(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】光結合器
(51)【国際特許分類】
G02B 6/32 20060101AFI20230120BHJP
G02B 6/28 20060101ALI20230120BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G02B6/32
G02B6/28 T
G02B6/02 461
(21)【出願番号】P 2020534734
(86)(22)【出願日】2019-08-01
(86)【国際出願番号】 JP2019030156
(87)【国際公開番号】W WO2020027253
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2018145833
(32)【優先日】2018-08-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304056637
【氏名又は名称】株式会社中原光電子研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【氏名又は名称】田中 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【氏名又は名称】今下 勝博
(72)【発明者】
【氏名】中原 基博
(72)【発明者】
【氏名】中原 和博
(72)【発明者】
【氏名】大友 克也
(72)【発明者】
【氏名】小椋 昇平
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正博
【審査官】坂上 大貴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05892868(US,A)
【文献】米国特許第06219477(US,B1)
【文献】特開2012-160588(JP,A)
【文献】特開2013-065002(JP,A)
【文献】特開2016-080914(JP,A)
【文献】特開2012-212775(JP,A)
【文献】特表2014-503081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0063853(US,A1)
【文献】米国特許第06215924(US,B1)
【文献】国際公開第2006/109348(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0128294(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/26-6/27
6/30-6/34
6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の屈折率分布型レンズを用いて複数の光ファイバからの光を平行光に変換する複数の平行光生成部と、
第2の屈折率分布型レンズの一端に前記複数の平行光生成部が接続され、前記複数の平行光生成部から出射された複数の光を前記
第2の屈折率分布型レンズの他端に接続された1本の光ファイバに出射する集光部と、
を備え、
前記複数の平行光生成部の少なくとも1つの平行光生成部に備わる前記第1の屈折率分布型レンズの光軸と前記第2の屈折率分布型レンズの光軸とが角度を有する、
光結合器。
【請求項2】
前記平行光生成部に備わる
前記第1の屈折率分布型レンズは、略1/4ピッチのレンズ長、又は略1/4ピッチに1/2ピッチの整数倍を加えたレンズ長を有し、
前記複数の光ファイバは、それぞれ、前記複数の平行光生成部に備わる
前記第1の屈折率分布型レンズの光軸に接続されている、
請求項1に記載の光結合器。
【請求項3】
前記複数の平行光生成部は、前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズの光軸に対して点対称な位置からずれた位置に配置されている、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項4】
前記1本の光ファイバは、1つのコアを備えるダブルクラッドファイバであり、
前記角度は、前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズの前記一端から入射される励起光を、前記ダブルクラッドファイバに備わるインナークラッドに入射させる角度である、
請求項1に記載の光結合器。
【請求項5】
前記1本の光ファイバは、複数のコアを備えるマルチコアファイバであり、
前記角度は、前記平行光生成部から出射された光ごとに、前記マルチコアファイバに備わる異なるコアに出射する角度である、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項6】
前記複数の平行光生成部の周方向が共通のキャピラリで覆われている、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項7】
前記複数の光ファイバ側に配置されている前記キャピラリの一端の外径が、前記集光部側に配置されている前記キャピラリの他端の外径よりも大きい、
請求項
6に記載の光結合器。
【請求項8】
前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズは、略1/4ピッチのレンズ長、又は略1/4ピッチに1/2ピッチの整数倍を加えたレンズ長を有し、
前記複数の平行光生成部は、前記集光部に備わる屈折率分布型レンズの光軸から予め定められた距離の位置に接続されている、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項9】
前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズは、1/4ピッチを除く1/4ピッチ付近のレンズ長、或いは1/4ピッチを除く1/4ピッチ付近に1/2ピッチの整数倍を加えたレンズ長を有し、
前記複数の平行光生成部は、前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズの光軸から予め定められた距離の位置に接続されている、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項10】
前記1本の光ファイバは、ダブルクラッドファイバであり、
前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズは、前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズの前記一端から入射される励起光を、前記ダブルクラッドファイバに備わるインナークラッドに入射させるレンズ長を有する、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項11】
前記1本の光ファイバは、複数のコアを備えるマルチコアファイバであり、
前記集光部に備わる
前記第2の屈折率分布型レンズは、前記平行光生成部から出射された光ごとに、前記マルチコアファイバに備わる異なるコアに出射するレンズ長を有する、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項12】
前記複数の平行光生成部のうちの少なくとも1つは、前記複数の平行光生成部のうちの他の
平行光生成部に備わる前記第1の屈折率分布型レンズとレンズ径が異なる、
請求項
1に記載の光結合器。
【請求項13】
前記複数の光ファイバの周方向が共通のキャピラリで覆われている、
請求項
1に記載の光結合器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光結合器に関する。
【背景技術】
【0002】
ファイバレーザの高出力化のために、複数の励起光源からの励起光を結合させるための光結合器が提案されている(例えば、非特許文献1参照。)。高出力ファイバレーザでは、複数の励起光源からの励起光をレーザ媒体である光ファイバに入力し、レーザ発振させる。このとき、非特許文献1では、励起光源に接続された複数のファイバを束ねて溶着し、
図1に示すように、テーパ状に延伸したテーパ部111に一体化した後、別の1本の光ファイバ112に接続し、励起出力光としていた。
【0003】
途中にテーパ部111が形成されると、出力側の光は必ずその出射角度が入射角度よりも大きくなり、実効的にNA(Numerical Aperture)が大きくなる。このため出力側の光ファイバ112には入力側の光ファイバよりも大きなNAを持つ高NA光ファイバを用いなければならない。
【0004】
またテーパ部111におけるテーパの傾斜はテーパ部111に接続する光ファイバの本数が多いほど大きくなる。一方でテーパ部111を長くすることは装置の小型化の要求に反する。このため、ファイバレーザの高出力化に伴い、テーパ部111の傾斜が大きくなり、出力側のNAがさらに大きくなる問題がある。
【0005】
しかし、石英中に含有させるGeなどの添加量には限界があり、高NA光ファイバの高NA化には限界がある。このため、接続する励起光源の数が限られ、励起出力を大きくできない問題があった。この問題は、ファイバレーザの高出力化のために限らず、1対多又は多対多の光分岐結合においても生じている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】大槻朋子「ファイバレーザ特性限界を広げる特殊ファイバ技術」、高温学会誌、第35巻、第4号、pp.157~161(2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本開示は、特段に高いNAを有する光ファイバを用いることなく、1対多又は多対多の光分岐結合が可能な光結合器を実現することを目的とする。特に、本開示は、特段に高いNAを有する光ファイバを用いることなく、励起出力光に用いる励起光源の数の増加が可能になる光結合器を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の光結合器は、
複数の光ファイバから出射された複数の光が屈折率分布型レンズの一端から入射され、前記屈折率分布型レンズの他端に接続された1本の光ファイバに前記複数の光を出射する集光部と、
前記集光部と前記複数の光ファイバの間に配置され、屈折率分布型レンズを用いて前記複数の光ファイバからの光を平行光に変換し、前記集光部に備わる屈折率分布型レンズの前記一端に入射する複数の平行光生成部と、
を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、特段に高いNAを有する光ファイバを用いることなく、1対多又は多対多の光分岐結合が可能な光結合器を実現することができる。特に、本開示は、特段に高いNAを有する光ファイバを用いることなく、励起出力光に用いる励起光源の数の増加が可能になるため、ファイバレーザを高出力化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】第1の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【
図3】本開示における集光部のパラメータの一例を示す。
【
図5】第1の実施形態における集光部での伝搬光の光路の一例を示す。
【
図6】集光部の出射端面での各伝搬光の分布の第1例を示す。
【
図7】集光部の出射端面での各伝搬光の分布の第2例を示す。
【
図8】集光部の出射端面での各伝搬光の分布の第3例を示す。
【
図11】第2の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【
図12】キャピラリ内への平行光生成部の配置例を示す。
【
図13】第2の実施形態に係る光結合器の変形例を示す。
【
図14】第3の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【
図15】第3の実施形態における平行光生成部の配置例を示す。
【
図16】集光部の出射端面での各伝搬光の分布の一例を示す。
【
図17】第4の実施形態に係る光結合器の第1例を示す。
【
図18】第4の実施形態に係る光結合器の第1例での伝搬光の光路の一例を示す。
【
図19】第4の実施形態におけるキャピラリ内への平行光生成部の第1の配置例を示す。
【
図20】第4の実施形態におけるキャピラリ内への平行光生成部の第2の配置例を示す。
【
図21】第4の実施形態に係る光結合器の第2例を示す。
【
図22】第4の実施形態に係る光結合器の第2例での伝搬光の光路の一例を示す。
【
図23】第5の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【
図24】第6の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【
図25】集光部の出射端面での各伝搬光の分布の一例を示す。
【
図26】第7の実施形態に係る光結合器の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示す実施形態に限定されるものではない。これらの実施の例は例示に過ぎず、本開示は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0012】
(第1の実施形態)
図2に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。本実施形態に係る光結合器は、集光部11、平行光生成部13を備える。集光部11の一端に配置されている端面11Aに平行光生成部13が接続され、集光部11の他端に配置されている端面11Bに光ファイバ12が接続される。平行光生成部13は、集光部11に備わる屈折率分布型レンズの光軸から予め定められた距離の位置に接続されている。光ファイバ12は集光部11に備わる屈折率分布型レンズの光軸に接続される。光ファイバ14は平行光生成部13に備わる屈折率分布型レンズの光軸に接続される。各光ファイバ14は励起光源15に接続される。これらの接続は、接着剤や溶融接続を用いてもよい。
【0013】
各励起光源15は、レーザ発振に用いられる励起光を発生する。各励起光源15からの励起光は、光ファイバ14で伝搬され、平行光生成部13に入射される。平行光生成部13は、屈折率分布型レンズを用いて光ファイバ14からの光を平行光に変換する。集光部11は、屈折率分布型レンズを用いて平行光生成部13からの平行光を光ファイバ12に集光する。これにより、本開示は、複数の励起光を光ファイバ12から励起出力光として取り出すことができる。
【0014】
図3に示すように、集光部11の中心屈折率をn
0とし、集光部11の屈折率分布係数をgとし、集光部11のレンズ長をzとし、集光部11への入射光の光軸OA
11からの距離をr
0とし、集光部11の端面11Aへの入射光PL
13の入射角をθ
0とすると、集光部11の端面11Bからの出射角θ
1は、式(1)より求められる。
【数1】
【0015】
式(1)より、入射角θ
0が0°で、z=1/4ピッチでの出射光の出射角θ
1は式(2)で導出される。
【数2】
【0016】
たとえば、集光部11として、レンズ径D11=0.4mm、g=0.8mm-1、中心屈折率n0=1.47、レンズ長z=(1/4ピッチ=2π/g/4)=1.57mmを用いて、コア径0.05mmの光ファイバ12に出射する場合、集光部11の光軸OA11から距離r0=0.2mmの位置に、入射角θ0=0°で平行光生成部13を並べる場合を考える。この場合、式(2)にレンズパラメータを代入すると、出射角θ1は13.5°となる。
【0017】
一方、
図1に示すようなテーパ部111により集光する場合、
図4に示すように、端面111Aから入射角0°で入射され、テーパ部111内で2回反射された光の端面111Bからの出射角は、テーパ角θ
Tの4倍となる。このため、本開示に係る集光部11と同様に、端面111Aにおけるテーパ部111の光軸OA
111から0.2mmの位置に入射角0°で入射された光は、テーパ部111内での反射回数が2回であり、テーパ角θ
Tが5°であったとしても、端面111Bから約20°の出射角で出射される。
【0018】
このように、関連技術に係るテーパを用いた場合の端面111Bからの出射角は、テーパ部111内での反射回数が2回であっても、本開示に係る屈折率分布型レンズを用いた集光部11よりも大きくなる。さらに、多数の励起光源を実装する場合、端面111Aの面積が大きくなり、テーパ部111での反射回数がさらに増えるため、端面111Bからの出射角は急激に大きくなる。このため、多数の励起光源を実装する場合、端面111Bに接続する光ファイバのNAは、実用上使用できないほどにまで大きくなってしまう。
【0019】
本開示は、集光部11に屈折率分布型レンズを用いているため、集光部11からの出射角はテーパを用いた場合の出射角に比べて小さく、光ファイバ12に特段に高NA光ファイバを用いる必要はない。このため、本開示における光ファイバ12のNAは、集光部11と同じにすることができる。また、光ファイバ14の数が増えても、集光部11からの出射角が大きくならない。なお、本開示における光ファイバ12のNAは、集光部11よりも高くてもよい。
【0020】
ここで、光ファイバ12及び14は、高出力光を伝搬可能なものが好ましい。例えばマルチモード光ファイバを用いることが好ましい。また、光ファイバ12及び14のコア径は任意であるが、例えば50μm、62.5μm、100μmなどの一度に多くの光エネルギーを伝送することが可能な大口径光ファイバが用いられる。光ファイバ14のコア径は共通であってもよいが、
図15で後述するように、本開示はこれに限定されない。
【0021】
また、光ファイバ12は、ダブルクラッドファイバなどの光ファイバ増幅器に用いられる任意の光ファイバであってもよい。これにより、励起光を増幅用の光ファイバ12に直接入射させ、反射膜や光ファイバ12に挿入したFBG(Fiber Bragg Grating)を用いてレーザ発振させることができる。
【0022】
集光部11及び平行光生成部13に用いられる屈折率分布型レンズは、中心軸から外周部へ向かって放物線状に屈折率を分布させたレンズであり、石英ガラスにGe、Ti、Zr、などを添加したものや、多成分系のガラスでイオン拡散によって二乗分布の屈折率分布を形成したものが例示できる。平行光生成部13としては、GI型(グレーデッドインデックス型)ファイバを用いることができる。
【0023】
平行光生成部13に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L13は、光ファイバ14からの光を平行光に変換する長さである。そのような長さとしては、例えば、1/4ピッチ、又はこれに1/2ピッチの整数倍を加えた長さである。
【0024】
集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L11は、各平行光生成部13からの平行光を光ファイバ12に集光する長さである。そのような長さとしては、例えば、1/4ピッチ、又はそれに1/2ピッチの整数倍を加えた長さである。
【0025】
図5に、集光部11における伝搬光PL
11#1及びPL
11#3の光路の一例を示す。集光部11の端面11Aのうちの光軸OA
11から距離r
13#1の位置に平行光PL
13#1が入射され、集光部11の端面11Aのうちの光軸OA
11から距離r
13#3の位置に平行光PL
13#3が入射される。これらのPL
11#1及びPL
11#3は、端面11Aから1/4ピッチの焦点面で光軸OA
11に集光する。
【0026】
レンズ長L
11が1/4ピッチに等しい場合、各伝搬光PL
11#1~PL
11#4は、端面11Bにおいて光軸OA
11の付近から出射される。これにより、
図6に示すように、集光部11の各伝搬光PL
11#1~PL
11#4は、端面11Bにおいて、光軸OA
11の付近から出射される。
【0027】
ただし、集光部11及び光ファイバ12の接続部分の1点に光が集中すると、ピーク強度が高くなるため絶縁破壊が生じる場合がある。出力強度が同じでピーク強度を下げるにはフラットトップの光強度分布が望ましい場合がある。
【0028】
そこで、本開示では、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L
11は、1/4ピッチを除く1/4ピッチ付近のレンズ長であることが好ましい。例えば、
図5に示すように、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L
11は、1/4ピッチよりもわずかに短いことが好ましい。これにより、
図7に示すように、各伝搬光PL
11#1~PL
11#4の光強度が、光ファイバ12のモードフィールド径MFD
12の範囲内で分散される。
【0029】
また、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L
11は、1/4ピッチよりもわずかに長くてもよい。これにより、
図8に示すように、各伝搬光PL
11#1~PL
11#4の光強度が、光ファイバ12のモードフィールド径MFD
12の範囲内で分散される。
【0030】
図5に示すように、距離r
13#1及びr
13#13が等しく、平行光PL
13#1及びPL
13#3が光軸OA
11に対して対称である場合、端面11Bでの伝搬光PL
11#1の反射光が伝搬光PL
11#13に入射する。特に、端面11Bに高NAの光ファイバ12を接続した場合はこの反射光が発生する。
【0031】
そこで、本開示では、光軸OA
11を中心とする同心円上に平行光生成部13#1、13#2、13#3、13#4を配置する場合、端面11Aにおける平行光生成部13#1、13#2、13#3、13#4の位置を、
図9に示すように、光軸OA
11に対して点対称な位置からずらすことが好ましい。例えば、平行光生成部13#3は、光軸OA
11に対して平行光生成部13#1と点対称な位置P
11#1Sとは異なる、光軸OA
11から平行光生成部13#1と等距離の位置に配置される。平行光生成部13#4は、光軸OA
11に対して平行光生成部13#2と点対称な位置P
11#2Sとは異なる、光軸OA
11から平行光生成部13#2と等距離の位置に配置される。
【0032】
本実施形態では、端面11Aに4つの平行光生成部13#1~13#4が配置される例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、同心円上に配置される平行光生成部13の数は、
図10に示すように、5つなどの奇数であってもよい。同心円上に配置される平行光生成部13の数を奇数とすることで、平行光生成部13からの平行光の伝搬光の光路への端面11Bでの反射光の進入を防ぐことができる。さらに、本開示は、複数の同心円上に平行光生成部13が配置されていてもよい。
【0033】
また、
図2では、平行光生成部13#1~13#4の全てに光ファイバ14及び励起光現15が接続される例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、平行光生成部13#1~13#4の少なくともいずれかに光ファイバ14が接続されていてもよい。
【0034】
(第2の実施形態)
図11に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。本実施形態に係る光結合器は、各平行光生成部13の周方向がキャピラリ31で覆われたキャピラリ型光部品を用いている。
【0035】
図12に、キャピラリ31内への平行光生成部13の配置例を示す。キャピラリ31には貫通孔が設けられており、貫通孔内に平行光生成部13が配置される。キャピラリ31の他端側の端面位置z
31Bと、平行光生成部13の他端側の端面位置z
13Bと、集光部11の一端側の端面位置z
11Aと、は一致している。
【0036】
本実施形態は、平行光生成部13がキャピラリ31で固定されているため、平行光生成部13及びキャピラリ31を備えるキャピラリ型光部品を集光部11に接続することで、平行光生成部13#1~13#4を所望の位置で集光部11に接続することができる。
【0037】
図13に、本実施形態の変形例を示す。
図13では、
図11及び
図12に示す光ファイバ14の周方向がキャピラリ41で覆われたキャピラリ型光部品を用いている。光ファイバ14の周方向がキャピラリ41で覆われたキャピラリ型光部品を予め用意することで、平行光生成部13#1~13#4への光ファイバ14の接続を容易に行うことができる。
【0038】
平行光生成部13及びキャピラリ31を備えるキャピラリ型光部品の製造方法は任意である。例えば、キャピラリ31の母材となるガラスのロッドに平行光生成部13の数に等しい貫通孔を設け、屈折率分布型レンズを各貫通孔に挿入し、溶融延伸する。そして、長さがレンズ長L13になるように切断し研磨する。これにより、平行光生成部13及びキャピラリ31を備えるキャピラリ型光部品を製造することができる。
【0039】
(第3の実施形態)
図14に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。
図5において、平行光PL
13#1と平行光PL
13#3のビーム径が異なる場合、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L
11を焦点面からずらして1/4ピッチよりも短くするか又は長くすると、伝搬光PL
11#1及びPL
11#3のビーム幅に差が生じる。そこで、本実施形態に係る光結合器は、第2の実施形態における平行光生成部13のレンズ径が異なる。ここで、平行光生成部13のレンズ長L
13及び屈折率分布係数は任意である。例えば、各平行光生成部13は、いずれの平行光生成部13も屈折率分布型レンズもレンズ長L
13が同じになるような屈折率分布係数を有する。
【0040】
図15に、端面11Aにおける平行光生成部13の配置の一例を示す。例えば、平行光生成部13#1、13#2、13#3は共通の第1の径を有し、平行光生成部13#4、13#5、13#6は第1の径よりも小さな共通の第2の径を有する。この場合、平行光生成部13#1、13#2、13#3に接続する光ファイバ14のコア径は、平行光生成部13#4、13#5、13#6に接続する光ファイバ14のコア径よりも大きくてもよい。
【0041】
平行光生成部13#1、13#2、13#3は平行光生成部13#4、13#5、13#6よりもレンズ径が大きいため、集光部11に入射する平行光のビーム幅は、平行光生成部13#4、13#5、13#6よりも平行光生成部13#1、13#2、13#3が大きい。
【0042】
図16に、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L
11を1/4ピッチよりも短くした場合における、端面11Bでの各伝搬光PL
11#1~PL
11#6の分布の一例を示す。ビーム強度の大きなPL
11#1~PL
11#3の隙間に、ビーム強度の小さなPL
11#4~PL
11#6が配置されている。このように、異なるレンズ径の平行光生成部13を端面11Aに接続することで、端面11Bにおける光強度分布をフラットトップに近づけることができる。
【0043】
なお、本実施形態では、平行光生成部13の周方向がキャピラリ31で覆われている例を示すが、本開示はこれに限定されない。例えば、本開示は、
図2に示すように、キャピラリ31を備えず、平行光生成部13が集光部11の端面11Aに直接接続されている構成も含む。なお、平行光生成部13から出射する平行光の強度に差をつけることで、
図16のような分布にしてもよい。
【0044】
(第4の実施形態)
図17に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。
図5において平行光PL
13#1の入射角θ
13#1及び平行光PL
13#3の入射角θ
13#3を0度からずらすと、
図18に示すように、伝搬光PL
11#1及びPL
11#3が焦点面で光軸OA
11に集光しなくなる。そこで、本実施形態に係る光結合器は、第2の実施形態において、少なくとも1つの平行光の入射角を0度からずらしている。ここで、平行光生成部13のレンズ長L
13及び屈折率分布係数は任意である。例えば、各平行光生成部13は、いずれの平行光生成部13も屈折率分布型レンズもレンズ長L
13が同じになるような屈折率分布係数を有する。
【0045】
図19に、キャピラリ31内への平行光生成部13の配置例を示す。キャピラリ31には貫通孔が設けられており、貫通孔内に平行光生成部13が配置される。集光部11の端面11Aとキャピラリ31の集光部11側の端面31Bとは接合されており、キャピラリ31の集光部11側の端面31Bの法線と平行光生成部13の光軸OA
13とのなす角度θ
13は、
図19に示す平行光PL
13#1及びPL
13#3の入射角θ
13#1及びθ
13#3に等しい。すなわち、集光部11の端面11Aの法線に対して平行光生成部13の光軸OA
13が傾きを有する。
【0046】
平行光生成部13の光軸OA13上でのレンズ長L13は1/4ピッチである。また平行光生成部13の両端が光軸OA13に対して垂直になっている。このため、一端13Aの光軸OA13に光ファイバ14が接続された平行光生成部13をキャピラリ31の貫通孔に配置し、屈折率整合剤で固定することで、平行光を入射角θ13で集光部11に入射させることができる。
【0047】
この構成では、平行光生成部13の端面13Bの光軸OA13の位置z13Bは、キャピラリ31の端面31Bの位置z31Bよりも光ファイバ14側に配置されている。また、平行光生成部13の端面13Aでの光軸OA13の位置z13Aは、キャピラリ31の端面31Aの位置z31Aよりも光ファイバ14側に配置されている。これにより、キャピラリ31に対する平行光生成部13の角度の設定が容易になる。
【0048】
図20に、キャピラリ31内への平行光生成部13の第2の配置例を示す。この配置例では、平行光生成部13の両端がキャピラリ31の両端と同一面上に配置されている。この場合も、平行光生成部13の光軸OA
13上でのレンズ長L
13は1/4ピッチである。
【0049】
この構成の場合、キャピラリ31の母材に貫通孔を設け、当該貫通孔内に平行光生成部13の母材を配置し、平行光生成部13のレンズ径となるよう溶融延伸を行い、平行光生成部13の光軸OA13上でのレンズ長L13が所望の長さとなるよう分離して研磨することで製造が可能である。このため、キャピラリ31への平行光生成部13の組み込みが省略可能であり、製造が容易である。
【0050】
本実施形態では、伝搬光PL
11#1及びPL
11#3が焦点面に到達する前に光軸OA
11を横切るような、平行光PL
13#1及びPL
13#3が光軸OA
11に向けて入射する入射角θ
13#1及びθ
13#3である例を示したが、本開示はこれに限定されない。例えば、
図21及び
図22に示すように、伝搬光PL
11#1及びPL
11#3が焦点面に到達した後に光軸OA
11を横切るような、光軸OA
11とは遠ざかる方向に向けて入射する入射角θ
13#1及びθ
13#3であってもよい。
【0051】
本実施形態においても、平行光生成部13の周方向がキャピラリ31で覆われている例を示すが、本開示はこれに限定されない。例えば、本開示は、
図2に示すように、キャピラリ31を備えず、平行光生成部13が集光部11の端面11Aに直接接続されている構成も含む。
【0052】
(第5の実施形態)
図23に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。本実施形態に係る光結合器は、
図17に示すキャピラリ31がテーパ状になっている。本実施形態では、キャピラリ31内への平行光生成部13の配置は、
図20に示す構成とすることが好ましい。これにより、キャピラリ31への平行光生成部13の組み込みが省略可能な、以下のような製造方法を採用することができる。
【0053】
例えば、キャピラリ31の母材に貫通孔を設け、当該貫通孔内に平行光生成部13の母材を配置し、平行光生成部13のレンズ径となり所望の入射角となるよう溶融延伸を行い、平行光生成部13の光軸OA13上でのレンズ長L13が所望の長さとなるよう分離して研磨することで製造が可能である。
【0054】
(第6の実施形態)
高出力ファイバレーザ用の光ファイバとして、2層のクラッド層を有するダブルクラッドファイバが用いられている。本実施形態では、集光部11の他端11Bに接続される1本の光ファイバ12として、ダブルクラッドファイバを用いる例について説明する。
【0055】
図24に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。ダブルクラッドファイバは、コアCR
12の周囲をインナークラッドCL
12が覆い、インナークラッドCL
12の周囲をアウタークラッドが覆っている。ダブルクラッドファイバは、励起光をインナークラッドCL
12内で伝搬させることで、コアCR
12の伝搬光を増幅し、レーザ発振を可能にする。
【0056】
光ファイバ12をレーザ発振用の光ファイバに用いた場合、光ファイバ12の端面12Aにレーザ発振用の100%反射膜が設けられている。そのため、励起光源15からの励起光がコアCR
12に入射された場合、光ファイバ12の端面12Aに設けられた100%反射膜で反射され、励起光がコアCR
12内に伝搬されず、励起光源15に反射され、励起光源15の故障の原因となる。このため、光ファイバ12としてレーザ発振用のダブルクラッドファイバを接続する場合、
図25に示すように、伝搬光PL
11#1、PL
11#2、PL
11#3、PL
11#4、PL
11#5、PL
11#6を、光ファイバ12のコアCR
12やアウタークラッドではなく、光ファイバ12のインナークラッドCL
12に選択的に入射することが好ましい。
【0057】
本開示では、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L11、又は平行光生成部13から集光部11への平行光の入射角、或いはこれらの組み合わせを用いることにより、平行光生成部13からの励起光を、光ファイバ12のインナークラッドCL12に選択的に入射させることができる。このため、本開示は、励起光源15からの励起光を光ファイバ12のインナークラッドCL12に効率的に入射させることで励起光源15からの励起光を効率的に使用可能にし、更なるファイバレーザの高出力化及び高信頼化を可能にすることができる。
【0058】
(第7の実施形態)
図26に、本実施形態に係る光結合器の一例を示す。本実施形態に係る光結合器は、集光部11の他端11Bに、光ファイバ12としてマルチコアファイバが接続されている。これにより、本開示は、光ファイバ12にマルチコアファイバを用いることで、複数の光ファイバ14の伝搬光をマルチコアファイバである光ファイバ12にファンインし、光ファイバ12に備わる各コア42の伝搬光を複数の光ファイバ14にファンアウトすることができる。
【0059】
例えば、光ファイバ12は、コアCO12#1、CO12#2、CO12#3、CO12#4を備える。この場合、本実施形態は、集光部11の端面11Aから入射された各伝搬光PL11#1、PL11#2、PL11#3、PL11#4を、他端11Bにおいて個別のコアCO12#1~CO12#4に入射させる。本開示では、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L11、又は平行光生成部13から集光部11への平行光の入射角、或いはこれらの組み合わせを用いることにより、平行光生成部13からの伝搬光PL11#1、PL11#2、PL11#3、PL11#4を、個別のコアCO12#1~CO12#4に入射させることができる。
【0060】
本実施形態では、他端11BでのコアCO12#1~CO12#6との結合効率は高いことが好ましい。そのため、集光部11に備わる屈折率分布型レンズのレンズ長L11は、1/4ピッチ、又はそれに1/2ピッチの整数倍を加えた長さであることが好ましい。この場合、伝搬光PL11#1~PL11#4が個別のコアCO12#1~CO12#4に入射するよう、集光部11の端面11Aにおける各光の入射位置及び入射方向が設定される。
【0061】
また本実施形態では、集光部11の内部において伝搬光が交差しないことが好ましい。これにより、集光部11の内部での各伝搬光のクロストークを防ぐことができる。そのため、
図26に示す入射角θ
13#1及びθ
13#3のように、集光部11の端面11Aから入射される各光の入射方向を、光軸OA
11とは遠ざかる方向にすることが好ましい。または、
図2に示すように、集光部11の端面11Aから入射される各光を光軸OA
11と平行に設定してもよい。
【0062】
前述の各実施形態において、光ファイバ12に備わる各コアの伝搬モードは、シングルモードであってもよいし、マルチモードであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本開示はレーザ加工産業および情報通信産業に適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
11:集光部
11A、11B、12A、12B、31A、31B、111A、111B:端面
12、14:光ファイバ
13:平行光生成部
15:励起光源
31、41:キャピラリ
111:テーパ部
112:高NA光ファイバ