(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】肺の繊維化を予防及び治療するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20230120BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20230120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230120BHJP
C12N 9/68 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
A61K38/48 100
A61P11/00
A61P43/00 105
C12N9/68 ZNA
(21)【出願番号】P 2019531808
(86)(22)【出願日】2017-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2017089057
(87)【国際公開番号】W WO2018107697
(87)【国際公開日】2018-06-21
【審査請求日】2020-06-16
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2016/110174
(32)【優先日】2016-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518217305
【氏名又は名称】タレンゲン インターナショナル リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TALENGEN INTERNATIONAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100080791
【氏名又は名称】高島 一
(74)【代理人】
【識別番号】100136629
【氏名又は名称】鎌田 光宜
(74)【代理人】
【識別番号】100125070
【氏名又は名称】土井 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100121212
【氏名又は名称】田村 弥栄子
(74)【代理人】
【識別番号】100174296
【氏名又は名称】當麻 博文
(74)【代理人】
【識別番号】100137729
【氏名又は名称】赤井 厚子
(74)【代理人】
【識別番号】100151301
【氏名又は名称】戸崎 富哉
(72)【発明者】
【氏名】李 季男
【審査官】濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-529255(JP,A)
【文献】特表2010-502600(JP,A)
【文献】血管と脈管,1981年,第12巻、第4号,第493頁-第501頁
【文献】Heamostasis,1988年,Vol.18, Suppl.1,p.165-175
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/48
A61P 11/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効量の配列2と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンを含む、被験者の肺臓組織の損傷による肺臓繊維化を予防または治療するための薬物組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効量のプラスミノーゲンを被験者に投与することを含む、肺の繊維化を予防及び治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維化は病理的変化であり、繊維芽細胞の活性化増殖、組織器官内繊維結合組織の増加として表され、実質細胞が減少し、進展し続けると組織、器官構造の破壊と機能喪失に至る。重要な臓器の繊維化は患者の生存品質に深刻な影響を及ぼし、甚だしきに至っては命にもかかわる。全世界では、組織の繊維化は多くの疾病による障害、死亡の主な原因であり、アメリカの相関統計資料によると、当該国で各種の疾病で死亡した患者の約45%を組織繊維増殖疾患に属させることができる。
【0003】
繊維化疾患は、例えば、全身性硬化症、多巣性線維化、強皮症、腎性多システム繊維化などの多システムに及ぼす疾患を含み、また、皮膚、心臓、肺、肝、腎線維化などの器官組織の特異性疾患をも含む。異なる繊維化疾患の病因はそれぞれ異なり、例えば、組織器官の損傷、感染、免疫反応、慢性炎症などがあるが、それらの共通の特徴は、細胞外基質(ECM)が組織における過剰の沈着と器官組織の再構成である[1-3]。
【0004】
心臓の繊維化は、例えば、ウイルス性心筋炎、心筋梗塞、高血圧性心臓病など、多種の心臓疾患の発生と発展の過程において現れる。過度の心臓の繊維化は、心臓機能の損傷を引き起こし、多種の疾患が心不全へ発展する主な原因であり、その中で、心筋繊維化の抑制と逆転はすでに心血管疾患を治療する重要な一環となっている。
【0005】
肝の繊維化は、各種の致病因子により肝臓内結合組織が異常に増殖し、肝臓内汎発性細胞外基質が過剰に沈澱する病理的過程を指す。肝の繊維化は、ウイルス感染、炎症反応、酸化ストレス、過度飲酒など、様々な要素に引き起こされ得る。肝の繊維化の病理的特徴として、門脈域と肝小葉内に大量の繊維組織の増殖と沈着があるが、小葉内間隔を形成しておらず、肝硬変は偽の小葉が形成され、中心静脈域と門脈域には間隔が現れ、肝の正常な構造は破壊され、肝の繊維化はさらに発展すると肝硬変になる。中国の慢性肝臓病では、ウイルス性肝炎が主であり、慢性ウイルス性肝炎の肝組織の線維化は、肝内炎症、壊死、ウイルス複製などに関係し、しかも初期には可逆的である。このため、抗ウイルス治療、機体の免疫機能の調整、及び肝細胞の保護などの治療法を抗繊維化と結合することは、肝の繊維化を防止する積極的な措置である。
【0006】
肺の繊維化疾患は、特発性肺繊維化、結節病、過敏性肺炎、ほこり肺、薬物と放射線による繊維化、及びコラーゲン血管病に関係する繊維化肺胞炎などの、病因がそれぞれ異なり、広範な疾患スペクトラムを含む。その主な病理的特徴は、肺組織の間充織細胞の増殖、細胞外基質の増殖沈着及び肺の実質的な再構成などを含む。現在は主に抗炎症、抗酸化、抗繊維芽細胞の増殖とコラーゲン沈着及び肺の移植などの措置を用いて肺の繊維化を治療している。
【0007】
腎の線維化は、細胞外基質と不適切な結合組織が腎に集まり、腎構造の変化及び機能障害を引き起こす病理的過程であり、ほとんどの腎臓疾患が末期腎不全に進行する共通の通路でもある。腎の繊維化過程は、炎症反応、固有細胞と免疫細胞のアポトーシス、及び様々な繊維化因子のコントロール不均衡などに係るので、抗炎症、抗アポトーシス、及び繊維化因子に対する治療などを通じて腎の繊維化を防御することができる。
【0008】
組織器官の慢性病変には常に繊維化が伴われ、例えば、肺の慢性炎症、慢性病変には肺の繊維化が伴われる。肺の繊維化も同じく、B型肝炎、C型肝炎、アルコール肝、脂肪肝、住血吸虫症などには初期の肝臓繊維化が伴われる。肝の代償的機能は強く、繊維化病変はずっと各種の慢性肝臓病の中に潜伏しており、一般的には肝硬変までに発展する時しか発見されず、実際には肝硬変は肝の繊維化の深刻な段階である。また、慢性腎炎、糸球体炎、腎尿細管炎などには腎の繊維化があり、心血管、脳血管、下肢血管の硬化、または狭窄、または閉塞の場合には血管の繊維化がある。
【0009】
皮膚の繊維化は瘢痕組織を形成する。瘢痕組織は、肉芽組織を改築して熟成させた老化段階の繊維結合組織である。創傷などの場合、繊維芽細胞は分裂増殖し、損傷部位に移動し、細胞外基質を発生させて瘢痕組織を形成し、創傷を修復する。
【0010】
瘢痕の形成は、肉芽組織が徐々に繊維化する過程である。この場合、網状繊維およびコラーゲン繊維はますます増えて、網状繊維はコラーゲン化され、コラーゲン繊維は太くなる。一方、線維芽細胞は少なくなり、少量の残りは繊維細胞に変わり;間質中の液体はだんだん吸収され、好中球、マクロファージ、リンパ細胞及びプラズマ細胞は相次いで消え;毛細血管が閉じて退化し、消えていき、僅かの小動脈と小静脈を残す。このように肉芽組織は、主にコラーゲン繊維からなる血管のまれな瘢痕組織に変化し、目視で白色に呈し、テクスチャが強靭である。
【0011】
瘢痕は強靭で弾力性がなく、瘢痕の収縮によって器官の変形および機能障害を引き起こせるので、関節の近くおよび重要な臓器に発生する瘢痕は、関節の痙攣をよく引き起こすか活動が制限され、例えば消化管や尿路などの中空器官では内腔の狭窄を引き起こし、関節の近くでは運動障害を引き起こす。器官間または器官と体腔壁との間に発生する瘢痕性粘着は、異なる程度でその機能を影響する。例えば、器官内の広範な損傷の後、広範な繊維化、ガラス状変性が起きて器官の硬化を引き起こす。
【0012】
全身性硬化症(SSc)は強皮症ともいい、限局性または汎発性皮膚の肥厚の繊維化を特徴する全身性自己免疫病である。病変の特徴は皮膚繊維の増殖および血管のオニオンスキン病変であり、最終的には皮膚の硬化、血管の虚血に至る。本疾患は臨床的に限局性または汎発性皮膚の肥厚と繊維化を特徴とし、皮膚に及ぼす他にも内臓(心臓、肺、及び消化管などの器官)にも影響を与え得る。
【0013】
アテローム性動脈硬化はよく組織や器官の虚血損傷を引き起こし、さらに組織器官の繊維化病変を引き起こす。アテローム性動脈硬化は慢性的、進行性動脈疾患であり、発症時動脈に堆積した脂肪の一部またはすべては血流を塞ぐ。本来滑らかで堅固な動脈内膜が粗くなって厚くなり、脂肪や繊維タンパク、カルシウム、及び細胞破片に詰まられると、アテローム性動脈硬化が現れる。アテローム性動脈硬化は動脈内膜の慢性炎症性増殖病変であり、大・中型動脈管の狭窄や閉塞を招き、それに対応する器官組織の虚血損傷、繊維化、さらに壊死を引き起こす。
【0014】
アテローム性動脈硬化は糖尿病と密接な関係があり、糖尿病患者のアテローム性動脈硬化の発生時期が早く、程度が重く、予後不良であることは示されている。そして、アテローム性動脈硬化は糖尿病患者の主な死亡原因である。糖尿病患者の冠状動脈血管の病理的変化の特徴として、主に病変が及ぼす血管が多く、冠状動脈の狭窄が深刻であり、病変がより汎発的であると臨床的に発見されている。そのメカニズムは、血糖代謝異常によるアテローム性動脈硬化であると考えられている。研究がさらに深まるにつれて、より多くの結果で明らかなように、糖尿病によるアテローム性動脈硬化は単一な要因によるものではなく、マクロファージ分極化、マクロファージ移動抑制因子のルート、グリコシル化の最終生成物のルート、スカベンジャー受容体の上向き調節、インスリン抵抗、ユビキチン‐プロテアソームシステムの活性化、血小板由来成長因子の活性化ルートなど、多くのルートおよび複雑なメカニズムでアテローム性動脈硬化の発生及び発展は誘発され、促進されている[4]。
【0015】
現在、様々な原因による繊維化疾患の発症者が多く、患者には複数の器官組織が及ぼされ、有効な治療方法はまだなく、社会と経済的負担が重い。本発明研究により、プラスミノーゲンが組織器官の繊維化を改善し、組織器官の機能を改善することができることは発見され、これによって組織器官の繊維化およびその関連疾患の予防及び治療のために新たな分野を切り開いた。
【発明の概要】
【0016】
本発明は下記項に係る。
【0017】
1.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肺臓組織の損傷による肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0018】
2.前記損傷は、虚血再灌流性損傷、免疫性損傷、化学物質による損傷、炎症性損傷、ガンによる損傷を含む、項1に記載の方法。
【0019】
3.前記損傷は、自己免疫反応による損傷を含む、項2に記載の方法。
【0020】
4.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含み、前記被験者が肺の繊維化に罹患しやすい、肺の繊維化の傾向がある、またはその他の疾患に罹患し、且つ肺の繊維化が伴われる、被験者の肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0021】
5.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、特発性肺繊維化の被験者の肺の繊維化を治療するための方法。
【0022】
6.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者のアテローム性動脈硬化により引き起こされるまたは合併する肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0023】
7.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の高脂血症により引き起こされるまたは合併する肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0024】
8.前記高脂血症は、血トリグリセリドレベルの上昇、血総コレステロールレベルの上昇、血低密度リポタンパクの上昇、血極低密度リポタンパクの上昇からなる群より選ばれる一つ以上を含む、項7に記載の方法。
【0025】
9.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者が毒性化学物質、放射または環境汚染物質を吸入することにより引き起こされる肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0026】
10.前記環境汚染物質はスモッグを含む、項9に記載の方法。
【0027】
11.前記環境汚染物質は、作業場または労働場所の粉塵を含む、項9に記載の方法。
【0028】
12.前記環境汚染物質は、PM2.5の吸入性粒子を含む、項9に記載の方法。
【0029】
13.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肺組織の細菌、ウイルス、クラミジア、スピロヘータ、リケッチア感染により引き起こされるまたは伴われる肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0030】
14.前記細菌感染は結核菌感染である、項13に記載の方法。
【0031】
15.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肝の病変により引き起こされるまたは伴われる肺臓コラーゲンの沈着または繊維化を予防または治療するための方法。
【0032】
16.前記肺の病変は、肺炎、肺癌、肺塞栓、肺結核、肺性心疾患、肺損傷である、項15に記載の方法。
【0033】
17.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の慢性閉塞性肺疾患に伴われる肺の繊維化を予防または治療するための方法。
【0034】
18.被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含む、被験者の肺の繊維化の関連疾患を予防または治療するための方法。
【0035】
19.前記肺の繊維化の関連疾患は、肺の繊維化による肺機能の減衰、障害または喪失により引き起こされる疾患を含む、項18に記載の方法。
【0036】
20.前記肺の繊維化の関連疾患は、肺動脈性肺高血圧症、肺性心疾患、呼吸困難、肺性脳症を含む、項19に記載の方法。
【0037】
21.前記プラスミノーゲンは1種以上のその他の薬物または治療手段と組み合わせて投与することができる、項1~20のいずれか1項に記載の方法。
【0038】
22.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗繊維化薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗腫瘍薬、放射化学療法薬、炎症調節薬、免疫調節薬、抗ウイルス薬、抗生物質を含む、項21に記載の方法。
【0039】
23.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである、項1~22のいずれか1項に記載の方法。
【0040】
24.前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除及び/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~23のいずれか1項に記載の方法。
【0041】
25.前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である、項1~24のいずれか1項に記載の方法。
【0042】
26.前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である、項1~25のいずれか1項に記載の方法。
【0043】
27.前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【0044】
28.前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである、項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【0045】
29.前記プラスミノーゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである、項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【0046】
30.前記プラスミノーゲンは、ヒト由来の天然プラスミノーゲンである、項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【0047】
31.前記被験者はヒトである、項1~30のいずれか1項に記載の方法。
【0048】
32.前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している、項1~31のいずれか1項に記載の方法。
【0049】
33.前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である、項1~32のいずれか1項に記載の方法。
【0050】
34.項1~33のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン。
【0051】
35.薬学的に許容される担体及び項1~33のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンを含む薬物組成物。
【0052】
36.(i)項1~33のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キット。
【0053】
37.前記手段はシリンジまたはバイアルである、項36に記載のキット。
【0054】
38.項1~33のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む、項36または37に記載のキット。
【0055】
39.ラベルを含む容器と、
(i)項1~33のいずれか1項に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であって、前記ラベルは、項1~33のいずれか1項に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する、製品。
【0056】
40.その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む、項36~38のいずれか1項に記載のキット、または項39に記載の製品。
【0057】
41.前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、抗張血管薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗繊維化薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗腫瘍薬、放射化学療法薬、炎症調節薬、免疫調節薬、抗ウイルス薬、抗生物質からなる群より選ばれる、項40に記載のキットまたは製品。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【
図1】
図1はブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを21日投与した後の肺のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群マウスの肺繊維化(矢印に表記される)程度はプラスミノーゲン投与群より高く;プラスミノーゲン投与群マウスの肺部肺胞壁の形態は正常に近く、炎症レベル細胞は明らかに減少し、繊維化程度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。
【
図2】
図2はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のシリウスレッド染色の代表的写真である。A、Cは溶媒PBS投与対照群であり、B、Dはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さいことは示されている。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを減少させることができることを示している。
【
図3】
図3はプラスミノーゲンを14日投与した後四塩化炭素に誘発される肝臓繊維化モデルマウスの肝臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲンの沈着は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもブランク対照群マウスのコラーゲンの沈着レベルに近いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが肝臓コラーゲンの沈着を減少でき、肝臓繊維化モデルマウスの肝臓繊維化を改善できることを示している。
【
図4】
図4は16週齢高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の大動脈洞のシリウスレッド染色の代表的写真である。A、Cは溶媒PBS投与対照群であり、B、Dはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群の大動脈洞管壁内膜のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)面積は溶媒PBS投与対照群より明らかに小さいことは示されている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞の管壁内膜の繊維化レベルを減少させることができることを示している。
【
図5】
図5はブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを21日投与した後の皮膚シリウスレッド染色の代表的写真である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、DはPLG活性損傷群である。その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群とPLG活性損傷群の真皮上部のコラーゲン繊維束は明らかに増加し、コラーゲン繊維は粗くなり、排列が緻密になり、真皮層は厚くなり;プラスミノーゲン投与群の真皮層における繊維芽細胞は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかも皮膚真皮層の厚さは正常レベルに近い。
【
図6】
図6はブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを21日投与した後の心臓シリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。研究の結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群の心臓コラーゲンの沈着(矢印に表記される)程度がプラスミノーゲン投与群より高いことは示されている。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発される心臓線維化を効果的に減少させることができることを示している。
【
図7】
図7はブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにプラスミノーゲンを21日投与した後の腎臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群の腎臓コラーゲンの繊維化(矢印に表記される)程度がプラスミノーゲン投与群より高いことは示されている。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発される腎臓線維化を効果的に減少させることができることを示している。
【
図8】
図8は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の腎臓IV型コラーゲン免疫染色の観察結果である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のIVコラーゲン陽性着色(矢印に表記される)が溶媒PBS投与対照群より多いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎臓線維化を改善できることを示している。
【
図9】
図9は26週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の腎臓のマッソン(massоn)染色の観察結果である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の糸球体メサンギウムが増殖し、メサンギウム基質が増加し、腎間質に軽度な繊維化(矢印に表記される)があり、増殖した繊維化は青色に呈する。プラスミノーゲン投与群の糸球体メサンギウム細胞及び基質は対照群より明らかに少なく、腎間質の繊維化は明らかに減少した。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎臓繊維化病変を改善できることを示している。
【
図10】
図10は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の心臓のマッソン(massоn)染色の観察結果である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の心筋繊維間に青色の増殖したコラーゲン繊維(矢印に表記される)が見えられ、軽度の心筋繊維化が呈されている。プラスミノーゲン投与群の心筋繊維間に少量の水色の増殖したコラーゲン繊維が見えられ、対照群と比べ、心筋繊維化は明らかに軽減されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心臓の繊維化を改善することができることを示している。
【
図11】
図11は17~18週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのコラーゲン繊維の沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが比較的に若い(17~18週齢)糖尿病マウスの心臓線維化を減少させることができることを示している。
【
図12】
図12は26~27週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを35日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスのコラーゲン繊維の沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが比較的に老齢(26~27週齢)の糖尿病マウスの心臓線維化を減少させることができることを示している。
【
図13】
図13はシスプラチンによる腎臓繊維化のモデルマウスにプラスミノーゲンを7日投与した後の腎臓のIV型コラーゲン免疫染色の観察結果である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、溶媒PBS投与対照群の腎臓IV型コラーゲンの陽性発現(矢印に表記される)がプラスミノーゲン投与群より高いことは示されている。これは、プラスミノーゲンがシスプラチンの腎臓繊維化のモデルマウスの腎臓線維化を改善できることを示している。
【
図14】
図14はApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの心臓線維化を減少させることができることを示している。
【
図15】
図15はC57高脂血症モデルマウスにプラスミノーゲンを30日投与した後の心臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの心臓線維化を減少させることができることを示している。
【
図16】
図16はプリンにより誘発された慢性腎損傷モデルマウスにプラスミノーゲンを10日投与した後の腎臓のシリウスレッド染色の代表的写真である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、CはPLG活性損傷群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群とPLG活性損傷群より明らかに少なく、しかもプラスミノーゲン投与群とPLG活性損傷群の定量分析の差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷による腎臓繊維化を軽減し、腎損傷の修復を促進することができることを示している。
【
図17】
図17は24~25週齢の糖尿病マウスにプラスミノーゲンを31日投与した後の膵島のシリウスレッド染色の観察結果である。Aは溶媒PBS投与対照群であり、Bはプラスミノーゲン投与群であり、Cは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの膵島コラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病による膵島損傷と繊維化を改善できることを示している。
【
図18】
図18はプラスミノーゲンを30日投与した後の3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓のシリウスレッド染色の観察結果を示すものである。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群マウスの腎臓コラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である。また、プラスミノーゲン投与群の繊維化は基本的に正常レベルに回復した。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を効果的に減少させることができることを示している。
【
図19】
図19はプラスミノーゲンを28日投与した後四塩化炭素に誘発される肝臓繊維化モデルマウスの肝臓のシリウスレッド染色の観察結果である。Aはブランク対照群であり、Bは溶媒PBS投与対照群であり、Cはプラスミノーゲン投与群であり、Dは定量分析結果である。その結果、プラスミノーゲン投与群のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(*は、P<0.05を表す)。溶媒PBS投与対照群と比べて、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着のレベルはブランク対照群マウスにより近い。これは、プラスミノーゲンが肝臓繊維化モデルマウスの肝臓コラーゲン沈着を減少させ、肝臓の繊維化を改善できることを示している。
【発明を実施するための形態】
【0059】
一つの局面において、本発明は、被験者に有効量のプラスミノーゲンを投与することを含み、前記被験者が組織器官の繊維化に罹患しやすい、組織器官の繊維化傾向がある、またはその他の疾患に罹患し、且つ組織器官の繊維化が伴われる、被験者の組織器官のコラーゲンの沈着または繊維化及びその関連疾患を予防及び/または治療するための方法に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官のコラーゲンの沈着または繊維化及びその関連疾患の予防及び/または治療におけるプラスミノーゲンの用途に係る。本発明はさらに、被験者の組織器官のコラーゲンの沈着または繊維化及びその関連疾患を予防及び/または治療するための薬物の調製におけるプラスミノーゲンの用途に係る。また、本発明はさらに、被験者の組織器官のコラーゲンの沈着または繊維化及びその関連疾患の予防及び/または治療ためのプラスミノーゲンに係る。一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、皮膚の繊維化、血管の繊維化、心臓の繊維化、肺の繊維化、肝の繊維化、腎の繊維化を含む。もう一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、感染、炎症、過敏感反応、腫瘍、組織虚血、組織器官鬱血、化学物質、放射または環境汚染による損傷に引き起こされるまたは伴われるものを含む。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、細菌、ウイルスまたは寄生虫の感染に引き起こされる組織器官の病変による組織器官のコラーゲン沈着または繊維化を含み、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、結核菌の感染による肺の繊維化、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、またはE型肝炎ウイルスの感染による肝臓繊維化、住血吸虫の感染による肝の繊維化を含む。一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、無菌性炎症または自己免疫反応によるものである。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、慢性糸球体腎炎、腎盂腎炎、ネフローゼ症候群、腎機能不全、尿毒症による腎臓繊維化である。もう一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、ガンによる組織器官の損傷によるものである。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、肺癌による肺の繊維化、肝癌による肝の繊維化、または腎臓癌による腎臓繊維化である。もう一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、慢性虚血性組織損傷によるものである。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患による心臓虚血性繊維化および/または慢性虚血性腎損傷による腎臓繊維化である。もう一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、心血管病による組織器官の鬱血によるものである。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、肝の鬱血または肺の鬱血である。一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は薬物によるものである。具体的には、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、薬物性の肝繊維化または腎繊維化である。一部の実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、吸入性化学物質または環境汚染による肺の繊維化である。上記実施形態において、前記組織器官のコラーゲン沈着または繊維化は、全身性エリテマトーデス、全身性硬化症、強直性脊椎炎のような全身性免疫性疾患によるものである。一部の実施形態において、前記組織器官の繊維化は特発性肺繊維化である。
【0060】
上記実施形態において、前記組織器官の繊維化の関連疾患は、組織器官の繊維化病変による機能減衰、障害または喪失に引き起こされる疾患を含む。具体的には、前記組織器官の繊維化の関連疾患は、アテローム性動脈硬化症、冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、脳虚血、脳梗塞、腎機能不全、尿毒症、肝機能障害、肝硬変、肝性昏睡、呼吸困難、肺気腫、肺心症、肺繊維化、強直性脊椎炎を含む。
【0061】
上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは1種以上のその他の薬物または治療手段と組み合わせて投与することができる。具体的には、前記プラスミノーゲンは、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、血管拡張薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗繊維化薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗腫瘍薬、放射化学療法薬、炎症調節薬、免疫調節薬、抗ウイルス薬、抗生物質からなる群より選ばれる1種以上の薬物と組み合わせて投与することができる。
【0062】
上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の配列同一性を有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するものである。
【0063】
上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは配列2、6、8、10または12において、1-100、1-90、1-80、1-70、1-60、1-50、1-45、1-40、1-35、1-30、1-25、1-20、1-15、1-10、1-5、1-4、1-3、1-2、1個のアミノ酸を添加、削除及び/または置換したものであり、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。
【0064】
上記実施形態において、前記プラスミノーゲンはプラスミノーゲン活性フラグメントを含有し、且つ依然プラスミノーゲン活性を有するタンパク質である。具体的には、前記プラスミノーゲンは、Glu-プラスミノーゲン、Lys-プラスミノーゲン、ミニプラスミノーゲン、マイクロプラスミノーゲン、δ-プラスミノーゲンまたはそれらのプラスミノーゲン活性を保持した変異体である。
【0065】
上記実施形態において、前記プラスミノーゲンは、天然または合成のヒトプラスミノーゲン、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントである。一部の実施形態において、前記プラスミノーゲンは、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するヒトプラスミノーゲンのオルソログ、またはその依然プラスミノーゲン活性を保持した変異体若しくはフラグメントであり、例えば、霊長類動物またはげっ歯類動物に由来するプラスミノーゲンのオルソログであり、例えばゴリラ、アカゲザル、マウス、ウシ、ウマ、イヌに由来するプラスミノーゲンのオルソログである。もっとも好ましくは、本発明のプラスミノーゲンのアミノ酸配列は配列2、6、8、10または12に示される通りである。
【0066】
上記実施形態において、前記被験者はヒトである。一部の実施形態において、前記被験者はプラスミノーゲンが不足、または欠乏している。具体的には、前記不足または欠乏は、先天的、継発的及び/または局所的である。
【0067】
一つの実施形態において、前記フィブリンプラスミノーゲンは好ましくは、表面、静脈内、筋肉内、皮下、吸入、脊柱管内、局所注射、関節内注射または直腸投与によって全身または局所にて投与される。一つの実施形態において、前記局所投薬は、例えばドレッシング材やガイドチューブなどによって骨希薄化した領域に直接に行われる。
【0068】
一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは適切なポリペプチド担体または安定化剤と組み合わせて投与される。一つの実施形態において、前記プラスミノーゲンは毎日0.0001-2000mg/kg、0.001-800mg/kg、0.01-600mg/kg、0.1-400mg/kg、1-200mg/kg、1-100mg/kg、10-100mg/kg(体重一キロあたりで計算)または0.0001-2000mg/cm2、0.001-800mg/cm2、0.01-600mg/cm2、0.1-400mg/cm2、1-200mg/cm2、1-100mg/cm2、10-100mg/cm2(体表面積平方センチメートルあたりで計算)の用量を投与し、好ましくは少なくとも一回繰り返し、好ましくは毎日投与する。局所投与の場合、前記用量はさらに状況に応じて調整することができる。一つの局面において、本発明は、薬学的に許容される担体及び本発明に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンを含む薬物組成物に係る。
【0069】
もう一つの局面において、本発明は、(i)本発明に記載の方法に使用されるプラスミノーゲンと、(ii)前記プラスミノーゲンを前記被験者に送達するための手段(means)とを含む、予防性または治療性キットに係る。具体的には、前記手段はシリンジまたはバイアルである。一部の実施形態において、前記キットは、本発明に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンを前記被験者に投与することを指示するラベルまたはプロトコルをさらに含む。
【0070】
もう一つの局面において、本発明は、ラベルを含む容器と、(i)本発明に記載の方法に使用されるプラスミノーゲン、またはプラスミノーゲンを含む薬物組成物とを含む製品であって、前記ラベルは、本発明に記載の方法を実施するように前記プラスミノーゲンまたは組成物を前記被験者に投与することを指示する、製品に係る。
【0071】
上記実施形態において、前記キットまたは製品は、その他の薬物を含む、もう一つ以上の部材または容器をさらに含む。一部の実施形態において、前記その他の薬物は、脂質低下薬、抗血小板薬、血圧降下薬、抗張血管薬、血糖降下薬、抗凝固薬、血栓溶解薬、肝臓保護薬、抗繊維化薬、抗不整脈薬、強心薬、利尿薬、抗腫瘍薬、放射化学療法薬、炎症調節薬、免疫調節薬、抗ウイルス薬、抗生物質からなる群より選ばれる。
【0072】
定義
「繊維化」とは、肺、肝臓、腎臓、血管、腹膜、膵臓、皮膚などの組織、器官が炎症、感染、免疫反応、虚血、化学物質、放射線などの様々な原因で持続的な損傷を受けた後、繊維芽細胞が活性化して増殖し、組織器官内繊維結合組織が増加し、実質細胞が減少し、組織、器官構造の破壊と機能喪失に至る病変のことである。この用語と「繊維化病変」とを置き換えて使用することができる。この繊維化病変という用語は、様々な原因による心臓の繊維化、肺の繊維化、肝の繊維化、腎の繊維化、血管の繊維化、皮膚の繊維化などの組織器官の繊維化病変を含み、また、各種の疾患の発生、発展の過程に伴う心臓の繊維化、肺の繊維化、肝の繊維化、腎の繊維化、血管の繊維化、皮膚の繊維化などの組織器官の繊維化病変をも含む。
【0073】
繊維化病変後、組織器官の正常な構造は変化し、対応する機能も減衰または喪失してしまい、これによる関連病症は「組織器官繊維化の関連病症」と呼ばれる。
【0074】
「心臓の繊維化」とは、様々な原因(例えば、炎症、感染、免疫反応、虚血、化学物質、放射)によるか、または伴われる心臓組織の損傷もしくは様々な原因による心臓疾患の発生と発展の過程で現れる繊維化病変のことである。心臓の繊維化病変によって心臓機能が損傷し、これによる関連病症は「心臓繊維化の関連病症」と呼ばれ、冠状動脈性心疾患、狭心症、心筋梗塞、不整脈、脳虚血、呼吸困難、腎機能不全など、心臓機能が損傷することによる各器官、組織の虚血の症状と病症を含むが、これらに限られていない。
【0075】
「肝の繊維化」は、各種の原因(例えば、炎症、感染(例えば、ウイルス感染)、免疫反応、虚血、化学物質、放射、酸化ストレス、過度飲酒)によるか、または伴われる肝臓内結合組織が異常に増殖し、肝臓内汎発性細胞外基質が過剰に沈澱し、肝の正常な構造が破壊される病理的変化(病変)を指す。肝の繊維化はさらに進展すると肝硬変となり、本発明の「肝の繊維化」という用語の範囲に含まれる。肝臓の繊維化病変によって肝臓機能が損傷し、これによる関連病症は「肝臓繊維化の関連病症」と呼ばれる。
【0076】
「肺の繊維化」とは、各種の原因(例えば、炎症、感染、免疫反応、虚血、化学物質、放射)によるか、または伴われる肺組織の間充織細胞の増殖、細胞外基質の増殖沈着及び肺の実質的な再構成による病理的過程を指す。肺の繊維化病変によって肺の機能が損傷し、これによる関連病症は「肺の繊維化の関連病症」と呼ばれる。
【0077】
「腎の線維化」とは、各種の原因(例えば、炎症、感染、免疫反応、虚血、化学物質、放射)によるか、または伴われる、結合組織が腎に異常に集まり、これによって腎構造の変化及び機能障害を引き起こす病理的過程を指す。腎の繊維化病変は、ほとんどの腎臓疾患が後期に進行する共通の通路である。
【0078】
腎の繊維化病変によって腎臓機能は損傷し、これによる関連病症は「腎の繊維化の関連病症」と呼ばれ、例えば、腎機能不全、腎不全、尿毒症などが挙げられる。
【0079】
組織器官の慢性病変には常に繊維化が伴われ、例えば、肺の慢性炎症、慢性病変には肺の繊維化が伴われる。肺の繊維化も同じく、B型肝炎、C型肝炎、アルコール肝、脂肪肝、住血吸虫病などには初期の肝臓繊維化が伴われる。また、慢性腎炎、糸球体炎、腎尿細管炎などには腎の繊維化があり、心血管、脳血管、下肢血管の硬化、または狭窄、または閉塞の場合には血管の繊維化がある。本発明の「繊維化」または「繊維化病変」という用語は、機体の各組織器官の慢性病変によく伴う繊維化病変を含む。
【0080】
「全身性硬化症」は「強皮症」ともいい、限局性または汎発性皮膚の肥厚の繊維化を特徴する全身性自己免疫病である。病変の特徴は皮膚繊維の増殖および血管のオニオンスキン病変であり、最終的には皮膚の硬化、血管の虚血に至る。本疾患は臨床的に限局性または汎発性皮膚の肥厚と繊維化を特徴とし、皮膚に及ぼす他にも内臓(心臓、肺、及び消化管などの器官)にも影響を与え得る。
【0081】
「アテローム性動脈硬化」は慢性的、進行性動脈疾患であり、発症時動脈に堆積した脂肪の一部またはすべては血流を塞ぐ。アテローム性動脈硬化は進行性過程である。血液中の脂質濃度が大きくなると、動脈壁に沿って脂肪線条を形成する。これらの脂肪線条は脂肪とコレステロールの沈着をもたらし、これらの沈殿物は元々滑らかな動脈内膜上に付着して小節を形成する。これらの小節の下に続いて繊維化した瘢痕組織が生じてカルシウム沈着が引き起こされる。沈着したカルシウムはだんだん除去できない白亜質の硬い薄膜(アテローム性プラークという)に変化する。体内のある組織器官とつながる動脈が塞がった後、当該組織器官の中の動脈が阻まれて起こる組織器官の虚血損傷は、当該組織器官の繊維化病変、例えば、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、血管、腹膜、膵臓、皮膚の繊維化を引き起こし得る。
【0082】
糖尿病には常にアテローム性動脈硬化の発生が伴い、そのメカニズムは、血糖代謝異常によるアテローム性動脈硬化であると考えられている。研究がさらに深まるにつれて、より多くの結果で明らかなように、糖尿病によるアテローム性動脈硬化は単一な要因によるものではなく、多くのルートおよび複雑なメカニズムでアテローム性動脈硬化の発生及び発展は誘発され、促進されている[4]。糖尿病およびそれに伴うアテローム性動脈硬化は組織器官の損傷の繊維化を引き起こすことができ、例えば、心臓、肺臓、肝臓、腎臓、血管、腹膜、膵臓、皮膚などの組織、器官の繊維化を引き起こすことができる。
【0083】
発明の詳細な説明
プラスミンはプラスミノーゲン活性化系(PA系)の重要な成分である。それは広スペクトルのプロテアーゼであり、細胞外マトリックス(ECM)の幾つかの成分を加水分解することができ、これらの成分はフィブリン、ゼラチン、フィブロネクチン、ラミニン及びプロテオグリカンを含む[5]。また、プラスミンは一部のプロマトリックスメタロプロテアーゼ(pro-MMP)を活性化させて活性のあるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)にすることができる。そのためプラスミンは細胞外タンパク加水分解作用の一つの重要な上流調節因子である[6、7]。プラスミンはプラスミノーゲンが二種類の生理性のPA:組織型プラスミノーゲン活性化剤(tPA)またはウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)をタンパク質加水分解することで形成されるものである。プラスミノーゲンは血漿及び他の体液中において、相対的レベルが比較的高く、従来的にはPA系の調節は主にPAの合成及び活性レベルよって実現されると考えられている。PA系成分の合成は異なる要素によって厳密な制御を受け、例えばホルモン、成長因子及びサイトカインである。また、この他に、プラスミンとPAsの特定の生理的阻害剤が存在する。プラスミンの主な阻害剤はα2-抗プラスミン(α2-antiplasmin)である。PAsの活性は、uPAとtPAのプラスミノーゲン活性剤阻害剤-1(PAI-1)に同時に阻害され、uPAを主に阻害するプラスミノーゲン活性剤阻害剤-2(PAI-2)によって調節される。一部の細胞表面には直接加水分解する活性のあるuPA特異性細胞表面受容体(uPAR)がある[8、9]。
【0084】
プラスミノーゲンは単一鎖の糖タンパクであり、791個のアミノ酸からなり、分子量は約92kDaである[10、11]。プラスミノーゲンは主に肝臓で合成され、大量に細胞外液に存在している。血漿中に含まれるプラスミノーゲンの含有量は約2μMである。そのためプラスミノーゲンは組織及び体液中のタンパク質加水分解活性の大きな潜在的な由来である[12、13]。プラスミノーゲンには二種類の分子の形が存在する:グルタミン酸-プラスミノーゲン(Glu-plasminogen)及びリジン-プラスミノーゲン(Lys-plasminogen)である。天然的に分泌されかつ分解していない形のプラスミノーゲンは一つのアミノ基末端(N-末端)グルタミン酸を有し、そのためグルタミン酸-プラスミノーゲンと称される。しかし、プラスミンが存在する場合、グルタミン酸-プラスミノーゲンはLys76-Lys77においてリジン-プラスミノーゲンに加水分解される。グルタミン酸-プラスミノーゲンと比較して、リジン-プラスミノーゲンはフィブリンとより高い親和力を有し、さらにより高い速度でPAによって活性化されることができる。この二種類の形のプラスミノーゲンのArg560-Val561ペプチド結合はuPA またはtPAによって切断され、これによりジスルフィド結合によって接続された二重鎖プロテアーゼプラスミンの形成をもたらす[14]。プラスミノーゲンのアミノ基末端部分は五つの相同性三環を含み、即ちいわゆるkringlesであり、カルボキシル基末端部分はプロテアーゼドメインを含む。一部のKringlesはプラスミノーゲンとフィブリン及びその阻害剤α2-APの特異的相互作用を介在するリジン結合部位を含む。最も新しく発見されたのは38kDaのフィブリンプラスミノーゲンフラグメントであり、kringlel-4を含み、血管生成の有効的な阻害剤である。このフラグメントはアンジオスタチン(Angiostatin)と命名され、幾つかのプロテアーゼ加水分解プラスミノーゲンから生成される。
【0085】
プラスミンの主な基質はフィブリンであり、フィブリンの溶解は病理学的血栓の形成を予防するキーポイントである[15]。プラスミンはさらにECMの幾つかの成分に対する基質特異性を有し、これらはラミニン、フィブロネクチン、プロテオグリカン及びゼラチンを含み、これはプラスミンがECM再建において重要な作用を有することを示している[11、16、17]。間接的に、プラスミンはさらにいくつかのプロテアーゼ前駆体を活性プロテアーゼに変換することによりECMのその他の成分を分解し、MMP-1、MMP-2、MMP-3及びMMP-9を含む。そのため、以下のように提唱する人がいる。プラスミンは細胞外タンパク加水分解の重要な上流調節因子である可能性がある[18]。また、プラスミンはいくつかの潜在的な形の成長因子を活性化させる能力を有する[19-21]。体外において、プラスミンはさらに補体系の成分を加水分解させて走化性の補体フラグメントを放出することができる。
【0086】
「プラスミン」は血液中に存在する非常に重要な酵素であり、フィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解する。
【0087】
「プラスミノーゲン」はプラスミンの酵素前駆体の形であり、swiss prot中の配列に基づいて、シグナルペプチドのヒト由来の天然プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列4)は計算によれば810個のアミノ酸からなり、分子量は約90kDであり、主に肝臓において合成され且つ血液中で循環できる糖タンパク質であり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列3に示される通りである。フルサイズのプラスミノーゲンは七つのドメインを含む:C末端に位置するセリンプロテアーゼドメイン、N末端に位置するPan Apple(PAp)ドメイン及び5つのKringleドメイン(Kringle1-5)を含む。swiss prot中の配列を参照すれば、そのシグナルペプチドは残基Met1-Gly19を含み、Papは残基Glu20-Val98を含み、Kringle1は残基Cys103-Cys181を含み、Kringle2は残基Glu184-Cys262を含み、Kringle3は残基Cys275-Cys352を含み、Kringle4は残基Cys377-Cys454を含み、Kringle5は残基Cys481-Cys560を含む。NCBIデータによれば、セリンプロテアーゼドメインは残基Val581-Arg804を含む。
【0088】
Glu-プラスミノーゲンは天然のフルサイズのプラスミノーゲンであり、791個のアミノ酸からなる(19個のアミノ酸からなるシグナルペプチドを含まない)。該配列をコードするcDNA配列は配列1に示される通りであり、そのアミノ酸配列は配列2に示される通りである。体内において、さらにGlu-プラスミノーゲンの第76-77位のアミノ酸の位置で加水分解することにより形成されたLys-プラスミノーゲンが存在し、例えば配列6に示されるものであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列5が示す通りである。δ-プラスミノーゲン(δ-plasminogen)はフルサイズのプラスミノーゲンにKringle2-Kringle5構造の欠損が生じているフラグメントであり、Kringle1及びセリンプロテアーゼドメインしか含有せず[22、23]、δ-プラスミノーゲンのアミノ酸配列(配列8)を報告している文献があり[23]、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は例えば配列7である。ミニプラスミノーゲン(Mini-plasminogen)はKringle5及びセリンプロテアーゼドメインからなり、残基Val443-Asn791(シグナルペプチドGlu-プラスミノーゲン配列を含まないGlu残基を開始アミノ酸とする)について文献が報告しており[24]、そのアミノ酸配列は配列10に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列9が示す通りである。しかしマイクロプラスミノーゲン(Micro-plasminogen)はセリンプロテアーゼドメインのみ含有し、そのアミノ酸配列は残基Ala543-Asn791(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基は開始アミノ酸である)と文献が報告し[25]、特許文献CN102154253Aはそれが残基Lys531-Asn791を含むと開示し(シグナルペプチドを含まないGlu-プラスミノーゲン配列のGlu残基を開始アミノ酸とする)、本特許の配列は特許文献CN102154253Aを参照でき、そのアミノ酸配列は配列12に示される通りであり、該アミノ酸配列をコードするcDNA配列は配列11に示される通りである。
【0089】
本発明の「プラスミン」と「フィブリンプラスミン」、「繊維タンパクプラスミン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。「プラスミノーゲン」と「フィブリンプラスミノーゲン」、「繊維タンパクプラスミノーゲン」は互いに置き換えて使用でき、その意味は同じである。
【0090】
本願において、プラスミノーゲンの「欠乏」とは、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より低く、被験者の正常な生理学的機能に影響を及ぼすのに十分に低いことをいう。プラスミノーゲンの「欠乏」の意味は、被験者体内のプラスミノーゲンの含有量または活性が正常な人より明らかに低く、活性または発現が極微量であり、外部供給によってのみ正常な生理学的機能を維持できることである。
【0091】
当業者は以下のように理解できる。本発明のプラスミノーゲンのすべての技術構成はプラスミンに適用でき、そのため、本発明に記載の技術構成はプラスミノーゲン及びプラスミンをカバーするものである。
【0092】
循環プロセスにおいて、プラスミノーゲンは閉鎖した非活性コンフォメーションであるが、血栓または細胞表面に結合した際、プラスミノーゲン活性化剤(plasminogen activator,PA)の介在下において、開放性のコンフォメーションを有する活性プラスミンとなる。活性を有するプラスミンはさらにフィブリン凝塊をフィブリン分解生成物及びD-二量体に加水分解させ、これにより血栓を溶解させる。そのうちプラスミノーゲンのPapドメインはプラスミノーゲンを非活性閉鎖コンフォメーションにする重要なエピトープであり、しかしKRドメインは受容体及び基質上のリジン残基と結合できるものである。プラスミノーゲン活性化剤としての酵素は、既に複数種類知られ、以下を含む:組織プラスミノーゲン活性化剤(tPA)、ウロキナーゼプラスミノーゲン活性化剤(uPA)、カリクレイン及び血液凝固因子XII(ハーゲマン因子)などである。
【0093】
「プラスミノーゲン活性フラグメント」とはプラスミノーゲンタンパク質において、基質中のターゲット配列と結合してタンパク質加水分解機能を発揮できる活性フラグメントである。本発明はプラスミノーゲンの技術構成に係り、プラスミノーゲン活性フラグメントでプラスミノーゲンの代替とする技術構成を含む。本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントはプラスミノーゲンのセリンプロテアーゼドメインを含むタンパク質であり、好ましくは、本発明に記載のプラスミノーゲン活性フラグメントは配列14、配列14と少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%の同一性のアミノ酸配列を含有するタンパク質を含むものである。そのため、本発明に記載のプラスミノーゲンは該プラスミノーゲン活性フラグメントを含み、且つ依然として該プラスミノーゲン活性を有するタンパク質を含む。
【0094】
現在、血液中のプラスミノーゲン及びその活性測定方法は以下を含む:組織フィブリンプラスミノーゲン活性化剤の活性に対する測定(t-PAA)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤抗原に対する測定(t-PAAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性に対する測定(plgA)、血漿組織プラスミノーゲン抗原に対する測定(plgAg)、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物活性に対する測定、血漿組織プラスミノーゲン活性化剤の阻害物抗原に対する測定、血漿プラスミン-抗プラスミン複合体に対する測定(PAP)。最もよく見られる測定方法は発色基質法である:測定対象の血漿中にストレプトキナーゼ(SK)と発光基質を添加し、測定対象の血漿中のPLGはSKの作用下においてプラスミンとなり、後者は発光基質に作用し、それから分光光度計で測定し、吸光度の増加はプラスミノーゲンの活性と正比例関係となる。この他にも免疫化学法、ゲル電気泳動法、免疫比濁法、放射免疫拡散法などを用いて血液中のフィブリンプラスミノーゲン活性に対して測定を行うことができる。
【0095】
「オルソログ(ortholog)」とは異なる種どうしのホモログであり、タンパク質の相同物もDNAの相同物も含む。それは具体的に異なる種どうしの同じ祖先の遺伝子から進化して得られるタンパク質または遺伝子を言う。本発明のプラスミノーゲンはヒト由来の天然プラスミノーゲンを含み、さらには異なる種に由来する、プラスミノーゲン活性を有するプラスミノーゲンオルソログを含む。
【0096】
「保存的置換バリアント」とはそのうちの一つの指定されたアミノ酸残基が改変されたがタンパク質または酵素の全体のコンフォメーション及び機能を変えないものであり、これは類似の特性(例えば酸性、塩基性、疎水性など)のアミノ酸でペアレントタンパク質中のアミノ酸配列中のアミノ酸を置換するものを含むがこれらに限られない。類似の性質を有するアミノ酸は知られている通りである。例えば、アルギニン、ヒスチジン及びリジンは親水性の塩基性アミノ酸であり且つ互いに置き換えることができる。同じように、イソロイシンは疎水アミノ酸であり、ロイシン、メチオニンまたはバリンによって置換されることができる。そのため、機能の類似する二つのタンパク質またはアミノ酸配列の類似性は異なる可能性もある。例えば、MEGALIGNアルゴリズムに基づいて70%~99%の類似性(同一性)を有する。「保存的置換バリアント」はさらにBLASTまたはFASTAアルゴリズムに基づいて60%以上のアミノ酸同一性を有するポリペプチドまたは酵素を含み、75%以上に達すればさらによく、最も好ましくは85%以上に達し、さらには90%以上に達するのが最も好ましく、さらに天然またはペアレントタンパク質または酵素と比較して同じまたは基本的に類似する性質または機能を有する。
【0097】
「分離された」プラスミノーゲンとは天然環境から分離及び/または回収されたプラスミノーゲンタンパク質である。いくつかの実施形態において、前記プラスミノーゲンは(1)90%を超える、95%を超える、または98%を超える純度(重量で計算した場合)になるまで精製し、例えばLowry法によって決まるもので、例えば99%(重量で計算した場合)を超えるまで精製する、(2)少なくともスピニングカップ配列分析装置によりN末端または内部アミノ酸配列の少なくとも15個の残基が得られる程度になる精製する、または(3)同質性になるまで精製する。該同質性はクマシーブリリアントブルーまたは銀染色により還元性または非還元性条件下のドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミノゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって決まるものである。分離されたプラスミノーゲンはバイオエンジニアリング技術により組み換え細胞から製造することができ、さらに少なくとも一つの精製ステップで分離されたプラスミノーゲンを含む。
【0098】
用語の「ポリペプチド」、「ペプチド」及び「タンパク質」は本明細書において互いに置き換えて使用でき、いかなる長さのアミノ酸の重合体を指し、遺伝的にコードされた及び非遺伝的にコードされたアミノ酸、化学的または生化学的に修飾されまたは派生したアミノ酸、及び修飾されたペプチド主鎖を有するポリペプチドを含む。該用語は融合タンパク質を含み、異種性アミノ酸配列を有する融合タンパク質を含むがこれに限られず、異種性と同種性由来のリーダー配列(N端メチオニン残基を有するか有しない)を含む融合物;等々である。
【0099】
参照ポリペプチド配列の「アミノ酸配列同一性パーセンテージ(%)」の定義は、必要な時にギャップを導入することで最大のパーセンテージ配列の同一性を実現した後、如何なる保存的な置換も配列同一性の一部として見なさない場合、候補配列中における参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同じアミノ酸残基のパーセンテージである。パーセンテージのアミノ酸配列の同一性を測定することを目的とした比較は本分野の技術範囲における複数種類の方式によって実現でき、例えば公衆が入手できるコンピュータソフトウエア、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエアによって実現できる。当業者は配列をアライメントするための適切なパラメータを決めることができ、該パラメータが比較対象の配列のフルサイズに対して最大比較の要求を実現するための如何なるアルゴリズムも含む。しかし、本発明の目的のために、アミノ酸配列の同一性パーセンテージは配列比較コンピュータソフトウエアALIGN-2により得られるものである。
【0100】
ALIGN-2を用いることによりアミノ酸配列を比較する場合、所定のアミノ酸配列Aの所定のアミノ酸配列Bに対するアミノ酸配列同一性%(または所定のアミノ酸配列Bに対して、及び、またはについてのあるアミノ酸配列と同一性を有する又は含む所定のアミノ酸配列Aともいう)は以下のように計算される:
分数X/Y×100
【0101】
そのうちXは配列アライメントプログラムALIGN-2において該プログラムのA及びBのアライメントにおいて同一でマッチングすると評価したアミノ酸残基の数であり、且つそのうちYはBにおけるアミノ酸残基の総数である。以下のように理解するべきである:アミノ酸配列Aの長さとアミノ酸配列Bの長さが等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列の同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%とは異なる。特に断りのない限り、本文中において使用するすべてのアミノ酸配列同一性値%は前記の段落に記載の通りであり、ALIGN-2コンピュータプログラムによって得られるものである。
【0102】
本文において使用されているように、用語の「治療」及び「処理」は期待される薬理及び/または生理的効果が得られることを言う。前記効果は疾患またはその症状を完全または一部予防すること、及び/または疾患及び/またはその症状を一部または完全に治癒するものとすることができる。さらに以下を含む:(a)疾患が被験者の体内で発生することを予防し、前記被験者は疾患の要因を持っているが、該疾患を有すると診断されていない状況であること;(b)疾患を抑制し、その形成を阻害すること;及び(c)疾患及び/またはその症状を減軽し、即ち疾患及び/またはその症状を減退させること。
【0103】
用語の「個体」、「被験者」及び「患者」は本明細書中において互いに置き換えて使用でき、哺乳動物を指し、ネズミ(ラット、マウス)、ヒト以外の霊長類、ヒト、イヌ、ネコ、有蹄動物(例えばウマ、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ)などを含むがこれらに限られない。
【0104】
「治療上有効量」または「有効量」とは、哺乳動物またはその他の被験者に投与して疾患の治療に用いられる際に疾患の前記予防及び/または治療を実現できるプラスミノーゲンの量である。「治療上有効量」は使用するプラスミノーゲン、治療しようとする被験者の疾患及び/または症状の重症度及び年齢、体重などに従って変化するものである。
【0105】
本発明のプラスミノーゲンの調製
プラスミノーゲンは治療の用途に用いられるために、自然界から分離及び精製されるものでもよく、さらには標準的な化学ペプチド合成技術によって合成することでもよい。化学的手法によりポリペプチドを合成する際、液相または固相で合成を行うことができる。固相ポリペプチド合成(SPPS)(配列のC末端アミノ酸を不溶性支持体に附着させ、順番に配列中の残りのアミノ酸を添加する)はプラスミノーゲンの化学的合成に適したものである。各種形式のSPPS、例えばFmoc及びBocは、プラスミノーゲンの合成に用いることができる。固相合成に用いられる技術は以下に記載されている:Barany及びSolid-Phase Peptide Synthesis;3-284ページ、The Peptides:Analysis,Synthesis,Biology.第二巻:Special Methods in Peptide Synthesis,Part A.,Merrifield,tら J.Am.Chem.Soc.,85:2149-2156(1963);Stewartら,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd ed.Pierce Chem.Co.,Rockford,Ill.(1984);及びGanesan A.2006Mini Rev.Med Chem.6:3-10及びCamarero JAら 2005Protein Pept Lett.12:723-8。簡単に言えば、その上にペプチド鎖が構築されている機能性ユニットにより不溶性の多孔ビーズを処理する。カップリング/脱保護の繰り返し循環後に、附着した固相の遊離N末端アミンと単一のN保護を受けているアミノ酸ユニットをカップリングさせる。それから、該ユニットを脱保護し、他のアミノ酸と接続する新しいN末端アミンを露出させる。ペプチドを固相上に固定したままにし、それからそれを切除する。
【0106】
標準的な組み換え方法により本発明のプラスミノーゲンを生産する。例えば、プラスミノーゲンをコードする核酸を発現ベクター中に挿入し、それと発現ベクター中の制御配列を操作可能に接続させる。発現制御配列はプロモーター(例えば天然に関連されているプロモーター、または異種由来のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終了配列を含むが、これらに限られない。発現の制御はベクター中の真核プロモーターシステムとすることができ、前記ベクターは真核宿主細胞(例えばCOSまたはCHO細胞)を形質転換またはトランスフェクションさせる。一旦ベクターを適切な宿主に導入すれば、ヌクレオチド配列の高レベル発現及びプラスミノーゲンの収集及び精製に適した条件下において宿主を維持する。
【0107】
適切な発現ベクターは通常宿主体内において附加体または宿主染色体DNAの整合部分として複製される。通常、発現ベクターは選択マーカー(例えばアンピシリン耐性、ハイグロマイシン耐性、テトラサイクリン耐性、カナマイシン耐性またはネオマイシン耐性)を含み、インビトロで所望のDNA配列によって形質転換されたそれらの細胞に対して測定を行うことに有用である。
【0108】
大腸菌(Escherichia coli)は目的抗体をコードするポリヌクレオチドをクローンする原核宿主細胞の例である。その他の使用に適した微生物宿主は桿菌を含み、例えばバチルス・サブチリス(Bacillus subtilis)及びその他の腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、例えばサルモネラ属(Salmonella)、セラチア属(Serratia)、及び各種シュードモナス属(Pseudomonas)種である。これらの原核宿主において、発現ベクターを生成でき、通常は宿主細胞と相容する発現制御配列(例えば複製開始点)を含むものである。また、多くの公知のプロモーターが存在し、例えば乳糖プロモーターシステム、トリプトファン(trp)プロモーターシステム、β-ラクタマーゼプロモーターシステム、またはファージλ由来のプロモーターシステムである。プロモーターは一般的に発現を制御し、必要に応じて遺伝子配列を制御する場合に、転写及び翻訳を起動するために、さらにリボソームの結合位置配列を有してもよい。
【0109】
その他の微生物、例えば酵母も発現に用いることができる。酵母(例えばサッカロミセス(S.cerevisiae))及びピキア(Pichia)が適した酵母宿主細胞の例であり、そのうちの適切な担体は必要に応じて発現制御配列(例えばプロモーター)、複製開始点、終止配列など含む。典型的なプロモーターは3-ホスホグリセリン酸キナーゼ及びその他の糖分解酵素を含む。誘導型酵母プロモーターは特にアルコール脱水素酵素、イソチトクロムC、及びマルトースとガラクトースの利用のための酵素のプロモーターを含む。
【0110】
微生物以外に、哺乳動物細胞(例えば体外細胞培養物中において培養された哺乳動物細胞)も本発明のプラスミノーゲンの発現に用いることができる(例えば目的抗-Tau抗体をコードするポリヌクレオチド)。例えばWinnacker,From Genes to Clones,VCH Publishers,N.Y.,N.Y.(1987)参照。適した哺乳動物宿主細胞はCHO細胞系、各種Cos細胞系、HeLa細胞、骨髄腫細胞系、及び形質転換されたB細胞またはハイブリドーマを含む。これらの細胞に用いられる発現ベクターは発現制御配列、例えば複製開始点、プロモーター、及びエンハンサー(Queenら,Immunol.Rev.89:49(1986))、及び必要とされる加工情報位置、例えばリボソームの結合サイト、RNAの切断サイト、ポリアデノシン酸化サイト、及び転写ターミネーター配列を含むことができる。適切な発現制御配列の例はウサギ免疫グロブリン遺伝子、SV40、アデノウイルス、ウシ乳頭腫ウイルス、サイトメガロウイルスなどの派生のプロモーターである。Coら、J.Immunol.148:1149(1992)を参照すること。
【0111】
一旦合成(化学または組み換え的に)されれば、本分野の標準的な手順、例えば硫酸アンモニウム沈殿、アフィニテイカラム、カラムクロマトグラフィー、高速液相クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル電気泳動などにより本発明に記載のプラスミノーゲンを精製することができる。該プラスミノーゲンは基本的に純粋なものであり、例えば少なくとも約80%から85%の純度で、少なくとも約85%~90%の純度で、少なくとも約90%~95%の純度で、または98%~99%の純度またはさらに純度が高いものであり、例えば汚染物を含まず、前記汚染物は例えば細胞砕片、目的抗体以外の大分子などである。
【0112】
薬物配合剤
所望の純度のプラスミノーゲンと選択可能な薬用担体、賦形剤、または安定化剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences,第16版,Osol,A.ed.(1980))を混合して凍結乾燥製剤または水溶液を形成して治療用の配合剤を得る。許容可能な担体、賦形剤、安定化剤は所要の用量及び濃度下において被験者に対して毒性がなく、さらに例えばリン酸塩、クエン酸塩及びその他の有機酸などの緩衝剤を含む。抗酸化剤はアスコルビン酸和メチオニンを含む;防腐剤(例えばオクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメチレンジアミン;塩化ベンザルコニウム(benzalkonium chloride)、ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブタノールまたはベンジルアルコール;アルキルパラヒドロキシ安息香酸エステル、例えばメチルまたはプロピルパラヒドロキシ安息香酸エステル;ピロカテコール;レソルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;m-クレゾール);低分子量ポリペプチド(少なくとも10個の残基を有するもの);タンパク質例えば血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリゼニールピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン酸、ヒスチジン、アルギニンまたはリシンである;単糖、二糖及びその他の炭水化物はグルコース、マンノース、またはデキストリンを含む;キレート剤は例えばEDTAである;糖類は例えばショ糖、マンニトール、フコースまたはソルビトールである;塩形成イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えば亜鉛-タンパク複合体);及び/または非イオン界面活性剤、例えばTWEENTM、PLURONICSTMまたはポリエチレングリコール(PEG)である。好ましくは凍結乾燥された抗-VEGF抗体配合剤であり、WO 97/04801に記載されているとおりであり、本明細書において参考とされるものである。
【0113】
本発明の配合剤は治療を必要とする具体的な症状の必要とする一種類以上の活性化合物を含有してもよく、好ましくは活性が相補的で互いに副作用を有しないものである。例えば、血圧降下薬、抗不整脈薬、糖尿病治療薬等である。
【0114】
本発明のプラスミノーゲンは例えば凝集技術または界面重合によって作られるマイクロカプセル中に内包ことができ、例えば、膠質薬物輸送系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン剤、ナノ粒子及びナノカプセル)中に入れまたは粗エマルジョン状液中のヒドロキシメチルセルロースまたはゲルーマイクロカプセル及びポリ―(メタアクリル酸メチル)マイクロカプセル中に入れることができる。これらの技術はRemington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)開示されている。
【0115】
体内に投与することに用いられる本発明のプラスミノーゲンは必ず無菌である必要がある。これは凍結乾燥及び再度配合する前または後に除菌濾過膜で濾過することで容易に実現できる。
【0116】
本発明のプラスミノーゲンは緩衝製剤を調製できる。緩衝製剤の適切な実例は一定の形状を有し且つ糖タンパクを含む固体の疎水性重合体の半透過マトリックスを含み、例えば膜またはマイクロカプセルである。緩衝基質の実例はポリエステル、水性ゲル(例えばポリ(2-ヒドロキシエチル-メタアクリル酸エステル)(Langerら,J.Biomed.Mater.Res.,15:167-277(1981);Langer,Chem.Tech.,12:98-105(1982))またはポリ(ビニールアルコール)、ポリラクチド(米国特許3773919,EP 58,481)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタミン酸の共重合体(Sidman,ら,Biopolymers 22:547(1983)),分解できないエチレン-ビニルアセテート(ethylene-vinyl acetate)(Langer,ら,出所は前記と同じ)、または分解可能な乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体、例えばLupron DepotTM(乳酸-ヒドロキシ酢酸共重合体及びリュープロレリン(leuprolide)酢酸エステルからなる注射可能なミクロスフェア体)、及びポリD-(-)-3-ヒドロキシ酪酸を含む。重合体、例えばエチレン-酢酸エチル及び乳酸-ヒドロキシ酢酸は、持続的に分子を100日間以上放出することができ、しかしいくつかの水性ゲルがタンパク質を放出する時間は比較的短い。関連のメカニズムに応じてタンパク質を安定化させる合理的なストラテジーにより設計できる。例えば、凝集のメカニズムが硫化ジスルフィド結合の交換によって分子間S-S結合を形成するであれば、メルカプト基残基を修飾することにより、酸性溶液中から凍結乾燥させ、湿度を制御し、適切な添加剤を用いて、及び特定の重合体基質組成物を開発することで安定化を実現できる。
【0117】
投与及び使用量
異なる方式、例えば静脈内、腹膜内、皮下、頭蓋骨内、髄腔内、動脈内(例えば頸動脈)、筋肉内投与により本発明の薬物組成物の投与を実現できる。
【0118】
胃腸外での投与に用いられる製造物は無菌水性または非水性溶液、懸濁液及び乳剤を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、例えばオリーブオイルのような植物油、及び注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルである。水性担体は水、アルコール性/水性溶液、乳剤または懸濁液を含み、食塩水及び緩衝媒介を含む。胃腸外媒介物は塩化ナトリウム溶液、リンガー右旋糖、右旋糖及び塩化ナトリウム、または固定油である。静脈内媒介物は液体及び栄養補充物、電気分解補充物などを含む。されには防腐剤及びその他の添加剤、例えば抗微生物製剤、抗酸化剤、キレート剤、不活性ガスなどが存在してもよい。
【0119】
医療関係者は各種臨床的要素により用量の案を決めることができる。例えば医学分野で公知のように、任意の患者の用量は複数の要素によって決められ、これらの要素は患者の体型、体表面積、年齢、投与される具体的な化合物、性別、投与回数及び経路、全体の健康度、及び同時に投与するその他の薬物を含む。本発明が含有するプラスミノーゲンの薬物組成物の用量の範囲は例えば被験者体重に対して毎日約0.0001~2000mg/kgであり、または約0.001~500mg/kg(例えば0.02mg/kg,0.25mg/kg,0.5mg/kg,0.75mg/kg,10mg/kg,50mg/kgなど)である。例えば、用量は1mg/kg体重または50mg/kg体重または1-50mg/kgの範囲とすることができ、または少なくとも1mg/kgである。この例示性の範囲より高いまたは低い用量もカバーされ、特に前記の要素を考慮した場合である。前記範囲中の中間用量も本発明の範囲内に含まれるものである。被験者は毎日、隔日、毎週または経験分析によって決められた如何なる他の日程表に従ってこのような用量を投与できる。例示的な用量の日程表は連続数日1-10mg/kg投与することである。本発明の薬物の投与過程において治療効果及び安全性をリアルタイムに評価すべきである。
【0120】
製品または薬物キット
本発明の一つの実施形態は製品または薬物キットに係るものであり、糖尿病による心血管病およびその関連疾患の治療に用いられる本発明のプラスミンまたはプラスミノーゲンを含有する。前記製品は好ましくは一つの容器、ラベルまたはプロトコルを含む。適切な容器はボトル、バイアル、注射器などである。容器は各種材料例えばガラスまたはプラスチックから作られることができる。前記容器は組成物を含有し、前記組成物は本発明の疾患または症状を有効に治療し且つ無菌の入口を有する(例えば前記容器は静脈輸液用パックまたはバイアルであり、皮下注射針によって貫通される栓を含む)。前記組成物中の少なくとも一種類の活性化剤がプラスミノーゲン/プラスミンである。前記容器上にあるまたは添付されているラベルは前記組成物を本発明の前記糖尿病によって引き起こされる心血管病及びその関連疾患の治療に用いられると説明するものである。前記製品はさらに薬用緩衝液を含有する第二容器を含み、前記薬用緩衝液は例えばリン酸塩緩衝の食塩水、リンガー溶液及びブドウ糖溶液を含む。さらには商業及び使用者の角度から見ると必要とされるその他の物質、即ちその他の緩衝液、希釈剤、濾過物、針及び注射器を含むことができる。また、前記製品は使用説明を有するプロトコルを含み、これは例えば前記組成物の使用者にプラスミノーゲン組成物及び疾患の治療に伴うその他の薬物を患者に投与することを指示するものである。
【実施例】
【0121】
[実施例1]
実施例1は、プラスミノーゲンが全身性硬化症モデルマウスの肺の繊維化を減少させることに関するものである。
12週齢のC57オスマウス17匹を取り、ランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に11匹とプラスミノーゲン投与群に6匹とした。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からモデルを構築して投薬し、二つの群のマウスに0.1mg/0.1mL/匹/日でブレオマイシンを皮下注射して全身性硬化症を誘発させ
[26]、当日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、21日間連続してモデル構築ための投与をした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。22日目にマウスを殺処分して肺組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の肺組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群(
図1A)のコラーゲン繊維化(矢印に表記される)の程度がプラスミノーゲン投与群(
図1B)より高く;プラスミノーゲン投与群マウスの肺部肺胞壁の形態は正常に近く、炎症細胞は明らかに減少し、繊維化程度は溶媒PBS投与対照群より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図1C)ことは観察された。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症マウスの肺組織の繊維化を効果的に減少させることができることを示している。
【0122】
[実施例2]
実施例2は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化マウスの大動脈洞の繊維化を改善することに関するものである。
6週齢のApoEオスマウス13匹に高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化モデルを誘発した
[31,32]。投薬の3日前にモデル化した各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、T-CHO含有量によってマウスをランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に7匹とプラスミノーゲン投与群に6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行って、それぞれ15%、30%スクロース中において4℃で終夜沈めさせ、OCTで包埋処理を行い、凍結切片の厚みは8μmであり、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で40(2A、2B)、200倍(2C、2D)にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図2B、D)の大動脈洞の管壁内膜のコラーゲンの沈着(矢印に表記される)面積は溶媒PBS投与対照群(
図2A、C)より明らかに小さいことは示されている。これは、プラスミノーゲンがアテローム性動脈硬化モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを減少させることができることを示している。
【0123】
[実施例3]
実施例3は、プラスミノーゲンが四塩化炭素により誘発された肝臓の繊維化を改善することに関するものである。
9週齢のC57メスマウスを15匹取り、ランダムに三つの群に分け、それぞれブランク対照群と溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群とで、各群5匹ずつである。溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群マウスに1mL/kg体重で経腹腔注射により四塩化炭素を投与し、週に三回で連続的に二週間投与し、肝臓繊維化モデルを構築し
[36,37]、ブランク対照群マウスに同じ体積のトウモロコシ油を同じ注射方式により投与した。四塩化炭素をトウモロコシ油で希釈する必要があり、四塩化炭素とトウモロコシ油との希釈割合は1:3である。モデルを構築してから投薬し始め、投薬開始当日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを同じ方法で投与し、ブランク対照群に対して注射処理をしなかった。連続的に14日間投与して15日目にマウスを殺処分し、肝臓を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の肝臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色した後、流水で流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図3C)のコラーゲンの沈着は溶媒PBS投与対照群(
図3B)より明らかに少なく、しかも溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着のレベルはブランク対照群マウス(
図3A)により近いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが肝臓のコラーゲン沈着を減少させ、肝臓組織化モデルマウスの肝臓線維化を改善できることを示している。
【0124】
[実施例4]
実施例4は、プラスミノーゲンが16週齢の高脂血症モデルマウスの大動脈洞の繊維化を低下させることに関するものである。
6週齢のオスマウスC5711匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血症モデルを誘発し
[30,31]、このモデルを16週高脂血症モデルとした。モデル構築後のマウスに高コレステロール食を給餌し続けた。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール(T-CHO)含有量を測定し、T-CHO含有量によってマウスをランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に6匹とプラスミノーゲン投与群に5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。大動脈洞の切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で40(4A、4B)、200倍(4C、4D)にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図4B、4D)の大動脈洞の管壁内膜のコラーゲン沈着(矢印に表記される)の面積は溶媒PBS投与対照群(
図4A、4C)より明らかに小さいことは示されている。これは、プラスミノーゲンが高脂血症モデルマウスの大動脈洞の繊維化レベルを低減できることを示している。
【0125】
[実施例5]
実施例5は、プラスミノーゲンが全身性硬化症モデルマウスの皮膚繊維化を減少させることに関するものである。
12週齢のC57オスマウス15匹を取り、ランダムに三つの群に分け、それぞれブランク対照群と溶媒PBS(PBSはリン酸緩衝塩水(Phosphate Buffer Saline)であり、本文ではプラスミノーゲンの溶媒である。)投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。さらに13週齢のPLG活性が損傷したマウス5匹を取った。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、次の日からモデルを構築して投薬し、溶媒PBS投与対照群、プラスミノーゲン投与群、及びPLG活性損傷マウスに0.1mg/0.1mL/匹/日でブレオマイシンを皮下注射して全身性硬化症を誘発した
[26]。ブランク対照群に0.1mg/0.1mL/匹/日で生理食塩水を皮下注射すると同時に、プラスミノーゲンまたはPBSを投与し、その日を1日目として、21日間連続してモデル構築ための投与をした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与し、正常マウス群とPLG活性損傷マウスに対して投薬処置をしなかった。22日目にマウスを殺処分して背部皮膚組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の皮膚組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で100倍にて観察した。
シリウスレッド染色は、コラーゲンを長期的に染色することができ、病理学的切片の特殊染色法として、シリウスレッド染色はコラーゲン組織を特異的に表示することができる。
その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群(
図5B)とPLG活性損傷群マウス(
図5D)の真皮上部のコラーゲン繊維束は明らかに増加し、コラーゲン繊維は粗くなり、排列が緻密になり、真皮層は厚くなり;プラスミノーゲン投与群(
図5C)の真皮層における繊維芽細胞は溶媒PBS投与対照群より明らかに少なく、しかも皮膚真皮層の厚さは正常レベルに近い(
図5A)ことは観察された。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発された皮膚繊維化を効果的に低下させることができることを示している。
【0126】
[実施例6]
実施例6は、プラスミノーゲンが全身性硬化症モデルマウスの心臓繊維化を減少させることに関するものである。
12週齢のC57オスマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からモデルを構築して投薬し、0.1mg/0.1mL/匹/日でブレオマイシンを皮下注射して全身性硬化症を誘発させ
[26]、当日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、21日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。22日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の心臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群(
図6A)の心臓コラーゲン沈着がプラスミノーゲン投与群(
図6B)より高いことは観察された。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発された心臓繊維化を効果的に減少させることができることを示している。
【0127】
[実施例7]
実施例7は、プラスミノーゲンが全身性硬化症モデルマウスの腎臓繊維化を減少させることに関するものである。
12週齢のC57オスマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からモデルを構築して投薬し、0.1mg/0.1mL/匹/日でブレオマイシンを皮下注射して全身性硬化症を誘発させ、当日からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、21日間連続してモデル構築ための投与をした。プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。22日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、ブレオマイシンにより誘発された全身性硬化症モデルマウスにおいて、溶媒PBS投与対照群(
図7A)の腎臓コラーゲン繊維化(矢印に表記される)の程度がプラスミノーゲン投与群(
図7B)より高いことは示されている。これは、プラスミノーゲンがブレオマイシンにより誘発された腎臓繊維化を効果的に減少させることができることを示している。
【0128】
[実施例8]
実施例8は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎臓コラーゲンの沈着を低下させることに関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与した。プラスミノーゲンを31日間投与した後にマウスを殺処分して腎臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水洗った。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、0.01M PBSで2回洗い、毎回5分間であった。10%の健常ヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングし、時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄し、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。IVコラーゲンのウサギ抗マウスポリクローナル抗体(Abcam)に対して4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗った。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒間複染色して、流水で5分間流した。段階的に脱水させてキシレンで透徹にして中性ゴムに封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
糖尿病腎症は糖尿病慢性合併症であり、糸球体の硬変および腎間質の繊維化はその典型的な病理的変化である
[27]。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図8B)のIVコラーゲン陽性着色が溶媒PBS投与対照群(
図8A)より明らかに多いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが腎臓組織のコラーゲン沈着(矢印に表記される)を低下させることができるは示され、プラスミノーゲンが腎臓組織のコラーゲン沈着を低下させることにより糖尿病による腎臓組織の線維化を阻止できることを示唆している。
【0129】
[実施例9]
実施例9は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎臓繊維化を改善することに関するものである。
26週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、35日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。36日目にマウスを殺処分して腎臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから重クロム酸カリウム溶液に終夜置いた。鉄ヘマトキシリンで3~5分間染色して流水で流した。1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水で1秒間処理してから水で洗った。ポンソー酸性マゼンタ溶液にて8分間染色し、水中で素早く濯いだ。1%リンモリブデン酸水溶液で約2分間処理し、アニリンブルー溶液にて6分間複染色した。1%氷酢酸で約1分間濯いだ。無水エタノールで脱水させてキシレンで透徹にしてから封入し、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
マッソン(Masson)染色は組織の線維症を示すことができる。その結果、溶媒PBS投与対照群(
図9A)の糸球体メサンギウムが増殖し、メサンギウム基質が増加し、腎間質に軽度な繊維化(矢印に表記される)があり、増殖した繊維化は青色に呈する。プラスミノーゲン投与群(
図9B)の糸球体メサンギウム細胞及び基質は対照群より明らかに少なく、腎間質の繊維化は明らかに減少した。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの腎臓繊維化を改善できることを示している。
【0130】
[実施例10]
実施例10は、プラスミノーゲンが24~25週齢の糖尿病マウスの心臓繊維化を改善することに関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス10匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与した。プラスミノーゲンを31日間投与した後にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の心臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから重クロム酸カリウム溶液に終夜置いた。鉄ヘマトキシリンで3~5分間染色して流水で流した。1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水で1秒間処理してから水で洗った。ポンソー酸性マゼンタ溶液にて8分間染色し、水中で素早く濯いだ。1%リンモリブデン酸水溶液で約2分間処理し、アニリンブルー溶液にて6分間複染色した。1%氷酢酸で約1分間濯いだ。無水エタノールで脱水させてキシレンで透徹にしてから封入し、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
糖尿病の最も一般的な合併症は結合組織の過度累積(病理的繊維化)であり、心筋間質の繊維化は糖尿病の心筋病変の特徴性病理的変化であるかもしれない
[28-29]。
マッソン(Masson)染色は組織の線維化を示すことができる。その結果、溶媒PBS投与対照群(
図10A)の心筋繊維間に青色の増殖したコラーゲン繊維(矢印に表記される)が見えられ、軽度の心筋繊維化が呈されている。プラスミノーゲン投与群(
図10B)の心筋繊維間に少量の水色の増殖したコラーゲン繊維が見えられ、対照群と比べ、心筋繊維化は明らかに軽減されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの心臓の繊維化を改善することができることを示している。
【0131】
[実施例11]
実施例11は、プラスミノーゲンが17~18週齢の糖尿病マウスの心臓のコラーゲン沈着を減少させることに関するものである。
17~18週齢のdb/dbオスマウス8匹を取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群で、各群4匹ずつとした。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、35日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与した。プラスミノーゲンを35日間投与した後にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の心臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図11B)マウスのコラーゲン繊維の沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図11A)より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることができることを示し、プラスミノーゲンが心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることにより、比較的に若い(17~18週齢)糖尿病マウスの心臓組織の線維化を減少させることができることを示唆している。
【0132】
[実施例12]
実施例12は、プラスミノーゲンが26~27週齢の糖尿病マウスの心臓のコラーゲン沈着を減少させることに関するものである。
26~27週齢のdb/dbオスマウス9匹を取り、ランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に5匹とプラスミノーゲン投与群に4匹とした。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、35日間連続して投与した。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与した。プラスミノーゲンを35日間投与した後にマウスを殺処分して心臓組織を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の心臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色した後、流水で流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図12B)マウスのコラーゲン繊維の沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図12A)より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることができることを示し、プラスミノーゲンが心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることにより、比較的に老齢(26~27週齢)糖尿病マウスの心臓組織の線維化を減少させることができることを示唆している。
【0133】
[実施例13]
実施例13は、プラスミノーゲンがシスプラチンによる腎臓繊維化モデルマウスの腎臓繊維化を軽減することに関するものである。
8~9週齢の健康なオスC57マウスを10匹取り、ランダムに二つの群に分け、それぞれ溶媒PBS投与対照群及びプラスミノーゲン投与群で、各群5匹ずつである。群分けが完了した後に、10mg/Kg体重で一回経腹腔でシスプラチンを注射して腎臓繊維化モデルを構築した
[30]。モデル構築が完了した後にプラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを投与した。実験開始当日を0日目として体重を測ってから群分けし、一日目からシスプラチンを腹腔注射してモデル構築を行い、モデル構築後3時間以内にプラスミノーゲンまたは溶媒PBSを投与し、投与期間は7日間である。8日目にマウスを殺処分し、腎臓を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは4μmであり、切片を脱パラフィンさせさらに浸水してから一回水洗いした。クエン酸で30分間修復し、室温にて10分間冷却してから水でやさしく洗い流した。3%過酸化水素水で15分間インキュベーションし、PAPマーカーで組織を丸で囲んだ。10%のヒツジ血清液(Vector laboratories,Inc.,USA)で1時間ブロッキングし、時間になった後、ヒツジ血清液を廃棄した。ウサギ抗マウスIVコラーゲン抗体(Abcam)で4℃で終夜インキュベーションし、TBSで2回洗い、毎回5分間であった。ヤギ抗ウサギIgG(HRP)抗体(Abcam)二次抗体を室温で1時間インキュベーションし、TBSで2回洗った。DABキット(Vector laboratories,Inc.,USA)で呈色させ、3回水洗いした後にヘマトキシリンで30秒間複染色して、流水で5分間流してからTBSで1回洗った。段階的に脱水させて透徹にして封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
シスプラチンは臨床上で応用が広く、治療効果が信頼できる広スペクトル抗腫瘍薬であるが、巨大な腎毒性を持ち、主に尿細管および腎間質の損傷として表され、最終的に腎の繊維化に進展する
[30]。この実験の結果、溶媒PBS投与対照群(
図13A)の腎臓IV型コラーゲンの陽性発現(矢印に表記される)はプラスミノーゲン投与群(
図13B)より明らかに高い。これは、プラスミノーゲンがシスプラチンによる腎臓繊維化モデルマウスの腎臓繊維化を改善できることを示している。
【0134】
[実施例14]
実施例14は、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化マウスの心臓繊維化レベルを改善することに関するものである。
6週齢のApoEオスマウス13匹に高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌してアテローム性動脈硬化を誘発した
[31,32]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、測定結果によってマウスをランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に7匹とプラスミノーゲン投与群に6匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。その期間中にずっと高脂肪高コレステロール食を給餌した。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図14B)マウスのコラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図14A)より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンがApoEアテローム性動脈硬化モデルマウスの心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることにより、アテローム性動脈硬化による心臓の線維化を阻止し、減少させることができることを示唆している。
【0135】
[実施例15]
実施例15は、プラスミノーゲンが高脂血モデルマウスの心臓繊維化を低下させることに関するものである。
6週齢のC57オスマウス11匹に高脂肪高コレステロール食(南通トロフィー、TP2031)を16週間給餌して高脂血を誘発した
[33,34]。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロール濃度を測定し、測定結果によってマウスをランダムに二つの群に分け、溶媒PBS投与対照群に6匹とプラスミノーゲン投与群に5匹とした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。その期間中にずっと高脂肪高コレステロール食を給餌した。31日目にマウスを殺処分して心臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図15B)マウスのコラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図15A)より明らかに少ないことは示されている。これは、プラスミノーゲンが高脂血モデルマウスの心臓組織のコラーゲン沈着を減少させることにより、高脂血による心臓の線維化を阻止し、低下させることができることを示唆している。
【0136】
[実施例16]
実施例16は、プラスミノーゲンが慢性腎不全モデルの腎臓繊維化を修復することに関するものである。
8~9週齢のPLG活性が正常であるオスマウス12匹、及びPLG活性が損傷したオスマウス6匹を取り、PLG活性が正常であるマウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で、各群6匹ずつとした。三つの群のマウスに毎日0.25%のプリン飼料(南通トロフィー)を給餌し、慢性腎不全モデルを構築した
[35]。モデル構築した当日を1日目として同時に投薬を始めた。プラスミノーゲン投与群に1mg/0.1mL/匹/日でプラスミノーゲンを尾投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを同じ方法により投与し、モデル構築投薬を10日間連続し、PLG活性が損傷したマウスは処置しなかった。11日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の腎臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色した後、流水で流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に封入させ、切片を光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図16B)のコラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図16A)とPLG活性損傷群(
図16C)より明らかに少なく、しかもプラスミノーゲン投与群とPLG活性損傷群のその差が統計学的に有意である(P=0.018)(
図16D)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが慢性腎損傷動物の腎臓組織におけるコラーゲンの沈着を顕著に軽減し、慢性腎損傷による腎臓繊維化を阻止し、軽減することができることを示している。
【0137】
[実施例17]
実施例17は、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの膵島のコラーゲン沈着を減少させることに関するものである。
24~25週齢のdb/dbオスマウス16匹を取り、ランダムに二つの群に分け、プラスミノーゲン投与群に10匹と溶媒PBS投与対照群に6匹とした。プラスミノーゲン投与群マウスに2mg/0.2mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与した。実験開始当日を0日目として体重をはかって群分けし、1日目からプラスミノーゲンまたはPBSを投与し、31日間連続して投与した。32日目にマウスを殺処分して膵臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において固定を行った。固定後の膵臓組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色した後、流水で流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図17B)マウスの膵島コラーゲンの沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図17A)より明らかに低く、しかもその差が統計学的に有意である(
図17C)ことは示されている。これは、プラスミノーゲンが糖尿病マウスの膵臓組織におけるコラーゲンの沈着を顕著に軽減し、膵臓の損傷と繊維化を阻止し、軽減することができることを示している。
【0138】
[実施例18]
実施例18は、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を低下させることに関するものである。
9週齢のC57オスマウス16匹に3%コレステロール高脂肪食(南通トロフィー)を4週間給餌して高脂血を誘発した
[30,31]。このモデルを3%コレステロール高脂血症モデルとし、モデル構築後のマウスに引き続き3%コレステロール高脂肪食を給餌した。また、同じ週齢のオスC57マウス5匹を取ってブランク対照群とし、実験期間中に普通の維持食を給餌した。投薬の3日前に各マウスから50μLの血液を採取し、総コレステロールを測定し、総コレステロール濃度と体重によってモデルマウスをランダムに二つの群に分け、それぞれプラスミノーゲン投与群と溶媒PBS投与対照群で各群8匹ずつとした。投薬し始めた日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを尾静脈注射により投与し、投与期間は30日間である。31日目にマウスを殺処分して腎臓を取り、4%パラホルムアルデヒド固定液において24~48時間固定を行った。固定後の組織をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッド飽和ピクリン酸で30分間染色した後、流水で2分間流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に中性ゴムに封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図18C)の腎臓コラーゲン沈着(矢印に表記される)は溶媒PBS投与対照群(
図18B)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図18D)。また、プラスミノーゲン投与群の繊維化は基本的に正常レベルに回復した(
図18A)。これは、プラスミノーゲンが3%コレステロール高脂血症モデルマウスの腎臓繊維化を効果的に減少させることができることを示している。
【0139】
[実施例19]
実施例19は、プラスミノーゲンが四塩化炭素により誘発された肝臓の繊維化過程における肝臓コラーゲンの沈着を減少させることに関するものである。
7~8週齢のC57メスマウスを20匹取り、ランダムに三つの群に分け、ブランク対照群に5匹、溶媒PBS投与対照群に7匹、及びプラスミノーゲン投与群に8匹とした。溶媒PBS投与対照群とプラスミノーゲン投与群マウスに1mL/kg体重で経腹腔注射により四塩化炭素を投与し、週に三回で連続的に四週間投与し、肝臓繊維化モデルを構築し
[36,37]、ブランク対照群マウスに同じ体積のトウモロコシ油を経腹腔注射により投与した。四塩化炭素をトウモロコシ油で希釈する必要があり、四塩化炭素とトウモロコシ油との希釈割合は1:3である。モデルを構築した当日から投薬し始め、投薬開始当日を1日目とし、プラスミノーゲン投与群マウスに1mg/0.1mL/匹/日でヒト由来のプラスミノーゲンを尾静脈注射により投与し、溶媒PBS投与対照群に同じ体積のPBSを同じ方法で投与し、ブランク対照群に対して注射処理をしなかった。連続的に28日間投与して29日目にマウスを殺処分し、肝臓を取って4%パラホルムアルデヒド固定液において24時間固定を行った。固定後の肝臓をアルコールで段階的に脱水させ及びキシレンで透徹化処理した後にパラフィンで包埋処理を行った。組織切片の厚みは3μmであり、切片を脱パラフィンさせて浸水してから1回水で洗い、0.1%シリウスレッドで60分間染色した後、流水で流し、ヘマトキシリンで1分間染色してから流水で流し、1%塩酸アルコールで分別させてアンモニア水でブルーイングさせ、流水で流した。乾燥した後に封入させ、光学顕微鏡下で200倍にて観察した。
その結果、プラスミノーゲン投与群(
図19C)のコラーゲンの沈着は溶媒PBS投与対照群(
図19B)より明らかに少なく、しかもその差が統計学的に有意である(
図19D)。溶媒PBS投与対照群と比べ、プラスミノーゲン投与群のコラーゲン沈着(矢印に表記される)のレベルはブランク対照群マウス(
図19A)により近いことは示されている。これは、プラスミノーゲンが肝臓組織化モデルマウスの肝臓コラーゲンの沈着を減少し、肝臓線維化を改善できることを示している。
【0140】
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