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特許7213567ナノ多孔性セパレータ層を利用するリチウム電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ナノ多孔性セパレータ層を利用するリチウム電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20230120BHJP
   H01M 4/134 20100101ALI20230120BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20230120BHJP
   H01M 4/1395 20100101ALI20230120BHJP
   H01M 50/414 20210101ALI20230120BHJP
   H01M 50/446 20210101ALI20230120BHJP
   H01M 50/434 20210101ALI20230120BHJP
   H01M 50/443 20210101ALI20230120BHJP
   H01M 4/12 20060101ALI20230120BHJP
   H01M 4/06 20060101ALI20230120BHJP
   H01M 4/08 20060101ALI20230120BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20230120BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230120BHJP
   H01M 50/46 20210101ALI20230120BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20230120BHJP
   H01M 6/14 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/134
H01M4/139
H01M4/1395
H01M50/414
H01M50/446
H01M50/434
H01M50/443 M
H01M4/12 F
H01M4/06 X
H01M4/06 V
H01M4/06 J
H01M4/08 J
H01M4/66 A
H01M10/052
H01M50/46
H01M10/0585
H01M6/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021064151
(22)【出願日】2021-04-05
(62)【分割の表示】P 2019193147の分割
【原出願日】2010-05-26
(65)【公開番号】P2021106167
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-04-05
(31)【優先権主張番号】61/217,132
(32)【優先日】2009-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511108208
【氏名又は名称】オプトドット コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】OPTODOT CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン アレン カールソン
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-234879(JP,A)
【文献】特開2008-226566(JP,A)
【文献】国際公開第2008/087966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/13
H01M 4/134
H01M 4/139
H01M 4/1395
H01M 50/40
H01M 4/12
H01M 4/06
H01M 4/08
H01M 4/66
H01M 10/052
H01M 10/0585
H01M 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セパレータ/アノードアセンブリを備えるリチウム電池であって、
前記セパレータ/アノードアセンブリは、
アノード層と、
前記アノード層の一方の側にある多孔性セパレータ層であって、有機ポリマーと、無機酸化物粒子と、を含む多孔性セパレータ層と、を備え、
前記アノード層は、前記多孔性セパレータ層上直接コーティング層であり、顔料形態のアノード活性材料を備える、
リチウム電池。
【請求項2】
前記無機酸化物粒子はアルミニウムベーマイトを含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項3】
前記アノード層において前記多孔性セパレータ層の反対側にあるアノード電流コレクタ層であって、銅及びニッケルからなる群から選択された金属を含むアノード電流コレクタ層をさらに備える、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項4】
前記アノード層はリチウム金属を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項5】
前記アノード層は、溶媒中に分散された顔料形態のアノード活性材料を含む、請求項1に記載のリチウム電池。
【請求項6】
セパレータ/カソードアセンブリを備えるリチウム電池であって、
前記セパレータ/カソードアセンブリは、
カソード層と、
前記カソード層の一方の側にある多孔性セパレータ層であって、有機ポリマーと、無機酸化物粒子と、を含む多孔性セパレータ層と、を備え、
前記カソード層は、前記多孔性セパレータ層上直接コーティング層であり、顔料形態のカソード活性材料を備える、
リチウム電池。
【請求項7】
前記無機酸化物粒子はアルミニウムベーマイトを含む、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項8】
前記カソード層において前記多孔性セパレータ層の反対側にあるカソード電流コレクタ層であって、アルミニウム及びニッケルからなる群から選択された金属を含むカソード電流コレクタ層をさらに備える、請求項に記載のリチウム電池。
【請求項9】
前記カソード層は、溶媒中に分散された顔料形態のカソード活性材料を含む、請求項に記載のリチウム電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、電池および他の電流発生セルの分野に関する。より具体的には、本発明は、ナノ多孔性セパレータを利用するリチウム電池、および所望の構成で電池の他の層を重ね合わせるようにセパレータのナノ多孔性構造を活用することによってリチウム電池を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン充電式電池または二次電池、リチウム非充電式電池または一次電池、およびリチウム-硫黄電池等の他のタイプを含むリチウム電池は、典型的には、プラスチックセパレータ、カソード層が両面に被膜された金属基板、別のプラスチックセパレータ、およびアノード層が両面に被膜された別の金属基板を交互配置することによって作製される。これらの材料片の整列を維持するため、および他の品質的な理由のために、この交互配置は、通常、複雑かつ高価な自動化機器上で行われる。また、十分な機械的強度および完全性を達成するために、セパレータおよび金属基板は比較的厚く、例えば、10ミクロン以上の厚さである。例えば、アノード被膜層のための銅金属基板の典型的な厚さは10ミクロン、カソード被膜層のためのアルミニウム金属基板の典型的な厚さは12ミクロン、プラスチックセパレータは典型的に、12から20ミクロンの厚さを有する。これらの厚いセパレータおよび金属基板は、電気化学的に活性ではなく、したがって、リチウム電池の電極の中の電気活性材料の体積を低下させる。これは、リチウム電池のエネルギー密度および電力密度を限定する。
【0003】
リチウム電池の新しい用途の中に、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、および電気自動車のための高出力電池がある。携帯用コンピュータおよび他の用途のためのリチウム電池で使用される円筒形状の金属セルとは対照的に、自動車のためのリチウム電池の多くは、平坦な形状または角柱形状に設計されたものである。また、自動車のためのリチウム電池は、経済的であることも必要である。自動車および他の用途のためのより高いエネルギーかつより経済的なリチウム電池を作製することに関して有効と期待される手法としては、各電池の中の電気活性材料における体積の比率またはパーセントを大幅に増加すること、および電池を製造するための自動化機器の複雑性および経費を削減することが挙げられる。
【0004】
リチウム電池が、現在使用されているよりもはるかに薄いセパレータおよび金属基板層を備え、それによってより多くの電気活性材料容量を有すれば、有利であろう。このリチウム電池が、例えば、携帯用コンピュータ電池のために利用される巻線機よりも簡単かつ安価な自動処理機器上で製造することができ、さらに、平坦または角柱形状の電池を作成するために特に適合されれば、特に有利であろう。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、電池および他の電流発生セル、特にナノ多孔性セパレータ、具体的には、200℃以上の温度で寸法安定性を有する耐熱性セパレータを利用するリチウム電池に関し、セパレータのナノ多孔性構造を活用してセパレータ上に所望の厚さおよび構成で電池の他の層を被膜することによって、リチウム電池を調製する方法にも関する。
【0006】
本発明の一態様は、(a)セパレータ/カソードアセンブリであって、セパレータ/カソードアセンブリは、第1のカソード層と第2のカソード層との間に置かれるカソード電流コレクタ層と、第1のカソード層におけるカソード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のカソード層は、セパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/カソードアセンブリと、(b)セパレータ/アノードアセンブリであって、セパレータ/アノードアセンブリは、第1のアノード層と第2のアノード層との間に置かれるアノード電流コレクタ層と、第1のアノード層におけるアノード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のアノード層はセパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/アノードアセンブリと、(c)電解質と、を備える電池であって、この電池はセパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとが交互に重なった層を備える、リチウム電池に関連する。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/アノードアセンブリと接触していない。
【0007】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/カソードアセンブリにおけるセパレータ/アノードアセンブリと接触していないさらなる一部分の1つ以上と接触している。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分およびセパレータ/カソードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触しており、セパレータ/アノードアセンブリのいかなる部分とも電気的に接触していない。
【0008】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリの一部分は、セパレータ/カソードアセンブリと接触していない。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリの一部分は、セパレータ/アノードアセンブリにおけるセパレータ/カソードアセンブリと接触していない一部分の1つ以上と接触している。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/アノードアセンブリの一部分およびセパレータ/アノードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触しており、セパレータ/カソードアセンブリのいかなる部分とも電気的に接触していない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/アノードアセンブリと接触しておらず、セパレータ/カソードアセンブリにおけるセパレータ/アノードアセンブリと接触していないさらなる一部分の1つ以上と接触している。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分およびセパレータ/カソードアセンブリにおけるさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触しており、セパレータ/アノードアセンブリのいかなる部分とも電気的に接触していない。
【0009】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、カソード電流コレクタ層は、第1のカソード層上に直接被膜される。一実施形態において、セパレータ層に隣接する第1のカソード層の表面は、第1のカソード層に直に隣接するセパレータ層の表面の輪郭に一致する輪郭を有し、セパレータ層の表面における輪郭は、セパレータ層上に第1のカソード層を被膜する前と同じである。一実施形態において、第1のカソード層は、電気活性粒子、および導電性粒子から成る群より選択される電極粒子を備え、電極粒子は、第1のカソード層に隣接するセパレータ層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層は、セパレータ粒子を備え、セパレータ粒子は、第1のカソード層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのカソード電流コレクタ層は、アルミニウム層を備える。一実施形態において、アルミニウム層の厚さは、3ミクロン未満である。
【0010】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、アノード電流コレクタ層は第1のアノード層上に直接被膜される。一実施形態において、セパレータ層に隣接する第1のアノード層の表面は、第1のアノード層に隣接するセパレータ層の表面の輪郭に一致する輪郭を有し、セパレータ層の表面における輪郭は、セパレータ層上に第1のアノード層を被膜する前と同じである。一実施形態において、第1のアノード層は、電気活性粒子、および導電性粒子から成る群より選択される電極粒子を備え、電極粒子は、第1のアノード層に隣接するセパレータ層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリのセパレータ層は、セパレータ粒子を備え、セパレータ粒子は、第1のアノード層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリのアノード電流コレクタ層は、銅層、およびニッケル層から成る群より選択される、金属層を備える。一実施形態において、金属層の厚さは、3ミクロン未満である。
【0011】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層およびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、0.2ミクロン未満の孔径を有する孔を備え、好ましくは、0.1ミクロン未満の孔径を有する孔を備える。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層およびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、0.2ミクロン未満の平均孔径を有する孔を備え、好ましくは、0.1ミクロン未満の平均孔径を有する孔を備える。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層およびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、厚さが9ミクロン未満であり、好ましくは6ミクロン未満である。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層およびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、アルミニウムベーマイトを備える多孔性層を備える。
【0012】
本発明の別の一態様は、(a)セパレータ/カソードアセンブリであって、セパレータ/カソードアセンブリは、第1のカソード層と第2のカソード層との間に置かれるカソード電流コレクタ層と、第1のカソード層におけるカソード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のカソード層は、セパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/カソードアセンブリと、(b)セパレータ/アノードアセンブリであって、セパレータ/アノードアセンブリは、アノード層と、アノード層の一方の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、アノード層はセパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/アノードアセンブリと、(c)電解質と、を備える電池であって、この電池はセパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとが交互に重なった層を備える、リチウム電池に関する。一実施形態において、アノード層はリチウム金属を備える。一実施形態において、第1のカソード層および第2のカソード層は、イオウ、または化学式S 2-、ここでxは2から8の整数である、で表される多硫化物を備える。
【0013】
本発明の別の一態様は、(a)基板上に多孔性セパレータ層を被膜するステップ、(b)セパレータ層における第1の部分上に第1のカソード層を直接被膜するステップ、(c)第1のカソード層上に1層以上のカソード電流コレクタ層を直接被膜するステップ、(d)1層以上のカソード電流コレクタ層上に第2のカソード層を直接被膜するステップ、(e)セパレータ層における第2の部分上に第1のアノード層を直接被膜するステップ、(f)第1のアノード層上に1層以上のアノード電流コレクタ層を直接被膜するステップ、および(g)1層以上のアノード電流コレクタ層上に第2のアノード層を直接被膜するステップを含むリチウム電池を作製する方法に関連する。一実施形態において、ステップ(g)の後、(h)セパレータ層における第1および第2の部分から基板を層間剥離して、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリを形成するステップがさらに存在する。一実施形態において、ステップ(h)の後、(i)セパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとを交互配置して、乾式セパレータ/電極セルを形成するステップがさらに存在する。一実施形態において、交互配置するステップの前の段階では、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリは、シート状の形状である。
【0014】
一実施形態において、ステップ(i)の後、セパレータ/カソードアセンブリの一部分はセパレータ/アノードアセンブリと接触しておらず、セパレータ/アノードアセンブリの一部分はセパレータ/カソードアセンブリと接触しておらず、導電性ピンを有する第1のデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分の2つ以上を電気的に接続し、導電性ピンを有する第2のデバイスは、セパレータ/アノードアセンブリの一部分の2つ以上を電気的に接続する。一実施形態において、(1)乾式セパレータ/電極セルを、ケーシング内に入れるステップと、(2)電解質を充填し、封止するステップとの、さらなるステップが存在する。
【0015】
本発明のリチウム電池の調製方法の一実施形態において、ステップ(c)の1つ以上のカソード電流コレクタ層における少なくとも1つは金属層を備え、金属層の厚さは3ミクロン未満である。一実施形態において、ステップ(f)の1つ以上のアノード電流コレクタ層における少なくとも1つは金属層を備え、金属層の厚さは3ミクロン未満である。一実施形態において、セパレータ層は、0.2ミクロン未満、好ましくは0.1ミクロン未満の孔径を有する孔を備える。一実施形態において、セパレータ層の厚さは、9ミクロン未満、好ましくは6ミクロン未満である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明を図示する目的のために、図面には特定の配置および方法が示される。しかしながら、本発明は、示される精密な配置または詳細な説明の方法に限定されないことを理解されたい。
【0017】
図1】セパレータ/カソードアセンブリの一部分がセパレータ/アノードアセンブリと接触していない、セパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとが交互に重なる層の断面図である。
図2】第1のカソード層と第2のカソード層との間に置かれる電流コレクタ層および第1のカソード層の片側上にある多孔性セパレータ層を有する、セパレータ/カソードアセンブリの断面図である。
図3】第1のアノード層と第2のアノード層との間に置かれる電流コレクタ層および第1のアノード層の片側上にある多孔性セパレータ層を有する、セパレータ/アノードアセンブリの断面図である。
図4】セパレータ/アノードアセンブリと電気的に接続することなく、セパレータ/カソードアセンブリの一部分の間を電気的に接続する導電性ピンを有する、デバイスの断面図である。
図5】セパレータ/アノードアセンブリの一部分がセパレータ/カソードアセンブリと接触していない、セパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとの交互に重なる層の断面図である。
図6】セパレータ/カソードアセンブリと電気的に接続することなく、セパレータ/アノードアセンブリの一部分の間を電気的に接続する導電性ピンを有する、デバイスの断面図である。
図7】交互に重なる層の上から見た図であって、図4に示される第1のデバイスが、図1に示されるセパレータ/カソードアセンブリの一部分、およびその下層側に位置するセパレータ/カソードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触しており、図6に示される第2のデバイスが、図5に示されるセパレータ/アノードアセンブリの一部分、およびその下層側に位置するセパレータ/アノードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触している状態を示す図である。
図8】基板上に被膜されたセパレータ/カソードアセンブリにおける、基板から層間剥離させるステップの前の状態の断面図である。
図9】基板上に被膜されたセパレータ/アノードアセンブリにおける、基板から層間剥離させるステップの前の状態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明のリチウム電池およびリチウム電池を調製する方法は、より高いエネルギーおよび電力密度を有し、かつ製造原価および資本設備費がより低減されたリチウム電池に対する柔軟かつ効果的な手法を提供する。
【0019】
本発明の一態様は、(a)セパレータ/カソードアセンブリであって、セパレータ/カソードアセンブリは、第1のカソード層と第2のカソード層との間に置かれるカソード電流コレクタ層と、第1のカソード層におけるカソード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のカソード層は、セパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/カソードアセンブリと、(b)セパレータ/アノードアセンブリであって、セパレータ/アノードアセンブリは、第1のアノード層と第2のアノード層との間に置かれるアノード電流コレクタ層と、第1のアノード層におけるアノード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のアノード層はセパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/アノードアセンブリと、(c)電解質と、を備える電池であって、この電池はセパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとが交互に重なった層を備える、リチウム電池に関連する。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/アノードアセンブリと接触していない。
【0020】
本明細書で使用される場合、「電池」という用語は、単一の電流発生セルおよびケーシングまたはパックの中にて組み合わされる複数の電流発生セルの双方に関する。本明細書で使用される場合、「リチウム電池」という用語は、充電式リチウムイオン電池または二次リチウムイオン電池、非充電式リチウム電池または一次リチウム電池、およびリチウム-硫黄電池等の他のタイプを含むがこれらに限定されない、当技術分野で既知の全てのタイプのリチウム電池を指す。
【0021】
本明細書で使用される場合、「電流コレクタ層」という用語は、電極層に隣接する、1つ以上の電流を収集する層を指す。これは、単一の導電性金属層または基板、および単一の導電性金属層または基板の上にカーボンブラックベースのポリマー被膜等の導電性被膜層が形成されたものを含むが、これらに限定されない。電流コレクタとしての導電性金属基板の例としては、正極またはカソード層のための電流コレクタおよび基板として典型的に使用される、アルミニウムを含む金属基板、ならびに負極またはアノード層のための電流コレクタおよび基板として典型的に使用される、銅を含む金属基板がある。セパレータ/カソードアセンブリタイプおよびセパレータ/アノードアセンブリタイプの双方における電流コレクタ層も、金属顔料または粒子を含む導電性金属、カーボンブラックまたはグラファイト顔料を含む導電性炭素、および導電性ポリマーから成る群より選択される導電性材料を備えてもよい。これらの導電性材料は、電流コレクタ層を形成するために、機械的強度および柔軟性を追加すべく有機ポリマーと組み合わされてもよい。
【0022】
本明細書に使用される場合、「電極層」という用語は、電気活性材料を含むセルの層を指す。電極層が、リチウム一次電池の場合にはリチウムが存在する場所であるとき、または充電式リチウム電池の場合には電池の充電中にリチウムが形成され、電池の放電中にリチウムがリチウムイオンに酸化される場所であるとき、その電極層はアノードまたは負極と呼ばれる。もう一方の、反対の極性の電極は、カソードまたは正極と呼ばれる。リチウム電池で有用である任意の電気活性材料が、本発明の電極層に利用されてもよい。例としては、カソード層の電気活性材料として、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、および硫黄、ならびにアノード層の電気活性材料として、チタン酸リチウム、リチウムがインターカレートされた炭素、リチウムがインターカレートされたグラファイト、およびリチウム金属が挙げられるが、これらに限定されない。
【0023】
本明細書で使用される場合、「電解質」という用語は、リチウム電池で有用な電解質のうちの任意のものを指す。適切な電解質としては、液体電解質、ゲル状ポリマー電解質、および固体状ポリマー電解質が挙げられるが、これらに限定されない。適切な液体電解質としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、およびエチルメチルカーボネートの混合物等の有機溶媒の混合物のLiPF6溶液が挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
図1は、セパレータ/カソードアセンブリ10の一部分12が20と接触していない、セパレータ/カソードアセンブリ10とセパレータ/アノードアセンブリ20との交互層の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。例えば、その上層または下層にセパレータ/アノードアセンブリが形成されていないセパレータ/カソードアセンブリの一部分などのような、セパレータ/アノードアセンブリと接触していない一部分をアセンブリが有する目的の一つは、リチウム電池のより効率的な動作のために、個々のカソード電流コレクタ層が互いに直接電気的に接続される領域を、セパレータ/カソードアセンブリに対して提供することである。
【0025】
図2は、第1のカソード層16と第2のカソード層17との間に置かれるカソード電流コレクタ層14および第1のカソード層16の片側上にあるセパレータ層18を有する、本発明のセパレータ/カソードアセンブリ10の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。図3は、第1のアノード層26と第2のアノード層27との間に置かれるアノード電流コレクタ層24および第1のアノード層26の片側上にあるセパレータ層28を有する、本発明のセパレータ/アノードアセンブリ20の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。
【0026】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリと接触していないセパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/カソードアセンブリにおけるセパレータ/アノードアセンブリと接触していないさらなる一部分と接触している。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分、およびセパレータ/カソードアセンブリにおけるさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触しており、セパレータ/アノードアセンブリと電気的に接触していない。
【0027】
本明細書で使用する場合、「導電性ピンを有するデバイス」および「導電性ピン」という用語は、セパレータ/カソードアセンブリにおける一部分の2つ以上、またはセパレータ/アノードアセンブリにおける一部分の2つ以上を電気的に接続し得る、機械的構成のいずれかを指す。金属ピン、金属ロッド、複数の層を貫通することができる突出部を伴う、または伴わないクランプ、および金属ネジが具体例として挙げられるが、これらに限定されず、これらの金属部品には、これらの金属端接続および外部電気的に接続材料を配置して適切な位置に保持するような設計構造または開口部を有する、ケーシングの任意の部品が組み合わされる。金属は、ニッケル、または任意の他の導電性金属材料、あるいは特定の電極層、電流コレクタ層、および電解質と共存しても安定な非金属材料であってもよい。
【0028】
図4は、セパレータ/アノードアセンブリ20と電気的に接続せずに、セパレータ/カソードアセンブリ10の一部12の2つ以上の間を電気的に接続する、導電性ピン32を有するデバイス30の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。導電性ピン32は、好ましくは、デバイス30における開口部または穴によって、そこを通して挿入されることにより配置されて、適切な位置に保持される。デバイス30における導電性ピンではない部分は、電池のケーシングに組み込まれる場合があってもよい、非導電性プラスチック材料であってもよく、または代替として、外部回路に対する電池の電気的に接続を作製することにおいて有用である、プラスチック材料中の金属または金属粒子等の導電性材料であってもよい。
【0029】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリの一部分は、セパレータ/カソードアセンブリと接触しない。図5は、セパレータ/カソードアセンブリ10およびセパレータ/アノードアセンブリ20が交互に重なる層の断面図(原寸に比例せず)の一例を示し、セパレータ/アノードアセンブリ20の一部分22は、セパレータ/カソードアセンブリ10と接触しない。セパレータ/カソードアセンブリに関して上述されるものと同様に、例えば、セパレータ/カソードアセンブリが上層または下層に形成されていないセパレータ/アノードアセンブリの一部分などのように、セパレータ/カソードアセンブリと接触しないセパレータ/アノードアセンブリの一部分を有する目的の1つは、リチウム電池のより効率的な操作のために、個々の電流コレクタ層が相互に直接電気的に接続される場合がある、セパレータ/アノードアセンブリの領域を提供することである。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリに接触しないセパレータ/アノードアセンブリの一部分は、セパレータ/カソードアセンブリと接触しないセパレータ/アノードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と接触する。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/アノードアセンブリの一部分およびセパレータ/アノードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触し、セパレータ/カソードアセンブリと電気的に接触しない。図6は、セパレータ/カソードアセンブリ10と電気的に接続せずに、セパレータ/アノードアセンブリ20の一部分22の間を電気的に接続する、導電性ピン42を有するデバイス40の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。導電性ピン42は、好ましくは、デバイス40における開口部または穴によって、そこを通して挿入されることにより配置されて、適切な位置に保持される。導電性ピンでないデバイス40の部品は、電池のケーシングに組み込まれる場合があってもよい、非導電性プラスチック材料であってもよく、または代替として、外部回路に対する電池の電気的に接続を作製することにおいて有用である、プラスチック材料中の金属または金属粒子等の導電性材料であってもよい。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリと接触しないセパレータ/カソードアセンブリの一部分は、セパレータ/アノードアセンブリと接触しないセパレータ/カソードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と接触する。一実施形態において、導電性ピンを有するデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分、およびセパレータ/カソードアセンブリのさらなる一部分の1つ以上と電気的に接触し、セパレータ/アノードアセンブリと電気的に接触しない。図7は、図4に示されるように、デバイス30が、セパレータ/カソードアセンブリ10の図1に示される一部分12と電気的に接触し、さらにその下層側に位置するセパレータ/カソードアセンブリ10におけるさらなる一部分12の1つ以上と電気的に接触し、図6に示されるように、デバイス40が、セパレータ/アノードアセンブリ20の図5に示される一部分22と電気的に接触し、さらにその下層側に位置するセパレータ/アノードアセンブリ20におけるさらなる一部分22の1つ以上と電気的に接触する、交互に重なる層の上から見た図(原寸に比例せず)の一例を示す。
【0030】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、カソード電流コレクタ層は、第1のカソード層の上に直接被膜される。一実施形態において、第2のカソード層は、第1のカソード電流コレクタ層の上に直接被膜される。一実施形態において、セパレータ層に隣接する第1のカソード層の表面は、第1のカソード層に隣接するセパレータ層の表面の輪郭に一致する輪郭を有し、セパレータ層の表面の輪郭は、セパレータ層の上に第1のカソード層を被膜する前と同じである。一実施形態において、第1のカソード層は、電気活性粒子および導電性粒子から成る群より選択される、電極粒子を備え、電極粒子は、第1のカソード層に隣接するセパレータ層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのセパレータ層は、セパレータ粒子を備え、セパレータ粒子は、セパレータ層に隣接する第1のカソード層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリのカソード電流コレクタ層は、アルミニウム層を備える。一実施形態において、アルミニウム層の厚さは、3ミクロン未満である。
【0031】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、アノード電流コレクタ層は、第1のアノード層の上に直接被膜される。一実施形態において、第2のアノード層は、アノード電流コレクタ層の上に直接被膜される。一実施形態において、セパレータ層に隣接する第1のアノード層の表面は、第1のアノード層に隣接するセパレータ層の表面の輪郭に一致する輪郭を有し、セパレータ層の表面の輪郭は、セパレータ層の上に第1のアノード層を被膜する前と同じである。一実施形態において、第1のアノード層は、電気活性粒子および導電性粒子から成る群より選択される電極粒子を備え、電極粒子は、第1のアノード層に隣接するセパレータ層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリのセパレータ層は、セパレータ粒子を備え、セパレータ粒子は、セパレータ層に隣接する第1のアノード層には存在しない。一実施形態において、セパレータ/アノードアセンブリのアノード電流コレクタ層は、銅層およびニッケル層から成る群より選択される、金属層を備える。一実施形態において、金属層の厚さは、3ミクロン未満である。
【0032】
本発明のリチウム電池のカソード電流コレクタ層およびアノード電流コレクタ層の一実施形態において、電流コレクタ層は、導電性金属、導電性炭素、および導電性ポリマーから成る群より選択される、導電性材料を備える。一実施形態において、電流コレクタ層は、第1のカソードまたは第1のアノード層の上に直接被膜される2つ以上の層を備え、2つ以上の層のうちの少なくとも1つは、炭素を含む導電性材料を備える。一実施形態において、電流コレクタ層の厚さは、3ミクロン未満である。
【0033】
本発明のリチウム電池の一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、0.2ミクロン未満、および好ましくは、0.1ミクロン未満の孔径を有する。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、0.2ミクロン未満、好ましくは0.1ミクロン未満の平均孔径を有する孔を備える。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、9ミクロン未満、好ましくは6ミクロン未満の厚さを有する。一実施形態において、セパレータ層は、キセロゲル層またはキセロゲル膜を含む多孔性層を備え、アルミニウムベーマイトを含む多孔性層が挙げられるが、これに限定されない。一実施形態において、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの双方のセパレータ層は、例えば、アルミニウム酸化物およびアルミニウムベーマイト等の無機酸化物粒子、無機窒化物粒子、無機炭酸塩粒子、無機硫酸塩粒子、およびポリオレフィンビーズまたはフルオロポリマービーズ等のポリマー粒子から成る群より選択される、セパレータ粒子を含む。
【0034】
本明細書に使用される場合、「キセロゲル層」という用語は、固体状のゲル材料を形成するために、コロイド状ゾル液体を乾燥するキセロゲルまたはゾルゲルプロセスによって形成された多孔性層を意味する。本明細書に使用される場合、「キセロゲル膜」という用語は、キセロゲル層を備える少なくとも1つの層を備える膜であって、キセロゲル層における孔が層の片側から層のもう一方の側まで連続するものを意味する。キセロゲル層および膜は、典型的に、酸化アルミニウム、アルミニウムベーマイト、酸化ジルコニウム等の無機酸化物材料をゾルゲル材料として備える。本発明のために適切なキセロゲル膜の例としては、Carlsonらへの米国特許第6,153,337号および同第6,306,545号、ならびにCarlsonへの米国特許第6,488,721号および同第6,497,780号に記載されるキセロゲル膜が挙げられるが、これらに限定されない。
【0035】
本発明の別の態様は、(a)セパレータ/カソードアセンブリであって、セパレータ/カソードアセンブリは、第1のカソード層と第2のカソード層との間に置かれるカソード電流コレクタ層と、第1のカソード層におけるカソード電流コレクタ層と反対側の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、第1のカソード層は、セパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/カソードアセンブリと、(b)セパレータ/アノードアセンブリであって、セパレータ/アノードアセンブリは、アノード層と、アノード層の一方の側面上にある多孔性セパレータ層と、を備え、アノード層はセパレータ層上に直接被膜される、セパレータ/アノードアセンブリと、(c)電解質と、を備える電池であって、この電池はセパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとが交互に重なった層を備える、リチウム電池に関する。一実施形態において、アノード層はリチウム金属を含む。ある種のアノード層、例えば、導電性が高く、リチウムもしくはリチウム合金または別の電気活性アノード金属もしくは金属合金の含有量が高いアノード層等の場合には、アノード電流コレクタ層は必要ではないこともある。これらの場合、アノード電流コレクタ層を被膜するステップ、および第2のアノード層を被膜するステップは除外されてもよく、第1のアノード層は多孔性セパレータ層上に直接被膜されてもよい。この第1のアノード層の被膜は、アノード層のリチウムまたは他の金属成分の蒸着であってもよく、またはリチウム電池のための金属性アノード層の技術分野において既知の他の方法のうちのいずれかによる被膜または堆積であってもよい。一実施形態において、第1および第2のカソード層は、イオウまたは式、S 2-であって、式中、xが2から8の整数である式の多硫化物を含む。アノード電流コレクタ層および第2のアノード層を必要としない可能性があるリチウム電池の例として、アノードが典型的にリチウム金属の層である、リチウム-硫黄電池が挙げられる。リチウムまたは他の金属性アノード層の片側または両側に追加の電池層が被膜される必要がある場合、これらの層は、セパレータ層上または金属性アノード層上に直接被膜する追加のステップで被膜されてもよい。
【0036】
本発明の別の態様は、(a)基板上に多孔性セパレータ層を被膜するステップ、(b)セパレータ層における第1の部分上に第1のカソード層を直接被膜するステップ、(c)第1のカソード層上に1層以上のカソード電流コレクタ層を直接被膜するステップ、(d)1層以上のカソード電流コレクタ層上に第2のカソード層を直接被膜するステップ、(e)セパレータ層における第2の部分上に第1のアノード層を直接被膜するステップ、(f)第1のアノード層上に1層以上のアノード電流コレクタ層を直接被膜するステップ、および(g)1層以上のアノード電流コレクタ層上に第2のアノード層を直接被膜するステップを含むリチウム電池を作製する方法に関連する。一実施形態において、ステップ(g)の後、(h)セパレータ層における第1および第2の部分から基板を層間剥離して、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリを形成するステップがさらに存在する。一実施形態において、ステップ(h)の後、(i)セパレータ/カソードアセンブリとセパレータ/アノードアセンブリとを交互配置して、乾式セパレータ/電極セルを形成するステップがさらに存在する。一実施形態において、交互配置するステップの前の段階では、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリは、シート状の形状である。
【0037】
本発明のリチウム電池を作製する方法の一実施形態において、ステップ(a)は、多孔性セパレータ層を提供するステップである。一実施形態において、ステップ(a)は、多孔性セパレータ層を基板上に皮膜することを含む。一実施形態において、基板は、剥離性の基板であり、ステップ(d)の後、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの双方を形成するために、セパレータ層から基板を層間剥離するさらなるステップが存在する。一実施形態において、ステップ(a)の基板は、多孔性セパレータ層が多孔性基板上に直接被膜された多孔性基板である。一実施形態において、多孔性基板は、多孔性ポリマーフィルムおよび多孔性不織ポリマー繊維基板から成る群より選択される。多孔性基板の例としては、例えば、米国ノースカロライナ州シャーロットのPolypore,Inc.,によりCELGARDの商標名で販売されているような多孔性ポリエチレンフィルムおよび多孔性ポリプロピレンフィルムが挙げられるが、これらに限定されない。セパレータの全体的厚さを最小限にするために、多孔性基板は、厚さが5から12ミクロンであってもよく、多孔性基板上に被膜される多孔性セパレータ層は、厚さが2から10ミクロンであってもよい。多孔性基板が、独立のフィルムとして、または一時的な剥離ライナーを使用して製膜装置上で処理される十分な機械的強度を有し、リチウム電池セパレータのために必要な特性を有する場合には、多孔性基板が電池を構成する層の一つとなってセパレータとして機能するため、ステップ(a)で多孔性基板を使用することによって、後の層間剥離ステップに対する必要性が排除される。多孔性基板上に直接被膜される多孔性セパレータ層は、その上に直接被膜される電極層の粒子の一切の透過を防止する極小孔の層を提供するという追加の利点、および200℃以上で寸法安定性を有する、安全性と耐熱性が向上したセパレータを提供するという追加の利点を有する。
【0038】
本発明に適切なセパレータ被膜として、Carlsonらに対する米国特許第6,153,337号および第6,306,545号、ならびにCarlsonに対する米国特許第6,488,721号および第6,497,780号に記載されるセパレータ被膜が例示されるが、これらに限定されない。これらのセパレータ被膜は、例えば、シリコーン処理プラスチックおよび紙基板、ポリエステルフィルム基板、ポリオレフィンがコートされた紙、金属基板、多孔性ポリオレフィンフィルム、および多孔性不織性ポリマー繊維基板等の多様な基板の上に、水性混合物または溶媒混合物から被膜されてもよい。本発明の基板の上にセパレータを被膜する利点としては、(a)リチウム電池の他の層が、このセパレータ被膜層を覆って被膜またはラミネートされてもよく、次に、続いて基板が層間剥離することによって除去されて、電池層の乾式スタックを提供するようにされうることと、(b)セパレータを被膜する工程は、セパレータについて、典型的には押し出し工程から得られるものよりも薄いセパレータとすることに役立つことと、(c)被膜セパレータ層が、電極および他の上層に形成される被膜層における粒子をセパレータ層に貫通させるには小さすぎる、0.1ミクロン未満の孔径を有するナノ多孔性であり得ることと、が挙げられるが、これらに限定されない。最大0.2ミクロンの孔径を有するセパレータ層であっても、通常、リチウム電池に使用されるカーボンブラック顔料のいかなる粒子もセパレータ層の中に貫通するのを防止することが見出されている。
【0039】
最終用途における要請、および極性が反対の電極層および電流コレクタ層のいずれかと接触して短絡することなしに各電極の層から電流を収集するための具体的なやり方に応じて、セパレータ層の全表面上に、またはセパレータ層上にレーン状もしくはストリップ状で、またはセパレータ層上にパッチ状もしくは矩形形状で、電極被膜層は被膜されてもよい。カソード被膜層は典型的に、Nメチルピロリドン(NMP)等の有機溶媒を含有する顔料分散体から被膜され、顔料形態の電気活性またはカソード活性材料、導電性炭素顔料、および有機ポリマーを含有する。アノード被膜層は典型的に、有機溶媒または水を含有する顔料分散体から被膜され、顔料形態の電気活性またはアノード活性材料、導電性炭素顔料、および有機ポリマーを含有する。これらの電極顔料は、典型的には0.1ミクロンより大きく、しばしば0.5~5ミクロンの範囲である直径を有する粒子である。
【0040】
しかしながら、カソードおよびアノード層の双方が一つのセパレータ/電極アセンブリにおいて被膜されてもよく、そうしたアセンブリの複数が組み合わされて乾式セパレータ/電極セルを形成してもよい。この場合において、セパレータ層は、カソード層とアノード層との間に「二重セパレータ」層を付与するように、電極層のすべてに存在してもよく、または代替的に、本発明に記載されるように、セパレータ/電極アセンブリの1つの電極側にのみ存在してもよい。
【0041】
電流コレクタ層において、代替として、リチウム電池の技術分野においては既知であるように、カーボン顔料被膜等の導電性非金属層が、向上した電流の収集および電池効率、ならびに追加の機械的強度および柔軟性を提供することを達成するために、金属性電流コレクタ層の堆積前および/または後に被膜される場合がある。金属性電流コレクタ層は、リチウム電池で使用される典型的な10から12ミクロンの厚さの金属基板よりもはるかに薄い場合がある。例えば、金属電流コレクタは、3ミクロン未満の厚さを有する場合があり、0.5から1.5ミクロンの厚さの範囲内のように、約1ミクロンまで薄い場合がある。これは、リチウム電池中の電気活性材料のより高い比率を可能にし、それによって、リチウム電池のエネルギーおよび電力密度を向上させる。金属性電流コレクタ層は、アルミニウム層の場合における真空蒸着による等、当技術分野で既知の金属堆積方法のうちのいずれかによって堆積されてもよい。
【0042】
図8は、ステップ(a)~(d)を経て基板52の上に直接被膜された、セパレータ/カソードアセンブリ50の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。セパレータ/カソードアセンブリ50は、セパレータ層18と、第1のカソード層16と、第2のカソード層17と、カソード電流コレクタ層14と、を有する。図9は、ステップ(a)および(e)~(g)を経て基板52の上に直接被膜された、セパレータ/アノードアセンブリ60の断面図(原寸に比例せず)の一例を示す。セパレータ/アノードアセンブリ50は、セパレータ層28と、第1のアノード層26と、第2のアノード層27と、アノード電流コレクタ層24と、を有する。
【0043】
図8の基板52を隣接するセパレータ層18から層間剥離することにより、例えば、図2に示されるような、セパレータ/カソードアセンブリが形成される。図9の基板52を隣接するセパレータ層28から層間剥離することにより、例えば、図3に示されるような、セパレータ/カソードアセンブリが形成される。
【0044】
その部分において反対の極性の電極がその上層または下層に形成されておらず、それゆえ同じ極性の複数の電極層についての電流収集を行うための構成となっているような、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリにおける一部分を有する乾式電池セルを作製するように、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリは、それらを交互配置する前に、より狭い幅に細長く切られ、所望の形状のシート状にされてもよい。また、また、幅および端部のずれが互いに異なるプラスチックセパレータ、カソード、プラスチックセパレータ、およびアノード片をともに巻回することによって円筒形のリチウム電池を作製する上で行われるものと同様に、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリはより狭い幅に細長く切られ、それらが互いにずれるようにしつつ交互配置されてもよい。例えば、金属タブ付けおよび蒸着金属端部等のリチウム電池の技術分野において知られている端部接続の方法のいずれかを、本発明のリチウム電池にも使用してもよい。また電気的絶縁材料をセパレータ/電極アセンブリまたは電極の端部上に蒸着して、反対の極性の電極および電流コレクタ層とのいかなる短絡に対する追加の保護を提供するようにしてもよい。
【0045】
一実施形態において、ステップ(i)の後、セパレータ/カソードアセンブリの一部分はセパレータ/アノードアセンブリと接触しておらず、セパレータ/アノードアセンブリの一部分はセパレータ/カソードアセンブリと接触しておらず、導電性ピンを有する第1のデバイスは、セパレータ/カソードアセンブリの一部分の2つ以上を電気的に接続し、導電性ピンを有する第2のデバイスは、セパレータ/アノードアセンブリの一部分の2つ以上を電気的に接続する。得られる乾式電極/セパレータセルの一例は、図7に示される。一実施形態において、(1)乾式セパレータ/電極セルを、ケーシング内に入れるステップと、(2)電解質を充填し、封止するステップとの、さらなるステップが存在する。適切なケーシング材料および方法、ならびに電解質を充填し密閉する方法には、リチウム電池の技術分野において知られているものが含まれる。ケーシングは、電解質のいかなる漏れも防止することおよび機械的保護をさらに提供することに役立つ。電解質の充填および密閉は、乾電池セルを充放電サイクルおよび顧客使用の準備ができたリチウム「湿」電池に変換する。
【0046】
本発明のリチウム電池のケーシングおよびリチウム電池を作製する方法は、交互配置するステップにおいて、セパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリの位置決めおよび整列に有用となり、導電性ピンを有するデバイスの位置決めおよび配置においても有用となるように設計され得る。例えば、平坦な形状の電池を作製する1つの手法において、ケーシングの底部および該底部に取り付けられた4つのコーナーポストは、交互配置されたセパレータ/カソードアセンブリおよびセパレータ/アノードアセンブリを、4つのコーナーポストのうちの2つの間に位置する各端部において約4から10mmのわずかな重なりを伴うようにしつつ、互いに直角に配置しその位置で保持することができるであろう。図7を参照すれば、交互配置するステップの間および導電性ピンを有するデバイスとの端部接続に至るまで、複数のシートを配置しその位置で保持するように、これらの4つのコーナーポストは上から見た図における4か所の角に配置されることできるであろう。電池の製造を完了するために、例えば、続いて、導電性ピンを有する特定のデバイスを受容するように、上部ケーシングの端部に設けられた開口を底部ケーシングの端部に設けられた開口と整列させて、ケーシングの上部を4つのコーナーポストに取り付けることができるであろう。端部上で電気的に接続を行った後、次に、ケーシングの4つの側面の残りをケーシングに取り付けうるであろう。フラット電池のケーシングのこれらの側面は、約100~200mm等である各側面の幅と比較して、例えば、10mm未満というように、高さが非常に低い可能性がある。ケーシングは、側面の1つ、好ましくは、ケーシングの上部の上に開口部として電解質の充填穴を有してもよい。電解質を充填した後、この充填開口部を密閉して、顧客が使用する前の形成サイクルおよび試験の準備ができた「湿」電池が提供される。
【0047】
ケーシングは、外部回路に対して電池を電気的に接続するための経路も提供する。これは、リチウム電池およびそれらのケーシングの技術分野において知られている様々な方法で行われてもよい。例えば、ケーシングは、一方の電極接続部とし、アルミニウム等の金属でできていてもよく、その金属ケーシングから電気的に絶縁された金属ピンは、他方の電極接続部としてケーシングの外側においてアクセス可能であってもよい。また、例えば、ケーシングは、プラスチックであってもよく、導電性ピンを有するデバイスは、電極の各々のためにケーシングの外側においてアクセス可能であってもよい。端部接続に関し多くの他の変形例が使用可能である。例えば、平端形状の電池の各セパレータ/電極アセンブリの端部接続は、各セパレータ/電極アセンブリの両端ではなく、1つの端部のみで行われうるであろう。このアプローチは、電池の製造をさらに簡素化することができる一方で、依然として効果的な端部接続を提供しうるであろう。電極の長さおよび幅の寸法は、好適な端部接続および外部の電気的接続部と一致するように最適化されてもよい。例えば、セパレータ/電極アセンブリのそれぞれの1つの側面のみで端部および外部の電気的接続を行う場合には、該側面の長さは、電気的接続が行われない側面に対する幅長よりもはるかに大きい可能性がある。
【0048】
本発明のリチウム電池を調製する方法の一実施形態において、ステップ(c)の1つ以上のカソード電流コレクタ層のうちの少なくとも1つは金属層を備え、該金属層の厚さは、3ミクロン未満である。一実施形態において、ステップ(f)の1つ以上のアノード電流コレクタ層のうちの少なくとも1つは金属層を備え、該金属層の厚さは、3ミクロン未満である。一実施形態において、セパレータ層は、0.2ミクロン未満の孔径を有し、好ましくは、0.1ミクロン未満である。一実施形態において、セパレータ層は、0.2ミクロン未満、および好ましくは、0.1ミクロン未満の平均孔径を有する孔を備える。一実施形態において、セパレータ層は、9ミクロン未満、および好ましくは、6ミクロン未満の厚さを有する。リチウムが関与しない化学原理を使用する電池およびコンデンサなどの他の電流発生セルもまた、上述されるものに類似する方法および製品設計によって製造されてもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9