(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】超音波画像構築方法、超音波画像構築装置、超音波画像構築プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 29/06 20060101AFI20230120BHJP
A61B 8/14 20060101ALI20230120BHJP
G01N 29/09 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G01N29/06
A61B8/14
G01N29/09
(21)【出願番号】P 2019095229
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000243364
【氏名又は名称】本多電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114605
【氏名又は名称】渥美 久彦
(72)【発明者】
【氏名】穂積 直裕
(72)【発明者】
【氏名】小林 和人
【審査官】清水 靖記
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/207276(WO,A1)
【文献】特開昭60-083645(JP,A)
【文献】特開2000-005180(JP,A)
【文献】特開2011-172611(JP,A)
【文献】特開平02-215449(JP,A)
【文献】国際公開第2008/069250(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00 - G01N 29/52
A61B 8/00 - A61B 8/15
G01B 17/00 - G01B 17/08
G01H 15/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、
前記推定ステップにて得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップと
を有することを特徴とする超音波画像構築方法。
【請求項2】
基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、
前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記推定ステップにて得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップと
を有することを特徴とする超音波画像構築方法。
【請求項3】
前記補正ステップでは、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大とし、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする請求項1または2に記載の超音波画像構築方法。
【請求項4】
前記推定ステップでは、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像構築方法。
【請求項5】
前記測定対象物は、培養細胞であり、
前記第1参照物質及び前記第2参照物質は、前記培養細胞を培養するための培養液であり、
前記基体は、前記培養液を収容する培養容器の一部である
ことを特徴とする請求項
1に記載の超音波画像構築方法。
【請求項6】
前記測定対象物は、組織表面に対して略平行な方向に延びる血管を含む生体の軟組織としての皮膚であり、
前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値は、前記血管中に存在する血液の固有音響インピーダンス値である
ことを特徴とする請求項
2に記載の超音波画像構築方法。
【請求項7】
前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均は、前記測定対象物が皮膚である場合の当該皮膚内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均であり、
前記特定深度は、前記音響物性像の画像データが構築される領域よりも深い位置に設定される
ことを特徴とする請求項
2に記載の超音波画像構築方法。
【請求項8】
基体と、
前記基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する超音波振動子と、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する第1演算手段と、
前記第1演算手段により得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する第2演算手段と、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築手段と
を備えたことを特徴とする超音波画像構築装置。
【請求項9】
基体と、
前記基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する超音波振動子と、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する第1演算手段と、
前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記第1演算手段により得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する第2演算手段と、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築手段と
を備えたことを特徴とする超音波画像構築装置。
【請求項10】
前記第2演算手段は、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大し、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする請求項8または9に記載の超音波画像構築装置。
【請求項11】
前記第1演算手段は、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の超音波画像構築装置。
【請求項12】
プロセッサに、
基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波振動子に超音波を送信させ、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を前記超音波振動子に受信させる送受信ステップと、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、
前記推定ステップにて得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップと
を実行させるための超音波画像構築プログラム。
【請求項13】
プロセッサに、
基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波振動子に超音波を送信させ、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を前記超音波振動子に受信させる送受信ステップと、
前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、
前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記推定ステップにて得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、
前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップと
を実行させるための超音波画像構築プログラム。
【請求項14】
前記補正ステップでは、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大とし、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする請求項
12または13に記載の超音波画像構築プログラム。
【請求項15】
前記推定ステップでは、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする請求項
12乃至14のいずれか1項に記載の超音波画像構築プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を利用して得た情報に基づき、皮膚等に代表される生体の軟組織や培養細胞などの画像を構築する方法、装置及びそのためのプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
超音波Bモードエコー像は、医療分野において広く一般的に使われている方法であり、従来このような像を得るための装置が多数提案されている(特許文献1を参照)。簡単に説明すると、超音波Bモードエコー像とは、物体に入射した超音波が反射して返って来る時の反射信号列を画像化したものである。超音波が散乱せずに真っ直ぐ進んだと仮定する場合、電気信号と同じく、進んだ先の抵抗値(固有音響インピーダンス)の違いによって反射が生じることになる。それゆえ、固有音響インピーダンスの分布が分かれば、どのような反射信号列が返って来るかを推測することが可能となる。即ち、音響物性分布が既知であれば、どのようなBモード画像が観察されるかを推測することができる。また、その逆もしかりである。
【0003】
しかしながら、生体組織などの不均一で厚み(深さ)があるターゲットについては、入射して返って来る反射波形は、ターゲットに入射した超音波が散乱、吸収を経て様々な進み方をした結果と、多重反射をした結果とを反映したものとなる。このため、反射波形を固有音響インピーダンス等の音響物性に変換することは困難であると考えられており、この方法は従来検討されてこなかった。さらに、超音波Bモードエコー像は、生体組織内部での超音波の多重反射に起因したスペックルノイズによって乱れた画像となりやすいため、内部構造を高い精度で表示するのには不向きであるという問題もあった。ゆえに、従来装置では音響フィルタを入れるなどの対策が必要となり、構成が複雑化する等の問題があった。
【0004】
また、超音波Bモードエコー像を表示する通常の超音波診断装置では、皮膚等の生体組織内部の層情報は一応得られるものの、得られる画像は固有音響インピーダンスの異なる層同士の界面からの反射像である。よって、このような反射像では生体組織の内部構造、具体的には生体組織内部の固有音響インピーダンスの違いを把握するのには不十分であった。つまり、従来技術で得られる反射像は、層の界面の位置がどこにあるか等については感覚的に理解しやすいものである反面、界面と界面とで囲まれた中間の領域の固有音響インピーダンスがどのようになっているかが感覚的に理解しにくいものであった。ゆえに、超音波を利用して得た情報に基づいて、層構造を有する非常に薄い測定対象物の超音波断層像を、感覚的に層構造が理解しやすい態様にて構築することが望まれていた。
【0005】
このような事情に鑑みて本願発明者らは、改良された超音波画像構築装置をすでに提案している(例えば、特許文献2を参照)。この装置は、既知の音響物性を有する基体、基材を介して超音波の送受信を行う超音波振動子、演算手段、画像構築手段等を含んで構成されている。この装置では、既知の音響物性を有する基体に、測定対象物及び既知の音響物性を有する参照物質を接して配置する。そしてこの状態で超音波を送信し、基体を介して測定対象物及び参照物質に超音波を入射させ、測定対象物及び参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する。次いで、参照物質に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び測定対象物に入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報を得る。この規格化されたインパルス応答情報に基づき、奥行方向の音響物性分布(具体的には固有音響インピーダンス分布)を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行う。そして、得られた奥行方向の音響物性分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築し、所望とする超音波断層像を得るようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2006-271765号公報
【文献】特許第6361001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記装置では、奥行方向に沿って深くなる方向、つまり測定対象物の前面側から背面側に向かう方向に固有音響インピーダンス分布を順次推定していく手法を採用している。このため、深度が大きくなるほど固有音響インピーダンスの推定値の誤差が蓄積、拡大するという欠点があり、より精度の高い画像を構築するうえでのマイナス要因となっていた。また、このような場合、超音波断層像における奥行方向に多くの筋が入ってしまうため、微細な内部の層構造が感覚的に理解しやすいとは言い難く、いまだ改良の余地があった。
【0008】
なお、培養細胞なども非常に薄い測定対象物の一種であって、その内部には核や細胞骨格などの微細な構造を有しているが、このようなものを測定対象物とした場合において、従来その微細構造を感覚的に理解しやすい態様にて超音波断層像化できる方法は提案されていなかった。
【0009】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その主たる目的は、微細な内部構造を有する非常に薄い測定対象物の超音波断層像を、感覚的にその微細な内部構造が理解しやすい態様にて比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる超音波画像構築方法、超音波画像構築装置、超音波画像構築プログラムを提供することにある。
【0010】
また、本発明のさらなる目的は、超音波を利用して得た情報に基づいて、培養細胞の内部構造や、皮膚等に代表される生体の軟組織の内部構造を簡便にかつ正確に観察、評価等できる画像を構築することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本願発明者らは測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を適宜補正することを思い付き、鋭意検討を行った。その結果、1)測定対象物と同じく基体に接して存在する第1参照物質とは別の位置(具体的には、測定対象物において基体と接していない反対の側(奥行方向の奥側))の位置)に存在する第2参照物質の固有音響インピーダンス値を補正演算にて利用したり、2)そのような位置に第2参照物質が存在していなくても、所定の条件を満たす場合には測定対象物内の所定部位の固有音響インピーダンス値(あるいはその推定値の平均)を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義して補正演算にて利用したりすれば、深度が大きくなるほど蓄積、拡大しやすい固有音響インピーダンスの推定値の誤差を減じることができ、奥行方向の固有音響インピーダンス分布のより正確な推定が可能となることを新たに知見した。そして、本願発明者らはこれらの知見に基づいてさらに鋭意研究を進めることにより、下記に列挙する解決手段[1]~[15]を想到するに至ったのである。
【0012】
[1]基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、前記推定ステップにて得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップとを有することを特徴とする超音波画像構築方法。
【0013】
[2]基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する送受信ステップと、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記推定ステップにて得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップとを有することを特徴とする超音波画像構築方法。
【0014】
[3]前記補正ステップでは、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大とし、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする手段1または2に記載の超音波画像構築方法。
【0015】
[4]前記推定ステップでは、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする手段1乃至3のいずれか1項に記載の超音波画像構築方法。
【0016】
[5]前記測定対象物は、培養細胞であり、前記第1参照物質及び前記第2参照物質は、前記培養細胞を培養するための培養液であり、前記基体は、前記培養液を収容する培養容器の一部であることを特徴とする請求項1に記載の超音波画像構築方法。
【0017】
[6]前記測定対象物は、組織表面に対して略平行な方向に延びる血管を含む生体の軟組織としての皮膚であり、前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値は、前記血管中に存在する血液の固有音響インピーダンス値であることを特徴とする請求項2に記載の超音波画像構築方法。
【0018】
[7]前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均は、前記測定対象物が皮膚である場合の当該皮膚内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均であり、前記特定深度は、前記音響物性像の画像データが構築される領域よりも深い位置に設定されることを特徴とする請求項2に記載の超音波画像構築方法。
【0019】
[8]基体と、前記基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する超音波振動子と、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する第1演算手段と、前記第1演算手段により得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する第2演算手段と、前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築手段とを備えたことを特徴とする超音波画像構築装置。
【0020】
[9]基体と、前記基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波を送信し、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を受信する超音波振動子と、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する第1演算手段と、前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記第1演算手段により得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する第2演算手段と、 前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築手段とを備えたことを特徴とする超音波画像構築装置。
【0021】
[10]前記第2演算手段は、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大し、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする手段8または9に記載の超音波画像構築装置。
【0022】
[11]前記第1演算手段は、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする手段8乃至10のいずれか1項に記載の超音波画像構築装置。
【0023】
[12]プロセッサに、基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在し、かつ前記測定対象物における前記基体とは反対の側に第2参照物質が接して存在した状態で超音波振動子に超音波を送信させ、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物、前記第1参照物質及び前記第2参照物質からの超音波波形のインパルス応答を前記超音波振動子に受信させる送受信ステップと、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内及び前記第2参照物質内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、前記推定ステップにて得た前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの推定値を前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、 前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップとを実行させるための超音波画像構築プログラム。
【0024】
[13]プロセッサに、基体に測定対象物及び第1参照物質が接して存在した状態で超音波振動子に超音波を送信させ、前記基体を介して超音波を入射させたときの前記測定対象物及び前記第1参照物質からの超音波波形のインパルス応答を前記超音波振動子に受信させる送受信ステップと、前記超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報に基づき、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する推定ステップと、前記測定対象物内における特定深度にて既知の固有音響インピーダンス値を有する物質が層方向にわたり均一に存在している場合の当該固有音響インピーダンス値、または、前記測定対象物が生体の軟組織である場合の前記測定対象物内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を仮想参照部位の固有音響インピーダンス値と定義し、前記推定ステップにて得た前記測定対象物内における前記特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する補正ステップと、 前記奥行方向の固有音響インピーダンス分布に基づいて、音響物性像の画像データを構築する画像構築ステップとを実行させるための超音波画像構築プログラム。
【0025】
[14]前記補正ステップでは、前記第2参照物質の固有音響インピーダンスの実際値または前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換えるときの値を最大とし、前記測定対象物の前面側に向かうほど小さくなる補正値を加算または減算することにより、前記測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正することを特徴とする請求項12または13に記載の超音波画像構築プログラム。
【0026】
[15]前記推定ステップでは、前記測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の前記微小伝送路の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する前記微小伝送路の固有音響インピーダンスを推定する演算を行うことを特徴とする請求項12乃至14のいずれか1項に記載の超音波画像構築プログラム。
【発明の効果】
【0027】
上記手段1~15に記載の発明によると、微細な内部構造を有する非常に薄い測定対象物の超音波断層像を、感覚的にその微細な内部構造が理解しやすい態様にて比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる。また、超音波を利用して得た情報に基づいて、培養細胞の内部構造や、皮膚等に代表される生体の軟組織の内部構造を簡便にかつ正確に観察、評価等できる画像を構築することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】本発明を具体化した第1の実施形態の超音波画像構築装置を示す概略構成図。
【
図2】第1の実施形態の超音波画像構築装置の電気的構成を示すブロック図。
【
図3】X-Yステージの移動に伴う超音波の走査範囲の一例を示す概略図。
【
図4】(a)は実際に測定を行ったときにおける測定対象物からの反射波形の取得についての説明図、(b)は測定対象物を微小伝送路に見立てたときにおける反射波形の取得についての説明図。
【
図5】(a)は実際に測定を行ったときにおける参照物質からの反射波形の取得についての説明図、(b)は参照物質を微小伝送路に見立てたときにおける反射波形の取得についての説明図。
【
図6】各微小伝送路の特性インピーダンスを推定していく様子を概念的に示した図。
【
図9】第1実施形態における補正ステップを説明するためのグラフ。
【
図10】第1実施形態において固有音響インピーダンス像の構築についての演算処理を説明するためのフローチャート。
【
図11】本発明を具体化した第2の実施形態の超音波画像構築装置における補正ステップを説明するためのものであって、(a)は補正ステップを実施していないときの固有音響インピーダンス像、(b)は補正ステップを実施したときの固有音響インピーダンス像。
【
図12】本発明を具体化した第3の実施形態の超音波画像構築装置を示す概略構成図。
【
図13】測定対象物である培養細胞(グリア細胞)を概略的に示した図。
【
図14】第3の実施形態の超音波画像構築装置を用いて観察された培養細胞(グリア細胞)の固有音響インピーダンス像。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[第1の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第1の実施形態を
図1~
図10に基づき詳細に説明する。
【0030】
図1は、本実施形態の超音波画像構築装置1を示す概略構成図である。
図1に示されるように、本実施形態の超音波画像構築装置1は、超音波を用いて皮膚8を観察、診断等するための装置であって、パルス励起型超音波顕微鏡2と、パーソナルコンピュータ(PC)3とを備えている。
【0031】
パルス励起型超音波顕微鏡2は、ステージ4を有する顕微鏡本体5と、ステージ4の下方に設置された超音波プローブ6とを備える。パルス励起型超音波顕微鏡2の超音波プローブ6は、PC3と電気的に接続されている。
【0032】
本実施形態のステージ4は、ユーザの手動操作により、水平方向(即ちX方向及びY方向)に移動できるように構成されている。このステージ4には、測定対象物を接触させて配置するための樹脂プレート9が固定されている。ここでの測定対象物は、組織表面に対して略平行な方向に延びる血管を含む生体の軟組織(具体的には、肌組織;皮膚8)である。本実施形態では、ヒトの皮膚8を樹脂プレート9に直接押し付けることにより測定等を行っている。また、既知の音響物性を有する基体としての樹脂プレート9は、超音波を透過させることができる平板状部材であって、測定対象物である皮膚8よりも硬い材料からなる。このような形状及び硬さの部材を基体として用いた場合、測定対象物である皮膚8を確実に密着配置することが可能となり、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を正確に推定可能となる結果、ひいては画像構築の精度が向上する。なお、本実施形態では厚さ1.4mmのポリスチレン板が用いられている。勿論、ポリスチレン以外の樹脂からなる板材などを用いることも許容される。
【0033】
この樹脂プレート9において皮膚8が接触配置される側である上面には、第1参照物質としてのリファレンス部材10があらかじめ設置されている。リファレンス部材10は、樹脂プレート9とは異なる既知の音響物性を有している。本実施形態では例えばアクリル樹脂(アクリル接着剤)を付着させることによりリファレンス部材10としているが、勿論これに限定されるわけではない。リファレンス部材10に対して密着させることが可能なものであれば、樹脂材以外のもの(例えばガラス材、金属材、セラミック材など)をリファレンス部材10としてもよい。あるいは、このようなリファレンス部材10を設置する代わりに、例えば樹脂プレート9の上面に接するように水等を存在させておき、これを第1参照物質として用いてもよい。なお、樹脂プレート9にリファレンス部材10をあらかじめ設置しておくことにより、装置が置かれる環境の変化等に依存せず、リファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報を正確にかつ安定的に取得することができる。
【0034】
超音波プローブ6は、水などの超音波伝達媒体Wを貯留可能な貯留部11をその先端部に有するプローブ本体12と、プローブ本体12の略中心部に配置される超音波トランスデューサ13(超音波振動子)と、プローブ本体12を前記ステージ4の面方向に沿って二次元的に走査するためのX-Yステージ14とを備える。プローブ本体12の貯留部11は上部が開口しており、その貯留部11の開口側を上向きにした状態で超音波プローブ6がステージ4の下方に設置されている。
【0035】
超音波トランスデューサ13は、例えば酸化亜鉛の薄膜圧電素子16とサファイアロッドの音響レンズ17とによって構成される。この超音波トランスデューサ13は、パルス励起されることで樹脂プレート9の下面側から皮膚8及びリファレンス部材10に対して超音波を照射する。超音波トランスデューサ13が照射する超音波は、貯留部11の超音波伝達媒体Wを介して円錐状に収束されて樹脂プレート9の上面(皮膚8の表面付近)で焦点を結ぶようになっている。なお本実施形態では、超音波トランスデューサ13として、口径1.2mm、焦点距離1.5mm、中心周波数80MHz、帯域幅50~105MHz(-6dB)の仕様のものを用いている。
【0036】
図2は、本実施形態の超音波画像構築装置1の電気的な構成を示すブロック図である。
【0037】
図2に示されるように、超音波プローブ6は、超音波トランスデューサ13、X-Yステージ14、パルス発生回路21、受信回路22、送受波分離回路23、検波回路24、A/D変換回路25、エンコーダ26、コントローラ27を備える。
【0038】
走査手段としてのX-Yステージ14は、超音波の照射点を二次元的に走査させるためのXステージ14X及びYステージ14Yを備えるとともに、それぞれのステージ14X,14Yを駆動するモータ28X,28Yを備えている。これらのモータ28X,28Yとしては、ステッピングモータやリニアモータが使用される。
【0039】
各モータ28X,28Yにはコントローラ27が接続されており、該コントローラ27の駆動信号に応答してモータ28X,28Yが駆動される。これらモータ28X,28Yの駆動により、Xステージ14Xを連続走査(連続送り)するとともに、Yステージ14Yを間欠送りとなるよう制御することで、X-Yステージ14の高速走査が可能となっている。
【0040】
また、本実施形態においては、Xステージ14Xに対応してエンコーダ26が設けられ、エンコーダ26によりXステージ14Xの走査位置が検出される。具体的には、走査範囲を300×300個の測定点(ピクセル)に分割した場合、1回のX方向(水平方向)の走査が300分割される。そして、各測定点の位置がエンコーダ26によって検出されPC3に取り込まれる。PC3はそのエンコーダ26の出力に同期して駆動制御信号を生成し、その駆動制御信号をコントローラ27に供給する。コントローラ27は、この駆動制御信号に基づいてモータ28Xを駆動する。また、コントローラ27は、エンコーダ26の出力信号に基づきX方向の1ラインの走査が終了した時点でモータ28Yを駆動して、Yステージ14YをY方向に1ピクセル分移動させる。
【0041】
さらに、コントローラ27は、駆動制御信号に同期してトリガ信号を生成してパルス発生回路21に供給する。これにより、パルス発生回路21において、そのトリガ信号に同期したタイミングで励起パルスが生成される。その励起パルスが送受波分離回路23を介して超音波トランスデューサ13に供給される結果、超音波トランスデューサ13から超音波が照射される。
【0042】
図3は、X-Yステージ14の移動に伴う超音波の走査範囲R1の一例を示している。この例では、皮膚8を接触配置させる領域を包囲するようにリファレンス部材10が設けられている。そして、ヒトの皮膚8を当該領域に押し付けた状態で、リファレンス部材10がある位置から走査が開始される。そして、矢印で示すように、皮膚8の表面に沿ってX方向及びY方向に二次元的に走査が順次行われる。
【0043】
超音波トランスデューサ13の薄膜圧電素子16は、送受波兼用の超音波振動子であり、皮膚8で反射した超音波(反射波)を電気信号に変換する。そして、その反射波の信号は、送受波分離回路23を介して受信回路22に供給される。受信回路22は、信号増幅回路を含んで構成されていて、反射波の信号を増幅して検波回路24に出力する。
【0044】
検波回路24は、皮膚8からの反射波信号を検出するための回路であり、図示しないゲート回路を含む。本実施形態の検波回路24は、超音波トランスデューサ13で受信した反射波信号のなかから、皮膚8からの反射波信号やリファレンス部材10からの反射波信12月号を抽出する。そして、検波回路24で抽出された反射波信号は、A/D変換回路25に供給されてA/D変換された後、PC3に転送される。
【0045】
PC3は、CPU31(中央処理装置)、I/F回路32、メモリ33、記憶装置34、入力装置35、及び表示装置36を備え、それらはバス37を介して相互に接続されている。
【0046】
CPU31は、メモリ33を利用して制御プログラムを実行し、システム全体を統括的に制御する。制御プログラムとしては、X-Yステージ14による二次元走査を制御するためのプログラム、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列のデータを固有音響インピーダンス像へ変換するためのプログラム、固有音響インピーダンス像を表示するためのプログラムなどを含む。なお、CPU31とは別に例えばDSP(Digital Signal Processor:デジタル信号プロセッサ)を設けて、そこでCPU31が行っている信号処理の一部を行わせてもよい。
【0047】
I/F回路32は、超音波プローブ6との間で信号の授受を行うためのインターフェース(具体的には、USBインターフェース)である。I/F回路32は、超音波プローブ6に制御信号(コントローラ27への駆動制御信号)を出力したり、超音波プローブ6からの転送データ(A/D変換回路25から転送されるデータなど)を入力したりする役割を果たすものである。なお、超音波プローブ6との間で信号の授受を行う場合には、上記のような物理的なインターフェースに限定されることはなく、無線インターフェースを用いてもよい。
【0048】
表示装置36は、例えば、液晶、プラズマ、有機EL(electroluminescence)等のモニタディスプレイである。表示装置36は、カラー表示、モノクロ表示を問わずに使用できるが、カラー表示であることが望ましい。この表示装置36は、皮膚8の表層の固有音響インピーダンス像を表示したり、各種設定の入力画面を表示したりするために用いられる。
【0049】
入力装置35は、タッチパネル、マウス、キーボード、ポインティングデバイス等の入力ユーザインタフェースであって、ユーザからの要求や指示、パラメータの入力に用いられる。
【0050】
記憶装置34は、磁気ディスク装置や光ディスク装置などのハードディスクドライブであり、各種の制御プログラム及び各種のデータを記憶している。メモリ33は、RAM(ランダムアクセスメモリ)やROM(リードオンリーメモリ)を含み、超音波測定のためにあらかじめ取得されたリファレンス部材10の反射波形とその固有音響インピーダンスとを保存する。CPU31は、入力装置35による指示に従い、プログラムやデータを記憶装置34からメモリ33へ転送し、それを逐次実行する。なお、CPU31が実行するプログラムとしては、メモリカード、フレキシブルディスク、光ディスクなどの記憶媒体に記憶されたプログラムや、通信媒体を介してダウンロードしたプログラムでもよく、その実行時には記憶装置34にインストールして利用する。
【0051】
次に、本実施形態の超音波画像構築装置1において、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列から固有音響インピーダンス像を構築する手法について説明する。
【0052】
この超音波画像構築装置1では、第1参照物質であるリファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報、及び測定対象物である皮膚8に入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報を得て、その規格化されたインパルス応答情報に基づいて奥行方向の音響物性分布を多重反射の影響を考慮して推定するようになっている。また、このような推定を行うために、本実施形態では、測定対象物内において、異なる固有音響インピーダンスを持つ無損失の微小伝送路51が奥行方向に連なって伝送路の集合体をなしていると仮定して、手前側の微小伝送路51の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する微小伝送路51の固有音響インピーダンスを推定する処理を順次繰り返すことにより、伝送路の奥行方向の音響物性分布(ここでは固有音響インピーダンス分布)を推定する演算を行うようになっている。このような演算は、メモリ33内に格納された所定のアルゴリズムに基づいて実行される。
【0053】
このアルゴリズムは、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を用いることによって、奥行方向の固有音響インピーダンスの分布の推定を行うアルゴリズムである。このアルゴリズムは、時間領域反射測定法(TDR法:Time Domain Reflectometry法)の原理を参考とするものであって、皮膚組織内部での多重反射を考慮した時間-周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の固有音響インピーダンス像に変換するアルゴリズムである。以下、これについて具体的に説明する。
【0054】
図4(a)は、実際に測定を行ったときにおける測定対象物からの反射波形の取得について説明する図であり、
図4(b)は、測定対象物を微小伝送路51に見立てたときにおける反射波形の取得について説明する図である。
図5(a)は、実際に測定を行ったときにおける第1参照物質からの反射波形の取得について説明する図であり、
図5(b)は、第1参照物質を微小伝送路51に見立てたときにおける反射波形の取得について説明する図である。
【0055】
まず、
図4(a)に示すように、超音波トランスデューサ13を作動させ、基体としての樹脂プレート9を介して、測定対象物にとって十分な焦点深度を持った超音波の収束ビームを送信する。そして、測定対象物である皮膚8に超音波の収束ビームを入射させ、そこからの反射波形を取得する。その時のインパルス応答Γ
0(ω)は、フーリエ変換を用いて、入射波S0と皮膚8からの反射波S
tgt(ω)とから次式1のように表される。
【数1】
【0056】
この場合、固有音響インピーダンスが既知かつ均一であって、測定対象物に比べて十分な厚さを有するリファレンス部材10からの反射波形も取得する必要がある。リファレンス部材10からの反射波S
ref(ω)は、リファレンス部材10の固有音響インピーダンスZ
refと樹脂プレート9の固有音響インピーダンスZ
0とを用いて、次式2のように表される。
【数2】
【0057】
また、測定対象物である皮膚8からのインパルス応答Γ
0(ω)は次式3で表される。ただし、このインパルス応答Γ
0(ω)には皮膚8の組織の奥の複数の界面から発生する反射が含まれているため、インパルス応答Γ
0(ω)は周波数特性を持ったものとなる。なお、ここまでの式により、第1参照物質に入射した超音波波形のインパルス応答情報及び測定対象物に入射した超音波波形のインパルス応答情報から得た規格化されたインパルス応答情報が求められる。
【数3】
【0058】
ここで、
図6は、樹脂プレート9に接する微小伝送路51から順に、各微小伝送路51の特性インピーダンスZ
1、Z
2…Z
nを推定していく様子を概念的に示した図である。この図に示されるように、各微小伝送路51の特性インピーダンスZ
1、Z
2…Z
nを、樹脂プレート9に接している微小伝送路51から奥行方向に向かって順に推定していく。
【0059】
図7は、多重反射の影響について概念的に示した図である。次式4は、インパルス応答Γ
0(ω)を逆フーリエ変換したg
0(t)を表したものであるが、その第1項は多重反射の影響を受けない(
図7参照)。従って、この第1項の値から樹脂プレート9に接する微小伝送路51の特性インピーダンスZ
1を、次式5のように推定することができる。
【数4】
【数5】
【0060】
周波数領域の皮膚8の固有音響インピーダンスZx
0は、Γ
0を用いると次式6のように表される。
【数6】
【0061】
また、Zx
0はさらに奥からのインパルス応答Γ
1を用いて次式7のようにも表される。
【数7】
【0062】
ここで、次式8、9にて表すように、γは伝播定数、αは減衰定数、βは位相定数、fは周波数であるが、本実施形態のアルゴリズムではα=0、及び皮膚8の全微小伝送路51の音速をc=1600(m/s)と仮定している。
【数8】
【数9】
【0063】
また、各微小伝送路51の距離Δlは次式10のように表され、ここでも音速をc=1600(m/s)と仮定している。Δtは皮膚8からの反射波形のサンプリング間隔の1ポイントに相当する(本実施形態ではΔt=2(ns))。
【数10】
【0064】
そして、上記の式をもとに、さらに奥にある微小伝送路51からのインパルス応答Γ
1を求めることができる(次式11)。即ち、Zx
0及びZ
1の値をもとに、Z
1の終点におけるΓ
1の値を推定することができる。
【数11】
【0065】
次式12は、インパルス応答Γ
1(ω)を逆フーリエ変換したg
1(t)を表したものであって、その第1項は多重反射の影響を受けない。従って、この第1項の値から当該微小伝送路51に隣接するさらに奥側の微小伝送路51の特性インピーダンスZ
2を推定することができ、同様にZx
1、Γ
2(ω)も推定することができる(次式13,14,15)。
【数12】
【数13】
【数14】
【数15】
【0066】
この工程を繰り返すことによって、各微小伝送路51の特性インピーダンス(固有音響インピーダンス)Z1、Z2…Znを推定することができる。
【0067】
本実施形態のアルゴリズムでは、上記のような推定ステップを行った後、さらに以下に示す所定の補正ステップを実施する。即ち、この補正ステップでは、まず仮想参照部位の固有音響インピーダンス値を定義する。ここでの測定対象物は皮膚8(肌組織)であって(
図8参照)、皮膚8を構成する表皮61及び真皮62よりも深い位置にある皮下組織63の比較的浅い部位には、肌組織表面に対して略平行な方向に延びる血管64が存在している。血管64内に存在する血液65の固有音響インピーダンス値は既知(1.61MNs/m
3)であるため、本実施形態ではこの値を上記「仮想参照部位の固有音響インピーダンス値」として用いている。
【0068】
そして次に、推定ステップにて得た測定対象物内における特定深度(ここでは、横行する血管が存在する皮下組織浅部)の固有音響インピーダンスの推定値を、仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える補正演算を行う。
【0069】
この補正演算を
図9のグラフを用いて詳細に説明する。同グラフにおいて縦軸は固有音響インピーダンスを示し、横軸は時間を示している。また、同グラフには、2つの曲線C1、C2が描かれている。実線で描かれた曲線C1は補正前の固有音響インピーダンス曲線C1を示すものであり、破線で描かれた曲線C2は補正後の固有音響インピーダンス曲線C2を示すものである。なお、これら曲線C1、C2は、左半分の領域(即ち樹脂プレート9内部に相当する領域)において差がなく重なっているが、右半分の領域(即ち皮膚8内部に相当する領域)において相違している。本実施形態では、曲線C1の右側領域よりも曲線C2の右側領域のほうが全体的に下方に位置している。
【0070】
ここで、基体である樹脂プレート9はポリスチレン製であるため、その固有音響インピーダンス値Z(x)は既知かつ一定(Z(0)=2.50MNs/m3)である。固有音響インピーダンス曲線C1における左側の領域が、超音波トランスデューサ13に近い位置にある樹脂プレート9の固有音響インピーダンス値Z(x)を示す部分である。一方、樹脂プレート9に接して配置された皮膚8は、ポリスチレン製の樹脂プレート9よりも軟らかい。このため、その固有音響インピーダンス値Z(x)は、固有音響インピーダンス曲線C1における点Aを境にして急激に低くなる。固有音響インピーダンス曲線C1における右側の領域が皮膚8の固有音響インピーダンス値Z(x)の補正前の推定値を示す部分であり、2.50MNs/m3よりもかなり低い値となっている。当該曲線C1において点B(即ち皮膚8内における特定深度に相当する部分)よりも右側はフラットであり、この部分が特定深度の血管内に存在する血液の固有音響インピーダンス値の補正前の推定値を示す部分となっている。ただし、当該推定値は誤差を含んでおり、実際の値とはいくぶん異なるものとして表されている(この例では1.80MNs/m3)。そこで、特定深度の血管64内に存在する血液65の固有音響インピーダンス値の補正前の推定値を、仮想参照部位の固有音響インピーダンス値(1.61MNs/m3)に置き換えるべく、1.80MNs/m3から補正値である0.19MNs/m3を減算する。その結果、当該曲線C1のフラットな部分が下方に移動し、これが補正された固有音響インピーダンス曲線C2のうちの一部をなすものとなる。なお、当該曲線C1における点Bは、曲線C2における点Cに移動した状態となる。
【0071】
次に、固有音響インピーダンス曲線C1における点Aと点Bとの間の領域(即ち皮膚表面から当該血管までの部分に相当する領域)を補正する。その際、先の補正値である0.19MNs/m
3を最大とし、測定対象物の前面側(即ち皮膚表面)に向かうほど小さくなる補正値を用いる。そしてこの補正値を減算することにより、当該血管から皮膚表面までの固有音響インピーダンスの推定値を補正する。換言すると、皮膚表面からの深さに応じた補正値を設定し、推定値からこれを減算する。例えば、特定深度の半分の深さ位置における推定値を補正する場合には、0.19MNs/m
3の1/2の値(即ち0.095MNs/m
3)をその位置における補正値として設定し、これをその位置における推定値から減算する。また、特定深度の1/4の深さ位置における推定値を補正する場合には、0.19MNs/m
3の1/4の値(即ち0.0475MNs/m
3)をその位置における補正値として設定し、これをその位置における推定値から減算する。ちなみに、
図9のグラフに描かれた3本の下向き矢印は、それぞれの深度における補正値の大きさの違いを視覚的に示している。
【0072】
そして、このような補正ステップの演算を通じて、測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定し、最終的にはBモードエコー像の元となる反射信号列を固有音響インピーダンス像に変換する。
【0073】
次に、本実施形態の超音波画像構築装置1において固有音響インピーダンス画像を構築するために、プロセッサであるCPU31が実行する演算処理について、
図10のフローチャートを用いて説明する。
【0074】
まず、測定対象物であるヒトの皮膚8(例えば、比較的浅い位置に太い血管(けい静脈、けい動脈)が存在している首の皮膚8など)を樹脂プレート9の上面に押し付けるようにして接触配置させる。この状態で、まず超音波プローブ6に初期動作を行わせる。即ち、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27を作動させることにより、モータ28X,28Yを駆動し、リファレンス部材10がある位置にて超音波照射が行われるようにX-Yステージ14を移動させる。
【0075】
またこのとき、CPU31からの指示に基づいて励起パルスがトランスデューサ13に供給されると、
図5(a)に示すように、リファレンス部材10に超音波Soが照射され、その反射波Sref(ω)が受信回路22を経て検波回路24で検出される。そして、反射波取得手段としてのCPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータをリファレンス部材10からの超音波波形のインパルス応答のデータとしてメモリ33に記憶する(ステップS100)。
【0076】
その後、CPU31からの指示に基づいてコントローラ27によりモータ28X,28Yが駆動され、X-Yステージ14による二次元走査が開始される。CPU31は、エンコーダ26の出力に基づいて測定点の座標データを取得する(ステップS110)。
【0077】
そして、
図4(a)に示すように、CPU31からの指示に基づいて励起パルスがトランスデューサ13に供給されることにより、皮膚8に超音波S
oが照射され、その反射波S
tgt(ω)が受信回路22を経て検波回路24で検出される。反射波取得手段としてのCPU31は、A/D変換回路25で変換されたデジタルデータをI/F回路32を介して取得し、そのデータを皮膚8からの超音波波形のインパルス応答のデータとして座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップS120)。
【0078】
次いで、第1演算手段としてのCPU31は、規格化されたインパルス応答信号のデータを用いて、上記のアルゴリズムのうち、TDR法の原理を参考とした推定ステップの演算を実行する。そしてCPU31は、その演算により皮膚8における測定点での奥行方向の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定し、その推定結果を座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップS130)。
【0079】
次いで、第2演算手段としてのCPU31は、上記のアルゴリズムのうちの補正ステップの演算を実施する。即ち、仮想参照部位の固有音響インピーダンス値を定義した後、皮膚8内における特定深度の固有音響インピーダンスの推定値を前記仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を行い、この演算を通じて皮膚8内の固有音響インピーダンスの推定値を補正する。そしてCPU31は奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定し、その推定結果を座標データに関連付けてメモリ33に記憶する(ステップS132)。
【0080】
その後、画像構築手段としてのCPU31は、奥行方向の固有音響インピーダンス分布の推定結果に基づいて、固有音響インピーダンス像(断層像)を構築するための画像処理を行う(ステップS140)。詳しくは、CPU31は、固有音響インピーダンス分布の推定結果に基づいてカラー変調処理を行い、固有音響インピーダンスの大きさに応じて色分けして表示した画像データを構築し、該画像データをメモリ33に記憶する。
【0081】
次いで、CPU31は、全ての測定点での処理が終了して、全ての測定点で画像データが取得されたか否かを判断する(ステップS150)。ここで、全データが取得されていない場合には(ステップS150:NO)、CPU31は、ステップS110に戻って、ステップS110~S140の処理を繰り返して実行する。全データが取得された場合には(ステップS150:YES)、CPU31は、次ステップS160に移行する。
【0082】
そして、CPU31は、該データを表示装置36に転送し、あらかじめ定めた直線上における固有音響インピーダンス像(断層像)を表示させた後(ステップS160)、
図10の処理を終了するようになっている。このような一連の処理により、皮膚8での固有音響インピーダンスの大きさに応じて色分けされた固有音響インピーダンス像(断層像)が表示される。
【0083】
従って、本実施の形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0084】
(1)本実施形態の超音波画像構築装置1では、リファレンス部材10に入射した超音波波形のインパルス応答情報、及び皮膚8に入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報、つまり装置に依存しないインパルス応答情報を得るようにしている。そして、この規格化されたインパルス応答情報に基づいて、皮膚8内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって、多重反射の影響を考慮しつつ順次推定する演算(推定ステップ)を行うようにしている。本実施形態ではこれに加えて、皮膚8内における特定深度(ここでは、横行する血管が存在する皮下組織浅部)の固有音響インピーダンスの推定値を、仮想参照部位の固有音響インピーダンス値に置き換える演算を通じて、皮膚8内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する演算(補正ステップ)も行うようにしている。以上の結果、深度が大きくなるほど蓄積、拡大しやすい固有音響インピーダンスの推定値の誤差を減じることができ、奥行方向の固有音響インピーダンス分布のより正確な推定が可能となる。また、補正ステップを行わない従来技術では超音波断層像における奥行方向に多くの筋が入ってしまうため、微細な層構造が感覚的に理解しにくかったのに対し、本実施形態ではこのような筋が少なくなり層方向の色ムラが減少する。従って、微細な層構造を有する非常に薄い皮膚8の超音波断層像を、その層構造が感覚的に理解しやすい固有音響インピーダンス像として比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる。なお、この装置1により得られる固有音響インピーダンス像は、測定対象物を切断することなく(即ち非侵襲で)、層ごとの力学特性の断面分布(深さ分布)情報を、推定した固有音響インピーダンスの絶対値ごとに色分けして画像化したものである。それゆえ、この像は感覚的に層構造が理解しやすいものなっている。
【0085】
ここで、一般に通常の超音波診断装置で得られる超音波Bモードエコー像では、皮膚8等の生体組織内部の層情報は一応得られるものの、得られる画像は固有音響インピーダンスがある程度以上の差を有する層同士の界面からの反射像である。即ち、固有音響インピーダンスの差がある程度小さくなると、組織学的には界面が存在しても検出されず、その構造を反映した画像を形成することが極めて困難となっていた。つまり、一般的な反射像では生体組織の微細な内部構造、微細な層構造が反映された生体組織内部の反射像(固有音響インピーダンスの違い)を把握するのには不十分であった。これに対して、この超音波画像構築装置1によると、従来の超音波Bモードによって全く検出することができなかった力学特性分布に基づく皮膚8の層構造を、十分な解像度を持った鮮明な断層像として捉えることができるようになった。また、このような鮮明な断層像は、他の非侵襲可視化装置(光干渉断層撮影装置(OCT)や、in vivo共焦点顕微鏡など)では取得不能であったため、この超音波画像構築装置1が具現化されたことの意義は大きい。以上のように、本実施形態の超音波画像構築装置1によると、皮膚8の状態(皮膚8の層ごとの力学特性に関する状態)を簡便にかつ非侵襲的に評価することができる。
【0086】
(2)本実施形態の超音波画像構築装置1では、皮膚組織内部での多重反射を考慮した時間-周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の固有音響インピーダンス像に変換する手法を採用している。このため、比較的簡単に所定の演算を行うことができる。また本実施形態では、上述したアルゴリズムを用いて、手前側の微小伝送路51の固有音響インピーダンスの推定結果に基づきその奥側に隣接する微小伝送路51の固有音響インピーダンスを推定する処理を順次繰り返すことにより、伝送路の奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定する演算を行うようにしている。従って、この演算によれば、多重反射の影響を最小限にすることができ、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を精度よく推定することができる。
【0087】
[第2の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第2の実施形態を
図11に基づき詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態と共通している構成については、同じ部材番号を付す代わりに詳細な説明を省略する。
【0088】
本実施形態の超音波画像構築装置1では、所定の推定ステップ後に補正ステップを行ってから画像構築ステップを行っており、この点については上記第1の実施形態と共通する(上記
図9、
図10等を参照)。ただし、第1の実施形態の補正ステップでは、肌組織表面に対して略平行な方向に延びる血管64内に存在する血液65の固有音響インピーダンス値(1.61MNs/m
3)を「仮想参照部位の固有音響インピーダンス値」として用いたのに対し、ここでは測定対象物が生体の軟組織であることに着目してその特定深度の固有音響インピーダンスの推定値の平均を「仮想参照部位の固有音響インピーダンス値」と定義して用いている。本実施形態では、肌組織表面から350μmほど深い位置における組織の固有音響インピーダンスの推定値の平均(例えば1.65MNs/m
3)を求めて、その値を用いている。これは、生体の軟組織中には骨や軟骨などの硬い部分が存在せず硬さのばらつきが少ないので、その固有音響インピーダンスは例えば1.50MNs/m
3~1.70MNs/m
3の範囲から大きく外れた値とはならず、仮想参照部位として選択するのに適している、との考え方に立脚したものである。なお、脂肪を除く軟組織であれば、固有音響インピーダンスは、ほぼ1.60MNs/m
3~1.70MNs/m
3の範囲内となる。
【0089】
この場合、皮膚8における特定深度は、固有音響インピーダンス像の画像データが構築される領域よりも深い位置に設定されることが好ましい。本実施形態では、例えば肌組織表面から300μmほど深い位置までを画像構築領域として設定している関係上、組織の固有音響インピーダンスの推定値の平均を求めるための特定深度はそれよりも50μm深い位置としている。このようにすることで、特定深度の固有音響インピーダンス像を敢えて表示しないようにし、かえって不自然なものとならないようにしている。
【0090】
ここで、
図11(a)は補正ステップを実施することなく画像を構築して得た固有音響インピーダンス像であり、(b)は補正ステップを実施したうえで画像を構築して得た固有音響インピーダンス像である。前者では、奥行方向に多くの筋が入ってしまい、層構造がわかりにくい。これに対して後者では、筋がいくぶん解消された状態で表示されるため、層方向に色が均一化される傾向が強くなり、層構造がわかりやすくなる。
【0091】
従って、以上説明した本実施形態の超音波画像構築装置1についても、第1の実施形態の超音波画像構築装置1と同様の作用効果を奏することができる。つまり、微細な層構造を有する非常に薄い皮膚8の超音波断層像を、その層構造が感覚的に理解しやすい態様にて比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる。また、超音波を利用して得た情報に基づいて、皮膚8の微細な層構造を簡便にかつ正確に観察、評価等できる画像を構築することができる。特に本実施形態によれば、測定部位の内層に第1の実施形態のときのような適当な仮想参照部位(例えばけい静脈、けい動脈などの比較的太い血管)が存在していない場合であっても、固有音響インピーダンスの推定値を補正することができる。よって、首の部位に限らずいろいろな部位(例えば頬など)において観察、評価を行うことができる。
【0092】
[第3の実施形態]
以下、本発明の超音波画像構築方法及び装置を具体化した第3の実施形態を
図12~
図14に基づき詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態と共通している構成については、同じ部材番号を付す代わりに詳細な説明を省略する。
【0093】
図12は、本実施形態の超音波画像構築装置101を示す概略構成図である。
図12に示されるように、この超音波画像構築装置101は、超音波を用いて培養細胞8Aを観察するための装置であって、パルス励起型超音波顕微鏡2と、パーソナルコンピュータ(PC)3とを備えている。
【0094】
ステージ4には、測定対象物である培養細胞8Aを培養するための培養液Mを収容する培養容器102が設置されている。ここでは、培養細胞8Aとして、接着性細胞の一種であるヒトのグリア細胞8Aを用いている。グリア細胞8Aの厚さは非常に薄く、数μm程度である。この培養容器102の底部中央部には、上面側に培養細胞8Aが培養時に接着して支持される樹脂プレート9が固定されている。既知の音響物性を有する基体としての樹脂プレート9は、超音波を透過させることができる平板状部材であって、測定対象物である培養細胞8Aよりも硬い材料からなる。
【0095】
なお、培養容器102内において培養細胞8Aは、培養液Mに完全に浸漬された状態で存在している。従って、培養液Mは、樹脂プレート9において培養細胞8Aが接触配置される側である上面に接して存在するばかりでなく、培養細胞8Aにおける樹脂プレート9とは反対の側にも接して存在していると把握できる。培養液Mは樹脂プレート9とは異なる既知の音響物性を有しており、本実施形態ではこれを第1参照物質及び第2参照部材として位置付けて利用している。以降の説明の便宜のため、樹脂プレート9と接して存在する培養液(即ち第1参照物質である培養液)にM1を付し、培養細胞8Aにおける樹脂プレート9とは反対の側に接して存在する培養液(即ち第2参照物質である培養液)にM2を付して区別する。
【0096】
次に、本実施形態の超音波画像構築装置101において、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列から固有音響インピーダンス像を構築する手法について説明する。
【0097】
この超音波画像構築装置101では、基体である樹脂プレート9に測定対象物である培養細胞8A及び第1参照物質である培養液M1が接して存在し、かつ培養細胞8Aにおける樹脂プレート9とは反対の側に第2参照物質である培養液M2が接して存在した状態で超音波を送信する。そして、樹脂プレート9を介して超音波を入射させたときの培養細胞8A、第1参照物質である培養液M1及び第2参照物質である培養液M2からの超音波波形のインパルス応答をそれぞれ受信する(送受信ステップ)。
【0098】
次いで、培養液M1、M2に入射した超音波波形のインパルス応答情報、及び培養細胞8Aに入射した超音波波形のインパルス応答情報から、規格化されたインパルス応答情報を得て、その規格化されたインパルス応答情報に基づいて培養細胞8A内及び第2参照部材である培養液M2内の固有音響インピーダンスを奥行方向の手前側から奥側に向かって順次推定する(推定ステップ)。このステップでは、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を多重反射の影響を考慮して推定する演算を行うが、これについては第1の実施形態において詳しく説明したため割愛する。なお、この演算は、メモリ33内に格納された所定のアルゴリズムに基づいて実行される。
【0099】
本実施形態の超音波画像構築装置101では、上記の推定ステップ後に補正ステップを行ってから画像構築ステップを行っており、この点については上記第1の実施形態と共通する(上記
図9、
図10等を参照)。ただし、本実施形態の補正ステップでは第1の実施形態のときとは異なる以下の補正ステップを実施する。即ちここでは、推定ステップにて得た第2参照物質(培養液M2)の固有音響インピーダンスについて、その「推定値」を「実際値」に置き換える補正演算を行う。培養液M2の前記「実際値」が例えば1.55MNs/m
3であり、誤差を含んでいる可能性が高い前記「推定値」が例えば1.80MNs/m
3であるとすると、その値から補正値である0.25MNs/m
3を減算することにより、前記「実際値」を補正する。その結果、先の実施形態で示した
図9のグラフに示す補正前の固有音響インピーダンス曲線C1のフラットな部分が下方に移動し、これが補正された固有音響インピーダンス曲線C2のうちの一部をなすものとなる。なお、当該曲線C1における点Bは、曲線C2における点Cに移動した状態となる。
【0100】
次に、固有音響インピーダンス曲線C1における点Aと点Bとの間の領域を補正する。その際、先の補正値である0.25MNs/m3を最大とし、測定対象物の前面側(即ち培養細胞8Aにおいて樹脂プレート9と接している面側)に向かうほど小さくなる補正値を用いる。そして前記「推定値」からこの補正値を減算することにより、培養液M2と培養細胞8Aとの界面から、培養細胞8Aと樹脂プレート9との界面までの前記「推定値」を補正する。
【0101】
そして、このような補正ステップの演算を通じて、測定対象物内の固有音響インピーダンスの推定値を補正したうえで、奥行方向の固有音響インピーダンス分布を推定し、最終的にはBモードエコー像の元となる反射信号列を固有音響インピーダンス像に変換する。
【0102】
従って、以上説明した本実施形態の超音波画像構築装置101についても、第1の実施形態の超音波画像構築装置1と同様の作用効果を奏することができる。つまり、微細な内部構造を有する非常に薄い培養細胞8Aの超音波断層像を、その微細な内部構造が感覚的に理解しやすい態様にて比較的簡単にかつ高い精度で構築することができる。また、超音波を利用して得た情報に基づいて、培養細胞8Aの内部構造を簡便にかつ正確に観察、評価等できる画像を構築することができる。
【0103】
図13はグリア細胞8Aを概略的に示した図である。グリア細胞8Aには、核112が存在するほか、細胞骨格113(アクチン繊維)が重合して形成される仮足114等が存在している。なお、仮足114は移動するグリア細胞8Aの進行方向側に見られる。
図14はこの超音波画像構築装置101を用いて観察されたグリア細胞8Aの超音波断層像である。これによると、グリア細胞8Aの内部には固有音響インピーダンスの高い箇所と低い箇所とが存在していることがわかった。
図13の概略図を参照すると、固有音響インピーダンスの高い箇所、即ち比較的硬い箇所は、細胞骨格113を多く含む仮足114であると推察された。また、固有音響インピーダンスの低い箇所、即ち比較的柔らかい箇所は、核であると推察された。このような本実施形態の超音波画像構築装置101によれば、培養細胞8Aの内部構造が観察できるばかりでなく、培養細胞8Aの動き等についても観察できるものと考えられた。
【0104】
なお、本発明の各実施の形態は以下のように変更してもよい。
【0105】
・上記第1、第2実施形態の超音波画像構築装置1では、リファレンス部材10からの反射波を参照波形として用いて演算処理を行ったが、これに限定されるものではない。この参照波形としては、樹脂プレート9の上面において皮膚8が接触していない箇所からの反射波であればよく、例えば、樹脂プレート9の上面において皮膚8もリファレンス部材10も接触していない箇所(具体的には、リファレンス部材10よりも外側に位置する樹脂プレート9の表面)での反射波を用いてもよい。言い換えると、樹脂プレート9と空気層との界面からの反射波を参照波形として利用してもよい。
【0106】
・上記第1、第2実施形態の超音波画像構築装置1では、下方から超音波を照射する倒立型の超音波顕微鏡2を用いて超音波の照射を行ったが、上方から超音波を照射する正立型の超音波顕微鏡を用いてもよい。
【0107】
・上記第1、第2実施形態では、基本的に疾患を有していない比較的健康な皮膚8を対象として、その状態を評価する目的で超音波画像構築装置1を用いたが、これに限定されない。例えば、皮膚がんなどの疾患に伴う皮膚の異常を早期に検出する目的で超音波画像構築装置1を用いてもよい。
【0108】
・上記第1、第2実施形態の超音波画像構築装置1では、測定対象物がヒトの首の皮膚8であったが、首以外の他の部位(例えば頬など)における皮膚8であっても勿論よい。また、測定対象物は皮膚8でなくてもよく、例えば内臓、筋肉、脳、歯、爪、骨の表層部などであっても勿論よい。また、上記第3実施形態の超音波画像構築装置101では、測定対象物がヒトのグリア細胞であったが、付着性細胞であれば生物種は問わずどのような培養細胞であってもよい。さらにいうと、測定対象物は必ずしも生体組織や生物でなくてもよく、非生物(例えば塗膜など)であってもよい。換言すると、本発明の超音波画像構築装置1、101は医療分野、美容分野、化粧品分野のみに限定されず、例えば工業分野などの分野においても使用されることができる。
【0109】
・上記実施形態の超音波画像構築装置1、101は、いずれも測定対象物に対して超音波トランスデューサ13を二次元方向に相対的に走査させる走査手段を備えていたが、これに代えて超音波トランスデューサ13を一次元方向にのみ相対的に走査させる走査手段を備えたものとしてもよい。また、走査手段は必須の構成ではないため省略しても勿論よく、この場合には装置を小型化、簡略化、低コスト化することが可能となる。
【0110】
・上記実施形態の超音波画像構築装置1、101では、奥行方向の固有音響インピーダンス分布の推定結果に基づいて固有音響インピーダンス像を構築したが、これに限定されない。例えば、奥行方向の音速分布を推定し、その結果に基づいて音速像を構築してもよい。
【0111】
・上記実施形態の超音波画像構築装置1、101では、超音波Bモードエコー画像の元となる反射信号列から固有音響インピーダンス像を構築してそれを表示装置36に表示させるように構成したが、固有音響インピーダンス像ばかりでなく超音波Bモードエコー像も表示できるようにしても勿論よい。また、超音波Bモードエコー像を表示する汎用の超音波診断装置に上記実施形態のアルゴリズムを組み込むことで、超音波画像構築装置1、101として動作させるようにしてもよい。
【0112】
・上記実施形態では、測定対象物内での多重反射を考慮した時間-周波数領域における解析を通じて、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の固有音響インピーダンス像に変換する手法を採用したが、これに限定されない。反射波形から固有音響インピーダンスの分布を推定するための方法としては、例えば、伝送路内部での多重反射を含む全ての反射経路を想定して時間軸上で随時応答を解析していく手法を採用してもよい。この手法であっても、上記実施形態の手法のときと同様の固有音響インピーダンス分布の推定結果を得ることができる。
【0113】
・上記実施形態では、超音波Bモードエコー像の元となる反射信号列を奥行方向の固有音響インピーダンス像に変換するにあたり、測定対象物内での多重反射を考慮した解析手法を採用したが、これに限定されない。例えば、生体の軟組織のように多重反射の影響が小さいと考えられる場合、測定対象物内での多重反射を敢えて考慮しない解析手法を採用してもよい。
【符号の説明】
【0114】
1、101…超音波画像構築装置
8…測定対象物としての生体の軟組織(皮膚)
8A…測定対象物としての培養細胞(グリア細胞)
9…基体としての樹脂プレート
10…第1参照物質としてのリファレンス部材
13…超音波振動子としての超音波トランスデューサ
31…第1演算手段、第2演算手段、画像構築手段、プロセッサとしてのCPU
51…微小伝送路
64…血管
65…血液
M1…第1参照物質としての培養液
M2…第2参照物質としての培養液
Γ0、Γ1…インパルス応答