と、直径1μm以下の気泡であるウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を発酵部110に供給するウルトラファインバブル水供給部120と、を備える。
【0069】
これにより、ウルトラファインバブル水がメタン発酵槽100に添加されるので、メタン発酵槽100の内部の物質の移動性が向上する。ウルトラファインバブルが有機性廃棄物に付着することによって、メタン発酵槽100の発酵部110に存在する微生物群は、微生物の二次代謝が活性化する。このようなメタン発酵槽100によれば、微生物群及び加水分解酵素の活性化により、有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解を促進させることができる。有機性廃棄物の分解の促進により、バイオガスの生成速度及び生成量を向上させることができる。また、発酵部110に存在する微生物群が早期に安定化する。
【0070】
メタン発酵槽100は、有機性廃棄物が、難分解性有機物を含む。
【0071】
このようなメタン発酵槽100によれば、微生物群及び加水分解酵素の活性化により、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解を促進させることができる。難分解性有機物を含む有機性廃棄物の分解の促進により、バイオガスの生成速度及び生成量を向上させることができる。また、発酵部110に存在する微生物群が早期に安定化する。
【0072】
メタン発酵槽100は、ウルトラファインバブルが、空気、二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつを含むことが好ましい。
【0073】
このようなメタン発酵槽100によれば、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができる。これにより、バイオガスの生成を促進することができる。
【0074】
メタン発酵槽100は、ウルトラファインバブルの濃度が、6×107particles/ml以上5×109particles/ml以下であることが好ましい。
【0075】
このようなメタン発酵槽100によれば、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができる。これにより、バイオガスの生成を促進することができる。
【0076】
また、本実施形態のメタン発酵システム1は、メタン発酵槽100と、発酵部110に供給するウルトラファインバブル水を作製するウルトラファインバブル水作製装置200と、を有する。
【0077】
このようなメタン発酵システム1によれば、ウルトラファインバブル水がメタン発酵槽100に添加されるので、メタン発酵槽100の内部の物質の移動性が向上する。ウルトラファインバブルが有機性廃棄物に付着することによって、メタン発酵槽100の発酵部110に存在する微生物群は、微生物の一次代謝及び二次代謝が活性化する。メタン発酵システム1は、微生物群及び加水分解酵素の活性化により、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解を促進させることができる。メタン発酵システム1は、有機性廃棄物の分解の促進により、バイオガスの生成速度及び生成量を向上させることができる。また、発酵部110に存在する微生物群が早期及び長期的に安定化する。
【0078】
メタン発酵システム1は、ウルトラファインバブル水供給部120によるウルトラファインバブル水の供給量を調節する制御装置150を有することが好ましい。
【0079】
このようなメタン発酵システム1によれば、メタン発酵槽100の発酵部110のウルトラファインバブルの濃度を調整することができる。これにより、メタン発酵システム1は、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができ、バイオガスの生成を促進することができる。
【0080】
メタン発酵システム1は、制御装置150が、発酵部110の培養液のウルトラファインバブルの濃度を推定する推定部151と、推定部151が推定した濃度に基づいてウルトラファインバブル水の供給量を調節する制御部152と、を備えることが好ましい。
【0081】
このようなメタン発酵システム1によれば、メタン発酵槽100の発酵部110のウルトラファインバブルの濃度を好適に調整することができる。これにより、メタン発酵システム1は、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができ、バイオガスの生成を促進することができる。
【0082】
メタン発酵システム1は、制御部152が、発酵部110の培養液のウルトラファインバブルの濃度が2×107particles/ml以上2×108particles/ml以下となるようにウルトラファインバブル水の供給量を調節することが好ましい。
【0083】
このようなメタン発酵システム1によれば、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができる。これにより、バイオガスの生成を促進することができる。
【0084】
メタン発酵システム1は、メタン発酵槽100から発生したバイオガスから硫黄酸化物を除去して精製後バイオガスとする脱硫装置50を備えることが好ましい。
【0085】
このようなメタン発酵システム1によれば、大気汚染及び異臭等の原因となる硫黄酸化物を除去することによって、バイオガスを好適にエネルギーとして使用することができる。
【0086】
メタン発酵システム1は、ウルトラファインバブル水が供給され、かつ、メタン発酵槽100に投入される前の有機性廃棄物をスラリー化するスラリータンク20を備えることが好ましい。
【0087】
このようなメタン発酵システム1によれば、有機性廃棄物をメタン発酵に適した濃度に希釈することができる。これにより、メタン発酵槽100の発酵部110におけるメタン発酵を円滑に行うことが可能である。
【0088】
メタン発酵システム1は、メタン発酵槽100から発生した消化液を固液分離し、かつ、消化液の固液分離によって得られた液体をスラリータンク20に供給する消化液処理装置40を備えることが好ましい。
【0089】
このようなメタン発酵システム1によれば、スラリータンク20において有機性廃棄物を希釈する希釈水に、消化液の固液分離により得られた液体を利用できる。これにより、メタン発酵システム1で使用される水の量を節約できる。
【0090】
また、本実施形態のメタン発酵処理方法は、嫌気性微生物を含む培養液により有機性廃棄物をメタン発酵させるメタン発酵処理方法であって、メタン発酵中に直径1μm以下の気泡であるウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を有機性廃棄物に供給する。
【0091】
このようなメタン発酵処理方法によれば、ウルトラファインバブル水が有機性廃棄物に添加されるので、培養液中の物質の移動性が向上する。ウルトラファインバブルが有機性廃棄物及び加水分解酵素に付着することによって、培養液中の微生物群は、微生物の一次代謝及び二次代謝が活性化する。微生物群の活性化により、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解を促進させることができる。さらに、ウルトラファインバブル水が加水分解酵素に付着することにより加水分解酵素が活性化され、難分解性有機物を含む有機性廃棄物の初期発酵速度が向上し、分解を促進させることができる。有機性廃棄物の分解の促進により、バイオガスの生成速度及び生成量を向上させることができる。また、培養液中の微生物群が早期及び長期的に安定化する。
【0092】
(第1変形例)
図7は、第1変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図7に示すメタン発酵システム2は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、第1ウルトラファインバブル水作製装置210と、第2ウルトラファインバブル水作製装置220と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。メタン発酵システム2は、メタン発酵システム1の構成に対して、ウルトラファインバブル水作製装置200の代わりに、第1ウルトラファインバブル水作製装置210と、第2ウルトラファインバブル水作製装置220と、を有する点で相違する。
【0093】
第1ウルトラファインバブル水作製装置210は、二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつのウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を作製する。ここでは、ウルトラファインバブルとして二酸化炭素を含む例を用いて説明する。このため、CO2-UFB水と示す。第1ウルトラファインバブル水作製装置210は、第1ウルトラファインバブル発生装置211と、第1ウルトラファインバブル水タンク212と、気体源G1と、水源W1と、を有する。気体源G1は、ウルトラファインバブルを形成する二酸化炭素を第1ウルトラファインバブル発生装置211に供給する。水源W1は、ウルトラファインバブル水を形成する液体を第1ウルトラファインバブル水タンク212に供給する。この液体は、例えば、水道水、井水、雨水、河川水、消化液、排水処理水等である。また、液体は、カリウム、カルシウム及びマグネシウムの少なくともひとつを含んでよい。液体がカリウム又はカルシウムを含むことで、発酵部110に含まれるナトリウム濃度を低減することができる。
【0094】
第2ウルトラファインバブル水作製装置220は、空気のウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水(Air-UFB水)を作製する。第2ウルトラファインバブル水作製装置220は、第2ウルトラファインバブル発生装置221と、第2ウルトラファインバブル水タンク222と、気体源G2と、水源W2と、を有する。気体源G2は、ウルトラファインバブルを形成する空気を第2ウルトラファインバブル発生装置221に供給する。水源W2は、ウルトラファインバブル水を形成する液体を第2ウルトラファインバブル水タンク222に供給する。この液体は、例えば、水道水、井水、雨水、河川水、消化液、排水処理水等である。また、液体は、カリウム、カルシウム及びマグネシウムの少なくともひとつを含んでよい。液体がカリウム又はカルシウムを含むことで、発酵部110に含まれるナトリウム濃度を低減することができる。なお、水源W2は、水源W1と異なる金属を含んでもよい。例えば、水源W1はカリウムを含み、水源W2はマグネシウムを含んでもよい。
【0095】
メタン発酵槽100のウルトラファインバブル水供給部120は、第1供給部130と、第2供給部140と、を有する。第1供給部130は、第1ウルトラファインバブル水作製装置210から、メタン発酵槽100の発酵部110に、二酸化炭素のウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を供給する。第1供給部130は、メタン発酵槽100と第1ウルトラファインバブル水作製装置210とを接続する配管131と、配管131を開閉するバルブ132とを有する。第2供給部140は、第2ウルトラファインバブル水作製装置220から、メタン発酵槽100の発酵部110に、空気(Air)のウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を供給する。第2供給部140は、メタン発酵槽100と第2ウルトラファインバブル水作製装置220とを接続する配管141と、配管141を開閉するバルブ142とを有する。
【0096】
メタン発酵システム2のメタン発酵槽100は、
図1に示すメタン発酵システム1のメタン発酵槽100と同様に、第1検出装置160及び第2検出装置170を有する。制御装置150は、第1検出装置160に、メタン発酵槽100の硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを測定させ、測定結果を取得する。制御装置150は、第2検出装置170に、pHを測定させ、測定結果を取得する。制御装置150の制御部152は、第1検出装置160が検出する硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつ、及び、第2検出装置170が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、第1供給部130によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節する。制御部152は、バルブ132の開閉を操作して、第1供給部130によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節できる。制御装置150の制御部152は、第1検出装置160が検出する硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつ、及び、第2検出装置170が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、第2供給部140によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節する。制御部152は、バルブ142の開閉を操作して、第2供給部140によるメタン発酵槽100へのウルトラファインバブル水の供給量を調節できる。このように、制御装置150は、第1検出装置160が検出する硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつ、及び、第2検出装置170が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、第1供給部130及び第2供給部140からのウルトラファインバブル水の供給量を調節する。
【0097】
以上で説明したように、第1変形例のメタン発酵システム2は、メタン発酵槽100の硫化水素濃度、二酸化炭素濃度及びメタン濃度の少なくともひとつを検出する第1検出装置160、及び、pHを検出する第2検出装置170の少なくとも一つを備え、ウルトラファインバブル水供給部120が、二酸化炭素、水素、酸素及び窒素の少なくともひとつのウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を供給する第1供給部130と、空気のウルトラファインバブルを含むウルトラファインバブル水を供給する第2供給部140と、を有し、制御装置150が、第1検出装置160が検出する硫化水素濃度、メタン濃度及び二酸化炭素濃度の少なくともひとつ、及び、第2検出装置170が検出するpHの少なくともひとつに基づいて、第1供給部130によるウルトラファインバブル水の供給量と、第2供給部140によるウルトラファインバブル水の供給量と、を調節する。
【0098】
このようなメタン発酵システム2によれば、ウルトラファインバブルを形成する気体の比率及びメタン発酵槽100のウルトラファインバブルの濃度を調整することができる。これにより、メタン発酵システム1は、好適に有機性廃棄物の分解を促進することができ、バイオガスの生成を促進することができる。
【0099】
(第2変形例)
図8は、第2変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図8に示すメタン発酵システム3は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、触媒貯蔵装置230と、触媒供給部180と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。メタン発酵システム3は、メタン発酵システム1の構成に対して、触媒貯蔵装置230を有する点で相違する。
【0100】
触媒貯蔵装置230は、メタン発酵の触媒となる短鎖脂肪酸を貯蔵する。触媒貯蔵装置230は、触媒タンク232と、触媒源Cと、を有する。触媒源Cは、メタン発酵の触媒となる短鎖脂肪酸を触媒タンク232に供給する。この短鎖脂肪酸は、例えば、酢酸、酪酸、プロピオン酸等である。触媒供給部180は、メタン発酵槽100と触媒貯蔵装置230とを接続する配管181と、配管181を開閉するバルブ182とを有する。
【0101】
制御装置150は、触媒供給部180によるメタン発酵槽100への短鎖脂肪酸の供給量を調節する。制御部152は、バルブ182の開閉を操作して、触媒供給部180によるメタン発酵槽100への短鎖脂肪酸の供給量を調節できる。制御装置150は、ウルトラファインバブル水と共に、短鎖脂肪酸を、メタン発酵槽100の発酵部110に添加してもよい。制御装置150は、短鎖脂肪酸の供給量を、メタン発酵が行われる時間によって制御してもよい。制御装置150は、短鎖脂肪酸の供給量を、メタン発酵槽100に設けられた第1検出装置160及び第2検出装置170で検出された硫化水素濃度、メタン濃度、二酸化炭素濃度及びpHに基づいて制御してもよい。短鎖脂肪酸は、発酵部110における微生物を活性化させることができる。このため、有機性廃棄物に難分解性有機物を含む場合、難分解性有機物の分解反応を促進させることが可能であり好ましい。
【0102】
(第3変形例)
図9は、第3変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図9に示すメタン発酵システム4は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、前発酵槽30と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。メタン発酵システム4は、メタン発酵システム1の構成に対して、スラリータンク20とメタン発酵槽100との間に前発酵槽30を有する点で相違する。前発酵槽30は、配管21によりスラリータンク20に接続する。前発酵槽30は、配管31によりメタン発酵槽100に接続する。
【0103】
前発酵槽30は、メタン発酵を円滑に行うための前処理設備である。前発酵槽30は、メタン発酵の工程のうち、
図2に示す加水分解工程S10をメタン発酵槽100の代わりに行う。前発酵槽30は、配管21を通じてスラリータンク20から供給された有機性廃棄物を加水分解する。前発酵槽30では、高分子有機物が低分子有機物に分解される。アミノ酸、糖類(単糖)及び長鎖脂肪酸等の分解された低分子有機物は、配管31を通じてメタン発酵槽100に供給される。スラリータンク20から前発酵槽30への有機性廃棄物の供給は、所定量ずつであることが好ましい。前発酵槽30からメタン発酵槽100への有機性廃棄物の供給は、所定量ずつであることが好ましい。
【0104】
メタン発酵槽100では、
図2に示す酸生成工程S12と、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16と、が行われる。メタン発酵槽100の発酵部110は、前発酵槽30から供給された低分子有機物を、酢酸、水素及び二酸化炭素に分解する。発酵部110は、酢酸を、メタン及び二酸化炭素に分解し、水素及び二酸化炭素をメタン及び水(H
2O)に生成する。
【0105】
発酵部110にてメタン発酵によって発生したバイオガスは、配管51を通じて脱硫装置50に供給される。脱硫装置50は、バイオガスから硫黄酸化物を除去して精製後バイオガスとする。精製後バイオガスは、ガスホルダ60で一時貯留された後、発電設備70に送出される。
【0106】
発酵部110にてメタン発酵を行った後の発酵残渣である消化液は、配管41を通じて消化液処理装置40に供給される。消化液処理装置40は、消化液を固体と液体とに分離する固液分離を行う。分離された液体は、そのまま、又は排水処理を行った後、スラリータンク20及び前発酵槽30に戻される。なお、スラリータンク20及び前発酵槽30に戻す液体に、本実施形態のウルトラファインバブル水を添加してもよい。
【0107】
なお、上記では、酸生成工程S12がメタン発酵槽100の内部のみで行われるものとして説明したが、有機性廃棄物に、酸生成工程S12の触媒となりうる嫌気性微生物群又は酵素が予め含まれている場合、酸生成工程S12の一部は、前発酵槽30の内部でも行われる。
【0108】
以上で説明したように、第3変形例のメタン発酵システム4は、ウルトラファインバブル水が供給され、かつ、メタン発酵槽100に投入される前の有機性廃棄物を加水分解する前発酵槽30を備える。
【0109】
このようなメタン発酵システム4によれば、前発酵槽30の内部を加水分解工程S10に最適な環境に維持すると共に、メタン発酵槽100の内部を酸生成工程S12及びメタンガス形成工程(第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16)に最適な環境に維持することができる。ここで、加水分解工程S10は好気性反応であり、酸生成工程S12、第1メタンガス形成工程S14及び第2メタンガス形成工程S16は嫌気性反応である。すなわち、メタン発酵システム4は、例えば、前発酵槽30の内部を酸素雰囲気とし、メタン発酵槽100の内部を二酸化炭素雰囲気、水素雰囲気、酸素雰囲気又は窒素雰囲気とすることができる。それぞれの工程における最適な環境が異なるため、前発酵槽30を設けることで、それぞれの工程における最適な環境を維持することが可能であり、好適に有機性廃棄物の分解を促進し、バイオガスの生成を促進することができる。
【0110】
メタン発酵システム4は、メタン発酵槽100から発生した消化液を固液分離し、かつ、消化液の固液分離によって得られた液体を前発酵槽30に供給する消化液処理装置40を備えることが好ましい。
【0111】
このようなメタン発酵システム4によれば、前発酵槽30において有機性廃棄物を加水分解させる水に、消化液の固液分離によって得られた液体を利用できる。これにより、メタン発酵システム1で使用される水の量を節約できる。
【0112】
(第4変形例)
図10は、第4変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図10に示すメタン発酵システム5は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。メタン発酵システム5は、メタン発酵システム1の構成に対して、ウルトラファインバブル水作製装置200の気体源Gが、ウルトラファインバブルを形成する気体を発電設備70から導入する点で相違する。気体源Gは、発電設備70において精製後バイオガスの燃焼により排出される二酸化炭素を導入する。
【0113】
以上で説明したように、第4変形例のメタン発酵システム5は、ウルトラファインバブルが、精製後バイオガスの燃焼により排出される二酸化炭素を含む。
【0114】
このようなメタン発酵システム5によれば、精製後バイオガスの燃焼により排出される二酸化炭素が大気に排出される前に回収して再利用することができる。これにより、地球温暖化対策に寄与することができる。
【0115】
(第5変形例)
図11は、第5変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図11に示すメタン発酵システム6は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、を備える。メタン発酵システム6は、メタン発酵システム1の構成に対して、ウルトラファインバブル水作製装置200の水源Wが、ウルトラファインバブル水を形成する液体を消化液処理装置40から導入する点で相違する。水源Wは、消化液処理装置40において消化液から固液分離した液体、又は排水処理後の液体を導入する。
【0116】
以上で説明したように、第5変形例のメタン発酵システム6は、ウルトラファインバブル水が、消化液の固液分離によって得られた液体を含む。
【0117】
このようなメタン発酵システム6によれば、メタン発酵槽100の発酵部110にてメタン発酵を行った後の発酵残渣である消化液を再利用することができる。
【0118】
(第6変形例)
図12は、第6変形例のメタン発酵システムを示す模式図である。
図12に示すメタン発酵システム7は、分別粉砕機10と、スラリータンク20と、メタン発酵槽100と、制御装置150と、ウルトラファインバブル水作製装置200と、消化液処理装置40と、脱硫装置50と、ガスホルダ60と、加熱装置80を備える。メタン発酵システム7は、メタン発酵システム1の構成に対して、発電設備70の発電で生じる廃熱で加熱された温水が循環する加熱装置80が、メタン発酵槽100の外周に設けられている点で相違する。
【0119】
このようなメタン発酵システム7によれば、メタン発酵槽100の発酵部110を適宜加熱することが可能である。加熱装置80を用いて、発酵部110の温度を、発酵反応を促進可能な温度とすることで、発酵反応を促進させることができる。発酵反応を促進可能な温度は、例えば30℃以上70℃以下、好ましくは40℃以上60℃以下である。また、システム全体のエネルギー量を増加させることなく、発酵部110の発酵反応を促進させることができる。
【0120】
なお、実施形態において説明した各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態内の他の構成と組み合わせてもよい。また、これらの各構成は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で各実施形態とは異なる他の実施形態内の構成と組み合わせてもよい。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の改変を行ってもよい。
【符号の説明】
【0121】
1、2、3、4、5、6、7 メタン発酵システム
10 分別粉砕機
11 配管
20 スラリータンク
21 配管
30 前発酵槽
31 配管
40 消化液処理装置
41 配管
50 脱硫装置
51 配管
60 ガスホルダ
61 配管
70 発電設備
80 加熱装置
100 メタン発酵槽
110 発酵部
120 ウルトラファインバブル水供給部
121 配管
122 バルブ
130 第1供給部
131 配管
132 バルブ
140 第2供給部
141 配管
142 バルブ
150 制御装置
151 推定部
152 制御部
160 第1検出装置
170 第2検出装置
180 触媒供給部
181 配管
182 バルブ
200 ウルトラファインバブル水作製装置
201 ウルトラファインバブル発生装置
202 ウルトラファインバブル水タンク
210 第1ウルトラファインバブル水作製装置
211 第1ウルトラファインバブル発生装置
212 第1ウルトラファインバブル水タンク
220 第2ウルトラファインバブル水作製装置
221 第2ウルトラファインバブル発生装置
222 第2ウルトラファインバブル水タンク
230 触媒貯蔵装置
232 触媒タンク
G、G1、G2 気体源
W、W1、W2 水源
C 触媒源
S10 加水分解工程
S12 酸生成工程
S14 第1メタンガス形成工程
S16 第2メタンガス形成工程
S20、S22、S24、S26、S28、S30 ステップ