(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】組換え豚パルボウイルス抗原タンパク質及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/82 20060101AFI20230120BHJP
C12N 15/85 20060101ALI20230120BHJP
A01H 5/00 20180101ALI20230120BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20230120BHJP
A61K 39/23 20060101ALI20230120BHJP
A61P 31/20 20060101ALI20230120BHJP
G01N 33/569 20060101ALI20230120BHJP
C12N 15/35 20060101ALN20230120BHJP
C07K 14/015 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
C12N15/82 Z ZNA
C12N15/85 Z
A01H5/00 A
C12N5/10
A61K39/23
A61P31/20
G01N33/569 L
C12N15/35
C07K14/015
(21)【出願番号】P 2021532309
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(86)【国際出願番号】 KR2019015705
(87)【国際公開番号】W WO2020116815
(87)【国際公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-06-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0155084
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】520130373
【氏名又は名称】リパブリック オブ コリア(アニマル アンド プラント クオレンティン エージェンシー)
【氏名又は名称原語表記】REPUBLIC OF KOREA(ANIMAL AND PLANT QUARANTINE AGENCY)
(73)【特許権者】
【識別番号】519142114
【氏名又は名称】バイオアプリケーションズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BIOAPPLICATIONS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ソン,ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,イン-オク
(72)【発明者】
【氏名】チョ,スドン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンジク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジュ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】チョ,イン-ス
【審査官】幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/083156(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0093644(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102382845(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第108096573(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
Google/Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド、配列番号2の6個の連続したヒスチジン(6xHis)をコードするポリヌクレオチド、および配列番号3の塩基配列又は配列番号4の塩基配列で表示される豚パルボウイルス(porcine parvovirus,PPV)VP2タンパク質をコードする遺伝子
の配列を順に連結してなる、組換え発現ベクター。
【請求項2】
請求項1の組換え発現ベクターによって形質転換された豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質を発現させる組換え植物体。
【請求項3】
請求項1の組換え発現ベクターによって形質転換された豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質を発現させる組換え昆虫細胞。
【請求項4】
請求項1に記載の組換え発現ベクターで形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質を含む、豚パルボウイルスワクチン用組成物。
【請求項5】
請求項1に記載の組換え発現ベクターで形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質を含む、豚パルボウイルス診断用組成物。
【請求項6】
請求項1に記載の組換え発現ベクターで形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質を含む、豚パルボウイルス診断用キット。
【請求項7】
請求項1に記載の組換え発現ベクターで形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルスVP2タンパク質を抗原として用いて、試料内で抗原-抗体反応によって豚パルボウイルスのVP2抗体を検出する豚パルボウイルス診断方法。
【請求項8】
前記抗原-抗体反応は、組織免疫染色、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウェスタンブロット(Western Blotting)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS(Fluorescence-activated cell sorter)及びタンパク質チップ(protein chip)分析法からなる群から選ばれる1種以上の方法を用いて行う、請求項7に記載の豚パルボウイルス診断方法。
【請求項9】
前記試料は、細胞、血液、小便、唾液及び組織からなる群から選ばれる1種以上である、請求項7に記載の豚パルボウイルス診断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大韓民国農林畜産食品部の支援下で課題番号1545016316によってなされたものであり、該課題の研究管理専門機関は農林畜産検疫本部、研究事業名は“農林畜産検疫検査技術開発(R&D)”、研究課題名は“植物遺伝子臨時発現システムを用いた新種豚パルボウイルスワクチン開発”、主管機関は農林畜産検疫本部、研究期間は2018.01.01~2018.12.31である。
【0002】
本特許出願は、2018年12月5日に大韓民国特許庁に提出された大韓民国特許出願第10-2018-0155084号に対して優先権を主張し、該特許出願の開示事項は、本明細書に参照によって組み込まれる。
【0003】
本発明は、組換え豚パルボウイルス抗原タンパク質及びその用途に関する。
【背景技術】
【0004】
豚パルボウイルス(Porcine parvovirus,PPV)は外皮(non-enveloped)がなく、一本鎖(single-stranded)であり、約5kbサイズの小さいDNAを持つウイルスで、ブタにおいて繁殖障害を起こす原因体の一つである。1965年にドイツで初めて分離されて以来、現在も、ヨーロッパとアジアをはじめとして全世界で流行している。PPV血清型1型が主に繁殖障害と関連しており、臨床症状の代表には、SMEDI症候群と呼ばれる死産(stillbirth)、胎児ミイラ化(mummification)、胚死(embryonic death)そして不妊(infertility)がある。また、繁殖障害の他にも、皮膚疾患、下痢、及び呼吸器障害を起こすため、養豚産業において多くの経済的損失を与えている。
【0005】
豚パルボウイルス感染症は、母豚で繁殖障害を起こし、全世界的に大きく問題となっているにもかかわらず、今も根絶されずにいる。このため、養豚農家の生産性損失を最小化し、妊娠母豚の分娩率を高めるためには、優れた効能を有し且つ有効性が改善された新しいワクチンが望まれている。
【0006】
現在用いられている豚パルボウイルス感染症診断法には、中和試験(Virus Neutralization Test,VNT)、酵素免疫法(Enzyme Linked Immunosorbent Assay,ELISA)、血球凝集抑制反応法(HI)などがある。現在、市都家畜防疫事業の家畜血清検査及び病性鑑定のために供給される診断液としてHIA(Hemagglutination Inhibition)診断液がある。HIA診断法は、動物(guinea pig)の血球を用いなければならないため、使用が面倒であり、血球採取のために動物を常時飼育しなければならないという不具合がある。中和試験法は、クリーンベンチで豚パルボウイルスを培養しなければならなく、結果を得るまで3~4日がかかるという問題点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、抗原タンパク質として、優れた抗原性及び免疫原性を有する組換え豚パルボウイルス抗原タンパク質を開発するために鋭意研究努力した。その結果、豚パルボウイルスVP2遺伝子のコドン(codon)を最適化(optimization)して合成し、これを含む組換え発現ベクターによって形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞から得た豚パルボウイルスVP2抗原タンパク質が高い安定性及び免疫原性を有するということを糾明し、本発明を完成するに至った。
【0008】
したがって、本発明の目的は、組換え豚パルボウイルスVP2タンパク質発現ベクターを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、組換え豚パルボウイルスVP2タンパク質を発現させる組換え植物体又は組換え昆虫細胞を提供することである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、豚パルボウイルスワクチン用組成物を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、豚パルボウイルス診断用組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、豚パルボウイルス診断用キットを提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、豚パルボウイルス診断方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一様態によれば、本発明は、豚パルボウイルス(porcine parvovirus)のVP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターを提供する。
【0015】
本発明者らは、抗原タンパク質として、優れた抗原性及び免疫原性を有する組換え豚パルボウイルス抗原タンパク質を開発しようと鋭意研究努力した。その結果、豚パルボウイルスVP2遺伝子のコドン(codon)を最適化(optimization)して合成し、これを含む組換え発現ベクターによって形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞から得た豚パルボウイルスVP2抗原タンパク質が高い安定性及び免疫原性を有するということを糾明した。
【0016】
前記豚パルボウイルスVP2タンパク質をコードする遺伝子は、配列番号3又は配列番号4の塩基配列で表示されるもの又はこれと機能的に同等な塩基配列を有することができる。
【0017】
前記配列番号3の塩基配列は、豚パルボウイルス82 VP2遺伝子のコドン(codon)を植物体発現のために最適化(optimization)した配列である。
【0018】
前記配列番号4の塩基配列は、豚パルボウイルス07 VP2遺伝子のコドン(codon)を植物体発現のために最適化(optimization)した配列である。
【0019】
前記“機能的に同等な”ものとは、塩基の付加、置換又は欠失の結果、配列番号3又は配列番号4の塩基配列と少なくとも70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上の配列相同性を有するものであり、配列番号3又は配列番号4で表示される塩基配列によってコードされたタンパク質と実質的に同質の生理活性を示すタンパク質をコードできる塩基配列のことを意味する。例えば、一部の塩基配列が欠失(deletion)、置換(substitution)又は挿入(insertion)によって修飾されたが、豚パルボウイルスVP2タンパク質をコードする核酸分子と機能的に同じ作用ができる変異体(variants)を含むことができる。
【0020】
本発明の他の様態によれば、本発明は、本発明の前記組換え発現ベクターによって形質転換された豚パルボウイルスVP2タンパク質を発現させる組換え植物体を提供する。
【0021】
前記植物体は、ニコチアナ(Nicotiana)属植物であってよい。
【0022】
前記ニコチアナ(Nicotiana)属植物は、ニコチアナアクミナタ(Nicotiana acuminata)、ニコチアナアフリカナ(Nicotiana africana)、ニコチアナアラタ(Nicotiana alata)、ニコチアナアテナータ(Nicotiana attenuata)、ニコチアナベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)、ニコチアナクレベランディイ(Nicotiana clevelandii)、ニコチアナエクシグア(Nicotiana exigua)、ニコチアナグラウカ(Nicotiana glauca)、ニコチアナグルチノサ(Nicotiana glutinosa L.)、ニコチアナラングスドルフィ(Nicotiana langsdorffii)、ニコチアナロンギフロラ(Nicotiana longiflora)、ニコチアナオクシデンタリス(Nicotiana occidentalis)、ニコチアナオブツシフォリア(Nicotiana obtusifolia)、ニコチアナオトフォラ(Nicotiana otophora)、ニコチアナプランバギニフォリア(Nicotiana plumbaginifolia)、ニコチアナクアドリヴァルヴィス(Nicotiana quadrivalvis)、ニコチアナルスチカ(Nicotiana rustica L.)、ニコチアナスアヴェオレンス(Nicotiana suaveolens Lehm.)、ニコチアナシルベストリス(Nicotiana sylvestris)、ニコチアナタバカム(Nicotiana tabacum L.)又はニコチアナトメントシフォルミス(Nicotiana tomentosiformis Goodsp.)でよく、例えば、ニコチアナベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)でよい。
【0023】
本発明に係る豚パルボウイルスVP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターによって形質転換された植物体は、豚パルボウイルスVP2タンパク質を発現させることができる。前記形質転換された植物体を用いる場合、植物体の裁培が可能な一般実験室で容易に大量のタンパク質が製造でき、得られた豚パルボウイルスVP2タンパク質は、モルモット赤血球に対する血球凝集能のような豚パルボウイルス抗原タンパク質固有の生物学的機能を有しており、感染性を持つ生きているウイルスの取扱による汚染可能性がないため安全であり、従来の抗原製造過程に比べて非常に迅速で正確に抗原を大量生産することができる。
【0024】
本発明の一具現例によれば、前記組換え植物体から得た豚パルボウイルスVP2抗原タンパク質は、豚パルボウイルスを診断するのに有用に用いることができる。
【0025】
本発明の他の態様によれば、本発明は、本発明の前記組換え発現ベクターによって形質転換された豚パルボウイルスVP2タンパク質を発現させる組換え昆虫細胞を提供する。
【0026】
前記昆虫細胞は、ハスモンヨトウ種のツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)に由来したSf-9細胞でよいが、これに制限されない。
【0027】
本発明の一具現例によれば、前記組換え発現ベクターに含まれる豚パルボウイルスVP2遺伝子は、植物体発現に最適化された配列で構成されるが、前記組換え発現ベクターで形質転換された組換え昆虫細胞においても豚パルボウイルスVP2タンパク質が効果的に発現する。
【0028】
本発明の一具現例によれば、前記組換え昆虫細胞から得た豚パルボウイルスVP2抗原タンパク質は、豚パルボウイルスを診断するのに有用に用いることができる。
【0029】
本発明の他の態様によれば、本発明は、前記組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルスVP2タンパク質を含む豚パルボウイルス診断用組成物及び診断キットを提供する。
【0030】
本発明において、“診断”は、病理状態の存在又は特徴を確認することを意味する。本発明の目的上、診断は、豚パルボウイルス発病の有無又は発病可能性の有無を確認することである。
【0031】
前記診断キットは、当業界おける通常の方法を用いて製造できる。このような診断キットは、豚パルボウイルスVP2抗原タンパク質の他、免疫学的分析に用いられる当分野における一般の道具、試薬なども含まれる。このような道具/試薬としては、適切な担体、検出可能な信号を生成できる標識物質、溶解剤、洗浄剤、緩衝剤、安定化剤などが含まれるが、これに制限されない。標識物質が酵素である場合には、酵素活性を測定できる基質及び反応停止剤を含むことができる。適切な担体としては、これに限定されないが、可溶性担体、例えば当分野に公知の生理学的に許容される緩衝液、例えば、PBS、不溶性担体、例えば、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアクリロニトリル、フッ素樹脂、架橋デキストラン、ポリサッカライド、ラテックスに金属をメッキした磁性微粒子のような高分子、その他に紙、ガラス、金属、アガロース及びそれらの組合せが挙げられる。
【0032】
また、本発明は、前記組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルスVP2タンパク質を抗原として用いて、試料内で抗原-抗体反応によって豚パルボウイルスVP2タンパク質に対する抗体を検出する豚パルボウイルスの診断方法を提供する。
【0033】
前記抗原-抗体反応は、当業界における通常のいかなる方法も用いることができ、例えば、組織免疫染色、放射能免疫分析法(RIA)、酵素免疫分析法(ELISA)、ウェスタンブロット(Western Blotting)、免疫沈殿分析法(Immunoprecipitation Assay)、免疫拡散分析法(Immunodiffusion Assay)、補体固定分析法(Complement Fixation Assay)、FACS(Fluorescence-activated cell sorter)及びタンパク質チップ(protein chip)分析法からなる群から選ばれる1種以上の方法を用いることができる。
【0034】
前記試料は、豚パルボウイルスに感染されていると予想されたり或いは感染されている細胞、血液、小便、唾液、組織などを含むが、それらに限定されない。
【0035】
本発明のさらに他の態様によれば、本発明は配列番号3又は配列番号4の塩基配列で表示される豚パルボウイルス(porcine parvovirus)VP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクターで形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞が発現させる豚パルボウイルスVP2タンパク質を含む、豚パルボウイルスに対するワクチン組成物を提供する。
【0036】
本明細書において用語‘ワクチン組成物’は、対象(subject)の免疫反応に肯定的に影響を与える組成物を意味する。前記ワクチン組成物は、対象(subject)に細胞性免疫反応、例えば、CTL(Cytotoxic T Lymphocyte)又は体液性免疫反応、例えば、抗体によって誘発される向上した全身的又は局所的免疫反応を提供する。
【0037】
前記ワクチン組成物は、薬剤学的に許容される担体をさらに含むことができる。本発明の組成物に含み得る薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常用いられるものであり、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアガム、リン酸カルシウム、アルジネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、ヒドロキシ安息香酸メチル、ヒドロキシ安息香酸プロピル、滑石、ステアリン酸マグネシウム及びミネラルオイルなどを含むが、それらに制限されるものではない。
【0038】
本発明の組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などをさらに含むことができる。適切な薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(19th ed.,1995)に詳細に記載されている。
【0039】
本発明のワクチン組成物は、その他の構成成分、例えば、安定化剤、賦形剤、その他薬学的許容化合物又は任意のその他抗原又はその一部を含むことができる。ワクチンは、冷凍乾燥した製剤又は懸濁液の形態で存在してよく、それらはいずれもワクチン生成分野における通常のものである。
【0040】
本発明であるワクチン組成物の投与形態は、腸溶皮使用単位体の形態、腹腔内、筋肉内又は皮下投与用接種、エアゾール噴霧、経口又は鼻腔内の用途であってよい。飲用水又は食用ペレットとして投与することも可能である。
【0041】
本発明のワクチン組成物は、異種抗原及びサイトカインのような免疫調節分子を同一の組換え体内で発現させて単一ワクチンとして伝達することもでき、免疫増強剤と共に投与することもできる。本明細書の用語、“免疫増強剤(adjuvant)”は、一般に、抗原に対する体液又は細胞免疫反応を増加させる任意の物質(例えば、ミョウバン(alum)、プロイント完全アジュバント、プロイント不完全アジュバント、LPS、poly IC、poly AUなど)を意味する。
【発明の効果】
【0042】
本発明の特徴及び利点を要約すれば、次の通りである:
(a)本発明は、豚パルボウイルスVP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクター、該ベクターによって形質転換された組換え植物体又は組換え昆虫細胞、該組換え植物体又は組換え昆虫細胞から得た豚パルボウイルスVP2タンパク質を含む豚パルボウイルスに対するワクチン組成物及び豚パルボウイルス診断用組成物を提供する。
【0043】
(b)本発明の組換え植物体又は組換え昆虫細胞を用いる場合、豚パルボウイルス抗原タンパク質を高効率で生産することができ、前記組換え植物体又は組換え昆虫細胞を用いた豚パルボウイルス抗原タンパク質生産方法は、他の抗原生産方法に比べて優れた安全性及び安定性を呈する。
【0044】
(c)本発明の豚パルボウイルス診断用組成物は、組換え抗原タンパク質を用いるものであり、生きているウイルスの取扱による汚染可能性がないため安全であり、大量の試料から速かに豚パルボウイルス感染の有無が診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】豚パルボウイルス系統(strain)別VP2タンパク質の配列を示す図である。
【
図2A】PPV82-opt VP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクター構造を示す模式図である。
【
図2B】PPV07-opt VP2タンパク質をコードする遺伝子を含む組換え発現ベクター構造を示す模式図である。
【
図3A】植物体で発現した組換えPPV82-opt VP2タンパク質の発現をウェスタンブロットを用いて確認した結果を示す図である。
【0046】
Rbc:6His:VP2は、ルビスコトランジットペプチド、6XHis及びコドン最適化したPPV VP2を一連の順序で含む発現ベクターで形質転換した植物体におけるPPV VP2発現を確認したものであり、Rbc:VP2:6Hisは、ルビスコトランジットペプチド、コドン最適化したPPV VP2及び6XHisを一連の順序で含む発現ベクターで形質転換した植物体におけるPPV VP2発現を確認したものである。
【
図3B】植物体で発現した組換えPPV07-opt VP2タンパク質の発現をウェスタンブロットを用いて確認した結果を示す図である。
【
図3C】コドン最適化されていないPPV VP2を含む発現ベクターで形質転換した植物体におけるPPV VP2発現をウェスタンブロットを用いて確認した結果を示す図である。
【0047】
6His:VP2は、6XHis及びコドン最適化されていないPPV VP2を含む発現ベクターで形質転換した植物体におけるPPV VP2発現を確認したものであり、VP2:6Hisは、コドン最適化されていないPPV VP2及び6XHisを含む発現ベクターで形質転換した植物体におけるPPV VP2発現を確認した結果である。
【
図4】昆虫細胞で発現した組換えPPV07-opt VP2タンパク質の発現をウェスタンブロットを用いて確認した結果を示す図である。
【
図5A】植物体で発現した組換えPPV82-opt VP2タンパク質の免疫原性をブタで評価した結果を示す図である。
【
図5B】植物体で発現した組換えPPV82-opt VP2タンパク質の免疫原性評価に用いられた96プレートを示す図である。
【
図6A】植物体及び昆虫細胞で発現した組換えPPV07-opt VP2タンパク質に対してモルモットで免疫原性を評価した結果を示す図である。
【
図6B】植物体及び昆虫細胞で発現した組換えPPV07-opt VP2タンパク質の免疫原性評価に用いられた96プレートを示す図である。
【
図7A】植物体で発現した組換えPPV82-opt VP2タンパク質のモルモット赤血球凝集能を確認した結果を示す図である。
【
図7B】植物体で発現した組換えPPV07-opt VP2タンパク質のモルモット赤血球凝集能を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をより具体的に説明するためのものであり、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例に制限されないということは、当業界における通常の知識を有する者にとって明らかであろう。
【0049】
実施例
実施例1.組換え豚パルボウイルス(PPV)VP2(PPV 82-opt、PPV 07-opt)抗原植物発現ベクター作製
抗原性の最も高いVP2をターゲッティングするために、ブタ流死産胎児の試料から得たPPV VP2 DNA配列を使用し、Genescriptコドン最適化(optimization)プログラムを用いてニコチアナベンサミアナ(Nicotiana benthamiana)に合わせて最適化し、バイオニア社に依頼して合成した。最適化されたPPV 82-opt VP2のヌクレオチド配列は1740bpであり、PPV 07-opt VP2は1737bpで構成される。
【0050】
1-1.組換えPPV 82-opt VP2発現ベクター
PPV VP2抗原の植物発現のためにpCAMBIA1300ベクターのCaMV 35Sプロモーター遺伝子とNOSターミネーター(terminator)との間にルビスコ(RuBisCO)トランジットペプチド(transit peptide)をコードするポリヌクレオチド(配列番号1)、6個の連続したヒスチジン(Histidin)をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)及びPPV 82 VP2タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号3)を順に連結して組換えPPV 82-opt VP2植物発現ベクターを作製した(
図2A)。
【0051】
1-2.組換えPPV 07-opt VP2発現ベクター
PPV VP2抗原の植物発現のために、pCAMBIA1300ベクターのCaMV 35Sプロモーター遺伝子とNOSターミネーター(terminator)との間にルビスコ(RuBisCO)トランジットペプチド(transit peptide)をコードするポリヌクレオチド(配列番号1)、6個の連続したヒスチジン(Histidin)をコードするポリヌクレオチド(配列番号2)、及びPPV 07 VP2タンパク質をコードするポリヌクレオチド(配列番号4)を順に連結し、組換えPPV 07-opt VP2植物発現ベクターを作製した(
図2B)。
【0052】
実施例2.植物体において組換えPPV VP2(PPV 82-opt、PPV 07-opt)タンパク質の発現
植物で組換えPPV 82-opt VP2タンパク質又はPPV 07-opt VP2を発現させるために、前記の実施例1で準備した組換え発現ベクターは、メーカーの指示に従って、Gene pulser XCell(Bio-Rad,USA)を用いて電気穿孔によってアグロバクテリア菌株GV3101に形質転換された。形質転換されたGV3101を安定期(stationary phase)に到達するまで、適切な抗生剤を含有するYEP培地(酵母抽出物10g、ペプトン10g、NaCl 5g、カナマイシン50mg/L、リファンピシン25mg/L)で成長させた。培養物を遠心分離し、沈殿物を浸潤培地(10mM Mes、10mM MgCl2、100mMアセトシリンゴン)に0.5のOD 600で再懸濁させた後、1時間室温で培養した。25℃条件下で4~6週齢に育ったニコチアナベンサミアナ葉にアグロバクテリア懸濁液を注射器又は真空浸透させる方法でアグロ-インフィルトレーション(Agro-infiltration)を行った。
【0053】
実施例3.植物体において組換えPPV VP2(PPV 82-opt、PPV 07-opt)タンパク質発現確認
約3cm2の葉組織を100μlの粉砕緩衝液(20mM Tris-HCl[pH 7.5]、150mM NaCl、1mM EDTA、1% Triton X-100、0.1% SDS、5mM DTT及び植物プロテアーゼ抑制剤カクテル[Sigma-Aldrich])を用いて粉砕し、不溶性残骸を4℃で10分間20,000x gで遠心分離した。サンプルを12% SDS-PAGEゲルから分離し、PVDFメンブレイン(Millipore Merck KGaA of Darmstadt,Germany)に移した。その後、単クローンHis抗体(1:1,000希釈、Invitrogen)と反応させ、化学発光基質(Chemiluminescent Substrate)で検出した。
【0054】
ルビスコトランジットペプチドをコードするポリヌクレオチド-6個の連続したヒスチジンをコードするポリヌクレオチドと、豚パルボウイルスVP2タンパク質(PPV 82-opt VP2タンパク質又はPPV 07-opt VP2タンパク質)をコードするポリヌクレオチドを順に連結して作製した植物発現ベクターを用いた場合、
図3A(左パネル)及び
図3Bから確認されるように、良好な発現を示したが、ヒスチジンを豚パルボウイルスVP2タンパク質の後側に付けて作製した植物発現ベクターを用いた場合には、タンパク質発現が見られなかった(
図3Aの右パネル)。
【0055】
また、コドン最適化されていない豚パルボウイルスVP2を含む発現ベクターで形質転換した植物体では豚パルボウイルスVP2が発現しなかった(
図3C)。
【0056】
実施例4.組換えPPV 07-opt VP2抗原昆虫細胞発現ベクター作製
PPV 07-opt VP2配列を増幅して、pDrive vectorにクローニングした後、塩基配列を分析した。バキュロウイルス(Baculovirus)組換え発現のためにpFastBacTM HT Bベクトル(Invitrogen社)を用いてクローニングを行った。
【0057】
実施例5.昆虫細胞において組換えPPV 07-opt VP2タンパク質の発現及び確認
昆虫で組換えPPV 07-opt VP2タンパク質を発現させるために、メーカーの指示に従って、組換え発現ベクターを42℃熱ショック(heat shock)を用いてDH10Bacに形質転換した。形質転換されたDH10Bacを、S.O.C培地で37℃、4時間培養させた。1/10希釈してLB培地にゲンタマイシン(7ug/ml)抗生剤を添加し、48時間、37℃で培養した。10個のコロニーを10枚のプレートに移した後、pUC/M13プライマーでPCRを用いて組換えPPV 07-opt VP2配列を確認した。Cellfectin II reagent(Invitrogen社)用いてSf-9細胞にトランスフェクション(transfection)した。
【0058】
27℃でトランスフェクションし、5日後に細胞を収穫して4℃で30分間タンパク質を抽出した。組換えPPV VP2タンパク質のN-末端にヒスチジンが結合しており、VP2タンパク質精製のためにNI-NTAレジンを用いてタンパク質を分離した。
【0059】
PVDFメンブレインに精製したタンパク質を移した後、5% BSAでメンブレインをブロッキングした。1次抗体マウス-His(1:1,000)で常温で1時間反応させ、TBSTで5回洗浄した後、2次抗体マウス-HRP(1:5,000)で常温で1時間反応させ、TBSTで5回洗浄した後、ECL(Enhanced chemiluminescence)と反応させてタンパク質発現を確認した(
図4)。
【0060】
実施例6.組換えPPV VP2タンパク質の免疫原性評価
6-1.組換えPPV 82-opt VP2タンパク質免疫原性評価
植物体で発現させた組換えPPV 82-opt VP2タンパク質を、水酸化アルミニウムゲルアジュバント(Aluminium hydroxide gel adjuvant)と1:1に混合し、25,000HAユニットで100~110日齢ブタに1次接種し、2週後に2次接種した後、2週後に採血してHI力価(HI titer)を測定した。その結果、平均2
7の抗体価を確認した(
図5A及び
図5B)。
【0061】
6-2.組換えPPV 07-opt VP2タンパク質免疫原性評価
昆虫細胞で発現させた組換えPPV 07-opt VP2タンパク質と植物発現システムを用いて発現させた組換えPPV 07-opt VP2タンパク質をそれぞれ、500HAユニットでモルモットに1次接種し、2週後に2次接種した後、2週後に採血してHI力価を測定した。その結果、植物体で発現した組換えPPV 07-opt VP2タンパク質は、2
10の平均抗体価を示し、昆虫細胞で発現した組換えPPV 07-opt VP2タンパク質は、2
11の平均抗体価を示した(
図6A及び
図6B)。
【0062】
実施例7.血球凝集反応(HA)
7-1.組換えPPV 82-opt VP2タンパク質の血球凝集能
PPVは、モルモット赤血球に凝集する特徴を示し、Senda et al.(1986)論文を参考して血球凝集反応を実施した。96ウェルUプレートにニコチアナベンサミアナで発現したPPV 82-opt VP2タンパク質を2倍希釈した後、0.6%モルモット赤血球と混合し、37℃で1時間反応させた後、結果を解析した。
【0063】
組換えPPV 82-opt VP2タンパク質は、モルモット血球凝集能2
11HAユニット(8g/植物)を示しており、これによって、植物で発現した組換えPPV 82-opt VP2タンパク質の抗原性を確認した(表1、
図7A)。
【0064】
【0065】
7-2.組換えPPV 07-opt VP2タンパク質の血球凝集能
PPVは、モルモット赤血球に凝集する特徴を示し、Senda et al.(1986)論文を参考して血球凝集反応を実施した。96ウェルUプレートにニコチアナベンサミアナで発現したPPV 07-opt VP2タンパク質を2倍希釈した後、0.6%モルモット赤血球と混合し、37℃で1時間反応させた後、結果を解析した。
【0066】
組換えPPV 07-opt VP2タンパク質は、モルモット血球凝集能2
5HAユニット(8g/植物)を示し、これによって、植物で発現した組換えPPV 07-opt VP2タンパク質の抗原性を確認した(表2、
図7B)。
【0067】
【配列表】