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特許7213493ニューロテンシン受容体関連病態の診断、治療及び予防
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  • 特許-ニューロテンシン受容体関連病態の診断、治療及び予防 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ニューロテンシン受容体関連病態の診断、治療及び予防
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/14 20060101AFI20230120BHJP
   A61K 31/4192 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 49/00 20060101ALI20230120BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230120BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C07D403/14 CSP
A61K31/4192
A61K49/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2019506445
(86)(22)【出願日】2017-08-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2017069570
(87)【国際公開番号】W WO2018024789
(87)【国際公開日】2018-02-08
【審査請求日】2020-08-03
(31)【優先権主張番号】16182597.1
(32)【優先日】2016-08-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】517058853
【氏名又は名称】フリードリヒ-アレクサンダー-ウニヴェルシテート エアランゲン-ニュルンベルク
(73)【特許権者】
【識別番号】519036569
【氏名又は名称】ウニヴェルシテートクリーニクム エアランゲン
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】プランテ オーラフ
(72)【発明者】
【氏名】クーヴェルト トルステン
(72)【発明者】
【氏名】クマイナー ペーター
(72)【発明者】
【氏名】バナジー アシュトシュ
(72)【発明者】
【氏名】マシャウアー ジモーネ
【審査官】谷尾 忍
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-501238(JP,A)
【文献】特開平04-244065(JP,A)
【文献】特表2009-529540(JP,A)
【文献】Rebecca M. MYERS et al.,Cancer, Chemistry, and the Cell: Molecules that Interact with the Neurotensin Receptors,ACS CHEMICAL BIOLOGY,2009年,vol.4, no.7,p.503-525
【文献】Nicholas C.K. VALERIE et al.,Inhibition of Neurotensin Receptor 1 Selectively Sensitizes Prostate Cancer to Ionizing Radiation,CANCER RESEARCH,2011年11月01日,vol.71, no.21,p.6817-6826
【文献】Rebecca M. MYERS et al.,Cancer, Chemistry, and the Cell: Molecules that Interact with the Neurotensin Receptors,ACS CHEMICAL BIOLOGY,2009年,vol.4, no.7,p.503-525
【文献】Nicholas C.K. VALERIE et al.,Inhibition of Neurotensin Receptor 1 Selectively Sensitizes Prostate Cancer to Ionizing Radiation,CANCER RESEARCH,2011年11月01日,vol.71, no.21,p.6817-6826
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 403/14
A61K 31/395
A61P 35/00
A61P 43/00
A61K 31/4192
A61K 49/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
(式中、
は-水素、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)からなる群から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、
は-水素、-ハロゲン、ニトロ、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、
は2-アミノ-2-アダマンタンカルボン酸のアミノ基から1個の水素原子が除かれてなる一価の基、シクロヘキシルグリシンのアミノ基から1個の水素原子が除かれてなる一価の基及び9-アミノ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸のアミノ基から1個の水素原子が除かれてなる一価の基から選択され、
Zは-(リンカー基)-(キレーター基)であり、該リンカー基が-(X)-であり、ここで、
pは1~10の整数であり、
各Xは独立して、
(a)-(N(R)-C1~10アルキレン)-、
(b)-(N(R)-ヘテロアリーレン)-、
(c)-(N(R)-C(O))-、
(d)-(O-C1~10アルキレン)-、
(e)-(O-ヘテロアリーレン)-、
(f)-(O-C(O))-、
(g)-(C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン)-、
(h)-(C1~10アルキレン-C(O))-、
(i)-(C(O)-C1~10アルキレン)-、
(j)-(C(O)-ヘテロアリーレン)-、
(k)-(ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン)-、
(l)-(ヘテロアリーレン-C(O))-、及び、
(m)-(C1~10アルキレン)-から選択され、
ここで、各C1~10アルキレンは独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換され、
ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、該ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換され、
各Rは独立して水素及びC1~6アルキルから選択され、
前記キレーター基が、2,2’,2’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、N,N’-ビス-[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED-CC)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N’-{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N-グルタル酸-N’,N’’-二酢酸(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、1-[2-(2-メルカプト-2-メチル-プロピルアミノ)-エチルアミノ]-2-メチル-プロパン-2-チオール(BAT)、6-ヒドラジノ-ニコチン酸(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]及び1,4,7-トリアザシクロノナンホスフィン酸から選択される、又は、
前記キレーター基が、下式で表される基
【化2】
(式中、Tは-[(CR (NR)](CR -であり、
波線は前記リンカー基である-(X)-に対する結合部位を示し、
ここで、
各Rは独立して-水素、-ハロゲン、-OH、-C1~6アルキル及び-O-C1~6アルキルから選択され、
各Rは独立して-水素、-C1~6アルキル、-(C1~6アルキレン)-COOH、-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-COOH及び-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-OHから選択され、
各mは独立して1~4の整数であり、
qは3~5の整数である))の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物。
【請求項2】
が、下式で表される基
【化3】
(式中、波線は前記式(I)中のカルボニル基に対する結合部位を示す。)である、請求項1に記載の式(I)の化合物。
【請求項3】
前記キレーター基が1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、2,2’,2’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、N,N’-ビス-[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]-エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED-CC)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N’-{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N-グルタル酸-N’,N’’-二酢酸(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-四酢酸(TRITA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、1-[2-(2-メルカプト-2-メチル-プロピルアミノ)-エチルアミノ]-2-メチル-プロパン-2-チオール(BAT)、6-ヒドラジノ-ニコチン酸(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]及び1,4,7-トリアザシクロノナンホスフィン酸から選択される、請求項1又は2に記載の式(I)の化合物。
【請求項4】
前記リンカー基が、
(i)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、
(ii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、及び、
(iii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-から選択され、
ここで、各C1~10アルキレンは独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換され、
ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、該ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換され、
各Rは独立して水素及びC1~6アルキルから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の式(I)の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物と、1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを含む組成物。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物と、1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを含む錯体。
【請求項7】
前記放射性核種がF-18、P-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Cr-51、Fe-52、Fe-59、Mn-51、Mn-52m、Co-55、Co-57、Co-58、Cu-62、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、As-72、Se-75、As-77、Br-76、Br-75、Br-77、Br-80m、Br-82、Rb-82m、Sr-83、Sr-89、Y-86、Y-90、Zr-89、Mo-99、Tc-94m、Tc-99m、Ru-97、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-110、In-111、In-113m、In-114m、Sb-119、Sn-121、Te-127、I-120、I-123、I-124、I-125、I-129、I-131、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Sm-153、Dy-152、Dy-166、Gd-157、Gd-159、Ho-161、Tb-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Re-189、Rd-188、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、Hg-197、Tl-201、Pb-203、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、At-211、At-217、Po-215、Ra-223、Rn-219、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記放射性核種がF-18、P-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Cr-51、Fe-52、Fe-59、Mn-51、Mn-52m、Co-55、Co-57、Co-58、Cu-62、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、As-72、Se-75、As-77、Br-76、Br-75、Br-77、Br-80m、Br-82、Rb-82m、Sr-83、Sr-89、Y-86、Y-90、Zr-89、Mo-99、Tc-94m、Tc-99m、Ru-97、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-110、In-111、In-113m、In-114m、Sb-119、Sn-121、Te-127、I-120、I-123、I-124、I-125、I-129、I-131、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Sm-153、Dy-152、Dy-166、Gd-157、Gd-159、Ho-161、Tb-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Re-189、Rd-188、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、Hg-197、Tl-201、Pb-203、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、At-211、At-217、Po-215、Ra-223、Rn-219、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される、請求項6に記載の錯体。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物と、1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種との錯体を得る方法であって、該式(I)の化合物と、該1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを反応させ、該式(I)の化合物と、該1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種との錯体を得ることを含む方法。
【請求項10】
前記反応を水及び任意に緩衝液を含む溶媒中で行い、及び/又は該反応を20℃~100℃の範囲の温度で行う、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物を含む、医薬。
【請求項12】
請求項5又は7に記載の組成物を含む、医薬。
【請求項13】
請求項6又は8に記載の錯体を含む、医薬。
【請求項14】
障害診断薬であって、
前記障害が腫瘍及び血液悪性疾患である、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項15】
障害治療薬又は障害予防薬であって、
前記障害が腫瘍及び血液悪性疾患である、請求項11~13のいずれか一項に記載の医薬。
【請求項16】
前記障害が前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、下垂体癌及び乳癌からなる群より選択される少なくとも一種である、請求項14又は15に記載の医薬。
【請求項17】
医薬組成物であって、(i)請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物、及び任意に(ii)薬学的に許容可能な添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項18】
医薬組成物であって、(i)請求項5又は7に記載の組成物、及び任意に(ii)薬学的に許容可能な添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項19】
医薬組成物であって、(i)請求項6又は8に記載の錯体、及び任意に(ii)薬学的に許容可能な添加剤を含む、医薬組成物。
【請求項20】
請求項1~4のいずれか一項に記載の式(I)の化合物、又は、その薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー若しくはそれらの混合物と、1つ以上の放射性核種とを含む、医薬用キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、様々な病態の診断、治療及び予防に使用することができる、ニューロテンシン受容体に活性を示す放射性核種を含有する化学化合物、並びに放射性核種を含有しないその前駆体に関する。さらに、本発明は、かかる活性を有する化学化合物を作製する方法、並びに様々な病態の診断、治療及び予防におけるこれらの化合物の医学的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は世界的に主要な死因の1つである。死亡率は前立腺癌、大腸癌、膵癌、肺癌、気管支癌及び乳癌を患う患者において特に高い。ここ数年で幾らかの進展がなされているにも関わらず、癌の診断、治療及び予防のためのより強力な化合物の開発は依然として優先度が高く、癌による死亡者数の増加に対処するために必要とされている。
【0003】
ニューロテンシン受容体は、神経伝達物質ニューロテンシンを結合する膜貫通受容体である。3つのニューロテンシン受容体サブタイプ(NTS1~NTS3)の中でも、Gタンパク質共役受容体NTS1が、薬物標的として働くための最も好適な必要条件を有している(非特許文献1)。NTS1受容体は、統合失調症(非特許文献2)及びパーキンソン病(非特許文献3)等の神経変性疾患を含む多数の病態生理学的過程に関与する。NTS1過剰発現が前立腺癌、膵癌、結腸癌及び小細胞肺癌等の様々な腫瘍型において実証されている。これにより、腫瘍におけるNTS1の選択的過剰発現は、対応する健常組織におけるその明らかに低い発現に加えて、標的療法アプローチにより腫瘍を治療する極めて優れた機会を提供する。このことは、種々の癌型の予後のバイオマーカーとしてNTS1を論ずる(非特許文献4)、並びにin vitro及びin vivoの両方で多数の細胞型におけるNTS1の過剰発現の証拠を提供している(非特許文献5及び非特許文献6)、様々な刊行物によって支持される。
【0004】
NTS1を過剰発現する腫瘍にin vivoで選択的に対処する可能性も、陽電子放出断層撮影(PET)によるNTS1受容体のイメージングに放射性標識剤を使用する幾つかの刊行物によって支持されている(例えば、非特許文献7~非特許文献9)。小分子NTS1アンタゴニスト(メクリネルタント(Meclinertant)、SR48692)を用いた小細胞肺癌の治療は、有効性の欠如のために奏功せず、作用機構としてアンタゴニストを用いてNTS1受容体を遮断することによる腫瘍の療法が成功しないことが判明すると実証された。それにもかかわらず、SR48692は放射線療法に対して腫瘍を感作することが可能である(非特許文献10)。
【0005】
NTS1陽性腫瘍のPETイメージングのための非ペプチド18F標識NTS1トレーサーが本発明者らによって記載され(非特許文献11)、In-111で標識された非ペプチドSPECTトレーサーがSchulz et al.によって記載されている(非特許文献12)。
【0006】
膵臓腫瘍におけるドーパミン受容体の存在が記載されている(非特許文献13)。したがって、ドーパミン受容体及びNTS1の両方に結合する放射性トレーサーは、ドーパミン受容体結合からの干渉シグナルのために、NTS1陽性腫瘍の研究又は病期分類に適切に使用することができない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Cancer Chemistry and Cell: Molecules that interact with Neurotensin Receptors; Myers, Rebecca M.; Shearman, James W.; Kitching, Matthew O.; Ramos-Montoya, Antonio; Neal, David E.; Ley, Steven V.; ACS Chemical Biology (2009), 4(7), 503-525.
【文献】Neurotensin, schizophrenia, and antipsychotic drug action; Kinkead, Becky; Nemeroff, Charles B.; International Review of Neurobiology (2004), 59, 327-349.
【文献】Emerging evidence for neurotensin receptor 1 antagonists as novel pharmaceutics in neurodegenerative disorders; Ferraro, L.; Tomasini, M. C.; Beggiato, S.; Guerrini, R.; Salvadori, S.; Fuxe, K.; Calza, L.; Tanganelli, S.; Antonelli, T.; Mini-Reviews in Medicinal Chemistry (2009), 9(12), 1429-1438.
【文献】The potential use of the neurotensin high affinity receptor 1 as a biomarker for cancer progression and as a component of personalized medicine in selective cancers; Dupouy, Sandra; Mourra, Najat; Doan, Van Kien; Gompel, Anne; Alifano, Marco; Forgez, Patricia.; Biochimie (2011), 93(9), 1369-1378.
【文献】Prostate cancer targeting motifs: Expression of αvβ3, neurotensin receptor 1, prostate specific membrane antigen, and prostate stem cell antigen in human prostate cancer cell lines and xenografts; Taylor, Robert M.; Severns, Virginia; Brown, David C.; Bisoffi, Marco; Sillerud, Laurel O.; Prostate (2012), 72(5), 523-532.
【文献】Altered Expression of Neurotensin Receptors Is Associated with the Differentiation State of Prostate Cancer; Swift, Stephanie L., Burns, Julie E., Maitland, Norman J.; Cancer Research (2010), 70(1), 347-356.
【文献】Synthesis of a 68Ga-Labeled Peptoid-Peptide Hybrid for Imaging of Neurotensin Receptor Expression in Vivo; Maschauer, Simone; Einsiedel, Juergen; Hocke, Carsten; Huebner, Harald; Kuwert, Torsten; Gmeiner, Peter; Prante, Olaf; ACS Medicinal Chemistry Letters (2010), 1(5), 224-228.
【文献】[99mTc] Demotensin 5 and 6 in the NTS1-R-targeted imaging of tumors: synthesis and preclinical results; Maina, Theodosia; Nikolopoulou, Anastasia; Stathopoulou, Eleni; Galanis, Athanassios S.; Cordopatis, Paul; Nock, Berthold A; European Journal of Nuclear Medicine and Molecular Imaging (2007), 34(11), 1804-1814.
【文献】18F- and 68Ga-labeled Neurotensin Peptides for PET Imaging of Neurotensin Receptor 1; Maschauer S., Einsiedel J., Huebner H., Gmeiner P., Prante O.; Journal of Medicinal Chemistry (2016).
【文献】Inhibition of Neurotensin Receptor 1 Selectively Sensitizes Prostate Cancer to Ionizing Radiation; Valerie, Nicholas C. K.; Casarez, Eli V.; DaSilva, John O.; Dunlap-Brown, Marya E.; Parsons, Sarah J.; Amorino, George P.; Dziegielewski, Jaroslaw; Cancer Research (2011), 71(21), 6817-6826.
【文献】Synthesis and Evaluation of a 18F-Labeled Diarylpyrazole Glycoconjugate for the Imaging of NTS1-Positive Tumors; Lang, Christopher; Maschauer, Simone; Huebner, Harald; Gmeiner, Peter; Prante, Olaf; Journal of Medicinal Chemistry (2013), 56(22), 9361-9365.
【文献】Comparative Evaluation of the Biodistribution Profiles of a Series of Nonpeptidic Neurotensin Receptor-1 Antagonists Reveals a Promising Candidate for Theranostic Applications; Schulz, J., Rohracker, M., Stiebler, M., Goldschmidt, J., Grosser, O., Osterkamp, F., Pethe, A., Reineke, U., Smerling, C., and Amthauer, H.; Journal of Nuclear Medicine (2016), 57, 1120-1123.
【文献】The analysis of quantitative expression of somatostatin and dopamine receptors in gastro-entero-pancreatic tumours opens new therapeutic strategies; O'Toole, D., Saveanu, A., Couvelard, A., Gunz, G., Enjalbert, A., Jaquet, P., Ruszniewski, P., Barlier, A.; European Journal of Endocrinology (2006), 155, 849-857.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、非ペプチドNTS1アンタゴニストと、アンタゴニストに連結したキレーターとを含む式(I)の化合物に関する。
【0009】
従来技術における問題を考えると、ドーパミン受容体への低い結合及びNTS1に対する改善された選択性を示す放射性医薬品を開発することが本発明の目的であった。本発明者らは、これらの問題を克服し、ドーパミン受容体と比較してNTS1受容体に対する改善された選択性を示す新たな化合物を開発した。この選択性の増大は、より強力な活性をもたらすだけでなく、例えばドーパミン受容体結合に起因する干渉を低減することによって、NTS1陽性腫瘍の診断及びイメージングを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは驚くべきことに、トリアゾリル部分がドーパミン受容体に対するこれらの化合物の親和性を低減し、対応するアミド類似体と比較した場合にin vivoでの腫瘍成長阻害の増大をもたらすことを見出した。
【0011】
さらに、本発明の化合物はNTS1に対するサブナノモル親和性、ドーパミン受容体に対する低い親和性、NTS1を過剰発現する腫瘍におけるリガンドの選択的濃縮、健常組織からの急速なウォッシュアウト及び腫瘍への高い取込みを示すことから、腫瘍における堆積放射能の高い線量と同時に健常組織における許容可能な線量をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】NTS1受容体陽性腫瘍(HT29、PC3、AsPC1)における放射能の蓄積を示す図である。これは、p.i.24時間及び48時間の時点で高く、経時的に優れた腫瘍貯留性(retention)を有していたが、非標的組織(例えば血液、肝臓及び骨)における取込みは有意に低く、速いクリアランス速度を示した。
図2177Lu-14(群B)又は生理食塩水(対照、群A)のいずれかを注射したPC3異種移植ヌードマウスを用いた療法研究の結果を示す図である。左:療法開始日に対して正規化した腫瘍サイズ(腫瘍径)の推移。右:非処理対照動物と比較した177Lu-14処理動物の生存曲線。矢印は放射線療法の開始を示す。
図3】AsPC-1膵腫瘍担持ヌードマウスにおけるFAUC Lu469を用いた内部放射線療法に関する実験データを示す図である。倍量投与(群C、2×29MBq/動物)及び非処理対照動物(群A)と比較した単回投与(群B、1×28MBq/動物)。
【0013】
定義
本明細書で使用される場合、「アルキル」という用語は、直鎖又は分岐であり得る一価飽和非環式(すなわち、環式でない)炭化水素基を指す。したがって、「アルキル」基は任意の炭素炭素二重結合又は任意の炭素炭素三重結合を含まない。「C1~6アルキル」は、1個~6個の炭素原子を有するアルキル基を意味する。好ましい例示的なアルキル基はメチル、エチル、プロピル(例えば、n-プロピル又はイソプロピル)、又はブチル(例えばn-ブチル、イソブチル、sec-ブチル又はtert-ブチル)である。
【0014】
本明細書で使用される場合、「アルキレン」という用語はアルカンジイル基、すなわち直鎖又は分岐であり得る二価飽和非環式炭化水素基を指す。「C1~3アルキレン」は、1個~3個の炭素原子を有するアルキレン基を意味する。好ましい例示的なアルキレン基は、メチレン(-CH-)、エチレン(例えば、-CH-CH-又は-CH(-CH)-)、又はプロピレン(例えば、-CH-CH-CH-、-CH(-CH-CH)-、-CH-CH(-CH)-又は-CH(-CH)-CH-)である。
【0015】
本明細書で使用される場合、「シクロアルキル」という用語は単環式環、並びに架橋環系、スピロ環系及び/又は縮合環系(例えば2つ又は3つの環で構成され得る;例えば、2つ又は3つの縮合環で構成される縮合環系等)を含む飽和炭化水素環基を指す。「シクロアルキル」は、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル又はアダマンチルを指す場合がある。
【0016】
「ハロゲン」はF、Cl、Br及びI、より好ましくはF又はCl、更により好ましくはFを表す。
【0017】
「ヘテロアリーレン」という用語は、環中の炭素原子の1つ以上がN、O及びSから選択される同じ又は異なるヘテロ原子の1つ、2つ又は3つに置き換えられた5員又は6員の二価芳香環を指す。ヘテロアリーレン基の例としては、フラン、チオフェン、ピリジン、ピリミジン、ピリダジン、ピラジン、ピロール、イミダゾール、ピラゾール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、オキサジアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等が挙げられる。
【0018】
本明細書で使用される場合、「任意の」、「任意に」及び「してもよい(may)」という用語は、指定の特徴が存在し得るが、存在していなくてもよいことを意味する。「任意の」、「任意に」又は「してもよい」という用語が使用される場合、本発明は両方の可能性、すなわち、対応する特徴が存在する可能性、又は代替的には対応する特徴が存在しない可能性に具体的に関する。例えば、「XがYで任意に置換される」(又は「XがYで置換されていてもよい」)という表現は、XがYで置換されているか、又は非置換であることを意味する。同様に、組成物の構成要素が「任意」であると指定される場合、本発明は両方の可能性、すなわち、対応する構成要素が存在する可能性(組成物中に含有される)、又は対応する構成要素が組成物に存在しない可能性に具体的に関する。
【0019】
化合物又は部分が「任意に置換された」と呼ばれる場合、該化合物又は部分は、それぞれ、1以上の指定の置換基を含んでもよく、ここで、置換基は同一であってもよく、又は異なってもよい。
【0020】
「薬学的に許容可能な塩」という用語は、本発明の化合物の塩を指す。好適な薬学的に許容可能な塩として、例えば、本発明の化合物の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸、又はリン酸等の薬学的に許容可能な酸の溶液と混合することにより形成され得る酸付加塩が挙げられる。さらに、化合物が酸性部分を持つ場合、その好適な薬学的に許容可能な塩として、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩);アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩);及び好適な有機リガンド(例えばハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、及びアリールスルホン酸イオン等の対陰イオンを使用して形成される、アンモニウム陽イオン、第四級アンモニウム陽イオン、及びアミン陽イオン)で形成される塩が挙げられ得る。薬学的に許容可能な塩の実例として、限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、酒石酸水素塩、ホウ酸塩、臭化物、酪酸塩、エデト酸カルシウム、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、クラブラン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、二グルコン酸塩、二塩酸塩、ドデシル硫酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストル酸塩、エシル酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルセプト酸塩、グルコヘプトン酸塩、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコリルアルサニル酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヘキシルレゾルシン酸塩、ヒドラバミン、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イソチオネート(isothionate)、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、ナプシル酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、N-メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩(エンボン酸塩(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、ポリガラクツロ酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩、トリエチオジド(triethiodide)、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等が挙げられる(例えば、S. M. Berge et al., "Pharmaceutical Salts", J. Pharm. Sci., 66, pp. 1-19 (1977)を参照されたい)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はそれらの混合物の形態の式(I):
【化1】
の化合物に関する。
【0022】
式(I)の化合物において、Rは-水素、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)からなる群から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、好ましくは-(C1~3アルキル)又は-CH-シクロプロピルである。Rは、より好ましくは-(C1~3アルキル)である。
【0023】
は-水素、-ハロゲン、ニトロ、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよい。Rは、好ましくは-ハロゲン、ニトロ又は-(C1~6アルキル)であり、ここで、C1~6アルキルは1つ以上のフッ素で任意に置換される。Rは、より好ましくは-(C1~6アルキル)である。
【0024】
は2-アミノ-2-アダマンタンカルボン酸、シクロヘキシルグリシン及び9-アミノ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸から選択される。Rは、好ましくは以下の式:
【化2】
を有する基である。
【0025】
基Z
Zは、キレーターを含む任意の基であり得る。他に指定のない限り、式(I)中のZが本発明において規定される放射性核種を含まないことが好ましい。
【0026】
Zは、好ましくはリンカー基及びキレーター基を含む。より好ましくは、Zは-(リンカー基)-(キレーター基)である。リンカー基及びキレーター基は、好ましくは下記で規定される通りである。
【0027】
基Zはまた、以下の部分構造:
【化3】
の1つ又は2つ又は3つの基を含んでいてもよい。
【0028】
これらの部分構造において、R、R及びRの定義は、独立して式(I)に関して上記で規定される通りである。基Zがかかる部分構造を含む場合、式(I)の化合物は、おそらくは受容体との2つ以上の非共有結合相互作用の複数の親和力の強度の蓄積のためにニューロテンシン受容体に対して増強された結合活性を示すことが予想される多量体構造を形成する。かかる多量体構造の最も重要な有益な効果は、単量体と比較して改善されたin vivoでの腫瘍取込み、更には顕著に改善された腫瘍貯留性、ひいては改善されたイメージング及び療法の特性であり得る。
【0029】
リンカー基
一般にスペーサーとも称されるリンカー基は、分子の2つの部分を隔てる基である。本発明では、リンカー基は、キレーター基及びZとは異なる式(I)の構造の部分の両方と共有結合を形成する。リンカー基は原則として、キレーター基及びZとは異なる式(I)の構造の部分の両方と結合を形成することが可能な任意の化学基であり得る。リンカー基自体がニューロテンシン受容体に結合しないことが好ましい。好ましくは、リンカー基は、好ましくは本明細書で規定される放射性核種とは異なるH、B、C、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br及びIから選択される原子のみを含有する。
【0030】
本発明において使用することができるリンカー基の例は、-N(R)-、-C1~10アルキレン-、-C(O)-、-O-、-ヘテロアリーレン-、-フェニレン-、-S-、-S(O)-及び-S(O)-から選択される1つ以上の基を含有し、
ここで、各Rは独立して水素及びC1~6アルキルから選択され、
各C1~10アルキレンは、独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換され、
各ヘテロアリーレンは、独立してN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換され、
各フェニレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換される。
【0031】
さらに、リンカー基は、リンカー基の主鎖の好ましくは-C1~10アルキレン-部分中の1つ又は2つ又は3つの水素残基が側鎖(複数の場合もある)に置き換えられることによってリンカー基の主鎖に付着することができる1つ又は2つ又は3つの側鎖を含んでいてもよい。これらの側鎖は-N(R)-、-C1~10アルキレン-、-C(O)-、-O-、-ヘテロアリーレン-、-フェニレン-、-S-、-S(O)-及び-S(O)-から選択される1個~10個、好ましくは1個~8個の基を含むことができ、-Hで終端されるが、ここで、R及び他の基の任意の置換基の定義は、リンカー基の主鎖について規定される通りである。
【0032】
リンカー基は、好ましくは-N(R)-、-C1~10アルキレン-、-C(O)-、-O-、-ヘテロアリーレン-、-フェニレン-、-S-、-S(O)-及び-S(O)-から選択される1つ以上の基からなる。
【0033】
本発明では、リンカー基が3個~15個、より好ましくは3個~12個、更により好ましくは3個~10個、最も好ましくは4個~8個の上記の基を含むか、又はそれからなることが好ましい。
【0034】
さらに、当業者には明らかなように、リンカー基中の2つの隣接基は、特に25℃の水性媒体中及び1atmの圧力において安定しない部分構造を生じ得る2つの基の間の直接結合が回避されるように選ばれるものとする。この観点から、-N(R)-N(R)-、-C(O)-C(O)-、-O-O-、-S-S-、-S(O)-S(O)-、-S(O)-S(O)-、-N(R)-O-、-O-N(R)-、-N(R)-S-、-S-N(R)-、-N(R)-S(O)-、-S(O)-N(R)-、-C(O)-S-、-S-C(O)-、-C(O)-S(O)-、-S(O)-C(O)-、-C(O)-S(O)-、-S(O)-C(O)-、-S-O-、-O-S-、-S(O)-O-、-O-S(O)-、-S(O)-S-、-S-S(O)-、-S(O)-S-、-S-S(O)-、S(O)-S(O)-及び-S(O)-S(O)-等の組合せは、好ましくは除外される。
【0035】
さらに、組合せ-C1~10アルキレン-C1~10アルキレン-、-ヘテロアリーレン-ヘテロアリーレン-及び-フェニレン-フェニレン-が除外されることが好ましい。
【0036】
本発明において特に関心が持たれるリンカー基の側鎖の一例は、以下のようなものである:
【化4】
【0037】
この基は、アルブミンに良好に結合することが見出されており、或る特定の化合物の血漿半減期及びバイオアベイラビリティを増大させるために使用することができる(Angew. Chem., Int. Ed. 2008, 47(17) 3196-3201)。
【0038】
より好ましいリンカー基の群は、-(X)-(式中、pは1~10の整数である)によって表される。好ましくは、pは1~8、1~6、1~5、1~4又は1~3の整数である。
【0039】
各Xは、好ましくは独立して、
(a)-(N(R)-C1~10アルキレン)-、
(b)-(N(R)-ヘテロアリーレン)-、
(c)-(N(R)-C(O))-、
(d)-(O-C1~10アルキレン)-、
(e)-(O-ヘテロアリーレン)-、
(f)-(O-C(O))-、
(g)-(C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン)-、
(h)-(C1~10アルキレン-C(O))-、
(i)-(C(O)-C1~10アルキレン)-、
(j)-(C(O)-ヘテロアリーレン)-、
(k)-(ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン)-、
(l)-(ヘテロアリーレン-C(O))-、及び、
(m)-(C1~10アルキレン)-から選択される。
【0040】
各Xにおいて、C1~10アルキレンは、独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換される。
【0041】
各Xにおいて、ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換される。
【0042】
各Rは、独立して水素及びC1~6アルキルから選択される。
【0043】
特に好ましいリンカー基は、
(i)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、
(ii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、及び、
(iii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-から選択される。
【0044】
これらの好ましい例では、各C1~10アルキレンは、独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換される。ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換される。各Rは、独立して水素及びC1~6アルキルから選択される。好ましくは、各Rは、独立してH、メチル、エチル、n-プロピル及びイソプロピルから選択される。
【0045】
キレーター基
キレーター基は、金属イオンと結合及び/又は錯体形成し、金属イオンを含む複素環を形成することが可能な基である。金属イオンは、放射性核種として規定される金属イオンを含む。好ましくは、キレーター基は、好ましくは本明細書で規定される放射性核種とは異なるH、B、C、N、O、F、Si、P、S、Cl、Br及びIから選択される原子のみを含有する。
【0046】
かかるキレーターは当業者に既知である。多種多様なそれぞれのキレーターが利用可能であり、Banerjee et al.によってまとめられている(Banerjee et al., Nucl. Med. Biol., 2005, 32, 1-20及びその参照文献、Wadas et al., Chem. Rev., 2010, 110, 2858-2902及びその参照文献)。かかるキレーターとしては、米国特許第5,367,080号、米国特許第5,364,613号、米国特許第5,021,556号、米国特許第5,075,099号及び米国特許第5,886,142号に開示される直鎖、大環状、テトラピリジン、NS、N及びNキレーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
好適なキレーターの更なる例は、米国特許第5,720,934号及びDoulias et al.(Doulias et al., Free Radio. Biol. Med., 2003, 35, 719-728)に開示されている。
【0048】
上記のキレーターの幾つかの診断的及び/又は治療的使用が従来技術において記載されている。例えば、2-ヒドラジノニコチンアミド(HYNIC)は、99mTc及び186,188Reの組込みのための共リガンド(coligand)の存在下で広く使用されている(Schwartz et al., Bioconj. Chem., 1991, 2, 333-336、Babich et al., J. Nucl. Med., 1993, 34, 1964-1970、Babich et al., Nucl. Med. Biol., 1995, 22, 25-30)。DTPAは、Octreoscan(商標)(Covidien)において111Inの錯体形成のために使用され、幾つかの改変が文献に記載されている(Brechbiel et al., Bioconj. Chem., 1991, 2, 187-194、Li et al., Nucl Med. Biol, 2001, 28, 145-154)。DOTAタイプのキレーターは、Tweedle et al.(米国特許第4,885,363号)により放射線療法用途に報告されている。三価同位体金属のキレート化のための或る特定のポリアザ大員環が、Maecke et al.(Maecke et al., Bioconj. Chem., 2002, 13, 530-541)に開示されている。99mTc-Nキレーター等のNキレーターは、CCK-2受容体を標的化するミニガストリンの場合にペプチド標識化に使用されている(Nock et al., J. Nucl Med., 2005, 46, 1727-1736)。
【0049】
三価金属又は五価金属及びそれらの近縁類似体のための金属キレーターは、例えば国際公開第2009/109332号に開示されている。二価及び四価放射性核種への上記のキレーターの使用が報告されている(Dalton Transactions 44,11 (2015), 4845-4858、Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals 57,4 (2014), 224-230、Nuclear Medicine and Biology 40,1 (2013), 3-14、及びChemical Society Reviews 43,1 (2014), 260-290)。
【0050】
N’-{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)が、Zr放射性核種に特に好ましいキレーターとして報告されている(Nuclear Medicine and Biology 40,1 (2013), 3-14)。
【0051】
キレーター基は、好ましくは-(8個~40個の炭素原子、2個~12個の窒素原子、並びに任意に1個~10個の酸素原子、及び/又は任意に1個~5個の硫黄原子、及び/又は任意に1個~5個のリン原子を含有する炭化水素基)である。
【0052】
キレーター基の好ましい例はカルボン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸及びヒドロキシルアミンから選択される少なくとも2つの基を含む。
【0053】
キレーター基の好ましい例は、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、2,2’,2’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、N,N’-ビス-[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED-CC)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N’-{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N-グルタル酸-N’,N’’-二酢酸(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-四酢酸(TRITA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、1-[2-(2-メルカプト-2-メチル-プロピルアミノ)-エチルアミノ]-2-メチル-プロパン-2-チオール(BAT)、6-ヒドラジノ-ニコチン酸(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]及び1,4,7-トリアザシクロノナンホスフィン酸から選択される。
【0054】
これらのキレーター基は、任意の方法でリンカー基に付着させることができる。例えば、キレーター基はキレーター基の複素環若しくは鎖内の窒素原子を介して、又はキレーター基の側鎖の1つのカルボン酸を介してリンカー基に付着させることができる。
【0055】
或る特定のキレーター基は、以下の部分式:
【化5】
(式中、Tは-[(CR (NR)](CR -である)によって表現することができる。
【0056】
結合は環中の窒素原子に描かれるが、かかるキレーター基は、キレーター基の他の基を介して、例えば側鎖を介して式(I)の化合物の残りの部分に結合していてもよい。
【0057】
各Rは、独立して-水素、-ハロゲン、-OH、-C1~6アルキル及び-O-C1~6アルキルから選択される。好ましくは、各Rは-水素である。
【0058】
各Rは、独立して-水素、-C1~6アルキル、-(C1~6アルキレン)-COOH、-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-COOH及び-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-OHから選択される。好ましくは、各RはC1~3アルキレン-COOHである。
【0059】
各mは、独立して1~4の整数である。好ましくは、各mは2又は3である。
【0060】
qは3~5の整数である。好ましくは、qは3である。
【0061】
放射性核種
放射性核種は、不安定であると考えられる周期表の元素の同位体である。かかる放射性核種の核は概して、電磁放射線、例えばγ放射線、又は小粒子、例えばα放射線若しくはβ放射線を放出する。本発明では、放射性核種は、好ましくは1022年未満、より好ましくは1010年未満、更により好ましくは10年未満、更により好ましくは100年未満、最も好ましくは1年未満の半減期を有する周期表の元素の同位体である。幾つかの好ましい放射性核種は、1週間未満の半減期を有する。
【0062】
本発明では、放射性核種は好ましくはF-18、P-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Cr-51、Fe-52、Fe-59、Mn-51、Mn-52m、Co-55、Co-57、Co-58、Cu-62、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、As-72、Se-75、As-77、Br-76、Br-75、Br-77、Br-80m、Br-82、Rb-82m、Sr-83、Sr-89、Y-86、Y-90、Zr-89、Mo-99、Tc-94m、Tc-99m、Ru-97、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-110、In-111、In-113m、In-114m、Sb-119、Sn-121、Te-127、I-120、I-123、I-124、I-125、I-129、I-131、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Sm-153、Dy-152、Dy-166、Gd-157、Gd-159、Ho-161、Tb-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Re-189、Rd-188、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、Hg-197、Tl-201、Pb-203、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、At-211、At-217、Po-215、Ra-223、Rn-219、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される。
【0063】
放射性核種はより好ましくはP-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Co-58、Fe-59、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、Se-75、As-77、Br-80m、Sr-89、Zr-89、Y-90、Mo-99、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-111、Sb-119、Sn-121、I-123、I-125、I-129、I-131、Te-127、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Dy-152、Dy-166、Sm-153、Gd-159、Tb-161、Ho-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Rd-188、Re-189、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、At-211、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、Po-215、At-217、Rn-219、Ra-223、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される。
【0064】
更により好ましくは、放射性核種はLu-177、Y-90、Cu-64、Ga-67、Ga-68、Sc-44、Zr-89及びIn-111から選択される。
【0065】
本発明では、放射性核種を通常、放射性核種の塩の形態で式(I)の化合物と反応させる。これらの塩は、放射性核種のイオン及び少なくとも1つの更なるイオンを含む。放射性核種が陽イオンである場合、他のイオンの1つが、例えば酢酸イオン、重炭酸イオン、臭化物イオン、炭酸イオン、塩素酸イオン、塩化物イオン、リン酸二水素イオン、フッ化物イオン、リン酸水素イオン、硫酸水素イオン、水酸化物イオン、ヨウ化物イオン、硝酸イオン、窒化物イオン、亜硝酸イオン、リン酸イオン、硫酸イオン、硫化物イオン及び亜硫酸イオンから選択され得る陰イオンである。放射性核種が陰イオンである場合、他のイオンの1つが、例えばアンモニウムイオン、リチウムイオン、ナトリウムイオン、マグネシウムイオン、アルミニウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン及びガリウムイオンから選択され得る陽イオンである。かかる塩の例としては、Lu(NO、Y(NO、Cu(NO、Ga(NO、Zr(NO、In(NO、LuCl、YCl、CuCl、GaCl、ZrCl及びInClが挙げられる。
【0066】
放射性核種を含まない式(I)の化合物を調製する方法
構造Cを有する本願の化合物は、溶媒及び塩基の存在下での化合物AとキレーターBの活性化誘導体との反応によって調製することができる。典型的なアシル化反応におけるカルボキシル基の活性化誘導体の例は、文献(例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart等の標準著作物)中に記載されている。活性化エステルは、例えばHOBt(1-ヒドロキシベンゾトリアゾール)又はN-ヒドロキシスクシンイミドの添加によってin situで形成することができる。
【化6】
【0067】
好ましい溶媒はジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド及びアセトニトリルの群から選ばれる。反応は通常、不活性雰囲気下で行われる。好ましい塩基は、トリエチルアミン及びジイソプロピルエチルアミンから選ばれる。反応は20℃~90℃の範囲の温度、好ましくは30℃で1時間~48時間の範囲、好ましくは24時間にわたって行うことができる。「活性化」と示される基はO-スクシンイミド、酸ハロゲン化物又は酸無水物であり得る。変数n1は1~10である。
【0068】
構造Fの化合物は溶媒、銅源及び還元剤の存在下での化合物Dとアジド誘導キレーターEとの反応によって調製することができる。
【化7】
【0069】
好ましい溶媒は、水を添加した又は添加しないテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド及びt-ブタノールの群から選ばれる。反応は通例、不活性雰囲気下で行われ、CuSO、CuI、銅炭(copper on charcoal:銅-活性炭)又はCu(OAc)等の銅源を添加する。反応は、好ましくはアスコルビン酸である還元剤の存在下又は非存在下で行われる。反応温度は20℃~90℃、好ましくは25℃~35℃の範囲で変化する。典型的な反応時間は1時間~48時間の範囲、好ましくは約24時間である。変数n2及びn3は、独立して1~10である。
【0070】
構造D及びEの化合物は、文献の手順に従って得ることができる(Efficient Synthesis of Heterocyclic Neurotensin Receptor Ligands by Microwave Assisted Aminocarbonylation, Christopher Lang and Peter Gmeiner, Synthesis (2013)、及び""Click" chemistry toward bis (DOTA-derived) heterometallic complexes: potential bimodal MRI/PET (SPECT) molecular imaging probes." Suchy, Mojmir, Robert Bartha, and Robert HE Hudson, RSC Advances 3,10 (2013): 3249-3259;金属キレート化系に適用されるCuAAC化学に関する最近の概説については、H. Struthers, T. L. Mindt and R. Schibli, Dalton Trans., 2010, 39, 675を参照されたい)。
【0071】
構造Kの化合物は溶媒、銅源及び還元剤の存在下での化合物Gとアジド誘導キレーターHとの反応によって調製することができる。
【化8】
【0072】
好ましい溶媒は、水を添加した又は添加しないテトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド及びt-ブタノールの群から選ばれる。反応は通例、不活性雰囲気下で行われ、CuSO、CuI、銅炭又はCu(OAc)から選ぶことができる銅源を通例、添加する。反応は、好ましくはアスコルビン酸である還元剤の存在下又は非存在下で行われる。反応温度は通常、20℃~90℃、好ましくは25℃~35℃の範囲である。典型的な反応時間は1時間~48時間の範囲、好ましくは約24時間である。
【0073】
式(G)の化合物の調製に用いることができる反応の更なる例は、非特許文献11及び"Efficient Synthesis of Heterocyclic Neurotensin Receptor Ligands by Microwave Assisted Aminocarbonylation" by Lang, C. and Gmeiner, P., Synthesis 2013, 45, 2474-2480に記載されている。
【0074】
薗頭反応は、"A Booming Methodology in Synthetic organic Chemistry" by Chinchilla, R. and Najera, C. in Chem. Rev., 2007, 107 (3), 874-922に概説されている。
【0075】
式(I)の化合物と放射性核種とを反応させる方法
本発明は、本発明による式(I)の化合物と1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを反応させ、式(I)の化合物と1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種との錯体を得ることを含む方法に更に関する。
【0076】
この反応は、好ましくは緩衝液を更に含んでいてもよい水を含む溶媒中で行われる。緩衝液は、好ましくは4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸又は酢酸ナトリウムである。
【0077】
本発明による方法では、反応を行う溶液のpHは、好ましくは2~7、より好ましくは4~6、最も好ましくは4.5~5.5の範囲である。さらに、反応を好ましくは20℃~100℃、より好ましくは50℃~98℃、最も好ましくは85℃~95℃の範囲の温度で行う。
【0078】
反応を好ましくは5分間~30分間、より好ましくは7分間~15分間、最も好ましくは8分間~12分間にわたって行う。
【0079】
このタイプの合成は、文献中に報告されている("Syntheses, Receptor Bindings, in vitro and in vivo Stabilities and Biodistributions of DOTA-Neurotensin(8-13) Derivatives Containing Beta-Amino Acid Residues - A Lesson about the Importance of Animal Experiments" by Sparr, Christof; Purkayastha, Nirupam; Yoshinari, Tomohiro; Seebach, Dieter; Maschauer, Simone; Prante, Olaf; Huebner, Harald; Gmeiner, Peter; Kolesinska, Beata; Cescato, Renzo; Waser, Beatrice; and Claude Reubi, Jean; Biodiversity 2013, 10, 2101-212、"18F- and 68Ga-labeled Neurotensin Peptides for PET Imaging of Neurotensin Receptor 1" by Maschauer, Simone; Einsiedel, Juergen; Huebner, Harald; Gmeiner, Peter; and Prante. Olaf; J. Med. Chem. 2016, in press)。
【0080】
さらに、同様の反応が多数の概説にまとめられている(Brasse, David, and Aline Nonat; "Radiometals: towards a new success story in nuclear imaging?"; Dalton Transactions 44.11 (2015): 4845-4858、Cai, Zhengxin, and Anderson, C. J.; "Chelators for copper radionuclides in positron emission tomography radiopharmaceuticals"; Journal of Labelled Compounds and Radiopharmaceuticals 57.4 (2014): 224-230、Deri, Melissa A., et al.; "PET imaging with 89Zr: from radiochemistry to the clinic"; Nuclear Medicine and Biology 40.1 (2013): 3-14、Price, Eric W., and Orvig, C.; "Matching chelators to radiometals for radiopharmaceuticals"; Chemical Society Reviews 43.1 (2014): 260-290)。
【0081】
組成物、錯体及びキット
本発明は、任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー若しくはジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態の本発明の方法によって得られる錯体に更に関する。
【0082】
本発明の錯体では、少なくとも1つのタイプの放射性核種が式(I)の化合物に結合し、及び/又は錯体形成する。かかる結合及び/又は錯体形成は通例、キレーター基と放射性核種との相互作用によって達成される。
【0083】
本発明は、任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー若しくはジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態の本発明による化合物と、1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを含む組成物又は錯体に更に関する。
【0084】
本発明は、医薬組成物であって、(i)本発明の化合物、組成物又は錯体、及び任意に(ii)薬学的に許容可能な添加剤を含む、医薬組成物にも関する。
【0085】
医薬組成物に使用される薬学的に許容可能な添加剤は、1つ以上の増量剤、担体、希釈剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、着色剤、顔料、安定剤、保存料、酸化防止剤及び/又は溶解促進剤を含む。好ましい添加剤は、酸化防止剤及び溶解促進剤である。
【0086】
希釈剤は好ましくは、例えばリン酸緩衝液であり得る注射に使用される緩衝液である。さらに、希釈剤はアラビノース、ラクトース、デキストロース、スクロース、フルクトース、マルトース、マンニトール、エリトリトール、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール及びそれらの誘導体等の単糖、二糖、多糖及び糖アルコールを含む糖類を含み得る。
【0087】
本発明の化合物、組成物及び錯体の注射可能な(Injectionable)溶液は、例えば10%の最大エタノール含量を有する生理食塩水又は等張緩衝液中で配合することができる。安定剤の好ましい例は、ゲンチジン酸(2,5-ジヒドロキシ安息香酸)である。アスコルビン酸ナトリウムが好ましくは酸化防止剤として添加される。
【0088】
本発明は、式(I)の化合物と1つ以上の放射性核種とを含むキットも提供する。放射性核種の例は上に記載される。
【0089】
本発明の化合物によって治療、診断又は予防することができる障害
本発明は、医学における、特に障害の診断、治療又は予防への使用のための本明細書に記載される化合物、組成物又は錯体の使用にも関する。
【0090】
腫瘍及び血液悪性疾患を含む様々な障害を、本発明の化合物を用いて診断、治療又は予防することができる。ニューロテンシン受容体に関わる障害が好ましい。より好ましくは、障害はニューロテンシン受容体1に関わる障害である。
【0091】
癌関連障害の具体例は前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、下垂体癌及び乳癌である。
【0092】
本発明の化合物を結晶形態で提供する場合、その構造は溶媒分子を含有していてもよい。溶媒は通例、薬学的に許容可能な溶媒であり、特に水(水和物)又は有機溶媒を含む。考え得る溶媒和物の例としては、エタノレート及びイソプロパノレートが挙げられる。
【0093】
さらに、本発明の範囲は、例えば水との溶媒和物、例えば水和物、若しくは例えばメタノール、エタノール若しくはアセトニトリル等の有機溶媒との溶媒和物、すなわち、それぞれメタノレート、エタノレート若しくはアセトニトリレート(acetonitrilate)を含む任意の溶媒和形態、又は任意の多形の形態の式(I)の化合物を包含する。このような式(I)の化合物の溶媒和物が式(I)の化合物の薬学的に許容可能な塩の溶媒和物も含むことが理解される。
【0094】
さらに、式(I)の化合物は種々の異性体、特に立体異性体(例えば、幾何異性体(すなわちシス/トランス異性体)、エナンチオマー及びジアステレオマーを含む)又は互変異性体の形態で存在していてもよい。このような式(I)の化合物の異性体は全て、混和物中の又は純粋な若しくは実質的に純粋な形態で本発明の一部であると企図される。立体異性体に関して、本発明は本発明による化合物の単離光学異性体、及びその任意の混合物(特にラセミ混合物/ラセミ体を含む)を包含する。ラセミ体は、例えばジアステレオマー誘導体の分別結晶化、分離若しくは結晶化、又はキラルカラムクロマトグラフィーによる分離等の物理的方法によって分割することができる。個々の光学異性体は、光学活性酸との塩形成に続く結晶化によりラセミ体から得ることもできる。本発明は、本明細書で提供される化合物の任意の互変異性体を更に包含する。
【0095】
本発明の範囲は、1つ以上の原子が対応する原子の特定の同位体に置き換えられた式(I)の化合物も包含する。例えば、本発明は、1つ以上の水素原子(又は、例えば全ての水素原子)が重水素原子(すなわち、H;「D」とも称される)に置き換えられた式(I)の化合物を包含する。
【0096】
本明細書で提供される化合物は、化合物自体として投与しても、又は薬剤として配合してもよい。薬剤/医薬組成物は担体、希釈剤、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、結合剤、着色剤、顔料、安定剤、保存料、酸化防止剤及び/又は溶解促進剤等の1つ以上の薬学的に許容可能な添加剤を任意に含んでいてもよい。
【0097】
さらに、本明細書で提供される化合物は単回投与、又は好ましくは複数回投与にて投与することができる。
【0098】
特に、医薬組成物は、例えば約200Da~約5000Daの範囲の分子量を有するポリ(エチレングリコール)を含むポリ(エチレングリコール)、エチレングリコール、プロピレングリコール、非イオン性界面活性剤、チロキサポール、ポリソルベート80、マクロゴール-15-ヒドロキシステアレート、リン脂質、レシチン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、シクロデキストリン、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテル-γ-シクロデキストリン、グルコシル-α-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、ジグルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-α-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-γ-シクロデキストリン、マルトトリオシル-β-シクロデキストリン、マルトトリオシル-γ-シクロデキストリン、ジマルトシル-β-シクロデキストリン、メチル-β-シクロデキストリン、カルボキシアルキルチオエーテル、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドン、酢酸ビニルコポリマー、ビニルピロリドン、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウム、又は任意のそれらの組合せ等の1つ以上の溶解促進剤を含んでいてもよい。
【0099】
医薬組成物は、"Remington: The Science and Practice of Pharmacy", Pharmaceutical Press, 22nd editionに公表されている技法等の当業者に既知の技法によって配合することができる。
【0100】
式(I)の化合物又は式(I)の化合物を含む上記の医薬組成物は、全身/末梢へのものか、又は所望の作用部位でのものかを問わず、任意の好都合な投与経路により被験体に投与することができる。非経口投与が好ましい。これには例えば、注射法又は注入法を用いることが含まれ、例えば注射、例えば皮下注射、皮内注射、筋肉内注射、静脈注射、動脈注射、心内注射、髄腔内注射、脊髄内注射、嚢内注射、嚢下(subcapsular)注射、眼窩内注射、腹腔内注射、気管内注射、表皮下注射、関節内注射、くも膜下注射又は胸骨内(intrasternal)注射、最も好ましくは静脈注射によるものが含まれる。
【0101】
化合物又は医薬組成物を非経口的に投与する場合、化合物は他の物質、例えば溶液を血液と等張にするのに十分な塩又はグルコースを含有していてもよい滅菌水溶液の形態で最もよく使用される。水溶液は、必要に応じて(好ましくは3~9のpHまで)適切に緩衝化されるものとする。滅菌条件下での好適な非経口配合物の調製は、当業者に既知の標準的な(放射性)製薬法によって容易に達成される。
【0102】
本明細書では、特許出願及び科学論文を含む多数の文献が引用される。これらの文献の開示は、本発明の特許性と関連すると考えられるものではないが、その全体が引用することにより本明細書の一部をなす。より具体的には、全ての参照文献が、個々の文献の各々が具体的かつ個別に引用することにより本明細書の一部をなすことが示される場合と同じ程度に、引用することにより本明細書の一部をなす。
【0103】
本発明は、以下の項目1~36にまとめることができる:
(1)任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー、ジアステレオマー又はそれらの混合物の形態の式(I):
【化9】
(式中、
は-水素、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)からなる群から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、
は-水素、-ハロゲン、ニトロ、-(C1~6アルキル)、-(C3~6シクロアルキル)及び-(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)から選択され、ここでC1~6アルキル、C3~6シクロアルキル、並びに(C1~3アルキレン-C3~6シクロアルキル)中のC1~3アルキレン及びC3~6シクロアルキルは、1つ以上のハロゲン原子で置換されていてもよく、
は2-アミノ-2-アダマンタンカルボン酸、シクロヘキシルグリシン及び9-アミノ-ビシクロ[3.3.1]ノナン-9-カルボン酸から選択され、
Zはキレーター基を含む)の化合物。
(2)Rが-(C1~3アルキル)である、項目1による式(I)の化合物。
(3)Rが-(C1~6アルキル)である、項目1又は2による式(I)の化合物。
(4)Rが、
【化10】
である、項目1~3のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(5)キレーター基が-(8個~40個の炭素原子、2個~12個の窒素原子、並びに任意に1個~10個の酸素原子、及び/又は任意に1個~5個の硫黄原子、及び/又は任意に1個~5個のリン原子を含有する炭化水素基)である、項目1~4のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(6)キレーター基がカルボン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸及びヒドロキシルアミンから選択される少なくとも2つの基を含む、項目1~5のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(7)基Zが、以下の部分構造:
【化11】
(式中、R、R及びRの定義は、独立して項目1~5のいずれか1つに規定される通りである)の1つ又は2つ又は3つの基を含む、項目1~6のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(8)キレーター基が1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)、2,2’,2’’-(1,4,7-トリアゾナン-1,4,7-トリイル)三酢酸(NOTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-二酢酸(NODA)、N,N’-ビス-[2-ヒドロキシ-5-(カルボキシエチル)ベンジル]エチレンジアミン-N,N’-二酢酸(HBED-CC)、3,6,9,15-テトラアザビシクロ[9.3.1]-ペンタデカ-1(15),11,13-トリエン-3,6,9,-三酢酸(PCTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N’-{5-[アセチル(ヒドロキシ)アミノ]ペンチル}-N-[5-({4-[(5-アミノペンチル)-(ヒドロキシ)アミノ]-4-オキソブタノイル}アミノ)ペンチル]-N-ヒドロキシスクシンアミド(DFO)、1,4,8,11-テトラアザシクロドデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA)、エチレンジアミン-N,N’-四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-N-グルタル酸-N’,N’’-二酢酸(NODAGA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1-コハク酸-4,7-二酢酸(NODASA)、1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン-1,4,7,10-四酢酸(TRITA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン-N,N,N’,N’-四酢酸(CDTA)、1-[2-(2-メルカプト-2-メチル-プロピルアミノ)-エチルアミノ]-2-メチル-プロパン-2-チオール(BAT)、6-ヒドラジノ-ニコチン酸(HYNIC)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4-ビス[メチレン(ヒドロキシメチル)ホスフィン酸]-7-[メチレン(2-カルボキシエチル)ホスフィン酸]及び1,4,7-トリアザシクロノナンホスフィン酸から選択される、項目1~7のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(9)キレーター基が、
【化12】
(式中、Tは-[(CR (NR)](CR -であり、
ここで、
各Rは独立して-水素、-ハロゲン、-OH、-C1~6アルキル及び-O-C1~6アルキルから選択され、
各Rは独立して-水素、-C1~6アルキル、-(C1~6アルキレン)-COOH、-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-COOH、-(C1~3アルキレン)-P(O)(OH)-(C1~3アルキレン)-OHから選択され、
各mは独立して1~4の整数であり、
qは3~5の整数である)である、項目1~7のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(10)各Rが-水素である、項目9による式(I)の化合物。
(11)各RがC1~3アルキル-COOHである、項目9又は10による式(I)の化合物。
(12)各mが2又は3である、項目9~11のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(13)qが3である、項目9~12のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(14)Zが-(リンカー基)-(キレーター基)であり、該リンカー基が-(X)-であり、ここで、
pは1~10の整数であり、
各Xは独立して、
(a)-(N(R)-C1~10アルキレン)-、
(b)-(N(R)-ヘテロアリーレン)-、
(c)-(N(R)-C(O))-、
(d)-(O-C1~10アルキレン)-、
(e)-(O-ヘテロアリーレン)-、
(f)-(O-C(O))-、
(g)-(C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン)-、
(h)-(C1~10アルキレン-C(O))-、
(i)-(C(O)-C1~10アルキレン)-、
(j)-(C(O)-ヘテロアリーレン)-、
(k)-(ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン)-、
(l)-(ヘテロアリーレン-C(O))-、及び、
(m)-(C1~10アルキレン)-から選択され、
ここで、各C1~10アルキレンは独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換され、
ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、該ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換され、
各Rは独立して水素及びC1~6アルキルから選択される、項目1~13ののいずれか1つによる式(I)の化合物。
(15)pが1~5の整数である、項目14による式(I)の化合物。
(16)リンカー基が、
(i)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、
(ii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-ヘテロアリーレン-C1~10アルキレン-C(O)-C1~10アルキレン-N(R)-、及び、
(iii)-C1~10アルキレン-N(R)-C1~10アルキレン-N(R)-から選択され、
ここで、各C1~10アルキレンは独立してハロゲン、C(O)OH及びOHから選択される1つ以上で任意に置換され、
ヘテロアリーレンはN、O及びSから選択される1個~3個のヘテロ原子を含む4員~6員のヘテロアリーレンであり、該ヘテロアリーレンは、ハロゲン及びC1~6アルキルから選択される1つ以上で任意に置換され、
各Rは独立して水素及びC1~6アルキルから選択される、項目14又は15による式(I)の化合物。
(17)各Rが独立してH、メチル、エチル、n-プロピル及びイソプロピルから選択される、項目14~16のいずれか1つによる式(I)の化合物。
(18)任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー若しくはジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態の項目1~17のいずれか1つによる化合物と、1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを含む組成物又は錯体。
(19)放射性核種がF-18、P-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Cr-51、Fe-52、Fe-59、Mn-51、Mn-52m、Co-55、Co-57、Co-58、Cu-62、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、As-72、Se-75、As-77、Br-76、Br-75、Br-77、Br-80m、Br-82、Rb-82m、Sr-83、Sr-89、Y-86、Y-90、Zr-89、Mo-99、Tc-94m、Tc-99m、Ru-97、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-110、In-111、In-113m、In-114m、Sb-119、Sn-121、Te-127、I-120、I-123、I-124、I-125、I-129、I-131、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Sm-153、Dy-152、Dy-166、Gd-157、Gd-159、Ho-161、Tb-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Re-189、Rd-188、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、Hg-197、Tl-201、Pb-203、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、At-211、At-217、Po-215、Ra-223、Rn-219、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される、項目18による組成物又は錯体。
(20)放射性核種がP-32、P-33、Sc-44、Sc-47、Co-58、Fe-59、Cu-64、Cu-67、Ga-67、Ga-68、Se-75、As-77、Br-80m、Sr-89、Zr-89、Y-90、Mo-99、Rh-103m、Rh-105、Pd-109、Pt-109、Ag-111、In-111、Sb-119、Sn-121、I-123、I-125、I-129、I-131、Te-127、Pr-142、Pr-143、Pm-149、Pm-151、Dy-152、Dy-166、Sm-153、Gd-159、Tb-161、Ho-161、Ho-166、Er-169、Tm-172、Yb-169、Yb-175、Lu-177、Lu-177m、Re-186、Re-188、Rd-188、Re-189、Os-189m、Ir-192、Ir-194、Au-198、Au-199、At-211、Pb-211、Pb-212、Bi-211、Bi-212、Bi-213、Po-215、At-217、Rn-219、Ra-223、Fr-221、Ac-225、Th-227及びFm-255から選択される、項目18による組成物又は錯体。
(21)放射性核種がLu-177、Y-90、Cu-64、Ga-67、Ga-68、Sc-44、Zr-89及びIn-111から選択される、項目18による組成物又は錯体。
(22)項目1~17のいずれか1つによる式(I)の化合物と1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種とを反応させ、該式(I)の化合物と該1つ以上の診断上又は治療上有効な放射性核種との錯体を得ることを含む方法。
(23)水を含む溶媒中で反応を行う、項目22による方法。
(24)水が緩衝液を更に含む、項目23による方法。
(25)緩衝液が4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸又は酢酸ナトリウムである、項目24による方法。
(26)反応を行う溶液のpHが2~7、好ましくは4~6、より好ましくは4.5~5.5の範囲である、項目22~25のいずれか1つによる方法。
(27)反応を20℃~100℃、好ましくは80℃~98℃、より好ましくは85℃~95℃の範囲の温度で行う、項目22~26のいずれか1つによる方法。
(28)反応を5分間~30分間、好ましくは7分間~15分間、より好ましくは8分間~12分間にわたって行う、項目22~27のいずれか1つによる方法。
(29)任意に薬学的に許容可能な塩、溶媒和物、エステル、多形、互変異性体、ラセミ体、エナンチオマー若しくはジアステレオマー、又はそれらの混合物の形態の項目22~28のいずれか1つによる方法によって得られる錯体。
(30)医学における使用のための項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29に記載の錯体。
(31)障害の診断における使用のための項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29に記載の錯体。
(32)障害の治療又は予防における使用のための項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29に記載の錯体。
(33)障害がニューロテンシン受容体に関わる障害であり、好ましくは障害がニューロテンシン受容体1に関わる障害である、項目31又は32による使用のための化合物、組成物又は錯体。
(34)障害が腫瘍及び血液悪性疾患を含む群から選択される、項目31又は32による使用のための化合物、組成物又は錯体。
(35)障害が前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、下垂体癌及び乳癌からなる群から選択される、項目31又は32による使用のための化合物、組成物又は錯体。
(36)項目1~17のいずれか1つによる診断上有効な量の化合物、又は項目18~21による診断上有効な量の組成物若しくは診断上有効な量の錯体、又は項目29による診断上有効な量の錯体を、それを必要とする患者に投与する、障害を診断する方法。
(37)項目1~17のいずれか1つによる治療上有効な量の化合物、又は項目18~21による治療上有効な量の組成物若しくは治療上有効な量の錯体、又は項目29による治療上有効な量の錯体を、それを必要とする患者に投与する、障害を治療又は予防する方法。
(38)障害がニューロテンシン受容体に関わる障害であり、好ましくは障害がニューロテンシン受容体1に関わる障害である、項目36又は37による方法。
(39)障害が腫瘍及び血液悪性疾患を含む群から選択される、項目36又は37による方法。
(40)障害が前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、下垂体癌及び乳癌からなる群から選択される、項目36又は37による方法。
(41)障害を診断するための薬剤の調製への項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29による錯体の使用。
(42)障害を治療又は予防するための薬剤の調製への項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29による錯体の使用。
(43)障害がニューロテンシン受容体に関わる障害であり、好ましくは障害がニューロテンシン受容体1に関わる障害である、項目41又は42による使用。
(44)障害が腫瘍及び血液悪性疾患を含む群から選択される、項目41又は42による使用。
(45)障害が前立腺癌、肺癌、甲状腺癌、膵癌、結腸癌、直腸癌、下垂体癌及び乳癌からなる群から選択される、項目41又は42による使用。
(46)医薬組成物であって、(i)項目1~17のいずれか1つによる化合物、又は項目18~21による組成物若しくは錯体、又は項目29による錯体、及び任意に(ii)薬学的に許容可能な添加剤を含む、医薬組成物。
(47)項目1~17のいずれか1つによる化合物と1つ以上の放射性核種とを含むキット。
【0104】
本発明の様々な変更及び変形は、本発明の範囲から逸脱することなく、当業者に明らかとなる。本発明を特定の好ましい実施形態に関して記載したが、特許請求の範囲に記載の本発明が、かかる具体的な実施形態に過度に限定されるべきではないことが理解されなければならない。実際、関連する分野の当業者に明らかな記載される本発明を実施するための形態の様々な変更は、本発明によって包含されることが意図される。
【0105】
以下の実施例は、本発明の例証に過ぎず、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲を制限するものではないと解釈されるべきである。
【実施例
【0106】
以下に本発明による化合物の合成、Lu-177での放射標識及びマウスモデルでの前立腺腫瘍の放射線療法における使用の成功を記載する。結果を図1及び図2にも示す。
【0107】
一般的方法
無水条件を必要とする全ての反応は窒素下で行い、使用前に溶媒を適切に乾燥させた。全ての反応を、シリカゲル60 F254プレートを用いたTLCによってモニタリングした。反応の構成要素の可視化は、UV蛍光(254nm)及びKMnO染色を用いて達成した。シリカゲルクロマトグラフィーは、Silicagel 60で行った。報告した収率は精製後のものである。
【0108】
H及び13C NMRスペクトルは重水素化溶媒中で記録したが、化学シフト(δ)はTMS(H及び13C)に対して較正したパーツパーミリオン(ppm)で示す。結合定数(J)はヘルツ(Hz)で測定する。以下の略号を多重度の記載に用いる:s=シングレット、d=ダブレット、t=トリプレット、q=カルテット、b=ブロード、m=マルチプレット。
【0109】
純度及び同一性は、ESIトラップ又はAPCIトラップを備えるBrukerのEsquire 2000質量検出器に接続した分析RP-HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm)によって評価した。生成物の純度は、HPLC-MSから評価した。
系A:溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~3分:10%のメタノール、3分~18分:10%→100%のメタノール、18分~24分:100%のメタノール、24分~30分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分。
系B:溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~11分:10%→100%のメタノール、11分~16分:100%のメタノール、16分~19分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分。
系C:溶媒系としてアセトニトリル/HO 0.1%TFA、以下の勾配系を用いる:0分~21分:10%→100%のアセトニトリル、21分~24分:100%のアセトニトリル、24分~27分:100%→10%のアセトニトリル。
系D:溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~21分:10%→100%のメタノール、21分~24分:100%のメタノール、24分~27分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分。
系E:溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分。
【0110】
実施例1
以下の実施例の生成物14は、国際公開第2014/086499号に記載されているような以前に公開された類似体と比較して非常に有益であった。理論に束縛されることを望むものではないが、これはドーパミン受容体に対する親和性の減少と併せたNTS1受容体に対する選択性の顕著な改善、及びそのin vivoでの腫瘍成長阻害率の増大によるものであると推定される。
【化13】
【0111】
メチル4-(2,6-ジメトキシフェニル)-2,4-ジオキソブチレート(1)
120mlの乾燥メタノール中の7g(38.8mmol)の2,6-ジメトキシアセトフェノンの溶液に、31.6ml(232mmol)のシュウ酸ジエチルを添加した。混合物を0℃に冷却し、1.78g(77.6mmol)のナトリウムで処理し、40℃で18時間撹拌した。pHを2N HClの添加によって弱酸性に調整し、混合物をジエチルエーテル/HOで抽出した。合わせた有機層を乾燥させ、蒸発させ、残渣を冷蔵庫内で2時間保管した。生じた固体を濾過及び冷却エタノールでの洗浄によって液体から分離した。濾液を濃縮し、上記のように処理して、別の生成物画分を得た。固体をメタノールに溶解し、一晩撹拌した。溶媒の蒸発により所望の化合物が黄色の固体(7.9g、87%)として生じた。
H-NMR(360MHz,CDCl) δ(ppm):3.82(s,6H)、3.90(s,3H)、6.58(d,J=8.5Hz,2H)、6.62(s,1H)、7.34(t,J=8.5Hz,1H)、14.3(br s,1H)
【0112】
4-ブロモ-2-イソプロピルアニリン(2)
アセトニトリル(100mL)中の2-イソプロピルアニリン(2.70g、2.83mL、20mmol)及びNHOAc(154mg、2mmol)の溶液に、N-ブロモスクシンイミド(3.74g、21mmol)を添加した。混合物を室温で10分間撹拌し、続いて真空で濃縮した。HOの添加及び酢酸エチルでの抽出の後に、有機層を乾燥させ(MgSO)、蒸発させ、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 10:1)によって精製して、2(3.45g、81%)を褐色の油として得た。
H NMR(360MHz,CDCl):δ=1.17(d,J=6.8Hz,6H)、2.77(hept,J=6.8Hz,1H)、3.56(br s,2H)、6.48(d,J=8.4Hz,1H)、7.03(dd,J=8.4,2.3Hz,1H)、7.14(d,J=2.3Hz,1H)。
MS(APCI):m/z 213.9[M+H]及び215.9[M+H]
【0113】
メチル1-(4-ブロモ-2-イソプロピルフェニル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(3)
濃塩酸水溶液(32mL)を、勢いよく撹拌した2(4g、18.7mmol)に0℃で添加した。15分後に、HO(7.8mL)中のNaNO(1.27g、18.4mmol)の溶液を15分かけて添加した。この混合物を更に15分間撹拌し、続いて濃HCl(9.4mL)中のSnCl二水和物(9.37g、41mmol)を添加し、冷却せずに30分間撹拌した。エタノール(160mL)中の1(4.97g、18.7mmol)を反応混合物に添加し、20分間還流させた。50%NaOH水溶液で中和した後、混合物を真空で濃縮し、HOで処理し、酢酸エチルで抽出した。合わせた有機層を乾燥させ(MgSO)、蒸発させ、残渣をフラッシュカラムクロマトグラフィー(シクロヘキサン/酢酸エチル 25:2)によって精製して、3(4.80g、56%)を無色の固体として得た。
Mp 181℃
IR:(NaCl):2965、1723、1605、1589、1475、1253、1230、1111cm-1
H NMR(360MHz,CDCl):δ=0.95(br s,6H)、2.65(hept,J=6.9Hz,1H)、3.64(s,6H)、3.94(s,3H)、6.46(d,J=8.4Hz,2H)、6.93(s,1H)、7.20(d,J=8.4Hz,1H)、7.25(dd,J=8.4,2.2Hz,1H)、7.25(t,J=8.4Hz,1H)、7.31(d,J=2.2Hz,1H)。
13C NMR(90MHz,CDCl):δ=23.8、27.7、51.9、55.5、103.5、106.7、111.2、123.2、128.4、129.1、130.0、131.4、137.0、138.9、143.6、148.2、158.3、163.1。
MS(APCI):m/z 459.1[M+H]及び461.0[M+H]
【0114】
メチル5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1-(2-イソプロピル-4-((トリメチルシリル)エチニル)フェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキシレート(4)
5mLのトルエン中の化合物3(1g、2.2mmol)、トリメチルシリルアセチレン(0.9mL、6.5mmol)、ビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリド、CuI(41mg、0.21mmol)、トリエチルアミン(0.9mL、6.5mmol)の混合物を、封管内において120℃で2時間加熱した。次いで、これを室温に冷却し、溶媒を真空で蒸発させた。次いで、生成物を7:3(ヘキサン:酢酸エチル)のフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、化合物4(0.566g)を収率55%で得た。
H-NMR(300MHz,CDCl):δ(ppm) 0.24(s,9H)、0.95(d,J=6.9Hz,6H)、2.66(hept,J=6.9Hz,1H)、3.63(s,6H)、3.94(s,3H)、6.43(d,J=8.4Hz,2H)、6.94(s,1H)、7.19(d,J=8.5Hz,1H)、7.22(t,J=8.4Hz,1H)、7.20~7.25(m,1H)、7.29~7.31(m,1H)。
13C-NMR(150MHz,CDCl):δ(ppm) -1.9、27.0、27.5、52.0、55.5、95.0、103.6、104.8、106.9、111.4、123.9、128.5、128.9、129.9、131.4、138.1、139.0、143.6、146.0、158.4、163.3。
LC-MS-APCI:m/z C2732Siの算出値:477.2,[M+H]:m/z 実測値:477.2[M+H]
【0115】
5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1-(4-エチニル-2-イソプロピルフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボン酸(5)
化合物4(0.46g、0.96mmol)を3mLのメタノールに溶解し、KCO(0.5g、0.5mmol)を添加し、反応混合物を室温で1時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、生成物を分離し、フラッシュクロマトグラフィー(0.1%のHCOOHを含む酢酸エチル)によって精製して、0.23g(61%)の化合物5を得た。
H-NMR(360MHz,CDCl):δ(ppm) 0.98(d,J=7.0Hz,6H)、2.69(hept.,J=7.0Hz,1H)、3.09(s,1H)、3.64(s,6H)、6.45(d,J=8.4Hz,2H)、6.98(s,1H)、7.24(t,J=8.4Hz,1H)、7.25~7.26(m,2H)、7.35~7.37(m,1H)。
13C-NMR(90MHz,CDCl):δ(ppm) 23.7、27.5、56.0、82.3、83.3、104.3、106.4、111.3、123.3、128.6、129.4、130.0、132.2、138.2、139.1、144.5、146.4、158.5、163.8。
LC-MS-APCI:m/z C2322の算出値:391.2,[M+H]:m/z 実測値:391.1[M+H]
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてアセトニトリル/HO 0.1%TFA、以下の勾配系を用いる:0分~21分:10%→100%のアセトニトリル、21分~24分:100%のアセトニトリル、24分~27分:100%→10%のアセトニトリル)による純度:99%、t=12.5分。
【0116】
2-(5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1-(4-エチニル-2-イソプロピルフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)アダマンタン-2-カルボン酸(6)
化合物5(229mg、0.59mmol)を窒素雰囲気下でシュレンクフラスコ内の5mLのアセトニトリルに溶解し、トリメチルアミン(0.160mL、1.2mmol)及びクロロギ酸イソブチル(92μL、0.70mmol)を添加し、反応物を室温で30分間撹拌して、最初の反応混合物を得た。2-アミノアダマンタン-2-カルボン酸塩酸塩(172mg、0.89mmol)をマイクロ波バイアル内の5mLのアセトニトリルに懸濁し、これにトリメチルアミン(0.24mL、1.8mmol)及びトリメチルシリルクロリド(0.21mL、1.8mmol)を添加し、これを室温で5分間撹拌した。その後、最初の反応混合物をこのマイクロ波バイアルに添加し、封管内において80℃で16時間加熱した。次いで、これを冷却し、2N HClで酸性化し、ジクロロメタンで抽出し、有機相をNaSOで乾燥させ、分取HPLCによって精製した。カラムZORBAX ECLIPSE XDB-C8(21.2×150mm)、5μm、流速12mL/分。溶媒メタノール、水0.1%HCOOH、勾配20分に40%→95%のメタノール、24分に95%→95%、27分に95%→40%、生成物ピークは23分に現れた。収率250mg、75%。
H-NMR(360MHz,CDCl):δ(ppm) 1.04(d,J=7.0Hz,6H)、1.59~1.84(m,8H)、1.93~2.01(m,2H)、2.05~2.15(m,2H)、2.51~2.56(m,2H)、2.62(hept.,J=7.0Hz,1H)、3.64(s,6H)、4.24(s,1H)、6.61(d,J=8.4Hz)、6.69(s,1H)、7.14(d,J=8.5Hz,1H)、7.26(dd,J=8.5Hz,1.9Hz,1H)、7.30(t,J=8.4Hz,1H)、7.35(bs,1H)、7.45(d,J=1.9Hz,1H)。
13C-NMR(90MHz,CDCl);δ(ppm) 23.3、26.0、26.3、27.2、31.9、32.5、33.3、37.2、55.6、62.2、81.7、82.7、103.7、106.0、108.2、122.7、127.4、128.9、129.7、131.6、137.3、138.9、146.0、146.3、157、9、160.0、173.1。
3437の算出値:568.2,[M+H]:m/z 実測値:568.1[M+H]
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~21分:10%→100%のメタノール、21分~24分:100%のメタノール、24分~27分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分)による純度:97%、t=16.0分。
【0117】
tert-ブチル(3-ヒドロキシプロピル)カルバメート(7)
3-アミノプロパノール(100mg、1.3mmol)を5mLのテトラヒドロフランに溶解した。2mLの2N NaOH溶液、続いてBoc無水物(435mg、2mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、生成物を酢酸エチルで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させた。生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(6:3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、230mg(98%)の生成物を無色の油として得た。
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 1.45(s,9H)、1.64~1.68(m,2H)、2.94(s,1H)、3.29(q,J=6.2Hz,2H)、3.66(q,J=5.7Hz,2H)、4.77(s,1H)。
【0118】
tert-ブチル(3-オキソプロピル)カルバメート(8)
化合物7(58mg、0.32mmol)を1mLのDMSO及び1mLのジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却した。NEt(0.07mL、0.5mmol)及びピリジン三酸化硫黄錯体(79mg、0.5mmol)を添加した。次いで、反応混合物を室温まで温め、1時間撹拌した。次いで、3mLの水を添加し、有機層をジクロロメタンで3回抽出し、NaSOで乾燥させ、真空で濃縮した。粗生成物を次の工程に使用した。
【0119】
tert-ブチル(3-((3-クロロプロピル)(メチル)アミノ)プロピル)カルバメート(9)
アルデヒド8(57mg、0.329mmol)を3mLのジクロロメタンに溶解し、0℃に冷却した。この混合物に、クロロ-N-メチルプロピルアミン塩酸塩(53mg、0.49mmol)、続いてNa(OAc)BH(104mg、0.49mmol)を添加し、反応混合物を0℃で1時間撹拌した。次いで、これを室温まで温め、室温で16時間撹拌した。反応物をNaHCOの飽和水溶液でクエンチし、ジクロロメタンで3回抽出した。合わせた有機相を無水NaSOで乾燥させ、真空で濃縮して粗生成物を得た。生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチル及び0.1%NH中の20%メタノール)によって精製して、54mg(62%)の10を無色の油として得た。
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 1.44(s,9H)、1.66(quint,J=6.5Hz,2H)、1.94(quint,J=6.6Hz,2H)、2.23(s,3H)、2.45(t,J=6.5Hz,2H)、2.51(t,J=6.5Hz,2H)、3.19(q,J=6Hz,2H)、3.60(t,J=6.6Hz,2H)。
【0120】
tert-ブチル(3-((3-アジドプロピル)(メチル)アミノ)プロピル)カルバメート(10)
化合物9(17mg、64μmol)を5mLのアセトニトリル及び1mLの水の混合物に溶解し、これにKI(32mg、0.2mmol)及びNaN(12mg、0.2mmol)を添加し、反応混合物を16時間還流させた。反応物をNaHCOの飽和水溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を無水NaSOで乾燥させ、真空で濃縮することで粗生成物を得て、これを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0121】
2-(1-(4-(1-(3-((3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロピル)(メチル)アミノ)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-イソプロピルフェニル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)アダマンタン-2-カルボン酸(11)
メタノール-HO-CHCl(1:1:1)の溶媒系中の6(15mg、26μmol)及び10(11mg、40μmol)の混合物に、CuSO・5HO(6mg、26μmol)及びアスコルビン酸ナトリウム(5mg、26μmol)を添加し、混合物を室温で一晩撹拌した。反応の終了後に(TLCによってモニタリングされる)、0.1M EDTA水溶液の添加によって反応混合物をクエンチした。有機化合物をCHClで抽出し(3回)、有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。純粋な化合物をHPLCによって単離した。カラムNucleodur C18 HTec、32×250mm、5μm粒子、流速32mL/分、溶媒アセトニトリル、HO(0.1%TFA)、0分~18分に10%→100%のアセトニトリル、20分に80%→100%のアセトニトリル、23分に100%→100%のアセトニトリル、24分に100%→10%のアセトニトリル、27分に10%→10%のアセトニトリル。生成物ピークは15分に観察された。収率14mg(60%)。
H-NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm) 1.13(d,J=6.4Hz,6H)、1.40(s,9H)、1.76~1.90(m,10H)、2.14(d,J=13.3Hz,2H)、2.24(d,J=13.3Hz,2H)、2.43(bs,2H)、2.65(s,2H)、2.79(hept,J=6.8Hz,1H)、2.89(s,3H)、3.12~3.29(m,6H)、3.69(s,6H)、4.60(t,J=6.4Hz,2H)、6.58(d,J=8.5Hz,2H)、6.79(s,1H)、7.28(t,J=8.7Hz,1H)、7.36(d,J=8.7Hz,1H)、7.58(s,1H)、7.62(dd,J=8.1,1.9Hz,1H)、7.83(d,J=1.9Hz,1H)、8.41(s,1H)。
4662-Boc基の算出値:739.6,[M+H-Boc]:m/z 実測値:739.6[M+H-Boc]
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分)による純度:97%、t=11.8分。
【0122】
2-(1-(4-(1-(3-((3-アミノプロピル)(メチル)アミノ)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-イソプロピルフェニル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)アダマンタン-2-カルボン酸(12)
化合物11(11mg、13μmol)を2mLの酢酸エチルに溶解し、ジエチルエーテル(0.5mL、1mmol)中の2M HClの溶液を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。有機化合物を酢酸エチルで抽出し(3回)、NaSOで乾燥させ、蒸発させた。純粋な化合物を、以下のものを用いるHPLCによって単離した:カラムNucleodur C18 HTec、32×250mm、5μm粒子、流速32mL/分、溶媒メタノール、HO(0.1%HCOOH)、0分~2分に0%→10%のメタノール、0分~12分に10%→100%のメタノール、12分~15分に100%→100%のメタノール、15分~16分に100%→10%のメタノール、16分~18分に10%→10%。生成物ピークは11分に現れた。収率9mg(92%)。
H-NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm) 1.13(d,J=6.4Hz,6H)、1.74~1.85(m,8H)、2.09~2.14(m,4H)、2.24(d,J=13.3Hz,2H)、2.45(quint,J=7.3Hz,2H)、2.64(bs,2H)、2.79(hept,J=6.8Hz,1H)、2.89(s,3H)、3.03(t,J=7.6Hz,2H)、3.24~3.27(m,3H)、3.69(s,6H)、4.60(t,J=6.4Hz,2H)、6.57(d,J=8.5Hz,2H)、6.79(s,1H)、7.28(t,J=8.7Hz,1H)、7.34(d,J=8.7Hz,1H)、7.62(dd,J=8.1,1.9Hz,1H)、7.83(d,J=1.9Hz,1H)、8.41(s,1H)。
13C-NMR(150MHz,CDOD);δ(ppm) 23.6、25.8、28.0、28.2、28.5、29.0、34.0、34.1、35.0、37.9、38.9、40.7、48.4、54.4、54.8、56.2、64.7、104.7、107.9、109.9、123.3、123.9、124.4、129.7、132.8、132.9、138.8、147.3、148.2、148.4、159.9、162.9、163.1、163.4、175.7。
LC-MS-ESI:m/z C4154の算出値:739.4,[M+H]:m/z 実測値:739.6[M+H]
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分)による純度:99%、t=10.6分。
【0123】
FAUC 468(13)
化合物12(9mg、12μmol)を2mLのジメチルホルムアミドに溶解し、トリメチルアミン(3μL、18μmol)、続いてDOTA-NHSエステル(9mg、18μmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を蒸発乾固し、生成物を以下のものによって精製した:HPLCカラムZORBAX Eclipse XDB C8 HTec、21.2×250mm、5μm粒子、流速12mL/分、溶媒メタノール、HO(0.1%HCOOH)、0分~18分に10%→80%のメタノール、20分に80%→100%のメタノール、22分に100%→10%のメタノール、25分に10%→10%のメタノール。生成物ピークは20分に観察された。収率11.5mg(84%)。
MS-ESI:m/z C57801212の算出値:563.5,[M+2H]2+:m/z 実測値:563.8[M+2H]2+
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分)による純度:95%、t=12.0分。
HRMS:C57811212:1125.61067,実測値1125.60914。
【0124】
FAUC 469(14)
化合物13(6.5mg、6μmol)を2mLのHEPES緩衝液に溶解し、pHを0.2N HCl溶液で5に調整し、Lu(NO(6.57mg、17μmol)を添加し、反応混合物を98℃で10分間撹拌した。生成物を以下のものによって精製した:HPLCカラムZORBAX Eclipse XDB C8 HTec、21.2×250mm、5μm粒子、流速12mL/分、溶媒 溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:12ml/分。生成物ピークは11.7分に観察された。収率6mg(80%)。
MS-ESI:m/z C5778LuN1212の算出値:650.1,[M+2H]2+:m/z 実測値:649.6[M+2H]2+
HPLC(Agilentの1100分析シリーズ、カラム:Zorbax Eclipse XDB-C8分析カラム、4.6×150mm、5μm、流速:0.5ml/分、検出波長:254nm、溶媒系としてメタノール/HO 0.1%HCOOH、以下の勾配系を用いる:0分~12分:10%→100%のメタノール、12分~15分:100%のメタノール、15分~18分:100%→10%のメタノール、流速:0.5ml/分)による純度:98%、t=11.3分。
HRMS:C5778LuN1212:1297.52524,実測値:1297.52644。
【0125】
実施例2
【化14】
tert-ブチル(S)-(3-((3-クロロプロピル)(メチル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピル)カルバメート(15)
(S)-N-Boc-2,3-エポキシプロピルアミン(50mg、0.3mmol)を5mLのアセトニトリルに溶解した。3-クロロ-N-メチルプロパン-1-アミン(46mg、0.43mmol)及びDIPEA(0.1mL、0.46mmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。次いで、生成物を酢酸エチルで抽出し、有機層をNaSOで乾燥させた。生成物を、ヘキサン:酢酸エチル(7:3)を用いたフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、43mg(53%)の生成物を無色の油として得た。
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 1.45(s,9H)、1.93(p,J=6.4Hz,2H)、2.26(s,3H)、2.30~2.38(m,2H)、2.48~2.52(m,1H)、2.64~2.68(m,1H)、3.01~3.06(m,1H)、3.32~3.36(m,1H)、3.58(t,J=6.4Hz,2H)、3.73~3.76(m,1H)、4.97(bs,1H)。
LC-MS-ESI:m/z C1225ClNの算出値:281.1,[M+H]:m/z 実測値:281.0[M+H]
【0126】
tert-ブチル(S)-(3-((3-アジドプロピル)(メチル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピル)カルバメート(16)
化合物15(35mg、0.124mmol)を5mLのアセトニトリル及び1mLの水の混合物に溶解し、これにKI(62mg、0.4mmol)及びNaN(24mg、0.4mmol)を添加し、反応混合物を16時間還流させた。反応物をNaHCOの飽和溶液でクエンチし、酢酸エチルで3回抽出した。合わせた有機相を無水NaSOで乾燥させ、真空で濃縮することで粗生成物を得て、これを更に精製することなく次の工程に使用した。
【0127】
(1R,3S,5R,7R)-2-(1-(4-(1-(3-((3-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-イソプロピルフェニル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)アダマンタン-2-カルボン酸(17)
メタノール-HO-CHCl(1:1:1)の溶媒系中の6(50mg、88μmol)及び16(35mg、122μmol)の混合物に、CuSO・5HO(2mg、8.8μmol)及びアスコルビン酸ナトリウム(3.5mg、17μmol)を添加し、反応混合物を室温で一晩撹拌した。反応の終了後に(TLCによってモニタリングされる)、0.1M EDTA水溶液の添加によって反応混合物をクエンチした。有機化合物をCHClで抽出し(3回)、有機相をNaSOで乾燥させ、蒸発させた。純粋な化合物を、以下のものを用いるHPLCによって単離した:カラムNucleodur C8 HTec、21.2×250mm、5μm粒子、流速12mL/分、溶媒アセトニトリル、HO(0.1%HCOOH)、0分~10分に10%→100%のアセトニトリル、10分~12分に100%→100%のアセトニトリル、12分~13分に100%→10%のアセトニトリル、13分~15分に10%→10%のアセトニトリル。生成物ピークは8分に観察された。収率は45mg(60%)であった。
H-NMR(600MHz,CDCl):δ(ppm) 1.14(d,J=6.4Hz,6H)、1.42(s,9H)、1.70~1.88(m,8H)、2.07(d,J=13.3Hz,2H)、2.23~2.28(m,4H)、2.50(s,3H)、2.57(d,J=13.1Hz,1H)、2.67~2.81(m,6H)、3.05~3.09(m 1H)、3.32~3.35(m,1H)、3.61(s,6H)、3.92~3.94(m,2H)、4.47(t,J=6.7Hz,2H)、5.16(s,1H)、6.43(d,J=8.5Hz,2H)、6.86(s,1H)、7.11(d,J=8.1Hz,1H)、7.21(t,J=8.7Hz,1H)、7.33(s,1H)、7.38(dd,J=8.1,1.9Hz,1H)、7.83(d,J=1.9Hz,1H)、7.85(s,1H)。
13C-NMR(150MHz,CDCl);δ(ppm) 24.9、25.6、26.7、26.9、27.9、28.4、32.5、32.8、33.8、33.9、37.7、41.8、44.3、47.6、54.4、55.5、60.9、64.9、66.4、79.5、103.4、106.9、109.0、120.4、122.9、123.6、127.6、131.3、137.1、139.7、145.5、146.5、147.2、156.5、158.4、163.6、174.0。
[α]589=+6.6°(24℃、c=1.13、メタノール)。
HRMS:C4662の算出値:855.0,[M+H-Boc]:m/z 実測値:855.4[M+H-Boc]
HPLCによる純度(系E):97%、t=11.8分
【0128】
(1R,3S,5R,7R)-2-(1-(4-(1-(3-(((S)-3-アミノ-2-ヒドロキシプロピル)(メチル)アミノ)プロピル)-1H-1,2,3-トリアゾール-4-イル)-2-イソプロピルフェニル)-5-(2,6-ジメトキシフェニル)-1H-ピラゾール-3-カルボキサミド)アダマンタン-2-カルボン酸(18)
化合物17(38mg、44μmol)を2mLの酢酸エチルに溶解し、ジエチルエーテル(0.5mL、1mmol)中の2M HClの溶液を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。溶媒を真空中で蒸発させ、残渣をメタノールに溶解し、HPLC(カラムNucleodur C8 HTec、32×250mm、5μm粒子、流速32mL/分、溶媒アセトニトリル、HO(0.1%TFA)、0分~20分に10%→80%のアセトニトリル、20分~21分に80%→100%のアセトニトリル、21分~24分に100%→100%のアセトニトリル、24分~25分に100%→10%、25分~27分に10%→10%のアセトニトリル)によって精製した。生成物ピークは12.6分間に観察された。収率30mg(89%)。
H-NMR(600MHz,CDOD):δ(ppm) 1.12(d,J=6.7Hz,6H)、1.74~1.85(m,8H)、2.13(d,J=13.1Hz, 2H)、2.23(d,J=12.5Hz,2H)、2.39~2.58(m,2H)、2.64(bs,2H)、2.79(hept,J=6.8Hz,1H)、2.92~2.94(m,1H)、2.95(s,3H)、3.13(dd,J=13.2,3.2Hz,1H)、3.26~3.28(m,2H)、3.31(p,J=1.7Hz,1H)、3.68(s,6H)、4.27~4.31(m,1H)、4.60(t,J=6.6Hz,2H)、6.57(d,J=8.5Hz,2H)、6.79(s,1H)、7.28(t,J=8.7Hz,1H)、7.34(d,J=8.7Hz,1H)、7.62(dd,J=8.1,1.9Hz,1H)、7.83(d,J=1.9Hz,1H)、8.41(s,1H)。
13C-NMR(150MHz,CDOD);δ(ppm) 24.0、26.6、26.8、27.4、32.4、32.5、33.4、37.4、42.1、46.7、46.8、48.2、48.3、54.6、57.7、62.0、103.1、108.3、121.6、122.3、122.8、128.0、131.1、131.3、137.1、146.6、146.8、158.3、159.6、161.3、161.5、161.7、173.9。
[α]589=+3.2°(24℃、c=1.6、メタノール)。
LC-MS-ESI:m/z C4154の算出値:754.9,[M+H]:m/z 実測値:755.3[M+H]
HPLC系Eによる純度:99%、t=10.6分。
【0129】
FAUC 550(19)
化合物18(15mg、20μmol)を2mLのジメチルホルムアミドに溶解し、トリメチルアミン(5μL、30μmol)、続いてDOTA-NHSエステル(15mg、30μmol)を添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌した。反応混合物を蒸発乾固してジメチルホルムアミドを除去し、残渣をメタノールに溶解し、生成物をHPLC(カラムZORBAX Eclipse XDB C8 HTec、21.2×250mm、5μm粒子、流速10mL/分、溶媒アセトニトリル、HO(0.1%HCOOH)、10分に10%→100%のアセトニトリル、12分に100%→100%のアセトニトリル、13分に100%→10%のアセトニトリル、15分に10%→10%のアセトニトリル)によって精製した。生成物ピークは7.5分に観察された。収率は11.5mg(48%)であった。
MS-ESI:m/z C57801213の算出値:570.5,[M+2H]2+:m/z 実測値:570.2[M+2H]2+
HPLC系Eによる純度:95%、t=12.0分。
HRMS:C57811212:1125.61067 実測値 1125.60914。
【0130】
FAUC 551(20)
化合物19(5mg、4.1μmol)を2mLのHEPES緩衝液に溶解し、pHを0.2N HCl溶液で5に調整し、Lu(NO(5mg、12μmol)を添加し、反応混合物を98℃で10分間撹拌した。生成物をHPLC(カラムZORBAX Eclipse XDB C8 HTec、21.2×250mm、5μm粒子、流速10mL/分、溶媒アセトニトリル、HO(0.1%TFA)、10分に10%→100%のアセトニトリル、12分に100%→100%のアセトニトリル、13分に100%→10%のアセトニトリル、15分に10%→10%のアセトニトリル)によって精製した。生成物ピークは8.1分に観察された。収率は3mg(55%)であった。
MS-ESI:m/z C5778LuN1213の算出値:658.1,[M+2H]2+:m/z 実測値:657.4[M+2H]2+
HPLC系Eによる純度:98%、t=11.3分。
HRMS:C5778LuN1212:1314.2888,実測値:1314.2888。
【0131】
実施例3:
【化15】
177Lu-14(FAUC Lu469)の放射性合成(Radiosynthesis)
13(2μLの水中2nmol)の溶液に、200μLの0.5M HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及び20μL(200MBq)のn.c.a. 177LuCl(0.04M HCl中)を添加した。この混合物を98℃のヒートブロック内で反応させた。10分後に、177Lu-14の放射化学的収率が99%超であることが放射HPLCによって決定された:Chromolith RP-18e、5分間にわたる直線勾配で水(0.1%TFA)中10%→100%のアセトニトリル;t=2.35分。
【0132】

NTS1及びNTS2、並びにドーパミン作動性及びセロトニン作動性受容体に対する親和性は、表1に示される適切な放射性リガンドを用いた競合放射性リガンド結合アッセイにおいて決定した。結果を以下の表に示す。ヒトNTS1に対する親和性は高く(0.19nM及び1.4nM)、ドーパミンD2受容体よりも選択性が高かった。
【0133】
【表1】
【0134】
参照化合物1及び2は、以下の構造を有する:
【化16】
ここで、参照化合物1において、X=Gaであり、
参照化合物2において、X=Luである。
【0135】
ヒト血漿における安定性
PBS(50μL)中の177Lu-14(FAUC Lu469)のアリコートをヒト血漿(200μL)に添加し、37℃でインキュベートした。アリコート(25μL)を様々な時間間隔(1時間、4時間、24時間、96時間、7日間)で取り、アセトニトリル/0.1%TFA(1:1、100μL)でクエンチした。サンプルを遠心分離し、上清を放射HPLCによって分析した。分解生成物は1週間にわたって観察されなかった。
【0136】
分配係数(logD7.4)の決定
177Lu-14(FAUC Lu469)の親油性を、水-オクタノール分配係数の決定によって評価した。1-オクタノール(0.5mL)をPBS(0.5mL、pH7.4)中のおよそ25kBqの177Lu-14の溶液に添加し、層を室温で3分間、勢いよく混合した。管を遠心分離し(14000rpm、1分間)、100μLの各層の3つのサンプルをγカウンター(Wallac Wizard)においてカウントした。cpm(オクタノール)/cpm(PBS)の比率を算出することによって分配係数を決定し、logD7.4(log(cpmオクタノール/cpm緩衝液))として表した。実験は三連で行った。logD7.4値は、-1.8±0.1(平均値±標準偏差、n=6)であると決定された。
【0137】
動物モデル
胸腺欠損ヌードマウス(nu/nu)をHarlan Winkelmann GmbH(Borchen、Germany)から4週齢で入手し、標準条件(12時間の明/暗)下で維持し、飼料及び水は自由摂取とした。AsPC-1、PC-3又はHT29細胞を採取し、滅菌PBSに2×10細胞/mlの濃度で懸濁した。PBS(100μL)中の生細胞(2×10)を背部に皮下注射した。接種の2週間後に(腫瘍重量:400mg~800mg)、マウス(約10週齢~12週齢、体重約40g)を生体内分布研究に用いた。
【0138】
生体内分布研究
異種移植マウスの尾静脈に177Lu-14(FAUC Lu469、1MBq/マウス)を静脈内注射した。注射後(p.i.)24時間及び48時間の時点でマウスを頸椎脱臼により屠殺した。腫瘍及び他の組織(血液、肺、肝臓、腎臓、心臓、脳、筋肉及び腸)を摘出し、秤量した。解剖した組織の放射能を、γカウンターを用いて決定した。結果を組織1g当たりの注射用量のパーセンテージ(%ID/g)として表し、腫瘍器官比を算出した。結果を1g当たりの注射用量のパーセント(%ID/g)として表2及び図1に報告する。
【0139】
【表2】
【0140】
比較については、参照化合物2を用いて行った生体内分布研究から、p.i. 24時間で34.2±2.5%ID/g(2)のAsPC1腫瘍での取込みと共に、低い腎臓(0.9±0.5%ID/g)及び肝臓(1.5±0.5%ID/g)での取込みが示された。しかしながら、AsPC1腫瘍における参照化合物2の貯留性(p.i. 7日目に4.6±2.2%ID/g、n=2)は、FAUC Lu469のAsPC1腫瘍貯留性(p.i. 7日目に13.2±2.1%ID/g、n=2)よりも有意に低く、FAUC Lu469の放射線療法に好都合な放射線量測定が示された。
【0141】
単回投与を用いたPC3腫瘍に関する療法研究
PC3腫瘍を背部に担持するヌードマウスを療法研究に用いた。PC3細胞の接種の1週間後に、177Lu-14(FAUC Lu469)を4匹のマウスに30±9MBq/動物の用量で注射した。対照動物として更に8匹の動物に生理食塩水を注射した。体重及び腫瘍径を3日に1回測定した。治療の開始後の経時的な腫瘍成長の結果を図2に示す。177Lu-14(FAUC Lu469)を注射した動物は、非処理対照動物と比較して有意な腫瘍成長の阻害及び腫瘍サイズの低減を示した。腫瘍成長阻害係数(tumor inhibition growth factor)は、49日後に64%であった。結果として、処理動物は非処理対照動物よりも有意に長い生存を示した(図2)。
【0142】
単回投与及び倍量投与を用いたAsPC-1腫瘍に関する療法研究
AsPC-1腫瘍(ヒト膵臓腺癌)を背部に担持するヌードマウスを療法研究に用いた。AsPC-1細胞の接種の1週間後に、6匹のマウスに177Lu-14(FAUC Lu469)の単回量を0日目に注射し(28±6MBq/動物、群B、単回投与)、別の6匹の動物に、放射線療法の開始日(0日目)の1回目の用量(29MBq/動物)及び治療開始後10日目の2回目の用量(29MBq/動物)からなる177Lu-14(FAUC Lu469)の倍量を注射した(2×29±4MBq/動物、群C、倍量投与)。非処理対照動物として更に6匹の動物に生理食塩水を注射した(群A)。体重及び腫瘍径を週5回測定した。治療の開始後の経時的な腫瘍成長の結果を図3に示す。177Lu-14(FAUC Lu469)の単回量を注射した動物は、療法開始後11日目と21日目との間に非処理対照動物と比較して有意な腫瘍成長の阻害及び腫瘍サイズの低減を示した(調整済みp=0.049、n=6)。倍量投与によって177Lu-14(FAUC Lu469)を与えた動物(群C)は、非処理対照動物よりも有意に長い生存(+209%)を示した(図3)。
【0143】
上記の実施例によって示されたように、本発明は、ドーパミン受容体に対する低い結合及びNTS1に対する改善された選択性を示す放射性医薬品を提供する。この選択性の増大は、NTS1陽性腫瘍の診断及びイメージングにおいて達成可能なデータ品質を改善し、それによりNTS1陽性腫瘍の早期発見の新たな機会を生み出す。さらに、本発明の化合物の優れた活性と併せた選択性の増大が、特に癌の治療において新たな治療機会を与えることが予想される。
図1
図2
図3