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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】棒状体固定構造とそれを用いた搬送容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 6/08 20060101AFI20230120BHJP
   B65D 19/06 20060101ALI20230120BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B65D6/08 A
B65D19/06
F16B7/04 302D
F16B7/04 302E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020131242
(22)【出願日】2020-07-31
(65)【公開番号】P2022027316
(43)【公開日】2022-02-10
【審査請求日】2022-02-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390032056
【氏名又は名称】ヒロホー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111132
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 浩
(72)【発明者】
【氏名】小早川 昌士
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2316742(EP,A1)
【文献】米国特許第5609111(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0257815(US,A1)
【文献】特開平10-262746(JP,A)
【文献】実開昭60-75706(JP,U)
【文献】特開2014-77484(JP,A)
【文献】特開2005-291242(JP,A)
【文献】実開昭60-134908(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2004/0091307(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 6/08
B65D 19/06
F16B 7/04
B65D 61/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い溝が長手方向と平行に設けられた形材に対して棒状体を着脱可能に固定する棒状体固定構造であって、
前記溝が設けられた前記形材の前記側面に設置されて前記棒状体の一端を保持する受け具と、
この受け具を前記形材に固定するプラスチック製の固定具と、を備え、
前記受け具は、
矩形状の挿通口を有するとともに前記溝が設けられた前記側面に一方の面が当接するように設置される当接部材と、
この当接部材の他方の面に対して垂直に立設され前記棒状体が内挿される筒状の受け部と、からなり、
前記挿通口は、前記当接部材を前記受け部が設けられている側から見た場合に前記受け部の内側に位置するように前記当接部材に設けられており、
前記固定具は、
平板状をなし前記当接部材に背面側が当接した状態で前記受け部の内部に配置可能な大きさを有するとともにベース開口部が設けられた平板状のベース部材と、
このベース部材の前記背面に突設された係合爪と、
この係合爪とともに前記受け具の前記挿通口へ挿通可能に前記ベース部材の前記背面に突設された凸状部と、からなり、
前記係合爪は、
前記受け具の前記挿通口に挿入されている状態で前記形材の前記溝に対して係合するように設けられた係合部と、
この係合部から先端にかけて先細りの状態になるように形成された傾斜部と、
前記係合部と基端の間に設けられた肉薄部と、を有するとともに、前記係合部と前記挿通口の係合状態が解消される方向へ弾性変形可能に形成されており、
前記ベース開口部は、前記ベース部材に対して垂直な方向に前記ベース部材の前面を見た場合に、前記ベース開口部を通して前記係合爪の前記係合部を視認可能な位置に形成されていることを特徴とする棒状体固定構造。
【請求項2】
前記当接部材は、前記受け部が設けられていない側へ両端が直角に曲折された平板材からなり、一対の曲折部が両端に設けられた平板部に前記挿通口が設けられるとともに、一対の前記曲折部は、互いの間隔が前記形材の前記側面の幅よりも広く、前記形材の前記側面を挟持可能に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の棒状体固定構造。
【請求項3】
前記棒状体は断面の輪郭線が円形をなし、
前記受け具はプラスチック製の部材からなり、
前記受け部は、筒状をなす代わりに、前記棒状体を内挿可能に形成された円筒の側面の一部が全長に亘って長手方向と平行に切り欠かれた形状をなしており、
前記当接部材に設けられた前記挿通口は、前記受け部が設けられている側から前記当接部材を見た場合に、前記受け部によって形成される円弧の内部に位置するとともに、
前記受け部の断面は、中心角が180度よりも大きい円弧をなしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の棒状体固定構造。
【請求項4】
前記受け部の前記側面には、切り欠かれた部分の端面から円周方向に沿って所望の幅のスリットが設けられていることを特徴とする請求項3に記載の棒状体固定構造。
【請求項5】
前記固定具は、
一対の前記凸状部が前記係合爪を間に挟むようにして前記係合爪の両側に配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の棒状体固定構造。
【請求項6】
前記挿通口の内壁面は、
前記ベース部材の前記前面側の開口面積が前記背面側の開口面積よりも広くなるようにテーパー状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の棒状体固定構造。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載された棒状体固定構造を備えた搬送容器であって、
横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い溝が長手方向と平行に設けられた金属製の複数本の形材が直方体状に組み合わされたフレームと、
前記形材の前記側面に設置された前記棒状体固定構造における受け具と、
この受け具を前記形材に固定する前記棒状体固定構造における固定具と、
前記受け具によって端部が保持されたプラスチック製の棒状体と、を備えていることを特徴とする搬送容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横断面が矩形状をなし、開口部の幅が内部の幅に比べて狭く長手方向と平行な溝が側面に設けられた複数本の形材からなる直方体のフレームを備えた搬送容器に係り、特に、フレームを構成する形材に対して棒状体を着脱可能に固定することが可能な棒状体固定構造とそれを用いた搬送容器に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車部品などのように剛性の高い重量物を客先等に納入する際には、図11に示すように、12本の形材51からなるフレーム52を備えた金属製の搬送容器50が用いられる。なお、図11(a)は従来技術に係る搬送容器50の外観斜視図であり、図11(b)は形材51の横断面図(長手方向に垂直な平面による断面図)である。
ただし、図11(a)では図が煩雑になるのを避けるため、溝51aについて、一部の形材51についてのみ符号を付しており、図11(b)では断面であることを示すハッチングの図示を省略している。また、直方体をなすフレーム52の頂点に一端が配置される3本の形材51は、市販のコーナー連結具54(図12(c)参照)を用いて2本ずつ互いに連結されているが、図11(a)ではコーナー連結具54の図示を省略している。
【0003】
形材51は、アルミ合金等の押出加工によって形成され、横断面が略矩形状をなす長尺の部材であり、4つの側面には、全長に亘って溝51aが長手方向と平行をなすようにそれぞれ設けられている。溝51aは、図11(b)に示すように、開口部の幅s(長手方向に直交する方向の内壁面同士の間隔)が内部の幅sに比べて狭くなっており、搬送容器50の内部に収納された部品を固定するための追加部材53は、この溝51aを利用して形材51に固定される。
【0004】
図12(a)及び図12(b)はそれぞれ追加部材53の正面図及び側面図であり、図12(c)は追加部材53と形材51の平面図であり、追加部材53が形材51に取り付けられる様子を示している。なお、図12(b)では、追加部材53と型材51の位置関係が明確になるように、追加部材53が設置される形材51を破線で示している。
【0005】
図12(a)及び図12(b)に示すように、追加部材53は、フレーム52を構成する形材51が所望の長さで切断されたものであって、溝51aと同じ形状の溝53dを有する形材53aと、平面視略直角三角形をなす三角柱からなるガイド部53bと、ガイド部53bを平面視した場合に直角を挟む二辺を構成する2つの側面のうちの一方に設置された係止部53cを備えている。
係止部53cは、溝51aの開口部よりも幅が広く、溝51aの内部より幅が狭い幅広部と、溝51aの開口部よりも幅が狭く、ガイド部53bと幅広部を繋ぐ幅狭部からなる。すなわち、幅広部は、溝51aの内部に配置可能な構造となっており、幅広部を溝51aの内部に配置することにより、係止部53cは形材51に対し、長手方向へ摺動可能な状態で連結される。また、ガイド部53bの上記2つの側面の他方には、形材51の側面の1つが接合されている。
【0006】
追加部材53において、形材51の溝51aの内部に係止部53cの幅広部を配置すると、追加部材53は形材51の長手方向への移動については規制されない。一方、係止部53cの幅広部が溝51aの開口部側の内壁面に係止することから、ガイド部53bが設置された形材51の側面に垂直な方向については追加部材53の移動が規制される。
すなわち、ガイド部53bは、係止部53cの幅広部が溝51aの内部に配置されている場合、追加部材53の形材51の長手方向への移動を許容しつつ、追加部材53をガイド部53bが設置された形材51の側面に垂直な方向については移動不能な状態で形材51に連結するという作用を有する。
【0007】
上述のとおり、追加部材53は係止部53cの幅広部が溝51aの開口部よりも幅が広く、溝51aの開口部からその内部へ係止部53cを差し込むことができない。そのため、追加部材53は、少なくとも一方の端部が開放されている状態の形材51に対してのみ取り付けが可能となっている。
したがって、追加部材53を形材51に取り付ける場合には、例えば、図12(c)に矢印Hで示すように、形材51に対し、溝51aの開口部から係止部53cの幅狭部の一部が突出した状態になるように、他の形材51に連結されていない側の端部から溝51aの内部に係止部53cの幅広部を差し込む。その後、形材53aを手で持って溝51aの長手方向へスライドさせるようにして、追加部材53を形材51の所望の箇所に配置する。
【0008】
上記構造の搬送容器50においては、追加部材53の形材53aが形材51と同じ材質であることから、追加部材53の数が増えると、搬送容器50が全体的に重くなるという課題があった。
また、搬送容器50の内部を仕切る目的で、平行な一対の形材51,51の間に形材53aを架け渡す場合には、形材53aの両端に一対のガイド部53b及び係止部53cをそれぞれ設けるとともに、フレーム52を組み上げる前に、少なくとも一方の端部が開放された状態の形材51に対して、各係止部53cを溝51aに嵌め込む必要がある。そのため、既にフレーム52が組み上げられている場合には、追加部材53を設置しようとしている形材51の少なくとも一方の端部を開放するために、フレーム52を分解しなければならず、極めて作業性が悪いという課題があった。
【0009】
金属製の搬送容器に関するものではないが、特許文献1には「組立式運搬用容器」という名称で、丸パイプやパネルによって形成され、比較的小さな機械部品の運搬に用いられる組み立て式の運搬容器に関する考案が開示されている。
特許文献1に開示された運搬容器は、継手を介して連結された丸パイプによって骨組が形成されるとともに、丸パイプに連結された板状パネルによって側壁や底が形成されていることを特徴とする。
このような構造においては、丸パイプの長さ及び板状パネルの枚数を任意に選択して設計することにより、大きさ、形態及び構造が異なる様々な運搬容器を製造することが可能である。また、明細書に記載されているように、プラスチック製又は金属製の丸パイプを用いることによれば、容器全体の軽量化を図ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開昭61-53331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献1には、3本の丸パイプを互いに連結するための円筒形のソケットを備えた継手が記載されているが、この継手では、両端が他のパイプに連結された状態のパイプに別のパイプを連結させることができない。また、骨組が丸パイプによって形成されているため、強度が弱く、容器の組み立て精度が低いという課題があった。
【0012】
本発明は、このような従来の事情に対処してなされたものであり、組み立て精度が高く、軽量化も可能な搬送容器と、この搬送容器に対して収納品の固定や仕切りに用いられる棒状体を効率よく取り付けることができる棒状体固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、第1の発明は、横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い溝が長手方向と平行に設けられた形材に対して棒状体を着脱可能に固定する棒状体固定構造であって、溝が設けられた形材の側面に設置されて棒状体の一端を保持する受け具と、この受け具を形材に固定するプラスチック製の固定具と、を備え、受け具は、矩形状の挿通口を有するとともに、溝が設けられた側面に一方の面が当接するように設置される当接部材と、この当接部材の他方の面に対して垂直に立設され棒状体が内挿される筒状の受け部と、からなり、挿通口は、当接部材を受け部が設けられている側から見た場合に受け部の内側に位置するように当接部材に設けられており、固定具は、平板状をなし当接部材に背面側が当接した状態で受け部の内部に配置可能な大きさを有するとともにベース開口部が設けられた平板状のベース部材と、このベース部材の背面に突設された係合爪と、この係合爪とともに受け具の挿通口へ挿通可能にベース部材の背面に突設された凸状部と、からなり、係合爪は、受け具の挿通口に挿入されている状態で形材の溝に対して係合するように設けられた係合部と、この係合部から先端にかけて先細りの状態になるように形成された傾斜部と、係合部と基端の間に設けられた肉薄部と、を有するとともに、係合部と挿通口の係合状態が解消される方向へ弾性変形可能に形成されており、ベース開口部は、ベース部材に対して垂直な方向にベース部材の前面を見た場合に、ベース開口部を通して係合爪の係合部を視認可能な位置に形成されていることを特徴とするものである。
なお、第1の発明において、「横断面が矩形状をなす形材」には「横断面が略矩形状をなす形材」も含まれるものとする。
【0014】
上述の棒状体固定構造において、形材の側面に当接部材の一方の面が当接するように設置された受け具に対し、ベース部材が当接部材と平行をなした状態でベース部材の背面側が当接部材の他方の面に近づく方向へ固定具を移動させると、固定具の係合爪が受け具の挿通口を通過した後、先端が背面側(係合部が設けられていない側)へ折れ曲がるように弾性変形して形材の溝の開口部を通過する。そして、係合部が形材の溝の開口部を通過すると、係合爪の変形が回復し、係合部が形材の溝に係合する。その結果、受け具は当接部材が固定具のベース部材と形材の側面の間に挟まれた状態で形材に対して固定される。
【0015】
また、上述したように、当接部材が固定具のベース部材と形材の側面の間に挟まれるようにして受け具が形材に固定されている場合、ベース部材の前面側からベース開口部に工具等を挿入し、その先端部で肉薄部を押すと、係合爪は背面側へ折れ曲がるように弾性変形する。このとき、凸状部が受け具の挿通口に係止することにより、受け具に対するベース部材の姿勢が維持される。
そして、工具を操作して、係合部が形材の溝に係合しない状態になるまで係合爪を変形させると、固定具の形材に対する係合状態が解消されるため、固定具は形材から離脱可能となる。そこで、係合爪を受け具の挿通口から引き抜くようにして固定具を形材と受け具から取り外すと、受け具も形材から離脱可能になる。
【0016】
すなわち、第1の発明においては、形材の側面に設置された受け具の当接部材を固定具のベース部材と形材の側面の間に挟んだ状態で、形材の側面に対して垂直な方向から固定具の係合爪を形材の溝に係合させることにより、受け具が形材に固定されるという作用を有する。また、受け具が形材に固定されている場合に、ベース部材の前面側からベース開口部に差し込んだ工具等を用いて、固定具の係合爪と形材の溝との係合状態が解消される方向へ係合爪を変形させるという簡単な操作を行うだけで、固定具と受け具が形材から取り外し可能になるという作用を有する。
【0017】
また、第2の発明は、第1の発明において、当接部材は、受け部が設けられていない側へ両端が直角に曲折された平板材からなり、一対の曲折部が両端に設けられた平板部に挿通口が設けられるとともに、一対の曲折部は、互いの間隔が形材の側面の幅よりも広く、形材の側面を挟持可能に形成されていることを特徴とするものである。
第2の発明では、第1の発明の作用に加えて、一対の曲折部で形材を両側から挟むようにして当接部材を形材の側面に設置すると、当接部材により形材の側面の幅方向に対する受け具の移動が制限されるという作用を有する。
【0018】
第3の発明は、第1の発明又は第2の発明において、棒状体は断面の輪郭線が円形をなし、受け具はプラスチック製の部材からなり、受け部は、筒状をなす代わりに、棒状体を内挿可能に形成された円筒の側面の一部が全長に亘って長手方向と平行に切り欠かれた形状をなしており、当接部材に設けられた挿通口は、受け部が設けられている側から当接部材を見た場合に、受け部によって形成される円弧の内部に位置するとともに、受け部の断面は、中心角が180度よりも大きい円弧をなしていることを特徴とするものである。
【0019】
第3の発明においては、第1の発明又は第2の発明の作用に加えて、円弧をなす受け部の中心軸と棒状体の長手方向を平行にした状態で、受け部の側面開口部(円筒の側面の一部が切り欠かれた部分)に棒状体を押し付けると、受け部が弾性変形して側面開口部が広がるという作用を有する。そして、側面開口部が棒状体を通過可能な大きさになるまで受け部が変形した場合、側面開口部から受け部の内部へ棒状体を押し込むようにすると、受け部の内部に棒状体が配置される。
棒状体が受け部の側面開口部を通過すると、受け部は変形が回復し、中心角が180度よりも大きい円弧状の断面を有する形状に戻る。その結果、棒状体の側面は受け部によって、円周方向に対してその1/2を超える範囲が覆われることになり、棒状体の端部が受け部によって保持されるという作用が発揮される。
また、第3の発明においては、棒状体の端部が受け部によって保持されている場合、棒状体の端部を側面開口部から引っ張り出すことにより、棒状体が受け部から取り外されるという作用を有する。
【0020】
第4の発明は、第3の発明において、受け部の側面には、切り欠かれた部分の端面から円周方向に沿って所望の幅のスリットが設けられていることを特徴とするものである。
既に述べたように、円弧をなす受け部の中心軸と棒状体の長手方向を平行にした状態で、受け部の側面開口部(円筒の側面の一部が切り欠かれた部分)に棒状体を押し付けると、受け部は側面開口部が広がるように弾性変形するが、受け部が当接部材に接続された部分では、当接部材によって受け部の変形が拘束される。そのため、当接部材の近傍では上述の受け部の変形を拘束するという当接部材の作用の影響により、受け部の変形が制限される。
【0021】
これに対し、受け部の側面に切り欠かれた部分の端面から円周方向に沿ってスリットを設けた場合、受け部の変形を拘束するという当接部材の上記作用はスリットによって緩和される。したがって、当接部材に接続されていない側の端部とスリットの間では、変形を拘束するという当接部材の上記作用が及び難いため、受け部はスリットが無い場合に比べると、変形し易い状態となる。
そのため、第4の発明では、円弧をなす受け部の中心軸と棒状体の長手方向を平行にした状態で、受け部の側面開口部(円筒の側面の一部が切り欠かれた部分)に棒状体を押し付けた場合に側面開口部が広がるように受け部が弾性変形するという第3の発明の作用が、当接部材に接続されていない側の端部とスリットの間において、より一層発揮される。
【0022】
第5の発明は、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明において、固定具は、一対の凸状部が係合爪を間に挟むようにして係合爪の両側に配設されていることを特徴とするものである。
第5の発明においては、第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の作用に加え、受け具が固定具のベース部材と形材の側面の間に当接部材が挟まれるようにして形材に固定されている状態において、ベース部材の前面側からベース開口部に挿入した工具等を操作して係合爪を変形させる際に、一対の凸状部が受け具の挿通口に係止するため、ベース部材の形材に対する揺動が防止され、受け具に対するベース部材の姿勢が維持されるという第1の発明の作用がより一層発揮される。
【0023】
第6の発明は、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明において、挿通口の内壁面は、ベース部材の前面側の開口面積が背面側の開口面積よりも広くなるようにテーパー状に形成されていることを特徴とするものである。
第6の発明においては、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の作用に加えて、ベース部材の前面側の開口面積が背面側の開口面積よりも広くなるように、ベース部材の開口部の内壁面がテーパー状に形成されていることから、係合爪を変形させるためにベース部材の開口部から挿入した工具の可動範囲が広くなるという作用を有する。
【0024】
第7の発明は、第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明に係る棒状体固定構造を備えた搬送容器であって、横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い溝が長手方向と平行に設けられた金属製の複数本の形材が直方体状に組み合わされたフレームと、形材の側面に設置された上記棒状体固定構造における受け具と、この受け具を形材に固定する上記棒状体固定構造における固定具と、受け具によって端部が保持されたプラスチック製の棒状体と、を備えていることを特徴とするものである。
第7の発明においては、フレームが金属製の形材によって構成されているため、プラスチック製の形材を用いる場合に比べてフレームの組み立て精度が高いという作用を有する。また、収納品の固定や仕切りに用いられる棒状体がプラスチック製であるため、棒状体の本数を多くした場合でも重量の増加が少ないという作用を有する。
【発明の効果】
【0025】
第1の発明では、横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い溝が長手方向と平行に設けられた形材に対して、側面に垂直な方向から固定具と受け具を取り付けたり、形材に取り付けられた固定具と受け具を形材の側面に垂直な方向に取り外したりすることができる。
したがって、両端に別の形材が連結されている形材に棒状体を設置する場合でも、端部を開放するために、既に連結されている別の形材を取り外すという作業を行う必要がない。そして、平行な2本の形材の対向する位置に受け具をそれぞれ固定した後、この一対の受け具の受け部に棒状体の両端を挿設することによれば、平行な2本の形材の間を繋ぐように棒状体を設置することができる。
【0026】
また、棒状体を形材から取り外す場合、平行な2本の形材の端部同士を連結した別の形材を取り外して両者の間隔を広げることにより棒状体が受け具から取り外し可能となる。そして、受け具から棒状体を取り外すと、固定具と受け具を形材から取り外すことができる。
このように、第1の発明によれば、両端が開放されていない状態の形材に対しても固定具と受け具を固定したり、当該形材から固定具と受け具を取り外したりできるため、平行な2本の形材の間を繋ぐように棒状体を設置する作業を容易かつ効率的に行うことが可能である。
【0027】
また、第2の発明によれば、固定具を形材に取り付ける際や形材から取り外す際に、形材の幅方向へ受け具が勝手に動いてしまうおそれがないため、固定具を用いて受け具を固定する作業や固定具を受け具から取り外す作業を第1の発明の場合よりも容易に行うことができる。
【0028】
第3の発明によれば、第1の発明又は第2の発明の効果に加え、棒状体を受け部の側面開口部から押し込むようにして、受け部の内部に配置したり、側面開口部から引っ張り出すようにして棒状体を受け部の内部から取り出したりすることが可能である。したがって、端部同士が別の形材によって連結されており、互いの間隔を調節できない状態にある平行な2本の形材に対して、それらを繋ぐように棒状体を取り付けたり、取り外したりする際に、上記別の形材を取り外して2本の形材の間隔を広げる必要がないため、上記棒状体の取り付け及び取り外しを効率よく行うことができるという効果を奏する。
【0029】
第4の発明によれば、受け部の側面開口部(円筒の側面の一部が切り欠かれた部分)に棒状体が押し付けられた際に、当接部材に接続されていない側の端部とスリットの間において第3の発明の場合よりも受け部が変形し易いことから、当該スリットを当接部材の近傍に設けることにより、端部同士が別の形材によって連結されており、互いの間隔を調節できない状態にある平行な2本の形材に対し、それらを繋ぐように棒状体を取り付けたり、取り外したりする作業を効率よく行うことができるという第3の発明の効果がより一層発揮される。
【0030】
第5の発明によれば、受け具が固定具のベース部材と形材の側面の間に当接部材が挟まれるようにして形材に固定されている状態において、ベース部材の前面側からベース開口部に挿入した工具等を操作して係合爪を変形させる際に、受け具に対するベース部材の姿勢が維持されることから、工具等を用いて係合爪を弾性変形させる作業を第1の発明乃至第4の発明のいずれかの発明の場合よりもさらに容易に行うことができる。
【0031】
第6の発明によれば、第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の効果に加えて、ベース部材のベース開口部から挿入した工具等の可動範囲が広いため、形材の溝に係合した状態を解消するために係合爪を変形させる作業を第1の発明乃至第5の発明のいずれかの発明の場合よりもさらに容易に行うことができるという効果を奏する。
【0032】
第7の発明に係る搬送容器は、フレームの組み立て精度が高いため、自動車部品などのように剛性の高い重量物を客先等に納入する際に用いることができる。また、第7の発明では、棒状体がプラスチック製であり、棒状体の本数を多くした場合でも重量の増加が少ないことから、容器全体の軽量化を図ることができる。さらに、フレームを構成する形材の側面に、開口部の幅が内部の幅に比べて狭く、長手方向に平行な溝が設けられていることから、第7の発明によれば、この溝に対して第1の発明乃至第6の発明のいずれかの発明に係る棒状体固定構造を用いることで、収納品の固定や仕切りに用いられる棒状体を効率よく取り付けることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明の実施の形態に係る搬送容器の外観の一例を示す斜視図である。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ第1のパイプ受け具の外観の一例を示す斜視図及び側面図であり、(c)は同図(b)におけるA方向矢視図である。
図3】(a)及び(b)はそれぞれ第2のパイプ受け具の外観の一例を示す斜視図及び側面図であり、(c)は同図(b)におけるB方向矢視図である。
図4】(a)乃至(c)は第1のパイプ受け具及び第2のパイプ受け具の保持部材を構成する受け部の正面図である。
図5】(a)及び(b)はそれぞれ固定具の外観の一例を示す斜視図及び平面図であり、(c)及び(d)はそれぞれ同図(a)におけるC方向矢視図及びD方向矢視図である。
図6】(a)及び(b)は図5(b)におけるE-E線矢視断面図である。
図7】(a)は第1のパイプ受け具及び固定具の側面図であり、(b)及び(c)はそれぞれ固定具が取り付けられた第1のパイプ受け具を受け部側及び当接部材側から見た状態を示す図である。
図8】(a)及び(b)は図7(b)におけるG-G線矢視断面図である。
図9】(a)及び(b)は第2のパイプ受け具が固定具を用いて形材に取り付けられた状態を示す断面図である。
図10】(a)及び(b)はそれぞれ第1のパイプ受け具及び第2のパイプ受け具が固定具を用いて形材に取り付けられた状態を示す平面図である。
図11】(a)は従来技術に係る金属製の搬送容器の外観を示した斜視図であり、(b)は形材の横断面図である。
図12】(a)及び(b)はそれぞれ追加部材の正面図及び側面図であり、(c)は追加部材と形材の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の棒状体固定構造とそれを用いた搬送容器について図1乃至図10を用いて具体的に説明する。なお、図11及び図12を用いて既に説明した構成要素については同一の符号を付すことにより適宜その説明を省略する。
また、本発明の棒状体固定構造は、搬送容器のフレームを構成し、横断面が矩形状をなし、少なくとも1つの側面に開口部の幅が内部の幅に比べて狭い長手方向に平行な溝が設けられた形材に対して棒状体を固定する際に用いられるものであるが、当該形材が用いられているものであれば、搬送容器以外の各種の容器や容器以外の所望の対象物に対しても適用することができる。
そして、搬送容器以外の容器や所望の対象物に棒状体を固定する場合においても、以下に説明する棒状体固定構造に係る本発明の作用及び効果は同様に発揮される。
【実施例
【0035】
図1は本発明に係る搬送容器1の外観の一例を示す斜視図である。図2(a)及び図2(b)はそれぞれ第1のパイプ受け具3の外観の一例を示す斜視図及び側面図であり、図2(c)は図2(b)におけるA方向矢視図である。図3(a)及び図3(b)はそれぞれ第2のパイプ受け具4の外観の一例を示す斜視図及び側面図であり、図3(c)は図3(b)におけるB方向矢視図である。
また、図4(a)乃至図4(c)は第1のパイプ受け具3の保持部材7及び第2のパイプ受け具4の保持部材9をそれぞれ構成する受け部7a,9aの正面図であり、受け部7a,9aの中心軸と丸パイプ2の中心軸の平行状態を維持したまま、受け部7a,9aの側面開口部7e(9e)から丸パイプ2を押し込むようにして、受け部7a,9aの内部に丸パイプ2を配置する場合に受け部7a,9aが変形する様子を模式的に表している。
【0036】
なお、図1では図が煩雑になるのを避けるため、コーナー連結具54(図12(c)参照)の図示を省略するとともに、溝51aの符号は一部の形材51についてのみ付している。また、受け部9a及び側面開口部9eの形状は受け部7a及び側面開口部7eと同じであり、受け部9aの変形は受け部7aの変形と同様であるため、図4(a)乃至図4(c)では受け部9a及び側面開口部9eの符号に括弧をつけた状態で、受け部7a及び側面開口部7eとともに併記している。
【0037】
図1に示すように、本発明に係る搬送容器1は、直方体の各辺を構成するように組み合わされた12本のアルミ合金製の形材51からなるフレーム52と、形材51の側面に設置された第1のパイプ受け具3及び第2のパイプ受け具4と、第1のパイプ受け具3及び第2のパイプ受け具4を形材51に固定する後述の固定具5(図5(a)乃至図5(d)を参照)と、第1のパイプ受け具3又は第2のパイプ受け具4によって端部が保持された丸パイプ2を備えている。
丸パイプ2は、図11及び図12を用いて既に説明した追加部材53と同様に、搬送容器1の内部に収納された物品の固定や仕切り部材として用いられるものである。そして、丸パイプ2の中心軸は、第1のパイプ受け具3や第2のパイプ受け具4を介して丸パイプ2の端部が設置される形材51の側面に対して直交している。
【0038】
すなわち、丸パイプ2は特許請求の範囲に記載された棒状体に相当し、第1のパイプ受け具3及び第2のパイプ受け具4は特許請求の範囲に記載された受け具に相当する。そして、固定具5と第1のパイプ受け具3、又は固定具5と第2のパイプ受け具4は、棒状体である丸パイプ2を形材51に対して着脱可能に固定する棒状体固定構造を構成している。
【0039】
プラスチック製の部材からなる第1のパイプ受け具3は、図2(a)乃至図2(c)に示すように、丸パイプ2の外径よりも内径が大きい短円筒の側面の一部が全長に亘って長手方向と平行に切り欠かれて断面が円弧をなす受け部7aを有する保持部材7と、受け部7aが一方の面に対して垂直に立設されている当接部材6からなる。
当接部材6は、受け部7aが設けられていない側へ両端が直角に曲折されて、側面視コ字状をなしており、両端に設けられた一対の曲折部6a,6aを繋ぐ平板部6bには、受け部7aが設けられている側から当接部材6を見た場合に、受け部7aによって形成される円弧の内部に位置するように矩形状の挿通口6cが設けられている。
なお、挿通口6cの中心(矩形の2本の対角線の交点)は受け部7aの中心軸7f(側面の一部が切り欠かれた上記短円筒の中心軸:図7(a)参照)上に配置されている。また、一対の曲折部6a,6aは、互いの間隔が形材51の側面の幅よりも広く、形材51の側面を挟持可能な形状となっている。
【0040】
当接部材6の近傍における受け部7aの側面には、切り欠かれた部分の端面7d,7dから円周方向に沿って所望の幅の一対のスリット7b,7bがそれぞれ設けられている。また、受け部7aは、平面視直角三角形をなし、直角を挟む二辺を構成する2つの面が受け部7aの側面と当接部材6の平板部6bにそれぞれ接合された一対の補強板7c,7cによって、当接部材6と受け部7aの接続部分に亀裂が入って当接部材6から受け部7aが簡単に外れてしまうことがないように補強されている。
【0041】
このような構造の第1のパイプ受け具3は、一対の曲折部6a,6aによって形材51を両側から挟んだ状態で平板部6bが形材51の側面に当接するように形材51に設置される(図1参照)。この場合、形材51の側面の幅方向に対する受け具7aの移動が当接部材6によって制限されることから、固定具5を形材51に取り付ける際や形材51から取り外す際に、形材51の幅方向へ第1のパイプ受け具3が勝手に動いてしまうおそれがない。そのため、固定具5を用いて第1のパイプ受け具3を固定する作業や固定具5を第1のパイプ受け具3から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0042】
プラスチック製の部材からなる第2のパイプ受け具4は、図3(a)乃至図3(c)に示すように、丸パイプ2の外径よりも内径が大きい短円筒の側面の一部が全長に亘って長手方向と平行に切り欠かれて断面が円弧をなす受け部9aを有する2つの保持部材9,9と、2つの受け部9a,9aが一方の面に対して垂直に立設されている当接部材8からなる。
当接部材8は、受け部9aが設けられていない側へ両端が直角に曲折されており、互いに平行をなす曲折部8aと平板部8bの間隔は形材51の側面の幅よりも広く、曲折部8aと平板部8bによって形材51の側面を挟持可能な形状となっている。
【0043】
また、形材51の2つの側面にそれぞれ当接する一対の平板部8b,8bには、受け部9aが設けられている側から当接部材8を見た場合に、受け部9aによって形成される円弧の内部に位置するように矩形状の挿通口8c,8cがそれぞれ設けられている。
なお、当接部材8の挿通口8cと当接部材6の挿通口6cの大きさは同一である。また、受け部9aと受け部7aの内径(円弧状をなす受け部7a,9aの内面の曲率半径)は同一であるが、受け部9aの内径はベース部材10(図5(a)参照)の外径よりも大きい。さらに、挿通口8cの中心(矩形の2本の対角線の交点)は受け部9aの中心軸(側面の一部が切り欠かれた上記短円筒の中心軸)上に配置されている。
【0044】
当接部材8の近傍における受け部9aの側面には、切り欠かれた部分の端面9d,9dから円周方向に沿って所望の幅の一対のスリット9b,9bがそれぞれ設けられている。また、受け部9aは、平面視直角三角形をなし、直角を挟む二辺を構成する2つの面が受け部9aの側面と当接部材8の平板部8bにそれぞれ接合された一対の補強板9c,9cによって、当接部材8と受け部9aの接続部分に亀裂が入って当接部材8から受け部9aが簡単に外れてしまうことがないように補強されている。
【0045】
このような構造の第2のパイプ受け具4は、互いに平行をなす曲折部8aと平板部8bによって形材51を両側から挟んだ状態で2つの平板部8b,8bが形材51の2つの側面にそれぞれ当接するように形材51に設置される(図1参照)。この場合、互いに平行をなす曲折部8aと平板部8bに直交する方向に対する受け具9aの移動が当接部材8によって制限されることから、固定具5を形材51に取り付ける際や形材51から取り外す際に、互いに平行をなす曲折部8aと平板部8bに直交する方向へ第2のパイプ受け具4が勝手に動いてしまうおそれがない。そのため、固定具5を用いて第2のパイプ受け具4を固定する作業や固定具5を第2のパイプ受け具4から取り外す作業を容易に行うことができる。
【0046】
受け部7aの中心軸7f(図7(a)参照)と丸パイプ2の中心軸の平行状態を維持したまま、図4(a)に矢印Xで示すように丸パイプ2を移動させて、受け部7a(9a)の側面開口部7e(9e)(円筒の側面の一部が切り欠かれた部分)に丸パイプ2を押し付けると、受け部7a(9a)は図4(b)に示すように弾性変形して側面開口部7e(9e)が広がる。そして、側面開口部7e(9e)が丸パイプ2を通過可能な大きさになるまで受け部7a(9a)が変形した場合、側面開口部7e(9e)から受け部7a(9a)の内部へ丸パイプ2を押し込むようにして、受け部7a(9a)の内部に丸パイプ2を配置することができる。
【0047】
丸パイプ2が受け部7a(9a)の側面開口部7e(9e)を通過すると、受け部7a(9a)は変形が回復して元の形状に戻る。図4(a)に示すように、受け部7a(9a)の断面は、中心角が180度よりも大きい円弧をなしている。そのため、図4(c)に示すように、受け部7a(9a)の内部に配置された丸パイプ2の側面は、円周方向に対してその1/2を超える範囲が受け部7a(9a)によって覆われる。このようにして、丸パイプ2の端部は受け部7a(9a)によって保持される。
【0048】
一方、図4(c)に示した状態において、受け部7aの中心軸7f(図7(a)参照)と丸パイプ2の中心軸の平行状態を維持したまま、丸パイプ2に対して図4(a)に示した矢印Xと逆の方向に力を加えると、受け部7a(9a)は図4(b)に示すように弾性変形して側面開口部7e(9e)が広がる。そして、側面開口部7e(9e)が丸パイプ2を通過可能な大きさになるまで受け部7a(9a)が変形した場合、側面開口部7e(9e)から丸パイプ2を引っ張り出すようにして受け部7a(9a)の外部に丸パイプ2を取り出すことができる。
なお、受け部7a(9a)における上記変形のし易さは、「受け部7a(9a)の材質や厚さ」、「受け部7a(9a)の断面によって形成される円弧の中心角」及び「受け部7a(9a)の内径に対する丸パイプ2の外径の大きさの割合」などを変更することによって調節することが可能である。
【0049】
上述のとおり、受け部7a(9a)の中心軸と丸パイプ2の中心軸を平行にした状態で、受け部の側面開口部7e(9e)に丸パイプ2を押し付けると、受け部7a(9a)は側面開口部7e(9e)が広がるように弾性変形するが、受け部7a(9a)が当接部材6(8)に接続された部分では、当接部材6(8)によって受け部7a(9a)の変形が拘束される。そのため、当接部材6(8)の近傍では上述の受け部7a(9a)の変形を拘束するという当接部材6(8)の作用により、受け部7a(9a)の変形が制限される。
【0050】
受け部7a(9a)の変形を拘束するという当接部材6(8)の上記作用は、スリット7b(9b)によって緩和されるため、当接部材6(8)に接続されていない側の端部とスリット7b(9b)の間には、変形を拘束するという当接部材6(8)の上記作用の影響が及び難い。これにより、受け部7a(9a)はスリット7b(9b)が無い場合に比べて変形し易い状態となっている。
すなわち、スリット7b(9b)は、受け部7a(9a)の側面開口部7e(9e)に丸パイプ2が押し付けられた場合に、変形を拘束するという当接部材6(8)の作用を緩和して、受け部7a(9a)に対し、側面開口部7e(9e)が広がるような弾性変形を起こし易くするという作用を有している。
【0051】
図5(a)及び図5(b)はそれぞれ固定具5の外観の一例を示す斜視図及び平面図であり、図5(c)及び図5(d)はそれぞれ図5(a)におけるC方向矢視図及びD方向矢視図である。また、図6(a)及び図6(b)は図5(b)におけるE-E線矢視断面図である。
図5(a)乃至図5(d)に示すように、固定具5は、平面視円形をなす平板状のベース部材10と、このベース部材10の背面10bに突設された4つの係合爪11と一対の凸状部12,12と、からなる。
【0052】
4つの係合爪11は、平面視した場合に長方形の2つの長辺に相当する箇所に対し、係合部11a(図6(a)及び図6(b)を参照)を長方形の外側に向けた状態で2つずつ配置されており、一対の凸状部12,12は4つの係合爪11を間に挟むようにして上記長方形の2つの短辺に相当する箇所にそれぞれ配置されている。
なお、上記長方形の中心(2本の対角線の交点)はベース部材10を平面視した場合にその外形線によって形成される円の中心と一致している。また、ベース部材10にはベース開口部10aが設けられている。なお、ベース開口部10aは、ベース部材10に対して垂直な方向に前面10cを見た場合に、ベース開口部10aを通して係合爪11の係合部11aを視認可能な位置に形成されている。
【0053】
一対の凸状部12,12は背面12aが互いに平行をなしており、その背面12a同士の間隔L図5(c)参照)は当接部材6の挿通口6c及び当接部材8の挿通口8cの横の幅L(図7(c)参照)よりも狭い。また、凸状部12を図5(a)に示す矢印Dの方向に見た場合、凸状部12は、幅広部12bと幅狭部12cを有する段付き構造をなしており、ベース部材10の背面10bに近い幅広部12bの幅w図5(d)参照)は当接部材6の挿通口6c及び当接部材8の挿通口8cの縦の幅w(図7(c)参照)よりは狭く、形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)よりは広い。また、幅広部12bと先端部12dの間に設けられた幅狭部12cの幅w図5(d)参照)は形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)よりも狭い。
【0054】
背中合わせに配置された一対の係合爪11,11は、凸状部12の先端部12d(図5(d)参照)の近くに設けられた係合部11a(図6(a)参照)の間の最大幅w図5(d)参照)が当接部材6の挿通口6c及び当接部材8の挿通口8cの縦の幅w(図7(c)参照)並びに形材51の溝51aの内部の幅s図11(b)参照)より狭いものの、形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)よりは広くなっている。また、背中合わせに配置された上記一対の係合爪11,11の肉薄部11c(図6(a)参照)の間の最大幅は幅狭部12cの幅w図5(d)参照)よりも狭くなっている(図6(a)参照)。
【0055】
係合爪11は、図8(a)を用いて後述するように第1のパイプ受け具3の挿通口6c又は第2のパイプ受け具4の挿通口8cに挿入されている状態で形材51の溝51aに対して係合可能に係合部11aが設けられている。そして、図6(a)に示すように、係合部11aから先端11dにかけて先細りの状態になるように傾斜部11bが設けられており、係合爪11の基端11eと係合部11aの間には上述の肉薄部11cが設けられている。
【0056】
また、係合爪11は、背面11fとベース部材10の前面10cのなす角度が小さくなる方向へ基端11eを中心として所定の角度範囲内で弾性変形による揺動が可能となっている。すなわち、係合爪11は、第1のパイプ受け具3の挿通口6c又は第2のパイプ受け具4の挿通口8cに係合部11aが係合している場合において、図6(a)に破線で示した状態になるまで背面11fの側へ弾性変形させることが可能な構造となっている。
【0057】
したがって、固定具5では、図6(b)に示すように、マイナスドライバなどのように先端が平坦な形状をなしている工具13をベース部材10の前面10cの側からベース開口部10aに挿入した後、この工具13の先端部で肉薄部11cを押すようにして係合爪11を折り曲げることで、上述したように係合爪11を図6(a)に破線で示した状態にすることができる。
ここで、ベース開口部10aの内壁面は、背面10bの側の開口面積よりも前面10cの側の開口面積の方が広くなるようにテーパー状に形成されている。これにより、係合爪11を変形させるためにベース開口部10aから挿入した工具13の可動範囲が広くなっている。すなわち、このような構造の固定具5によれば、工具13の先端部で係合爪11を折り曲げるという上記作業を容易に行うことが可能である。
【0058】
図7(a)は第1のパイプ受け具3及び固定具5の側面図であり、図7(b)及び図7(c)はそれぞれ固定具5が取り付けられた第1のパイプ受け具3を受け部7の側及び当接部材6の側から見た状態を示す図である。また、図8(a)及び図8(b)は図7(b)におけるG-G線矢視断面図である。
図9(a)及び図9(b)は第2のパイプ受け具4が固定具5を用いて形材51に取り付けられた状態を示しており、第1のパイプ受け具3に係る図8(a)及び図8(b)の断面図に相当する。そして、図10(a)及び図10(b)はそれぞれ第1のパイプ受け具3及び第2のパイプ受け具4が固定具5を用いて形材51に取り付けられた状態を示している。
図7(a)に示すように、受け部7aの中心軸7fにベース部材10の中心軸10dを一致させた状態で第1のパイプ受け具3に対して固定具5を矢印Fで示す方向に移動させると、ベース部材10の外径が受け部7aの内径よりも小さいことから、図7(b)に示すように固定具5は第1のパイプ受け具3の受け部7aの内部に配置される。
【0059】
また、前述したように固定具5のベース部材10の背面10bを平面視した場合に4つの係合爪11と一対の凸状部12,12は長方形の各辺を構成するように配置されているが、この長方形の中心(2本の対角線の交点)は、ベース部材10を平面視した場合にその外形線によって形成される円の中心を通り背面10bに垂直な直線上に配置されており、当接部材6の挿通口6cの中心(矩形の2本の対角線の交点)は受け部7aの中心軸7f(図7(a)参照)上に配置されている。
【0060】
そして、図5(c)及び図5(d)を用いて説明したように、一対の凸状部12,12の背面12a同士の間隔L図5(c)参照)は当接部材6の挿通口6cの横の幅L(図7(c)参照)よりも狭く、凸状部12の幅広部12bの幅w図5(d)参照)は当接部材6の挿通口6cの縦の幅w(図7(c)参照)より狭い。
そのため、固定具5においては、ベース部材10が第1のパイプ受け具3の当接部材6の平板部6bに対して平行をなすように受け部7aの内部に配置されている場合、図7(c)に示すように、当接部材6の挿通口6cに4つの係合爪11と一対の凸状部12,12を挿通させることが可能となっている。
【0061】
既に述べたように、凸状部12の幅広部12bの幅w図5(d)参照)は形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)より広く、幅狭部12cの幅w図5(d)参照)は形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)よりも狭い。一方、背中合わせに配置された一対の係合爪11,11は、凸状部12の先端部12d(図5(d)参照)の近くに設けられた係合部11a(図6(a)参照)の間の最大幅w図5(d)参照)が当接部材6の挿通口6cの縦の幅w(図7(c)参照)及び形材51の溝51aの内部の幅s図11(b)参照)より狭く、形材51の溝51aの開口部の幅s図11(b)参照)よりも広い。そして、上記一対の係合爪11,11の肉薄部11c(図6(a)参照)の間の最大幅は幅狭部12cの幅w図5(d)参照)よりも狭い(図6(a)参照)。
【0062】
そのため、4つの係合爪11と一対の凸状部12,12を当接部材6の挿通口6cに挿通させる際に、係合爪11は、先端11dが背面11fの方へ折れ曲がって図6(a)に破線で示した状態まで変形した後、係合部11aが形材51の溝51aの開口部を通過した時点で先端11dの変形状態が回復して元の形状に戻る。
【0063】
したがって、固定具5は、図8(a)に示すように係合爪11が第1のパイプ受け具3の挿通口6cに挿通された状態で係合部11a(図6(a)参照)が形材51の溝51aに係合することにより、係合爪11が形材51から離脱不能となる。このようにして、第1のパイプ受け具3は、当接部材6が固定具5のベース部材10と形材51の側面の間に挟まれた状態で形材51に対して固定される。
図8(a)に示した状態において、図8(b)に示すように、ベース部材10の前面10cの側からベース開口部10a(図6(a)参照)に挿入した工具13の先端部で肉薄部11c(図6(a)参照)を押すようにして、係合部11a(図6(a)参照)が形材51の溝51aに係合しない状態になるまで係合爪11を折り曲げると、係合部11a(図6(a)参照)と形材51の溝51aの係合状態が解消されて、係合爪11は形材51から離脱可能となる。そこで、係合爪11を第1のパイプ受け具3の挿通口6cから引き抜くようにして固定具5を形材51と第1のパイプ受け具3から取り外すと、第1のパイプ受け具3も形材51から離脱可能な状態になる。
【0064】
このとき、図8(a)に示すように、一対の凸状部12,12は幅広部12b(図5(d)参照)が第1のパイプ受け具3の挿通口6cに係止することでベース部材10の形材51に対する揺動を防ぐとともに幅狭部12c(図5(d)参照)が形材51の溝51aの開口部に係止することでベース部材10と当接部材6の形材51に対する揺動を防ぐため、第1のパイプ受け具3の当接部材6に対するベース部材10の姿勢が維持される。したがって、固定具5においては、ベース部材10のベース開口部10a(図6(a)参照)に挿入した工具13を操作する際にベース部材10が勝手に動いてしまうおそれがないため、工具13を用いて係合爪11の先端11d(図6(a)参照)を折り曲げる作業を容易に行うことができる。
【0065】
なお、固定具5に凸状部12が設けられていない場合、工具13によって係合爪11を変形させる作業を行うことは容易でないが、工具13を用いて係合部11a(図6(a)参照)を破壊すれば、形材51の溝51aに対する係合爪11の係合部11a(図6(a)参照)の係合状態を解消することはできる。しかしながら、この場合、固定具5を繰り返して使用することができない。
これに対し、本発明に係る棒状体固定構造によれば、係合部11a(図6(a)参照)を破壊せずに固定具5を形材51から取り外すことができるため、固定具5を繰り返し使用することが可能である。
【0066】
つぎに、固定具5を用いて形材51に第2のパイプ受け具4を固定する手順について図9(a)及び図9(b)を参照しながら説明する。
第1のパイプ受け具3について図7(a)及び図7(b)を用いて説明した場合と同様に、受け部9aの中心軸(側面の一部が切り欠かれた前述の短円筒の中心軸)にベース部材10の中心軸10d(図7(a)参照)を一致させた状態で第2のパイプ受け具4に対して固定具5を近づける方向に移動させると、ベース部材10の外径が受け部9aの内径よりも小さいことから、固定具5は第2のパイプ受け具4の受け部9aの内側に配置される。
【0067】
既に述べたように、固定具5のベース部材10の背面10b(図6(a)参照)を平面視した場合に4つの係合爪11と一対の凸状部12,12が各辺を構成する長方形の中心(2本の対角線の交点)は、ベース部材10を平面視した場合にその外形線によって形成される円の中心を通り背面10b(図6(a)参照)に垂直な直線上に配置されているとともに、当接部材8の挿通口8cの中心(矩形の2本の対角線の交点)は受け部9aの上記中心軸上に配置されている。
【0068】
また、図5(c)及び図5(d)を用いて説明したように、一対の凸状部12,12の背面12a同士の間隔L図5(c)参照)は当接部材8の挿通口8cの横の幅(第1のパイプ受け具3における当接部材6の挿通口6cの横の幅Lと等しい。)よりも狭く、凸状部12の幅広部12bの幅w図5(d)参照)は当接部材8の挿通口8cの縦の幅(第1のパイプ受け具3における当接部材6の挿通口6cの縦の幅wと等しい。)より狭い。
そのため、固定具5においては、ベース部材10が第2のパイプ受け具4の当接部材8の平板部8bに対して平行をなすように受け部8aの内部に配置されている場合、当接部材8の挿通口8cに4つの係合爪11と一対の凸状部12,12を挿通させることが可能となっている。
【0069】
そして、背中合わせに配置された一対の係合爪11,11は、凸状部12の先端部12d(図5(d)参照)の近くに設けられた係合部11a(図6(a)参照)の間の最大幅w図5(d)参照)が当接部材8の挿通口8cの縦の幅(第1のパイプ受け具3における当接部材6の挿通口6cの縦の幅wと等しい。)より狭い。
そのため、4つの係合爪11と一対の凸状部12,12を当接部材8の挿通口8cに挿通させる際に、係合爪11は、先端11dが背面11fの方へ折れ曲がって図6(a)に破線で示した状態まで変形した後、係合部11aが形材51の溝51aの開口部を通過した時点で先端11dの変形状態が回復して元の形状に戻る。
【0070】
したがって、固定具5は、図9(a)に示すように係合爪11が第2のパイプ受け具4の挿通口8cに挿通された状態で係合部11a(図6(a)参照)が形材51の溝51aに係合することにより、係合爪11が形材51から離脱不能となる。このようにして、第2のパイプ受け具4は、当接部材8が固定具5のベース部材10と形材51の側面の間に挟まれた状態で形材51に対して固定される。
図9(a)に示した状態において、図9(b)に示すように、ベース部材10の前面10cの側からベース開口部10a(図6(a)参照)に挿入した工具13の先端部で肉薄部11c(図6(a)参照)を押すようにして、係合部11a(図6(a)参照)が形材51の溝51aに係合しない状態になるまで係合爪11を折り曲げると、係合部11a(図6(a)参照)と形材51の溝51aの係合状態が解消されて、係合爪11は形材51から離脱可能となる。そこで、係合爪11を第2のパイプ受け具4の挿通口8cから引き抜くようにして固定具5を形材51と第2のパイプ受け具4から取り外すと、第2のパイプ受け具4も形材51から離脱可能な状態になる。
【0071】
このとき、図9(a)に示すように、一対の凸状部12,12は幅広部12b(図5(d)参照)が第2のパイプ受け具4の挿通口8cに係止することでベース部材10の形材51に対する揺動を防ぐとともに幅狭部12c(図5(d)参照)が形材51の溝51aの開口部に係止することでベース部材10と当接部材8の形材51に対する揺動を防ぐため、第2のパイプ受け具4の当接部材8に対するベース部材10の姿勢が維持される。したがって、固定具5では、ベース部材10のベース開口部10a(図6(a)参照)に挿入した工具13を操作する際にベース部材10が勝手に動いてしまうおそれがないため、工具13を用いて係合爪11の先端11d(図6(a)参照)を折り曲げる作業を容易に行うことができる。
【0072】
以上説明したように、第1のパイプ受け具3と固定具5、又は第2のパイプ受け具4と固定具5によって構成される本発明の棒状体固定構造においては、形材51の側面に設置された第1のパイプ受け具3の当接部材6又は第2のパイプ受け具4の当接部材8を固定具5のベース部材10と形材51の側面の間に挟んだ状態で、形材51の側面に対して垂直な方向から固定具5の係合爪11を形材51の溝51aに係合させることにより、第1のパイプ受け具3又は第2のパイプ受け具4が形材51に固定される。
【0073】
また、第1のパイプ受け具3又は第2のパイプ受け具4が形材51に固定されている場合に、ベース部材10の前面10cの側からベース開口部10aに差し込んだ工具13を用いて、固定具5の係合爪11と形材51の溝51aとの係合状態が解消される方向へ係合爪11を変形させるという簡単な操作を行うだけで、第1のパイプ受け具3と固定具5、又は第2のパイプ受け具4と固定具5が形材51から取り外し可能になる。
すなわち、本発明の棒状体固定構造によれば、形材51に対して、側面に垂直な方向から第1のパイプ受け具3と固定具5、又は第2のパイプ受け具4と固定具5を取り付けたり、形材51に取り付けられている第1のパイプ受け具3と固定具5、又は第2のパイプ受け具4と固定具5を形材51の側面に垂直な方向に取り外したりすることが可能である。
【0074】
図12(a)乃至図12(c)を用いて既に説明したように、追加部材53を形材51に取り付ける際には、形材51の端部から溝51aの内部に係止部53cの幅広部を差し込まなければならない。また、形材51に取り付けられている追加部材53を形材51から取り外す際には、追加部材53を形材51の長手方向にスライドさせて、溝51aの内部に配置されている係止部53cの幅広部を形材51の端部から取り出す必要がある。そのため、両端に他の形材51が連結されている状態の形材51に対しては、追加部材53を取り付けることも取り外すこともできない。
【0075】
一方、本発明の棒状体固定構造では、第1のパイプ受け具3、第2のパイプ受け具4及び固定具5を形材51に対して、側面に垂直な方向から取り付けたり、取り外したりすることが可能である。そのため、図10(a)及び図10(b)に示すように、両端に他の形材51が連結されている状態の形材51に対しても、第1のパイプ受け具3、第2のパイプ受け具4及び固定具5を取り付けたり、取り外したりすることができる。
【0076】
さらに、本発明の棒状体固定構造では、丸パイプ2を受け部7aの側面開口部7e又は受け部9aの側面開口部9eから押し込むようにして、受け部7a又は受け部9aの内部に丸パイプ2を配置することが可能である。そのため、図10(a)及び図10(b)に示すように、第1のパイプ受け具3又は第2のパイプ受け具4が、互いに平行をなすとともに端部同士が別の形材51によって連結され、互いの間隔を調節できない状態にある2本の形材51に取り付けられて固定具5によって固定されている場合でも、第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aの内部に丸パイプ2の端部を配置することにより、上記2本の形材51を繋ぐように丸パイプ2を設置することができる。
【0077】
上記2本の形材51に設置された第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aの内部に対し、それらの中心軸と平行に丸パイプ2を差し込む場合、2本の形材51の間隔を広げるために、それらの端部同士を連結している別の形材51を取り外さなければならない。
また、上記2本の形材51を繋ぐように設置されている丸パイプ2を第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aから、それらの中心軸と平行に引き抜く場合にも2本の形材51の間隔を広げるために、それらの端部同士を連結している別の形材51を取り外す必要がある。
【0078】
これに対し、本発明の棒状体固定構造においては、第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aの側面から押し込むようにしてそれらの内部に丸パイプ2を差し込むことができる。したがって、上記2本の形材51に対し、丸パイプ2を取り付けたり、取り外したりする際に、2本の形材51の間隔を広げる必要がない。
すなわち、本発明の棒状体固定構造によれば、互いに平行をなすとともに端部同士が別の形材51によって連結されている2本の形材51に対して、それらを繋ぐように丸パイプ2を取り付ける際や2本の形材51から丸パイプ2を取り外す際に、2本の形材51の端部同士を連結している別の形材51を取り外す作業が不要なため、上述の丸パイプ2を取り付けたり、取り外したりする作業を効率よく行うことができる。
【0079】
なお、受け部7aにはスリット7bが設けられ、受け部9aにはスリット9bが設けられていることから、受け部7aや受け部9aに対し、丸パイプ2を側面開口部7e又は側面開口部9eから押し込んだり、側面開口部7e又は側面開口部9eから引っ張り出したりする際に、スリット7bやスリット9bが無い場合に比べて受け部7aや受け部9aが変形し易い状態となっている。これにより、上述の丸パイプ2を取り付けたり、取り外したりする作業を効率よく行うことができるという効果がより一層発揮される。
【0080】
また、本発明の搬送容器1は、フレーム52が金属製の形材51によって構成されており、プラスチック製の形材51を用いる場合に比べてフレーム52の組み立て精度が高いため、自動車部品などのように剛性の高い重量物を客先等に納入する際に用いることができる。さらに、形材51の溝51aに本発明の棒状体固定構造を設置できることから、収納品の固定や仕切りに用いられる棒状体を効率よく取り付けることが可能である。そして、棒状体がプラスチック製の丸パイプ2であり、棒状体の本数を多くした場合でも重量の増加が少ないことから、容器全体の軽量化を図ることが可能である。
【0081】
本発明の棒状体固定構造は、上記実施例に示した構造に限定されるものではない。例えば、第1のパイプ受け具3の当接部材6は、両端に一対の曲折部6a,6aを設けずに平板部6bのみからなる構造であっても良い。また、丸パイプ2の代わりに中実構造の棒状体を用いることもできる。ただし、この場合にも容器全体の軽量化を図るために、棒状体はプラスチック製であることが望ましい。
【0082】
さらに、第1のパイプ受け具3の受け部7aや第2のパイプ受け具4の受け部9aは、円筒の側面の一部が全長に亘って長手方向と平行に切り欠かれた形状をなす代わりに、断面の輪郭線が円形又は多角形をなす筒状部材としても良い。
この場合、第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aの側面から押し込むようにしてそれらの内部に丸パイプ2を差し込むことができず、第1のパイプ受け具3の受け部7a又は第2のパイプ受け具4の受け部9aの内部に対し、それらの中心軸と平行に丸パイプ2を差し込まなければならない。したがって、互いに平行をなすとともに端部同士が別の形材51によって連結されている2本の形材51に対して、それらを繋ぐように丸パイプ2を取り付ける際や2本の形材51から丸パイプ2を取り外す際には、2本の形材51の端部同士を連結している別の形材51を取り外す作業を行う必要がある。
【0083】
また、上記実施例では、形材51の4つの側面に溝51aが設けられているが、形材4の全ての側面に溝51aが設けられている必要はなく、形材51の少なくとも1つの側面に溝51aが設けられていれば、本発明の棒状体固定構造を形材51に取り付けることができる。さらに、形材51はアルミ合金以外の金属によって形成されたものであっても良い。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明の搬送容器は、自動車部品などのように剛性の高い重量物に限らず、各種の部品を搬送する際に使用可能である。また、本発明の棒状体固定構造は、搬送容器に限らず、所望の対象物に対して着脱可能に棒状体を固定する場合に適用可能である。
【符号の説明】
【0085】
1…搬送容器 2…丸パイプ 3…第1のパイプ受け具 4…第2のパイプ受け具 5…固定具 6…当接部材 6a…曲折部 6b…平板部 6c…挿通口 7…保持部材 7a…受け部 7b…スリット 7c…補強板 7d…端面 7e…側面開口部 7f…中心軸 8…当接部材 8a…曲折部 8b…平板部 8c…挿通口 9…保持部材 9a…受け部 9b…スリット 9c…補強板 9d…端面 9e…側面開口部 10…ベース部材 10a…ベース開口部 10b…背面 10c…前面 10d…中心軸 11…係合爪 11a…係合部 11b…傾斜部 11c…肉薄部 11d…先端 11e…基端 11f…背面 12…凸状部 12a…背面 12b…幅広部 12c…幅狭部 12d…先端部 13…工具 50…搬送容器 51…形材 51a…溝 52…フレーム 53…追加部材 53a…形材 53b…ガイド部 53c…係止部 53d…溝 54…コーナー連結具
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