(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】コンテナ
(51)【国際特許分類】
B65D 21/032 20060101AFI20230120BHJP
B65D 1/34 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B65D21/032
B65D1/34
(21)【出願番号】P 2019001700
(22)【出願日】2019-01-09
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】591006944
【氏名又は名称】三甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】籔田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】和田 吉弘
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-085772(JP,A)
【文献】実開昭49-099634(JP,U)
【文献】実開昭49-099632(JP,U)
【文献】実開昭52-049032(JP,U)
【文献】特開2018-118763(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 21/032
B65D 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面部と,前記底面部の縁辺から上方に立った形状の側壁部とを有し,前記側壁部の上端レベルが開口部となっているコンテナであって,
前記側壁部の上端に上向きの平面であるフランジ面が形成されるとともに,前記フランジ面の一部に凸部が形成されており,
前記側壁部の下端における,前記凸部の真下の位置に,同じコンテナ同士の段積み状態の上段となったときに下段のコンテナの前記凸部を収納できる凹部が形成されて
おり,
前記凹部には,前記側壁部の厚みの範囲内の最外に位置し,上方側から垂下して前記側壁部と平行な方向に形成された垂下壁が設けられており,
前記垂下壁の下端が,前記側壁部の下端の外縁より高い位置にあることを特徴とするコンテナ。
【請求項2】
請求項1に記載のコンテナであって,
前記側壁部の下端の外縁が,コンテナを床置きしたときに接地箇所となる最下箇所であり,
前記凹部は,前記最下箇所のレベルから上向きに凹んで形成されていることを特徴とするコンテナ。
【請求項3】
請求項2に記載のコンテナであって,
前記凹部の前記最下箇所のレベルからの深さが,前記凸部の前記フランジ面からの突出高さ以上であり,
前記凹部に,上方側から垂下した形状の,前記段積み状態の上段となったときに下段のコンテナの前記凸部と干渉しない垂下壁が,前記側壁部と平行な方向に形成されていることを特徴とするコンテナ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のコンテナであって,
前記底面部の裏面における前記凹部の内縁より内側の位置に,前記最下箇所のレベルに達する補強リブが上方側から垂下して形成されており,
前記底面部の裏面のうち前記補強リブ以外の箇所が,前記最下箇所のレベルより高いレベルとされていることを特徴とするコンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,食料品その他の収納物を収納してその状態で保管・搬送をすることができるコンテナに関する。さらに詳細には,上面側が開口しているとともに,複数個の同じコンテナを上下に段積みすることができるように構成されているコンテナに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のコンテナとして,特許文献1に記載されているものを挙げることができる。同文献の第2図には,同文献の考案に係るコンテナを段積みにした状態が描かれている。同図によれば,同文献のコンテナの段積み状態においては,上段のコンテナの底面部が下段のコンテナの開口部に一部食い込んだ状態となっていることが分かる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら前記した従来のコンテナには,次のような問題点があった。第1に,段積み状態にて上下のコンテナ間での横ずれが大きくなりがちである。その理由は,コンテナの使用開始後における経時変化により寸法が収縮しうることにある。この経時伸縮に対応するため,底面部の凸状部の寸法と,上面側の開口部の寸法との間にはクリアランスが必要である。特許文献1のコンテナでは当該クリアランスを,コンテナの全体寸法に対する適当な比率で定めることになる。このため,クリアランスの絶対値はかなり大きなものとする必要があるのである。このことが段積み時の横ずれを大きくしており,段積み状態そのものの安定性を低下させている。
【0005】
第2に,段積みの最下段のコンテナの接地領域の端部から端部までの幅が狭いという問題がある。当該接地領域は最大でも前述の底面部の凸状部の範囲内でしかない。これは当然,上面側の開口部より小さいからである。このため,コンテナを段積みにして全体の重心位置がある程度高い状況では,横向きの力により傾くことに対する耐性が低い。したがって,段積み状態のままライン搬送等を行う場合に,移動に伴う加速,振動により,段積み状態の全体が過度に傾斜して転倒する可能性がある。
【0006】
第3に,多数個の段積みに対する変形耐性が弱い,という問題がある。最下段のコンテナの底部における周辺部分は,前述の構成より,接地しておらず浮いている状況にある。このため,多段の段積みによる大きな荷重が掛かると,その部分が下向きに歪んでしまうことがある。この歪みは,荷重を解除しても復元しない場合がある。その場合,歪みが発生したコンテナをその後に段積みの上段にしようとすると,下段のコンテナにうまく嵌らない。そのようなコンテナをさらに段積みの最下段として使用すると,疲労の蓄積によりコンテナの破損に繋がることもある。
【0007】
本発明は,前記した従来のコンテナが有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,段積み状態での横ずれが小さく安定性に優れ,個体差や経時伸縮にも対応したコンテナを提供することにある。また,より好ましくは,変形耐性にも優れたコンテナを提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様におけるコンテナは,底面部と,底面部の縁辺から上方に立った形状の側壁部とを有し,側壁部の上端レベルが開口部となっているコンテナであって,側壁部の上端に上向きの平面であるフランジ面が形成されるとともに,フランジ面の一部に凸部が形成されており,側壁部の下端における,凸部の真下の位置に,同じコンテナ同士の段積み状態の上段となったときに下段のコンテナの凸部を収納できる凹部が形成されており,凹部には,側壁部の厚みの範囲内の最外に位置し,上方側から垂下して側壁部と平行な方向に形成された垂下壁が設けられており,垂下壁の下端が,側壁部の下端の外縁より高い位置にあるものである。
【0009】
上記態様におけるコンテナでは,同じコンテナ同士を上下に段積みすることができる。段積み状態では,下段のコンテナのフランジ面上の凸部が,上段のコンテナの凹部に収納されている。これにより上下のコンテナ間の滑りを防いでいる。ここで,凸部および凹部のサイズには,コンテナの個体差,経時伸縮を考慮したクリアランスを設定することができる。凸部および凹部がコンテナの全体形状の一部であることから,クリアランスの絶対値はごく小さなものでよい。このため,段積みの段間で起こりうる横ずれもごく小さいものに留まる。このため,段積み状態の安定性に優れている。
【0010】
上記態様のコンテナではさらに,側壁部の下端の外縁が,コンテナを床置きしたときに接地箇所となる最下箇所であり,凹部は,最下箇所のレベルから上向きに凹んで形成されていることが望ましい。このようになっていると,側壁部の下端の外縁から反対側の外縁に至る広い幅が,接地領域の端部から端部までの幅となる。このため,段積み状態のコンテナに対して横向きの力が加わっても,転倒には至りにくい。また,側壁部の真下が,凹部の部分を除き浮いた状態とならないので,多段積みの荷重を受けても変形しにくい。
【0011】
側壁部の下端の外縁が最下箇所である態様のコンテナではまた,凹部の最下箇所のレベルからの深さが,凸部のフランジ面からの突出高さ以上であり,凹部に,上方側から垂下した形状の,段積み状態の上段となったときに下段のコンテナの凸部と干渉しない垂下壁が,側壁部と平行な方向に形成されていることがより好ましい。このようになっていることにより,同じコンテナ同士を上下に段積みするときに,上段のコンテナの側壁部の下端の外縁が下段のコンテナのフランジ面に接触するより先に,凸部の頂部が凹部の垂下壁に底付きすることがない。
【0012】
側壁部の下端の外縁が最下箇所である態様のコンテナではあるいは,底面部の裏面における凹部の内縁より内側の位置に,最下箇所のレベルに達する補強リブが上方側から垂下して形成されており,底面部の裏面のうち補強リブ以外の箇所が,最下箇所のレベルより高いレベルとされていることもまた好ましい。この補強リブによって,凹部が設けられていることによるコンテナの強度の低下を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本構成によれば,段積み状態での横ずれが小さく安定性に優れ,個体差や経時伸縮にも対応したコンテナが提供されている。また,態様によっては,変形耐性にも優れたコンテナが提供されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態に係るコンテナを示す斜視図である。
【
図3】
図1のコンテナを逆さに伏せて示す斜視図である。
【
図5】
図1のコンテナを2つで段積みにした状態を示す斜視図である。
【
図8】
図1のコンテナを切断した状態で示す斜視図(その1)である。
【
図9】
図5の段積み状態のコンテナを切断した状態で示す斜視図である。
【
図10】
図1のコンテナを切断した状態で示す斜視図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明を具体化した実施の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,
図1に示すコンテナ1として本発明を具体化したものである。
図1のコンテナ1は全体として,上方から見て長方形状に見える容器である。コンテナ1は,長方形状の底面部2と,その縁辺から上方に立った形状の短辺側壁部3および長辺側壁部4とを有している。コンテナ1では,短辺側壁部3および長辺側壁部4の上端レベルが開口部となっている。
【0016】
コンテナ1では,短辺側壁部3および長辺側壁部4の上端に,フランジ面5が形成されている。フランジ面5は,上向きの平面である。そしてフランジ面5の一部に凸部6,7が形成されている。本形態では,短辺側壁部3の一部に凸部6が,長辺側壁部4の一部に凸部7が形成されている。また,短辺側壁部3の下端には凹部8が,長辺側壁部4の下端には凹部9が,それぞれ形成されている。凹部8は凸部6の真下に,凹部9は凸部7の真下に,それぞれ形成されている。
【0017】
図1中の「A」で示す部分を拡大して
図2に示す。
図2には,長辺側壁部4における凸部7および凹部9が見えている。
図3には,コンテナ1を逆さに伏せた状態を示す。
図3には,凹部8および凹部9がそれぞれ2つずつ見えている。
図3中の「B」で示す部分を拡大して
図4に示す。
図4にも,長辺側壁部4における凸部7および凹部9が見えている。
【0018】
コンテナ1は,同じもの同士を縦に積み重ねた段積み状態にすることができるものである。
図5に,2つのコンテナ1の段積み状態を示す。
図5中では,2つのコンテナ1のうち上段のものを「1U」,下段のものを「1L」として示している。
図5の段積み状態では,上段のコンテナ1Uと下段のコンテナ1Lとが,長辺と短辺とを揃えた向きにして積み重ねられている。もちろん表裏も揃えられている。
図5中の「C」で示す部分を拡大して
図6に示す。また,
図5に示されるものを
図5中の矢印Dの目線でみた側面図を
図7に示す。段積み状態では,
図6から分かるように長辺側壁部4において,上段のコンテナ1Uの凹部9に下段のコンテナ1Lの凸部7が入り込んでいる。また,
図7から分かるように短辺側壁部3でも,上段のコンテナ1Uの凹部8に下段のコンテナ1Lの凸部6が入り込んでいる。
【0019】
上記の段積み状態では,下段のコンテナ1Lの凸部6,7が上段のコンテナ1Uの凹部8,9に収納されている。このことにより,段積み状態の安定が図られている。段積み状態の安定とは,上下のコンテナ1間で横ずれが起きにくいことである。横ずれの起きやすさ・起きにくさは,凸部6,7と凹部8,9とのクリアランスに依存する。クリアランスとは,凸部6,7と凹部8,9とでの水平方向の寸法差のことである。上記の収納を可能にするため凸部6,7より凹部8,9の方が大きく形成されており,その寸法差がクリアランスである。クリアランスが大きいほど横ずれが起きやすく不安定であり,クリアランスが小さいほど横ずれが起きにくく安定性が高い。反面,クリアランスが小さいと,製品の個体差や経時伸縮のために段積みができない場合がある。
【0020】
本形態では,凸部6,7および凹部8,9の水平方向の最大寸法(最低位置の寸法)を例えば30mmと設定し,クリアランスを最大寸法に対して2%と設定すれば,クリアランスの絶対値は0.6mmとなる。この場合,11段積んだとしても総横ずれ量は6mmに留まる。このため少なくとも30段程度は問題なく段積みすることができる。
【0021】
一方,従来技術のように上段の容器の底面部全体が下段の容器の開口部全体に入り込む形式であると,横ずれ量はもっと大きくなる。例えば,容器の全体寸法が縦800mm,横1200mm程度であったとする。この場合,クリアランスの比率が上記と同じであったとしても,その絶対値は縦16mm,横24mm程度となる。これでは11段積んだときの総横ずれ量は最大で縦160mm,横240mmにもなってしまう。これと比較して本形態では,従来の同種のものと比較して格段に段積み状態の安定性が高いのである。一方,2%のクリアランスがあれば,個体差や経時伸縮を考慮しても,段積みができないという事態はめったにない。
【0022】
本形態のコンテナ1はさらに,段積みの最下段となったときの接地領域が広いという利点を有している。このことを
図8により説明する。
図8は,本形態のコンテナ1を
図1中のD-D箇所で縦に切断した状態を示している。
図8にハッチングを付して描かれている部位が,切断により現れた切断面である。なお,
図1における矢印D-Dは,コンテナ1におけるフランジ面5のレベルに対して切断位置を示している(矢印E-Eも同様)。
【0023】
図8から分かるようにコンテナ1では,長辺側壁部4の最下部の最外端10が,最低位置となっている。コンテナ1の全体の中でも,この最外端10よりさらに低い位置は存在しない。したがって,コンテナ1の底面部2の裏面のうち,
図8中の左の最外端10から右の最外端10までの全体が,接地領域の端部から端部までの幅となる。なお,底面部2の裏面のうち中央部分11は,最外端10よりやや高く接地しないが,そのことは接地領域の端部から端部までの幅には影響しない。
【0024】
また,
図8に示しているのは短辺側壁部3と平行な方向についてのことであるが,長辺側壁部4と平行な方向についても同様のことがいえる。これは,コンテナ1では接地領域の幅が,コンテナ1を真上から見たときの縦横の最大寸法と同等に大きく取られているということである。このためコンテナ1は,多数を段積みした状態で横向きの力を受けたときの安定性に優れている。段積み状態で横向きの力が掛かっても,段積み全体の重心が左の最外端10から右の最外端10に至る広い範囲を逸脱してしまうほどの傾斜には至りにくいからである。したがって,段積み状態でライン搬送等を行う場合の安定性が高い。
【0025】
また,このようには接地領域の端部から端部までの幅が広いということは,荷重に対するコンテナ1の変形耐性が高いということである。特に多数段の段積みをすると最下段のコンテナ1Lにはかなり大きな荷重が掛かることになる。上段のコンテナ1Uによる荷重の大部分は,最下段のコンテナ1Lでは縁辺の短辺側壁部3や長辺側壁部4の部分に掛かることとなる。しかし短辺側壁部3や長辺側壁部4の下端は前述のように,凹部8,9の部分を除いて最外端10まで接地している。このため,床面から浮いた状態で上方から大荷重が掛かる,という箇所がない。したがって,多段の段積みをしてもコンテナ1の変形は生じにくいのである。
【0026】
図9に,段積み状態についての同様の切断斜視図を示す。
図9は,
図5中のF-F箇所での切断状態を示している。
図5における矢印F-Fは,下段のコンテナ1Lにおけるフランジ面5のレベルに対して切断位置を示している。
図9でも,下段のコンテナ1Lにおいて,左の最外端10および右の最外端10が最低位置となっていることが分かる。
図9ではまた,上段のコンテナ1Uの左の最外端10および右の最外端10がいずれも,下段のコンテナ1Lのフランジ面5に接していることも分かる。この,段間での接触箇所の端部から端部までの幅が広いことも,段積み状態の安定性に貢献している。
【0027】
凸部6,7および凹部8,9についてさらに説明する。本形態のコンテナ1を
図1中のE-E箇所で縦に切断した状態を,
図10に示す。
図10に示されるコンテナ1の切断面(ハッチングが付されている面)は,短辺側壁部3と平行であり,かつ凸部7および凹部9を通る面である。このため
図10には,凹部9の内部が現れている。
図4にも,凹部9の内部が現れている。
図10および
図4に示されるように凹部9には,長辺側壁部4の厚みの範囲内の最外に位置する垂下壁12が,上方側から垂下して長辺側壁部4と平行な方向に形成されている。ただし垂下壁12の下端は,前述の最外端10より高い位置にある。このため凹部9は,外部から見ると下から上へ向かって凹んだ形状に見える(
図2等)。垂下壁12の下端の最外端10からの高さ,つまり凹部9の深さは,凸部7のフランジ面5からの突出高さ以上である。このため,段積み時に,上段のコンテナ1Uの最外端10が下段のコンテナ1Lのフランジ面5に接触するより先に凸部7の頂部が凹部9の垂下壁12に底付きすることはない。
【0028】
そして,凹部9における垂下壁12より内側の箇所には,水平な天井壁13が設けられている。天井壁13は,垂下壁12の下端よりさらに高い位置にある。このため,垂下壁12の内面に,外部から指または何らかの鉤状の部材を挿し込んで引っ掛けることができる。その状態で,垂下壁12を引っ張ることで,コンテナ1もしくはその段積み状態全体を移動させることができる。
【0029】
また,天井壁13よりさらに内側には,垂下壁12と平行な内縁壁14が形成されている。内縁壁14の下端は,前述の最外端10と同じレベルである。そして,垂下壁12と内縁壁14との間には,上方の天井壁13から垂下した形状の補強垂下壁18が形成されている(
図4)。補強垂下壁18は,凹部9が形成されている側壁部である長辺側壁部4と交差する方向に形成されている。補強垂下壁18の下端は,垂下壁12の下端より下に突き出てはいない。したがって補強垂下壁18は,段積み状態の上段となったときに,下段のコンテナ1Lの凸部7と干渉することはない。また,補強垂下壁18は,長辺側壁部4の下端における凹部9が形成されている箇所を補強している。したがって本形態のコンテナ1では,凹部9が形成されていることによる強度の低下はごくわずかである。
【0030】
さらに,
図10および
図8から分かるように,底面部2の裏面には,内縁壁14より内側にも,最外端10と同じ高さレベルで設けられている補強リブ15が存在する。ただし
図4に示されるように,補強リブ15が最外端10と同じ高さレベルまで設けられているのは,凹部9が形成されている範囲の近辺だけである。それ以外の箇所では,底面部2の裏面のリブは,「中央部分11」として前述したように,最外端10より高いレベルまでしか形成されていない。このことはつまり,凹部9が形成されている範囲の近辺では,底面部2の縁辺部が補強リブ15により補強されている,ということである。コンテナ1ではこの点でも,凹部9が形成されていることによる強度の低下が防止されている。上記の垂下壁12,天井壁13,内縁壁14,補強垂下壁18および補強リブ15については,長辺側壁部4の凹部9のみならず短辺側壁部3の凹部8についても同様の構成とされている。
【0031】
なお,
図2等に現れているように,凸部7の長手方向(長辺側壁部4と平行な方向)の両端は傾斜面16とされている。このため凸部7は,上方ほど短い台形形状となっている。凹部9にも傾斜面17が形成されており,凸部7に合わせた台形形状とされている。このため,コンテナ1を段積みにするとき,凸部7の角が凹部9の入り口に引っ掛かるようなことが起こりにくく,作業性がよい。段積みにした状態では,下の凸部7の傾斜面16と,上の凹部9の傾斜面17とが面当たりすることになる。この点でも段間の横ずれが抑制される。傾斜面16のフランジ面5からの立ち上がり角度は,60°~85°の範囲内が好ましい。この傾斜面16,17についても,凸部7および凹部9ばかりでなく凸部6および凹部8についても同様のことがいえる。
【0032】
以上詳細に説明したように本実施の形態によれば,コンテナ1における短辺側壁部3や長辺側壁部4の上端をフランジ面5とし,その一部分に凸部6,7を設けている。そして凸部6,7の真下に凹部8,9を設けている。これにより,段積み時に上段の凹部8,9に下段の凸部6,7が収納されるようにしている。このため,個体差や経時伸縮を考慮したクリアランスを凸部6,7および凹部8,9のサイズに設定しても,段積み時の横ずれ量がごく小さいものとなるようにしている。こうして,段積み状態での横ずれが小さく安定性に優れ,個体差や経時伸縮にも対応したコンテナ1が実現されている。また,コンテナ1の変形耐性も向上している。
【0033】
なお,本実施の形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。例えば,コンテナ1を上方から見た全体形状は,長方形に限らず正方形でもよいし,他の形状でもよい。また,短辺側壁部3や長辺側壁部4における凸部,凹部の個数は,1個だけに限らず,複数個あってもよい。また,対向する対辺同士で,凸部,凹部の有無,位置が必ずしも一致していなくてもよい。長辺側壁部4に凸部7および凹部9が形成されているが短辺側壁部3には凸部6および凹部8が形成されていない,という構成でもよい。その逆でもよい。また,垂下壁12の位置は,必ずしも長辺側壁部4の厚みの範囲内の最外の位置でなくてもよい。凸部7が形成されている範囲内であれば,最外よりも多少内寄りの位置であってもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 コンテナ
2 底面部
3 短辺側壁部
4 長辺側壁部
5 フランジ面
6 凸部
7 凸部
8 凹部
9 凹部
10 最外端
11 中央部分
12 垂下壁
15 補強リブ