(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】防風雪柵におけるネット部材の保持構造
(51)【国際特許分類】
E01F 7/02 20060101AFI20230120BHJP
【FI】
E01F7/02
(21)【出願番号】P 2019080019
(22)【出願日】2019-04-19
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000152963
【氏名又は名称】株式会社日本パーツセンター
(74)【代理人】
【識別番号】100210295
【氏名又は名称】宮田 誠心
(74)【代理人】
【識別番号】100088133
【氏名又は名称】宮田 正道
(72)【発明者】
【氏名】中田 誠一郎
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-021413(JP,A)
【文献】実開昭58-024506(JP,U)
【文献】米国特許第3277615(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0289320(US,A1)
【文献】実開昭63-018050(JP,U)
【文献】実公昭45-015767(JP,Y1)
【文献】実開平01-131008(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
間隔を空けて立設された支柱間に保持部材を介してネット状部材が左右方向に張設された防風雪柵において、前記保持部材は、上下方向に延びる平面がコ字状の保持枠と、前記ネット状部材の端部が捲回され、一方の側壁と奥壁に当接可能な面を有し、前記保持枠内に配置された芯材と、前記保持枠の他方の側壁に接して配置される押圧部材とを備え、前記押圧部材と前記芯材が傾斜面で互いに当接する状態で、前記押圧部材を保持枠の奥壁方向へ押圧する押圧手段とを備え、前記押圧部材が前記保持枠の奥壁方向に移動することによって、前記ネット状部材の端部が、捲回した前記芯材の面と前記押圧部材の傾斜面、前記保持枠の奥壁及び一方の側壁とで挟着されることを特徴とする防風雪柵におけるネット状部材の保持構造。
【請求項2】
保持枠の一方の側壁が内側に傾斜しており、接する芯材の面も対応する傾斜面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造。
【請求項3】
保持枠の他方の側壁は、奥壁に対して押圧部材の進退と一致する直角に突出しており、接する前記押圧部材の面も対応する角度面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造。
【請求項4】
保持枠の他方の側壁の先端部に突合するストッパー片を、押圧部材が備えていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造。
【請求項5】
保持枠、押圧部材及び芯材をアルミ合金で成形したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防風雪柵に関するものであり、詳しくは防雪ネットの固定構造に関し、防風雪ネットの一部に集中した力を作用させることなく、端部上下に亘って固定するとともに、簡単な構造により部材コスト面や施工性に優れる防風雪ネットの保持構造を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、強風や積雪から車両等を防護するために道路等に沿って設置される防風雪柵において、防風雪板として、繊維を編みこんだものや、板に多数の透孔を形成されたもの等のネット状部材が用いられるもがある。
このようなネット状部材を、間隔を空けて立設された支柱間に張設する場合、従来はネット自体に孔をあけてボルトナットで支柱に固定していた為、ネットの強度低下や孔加工の問題があった。
【0003】
そこで、特開2005-163429号公報では、パイプに防雪ネットの張り方向にボルトを貫設して柱状体を形成するとともに、ボルト貫通孔の中間でパイプにスリットを具備せしめ、防雪ネットの端部をスリットの反対側からパイプに巻回して該スリットに挿入し、パイプをボルトに螺合したナットにより締着したことを特徴とする防雪ネットの固定構造が提案されている。
【0004】
また、特開2009-74358号公報では、間隔を空けて立設された支柱間に保持部材を介してネット状部材が左右方向に張設され、前記保持部材は、上下方向に延びる奥広の収納溝と、前記収納溝の開口側に配置される圧接部材と、前記圧接部材を背面側から開口側に押圧する押圧部材とを備え、収納溝内に挿入されたネット状部材の端部が、圧接部材により収納溝の内壁に圧接されると共に、圧接部材と押圧部材との間に挟着した構成が開示されている。
【0005】
さらに、特開2018-21413号公報では、間隔をあけて立設された支柱間に縦枠材を介してネット状部材が左右方向に張設され、前記縦枠材は縦枠材本体を備え、該縦枠材本体は、上下方向に延びる収容部と、その収容部に収容される芯材と、その芯材を左右方向に押圧する押圧部材と、その押圧部材と対向する位置に左右方向に前記収容部の内側に向けて突設する突設部とを備え、前記芯材に前記ネット状部材の端部が固定されると共に巻回されてなり、前記収容部に収容された前記ネット状部材が巻回された前記芯材が前記押圧部材と前記突設部と前記芯材とにより挟着した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-163429号公報
【文献】特開2009-74358号公報
【文献】特開2018-21413号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の公報では、ネット部材を当接し固定押圧するのが線又は一面にすぎず充分な挟着力を得られていない。
また、特許文献2の公報では、構成部材が4部材で複雑化と成ること、構築に際して押圧部材へ圧接部材と押圧部材を上下方向へ挿入して構成するため互いに長尺部材同士であるため作業性に問題がある。
【0008】
また、特許文献3の公報では、基本として縦枠材と芯材の2部材であるが、共に2分割されて1部材に形成しており、複雑な構成であることに前記公報と変わりない。
そして、特殊な形状とした芯材を縦枠内に配置するのに横方向から挿入できるようにするために縦枠材を2分割して形成したものである。
【0009】
さらに、上記特許文献2及び3の公報においては、押圧ボルトが支柱側から螺入して芯材を押圧して挟着する構成であるから、ネット部材が風を受け前後にしなると、ネット部材の端部が巻かれている芯材がネット部材の中央側である非張設方向に作用を受けて押圧部材と離反して挟着を緩めるおそれがある。
【0010】
そこで、本発明はネット状部材の端部を強固に固定してネット状部材の張設する際の作業性を向上させると共に、ネット状部材に弛みが生じにくい防風雪柵におけるネット状部材の保持構造を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造において、請求項1の発明は、間隔を空けて立設された支柱間に保持部材を介してネット状部材が左右方向に張設された防風雪柵において、前記保持部材は、上下方向に延びる平面がコ字状の保持枠と、前記ネット状部材の端部が捲回され、一方の側壁と奥壁に当接可能な面を有し、前記保持枠内に配置された芯材と、前記保持枠の他方の側壁に接して配置される押圧部材とを備え、前記押圧部材と前記芯材が傾斜面で互いに当接する状態で、前記押圧部材を保持枠の奥壁方向へ押圧する押圧手段とを備え、前記押圧部材が前記保持枠の奥壁方向に移動することによって、前記ネット状部材の端部が、捲回した前記芯材の面と前記押圧部材の傾斜面、前記保持枠の奥壁及び一方の側壁とで挟着されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造の発明は、請求項1の発明において、保持枠の一方の側壁が内側に傾斜しており、接する芯材の面も対応する傾斜面に形成されていることを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造の発明は、請求項1又は2の発明において、保持枠の他方の側壁は、奥壁に対して押圧部材の進退と一致する直角に突出しており、接する前記押圧部材の面も対応する角度面に形成されていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、保持枠の他方の側壁の先端部に突合するストッパー片を、押圧部材が備えていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項5の防風雪柵におけるネット状部材の保持構造の発明は、請求項1乃至4のいずれかの発明において、保持枠、押圧部材及び芯材をアルミ合金で成形したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本願発明は、押圧部材と前記芯材が傾斜面で互いに当接する状態で前記押圧部材が押圧手段によって前記保持枠の奥壁方向に移動することによって、前記押圧部材が前記保持枠の奥壁方向と一方の側壁方向へおされて移動し、前記ネット状部材の端部が、捲回した前記芯材と前記押圧部材の傾斜面、前記保持枠の奥壁及び一方の側壁とで強固に挟着することになる。
したがって、前記芯材に捲回したネット状部材の端部は芯材の3面において挟着されるため強固な保持力を得られる効果を発揮する。
【0017】
そして、防雪ネットが風を受けてネット状部材が引き抜けようとする力が働いても、3面の異なる方向の面で挟着されていること、前記芯材と前記押圧部材の傾斜面で挟着されていることで前記芯材が保持枠から脱する方向に浮き上がってネット状部材の挟着が緩むことを防止する効果を発揮しネット状部材が抜けるおそれはない。
【0018】
また、請求項2において、保持枠の一方の側壁が内側に傾斜し、接する芯材の面も対応する傾斜面に形成することにより、前記芯材と前記押圧部材の傾斜面での挟着と相俟って,前記芯材が保持枠から脱する方向に浮き上がってネット状部材の挟着が緩むことを防止する一層の効果を発揮する。
【0019】
また、請求項3において、他方の側壁は、奥壁に対して押圧部材の進退と一致する直角に突出して前記押圧部材の前後方向への移動を確実に受け止めるため、前記芯材と前記押圧部材の傾斜面でのネット状部材の挟着作用を維持・補強する効果を発揮する。
【0020】
また、請求項4において、保持枠の他方の側壁の先端部に突合するストッパー片を、押圧部材が備えていることで、必要以上の過度の押圧で保持部材やネット状部材の変形・破損等を防止する効果を有する。
【0021】
さらに、請求項4において、保持枠、押圧部材及び芯材をアルミ合金で成形することで、従来は鉄製に比べて軽量化でき施工性を向上させる効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施の形態を示す防風雪柵の一部正面図である。
【
図2】本発明の一実施の形態を示すネット状部材が保持部材を介して支柱に張設された状態を示す支柱のフランジを除いた正面図である。
【
図3】本発明の一実施の形態を示すネット状部材と保持部材の保持構造を示す横断平面図である。
【
図4】ネット状部材が保持部材に挟持される過程を示す横断平面図である。
【
図5】本発明の一実施の形態を示すネット状部材が保持部材を介して支柱に張設された状態を示す横断平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の一実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は本発明の一実施の形態を示す防風雪柵の一部正面図、
図2はネット状部材が保持部材を介して支柱に張設された状態を示す支柱のフランジを除いた正面図である。
図面において、1は支柱、2はネット状部材であり、ネット状部材2の両端部21は保持部材3に支持されており、保持部材3を支柱1に固定することによって、保持部材3を介してネット状部材2が支柱1,1の間に張設された防風雪柵を構成している。
【0024】
図面では、防風雪柵の下部は折曲板が張設されており、その上方はネット状部材2が張設された組合せと成っている。
支柱1は適宜間隔で立設固定されており、H形鋼でウエブ面11に前記保持部材3や折曲板を取付けるボルト用透孔12が所定位置に穿設されている。
ネット状部材2は、一般に言う各種ネットに限定されるものではなく、パンチング加工を施した可等性のある各種素材のシート状のものであってもよい。
【0025】
保持部材3は、ネット状部材2が支柱1に張設される幅の上下方向に延びる平面がコ字状の保持枠4と、前記保持枠4内に配置される芯材5と、押圧部材6と、前記押圧部材6を保持枠4の奥壁41の方向へ押圧する押圧手段であるボルト7及びナット8より構成される。
芯材5と押圧部材6は保持枠4と同等の上下長を有する。
また、保持枠4、芯材5及び押圧部材6をアルミ合金で成形すれば、鋼材よりも軽量で強度も充分で扱いやす利点がある。
【0026】
保持枠4の基本形は平面(横断面)コ字状の長尺体であり、奥壁41に支柱1への張設用ボルト孔44と、押圧部材6の締め付け用ボルト孔45が適宜間隔で複数穿設されている。
図面では保持枠4の一方の側壁42が内側に傾斜して開口部が奥部より狭く形成され、他方の側壁43は奥壁41に対して押圧部材6の進退と一致する直角に突出している。
【0027】
芯材5は、後壁51が保持枠4の奥壁41に当接可能で、一方の側壁52が保持枠4の一方の側壁42に当接可能な互いの形状を有する。
また、芯材5の他方の側壁53は後壁51に対して鋭角となる斜面となっており、後述の押圧部材6の一側壁と当接可能となっている。
図面では平面コ字状の保持枠4の一方の側壁42が内側に傾斜しており、当接する芯材5の一方の側壁52の面も対応する傾斜面に形成されるため、断面が三角形の柱状体と成っている。
【0028】
押圧部材6は、一方の側壁62を前記芯材5の他方の側壁53と当接可能な傾斜面とし、他方の側壁63は前記保持枠4の他方の側壁43と当接可能な角度を有し、横断面が台形状の長尺枠体である。
また、前・後壁61,64を連通する締め付け用ボルト孔65,66が前記保持枠4の締め付け用ボルト孔45に対応して穿設してある。
【0029】
そこで、保持部材3にネット部材2を保持させるには、先ず芯材5にネット部材2の端部21を捲回して保持枠4の中に配置する。
次に、前記芯材5の他方の側壁53に当接する傾斜面に押圧部材6一方の側壁62の傾斜面を当接させると共に、他方の側壁63が前記保持枠4の他方の側壁43に当接させて配置する。
そして、一直線上に位置する前記保持枠4の締め付け用ボルト孔45及び押圧部材6の前・後壁61,64を連通する締め付け用ボルト孔65,66へ、前記保持枠4の奥壁41の背面からボルト7を挿通し、押圧部材6の前壁61をナット8で締め付けてネット状部材2の端部21を挟着するのである。
【0030】
さすれば、押圧部材6が保持枠4の奥壁41の方向に移動するに従い、芯材5の他方の側壁53が押圧部材6の一方の側壁62と傾斜面で押圧しているため、芯材5は保持枠4の奥壁41方向及び一方の側壁42の横方向へも押されて保持枠4内を移動するのである。
したがって、芯材5に捲回した前記ネット状部材2の端部21を、捲回した芯材5と押圧部材6の一方の側壁62の傾斜面、保持枠4の奥壁41の面及び一方の側壁42の面とで挟着して強力に固定できるのである。
【0031】
この時、押圧部材6の他方の側壁63は保持枠4の他方の側壁43に当接してしっかりと支持され反力を得ているため、ボルト7の強度と共に芯材5を保持枠4の奥壁41方向及び一方の側壁42の横方向への充分な押圧力を得られる。
また、前記芯材5の一方の側壁52が保持枠4の内側に傾斜した一方の側壁42に当接し、前記芯材5の他方の側壁53が押圧部材6の一方の側壁62と傾斜面で押圧されているため、阻止浮き上がるのを阻止され、保持枠4の奥壁41に押しつけられる恰好でネット部材2の端部21を挟着することになる。
【0032】
さらに、押圧部材6に保持枠4の他方の側壁43の先端部に突合するストッパー片69を突設してあるため、必要以上の過度の押圧で保持部材やネット状部材の変形・破損等を防止する。
【0033】
以上の説明は、保持部材3にネット部材2を保持させる工程であり、工場や柵設置現場との関係で作業性や運搬を検討考慮して作業場を選択すればよい。
そして、設置現場に置いて支柱1を特定間隔で立設固定し、支柱1の間隔に応じた横幅長さを充たすネット部材2を保持した保持部材3を支柱1に取付けるものである。
【0034】
記述のように、支柱1のウエブ面11に保持部材3を取付けるボルト用透孔12が所定位置に穿設されている。
一方、保持枠4及び押圧部材6の前・後壁61,64には前記ボルト用透孔12と対応して、夫々一直線上に位置する張設用ボルト孔44及び張設用ボルト孔67,68が穿設してある。
そこで、これ等の張設用ボルト孔へ、ウエブ面11の背面からボルト71を挿通し、押圧部材6の前壁61をナット81で締め付け、張設具合を調整してネット部材2を保持した保持部材3を支柱1に取付けるものである。
【0035】
以上のように、図面に基づいて本発明を説明したけれど、この実施の形態における具体的構成は一例であり、同様の作用効果を得られる他の構成又は手段を排除するものではない。
【符号の説明】
【0036】
1 支柱
11 ウエブ面
12 ボルト用透孔
2 ネット部材
21 端部
3 保持部材
4 保持枠
41 奥壁
42,52,62 一方の側壁
43,53,63 他方の側壁
44,67,68 張設用ボルト孔
45,65,66 締め付け用ボルト孔
5 芯材
51 後壁
6 押圧部材
61 前壁
64 後壁
7,71 ボルト
8,81 ナット