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特許7213520疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/52 20060101AFI20230120BHJP
   B01J 13/20 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20230120BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K9/52
B01J13/20
A61K47/36
A61K47/10
A61K47/20
A23L5/00 C
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021571570
(86)(22)【出願日】2020-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-21
(86)【国際出願番号】 CN2020136163
(87)【国際公開番号】W WO2021258668
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2021-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲許▼ 忠斌
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼ ▲聡▼
(72)【発明者】
【氏名】黄 ▲興▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 素霞
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲寧▼涛
【審査官】高橋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第110330980(CN,A)
【文献】国際公開第2015/057170(WO,A1)
【文献】高分子論文集,1977年,Vol.34, No.4,p.323-330
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00-9/72
A61K 47/00-47/69
B01J 13/20
A23L 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性固体粉末をヒドロゲル溶液の表面に置くステップS1と、
気泡を生成させるためのフレームを、表面に前記固体粉末があるヒドロゲル溶液に浸漬し、次いでフレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、その際、フレームに一層のヒドロゲル液膜が付着し、前記フレームの上昇に伴い、液膜が連続的に上向きに引き伸ばされ、液膜がネッキングするまで、破断して密封して気泡を形成し、粉末成分を気泡内部に封入するステップS2と、
固体粉末を封入した気泡のヒドロゲル溶液に対してマイクロ流体液滴分離を行い、固体粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成するステップS3と、
固体粉末を封入したヒドロゲル液滴を架橋し、固体状の粉末-ゲルミクロスフェアであるP/Hミクロスフェアを形成するステップS4と、を含む
ことを特徴とする、疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項2】
前記マイクロ流体液滴分離は、
固体粉末を封入した気泡のヒドロゲル溶液を、マイクロ流体T型液滴発生装置の1つのチャネルに注入し、ヒドロゲルに対する連続相の剪断作用を利用して、粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成することによって行われる
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項3】
前記ヒドロゲル溶液に界面活性剤を添加して溶液の界面張力を低下させ、高分子量のポリマーを添加して液膜および気泡が存在する時間を延長し、ヒドロゲルと添加剤の配合比を調整することによって異なる気泡直径を得ることができる
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項4】
連続相またはヒドロゲル溶液の流速を調整し、P/Hミクロスフェア内部の気泡コア数を変化させ、単コア、二コアまたはマルチコアの構造を形成する
ことを特徴とする請求項2に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項5】
ヒドロゲル溶液中の各成分の配合比または連続相の流速またはヒドロゲル溶液の流速を調整し、P/Hミクロスフェアのミクロスフェア直径、最小肉厚および平均肉厚を変化させる
ことを特徴とする請求項2に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項6】
前記フレームが複数列複数行であり、フレームネットワークを形成し、各フレームに一つの気泡が生成されると、フレームネットワークに同時に大量の気泡が生成され、大フラックスの粉末封入を達成する
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項7】
温度感受性のヒドロゲルに対して、前記ステップS1~ステップS3の過程において温度を60℃以上に保つ必要があり、前記ヒドロゲル溶液がゲル化するのを防止する
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項8】
前記ステップS1の前に、先にハイドロゲル溶液に別の物質を溶解させ、これにより、ステップS1~ステップS4を経た後、前記ゲルミクロスフェアのシェルに前記別の物質がロードされ、二重ロードの効果が得られる
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【請求項9】
前記ヒドロゲル溶液は、アガロース、ドデシル硫酸ナトリウムおよびポリエチレンオキシドで調製され、アガロースの濃度は2.5%~4.5%である
ことを特徴とする請求項1に記載の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉末薬物/食品パッケージ技術分野に関し、具体的には疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの疎水性の薬物成分、栄養素または食品生体活性物質は、粉末/固体形態で存在し、人体の健康にとって非常に重要である。これらの粉末成分は、医薬工業および食品工学に広く適用され、例えば、殺菌抗炎症効果を有し、腫瘍癌治療における漢方薬成分であるカンプトテシン、レスベラトロール、ケルセチンなど、一部の水不溶性ビタミン、抗酸化剤、および一部の食品着色剤、特にカロテノイドなどに使用可能である。しかしながら、これらの粉末材料は、安定性が悪く、溶解性が悪く、生体学の利用率が低く、加工、貯蔵および輸送中に光、酸素、高温、湿度などの環境外力の影響を極めて受けやすく、これらの難溶性粉末成分の作用発揮が大きく制限される。
【0003】
現在、マイクロパッケージ技術を用いることにより、上記の問題の一部を解決することができ、活性成分を単一または複雑な二次材料マトリックスにパッケージングするか、または包埋することによって、サブミクロンから数百ミクロンのミクロスフェアを形成し、それによって活性成分を保護する。疎水性固体粉末のパッケージについて、現在のマイクロパッケージ技術は、主に2つの大きなカテゴリーに分けられ、1つ目は溶媒溶解法であり、2つ目は直接固体封入法である。溶剤溶解法は、粉末を適当な有機溶剤に溶解して均一な溶液を得た後、それをエマルジョンに分散し、成分を粒子、繊維、リポソームおよびスポンジなどの担体に封入する。しかし、様々な粉体成分の多様性を考慮すると、効果的で適合する1種の有機溶剤を見出すことは容易ではない。この問題を解決するために、直接固体封入法は、粉末成分をヒドロゲルまたは生体ポリマーなどのマトリックスに包封し、その後、噴霧乾燥、凍結乾燥または研磨を経て粒子を作る。しかしながら、このような方法は、ロード率が高くないという問題があり、溶液中の粉末含有量が増えると、溶液の特性が変化し、例えば、溶液の粘度が指数関数的に増加し、パッケージの困難性が大幅に増加する。
【0004】
一方、適切な材料を選択してマイクロカプセル化を行うことは、パッケージ過程および後の放出にとって極めて重要である。ヒドロゲルは、その高い水吸収性、柔軟性、生体適合性、および生分解性を有するため、最良の候補材料である。特に、刺激応答性ヒドロゲルは、スマート薬物放出の分野において幅広い応用の見込みを有する。しかしながら、ヒドロゲルの親水性のため、疎水性粉末をパッケージする際に問題が生成し、材料設計が複雑になり、その適用性が制限される。
【0005】
したがって、疎水性固体粉末成分に対して高ロード率、無生体毒性のパッケージを行うことができ、制御可能な放出を可能にする開発の余地がまだ大きくある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術の欠点に対して、本発明は、疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法を提案し、固体粉末のロード率を向上させ、形成された粉末/ゲルミクロスフェア(Powder in hydrogel microsphere、P/Hミクロスフェア)が機械的安定性を有し、二重粉末成分放出の能力を有する。
【0007】
本発明の目的は、以下のような解決手段によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法は、
疎水性固体粉末をヒドロゲル溶液の表面に置くステップS1と、
気泡を生成させるためのフレームを、表面に前記固体粉末があるヒドロゲル溶液に浸漬し、次いでフレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、その際、フレームに一層のヒドロゲル液膜が付着し、前記フレームの上昇に伴い、液膜が連続的に上向きに引き伸ばされ、液膜がネッキングするまで、破断して密封して気泡を形成し、粉末成分を気泡内部に封入するステップS2と、
固体粉末を封入した気泡のヒドロゲル溶液に対してマイクロ流体液滴分離を行い、固体粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成するステップS3と、
固体粉末を封入したヒドロゲル液滴を架橋し、固体状の粉末-ゲルミクロスフェアであるP/Hミクロスフェアを形成するステップS4と、を含む。
【0009】
さらに、前記マイクロ流体液滴分離は、
固体粉末を封入した気泡のヒドロゲル溶液を、マイクロ流体T型液滴発生装置の1つのチャネルに注入し、ヒドロゲルに対する連続相の剪断作用を利用して、粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成することによって行われる。
【0010】
さらに、前記ヒドロゲル溶液に界面活性剤を添加して溶液の界面張力を低下させ、高分子量のポリマーを添加して液膜および気泡が存在する時間を延長し、ヒドロゲルと添加剤の配合比を調整することによって異なる気泡直径を得ることができる。
【0011】
さらに、連続相またはヒドロゲル溶液の流速を調整し、P/Hミクロスフェア内部の気泡コア数を変化させ、単コア、二コアまたはマルチコアの構造を形成する。
【0012】
さらに、ヒドロゲル溶液中の各成分の配合比または連続相の流速またはヒドロゲル溶液の流速を調整し、P/Hミクロスフェアのミクロスフェア直径、最小肉厚および平均肉厚を変化させる。
【0013】
さらに、前記フレームが複数列複数行であり、フレームネットワークを形成し、各フレームに一つの気泡が生成されると、フレームネットワークに同時に大量の気泡が生成され、大フラックスの粉末封入を達成する。
【0014】
さらに、温度感受性のヒドロゲルに対して、前記ステップS1~ステップS3の過程において温度を60℃以上に保つ必要があり、前記ヒドロゲル溶液がゲル化するのを防止する。
【0015】
さらに、前記ステップS1の前に、先にハイドロゲル溶液に別の物質を溶解させ、これにより、ステップS1~ステップS4を経た後、前記ゲルミクロスフェアのシェルに前記別の物質がロードされ、二重ロードの効果が得られる。
【0016】
さらに、前記ヒドロゲル溶液は、アガロース、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)およびポリエチレンオキシド(PEO)で調製され、アガロースの濃度は2.5%~4.5%である。
【発明の効果】
【0017】
本発明の有益な効果は下記の通りである。
(1)本発明の方法は、ヒドロゲル気泡によって粉末パッケージを達成し、マイクロパッケージ過程における有機溶剤の使用を回避する。
(2)本発明の方法は、粉末を気泡キャビティに直接封入することにより、粉末成分のロード率を大幅に向上する。
(3)本発明の方法により形成される粉末-ゲルミクロスフェアは、コアシェル構造を有し、二重ロード能力を備え、二重物質放出を行うことができ、薬物の制御可能なプログラマブル放出の可能性を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法の概略図であり、図のaは、気泡形成の過程を示し、図のbは、気泡分離、P/Hミクロスフェア形成の過程を示す。
図2】P/Hミクロスフェの実物図であり、ここで、ミクロスフェア直径がDm、気泡直径がD、最小肉厚がdminである。
図3】実施例4に係る並列気泡フレーム構造である。
図4】異なる気泡コア数を有するP/Hミクロスフェアの実物図であり、ここで、図のaは単コア構造であり、図のbは、二コア構造であり、図のcは、三コア構造である。
図5】気泡サイズに対するヒドロゲル溶液の配合比の調整制御である。
図6】連続相の流速およびミクロスフェアサイズに対するヒドロゲル溶液の配合比の調整制御である。
図7】本発明に係るP/Hミクロスフェアの機械的性能テスト結果であり、ここで、図のaおよび図のbは、それぞれ異なる濃度アガロースを含むP/Hミクロスフェア応力ひずみ曲線および破断圧力であり、図のcおよび図のdは、それぞれ異なる肉厚のP/Hミクロスフェア応力ひずみ曲線および破断圧力である。
図8】本発明に係るP/Hミクロスフェア薬物放出原理の概略図である。
図9】実施例1に係るP/Hミクロスフェア薬物放出図であり、ここで、図のaの左は、超音波放出前であり、右は、超音波放出後であり、図のbは、薬物累積放出量の経時変化の曲線図である。 図には、1固体粉末、2ヒドロゲル溶液、3フレーム、4ヒドロゲル液膜、5ロード粉末のヒドロゲル気泡、6T形液滴発生装置、7ヒドロゲル液滴、8粉末-ゲルミクロスフェア(P/Hミクロスフェア)、9収集溝。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明は、図面および好ましい実施形態に基づいて詳細に説明する。本発明の目的および効果は、より明らかになる。本発明に記載の具体的な実施形態は、本発明を解釈するためにのみ使用され、本発明を限定することを意図するものではない。
【0020】
本発明は、疎水性固体粉末を封入したP/Hミクロスフェアの製造方法を開示し、ヒドロゲル気泡を生成することにより粉末を封入し、その後、微小流体制御液滴発生装置によりヒドロゲル気泡を剪断して、粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成し、最後に、ヒドロゲル架橋により、粉末を封入したコアシェル構造の粉末-ゲルミクロスフェア(Powder in hydrogel microsphere、P/Hミクロスフェア)を形成する。
【0021】
一定濃度のヒドロゲル溶液(例えば、アガロース、ゼラチンなど)を調製し、界面活性剤または添加剤を加える。
【0022】
図1に示すように、粉末成分をヒドロゲル溶液の表面に置き、気泡を生成させるためのフレームを、表面に粉体成分が存在するヒドロゲル溶液に浸漬する。粉体の疎水性による界面張力と粉体の重力とが釣り合って、粉末は沈下せずに表面に留まる。次に、フレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、その際、フレームに一層のヒドロゲル薄液膜が付着する。フレームの上昇に伴い、液膜がネッキングするまで液膜が連続的に上向きに引き伸ばされ、最後に、レイリープラットフォームが不安定になるため、破断して密封して気泡を形成し、粉末成分を気泡内部に封入する。Pickering効果により、粉末の一部は界面活性剤としても機能し、気泡の形成を促進して安定させる。
【0023】
生成された粉末封入ヒドロゲル気泡を微小流体制御液滴発生装置のチャネルに注入し、連続相を利用してヒドロゲル気泡を剪断し、粉末を封入したヒドロゲル液滴を形成する。
【0024】
次いで、粉末を封入したヒドロゲル液滴は、架橋(降温、光照など)を経た後で固体状のP/Hミクロスフェアに変換される。P/Hミクロスフェア内部の気泡によって生成される浮力のため、P/Hミクロスフェアは、偏心構造となる。得られたミクロスフェア直径はDm、気泡直径はDb、最小肉厚はdmin、平均肉厚はdである。P/Hミクロスフェアの実物図を図2に示す。
【0025】
ヒドロゲル溶液中の各成分の配合比を調整することにより、異なる気泡直径を得ることができる。
【0026】
連続相またはヒドロゲル溶液の流速を調整して、P/Hミクロスフェア内部の気泡コア数を変化させ、単コア、二コアまたはマルチコアの構造を形成することができる。
【0027】
ヒドロゲル溶液中の各成分の配合比または連続相の流速またはヒドロゲル溶液の流速を調整して、P/Hミクロスフェアのミクロスフェア直径、最小肉厚および平均肉厚を変化させることができる。
【0028】
大フラックスの粉末封入を達成するために、気泡を生成させるためのフレームを並べて配列し、フレームネットワークを形成し、同時に大量の気泡を生成できて粉末を封入することができる。
【0029】
本発明のP/Hミクロスフェアの製造方法は、二重ロードの効果を達成することもでき、その際、先ずにハイドロゲル溶液に別の物質を溶解させ、その後、上記ステップを経た後、最後に得られたP/Hミクロスフェアのシェルに別の物質をロードする必要がある。
【0030】
生成されたP/Hミクロスフェアは、優れた機械的性能を有し、一定の外部荷重に耐えることができ、これにより、内部封入物質を外部の干渉から保護し、その安定性を向上させることができる。アガロース濃度と最小肉厚はP/Hミクロスフェアの機械的性能に大きな影響を与える。
【実施例1】
【0031】
ヒドロゲル溶液を調製する。3%アガロース、0.2%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)および0.01%ポリエチレンオキシド(PEO、M=4Mg/mol)を選択する。アガロースをヒドロゲル基材とし、SDSを界面活性剤として用い、PEOを主に気泡安定性を向上するために用いる。上記三種の粉末を脱イオン水中で均一に撹拌した後、溶液が透明になるまで電子レンジ内で加熱し、次いで30秒間超音波脱気する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。炭酸カルシウム粉末をヒドロゲル溶液の表面に置く。気泡を生成させるためのフレームを、表面に炭酸カルシウム粉末があるヒドロゲル溶液に浸漬し、次いでフレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、粉末成分を気泡内部に封入する。このプロセスにおいて、ゲル化を防止するために、ヒドロゲル溶液を60℃以上に保つ必要がある。
【0032】
図1のbに示すように、ヒドロゲル気泡溶液をT形液滴発生装置に注入し、T形液滴発生装置のヒドロゲルチャネル部分に加熱装置を設置し、加熱ジャケットの温度を60℃以上に保ち、50cStシリコーンオイルを連続相として選択し、シリコーンオイルの流速を120ml/hに調整し、ヒドロゲルの流速を20ml/hに調整する。ヒドロゲル気泡溶液は、シリコーンオイルの剪断作用下でヒドロゲル液滴を形成する。その後、室温環境下でヒドロゲル液滴がシリコーンオイル環境において冷却し、固体状のP/Hミクロスフェアに変換される。得られたP/Hミクロスフェア特徴パラメータを表1に示す。
【表1】
【実施例2】
【0033】
ヒドロゲル溶液を調製する。12%ゼラチン、0.2%SDSおよび0.1%PEOを選択してヒドロゲル溶液を調製する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。ゼラチンをヒドロゲル基材とし、SDSを界面活性剤とし、PEOが主に気泡安定性を向上するために用いられる。上記三種の粉末を脱イオン水中で均一に撹拌した後、溶液が透明になるまで電子レンジ内で加熱し、次いで30秒間超音波脱気する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。炭酸カルシウム粉末をヒドロゲル溶液の表面に置く。気泡を生成させるためのフレームを、表面に炭酸カルシウム粉末があるヒドロゲル溶液に浸漬し、次いでフレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、粉末成分を気泡内部に封入する。このプロセスにおいて、ゲル化を防止するために、ヒドロゲル溶液を60℃以上に保つ必要がある。
【0034】
ヒドロゲル気泡溶液をT形液滴発生装置に注入し、T形液滴発生装置のヒドロゲルチャネル部分に加熱装置を設置し、加熱ジャケットの温度を60℃以上に保ち、50cStシリコーンオイルを連続相として選択し、シリコーンオイルの流速を100ml/hに調整し、ヒドロゲルの流速を25ml/hに調整する。ヒドロゲル気泡溶液は、シリコーンオイルの剪断作用下でヒドロゲル液滴を形成する。その後、室温環境下でヒドロゲル液滴がシリコーンオイル環境において冷却し、固体状のP/Hミクロスフェアに変換される。得られたP/Hミクロスフェア特徴パラメータを表2に示す。
【表2】
【実施例3】
【0035】
ヒドロゲル溶液を調製する。3%アルギン酸ナトリウム、0.2%SDSおよび0.1%PEOを選択してヒドロゲル溶液を調製する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。アルギン酸ナトリウムをヒドロゲル基材とし、SDSを界面活性剤とし、PEOが主に気泡安定性として用いられる。上記三種の粉末を脱イオン水中で均一に撹拌した後、溶液が透明になるまで電子レンジ内で加熱し、次いで30秒間超音波脱気する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。酸カルシウム粉末をヒドロゲル溶液の表面に置く。気泡を生成させるためのフレームを、表面に炭酸カルシウム粉末があるヒドロゲル溶液に浸漬し、次いでフレームをヒドロゲル溶液から引き上げ、粉末成分を気泡内部に封入する。
【0036】
ヒドロゲル気泡溶液をT形液滴発生装置に注入し、10%塩化カルシウム溶液を連続相として選択し、塩化カルシウム溶液の流速を80ml/hに調整し、ヒドロゲルの流速を20ml/hに調整する。ヒドロゲル気泡溶液は、塩化カルシウム溶液の剪断作用下でヒドロゲル液滴を形成し、その後、架橋されて固体状のP/Hミクロスフェアになる。得られたP/Hミクロスフェア特徴パラメータを表3に示す。
【表3】
【実施例4】
【0037】
ヒドロゲル溶液を調製する。3%アガロース、0.2%SDSおよび0.01%PEOを選択する。アガロースをヒドロゲル基材とし、SDSを界面活性剤とし、PEOが主に気泡安定性として用いられる。上記三種の粉末を脱イオン水中で均一に撹拌した後、溶液が透明になるまで電子レンジ内で加熱し、次いで30秒間超音波脱気する。ナノ炭酸カルシウム粉末を気泡内部薬物モデルとする。炭酸カルシウム粉末をヒドロゲル溶液の表面に置く。大フラックスの粉末封入を達成するために、気泡を生成させるためのフレームを並べて配列し、フレームネットワークを形成し、同時に大量の気泡封入粉末を生成させることができる。フレームネットワークを図3に示す。
【0038】
本発明に係るP/Hミクロスフェアの製造方法は、さらに操作パラメータまたは溶液配合比を調整することによって、異なる形態およびサイズのP/Hミクロスフェアを得ることもでき、具体的には以下の実験によって証明される。
【0039】
T形液滴発生装置内の連続相またはヒドロゲル溶液の流速を制御することにより、P/Hミクロスフェア内部の気泡のコア数を変化させることができ、異なるコア数を有するP/Hミクロスフェアが得られ、マルチコア封入を達成するため、P/Hミクロスフェアは、異なる粉末成分をロードする能力を有する。実施例1では、図4に示すように、ヒドロゲルの流速をそれぞれ18ml/h、54ml/hおよび80ml/hに調整すると、単コア、二コアおよび三コアの構造を有するP/Hミクロスフェアを形成することができる。
【0040】
ヒドロゲル溶液の配合比(アガロース濃度、SDS濃度またはPEO濃度)を制御することによりP/Hミクロスフェアの気泡直径Dを変化させることができ、各パラメータが気泡サイズに与える影響を図5に示す。
【0041】
T形液滴発生装置内の連続相(シリコーンオイル)の流速およびヒドロゲル溶液の配合比(アガロース濃度、SDS濃度またはPEO濃度)を制御することにより、P/Hミクロスフェアのミクロスフェア直径D、最小肉厚dmin、平均肉厚dを変化させることができ、異なるサイズを有するP/Hミクロスフェアが得られ、各パラメータがミクロスフェアサイズに与える影響を図6に示す。
【0042】
本発明により製造されるP/Hミクロスフェアは、優れた機械的性能を有し、一定の外部荷重に耐えることができ、これにより、内部封入物質を保護することができる。アガロース濃度は、ヒドロゲルの機械的性能に大きな影響を与える。アガロース、SDSおよびPEO(M = 4M g/mol))で調製したヒドロゲル溶液に対して、アガロース濃度を2.5%~4.5%に変化させ、得られたP/Hミクロスフェアに対して機械的圧縮試験を行う。図7のaは、異なるアガロース濃度に対するP/Hミクロスフェアの典型的な圧縮応力-ひずみ曲線を示す。アガロース濃度が2.5%~4.5%の間で増加するにつれて、P/Hミクロスフェアの圧縮応力は、0.015MPaから0.12MPaに増加し、図7のbは、その破断圧力が35mNから300mNに増加することを示し、これはヒドロゲル中に緻密なネットワークが形成されていることを示す。溶液配合比を決定すると、P/Hミクロスフェアの最小肉厚は、この位置がP/Hミクロスフェア弱点であるため、機械的強度に決定的に影響を与える。異なる肉厚のP/Hミクロスフェアに対して機械的圧縮試験を行い、図7のcは、最小肉厚がP/Hミクロスフェア機械的性能に与える影響を示している。最小肉厚が50mmから250mmに増加すると、P/Hミクロスフェアの圧縮応力は、0.029MPaから0.10MPaに増加し、図7のdは、その破断圧力が67mNから223mNに増加することを示している。
【0043】
本発明の方法により製造されるP/Hミクロスフェアは、コアシェル構造を有し、異なる粉末成分をロードすることができ、二重放出の能力を有する。その実施形態として、放出原理図を図8に示す。外部ヒドロゲルシェルは、37℃水相環境において粉末成分1を放出し、超音波作用下でヒドロゲルは、連続的に断片に破砕分解され、内部に気泡が封入した粉末成分2を放出し、超音波作用の時間、強度、周波数に応じて、制御可能なプログラマブル放出の特徴を示す。
【0044】
P/Hミクロスフェアの二重薬物ロードおよび放出制御可能な性能を示すために、薬物放出実験を行った。実施例1では、ヒドロゲル溶液を調製するプロセスにおいて、ミクロスフェアシェル中の小分子放出モデルとして、ローダミンBをヒドロゲル溶液に溶解する。その他の操作は実施例1と同様である。これにより、ヒドロゲルシェル体にローダミンBをロードし、ヒドロゲル気泡にナノ炭酸カルシウム粉末をロードしたP/Hミクロスフェアが得られる。得られたP/Hミクロスフェアを37℃の水中に置き、ローダミンBの放出をテストする。P/Hミクロスフェアを超音波環境に置き、炭酸カルシウムの放出をテストする。放出結果を図9に示すが、ヒドロゲルシェルにロードしたローダミンは、時間の経過とともに、最初のバースト放出とその後の緩慢放出の特性を示し、気泡内部に封入した炭酸カルシウム粉末は、超音波作用下で制御可能な段階的放出の特性を示す。
【0045】
当業者にとって、以上は本発明の好適な実施例に過ぎず、本発明を限定することを意図するものではないことを理解することができる。前述の実施例を参照して本発明を詳細に説明したが、当業者にとっては、上記の各実施例に記載された技術案を補正し、または技術特徴の一部を同等に置き換えることができる。発明の精神及び原理の範囲内で行われる補正、等価な置換などは、何れも本発明の保護範囲内に含まれるべきである。
図1
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図6
図7
図8
図9