(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】生体データ測定装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/01 20060101AFI20230120BHJP
A61B 5/00 20060101ALI20230120BHJP
G01K 13/20 20210101ALI20230120BHJP
【FI】
A61B5/01 350
A61B5/00 C
G01K13/20 341P
G01K13/20 341G
(21)【出願番号】P 2021139708
(22)【出願日】2021-08-30
(62)【分割の表示】P 2017231112の分割
【原出願日】2017-11-30
【審査請求日】2021-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】512124452
【氏名又は名称】株式会社テクノ・コモンズ
(74)【代理人】
【識別番号】100083404
【氏名又は名称】大原 拓也
(72)【発明者】
【氏名】田中 昭生
(72)【発明者】
【氏名】陳 振傑
(72)【発明者】
【氏名】樋口 行平
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-532701(JP,A)
【文献】特開2000-217792(JP,A)
【文献】特開2014-052350(JP,A)
【文献】特表2014-513310(JP,A)
【文献】特表2002-525132(JP,A)
【文献】国際公開第02/075262(WO,A1)
【文献】特開2006-198321(JP,A)
【文献】特表2009-518057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/01
G01J 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被測定対象である生体の体表面との間に空気層が生ずるように支持部材を介して上記体表面から所定距離隔てた位置に配置される基板を備え、上記基板に、上記体表面の体表面温度Tskを測定する放射温度計および上記基板の基板温度Tsubを測定する基板温度計を含む温度計測手段が設けられており、上記温度計測手段にて同一場所
において第1時刻Aと
、それよりも所定時間が経過した第2時刻Bの少なくとも2回にわたって上記体表面温度Tskと上記基板温度Tsubを計測
し、
上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記体表面温度Tskの差分aと、上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記基板温度Tsubの差分bと、上記空気層の熱抵抗Rthairとから、上記生体の体内熱抵抗Rthbodyを、Rthbody=Rthair×b/(a-b)なる式により算出することを特徴とする生体データ測定装置。
【請求項2】
上記空気層の熱抵抗をRthair、上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIthとして、(Tsk-Tsub)/Rthairにより上記熱流Ithを求め、上記基板温度Tsubに対する上記体表面温度Tskの応答遅れを補正するため、上記基板温度Tsubに所定の遅延時間を付加することを特徴とする請求項
1に記載の生体データ測定装置。
【請求項3】
体表面への装着後の
上記第1時刻Aで測定される熱流IthA、それよりも所定時間が経過した
上記第2時刻Bで測定される熱流IthB、予め設定される体内熱抵抗Rthbodyの仮の値とから算出される上記第1時刻Aでの深部体温TcoreAと上記第2時刻Bでの深部体温TcoreBとを比較し、TcoreA-TcoreBの絶対値が所定の判定値内に収まるようにRthbodyの値を変更することを特徴とする請求項
2に記載の生体データ測定装置。
【請求項4】
加熱体により当該データ測定装置が収納されているケースのケース温度Tcaseを深部体温Tcoreにまで上昇させて一時的にZHFの状態を作り出し、それをもとに体内熱抵抗Rthbodyを算出することを特徴とする請求項
1に記載の生体データ測定装置。
【請求項5】
上記ケースには、上記加熱体による校正を受け付ける手段が設けられていることを特徴とする請求項
4に記載の生体データ測定装置。
【請求項6】
上記ケース温度Tcaseが所定の温度Tthを超えた場合に、上記加熱体を上記ケースから外す指示を出すステップを備えていることを特徴とする請求項
4または
5に記載の生体データ測定装置。
【請求項7】
深部体温Tcoreが有意に変化し得ない速さで環境温度が変化した場合に、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴とする請求項
1,
3または
4に記載の生体データ測定装置。
【請求項8】
被測定対象である生体の心拍数が所定の閾値以下である場合に、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴とする請求項
1,
3または
4に記載の生体データ測定装置。
【請求項9】
体内深部から体表面までの体内深部距離body_d×体内深部から体表面までの熱抵抗率から仮の体内熱抵抗Rthbodyを求めたうえで、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴とする請求項
1,
3または
4に記載の生体データ測定装置。
【請求項10】
測定初期に得られた基板温度Tsubと体表面温度Tskから、深部体温Tcoreがあらかじめ入力されている安静時体温になるように、体内熱抵抗Rthbodyを逆算することを特徴とする請求項1に記載の生体データ測定装置。
【請求項11】
上記基板には心電を測定するECG測定回路が搭載されているとともに、当該生体データ測定装置のケースを体表面に装着する装着ベルトを備え、上記装着ベルトには、体表面に接触する少なくとも2つの電極が所定距離離間して配置されており、上記装着ベルトと上記ケースとの間には、上記2つの電極を上記ECG測定回路に接続するためのコンタクト部が設けられており、上記温度計測手段による体温信号測定と上記ECG測定回路による心電信号測定とが同時に行われることを特徴とする請求項1ないし
10のいずれか1項に記載の生体データ測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体のデータ測定装置、特には生体の体表面に取り付けて生体データを測定する生体データ測定装置に関し、さらに詳しく言えば、生体の特に深部体温を測定する生体データ測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在のところ、生体の体表面に取り付けて深部体温を測定する方法としては、例えばSingle Heat Flux(SHF)法と、Dual Heat Flux(DHF)法と、Zero Heat Flux(ZHF)法とが知られている。
【0003】
Single Heat Flux(SHF)法の一例として、
図29に特許文献1に記載されている
図2の構成を示す。同図において、2は第1プローブ、6は第2プローブ、4は断熱材で、3が体表面である。第1プローブ2と第2プローブ6により体表面3からほぼ垂直に生ずる熱流(熱流束)を測定する。
【0004】
SHF法によれば、ヒーターが不要であるため低電力で構成が簡素である、という利点があるが、測定時間が10分程度かかる、という問題がある。また、生体内の熱抵抗(体内熱抵抗)を別の方法であらかじめ測定する必要がある。
【0005】
次に、Dual Heat Flux(DHF)法の一例として、
図30に特許文献2に記載されている第1図の構成を示す。同図において、11,17が第1温度センサのペア、12,18が第2温度センサのペアで、第1温度センサのペア11,17により測定された熱流と、第1温度センサのペア12,18により測定された熱流とにより、生体の深部体温を測定する。
【0006】
DHF法によれば、体内の熱抵抗を別の方法で測定することなく深部体温が分かる、また、ヒーターが不要であるため低電力でもある、という利点がある。しかしながら、測定時間がやはり10分程度かかるし、温度センサのペアが2組必要、という問題がある。
【0007】
また、Zero Heat Flux(ZHF)法の一例として、
図31に特許文献3に記載されている
図6を示す。同図において、140が温度センサで、126がヒータである。ZHF法によると、皮膚表面に貼付した温度センサ140がヒータ126により加温され、温度センサ140と深部体温が平衡に達した時点(約3分程度)で、表示部に深部体温が表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開WO2011/012386号公報(特に
図2)
【文献】特開昭63-58223号公報(特に第1図)
【文献】米国特許公開第2016/0238463号(特に第6図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このように、ZHF法によると、測定時間が約3分程度と比較的早い、という利点があるが、他方において、ヒータの消費電力として1W(ワット)程度必要である、という点で問題がある。
【0010】
また、ZHF法の場合、1W程度の消費電力を必要とするため、体表面に貼り付けて使用する絆創膏型のセンサには適用が難しい。
【0011】
センサ周りの配線について、SHF法の場合でも4本の配線、DHF法の場合には8本の配線があり、これらの配線を信号読み出し回路等に接続する必要があり、その分、手間がかかる。
【0012】
配線による水平方向(体表面とほぼ平行な方向)の熱伝導は、感度の低下や誤差の原因となる。さらには、配線を経由してデータ収集側の機器と接続するようにしているため、生体への装着に手間がかかるうえに、装着時の負担となっている。
【0013】
また、SHF法の場合、上記したように基本的にヒーターが不要であるため低電力で構成が簡素である、という利点があるが、生体内の熱抵抗(体内熱抵抗)を別の方法であらかじめ測定する必要がある。
【0014】
そこで、本発明の課題は、温度計測手段が一つであるSHFでありながら、物体の内部熱抵抗を別の手段で計測することなく、深部温度を求めることができる測定装置、特には生体データ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため手段として、本発明には、次に記載するいくつかの態様が含まれている。
【0016】
まず、第1の態様は、被測定対象である生体の体表面との間に空気層が生ずるように支持部材を介して上記体表面から所定距離隔てた位置に配置される基板を備え、上記基板に、上記体表面の体表面温度Tskを測定する放射温度計および上記基板の基板温度Tsubを測定する基板温度計を含む温度計測手段が設けられており、上記温度計測手段にて同一場所において第1時刻Aと、それよりも所定時間が経過した第2時刻Bの少なくとも2回にわたって上記体表面温度Tskと上記基板温度Tsubを計測し、
上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記体表面温度Tskの差分aと、上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記基板温度Tsubの差分bと、上記空気層の熱抵抗Rthairとから、上記生体の体内熱抵抗Rthbodyを、Rthbody=Rthair×b/(a-b)なる式により算出することを特徴としている。
【0018】
第2の態様は、上記空気層の熱抵抗をRthair、上記体表面にほぼ垂直に流れる熱流をIthとして、(Tsk-Tsub)/Rthairにより上記熱流Ithを求め、上記基板温度Tsubに対する上記体表面温度Tskの応答遅れを補正するため、上記基板温度Tsubに所定の遅延時間を付加することを特徴としている。
【0019】
第3の態様は、体表面への装着後の第1時刻Aで測定される熱流IthA、それよりも所定時間が経過した第2時刻Bで測定される熱流IthB、予め設定される体内熱抵抗Rthbodyの仮の値とから算出される上記第1時刻Aでの深部体温TcoreAと上記第2時刻Bでの深部体温TcoreBとを比較し、TcoreA-TcoreBの絶対値が所定の判定値内に収まるようにRthbodyの値を変更することを特徴としている。
【0020】
第4の態様は、加熱体により当該データ測定装置が収納されているケースのケース温度Tcaseを深部体温Tcoreにまで上昇させて一時的にZHFの状態を作り出し、それをもとに体内熱抵抗Rthbodyを算出することを特徴としている。
【0021】
第5の態様は、上記ケースには、上記加熱体による校正を受け付ける手段が設けられていることを特徴としている。
【0022】
第6の態様は、上記ケース温度Tcaseが所定の温度Tthを超えた場合に、上記加熱体を上記ケースから外す指示を出すステップを備えていることを特徴としている。
【0023】
第7の態様は、深部体温Tcoreが有意に変化し得ない速さで環境温度が変化した場合に、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴としている。
【0024】
第8の態様は、被測定対象である生体の心拍数が所定の閾値以下である場合に、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴としている。
【0025】
第9の態様は、体内深部から体表面までの体内深部距離body_d×体内深部から体表面までの熱抵抗率から仮の体内熱抵抗Rthbodyを求めたうえで、上記体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することを特徴としている。
【0026】
第10の態様は、測定初期に得られた基板温度Tsubと体表面温度Tskから、深部体温Tcoreがあらかじめ入力されている安静時体温になるように、体内熱抵抗Rthbodyを逆算することを特徴としている。
【0027】
第11の態様は、上記基板には心電を測定するECG測定回路が搭載されているとともに、当該生体データ測定装置のケースを体表面に装着する装着ベルトを備え、上記装着ベルトには、体表面に接触する少なくとも2つの電極が所定距離離間して配置されており、上記装着ベルトと上記ケースとの間には、上記2つの電極を上記ECG測定回路に接続するためのコンタクト部が設けられており、上記温度計測手段による体温信号測定と上記ECG測定回路による心電信号測定とが同時に行われることを特徴としている。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、深部から表面にかけて第1の熱抵抗(物体の内部熱抵抗)Rth1を有する物体を被測定対象とし、上記被測定対象の表面に配置される第2の熱抵抗Rth2を持つ断熱層と、上記断熱層で隔てられた第1、第2の温度を測定する手段(温度計測手段)と、第1時刻Aで測定される上記第1、第2の温度と、それよりも所定時間が経過した第2時刻Bで測定される上記第1、第2の温度とから上記第1の熱抵抗を算出する手段と、上記第1,第2の熱抵抗と、上記第1、第2の温度とから上記被測定対象の深部温度を算出する手段とを備え、一つの特徴的な手法として、上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記第1の温度の差分aと、上記第1時刻Aと上記第2時刻Bで測定される上記第2の温度の差分bと、上記第2の熱抵抗Rth2(既知)とから、上記第1の熱抵抗(物体の内部熱抵抗)Rth1を、Rth1=Rth2×b/(a-b)なる式により算出することができるため、温度計測手段が一つであるSHFでありながら、物体の内部熱抵抗を別の手段で計測することなく、深部温度を求めることができる。
【0029】
このように、同一の場所でしかも同じ温度計により、時間的に離れた時刻A,Bで2つの熱流を測定するようにしているため、場所によるばらつきや、温度計のばらつきに影響されることがない。さらには、DHF法やZHF法に比べて小型化にでき、消費電力を大幅に下げることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の基本的な態様(第1実施形態)を示す(a)模式的な平面図、(b)その同じく模式的な断面図。
【
図2】本発明の第2実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図。
【
図3】本発明の第3実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図。
【
図4】本発明の第4実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図。
【
図5】本発明の第5実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図。
【
図6】本発明の第6実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図、(c)第5実施形態の変形例に係る断面図。
【
図7】本発明の生体データ測定装置を装着ベルトを介して生体に取り付けた状態を示す(a)模式図、(b)その要部断面図。
【
図8】本発明の第7実施形態を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図。
【
図9】本発明の第8実施形態を示す模式的な断面図。
【
図10】本発明の第1ないし第4実施形態の態様において、(a)冬場における体内深部から環境温度に至る温度勾配を示すグラフ、(b)冬場での各部の熱抵抗率,厚さ,熱抵抗を示す表。
【
図11】上記第1ないし第4実施形態の態様において、(a)夏場における体内深部から環境温度に至る温度勾配を示すグラフ、(b)夏場での各部の熱抵抗率,厚さ,熱抵抗を示す表。
【
図12】上記第5実施形態の態様において、第1温度計と第2温度計で測定された体内深部から環境温度に至る温度勾配を示すグラフ、(b)そのときの各部の熱抵抗率,厚さ,熱抵抗を示す表。
【
図13】本発明の第9実施形態で、(a)装着ベルトを介して体表面に装着される生体データ測定装置を示す模式的な断面図、(b)同生体データ測定装置の平面図。
【
図14a】上記第9実施形態に係る生体データ測定装置の基板に搭載される回路系と装着ベルトに設けられる電極の配置例(2電極)を示す模式図。
【
図14b】上記第9実施形態において、装着ベルトに設けられる電極の異なる配置例(4電極)を示す模式図。
【
図15】本発明の第10実施形態として、(a)検出される体表面温度と基板温度の時定数補正を説明するグラフ、(b)その時定数補正を行うステップを示すフローチャート。
【
図16a】本発明の第11実施形態として、装着時の過渡応答から体内熱抵抗Rthbodyを求める方法を説明するグラフ。
【
図16b】当該方法によって体内熱抵抗Rthbodyを増減させるステップを示すフローチャート。
【
図16c】上記第11実施形態の別の方法として、体表面温度と基板温度とから体内熱抵抗を直接求める方法を説明するグラフ。
【
図16d】上記第11実施形態の別の方法の動作を示すフローチャート。
【
図17】本発明の第12実施形態として、(a)加熱体を用いて体内熱抵抗Rthbodyを求める方法を説明するグラフ、(b)当該方法によって体内熱抵抗Rthbodyを増減させるステップを示すフローチャート。
【
図18】本発明の第13実施形態として、(a)環境温度変化から体内熱抵抗Rthbodyを求める方法を説明するグラフ、(b)当該方法によって体内熱抵抗Rthbodyを増減させるステップを示すフローチャート。
【
図19a】本発明の第14実施形態として、体内深部から表皮までの距離(body_d)の入力をユーザーに求める方法を示すフローチャート。
【
図19b】本発明の第15実施形態として、加速度により姿勢を検出して体表面温度と基板温度の補正を行う方法を示すフローチャート。
【
図20】本発明の第16実施形態として、上記第9実施形態で搭載されているECG測定回路を示す(a)ブロック図、(b)その各部の動作説明図。
【
図21】同じく本発明の第16実施形態として、上記第9実施形態で搭載されているGSR測定回路を示す(a)ブロック図、(b)その各部の動作説明図。
【
図22】同じく本発明の第16実施形態として、上記第9実施形態で搭載されているGSR駆動回路を示す(a)ブロック図、(b)その各部の動作説明図。
【
図23】本発明の第17実施形態として、生体データ測定装置のケースが装着ベルト上に配置される態様を示す(a)模式的な断面図、(b)上記ケースの平面図。
【
図24】上記ケースを被測定部位に装着する4電極を有する上記装着ベルトを被測定部位側から見た平面図。
【
図25】本発明の第18実施形態として、生体データ測定装置のケースと装着ベルトを解離可能なフックで連結した態様を示す(a)模式的な平面図、(b)その断面図、(c)フックの一例を示す斜視図。
【
図26】本発明の第19実施形態として、生体データ測定装置を1枚の基板に搭載した態様を模式的に示す(a)平面図、(b)その断面図。
【
図27】本発明の第20実施形態として、生体データ測定装置を2枚の基板に分けて搭載した態様を模式的に示す(a)平面図、(b)その断面図。
【
図28a】生体データ測定装置のケースと装着ベルトとの電気的・機械的コンタクト部の第1例を示す模式的な断面図。
【
図28b】生体データ測定装置のケースと装着ベルトとの電気的・機械的コンタクト部の第2例を示す模式的な断面図。
【
図28c】生体データ測定装置のケースと装着ベルトとの電気的・機械的コンタクト部の第3例を示す模式的な断面図。
【
図28d】生体データ測定装置のケースと装着ベルトとの電気的・機械的コンタクト部の第4例を示す模式的な断面図。
【
図28e】生体データ測定装置のケースと装着ベルトとの電気的・機械的コンタクト部の第5例を示す模式的な断面図。
【
図29】第1従来技術としてのSHF法を紹介する模式図。
【
図30】第2従来技術としてのDHF法を紹介する模式図。
【
図31】第3従来技術としてのZHF法を紹介する模式図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
次に、
図1ないし
図28により、本発明によるいくつかの実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0032】
まず、
図1を参照して、本発明の生体データ測定装置1は、基本的な形態(第1実施形態)として、温度計(温度計測手段)20が設けられた基板10を備える。基板10は、後述する支持部材を介して被測定対象である生体の体表面BSから所定距離隔てた位置(例えば、体表面BSから3mm程度隔てた位置)に配置される。
【0033】
基板10には、例えばポリイミド基板が用いられる。厚さは数百ミクロン程度にして熱容量を減らすことが好ましい。また、基板10は、30mm平方以上の四角形状であることが好ましいが、ほぼ同面積の円形、四角形以外の多角形としてもよい。
【0034】
詳しくは図示しないが、温度計測手段としての温度計20には、体表面BSの温度Tskを測定する放射温度計21と、基板10の基板温度Tsubを測定する基板温度計22とが含まれる。放射温度計21は、体表面BSと向かい合うように基板10の下面側に配置される。なお、基板10に孔を開け、その孔内に放射温度計21を取り付けてもよい。
【0035】
放射温度計21には、ボロメータ検出器やサーモパイル検出器等が用いられ、体表面BSの放射赤外線量を測る。基板温度計22は、基板10の基板温度Tsubを測る温度計で、放射温度計21とは別に設けられてもよいが、放射温度計21が備えている校正用温度計を用いることができる。
【0036】
基板10と体表面BSとの間の空気層Aの熱抵抗をRthairとして、体表面BSにほぼ垂直に流れる熱流(熱流束)Ithは、Ith=(Tsk-Tsub)/Rthairより求めることができる。
【0037】
空気層Aを使うことで基板10と体表面BSとの間の熱抵抗Rthを大きな値とすることができるが、空気層Aに代えて例えば発泡材等よりなる固体の断熱層が採用されてもよい。この場合には、放射温度計に代えて固体の断熱層の体表面側の面に体表面の温度を測定する温度計が設けられる。
【0038】
ここで、生体の深部体温をTcore、生体の深部組織から体表面BSまでの熱抵抗を体内熱抵抗Rthbodyとして、深部体温Tcoreは、Tcore=Tsk+Ith×Rthbodyより求めることができる。
【0039】
なお、この第1実施形態において、上記体内熱抵抗Rthbodyは図示しない他の方法で測定される。その方法の一例として、一対の電極より生体に微弱電流(例えば、0.2μA程度)を流して生体内の電気抵抗(GSR:Galvanic Skin Resistance)を測定する体内電気抵抗測定手段により測定される体内電気抵抗値より体内熱抵抗Rthbodyを推定する方法がある。この体内電気抵抗測定手段を備える態様も本発明に含まれる。
【0040】
次に、
図2を参照して、第2実施形態に係る生体データ測定装置1は、基板10を体表面BS上の所定高さ位置に支持する支持部材30を備える。支持部材30は、できるだけ熱抵抗Rthが大きく、外力に対して変形しにくい断熱材31、例えば発泡プラスチック材等が好ましく採用される。
【0041】
この種の発泡プラスチック材には、ポリウレタンやポリスチレン等がある。ポリウレタンを材料にした硬質ウレタンフォームには、静止大気の熱抵抗率が40m・K/W相当のものがある。圧縮強度として、数百gf/cm2~1kgf/cm2程度のものを作ることができる。
【0042】
この実施形態において、支持部材30(断熱材31)は、体表面BSへの装着時に放射温度計21と体表面BSとの間に空気層Aとしてのほぼ密閉された空間を形成し、それ以外の上面を含む基板面を覆うように形成される。
【0043】
次に、
図3に示す第3実施形態において、生体データ測定装置1は、体表面BSからの熱流Ithの横方向の逃げを減らすためのケース40を備える。ケース40は、上板(天板)401と、上板401の周縁から下方に向けてほぼ直角に折り曲げられた側板402とを有する底面(体表面BS側の面)が開放された箱体で、その内部に基板10が断熱材31に支持された状態で収納される。
【0044】
一方、この第3実施形態では、基板10に送信部24と演算部25とが設けられる。演算部25は、一例として上記したように放射温度計21にて測定された体表面温度Tskと基板温度計22にて測定された基板温度Tsubおよび空気層Aの熱抵抗Rthairにより熱流Ith等を算出する。送信部24は、その算出された演算値等を図示しない親機としてのデータ収集・解析装置に無線で送信する。
【0045】
送信部24には無線モジュール等が用いられ、演算部25にはマイクロコンピュータ等が用いられるが、これらのモジュールやパッケージに発熱部品が含まれ、その発熱(多くの場合、微少な発熱)が深部体温の測定に誤差を与えるような場合には、その対策の一つとして、送信部24および/または演算部25をケース40の外側に配置することができる。
【0046】
別の方法として、送信部24および/または演算部25と体表面BSとの熱伝導をよくする高熱伝導材料を空気層A(例えば基板10の下面)に設けて、送信部24および/または演算部25の発熱を体表面BSに逃すこともできる。
【0047】
さらには、送信部24および/または演算部25を基板10の上面に配置して、その発熱を大気側に逃す方法や、送信部24および/または演算部25と温度計20との間に断熱手段を介在させる方法もある。
【0048】
別の態様として、演算部25を上記親機(データ収集・解析装置)側に設けて、その親機に対して送信部24から体表面温度Tskや基板温度Tsub等を送信し、親機側で熱流Ithや深部体温Tcore等を求めるようにしてもよく、このような態様も本発明に含まれる。
【0049】
ケース40は、水平方向の温度分布を減少させるとともに、送信部24の無線(電磁波)が透過し得る材質であることが好ましく、これに該当する材質としてはアルミナが挙げられる。ちなみに、アルミナの熱抵抗率は0.03m・K/Wである。
【0050】
アルミナに代えて、パターニングされたプリント基板を使用することもできる。この場合には、送信部24の通信アンテナに対応する特定部分40a(
図3(a)では右上の角部分)の導体(銅箔)は削除し、無線が通過し得るようにする。なお、ケース40の側板402は金属製であってもよい。
【0051】
送信部24には、2.4GHzや13.56MHz(Industry-Science-Medicalバンド)が使える。図示しないが、基板10には送信部24や演算部25に電源を供給する電池(好ましくは二次電池)が搭載されるが、13.56MHzで上記親機側から電力を送るようにしてもよい。
【0052】
図4に示す第4実施形態では、支持部材30として筒状の断熱材311,312を用いている。断熱材311,312は同心状に配置され、断熱材311が内側で、断熱材312が外側である。
【0053】
この第4実施形態において、内側の断熱材311は、体表面BSへの装着時に放射温度計21と体表面BSとの間に密閉された空間(空気層A)を形成するように基板10の下面側に設けられる円筒状の下部断熱材311aと、基板10の上面とケース40の内面との間に配置される上部断熱材311bとを備えている。
【0054】
外側の断熱材312は、基板10の外周側を支持する支持部材で、基板10の下面側に設けられる円筒状の下部断熱材312aと、基板10の上面とケース40の内面との間に配置される上部断熱材312bとを備えている。
【0055】
なお、この第4実施形態において、内側の断熱材311に含まれる上部断熱材311bと下部断熱材311aは同径であるが、異径であってもよい。同じく、外側の断熱材312に含まれる上部断熱材312bと下部断熱材312aも同径であるが、異径としてもよい。
【0056】
この第4実施形態において、断熱材311,312は円筒状であるが、四角筒状であってもよい。一般的に、断熱材は圧縮強度を上げると熱抵抗率が下がるため、上記のように筒状とすることで熱抵抗を上げることができる。例えば、ポリスチロールは熱抵抗率が8m・K/W、強度はあるがやや熱抵抗率が低いため部分的に使用する。
【0057】
次に、
図5を参照して、第5実施形態に係る生体データ測定装置1は、第1および第2の2つの温度計20a,20bを備える。温度計20a,20bには、ともに放射温度計21と基板温度計22とが含まれている。
【0058】
2つの温度計20a,20bを備えるに伴って、その搭載基板10として、2枚の基板10a,10bが用いられる。一方の基板10aに第1温度計20aが設けられ、他方の基板10bには第2温度計20bが設けられる。この実施形態において、送信部24と演算部25はともに一方の基板10a側に配置される。
【0059】
基板10aと基板10bは、フレキシブル基板11にて接続されており、第2温度計20bはフレキシブル基板11内の配線を介して送信部24および/または演算部25に接続される。これとは別の態様として、温度計20a,20bを同一の基板10に並置してもよい。
【0060】
温度計20a,20bの異なる点は、
図5(b)に示すように、一方の温度計、この実施形態では第1温度計20aの上方に断熱材313が配置され、第2温度計20b側の上方は空間となっている点である。
【0061】
演算部25は、温度計20a,20bにて測定された体表面温度Tskと基板温度Tsubに基づき、次のようにして生体の深部体温Tcoreを求める。
【0062】
すなわち、第1体温計20aにて測定される体表面温度をTsk1、第1体温計20aの部分で体表面BSにほぼ垂直に流れる熱流をIth1、第2体温計20bにて測定される体表面温度をTsk2、第2体温計20bの部分で体表面BSにほぼ垂直に流れる熱流をIth2、生体の深部組織から体表面BSまでの体内熱抵抗をRthbodyとして、演算部25は、(Tsk2-Tsk1)/(Ith1-Ith2)よりRthbodyを算出した後、(Ith1×Rthbody+Tsk1)もしくは(Ith2×Rthbody+Tsk2)により生体の深部体温Tcoreを求める。
【0063】
ちなみに、第1体温計20aの基板温度計22で測定された基板温度をTsub1、第2体温計20bの基板温度計22で測定された基板温度をTsub2、空気層Aの熱抵抗をRthairとして、上記したように、熱流Ith1は、Ith1=(Tsk1-Tsub1)/Rthairより求められ、熱流Ith2は、Ith2=(Tsk2-Tsub2)/Rthairにより求められる。
【0064】
このように、この第5実施形態によれば、生体の深部組織から体表面BSまでの体内熱抵抗Rthbodyが演算により求められるため、別途の測定手段(例えば、上記体内電気抵抗測定手段)により体内熱抵抗Rthbodyを測定(推定)する必要はない。
【0065】
次に、
図6(a)(b)を参照して、第6実施形態に係る生体データ測定装置1は、例えば先の
図4で説明した第4実施形態をベースとし、生体に対する装着性を高めることを特徴としている。
【0066】
すなわち、この第6実施形態では、
図6(b)に示すように、ケース40の下面(体表面BSと向かい合う面)の全面をシート51で覆い、シート51の下面(体表面BSと向かい合う面)に粘着ゲル52を所定の厚さに塗布している。これによれば、生体データ測定装置1を体表面BSに馴染みよく装着することができる。
【0067】
柔らかい粘着ゲル52が変形して、空気層Aの厚さが変化しないようにするため、シート51には、粘着ゲル52により硬い(高弾性)の素材が用いられる。
【0068】
この場合、放射温度計21は、シート51の温度を測定することになるが、体内熱抵抗Rthbodyを求めるには、シート51と粘着ゲル52の各熱抵抗Rthを減算すればよい。別の方法として、シート51と粘着ゲル52に赤外線透過材料を用いることにより、体表面温度Tskを測定することができる。
【0069】
また、空気層Aとなる空間内に、キセノン、クリプトン、アルゴン等の希ガスを封入することにより、熱抵抗率を上げることができる。また、例えばシート51にエンボス加工を施して、粘着ゲル52に汗の排出溝を形成することもできる。これによれば、粘着ゲルの粘着性を維持する効果が奏される。
【0070】
なお、この第6実施形態の変形例として、放射温度計21にて体表面温度を直接測温し得るようにするため、
図6(c)に示すように、ケース40の底面中央部からシート51および粘着ゲル52を無くしてもよく、このような態様も本発明に含まれる。この第6実施形態は、先の
図5で説明した第5実施形態にも適用可能である。
【0071】
この生体データ測定装置1は、
図7(a)(b)に示すように、装着ベルト60を介して生体Hの所定部位(例えば、胸部や腹部等)に装着される。なお、
図7(b)に示されている生体データ測定装置1は、先の
図3で説明した第3実施形態の生体データ測定装置1であるが、他の実施形態の生体データ測定装置1であってもよい。
【0072】
装着ベルト60は、弾性構造として、伸び率が大きなゴム材(好ましくは、伸び率が数十~数百%のゴム材)製であることが好ましい。また、夏場での熱中症対策として、装着ベルト60が生体Hに対する通気性の妨げにならないようにするため、装着ベルト60に例えばメッシュ(網目)よりなる通気性を持たせるとよい。
【0073】
ところで、ケース40は低熱抵抗であることから、生体Hに装着中にケース40に腕等が触れると、急速な温度変化によって体温測定に誤差が生ずる場合がある。そこで、
図8に示す第7実施形態では、ケース40を覆う保護カバー70を備える。
【0074】
保護カバー70は、例えば高発泡度のポリウレタンやポリスチレン等の熱を伝えにくい断熱材料からなる。保護カバー70は、ケース40よりも一回り大きい底面が開放された箱体として形成され、対向する両側面に装着ベルト60を通すための装着ベルト挿通口71,71を備える。
【0075】
次に、
図9を参照して、第8実施形態について説明する。この実施形態においては、生体データ測定装置1を上記したように装着ベルト60にて体表面BSに装着する際、装着ベルト60による締付力によって体表面BSが盛り上がって空気層Aの間隔(基板10と体表面BSとの距離)が変化するのを防ぐためのケースとして、上面が開放されているケース本体41と、ケース本体41の上面に着脱可能に被せられる蓋42とを有するケース40Aが用いられる。
【0076】
ケース本体41は、四角形状の底板411およびその4辺に立設された側板412を有する上面が開放されている箱体で、その内部に、温度計20、送信部24および演算部25等を有する基板10が支持部材30としての断熱材31にて支持された状態で収納される。使用時には、ケース本体41の上面は蓋42によって塞がれる。
【0077】
この実施形態において、ケース本体41と蓋42は、ともにアクリル樹脂製であるが、熱抵抗が低く低熱容量で、赤外線を透過し得る材質であれば、他の合成樹脂材であってもよい。なお、蓋42は、必ずしも赤外線を透過し得る材質でなくてもよいが、送信部24の無線(電磁波)が透過し得る材質を選択する必要がある。
【0078】
このようなケース40Aを用いることにより、生体データ測定装置1を装着ベルト60にて体表面BSに強く締め付けても、基板10と体表面BSとの間に存在する空気層Aの間隔が一定に保たれる。
【0079】
また、この第8実施形態に係る生体データ測定装置1は、ケース40Aの側面(側板412)からの熱の出入りを基板10に伝えるための高熱伝導膜53を備える。ここで、高熱伝導とは熱抵抗率で0.01m・K/W前後(熱伝導率として100W/m/K前後)と規定され、高熱伝導膜53にはアルミニウム箔が好ましく採用される。
【0080】
この実施形態によると、高熱伝導膜(アルミニウム箔)53は、基板10の下面周縁から断熱材31の内面にかけて、それらの各面に密着するように配置される。これによれば、環境温度が変化した場合でも、基板10を経由して体表面温度(皮膚温度)Tskが変化するため、体表面温度Tskだけが単独で変化することによる誤差を排除することができる。
【0081】
高熱伝導膜53は、赤外線放射率がゼロに近い(ほぼ0である)ことが好ましい。その理由は、熱伝導の限界で基板10に十分に熱を伝えられないような場合でも、断熱材31の温度変化が空気層Aに向かって放射されないようにするためである。
【0082】
なお、高熱伝導膜53は、先の
図3ないし
図6で説明した底面が開放されているケース40を備える各実施形態の場合にも適用可能である。この場合には、例えば
図5(b)に示すように、高熱伝導膜53は、ケース40内において側板402から基板10にかけて配設される。
【0083】
次に、先の
図4で説明した第4実施形態に係る生体データ測定装置1を例にして、体温測定時における各部の熱抵抗と温度との関係について説明する。
【0084】
まず、
図10(a)のグラフは、横軸を熱抵抗Rth(単位;K・m
2/W),縦軸を温度(単位;℃)とする冬季での各部における熱流(Heat Flux)の推移を示している。このグラフでは、例えば深部体温36.5℃、環境温度0℃とし、肌着+シャツ+セータを着用している冬季を想定している。
【0085】
体内深部から体表面(25mmの厚さを仮定)、静止大気(基板の上下にそれぞれ3mmの空気層を仮定)、冬季衣服(肌着やシャツやセーターの下にそれぞれ1mmの空気層を仮定)、開放大気(対流あり)の各熱抵抗率と熱抵抗は
図10(b)の表を参照。
【0086】
図10(a)のグラフにおいて、直線の傾き(T/Rth)は熱流(Heat Flux)Ithとなり、この例の場合、Ith=55W/m
2となる。
【0087】
次に、
図11(a)のグラフは、横軸を熱抵抗Rth(単位;K・m
2/W),縦軸を温度(単位;℃)とする夏季での各部における熱流(Heat Flux)の推移を示している。このグラフでは、深部体温36.5℃、環境温度25℃とし、シャツのみを着用している夏季を想定している。
【0088】
体内深部から体表面(25mmの厚さを仮定)、静止大気(基板の上下にそれぞれ3mmの空気層を仮定)、夏季衣服(シャツの下に1mmの空気層を仮定)、開放大気(対流あり)の各熱抵抗率と熱抵抗は
図11(b)の表を参照。
【0089】
図11(a)のグラフにおいて、直線の傾き(T/Rth)は熱流(Heat Flux)Ithとなり、この例の場合、Ith=23W/m
2となる。
【0090】
次に、先の
図5で説明した第5実施形態に係る2つの温度計を有する生体データ測定装置1について、その体温測定時における各部の熱抵抗と温度との関係を
図12により説明する。
【0091】
図12(a)のグラフは、
図11(a)のグラフと同じく、深部体温36.5℃、環境温度25℃とし、シャツのみを着用している夏季を想定している。
【0092】
体内深部から体表面(25mmの厚さを仮定)、静止大気(第2温度計20bの基板の上下にそれぞれ3mmの空気層を仮定)、断熱材(第1温度計20aの基板上面に厚さ3mmのポリスチレンを設定)、夏季衣服(シャツの下に1mmの空気層を仮定)、開放大気(対流あり)の各熱抵抗率と熱抵抗は
図12(b)の表を参照。
【0093】
図12(a)のグラフにおいて、破線が第1温度計20aにて測定される熱流Ith1で、実線が第2温度計20bにて測定される熱流Ith2である。これら熱流Ith1とIth2とが異なることから、体表面温度Tskと熱流Ith1,Ith2とから深部体温Tcoreを計算することができる。
【0094】
以上説明したように、本発明の生体データ測定装置は、基本的な構成として、基板と、基板に搭載される放射温度計および基板温度計と、基板を体表面に対して所定距離離れた位置に支持する支持部材とを備えて構成されることから、構成が簡単で低コストで作成することができる。また、基板と体表面との間の断熱層が空気層であるため、基板と体表面との間の熱抵抗を大きな値とすることができる。
【0095】
次に、
図13(a)(b)および
図14a,14bを参照して、第9実施形態に係る生体データ測定装置1について説明する。この生体データ測定装置1は、装着ベルト200を介して胸部や腹部等の体表面に装着されるケース100を備える。
【0096】
ケース100は、底板、側板および上蓋を有する箱体からなり、その内部には、基板10が断熱材31からなる支持部材30を介して底板との間に所定の空間Aが生ずるように支持されている。基板10の底面側には、上記各実施形態と同じく、放射温度計21と基板温度計22を含む温度計20が配置されている。
【0097】
ケース100内には、上記各実施形態の構成が適用されてよいが、そのほか、この第9実施形態では、ケース100の上蓋の外面には、周囲温度を計測する環境温度計330が配置されている。環境温度計330は、特別仕様である必要はなく、市販品が用いられてよい。
【0098】
また、基板10には、種々の信号処理回路群300が設けられている。この第9実施形態において、信号処理回路群300には、心電を測定するECG(Electrocardiogram)測定回路310、皮膚(体内)の電気抵抗を測定する体内電気抵抗測定手段としてのGSR(Galvanic Skin Resistance)測定回路311、GSR駆動回路312、通信回路313、制御回路314、記憶回路315、電源回路316および電池317が含まれている。
【0099】
通信回路313は、送信部24を含み外部との通信を行う。制御回路314には、マイクロコンピュータやCPU,MPU等が用いられ、各回路の制御を行う。記憶回路315は、生データや計算結果等を記憶する。電源回路316は、電池317の電圧を所定の電圧に変換して各回路に供給する。
【0100】
装着ベルト200には、体表面に接触する2つの電極211,212が設けられている。装着ベルト200とケース100との間には、電極211,212と、ECG測定回路310、GSR測定回路311、GSR駆動回路312の各回路とを接続するコンタクト部C1,C2が設けられている。
【0101】
コンタクト部C1は、装着ベルト200側で一方の電極211と配線を介して接続される雄コンタクト221と、この雄コンタクト221の相手側としてケース100の上蓋に設けられる雌コンタクト111の組合せからなる。
【0102】
コンタクト部C2は、装着ベルト200側で他方の電極212と配線を介して接続される雄コンタクト222と、この雄コンタクト222の相手側としてケース100の上蓋に設けられた雌コンタクト112の組合せからなる。
【0103】
この例において、雌コンタクト111,112には、ECG測定回路310、GSR測定回路311およびGSR駆動回路312がそれぞれ接続されており、電極211,212は、ECG測定とGSR測定とに併用されている。
【0104】
なお、好ましくは、雄コンタクト221,222には、コイン型やボタン型の円盤形状をなす導電性マグネットが用いられ、雌コンタクト111,112には、皿状に形成された磁性体が用いられるが、雌コンタクト側を導電性マグネット、雄コンタクト側を磁性体、もしくは双方とも導電性マグネットとしてもよい。
【0105】
なお、コンタクトの「雄」、「雌」の呼称は便宜的なものであって、必ずしも雄が凸形状、雌が凹形状である必要はなく、雌コンタクトを第1コンタクト、雌コンタクトを第2コンタクトとしてもよい。
【0106】
また、変形例として、
図14bに示すように、電極211,212の外側に2つの電極213,214を追加して4電極にするとともに、これに伴って、コンタクト部C3,C4を追加することもできる。コンタクト部C3,C4は、コンタクト部C1,C2と同じ構成であってよい。
【0107】
この場合には、追加した外側の電極213,214にコンタクト部C3,C4を介してGSR駆動回路312を接続して、電極213,214にGSR駆動回路312からの駆動電流を供給する。
【0108】
内側の電極211,212については、コンタクト部C1,C2を介してECG測定回路310とGSR測定回路311とに接続し、GSR電圧を計測するとともに、電極211,212でECG信号を同時に測定する。
【0109】
このように、4電極法(4端子法)として、4つの電極211~214を駆動電流供給側の電極213,214と電圧計測側の電極211,212とに分けることにより、電極-皮膚間の接触抵抗の影響を排除することができる。特に、GSRの絶対値が重要な場合に有効である。また、心電(ECG)の電圧計測にとっては、GSR駆動によるノイズが入りにくい、という利点がある。
【0110】
上記したように、この第9実施形態では、心電を測定するECG測定回路310を備えている。したがって、温度計20を含む体温測定系で求められる深部体温Tcoreと心電(ECG)とを同時に測ることにより、ユーザーの生理的な状態をより正確に把握することができる。
【0111】
すなわち、深部体温Tcoreは運動負荷や環境変動に対して遅れて反応する。これに対して、ECGから求められる心拍数は、運動負荷に対して即座(敏感)に反応する。したがって、ECG計測を併用することで、運動の開始や継続・終了等を把握することができる。
【0112】
また、深部体温Tcoreが所定の閾値を超えたとき、ユーザーやその管理者に運動の中止を警告することも可能である。環境変動に関しては、基板温度Tsubやその他の温度計で把握することができ、同様に環境に対する警告を行うこともできる。上記したように、ケース100の上蓋の外面に環境温度計330が配置されているため、その温度計測値を深部体温Tcoreに反映させることもできる。
【0113】
なお、装着ベルト200によるケース100の体表面への装着時、皮膚-ケース底板との間に隙間ができないように、さらには発汗があったときにケース100がずれないように、ケース底面にシリコーン等の粘着膜121を設けることが好ましい。
【0114】
次に、
図15(a)(b)により、第10実施形態の時定数補正について説明する。体表面温度Tskは、皮下の熱抵抗と熱容量とに起因して、往々にして基板温度Tsubより時間的に応答が遅れる。これは、基板温度Tsubは周辺温度に依存するとともに、基板10の熱容量が比較的小さいからである。
【0115】
体表面温度Tskの時間遅れに起因して、
図15(a)の破線で示すように、深部体温Tcoreに計算誤差が発生する。基板温度Tsubに対して所定の遅延をかけて体表面温度Tskとの遅延量の差をなくすことにより、深部体温Tcoreの計算誤差を減らすことができる。
【0116】
基板温度Tsubに対する遅延量Tsub_dを作るには、Tsub[n-1],Tsub[n],Tsub[n+1]…という時系列データに対して、例えば、Tsub_d[n+1]=Tsub_d[n]+(Tsub[n+1]-Tsub_d[n])/τsubという計算を行うことにより、基板温度Tsubに対する遅延量Tsub_dを得ることができる。
【0117】
上記時系列データにおいて、1秒おきにデータが存在する場合、一例として、τsubを50程度に設定することにより、基板温度Tsubに対して、時定数が50秒程度の遅延を与えることができる。
【0118】
体内熱抵抗Rthbodyとτsubには相関があるため、あらかじめその相関テーブルを作成しておき、体内熱抵抗Rthbodyの値に応じてτsubを選択することもできる。また、装着開始時等にオーバーシュート(
図15(a)の点線参照)が現れる場合があるが、そのオーバーシュートの形状を記憶しておいて、オーバーシュートを取り除くこともできる。
【0119】
次に、
図16aないし
図16dにより、第11実施形態として、装着時の過渡応答から体内熱抵抗Rthbodyを求める方法について説明する。この方法によれば、SHF(Single Heat Flux)法において、深部体温の絶対値が求められる。
【0120】
生体データ測定装置1の装着開始後、熱流Ithは大きな値から小さな値に変化して行く。
図16aを参照して、この間の時間(時刻)A,Bにおける2つの熱流Ithから未知数である体内熱抵抗Rthbodyを求める。
【0121】
まず、装着時の過渡応答を記録するため、装着前からデータを記録しておく。体内熱抵抗Rthbodyの初期値は仮の値とするが、比較的大きな値に設定することにより、上記オーバーシュートが現れる。このオーバーシュートあたりに第1時刻としての時間Aを設定する。これにより、装着初期の不安定な期間を避けることができる。
【0122】
第2時刻の時間Bとしては、時間Aから数分経過した時間、好ましくは5~10分程度がよい。これよりも時間が短いと時間Aからの変化が少なく誤差が生じやすい。また、これよりも時間が長いと、ユーザーの体温が変化する場合があるため好ましくない。
【0123】
図16bのフローチャートを併せて参照して、仮に設定した体内熱抵抗Rthbodyの値に基づいて、時間(時刻)Aにおける深部体温TcoreAと、時間(時刻)Bにおける深部体温TcoreBとを算出し、TcoreAとTcoreBとを比較する。
【0124】
その結果、TcoreA<TcoreBの場合には、体内熱抵抗Rthbodyの値を増大させ、TcoreA>TcoreBの場合には、体内熱抵抗Rthbodyの値を減少させて、再度深部体温Tcoreを算出する。
【0125】
TcoreA-TcoreBの絶対値|TcoreA-TcoreB|が判定値以下に収まった場合には、体内熱抵抗Rthbodyの値として、そのときの値を採用して、Rthbodyの増減を終了し、最終的に深部体温Tcoreを算出する。
【0126】
体内熱抵抗Rthbodyの増大、減少に関しては、増大、減少の変化量を順次1/2にしていく二分岐探索法を使うことができる。なお、解が見つからない場合、ユーザーに再度装着し直すことを指示することもできる。あるいは、前回求めた値を使うこともできる。腹部や背中等、場所ごとに体内熱抵抗Rthbodyを記憶しておき、場所ごとに平均化することにより、精度をより高めることができる。
【0127】
また、TcoreAとTcoreBの比較の代わりに、オーバーシュートを除去したうえで、区間A~Bの間での深部体温Tcoreの微分波形を用いて、区間A~B間の多くの点から深部体温Tcoreの傾きを判定することもできる。
【0128】
図16c,
図16dを参照して、さらに数学的には、基板温度Tsubと体表面温度Tskの傾きから直接体内熱抵抗Rthbodyを決定することもできる。
【0129】
すなわち、時刻Aにおける基板温度TsubAと、時刻Bにおける基板温度TsubBとの差分より求まる基板温度Tsubの傾きをa、同じく、時刻Aにおける体表面温度TskAと、時刻Bにおける基板温度TskBとの差分より求まる体表面温度Tskの傾きをbとして、深部体温Tcoreの傾きがゼロとなる状態を求めればよく、体内熱抵抗Rthbodyや空気層の熱抵抗Rthairの定義から明らかなように、Rthbody/Rthair=b/(a-b)が深部体温Tcoreの傾きがゼロとなる条件になる。
【0130】
空気層Aの熱抵抗Rhairは既知、基板温度Tsubと体表面温度Tskの傾きa,bは上記のように時刻A,Bでの各温度から求まることから、体内熱抵抗Rthbodyを、Rthbody=Rthair×b/(a-b)なる式により直接求めることができる。
【0131】
なお、基板温度Tsubと体表面温度Tskの各傾きa,bは、それぞれ微分すれば求まるため、傾きである微分値を使って、Rthbody/Rthairの値を直接求めることもできる。空気層の熱抵抗Rthairは、校正によって分かるため、未知数である体内熱抵抗Rthbodyが求まる。
【0132】
前述したTcoreA-TcoreBの絶対値が所定の判定値内に収まるようにRthbodyの値を求める方法には、このような繰り返し計算なしで直接Rthbodyを求める方法も含まれる。
【0133】
DHF法では、空間的に離れた場所で測定される2つの熱流を用いて深部体温Tcoreを求めるのに対して、第11実施形態に係る発明によれば、SHF法でありながら、同一場所において時間的に離れた時刻A,Bでの熱流から深部体温Tcoreの絶対値を求めることができる。
【0134】
このように、同一の場所でしかも同じ温度計により、時間的に離れた時刻A,Bで2つの熱流を測定するようにしているため、場所によるばらつきや、温度計のばらつきに影響されることがない。さらには、DHF法やZHF法に比べて小型化にでき、消費電力を大幅に下げることが可能になる。
【0135】
ただし、深部体温Tcoreが変化していないことが条件とされ、また、時刻Aでの熱流と時刻Bでの熱流とが異なっている必要がある。さらには、深部体温Tcoreが変化し得ない速さで環境温度が変化するタイミングで実行する必要がある。
【0136】
第11実施形態に係る発明の測定対象は生体に限定されるものではなく、深部に熱源を有する構造体、例えば電子・電気機器、空調機器、調理器具、機械設備、輸送機器、建物、地質調査等にも適用することができる。また、生体に付ける場合も、衣服や靴、帽子、手袋、耳当て、眼鏡等の一部分に取り付けて使用することもできる。
【0137】
したがって、本発明には、深部から表面にかけて第1の熱抵抗を有する物体を被測定対象とし、上記被測定対象の表面に配置される第2の熱抵抗を持つ断熱層と、上記断熱層で隔てられた第1、第2の温度を測定する手段と、第1時刻Aで測定される上記第1、第2の温度と、それよりも所定時間が経過した第2時刻Bで測定される上記第1、第2の温度とから上記第1の熱抵抗を算出する手段と、上記第1,第2の熱抵抗と、上記第1、第2の温度とから上記被測定対象の深部の温度を算出する手段とを備えている測定装置も含まれる。
【0138】
被測定対象が生体の場合について言えば、第1の熱抵抗は体内熱抵抗Rthbodyに相当し、第2の熱抵抗を持つ断熱層は空気の熱抵抗Rthairを持つ空気層に相当し、第1、第2の温度は体表面温度Tsk,基板温度Tsubに相当する。
【0139】
次に、
図17(a)(b)により、第12実施形態として、ヒーター等の加熱体を用いた体内熱抵抗Rthbodyを求める方法について説明する。
【0140】
この実施形態では、ケース温度を深部体温Tcoreにまで上昇させることで一時的にZHF(Zero Heat Flux)の状態を作り出して、それをもとに体内熱抵抗Rthbodyを算出する。
【0141】
基板温度Tsubと体表面温度Tskが実際の深部体温Tcoreに一致すると熱流Ithは流れない(ZHF状態)。基板温度Tsubと体表面温度Tskが同一温度になることでZHF状態を把握することができる。この一致した温度が、一致する直前や直後の深部体温Tcore計算の答えとなるように体内熱抵抗Rthbodyを逆算する。
【0142】
具体的には、ケース100(
図13参照)の上に、ヒーターやカイロ等の加熱体を置くことでケース温度Tcaseは上昇する。加熱体として、手や腕をケース100の上に置いてもよい。なお、この加熱体による校正の間、ユーザーの真の深部体温が変動すると誤差になるため、安静時に行うよう、ユーザーにあらかじめ周知しておくことが好ましい。
【0143】
この加熱体による校正の受付ボタン等をケース100の任意の箇所に設けておき、ユーザーからの指示を受け付けることが好ましいが、ユーザーからの指示ではなく、システムが自動的に、ケース100に設けられた加熱体を駆動して校正を行うことも、校正受付の概念に含まれる。必要に応じて、加熱体をケース上に置くことをユーザーに指示する態様としてもよい。
【0144】
加熱体によってケース温度Tcaseが上昇する(
図17(a)の時間A~B)。この加熱によりケース温度Tcaseが所定の温度Tthを超えたら、加熱体をケース100から外すようユーザーに指示する。自動的に加熱を停止させるようにしてもよい。ケース温度Tcaseの代わりに、例えば基板温度Tsubや体表面温度Tskを採用してもよい。
【0145】
上記第11実施形態と同じく、時刻A,Bでの深部体温TcoreA,TcoreBの算出と判定を繰り返し、最適な体内熱抵抗Rthbodyを求める。温度が低下する時刻B,Cのデータを使うこともできる。
【0146】
さらには、時刻A~Cまでのすべての測定点を使って、深部体温Tcoreの上に凸、下に凸の形状を様々な方法で判定することも含まれる(例えば、Tcoreの微分波形を使う等して)。また、別の態様として、加熱体の代わりに冷却体を用いることも可能である。
【0147】
次に、
図18(a)(b)により、第13実施形態として、環境温度の変化から体内熱抵抗Rthbodyを求める方法について説明する。
【0148】
本発明者らは、通常の使用時において、体内熱抵抗Rthbodyの値にずれがあると、深部体温Tcoreの計算値に不連続点が多く発生することを実験により確認した。これは、体内熱抵抗Rthbodyにずれがあると、真の深部体温Tcoreが一定でも(実験では検証のために直腸温を同時観測)、深部体温Tcoreの計算値に変動が生じるためである。
【0149】
この変動は、体内熱抵抗Rthbodyのずれと、環境温度の変化がある場合とで発生する。実際の運用では、真の深部体温Tcoreが一定であるかどうか不明であるが、深部体温Tcoreの変化が少ないと考えられる期間、例えば深部体温Tcoreが有意に変化できないくらい速い環境温度変化(数分以内の変化)を検知した場合に、前述したような時間(時刻)A,Bで体内熱抵抗Rthbodyを求める計算を行う。
【0150】
ユーザーが運動している場合、急激な体温変化が起きることがあるため、心拍数が閾値以下であるときに、
図18(b)に示すように、体内熱抵抗Rthbodyを求めるステップを実行することが好ましい。
【0151】
時間(時刻)A,Bで体内熱抵抗Rthbodyを求める計算は、
図18(a)の点線で示すように、時間A,Bでの深部体温Tcoreの微分波形を観測することでも行うことができる。
【0152】
真の深部体温Tcoreが緩やかに変化している場合でも、微分波形を使えば、緩やかな変化はオフセットになるだけなので、オフセットからの変化は容易に判定することができる。微分波形は、2階微分以上の高次の微分を用いてもよい。
【0153】
例えば、1日の長い装着時間の中の大きな環境温度変化のタイミングで、このような体内熱抵抗Rthbodyの計算を行い、複数の体内熱抵抗Rthbodyから、その信頼度に応じた計算を行うことで、より正確な体内熱抵抗Rthbodyの決定が行える。
【0154】
次に、
図19aにより、第14実施形態として、体内深部から表皮までの距離であるbody_dの入力をユーザーに求める方法について説明する。
【0155】
この第14実施形態では、上記第11実施形態(装着時の過渡応答から体内熱抵抗Rthbodyを求める方法)で、適切な値の体内熱抵抗Rthbodyが得られない場合の代案として、体内深部から表皮(体表面)までの距離である体内深部距離body_dの入力をユーザーに求める。
【0156】
体内熱抵抗Rthbodyは、体内深部距離body_d×体内深部から表皮までの熱抵抗率で求めることができる。体内深部距離body_dをユーザーが知る方法として、GSRを用いる方法のほかに、身長と体重の入力を求め、測定部位と統計データから仮の体内熱抵抗Rthbodyを求めることもできる。前述したように、体内熱抵抗Rthbodyは、測定中に適宜、より正確な値に更新することができる。
【0157】
また、別の方法として、ユーザーに体内深部距離body_dの入力を求める代わりに、安静時の体温の入力を受けて、測定初期に得られた基板温度Tsubと体表面温度Tskから、深部体温Tcoreが受け付けた体温になるように、体内熱抵抗Rthbodyを逆算することもできる。
【0158】
直腸の安静時体温は、37℃±0.2℃で個人差が少ない。腹部は、この直腸温に対して±0.5℃程度の範囲内に収まることから、入力が得られない場合の初期値として37℃前後の値を使用することもできる。
【0159】
次に、
図19bにより、第15実施形態として、加速度による姿勢補正について説明する。なお、この生体データ測定装置1は、後述するように、加速度計(加速度センサー)を備えている。
【0160】
上記体内深部距離body_dは、ユーザーの姿勢(例えば立ち姿勢と寝姿勢)によって変化する場合があることから、加速度計より得られる加速度の値を用いて、姿勢の影響を軽減することができる。
【0161】
Azをユーザーの体表面に対して垂直方向の加速度(座位や立位ではAz=0,仰臥ではAz=1G(Gは重力加速度))として、body_d2=body_d-a×Azから体内深部から体表面までの補正された体内深部距離body_d2を求める。aは係数で実験等から求める。
【0162】
この補正された体内深部距離body_d2を使って体内熱抵抗Rthbodyの計算を行い、深部体温Tcoreを算出する。さらに、ケース100内での空気層Aの対流が重力加速度に対する向きに応じて変化して空気層Aの熱伝導率を変化させ、その変化量が問題となる場合もある。この場合も同様にして、空気層Aの厚さや熱抵抗をAz等の加速度を用いて補正することも本発明に含まれる。
【0163】
この他に、ケース100内の空気層Aは大気圧、湿度等の環境条件によってわずかながら変化するため、目的とする体温測定精度に応じて、同時に計測する大気圧や湿度を使って補正することができる。
【0164】
この生体データ測定装置1は、ホットプレートや恒温槽等を使用して校正することができる。ホットプレートを皮膚に見立てて、ホットプレート上に放射温度計21を載せ、恒温槽で環境温度を変化させる。この校正から空気層の熱抵抗を求める。
【0165】
なお、本発明で用いるアルゴリズムは、生体データ測定装置1に搭載されている制御部314で実行したり、クラウド上のサーバーで実行することもできる。
【0166】
次に、第16実施形態として、
図20~22を参照して、この生体データ測定装置1に搭載されているECG測定回路310、GSR測定回路311、GSR駆動回路312について説明する。
【0167】
ECG測定回路310とGSR駆動回路312は、それぞれ、ローパスフィルタ(LPF)を備え、GSR測定回路311はハイパスフィルタ(HPF)を有し、カットオフ周波数として、fECG,LPF<fGSR,HPF≒fGSR,LPFに設定される。
【0168】
GSR測定回路311は、さらにfsのアンダーサンプリングを行うA/D変換器と、|fc-N・fs|(Nは整数)を通過させるバンドパスフィルタ(BPF)とT=1/|fc-N・fs|の積分器を備える。
【0169】
この生体データ測定装置1は、皮膚(体表面)に装着して長時間にわたって深部体温Tcore等の測定を行うことから、その発熱をきわめて小さくする必要があり、消費電力削減に対してこれまでとは異なるアプローチが必要となる。その大きな枠組みとして、受動素子を用いた低電力化、サンプリング周波数を限界まで下げる、少ない計算量で信号処理を行っている。
【0170】
ECG測定回路310におけるECGの信号周波数は、数Hzから数十Hzであり、fECG,LPFとして、この信号周波数が通過するように、例えば数十Hz~数百Hzに設定する。LPFは、高周波側に設定したGSR駆動信号を除去する。ECG信号は、100Hz以下で比較的広い帯域を持つため、ADCはナイキストサンプリングを行い、そのサンプリング周波数は数十Hz~数百Hzに設定する。
【0171】
GSR駆動回路312のGSR駆動周波数fcは、ECGの信号周波数を避けて数百Hz~数十kHzに設定する。fGSR,HPFとして、例えば数百Hz~数十kHzに設定して、1/fノイズや熱ノイズを除去する。
【0172】
GSRのサンプリングでは、ADCはアンダーサンプリング動作をさせてサンプリング周波数fsとして例えば1kHz前後に設定する。サンプリング周波数は比較的高いが、特定の時間窓において間欠動作させて、消費電力を低減させる。特定の時間窓として、ECGの主たるピークタイミングであるR波の周辺を避けた時間窓に設定することで、R波の時間間隔の測定に影響を与えないようにすることができる。
【0173】
アンダーサンプリングによって、GSR信号は|fc-N・fs|(Nは整数)の周波数に現れる。例えば、fsを1024Hz,fcを5028Hzとすると、GSR信号は32Hzに現れる。デジタルBPFとして、この32Hzを通過させる狭い帯域にすることで、1/fノイズや熱ノイズ、量子化ノイズを除去する。
【0174】
さらに、信号のPower(信号の二乗)をM/32secの時間で積分することにより、例えばM=1において、32Hzに最初のヌル点が現れる。GSR駆動のキャリア周波数を、このヌル点の周波数に合うように設定することにより、極めて少ない計算量でキャリア成分を除去し、皮膚抵抗の変化である振幅情報を取り出すことができる。
【0175】
体内深部から表皮(体表面)までの体内深部距離body_dを求める際、GSRの位相情報が必要となる場合がある。GSRの駆動信号が皮下脂肪を通過すると、ある特定の位相シフトを引き起こし、その位相シフトしたところの振幅を見ることで、皮下脂肪の厚さが推定できる。GSR駆動信号の特定の位相での振幅を見るには、上記積分の開始点をGSR駆動信号のある特定の位相から始めることにより、特定位相の振幅を簡単に抽出することができる。
【0176】
GSR駆動周波数fcは、数百Hz~数十kHzに設定する。これに合わせてGSR駆動回路312のLPFのカットオフ周波数fGSR,LPFは、GSR駆動周波数fcが通過するように、かつ、高調波が減衰するように数百Hz~数十kHzに設定する。
【0177】
次に、
図23と
図24を参照して、本発明の第17実施形態について説明する。先の第9実施形態では、生体データ測定装置1を生体に装着するにあたって、そのケース100を装着ベルト200で体表面に押さえ付けるようにしているが、この第17実施形態では、ケース100を装着ベルト200の上に載せて生体に装着する。
【0178】
この第17実施形態では4電極法が採用されており、
図24に示すように、装着ベルト200の体表面と接する面(裏面)には、4つの電極211,212,213,214が設けられている。装着ベルト200の裏面において、電極211,212,213,214以外の部分は電気絶縁シート230によって覆われている。
【0179】
図14bを参照して、内側の2つの電極211,212は、コンタクト部C1,C2を介してECG測定回路310とGSR測定回路311とに接続され、外側の2つの電極213,214は、コンタクト部C3,C4を介してGSR駆動回路312に接続される。
【0180】
装着ベルト200の表面(
図24で紙面の背面側)には、コンタクト部C1,C2,C3,C4の一方のコンタクトとなる雄コンタクト221,222,223,224が設けられている。
【0181】
電極211は引き回し配線211aを介して雄コンタクト221に接続され、電極212は引き回し配線212aを介して雄コンタクト222に接続され、電極213は引き回し配線213aを介して雄コンタクト223に接続され、電極214は引き回し配線214aを介して雄コンタクト224に接続されている。
【0182】
図23(a)に示すように、この第17実施形態において、ケース100は底面が開放されている。ケース100内には、基板10のほかに、ケース・装着ベルト接続基板131が設けられている。
【0183】
詳しくは図示しないが、基板10には、放射温度計21を含む体温計や送信部24、先に説明した信号処理回路群300等が搭載されている。
【0184】
ケース・装着ベルト接続基板131は、基板10よりも底面側に配置され、その中央部分に放射温度計21の視野と空気層Aを確保するための開口部を有する。なお、基板10とケース・装着ベルト接続基板131は、断熱材からなる円筒状の支持部材30を介してケース100内に設けられている。また、この第17実施形態によると、ケース100の上蓋内面にケース温度計331が設けられている。
【0185】
図23(b)を併せて参照して、ケース・装着ベルト接続基板131の底面四隅には、装着ベルト200側の雄コンタクト221~224を相手側としてコンタクト部C1~C4を構成する雌コンタクト111~114が設けられている。これら雌コンタクト111~114は、配線を介して基板10に搭載されているECG測定回路310,GSR測定回路311,GSR駆動回路312等に接続されている。
【0186】
この第17実施形態において、雄コンタクト221~224と雌コンタクト111~114にはともに導電性磁石が用いられており、ワンタッチで電気的・機械的接続を行うことができる。
【0187】
ケース100が装着ベルト200の表面側に載置されることから、放射温度計21は、装着ベルト200の表面温度を計測するため、この第17実施形態では、皮膚の熱抵抗Rthに装着ベルト200の熱抵抗Rthを加算して深部体温Tcoreを計算する。
【0188】
放射温度計21が温度を計測する装着ベルト表面は、赤外線放射率が1に近い材料を用いることが好ましい。別の例として、放射温度計21の立体角にあたる部分の装着ベルトを削除して直接体表面温度を計測するようにしてもよい。
【0189】
次に、
図25(a)~(c)を参照して、本発明の第18実施形態として、生体データ測定装置1のケース100と装着ベルト200を解離可能なフックで連結した態様について説明する。
【0190】
この第18実施形態では、上記第17実施形態でコンタクト部C1~C4によりケース10と装着ベルト200とを電気的・機械的に接続しているところをフックF1~F4に代えている。フックF1~F4には、
図25(c)に例示するように、開口部を有する雌メンバー141と、鉤型の雄メンバー241との組合せが用いられてよい。
【0191】
そのため、この第18実施形態では、ケース・装着ベルト接続基板131をケース100からはみ出る大きさとし、その四隅にフックF1~F4の雌メンバー141を設ける。これに対して、装着ベルト200側にはフックF1~F4の雄メンバー241を設ける。
【0192】
雌メンバー141、雄メンバー241ともに導電材からなり、雄メンバー241を雌メンバー141に引っ掛けることにより、電気的・機械的な接続が行われる。雄メンバー241がケース100側、雌メンバー141が装着ベルト200側に設けられてもよい。
【0193】
フックF1~F4の位置は、それぞれ、上記第17実施形態でのコンタクト部C1~C4に対応しており、内側の2つの電極211,212は、フックF1,F2を介してECG測定回路310とGSR測定回路311とに接続され、外側の2つの電極213,214は、フックF3,F4を介してGSR駆動回路312に接続される。
【0194】
この第18実施形態は、4電極法であるためフックを左右2対としているが、2電極法の場合には、フックは左右1対であればよい。いずれにしても、この第18実施形態によれば、ケース100を装着ベルト200に対して簡単に取り付け、取り外しできるため、内蔵電池を充電したり、装着ベルトを選択する場合等において極めて便利である。
【0195】
次に、
図26により、本発明の第19実施形態として、生体データ測定装置1を1枚の基板10に搭載した態様について説明する。
【0196】
先にも説明したように、この生体データ測定装置1には、信号処理回路群300として、ECG測定回路310、GSR測定回路311、GSR駆動回路312、通信回路313、制御回路314、記憶回路315が含まれているが、この第19実施形態では、これらの各回路がモジュール化されて基板10に搭載されている。
【0197】
モジュールとして、SiP(SysteminPackage)を用いることができる。アンテナ(送信部24)や通信チップやマイコン(MPU)チップやメモリチップ等を一つのモールド内に実装することができる。
【0198】
この第19実施形態は、さらに加速度計321、湿度計322、マイク323、気圧計324を基板10に備えている。なお、基板10の裏面側には熱流計としての放射温度計21が配置されている。
【0199】
マイク323は、胸部や腹部の聴診に用いることができる。また、マイク323で環境音を収音して、歩行、乗り物、作業、会議、食事、トイレ、睡眠等のコンテキストを判定することもできる。また、マイク323を使って音声コマンドを入力してもよい。
【0200】
この生体データ測定装置1で収集した生体データは、携帯端末Bに送られて、携帯端末Bに搭載されているCPUで処理できる。さらに、携帯端末BからサーバーCにデータを送って、サーバーCで処理を行い、その処理結果を携帯端末Bに画面表示することもできる。
【0201】
処理結果に応じて、生体データ取得条件を変化させるために、生体データ測定装置1に制御コマンドを送ることもできる。画面表示だけでなく、バイタルを音声で読み上げることもできる。
【0202】
例えば、ユーザーが携帯端末Bのマイクを通じて深部体温の0.5℃おきの読み上げを指示した場合、データの流れは次のようになる。
【0203】
・コマンド情報の流れ:携帯端末Bでの音声認識→サーバーCでコマンドの受付・返答→携帯端末Bで返答の読み上げ
・データの流れ:放射温度計による熱流データ→携帯端末での深部体温Tcore計算→サーバーCでの0.5℃変化の判定・条件適合時に読み上げデータの送付→携帯端末Bでのデータの読み上げ。
【0204】
さらにメタボリックシンドローム対策に本発明を使用することもできる。本発明によれば、未知数である体内深部から表皮までの距離body_dが自動的に求まるため、運動による皮下脂肪の減少をユーザーに示すことができる。
【0205】
またさらに、体内深部の温度上昇や心拍、加速度等から、有酸素運動による消費カロリーを示すこともでき、運動効果が上げられる。
【0206】
各種バイオフィードバック技法(自律訓練法、マインドフルネス、呼吸法等)に本発明を使用することもできる。本センサー(生体データ測定装置)を手足を含めた数箇所に装着し、末梢深部体温から血管拡張の状態を把握したり、心電信号の揺らぎから自律神経の状態を把握、さらには心電信号の振幅から呼吸数を測定して、ユーザーに可視化して当該バイオフィードバック技法の効果を上げることができる。これは端末とクラウドとを連携させ、データの処理や蓄積、引用、共有化、AIによる解釈等を行うことができる。
【0207】
上記第19実施形態では、部品を搭載する基板10を1枚の基板としているが、
図27に示すように、本発明の第20実施形態として、生体データ測定装置を第1,第2の2枚の基板10a,10bに分けて搭載することもできる。
【0208】
基板10a,10bはともにリジッド基板で、この第20実施形態において、一方の第1基板10aには、モジュール化された主として信号処理回路群300と、加速度計321、湿度計3022、マイク323、気圧計324とが搭載され、他方の第2基板10bには、電源回路316、電池317が搭載されている。
【0209】
基板10a,10bは10mm角前後の面積を有し、生体の屈曲に追随し得るようにフレキシブル基板10cにて連結されていることが好ましい。この実施形態では、基板10a,10bの双方に熱流計としての放射温度計21が搭載されており、これら熱流計の熱的干渉を小さくするうえで、フレキシブル基板10cは熱抵抗が大きい方が好ましい。
【0210】
次に、
図28a~28eを参照して、生体データ測定装置1のケース100と装着ベルト200との電気的・機械的コンタクト部のいくつかの構成例について説明する。なお、以下の説明において、ケース100側のコンタクト部を第1コンタクト110とし、装着ベルト200側のコンタクト部を第2コンタクト220とする。
【0211】
まず、
図28aの第1例では、ケース100側の第1コンタクト110と装着ベルト200側の第2コンタクト220をともに導電性マグネットとしている。導電性マグネットは、コイン型やボタン型の円盤形状が一般的であるが、角型であってもよい。マグネット同士の場合、マグネットの中心位置が自動的に揃う(一致する)メリットがある。
【0212】
装着ベルト200側において、第2コンタクト220の導電性マグネットと、導電パターンよりなる電極210(211~214)は、導電性接着剤で電気的・機械的に接続する。導電パターンは銀(Ag)や塩化銀(AgCl)を主成分とする材料を用いることにより、皮膚との接触電位を減らすことができる。
【0213】
次に、
図28bの第2例では、ケース100側の第1コンタクト110は導電性マグネットであるが、装着ベルト200側の第2コンタクト220を鉄等の磁性を持つ磁性体としている。この場合、第2コンタクト220に第1コンタクト110が嵌合する凹部220aを設けるとよい。
【0214】
第2コンタクト220の磁性体と、導電パターンよりなる電極210との電気的・機械的接続には、上記第1例と同じく、導電性接着剤が用いられてよい。別の態様として、第2コンタクト220の磁性体にAgメッキを施し、電極210の導電パターンのAgとの間でAg・Ag間の熱融着を行うこともできる。
【0215】
図28cの第3例は、上記第1例の変形例で、電極210を導電パターンにより形成した後、第2コンタクト220として用いられる導電性マグネットを門型状のかしめ針220bにて固定する。かしめ後に電気絶縁シート230を被せる。
【0216】
図28dの第4例は、上記第2例の変形例で、第2コンタクト220として用いられる磁性体自体にかしめ脚220cを形成し、このかしめ脚220cを電極210に食い込ませて固定する。この場合にも、かしめ後に電気絶縁シート230を被せる。
【0217】
図28eの第5例は、装着ベルト200の裏面にある電極210の上(
図28eでは電極210の下)に第2コンタクト220としての導電性マグネットを配置し、装着ベルト200の表面側から門型状のかしめ金具220dを打ち込んで導電性マグネットを電極210上に固定する。
【0218】
この第5例によれば、上記第9実施形態の
図13aに示すように、生体データ測定装置1のケース100は、装着ベルト200の裏面側に配置され、装着ベルト200によって体表面に押し付けるようにして装着される。
【0219】
以上、上記各実施形態により本発明を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、上記各実施形態より導出される技術や均等物等も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0220】
1 生体データ測定装置
10(10a,10b) 基板
11 フレキシブル基板
20(20a,20b) 温度計
21 放射温度計
22 基板温度計
24 通信部
30 支持部材
31 断熱材
40,40A,100 ケース
41 ケース本体
42 蓋
51 シート
52 粘着ゲル
53 高熱伝導膜
60,200 装着ベルト
70 保護カバー
110 第1コンタクト
111~114 雌コンタクト
131 ケース・装着ベルト接続基板
210,211~214 電極
220 第2コンタクト
221~224 雄コンタクト
310 EDG測定回路
311 GSR測定回路
312 GSR駆動回路
316 電源回路
317 電池
A 空気層
C1~C4 コンタクト部
F1~F4 フック
Ith 熱流(熱流束)
Rthbody 体内熱抵抗
Tsk 体表面温度
Tsub 基板温度
Tcore 深部体温