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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/18 20060101AFI20230120BHJP
   B01F 27/74 20220101ALI20230120BHJP
   B01F 25/10 20220101ALI20230120BHJP
   B01F 23/40 20220101ALI20230120BHJP
【FI】
B01J19/18
B01F27/74
B01F25/10
B01F23/40
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2022568546
(86)(22)【出願日】2022-08-09
(86)【国際出願番号】 JP2022030389
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】P 2021131157
(32)【優先日】2021-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】504150450
【氏名又は名称】国立大学法人神戸大学
(73)【特許権者】
【識別番号】396019631
【氏名又は名称】株式会社チップトン
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大村 直人
(72)【発明者】
【氏名】清水 啓吾
(72)【発明者】
【氏名】小林 知之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 海里
【審査官】塩谷 領大
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-101562(JP,A)
【文献】特開2016-163852(JP,A)
【文献】国際公開第2011/034165(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/075000(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/18
B01F 21/00-25/90
B01F 27/00-27/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外筒と、前記外筒内に同軸状に配置された内筒との間に形成された反応室内に、
テイラー渦を生成した反応対象流体からなり、軸線方向に並ぶリング状の反応相と、
前記反応相に対して前記軸線方向に隣接し、前記反応相内の前記反応対象流体が前記反応相外に流出することを抑制するリング状の抑制相と、
を生成する流体の制御方法。
【請求項2】
前記抑制相は、2つの前記反応相を前記軸線方向に離隔するように仕切る仕切相である請求項1に記載の流体の制御方法。
【請求項3】
前記仕切相は、気体からなる請求項2に記載の流体の制御方法。
【請求項4】
前記外筒と、前記内筒と、によって形成される間隙幅Gが0.01mm以上、且つ1.5mm以下である請求項2又は請求項3に記載の流体の制御方法。
【請求項5】
前記間隙幅Gが0.01mm以上、且つ0.5mm以下である請求項4に記載の流体の制御方法。
【請求項6】
前記内筒の周速Vが0.5m/s以上且つ6.9m/s以下の範囲に設定されている請求項5に記載の流体の制御方法。
【請求項7】
前記内筒の周速Vが0.5m/s以上且つ2.3m/s以下、又は6.2m/s以上且つ6.9m/s以下のいずれかの範囲に設定されている請求項5に記載の流体の制御方法。
【請求項8】
前記内筒の周速Vを前記間隙幅Gで除した値を攪拌力Sと定義したとき、前記攪拌力Sは、666s-1以上且つ690000s-1以下である請求項4に記載の流体の制御方法。
【請求項9】
前記反応対象流体とは異なる非反応対象流体を用いることによって前記抑制相を構成し、
前記反応室への前記非反応対象流体の流量をQ1、前記反応室への前記反応対象流体の流量をQ2としたときに、
流量比Q1/Q2は、0.25よりも大きくし、10以下にする請求項5に記載の流体の制御方法。
【請求項10】
前記反応対象流体は液体であり、前記非反応対象流体は気体であって、前記流量比Q1/Q2は、1よりも大きくし、10以下にする請求項9に記載の流体の制御方法。
【請求項11】
前記反応対象流体、及び前記反応対象流体とは異なる非反応対象流体の前記内筒の軸方向における流速が、38.5mm/s以下に設定されている請求項4に記載の流体の制御方法。
【請求項12】
前記流速が、6.4mm/s以下に設定されている請求項11に記載の流体の制御方法。
【請求項13】
隣接する前記テイラー渦の間の谷間に、前記抑制相としての気泡を含む気泡相を生成する請求項1に記載の流体の制御方法。
【請求項14】
外筒と、
前記外筒内に同軸状に配置されて軸線周りに回転駆動され、前記外筒との間に反応室を形成する内筒と、
反応相を生成する反応対象流体を前記反応室に供給する反応対象流体供給装置と、
前記反応相とは異なる非反応相を生成する異相流体を前記反応室に供給する異相流体供給装置と、
前記反応室内に、リング状の前記反応相と、前記異相流体を含むリング状の前記非反応相と、が前記軸線方向に隣合い生成されたか否かを検出する検出装置と、
を備えているテイラー渦流反応装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の制御方法、及びテイラー渦流反応装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、外筒と、外筒内で回転する内筒と、を備え、外筒と内筒との間に反応室(隙間空間)を形成したテイラー渦流反応装置が開示されている。反応室内に反応前の流体を供給して内筒を回転させると、反応室内にテイラー渦が発生し、テイラー渦流の強い剪断と渦運動によって流体の混合、分散、乳化、晶析、造粒、化学反応等が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6257636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、反応室内に反応前の流体を満たし、テイラー渦流反応装置を動作させるとこの流体は、テイラー渦を生成する。そして、テイラー渦の生成と共に、テイラー渦の渦外縁部に沿って、外筒の内周面と内筒の外周面とを交互に行き来しつつ反応室の軸線方向に流れるバイパス流が生じることが知られている。バイパス流に乗じて反応前の流体が軸線方向へ流れてしまうと、この流体は、反応を終える前に反応室から流出したり、十分に混合されないまま反応が終わったりするおそれがある。したがって、反応室内における、反応前の流体の流れを制御する技術が望まれていた。また、テイラー渦流反応装置の反応室における外筒と内筒との隙間は、高い精度で寸法管理する必要がある。このため、外筒には高い剛性を有する金属を用いることが好ましい。しかし、この場合、反応室内におけるテイラー渦流の生成状況を目視で確認することができず、不便である。ここでいうテイラー渦流とは、テイラー渦を生成した流体の流れを指す。これに対して、テイラー渦とは、環状に流れる渦の形態自体を指す。
【0005】
第1の発明は、上記した課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであって、反応室内での流体の制御を良好に行うことを目的とする。
【0006】
第2の発明は、上記した課題の少なくとも1つを解決するためになされたものであって、反応相と非反応相との生成状況を良好に把握することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明の流体の制御方法は、
外筒と、前記外筒内に同軸状に配置された内筒との間に形成された反応室内に、
テイラー渦を生成した反応対象流体からなり、軸線方向に並ぶリング状の反応相と、
前記反応相に対して前記軸線方向に隣接し、前記反応相内の前記反応対象流体が前記反応相外に流出することを抑制するリング状の抑制相と、
を生成する。
【0008】
第2の発明のテイラー渦流反応装置は、
外筒と、
前記外筒内に同軸状に配置されて軸線周りに回転駆動され、前記外筒との間に反応室を形成する内筒と、
反応相を生成する反応対象流体を前記反応室に供給する反応対象流体供給装置と、
前記反応相とは異なる非反応相を生成する異相流体を前記反応室に供給する異相流体供給装置と、
前記反応室内に、リング状の前記反応相と、前記異相流体を含むリング状の前記非反応相と、が前記軸線方向に隣合い生成されたか否かを検出する検出装置と、
を備えている。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明の流体の制御方法は、抑制相によって反応相からの反応対象流体の流出を抑制することができるので、反応相内に反応対象流体を閉じ込めることができる。これによって、反応相内における反応対象流体の反応のばらつきを抑えると共に、反応対象流体の反応速度が向上する。このため、反応相における反応が良好に行われる。
【0010】
第2の発明のテイラー渦流反応装置は、検出装置によって、反応相と非反応相との生成状況を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施例1のテイラー渦流反応装置を軸線に直交する方向から見た縦断面図である。
図2】実施例1のテイラー渦流反応装置を軸線方向から見た横断面図である。
図3】実施例1のテイラー渦流反応装置の反応室の一部を拡大した拡大縦断面図である。
図4】実施例1のテイラー渦流反応装置の反応室の一部を拡大した拡大縦断面図であって、反応室に反応対象流体を流入させ、非反応対象流体を流入させない状態を示す。
図5】実施例1のテイラー渦流反応装置の反応室を軸線に直交する方向から視た画像である。
図6】実施例1のテイラー渦流反応装置において、非反応対象流体の反応室への流量を小さくして複数の気泡を生成した状態を示す。
図7】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水を用い、間隙幅を0.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図8】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水にグリセリンを加えた液体を用い、間隙幅を0.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図9】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水を用い、間隙幅を1.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図10】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水にグリセリンを加えた液体を用い、間隙幅を1.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図11】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水を用い、間隙幅を2.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図12】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水にグリセリンを加えた液体を用い、間隙幅を2.5mmとした場合において、内筒の周速と、反応対象流体及び非反応対象流体の反応室への流量と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図13】実施例1のテイラー渦流反応装置において、反応対象流体として水を用い、間隙幅を0.5mmとした場合において、内筒の周速と、流量比と、を変化させた場合の各々における反応相及び抑制相の境界の明瞭さを判定した結果を示す表である。
図14】他の実施例のテイラー渦流反応装置を軸線方向から見た横断面図である。
図15】他の実施例のテイラー渦流反応装置の反応室の一部を拡大した拡大縦断面図であって、マイクロバブル相が外筒の内周面に沿った位置に生成された様子を示す。
図16】他の実施例のテイラー渦流反応装置の反応室の一部を拡大した拡大縦断面図であって、マイクロバブル相が内筒の外周面に沿った位置に生成された様子を示す。
図17】他の実施例のテイラー渦流反応装置の反応室の一部を拡大した拡大縦断面図であって、気泡相が外筒の内周面及び内筒の外周面に沿った位置に生成された様子を示す。
図18】他の実施例のテイラー渦流反応装置の要部拡大縦断面図であって、検出装置を外筒の外周面や流出路に設けた様子を示す。
図19】他の実施例のテイラー渦流反応装置を軸線に直交する方向から見た縦断面図である。
図20】他の実施例のテイラー渦流反応装置の要部拡大縦断面図であって、検出装置の一対の電極棒の先端部が1つの反応相に接触した様子を示す。
図21】他の実施例のテイラー渦流反応装置の要部拡大縦断面図であって、検出装置の一対の電極棒の先端部が抑制相にかかった様子を示す。
図22】他の実施例のテイラー渦流反応装置の要部拡大縦断面図であって、検出装置の一対の電極棒のうちの片方の先端部が抑制相にかかった様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1と、実施例1のテイラー渦流反応装置10を用いて実施した実験結果を図1から図13を参照して説明する。以下の説明において、前後の方向については、図1における右方を前方、左方を後方と定義する。
【0013】
[テイラー渦流反応装置の構成について]
実施例1のテイラー渦流反応装置10は、図1に示すように、外筒61と、内筒70と、閉塞部材85と、検出装置86と、反応対象流体供給装置87と、異相流体供給装置88と、制御装置89と、を備えている。
【0014】
外筒61は、円筒状をなしており、軸線Rを前後方向(水平方向)に向けて固定した状態で配置されている。軸線R方向から見たときに、外筒61の内周面は、円形である。内筒70は、外筒61と同心状の円柱状をなしている。軸線R方向から見たときに、内筒70の外周面は、円形である。内筒70は、外筒61内に同軸状に配置されている。内筒70の後端部には、図示しないモータの駆動軸が連結されている。内筒70は、モータを回転駆動させることによって、軸線R周りに回転する。内筒70の外周面と、外筒61の内周面との間には、円筒状の反応室84が形成されている。円筒状とは、軸線Rと直角に切断した断面において、円環形をなす形態である。
【0015】
外筒61の前端には、閉塞部材85が取り付けられている。閉塞部材85は、反応室84及び内筒70の前端を前方から覆い、内筒70の前端面に対して僅かな隙間を空けて対向するように配置されている。閉塞部材85と内筒70との間の隙間は、反応室84の前端と連通しているが、反応室84内に生じるテイラー渦V1(図3参照)の生成及び移動に影響を及ぼすことはほとんどない。
【0016】
検出装置86は、閉塞部材85に取り付けられている。検出装置86には、例えば、レーザーセンサや、静電容量型センサや、超音波センサや、流体の周波数特性を検知する密度センサ等が用いられる。検出装置86は、閉塞部材85における反応室84の前端に対して前方に隣合う位置に取り付けられている。検出装置86は、外筒61の流出口105の近傍に位置している。検出装置86は、反応室84の前端部(後述する、反応相30と抑制相31の反応室84内における移動経路の終端部)に位置する流体の種類に応じて、異なる検出値を出力し得る構成とされている。つまり、検出装置86は、反応室84の前端部に位置する流体が、反応相30であるか、非反応相である抑制相31であるかを検出することができる。換言すると、検出装置86は、反応室84内に、反応相30と、非反応対象流体F3を含む抑制相31と、が軸線R方向に隣合い生成されたか否かを検出する。
【0017】
外筒61の後端は、板厚方向を前後方向に向けた後部閉塞部材90に取り付けられている。後部閉塞部材90は、図示しない固定部に固定されている。この固定部には、例えば、内筒70を回転駆動させるモータが固定されている。後部閉塞部材90は、反応室84の後端を後方から覆っている。後部閉塞部材90を板厚方向に貫通して形成された貫通孔には、内筒70が挿通されている。後部閉塞部材90と内筒70の外周面との間には、図示しないシール部材が設けられている。シール部材によって、後部閉塞部材90と内筒70との隙間が気密状又は液密状にシールされ、反応室84内の流体が外部に漏出しないようにされている。
【0018】
図2に示すように、外筒61の後端部には、2つの流入口100と、第1流入路101、第2流入路102、及び第3流入路103と、が形成されている。内筒70の軸線R方向から見た軸断面視において、2つの流入口100は、周方向に90°ずれた位置関係で配置されている。反応室84の軸線方向(前後方向)において、2つの流入口100は、同じ位置に配置されている。2つの流入口100は、外筒61の内周面における後端部に開口し、反応室84の後端部に連通している(図1参照)。
【0019】
2つの流入口100のうちの一方の流入口100には、図2に示すように、第1流入路101の下流端と第2流入路102の下流端とが連通している。軸線R方向から見た軸断面視において、第1流入路101と第2流入路102とは、互いに異なる角度で、外筒61の外側から流入口100に向かって直線状に延びている。第1流入路101の中心線A1と、外筒61の内周面の流入口100における接線104とのなす角度をθ1とし、第2流入路102の中心線A2と上記接線104とのなす角度をθ2としたときに、角度θ1と角度θ2は異なる角度に設定されている。第1流入路101の中心線A1の延長線も第2流入路102の中心線A2の延長線も、軸線Rとは交わらない。第1流入路101の中心線A1と第2流入路102の中心線A2は、外筒61の内周面よりも外側の位置において交差している。
【0020】
2つの流入口100のうちの他方の流入口100には、第3流入路103の下流端が連通している。軸方向視において、第3流入路103は、外筒61の外側から流入口100に向かって直線状に延びている。第3流入路103の中心線A3と、外筒61の内周面の流入口100における接線107とは、例えばθ3の角度に設定されている。第1流入路101の中心線A1、第2流入路102の中心線A2、及び第3流入路103の中心線A3は、内筒70の軸線Rと直交する共通の仮想二次元平面上に配置される。
【0021】
図1に示すように、外筒61の前端部には、反応室84内の流体を排出するための1つの流出口105と、流出口105に連通する流出路106が形成されている。流出口105は、外筒61の内周面に開口し、反応室84の前端部に連通している。流出路106は、流出口105から軸線Rに直交する放射方向に直線状に延びている。
【0022】
図2に示すように、反応対象流体供給装置87は、第1流入路101、及び第2流入路102の各々の上流側に1つずつ接続されている。反応対象流体供給装置87には、例えば、チュービングポンプやダイヤフラムポンプ等が用いられる。各反応対象流体供給装置87には、それぞれ、反応対象流体貯留部87Aが接続されている。一方の反応対象流体貯留部87Aには、反応対象流体F1が貯留され、他方の反応対象流体貯留部87Aには反応対象流体F2が貯留されている。反応対象流体F1,F2は、例えば、液体である。反応対象流体F1,F2は、異種であってもよく、同種であってもよい。反応対象流体F1,F2が異種である場合、例えば、比重、粘度、成分等が異なっている。反応対象流体供給装置87を駆動させる。すると、一方の反応対象流体供給装置87は、一方の反応対象流体F1を反応対象流体貯留部87Aから取り込み、第1流入路101を経由させて反応室84内に供給する。他方の反応対象流体供給装置87は、他方の反応対象流体F2を反応対象流体貯留部87Aから取り込み、第2流入路102を経由させて反応室84内に供給する。第1流入路101の中心線A1と第2流入路102の中心線A2は、外筒61の内周面よりも外側の位置において交差している。このため、反応対象流体F1,F2は、一方の流入口100よりも上流側で合流する。
【0023】
異相流体供給装置88は、第3流入路103の上流端に接続されている。異相流体供給装置88には、例えば、チュービングポンプやダイヤフラムポンプ等が用いられる。チュービングポンプを用いると、流入時に脈動が生じ難い。異相流体供給装置88には、異相流体貯留部88Aが接続されている。異相流体貯留部88Aには、抑制相31を生成する異相流体である非反応対象流体F3が貯留されている。非反応対象流体F3は、例えば、不活性ガスや空気等の気体であり、反応対象流体F1,F2に対して非相溶性を有し、性質の異なる流体である。異相流体供給装置88を駆動させると、異相流体供給装置88は、非反応対象流体F3を、異相流体貯留部88Aから取り込み、第3流入路103を経由させて反応室84内に供給する。
【0024】
制御装置89は、例えばマイクロコンピュータを主体として構成されたPLC(Programmable Logic Controller)又はPC(Programmable Controller)である。制御装置89は、反応対象流体供給装置87における反応対象流体F1,F2の反応室84への供給動作と、異相流体供給装置88における非反応対象流体F3の反応室84への供給動作とを制御し得る構成とされている。例えば、制御装置89は、反応対象流体供給装置87及び異相流体供給装置88の供給動作を制御することによって、反応室84への反応対象流体F1,F2及び非反応対象流体F3の単位時間における流量を調整することができる。
【0025】
[テイラー渦流反応装置の動作について]
先ず、反応室84内が空の状態(すなわち、空気で満たされた状態)でモータを起動して内筒70を所定の回転数で回転駆動させる。
【0026】
次に、制御装置89によって、反応対象流体供給装置87及び異相流体供給装置88の動作を開始し、反応室84内に反応対象流体F1,F2及び非反応対象流体F3を供給する。以下、合流した状態の反応対象流体F1,F2を、反応対象流体Fともいう。例えば、先ず、制御装置89は、異相流体供給装置88の動作を開始させ、第3流入路103を通して他方の流入口100から非反応対象流体F3を反応室84内に連続的に供給する。すると、反応室84内を満たす空気は、非反応対象流体F3によって、流出口105から押し出される。そして、反応室84内は、非反応対象流体F3によって満たされる。
【0027】
次に、制御装置89は、反応対象流体供給装置87の動作を開始させ、第1流入路101と第2流入路102を通して一方の流入口100から反応対象流体Fを反応室84内に連続的に供給する。すると、反応室84内には、図3に示すように、テイラー渦V1を生成した反応対象流体Fからなる反応相30と、非反応対象流体F3からなる非反応相である抑制相31とが、軸線R方向に交互に並んで複数生成され、これら反応相30及び抑制相31が一体となって軸線R方向の前向きに移動する。このとき、反応相30は、軸線R周りにリング状をなした形態となる。そして、抑制相31も軸線R周りにリング状をなした形態となる。そして、これら反応相30及び抑制相31は、軸線R方向に交互に隣合い、軸線R方向の前向きに移動する流れ(すなわち、スラグ流)を生成するのである。
【0028】
ここでいうスラグ流とは、相溶性のない気体と液体や、相溶性のない水性液体と油性液体等、親和性のない二種類の流体が交互に並んだ状態を維持しつつ、一体となって一方向に移動する流れである。
【0029】
抑制相31は、例えば気体によって生成されている。抑制相31は、反応相30に対して軸線R方向に隣接している。一つの反応相30では、一つのテイラー渦V1が生成される。一つのテイラー渦V1は、互いに逆向きに流れる反応対象流体Fからなる一組のセルC1,C2で構成されている。一つの反応相30において複数のテイラー渦V1が生成されてもよい。つまり、一つの反応相30において一組のセルC1,C2が複数生成されてもよい。つまり、内筒70が軸線R周りに回転すると、外筒61と内筒70との間に形成された円筒状の反応室84内に、テイラー渦V1を生成した反応対象流体Fが軸線R周りにリング状をなして生成された反応相30と、非反応対象流体F3が軸線R周りにリング状をなして生成された抑制相31と、が軸線R方向に隣接して隣合い生成される。
【0030】
軸線Rを含む断面において、一つの反応相30内で対をなす2つのセルC1,C2は、軸線R方向に隣合って並んでいる。ここで、一方のセルC1の反応対象流体Fは、環状(渦状)をなして、図3における時計方向へ流れる。
【0031】
そして、他方のセルC2の反応対象流体Fは、環状(渦状)をなして、図3における反時計方向へ流れる。つまり、一つのテイラー渦V1とは、上記2つの経路で環状に流れる反応対象流体Fの組からなる。以降、2つのセルC1,C2をペア渦C1,C2ともいう。
【0032】
一つの反応相30では、テイラー渦V1の隣合うセルC1,C2による剪断力によって反応対象流体F1,F2の混合、撹拌、分散、乳化、晶析、造粒、化学反応、粉砕、微粒子化等の各種反応(以下、単に、各種反応ともいう)が行われる。
【0033】
抑制相31によって、隣合う反応相30の間において反応対象流体Fの行き来が抑制される。換言すると、抑制相31は、一方のペア渦C1,C2と、他方のペア渦C1,C2との間に介在し、一方のペア渦C1,C2と、他方のペア渦C1,C2とが混ざり合うことを抑制する。つまり、反応相30から反応対象流体Fの軸線R方向への拡散を抑制相31によって抑制しており、抑制相31は、軸線R方向に隣合う2つの反応相30を軸線R方向に離隔するように仕切る効果を有する仕切相50である。そして、仕切相50は例えば気体からなる。1つの反応相30内においてセルC1,C2の渦外縁部に沿ったバイパス流(図4における実線R1及び破線R2)が生成されても、そのバイパス流が、他の反応相30側へ延びていくことは、仕切相50によって遮断される。したがって、渦外縁部の流体は、一つ又は複数のテイラー渦V1から流出せずに一つ又は複数のテイラー渦V1内部の流体と良好に攪拌され、良好に各種反応が行われる。このため、一つの反応相30において、反応対象流体Fにおける各種反応を良好に行うことができる。こうして抑制相31は、反応相30における良好な各種反応を促進させる。
【0034】
複数の反応相30及び複数の抑制相31は、軸線R方向に交互に並び、軸線R方向の前向きに移動する気液スラグ流を生成する。閉塞部材85に取り付けられた検出装置86は、閉塞部材85に到達した流体が反応相30か、抑制相31であるかを検出する。そして、軸線R方向の前向きに移動する反応相30及び抑制相31は、流出口105に到達すると流出路106を通してテイラー渦流反応装置10の外部に流出する。
【0035】
気体からなる抑制相31と、液体からなる反応相30は、互いに非相溶性を有した関係であるので、反応対象流体Fと非反応対象流体F3との分離は容易に行うことができる。このため、良好な各種反応が完了した反応対象流体Fのみを容易に採取することができる。流出路106から外部に流出した最初の数個の反応相30は、各種反応が安定して実行されていない可能性がある。このため、流出路106から外部に流出した最初の数個の反応相30は、採取せずに廃棄してもよい。
【0036】
これに対して、抑制相31が生成されない、すなわち、非反応対象流体F3を反応室84に流入させない場合には、図4に示すように、反応対象流体Fによって反応室84の軸線R方向に複数のセルC1,C2が連続して生成される。この場合、反応対象流体Fの一部は、各セルC1,C2の間を縫うように軸線R方向の前向きに移動したり、軸線R方向の後向きに移動したりするバイパス流R1,R2を生成する(図4参照)。このため、抑制相31を有さない反応室84では各種反応時間が長くなったり短くなったりするか、あるいは剪断力にバラツキが生じたりするため、反応対象流体Fにおける各種反応を斑なく行うことが困難なのである。
【0037】
[気泡の軸方向への拡散抑制効果について]
なお、反応対象流体F1,F2に対する非反応対象流体F3の反応室84への流量を小さくすると、非反応対象流体F3は、図6に示すように、複数の粒状をなした気泡Bになり易い。気泡Bは、マイクロバブルになり易い。
【0038】
こうして形成された気泡Bは、隣合うセルC1,C2の間において外筒61の内周面又は内筒70の外周面に臨む谷間に生成される。外筒61の内周面側の谷間は、隣合うセルC1,C2の外周部の流れが接近して、流れの向きが軸線R方向に交差する方向に変化する部分と、外筒61の内周面とで囲まれた領域(以下、谷間領域ともいう)である。内筒70の外周面側の谷間は、隣合うセルC1,C2の外周部の流れが接近して、流れの向きが軸線R方向に交差する方向に変化する部分と、内筒70の外周面とで囲まれた領域(以下、谷間領域ともいう)である。谷間領域(隣接するテイラー渦V2の間の谷間)には、気泡B(マイクロバブル)を含むマイクロバブル相53が生成される。内筒70側の谷間領域では、マイクロバブル相53が、内筒70の外周面に接触するように生成され、外筒61側の谷間領域では、マイクロバブル相53が、外筒61の内周面に接触するように生成される。
【0039】
隣合うセルC1,C2の間の谷間領域に生成されたマイクロバブル相53に含まれる気泡Bは、この谷間領域内に閉じ込められたように谷間領域内を移動する。気泡Bは、軸線R方向の前向きに移動したり、軸線R方向の後向きに移動したりするバイパス流(図4参照)が生成されることを邪魔(抑制)する機能を発揮する。これによって、隣合うセルC1,C2の間において反応対象流体Fの行き来が生じ難くなり、一つのセルC1(C2)において、反応対象流体Fにおける各種反応を良好に行うことができる。つまり、気泡Bを含むマイクロバブル相53は、一つのセルC1(C2)内の反応対象流体Fが他のセルC1(C2)に流出することを抑制する抑制相331として機能する。セルC1(C2)の反応対象流体Fは、マイクロバブル相53によって、軸線R方向へ拡散することが抑制される。
【0040】
[反応相と抑制相の生成形態に関する実験について]
次に、実施例1のテイラー渦流反応装置10における、反応相30と抑制相31の生成形態に関する実験の結果を説明する。実験では、外筒61の内径Dと内筒70の外径dの差を2で除した間隙幅G、流量比Q1/Q2、反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(軸線R方向における流体の流速(以下、単に、軸流速Fvともいう))、内筒70の回転数(内筒70の周速V、以下、単に周速Vともいう)、及び反応対象流体Fの粘度を変化させて反応相30と抑制相31の生成状態を確認した。本実験で用いた外筒61は、内径Dが50mmの一種類のみである。外筒61は、円筒状に成形された透明なアクリル樹脂からなる。反応室84の前後方向の寸法は、158mmである。
【0041】
Q1は反応室84への非反応対象流体F3を単位時間に流入させる流量であり、Q2は反応室84への反応対象流体Fを単位時間に流入させる流量であり、その単位はmm3/s(mL/s)である。また、軸流速Fv(mm/s)は、Q1とQ2とを加算した値を反応室84の断面積(mm2)で除した値である。反応室84の断面積(mm2)は、軸線R方向に直交する方向に切断した断面の面積であり((D/2)2-(d/2)2)×πで求め得る。
【0042】
間隙幅Gは、外筒61の内周円の半径と、内筒70の外周円の半径との差である。例えば、内筒70の外径dが47mmであり、外筒61の内径Dが50mmである場合、間隙幅Gは、(50-47)/2=1.5mmである。また、外筒61の内径Dと、内筒70の外径dとの径寸法比d/Dは、47/50=0.94である。つまり、内筒70の外径dが小さくなるほど径寸法比d/Dの値は小さくなり、間隙幅Gの値は大きくなる。本実験では、外径dが異なる内筒70を三種類(45mm、47mm、49mm)用意しておき、内筒70を交換することによって間隙幅G(径寸法比d/D)を変更した。
【0043】
具体的には、間隙幅Gが2.5mm(内筒70の外径dが45mmであり、径寸法比d/Dが0.9)、1.5mm(内筒70の外径dが47mmであり、径寸法比d/Dが0.94)、0.5mm(内筒70の外径dが49mmであり、径寸法比d/Dが0.98)の三種類の各々において、内筒70の回転数を100rpmから3000rpmの間で30段階に変化させ、且つ反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(Q1+Q2)を5mL/min、30mL/min、60mL/min、120mL/min、180mL/minの5段階に変化させ、さらに、反応対象流体Fの種類を水と、水にグリセリンを50wt%混合した液体とに変化させ、各々の組み合わせにおいて生成される反応相30及び抑制相31の様子を観察した。なお、非反応対象流体F3には空気を用い、以降、全ての実験において、同様に用いた。
【0044】
なお、内筒70の回転数が一定とした場合、内筒70の外周面の周速Vは、内筒70の外径dに応じてその大きさが変化する。このため、内筒70の外径dが45mmの場合には、周速Vが0.2m/sから7.1m/sの間で30段階に変化する。内筒70の外径dが47mmの場合には、周速Vが0.2m/sから7.4m/sの間で30段階に変化する。内筒70の外径dが49mmの場合には、周速Vが0.3m/sから7.7m/sの間で30段階に変化する。
【0045】
また、間隙幅Gは、内筒70の外径dに応じてその大きさが変化する。このため、反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(Q1+Q2)が一定の場合、間隙幅Gが小さくなるほど反応室84の容積が小さくなるので、軸流速Fvの変動する帯域は、高速側へ変位する。具体的には、間隙幅Gが2.5mmの場合には、軸流速Fvが0.2mm/sから8.0mm/sの間で5段階に変化する。間隙幅Gが1.5mmの場合には、軸流速Fvが0.4mm/sから13.1mm/sの間で5段階に変化する。間隙幅Gが0.5mmの場合には、軸流速Fvが1.1mm/sから38.5mm/sの間で5段階に変化する。
【0046】
図7から図13に示すように、反応相30及び抑制相31の境界が明瞭にあらわれ、且つ外筒61の内周面のうち抑制相31が生成されている領域に水滴の付着がなかった場合「◎(最良)」と判定した(図5(A)参照)。反応相30及び抑制相31の境界が明瞭にあらわれ、且つ外筒61の内周面のうち抑制相31が生成されている領域に水滴の付着が見られた場合「〇(良好)」と判定した(図5(B)参照)。この場合、図4に示すようなバイパス流R1,R2の生成を抑えることができるため、抑制相31を生成しない場合に比べて、反応対象流体Fの軸線R方向への拡散は抑制しているといえる。また、反応相30及び抑制相31の境界が明瞭にあらわれなかった場合「×(不良)」と判定した(図5(C)参照)。
【0047】
[間隙幅Gが0.5mmにおける結果]
反応対象流体Fが水であり、間隙幅Gが0.5mm(内筒70の外径dが49mmであり、径寸法比d/Dが0.98)のときにおける結果を説明する。なお、流量比Q1/Q2は1とした。図7に示すように、周速Vが0.5m/sから2.1m/sの範囲であって、軸流速Fvが1.1mm/s、及び6.4mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが1.3m/s、及び1.5m/sであって、軸流速Fvが12.8mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが2.3m/sであって、軸流速Fvが1.1mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが6.2m/sから6.9m/sの範囲であって、軸流速Fvが1.1mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。これらの条件の場合、抑制相31が位置する外筒61の内周面に水滴が付着しないので、反応相30は、軸線R方向に反応対象流体Fが拡散することなく、軸線R方向の前向きに移動している。
【0048】
周速Vが0.3m/sであって、軸流速Fvが1.1mm/sの場合、判定が「○(良好)」であった。また、周速Vが1.0m/sから1.5m/sの範囲であって、軸流速Fvが25.6mm/s、及び38.5mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが1.8m/s、及び2.1m/sであって、軸流速Fvが12.8mm/sから38.5mm/sの範囲の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが2.3m/sであって、軸流速Fvが6.4mm/sから38.5mm/sの範囲の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが2.6m/sから5.9m/sの範囲においては、軸流速Fvの値に関わらず判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが6.2m/s、及び6.4m/sであって、軸流速Fvが6.4mm/s、及び12.8mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが6.7m/sであって、軸流速Fvが6.4mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。これらの条件の場合、軸線R方向の前側に位置する反応相30の反応対象流体Fの一部が外筒61の内周面に付着して置き残され、置き残された反応対象流体Fが、軸線R方向の後側に位置する反応相30に取り込まれる。すなわち、隣合う反応相30の間において、反応対象流体Fの移動が僅かに生じている。また、周速V及び軸流速Fvが上記を除いた組み合わせの場合には、判定が「×(不良)」であった。
【0049】
反応対象流体Fが水にグリセリンを50wt%混合した液体であり、間隙幅Gが0.5mm(内筒70の外径dが49mmであり、径寸法比d/Dが0.98)のときにおける結果を説明する。なお、流量比Q1/Q2は1とした。図8に示すように、周速Vが0.5m/sから6.9m/sの範囲であって、軸流速Fvが1.1mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが0.5m/sから4.4mm/sの範囲であって、軸流速Fvが6.4mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが6.2m/sから6.9m/sの範囲であって、軸流速Fvが6.4mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。
【0050】
周速Vが0.3m/sであって、軸流速Fvが1.1mm/s及び6.4mm/sの場合、判定が「○(良好)」であった。また、周速Vが1.0m/sであって、軸流速Fvが12.8mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが4.6m/sから5.9m/sの範囲であって、軸流速Fvが6.4mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが7.2m/s及び7.4m/sであって、軸流速Fvが1.1mm/s及び6.4mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが1.3m/sから6.9m/sの範囲であって、軸流速Fvが12.8mm/sから38.5mm/sの範囲の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速V及び軸流速Fvが上記を除いた組み合わせの場合には、判定が「×(不良)」であった。
【0051】
[間隙幅Gが1.5mmにおける結果]
反応対象流体Fが水であり、間隙幅Gが1.5mm(内筒70の外径dが47mmであり、径寸法比d/Dが0.94)のときにおける結果を説明する。なお、流量比Q1/Q2は1とした。図9に示すように、周速Vが1.7m/sであって、軸流速Fvが2.2mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが2.0m/sから3.0mm/sである場合には、軸流速Fvの大きさに関わらず、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが3.2m/sであって、軸流速Fvが0.4mm/sから4.4mm/sの範囲の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが3.4m/sであって、軸流速Fvが0.4mm/s及び2.2mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速V及び軸流速Fvが上記を除いた組み合わせの場合には、判定が「×(不良)」であった。
【0052】
反応対象流体Fが水にグリセリンを50wt%混合した液体であり、間隙幅Gが1.5mm(内筒70の外径dが47mmであり、径寸法比d/Dが0.94)のときにおける結果を説明する。なお、流量比Q1/Q2は1とした。図10に示すように、周速Vが1.0m/sから3.4m/sの範囲であって、軸流速Fvが0.4mm/s及び2.2mm/sの場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが1.7m/sから3.2m/sの範囲であって、軸流速Fvが4.4mm/sから13.1mm/sの範囲の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが3.4m/sであって、軸流速Fvが4.4mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが3.7m/sであって、軸流速Fvが0.4mm/s及び2.2mm/sの場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速V及び軸流速Fvが上記を除いた組み合わせの場合には、判定が「×(不良)」であった。
【0053】
[間隙幅Gが2.5mmにおける結果]
間隙幅Gが2.5mm(内筒70の外径dが45mmであり、径寸法比d/Dが0.9)のとき、図11、12に示すように、周速V、軸流速Fv、及び反応対象流体Fの種類を変化させても、判定が「×(不良)」であった。なお、流量比Q1/Q2は1とした。
【0054】
[流量比Q1/Q2を変化させた場合における結果]
さらに、反応対象流体Fとして水を用い、間隙幅Gを0.5mmとして、周速Vを、0.8m/sから7.7m/sの間で十段階に変化させると共に、流量比Q1/Q2を0.125、0.25、0.5、1、2、4、8の七種類に変化させた各組み合わせにおいて生成される反応相30及び抑制相31の様子を観察した結果について説明する。反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(Q1+Q2)は、31.78mL/minとした。
【0055】
図13に示すように、周速Vが0.8m/sから6.9m/sの範囲であって、流量比Q1/Q2が1から8の範囲である場合、判定が「◎(最良)」であった。また、周速Vが1.5m/sから3.8m/sの範囲であって、流量比Q1/Q2が0.25及び0.5の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速Vが4.6m/s及び5.4m/sであって、流量比Q1/Q2が0.5の場合、判定が「〇(良好)」であった。また、周速V及び流量比Q1/Q2が上記を除いた組み合わせの場合には、判定が「×(不良)」であった。
【0056】
図7から図12に示す結果から、間隙幅Gが小さくなるにつれて、判定が「◎(最良)」になり易くなることがわかった。具体的には、間隙幅Gは、1.5mm以下にすることが好ましく、0.5mm以下にすることがより好ましい。テイラー渦流反応装置10として設定可能な間隙幅Gの下限は、駆動部(モータ)及び内筒70の外周に接触するシール部の発熱や内筒70の振れ精度等を勘案し0.01mmである。よって、間隙幅Gは、0.01mm以上、且つ1.5mm以下が好ましく、0.01mm以上、且つ0.5mm以下がより好ましい。
【0057】
また、図8に示すように、反応対象流体Fを水にグリセリンを加えた液体とした場合、間隙幅Gが0.5mmのときに「◎(最良)」と判定された際の内筒70の回転数の範囲は200rpm(周速Vが0.5m/s)から2700rpm(周速Vが6.9m/s)である。よって、内筒70の回転数は、200rpm(周速Vが0.5m/s)から2700rpm(周速Vが6.9m/s)とすることが好ましい。また、間隙幅Gが、0.01mmの場合であっても、図8に示す結果と同様に、内筒70の回転数は、200rpm(周速Vが0.5m/s)から2700rpm(周速Vが6.9m/s)とすることによって「◎(最良)」と判定される結果が得られると考えられる。
【0058】
また、図7に示すように、反応対象流体Fを水とした場合、内筒70の回転数は、200rpm(周速Vが0.5m/s)から900rpm(周速Vが2.3m/s)又は2400rpm(周速Vが6.2m/s)から2700rpm(周速Vが6.9m/s)とすることが好ましい。また、間隙幅Gが0.01mmの場合であっても、図7に示す結果と同様に、内筒70の回転数は200rpm(周速Vが0.5m/s)から2700rpm(周速Vが6.9m/s)とすることによって「◎(最良)」と判定される結果が得られると考えられる。
【0059】
[攪拌力について]
ここで、周速Vを間隙幅Gで除した値を攪拌力Sと定義する。例えば、間隙幅Gが1.5mmにおいて、周速Vが1.0m/sのときの攪拌力Sは、1000(mm/s)÷1.5(mm)≒666(s-1)となり、周速Vが3.4m/sのときの攪拌力Sは、3400(mm/s)÷1.5(mm)≒2266(s-1)となる。これらの周速Vの値は、反応対象流体Fとして水にグリセリンを加えた液体を用いた場合において、「◎(最良)」と判定された範囲の下限と上限の値である。
【0060】
また、間隙幅Gが0.5mmにおいて、周速Vが0.5m/sのときの攪拌力Sは、500(mm/s)÷0.5(mm)=1000(s-1)となり、周速Vが6.9m/sのときの攪拌力Sは、6900(mm/s)÷0.5(mm)=13800(s-1)となる。これらの周速Vの値は、間隙幅Gが0.5mmとした場合において、「◎(最良)」と判定された範囲の下限と上限の値である。
【0061】
さらに、間隙幅Gが0.01mmの場合、周速Vが0.5m/sのときの攪拌力Sは、500(mm/s)÷0.01(mm)=50000(s-1)となり、周速Vが6.9m/sのときの攪拌力Sは、6900(mm/s)÷0.01(mm)=690000(s-1)となる。上述したように、間隙幅Gは、0.01mm以上、且つ1.5mm以下が好ましい。よって、攪拌力Sは、「◎(最良)」と判定され得る、666s-1以上且つ690000s-1以下とすることが好ましい。
【0062】
また、図7、8、10に示すように、反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(Q1+Q2)をより小さくするほうが「◎(最良)」の判定になり易いことがわかった。具体的には、反応室84への反応対象流体F及び非反応対象流体F3の合計の流量(Q1+Q2)は、180mL/min(軸流速Fvを38.5mm/s)以下にすることが好ましく、30mL/min(軸流速Fvを6.4mm/s)以下にすることがより好ましい。
【0063】
また、図13に示す結果から、流量比Q1/Q2が大きくなるほど(すなわち、非反応対象流体F3の割合が多いほど)判定が「◎(最良)」になり易いことがわかった。図13には示していないが、流量比Q1/Q2が8よりも大きい9や10であっても判定が「◎(最良)」になると考えられる。したがって、流量比Q1/Q2は、0.25よりも大きくし、10以下が好ましく、1よりも大きくし、10以下がより好ましい。
【0064】
<実施例の作用及び効果>
この流体の制御方法は、外筒61と、外筒61内に同軸状に配置された内筒70との間に形成された反応室84内に、リング状の反応相30とリング状の抑制相31を生成する。反応相30は、テイラー渦V1を1つ又は複数(セルC1,C2を1組又は複数組)生成した反応対象流体Fからなり、軸線R方向に並ぶ。抑制相31は、反応相30に対して軸線R方向に隣接し、反応相30内の反応対象流体Fが反応相30外に流出することを抑制する。
【0065】
この構成によれば、反応相30から反応対象流体Fが軸線R方向に拡散しようとしても、抑制相31によって反応相30からの流出が抑制されるので、反応対象流体Fが反応を終える前に反応室84から流出することを抑制できる。つまり、抑制相31を生成することによって、反応対象流体Fを一の反応相30に閉じ込めて、反応相30内における反応対象流体Fの反応のばらつきを抑えると共に、反応対象流体Fの反応速度を向上させ、良好な各種反応を進めることができる。
【0066】
この流体の制御方法において抑制相31は、2つの反応相30を軸線R方向に離隔するように仕切る仕切相50である。この構成によれば、軸線R方向に隣合う反応相30同士が仕切相50によって直接接触しないように仕切られるので、反応相30から反応対象流体Fが軸線R方向へ拡散することを抑制する効果が高い。反応相30における反応対象流体F1,F2の種類を変更するような場合(例えばF1,F2からF11,F12に変更するような場合)に、反応対象流体F1,F2とF11,F12とが無駄に混合するような事態が生じることなく、反応室84内における反応相30及び抑制相31の流れ(すなわち、気液スラグ流)を止めずに反応対象流体の切り替えを行うことができる。
【0067】
この流体の制御方法において仕切相50は、気体からなる。この構成によれば、軸線R方向に隣合う反応相30同士を確実に仕切り易く、反応完了後の反応対象流体Fと非反応対象流体F3の分離が容易である。
【0068】
この流体の制御方法において、外筒61と、内筒70とによって形成される径方向の間隙幅Gが1.5mm以下であると、反応相30と抑制相31とを、その境界が明瞭になるように生成し易い。
【0069】
この流体の制御方法において、間隙幅Gが0.01mm以上、且つ0.5mm以下であると、反応相30と抑制相31とを、その境界がより明瞭になるように生成し易い。
【0070】
この流体の制御方法において、内筒70の周速Vが0.5m/s以上且つ6.9m/s以下の範囲に設定されていると、反応相30と抑制相31とを、その境界が明瞭になるように生成し易い。
【0071】
この流体の制御方法において、内筒70の周速Vが0.5m/s以上且つ2.3m/s以下、又は6.2m/s以上且つ6.9m/s以下のいずれかの範囲に設定されていると、反応相30と抑制相31とを、その境界がより明瞭になるように生成し易い。
【0072】
この流体の制御方法において、内筒70の周速Vを間隙幅Gで除した値を攪拌力Sと定義したとき、攪拌力Sが666s-1以上且つ690000s-1以下であると、反応相30において良好に攪拌することができる。
【0073】
この流体の制御方法は、反応対象流体Fとは異なる非反応対象流体F3を用いることによって抑制相31を構成し、反応室84への非反応対象流体F3の流量をQ1、反応室84への反応対象流体Fの流量をQ2としたときに、流量比Q1/Q2は、0.25よりも大きくし、10以下にする。この構成によれば、反応相30と抑制相31とを、その境界がより明瞭になるように生成し易い。
【0074】
この流体の制御方法において、反応対象流体Fは液体であり、非反応対象流体F3は気体であって、流量比Q1/Q2は、1よりも大きくし、10以下にすると、その境界がさらにより明瞭になるように生成し易い。
【0075】
この流体の制御方法において、反応対象流体F1及び反応対象流体F1とは異なる非反応対象流体F3の内筒70の軸方向における流速が、38.5mm/s以下に設定されていると、その境界が明瞭になるように生成し易い。
【0076】
この流体の制御方法において、流速が6.4mm/s以下に設定されていると、その境界がより明瞭になるように生成し易い。
【0077】
このテイラー渦流反応装置10は、外筒61と、内筒70と、反応対象流体供給装置87と、異相流体供給装置88と、検出装置86と、を備えている。内筒70は、外筒61内に同軸状に配置されて軸線R周りに回転駆動され、外筒61との間に反応室84を形成する。反応対象流体供給装置87は、反応相を生成する反応対象流体Fを反応室84に供給する。異相流体供給装置88は、反応相30とは異なる抑制相31(非反応相)を生成する非反応対象流体F3(異相流体)を反応室84に供給する。検出装置86は、反応室84内に、リング状の反応相30と、非反応対象流体F3を含むリング状の抑制相31と、が軸線R方向に隣合い生成されたか否かを検出する。
【0078】
この構成によれば、検出装置86によって、反応相30と抑制相31との生成状況を把握することができる。
【0079】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、上述した実施例や後述する実施例の様々な特徴は、発明の趣旨を逸脱せず且つ矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わせてもよい。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
(1)上記実施例1では、反応対象流体及び非反応対象流体を反応室に連続的に流入させている。これに限らず、制御装置によって、反応対象流体及び非反応対象流体のいずれか一方を反応室に連続的に流入させつつ、いずれか他方を反応室に断続的に流入させてもよい。この場合、いずれか他方のみの流入量を調節するのみで流量比Q1/Q2を調節できるので制御が簡単である。例えば、非反応対象流体を流入させて内筒を回転駆動させた状態で、反応室に反応対象流体を流入させた後、再び反応室に非反応対象流体を流入させる。こうすることによって、反応室の前後方向の中央部において反応対象流体のテイラー渦を生成し、各種反応を生じさせることができる。これによって、極微量の反応対象流体に各種反応をさせることができる。こうすれば、反応対象流体を必要量以上に使用する事態を避けることができ、反応対象流体を無駄に消費せずに済む。
(2)上記実施例1では、第1流入路、及び第2流入路を通した各反応対象流体を一方の流入口よりも上流で合流させた後反応室内に流入させる構成である。これに限らず、図14に示すように、第1流入路111、及び第2流入路112を通した各反応対象流体を別個の流入口110A,110Bから反応室184内に流入させてもよい。
(3)上記実施例1では、第1流入路、及び第2流入路を通して、二種類の反応対象流体を反応室に流入させている。これに限らず、一種類の反応対象流体を反応室に流入させてもよく、流入路の数を三つ以上設け、三種類以上の反応対象流体を反応室に流入させてもよい。また、上記実施例1では、各流入路は、同一断面上に設けている。これに限らず、流入路は、軸方向に離間して設けてもよい。
(4)上記実施例1では、検出装置を閉塞部材に設けている。これに限らず、図18に示すように、外筒61の外周面や流出路106に検出装置86を設けてもよい。
(5)上記実施例1とは異なり、図17に示すように、隣接するテイラー渦V3を構成して隣接したセルC1,C2の間の谷間領域に、抑制相431として、100μmよりも大きい気泡を含む気泡相153を生成してもよい。この構成によれば、気泡相153は、セルC1,C2の間に生成される谷間領域に点在するので、必要とする非反応対象流体F3の量をより抑えつつ、反応相130の間において反応対象流体Fの行き来を抑制する効果を得ることができる。また、スラグ流を生成する場合に比べて抑制相として必要な流体の量をより抑えるので、その分、反応室84内における反応対象流体Fの量を増やすことができ、反応対象流体Fの処理量を増やすことにもつながる。さらに、この気泡をファインバブルのみとしてもよく、ウルトラファインバブルのみとしてもよい。
(6)実施例1では、非反応対象流体として気体を用いている。これに限らず、反応対象流体に対して非相溶性を有していれば、油等の液体を非反応対象流体として用いても良い。この場合、スラグ流は、2種類の液体によって形成される。
(7)実施例1では、検出装置を用いて反応室の前端部に位置する反応相と抑制相とを検知しているが、これに限らず、閉塞部材を透明な部材で構成し、反応室の前端部の様子を目視し得る構成としてもよい。
(8)実施例1では、マイクロバブル相を内筒の外周面、又は外筒の内周面の両方の周面に接触する構成について開示している。これに限らず、図15、16に示すように、テイラー渦V4を構成する隣接したセルC1,C2の間の外筒61側の谷間領域のみに接触するようにマイクロバブル相53を生成してもよく、内筒70側の谷間領域のみに接触するようにマイクロバブル相53を生成してもよい。この場合、内筒70の回転数を適宜に調節することによって、マイクロバブル相53の分布する位置や密度、マイクロバブルの粒径を調節することが考えられる。
(9)実施例1では、外筒として透明なアクリル樹脂を用いているが、外筒の材質はガラスでもよい。また、外筒は、透明なアクリル樹脂又はガラスの外周面を金属製の筒で覆ったものでもよい。この場合、金属製の筒には、軸線方向に延びるスリットを形成することによって、反応室内の様子を目視できるようにするとよい。また、外筒として金属製の筒を用いてもよい。
(10)実施例1と異なり、複数の検出装置を閉塞部材の軸線周りに設けてもよい。この構成によれば、反応相と抑制相との界面における軸線周りの揺らぎを検出できる。
(11)反応室の前後方向の寸法、外筒の内径、内筒の外径は、実施例に開示された寸法に限らない。
(12)反応対象流体に対して相溶性を有する気体と、反応対象流体に対して非相溶性を有する気体と、を混合した気体によって気泡を生成してもよい。
(13)反応相を水性液体で生成し、抑制相を油性液体で生成したスラグ流(すなわち、液液スラグ流)を形成した場合であっても、流量比Q1/Q2を0.25以上且つ10以下にすることによって反応相、及び抑制相を、その境界がより明瞭になるように生成し得る。
(14)実施例1と異なり、反応対象流体は、液体と粉粒体との組み合わせ、液体と気体との組み合わせであってもよい。
(15)実施例1と異なり、一つの反応相に二つ以上のテイラー渦を生成してもよい。また、一つの反応相において、一方のセルと他方のセルとを前後方向に入れ替えた形態であってもよい。
(16)検出装置の構成を図19に示すような構成としてもよい。具体的には、一対の電極棒186Aを軸線R方向に離間させて外筒61に貫通して取り付ける。電極棒186Aの先端部は、反応室84に臨んでいる。一方の電極棒186Aには、電源186Cが介在して設けられている。一対の電極棒186Aの基端部にはリレースイッチ186Bが接続されている。例えば、一対の電極棒186Aの両方の先端部が、電流が流れる性質を有する1つの反応相30に接触している場合には、一対の電極棒186Aの間で通電してリレースイッチ186Bがオン状態に切り替わる(図20参照)。これに対して、一対の電極棒186Aの先端部の少なくともいずれかが電流が流れない性質を有する(すなわち、非導電性の)抑制相31にかかっている場合には、一対の電極棒186Aの間で通電せず、リレースイッチ186Bがオフ状態に保持される(図21、22参照)。
(17)実施例1と異なり、内筒を固定して、外筒のみを回転させる構成としてもよく、外筒に対して内筒が相対的に回転するように内筒及び外筒の両方を回転させてもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…テイラー渦流反応装置
30,130…反応相
31,331,431…抑制相
50…仕切相
53…マイクロバブル相
61…外筒
70…内筒
84,184…反応室
86…検出装置
87…反応対象流体供給装置
88…異相流体供給装置
153…気泡相
B…気泡
D…外筒の内径
d…内筒の外径
F,F1,F2…反応対象流体
F3…非反応対象流体(異相流体)
Fv…軸流速
G…間隙幅
Q1,Q2…流量
R…軸線
S…攪拌力
V…内筒の周速
V1,V2,V3,V4…テイラー渦
【要約】
反応室内での流体の反応を良好に行う。
流体の制御方法は、外筒(61)と、外筒(61)内に同軸状に配置された内筒(70)との間に形成された反応室(84)内に、テイラー渦(V1)を生成した反応対象流体(F1,F2)からなり、軸線(R)方向に並ぶリング状の反応相(30)と、反応相(30)に対して軸線(R)方向に隣接し、反応相(30)内の反応対象流体(F1,F2)が反応相(30)外に流出することを抑制するリング状の抑制相(31)と、を生成する。
図1
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