(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法
(51)【国際特許分類】
C07H 19/048 20060101AFI20230120BHJP
C07H 1/02 20060101ALI20230120BHJP
C12P 19/30 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C07H19/048
C07H1/02
C12P19/30
(21)【出願番号】P 2022503527
(86)(22)【出願日】2020-06-19
(86)【国際出願番号】 CN2020096908
(87)【国際公開番号】W WO2021253362
(87)【国際公開日】2021-12-23
【審査請求日】2022-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】519417849
【氏名又は名称】ボンタック バイオエンジニアリング(シェンゼン) カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(74)【代理人】
【識別番号】100104547
【氏名又は名称】栗林 三男
(74)【代理人】
【識別番号】100206612
【氏名又は名称】新田 修博
(74)【代理人】
【識別番号】100209749
【氏名又は名称】栗林 和輝
(74)【代理人】
【識別番号】100217755
【氏名又は名称】三浦 淳史
(72)【発明者】
【氏名】ザン グイピン
(72)【発明者】
【氏名】シュ ハウジエ
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン
(72)【発明者】
【氏名】ザン ザウン
(72)【発明者】
【氏名】ザン チ
【審査官】中島 芳人
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106755209(CN,A)
【文献】特表2017-518306(JP,A)
【文献】国際公開第2018/089830(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110483601(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第110373398(CN,A)
【文献】特表2017-504616(JP,A)
【文献】TANIMORI, S. et al.,An Efficient Chemical Synthesis of Nicotinamide Riboside (NAR) and Analogues,Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2002年,Vol.12, No.8,pp.1135-1137
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/00
C07H 1/00
C12P 19/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アセトニトリル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンまたは液体二酸化硫黄溶媒において、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルまたは四塩化スズでニコチンアミドとテトラアセチルリボフラノースに対して20~40℃で触媒反応を行え、第一の反応液を得るステップ1)と、
第一の反応液に重曹、炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムを加え、pHを3~5に調整し、第二の反応液を得るステップ2)と、
第二の反応液にナトリウムメトキシド溶液を加え、-15~5℃で反応を行え、第三の反応液を得るステップ3)と、
第三の反応液に塩酸を加え、pHを3~5に調整し、第四の反応液を得るステップ4)と、
膜濃縮装置で第四の反応液に対して順に精密濾過とナノ濾過処理を行え、ニコチンアミドリボシド溶液を得るステップ5)と、
Mgイオン、ATPおよび緩衝液の存在下で、35~39℃で、ニコチンアミドリボシドキナーゼを用いてステップ5)で得られたニコチンアミドリボシド溶液に対して触媒反応を行え、反応過程におけるpHを7.5~8.0に制御し、反応終了後にニコチンアミドモノヌクレオチドを得るステップ6)と
を含むことを特徴とする、ニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項2】
前記ステップ1)の反応が25~35℃で行われることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項3】
前記ステップ1)において、前記トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルと、前記ニコチンアミドと、前記テトラアセチルリボフラノースとのモル比は1.2~5:1.2~2:1であることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項4】
前記ステップ3)の反応が-10~-5℃で行われることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項5】
前記ステップ3)において、前記ナトリウムメトキシドと前記テトラアセチルリボフラノースとのモル比は1~5:1であることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項6】
前記ステップ4)の過程において反応液の温度が-10~-5℃に保たれることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項7】
前記ステップ5)において、前記精密濾過過程の採用した精密濾過膜の孔径は0.2~1μmであり、前記ナノ濾過過程は分画分子量が150~250の中空繊維膜を採用することを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項8】
前記ステップ6)において、酵素触媒反応系全体における各物質の添加量は、10~50mMのMgイオン、10~30mMのATP、20~100mMの緩衝液、9~27mMのニコチンアミドリボシド、および0.2~1g/Lのニコチンアミドリボシドキナーゼであることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項9】
前記ステップ6)において、前記MgイオンはMgCl
2であることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【請求項10】
前記ステップ6)において、前記緩衝液はK
2HPO
4緩衝液であることを特徴とする、請求項1に記載のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する技術分野に関し、特に化学合成と生体酵素触媒作用の組み合わせによってニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ニコチンアミドモノヌクレオチド(Nicotinamide mononucleotide、略してNMNという)は生体細胞内の固有な生化学物質の一種であり、ニコチンアミドヌクレオチドアデノシルトランスフェラーゼによってアデニル化された後に生体細胞の生存にとって重要物質であるニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(略してNAD、補酵素Iともいい、すべての細胞に存在し、数千の反応に関与する)に変換される。NMNはNADの直接的な前駆体であり、現在NADを補充する最も理想的な方式であり、その生体細胞内のレベルはNADの濃度に直接影響し、生体細胞のエネルギー生成において重要な役割を果たし、且つ人体に危害を及ぼさない。
【0003】
今まで、ニコチンアミドモノヌクレオチドは、免疫力の調節、インスリン分泌の調節制御、mRNA発現への影響など、多くの薬理学的活性を有していることがわかっており、現在すでに老化の遅延、パーキンソン病などの老年病症状の改善のような医療保健のために開発されており、その他の用途も研究中である。ニコチンアミドモノヌクレオチドの薬用と保健効果に対する認識の高まり、およびその反応基質としての化学工業における幅広い適用につれて、市場のニコチンアミドモノヌクレオチドに対する需要量は日増しに増えている。
【0004】
ニコチンアミド(Nicotinamide)はナイアシンアミドともいい、ニコチン酸のアミド化合物であり、NMNの前駆体物質に属している。ニコチンアミドを原料とすることは現在既知の比較的によく使われたニコチンアミドモノヌクレオチドの調製方法である。この方法は一般的に次の図に示されるような化学合成経路を採用し、即ち、まずニコチンアミドを中間産物であるニコチンアミドリボシド(Nicotinamide riboside、略してNRという)に変換し、そしてニコチンアミドリボシドを最終産物であるニコチンアミドモノヌクレオチドに変換する。この方法はニコチンアミドリボシドをニコチンアミドモノヌクレオチドに変換する反応過程で反応系における水分含有量を厳しく制御する必要があるため、前のステップで合成された中間産物であるニコチンアミドリボシドを精製して水分を除去しないと、材料を投入して次のステップの反応に関与することができなく、その結果、この方法にはプロセスが複雑で製造コストが高いという欠点がある。
【化1】
【0005】
化学合成法に加えて、現在、ニコチンアミドリボシドを原料として生体酵素触媒作用によってニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法がある。この方法は反応系全体が水相であるため、水分制御が要求されない。しかし、触媒過程で使われる生体酵素を安定させてリサイクルできるようにするためには、通常ニコチンアミドリボシドの精製製品を原料として使用する必要があり、その結果、この方法の製造コストが比較的に高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記の背景技術に言及された欠点に鑑みて、本発明は、精製されたニコチンアミドリボシドを使用しないとニコチンアミドモノヌクレオチドに変換される反応を完了できないという技術的問題を解決すると同時に、もっと環境に優しい生体酵素触媒手段を化学合成と組み合わせて、プロセスが簡単でコストが低いニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法を開発することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明者は長期にわたって多くの実験模索を行っており、ついにニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法を開発した。この方法は次のステップを含む。
【0008】
1)アセトニトリル、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタンまたは液体二酸化硫黄溶媒において、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルまたは四塩化スズでニコチンアミドとテトラアセチルリボフラノースに対して20~40℃で触媒反応を行え、第一の反応液を得る。
【0009】
2)第一の反応液に重曹、炭酸ナトリウムまたは水酸化ナトリウムを加え、pHを3~5に調整し、第二の反応液を得る。
【0010】
3)第二の反応液にナトリウムメトキシド溶液を加え、-15~5℃で反応を行え、第三の反応液を得る。
【0011】
4)第三の反応液に塩酸を加え、pHを3~5に調整し、第四の反応液を得る。
【0012】
5)膜濃縮装置で第四の反応液に対して順に精密濾過とナノ濾過処理を行え、ニコチンアミドリボシド溶液を得る。
【0013】
6)Mgイオン、ATPおよび緩衝液の存在下で、35~39℃で、ニコチンアミドリボシドキナーゼを用いてステップ5)で得られたニコチンアミドリボシド溶液に対して触媒反応を行え、反応過程におけるpHを7.5~8.0に制御し、反応終了後にニコチンアミドモノヌクレオチドを得る。
【0014】
エネルギー消費量および反応速度を総合的に考慮して、好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法において、ステップ1)の反応は25~35℃で行われる。
【0015】
本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ1)において、溶媒として、アセトニトリルはその反応中の溶解性がよく、均一系の形成に寄与し、迅速反応に有利であり、且つ副産物であるα-異性体は極めて少ない(<0.1%)ため好ましい。
【0016】
本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ1)において、触媒として、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルはその反応中の立体選択性が高く、処理が容易であり、金属残渣がないため好ましい。
【0017】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ1)において、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルまたは四塩化スズと、ニコチンアミドと、テトラアセチルリボフラノースとのモル比は1.2~5:1.2~2:1である。
【0018】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法において、ステップ3)の前に、まず第二の反応液を濃縮して溶媒を除去する。
【0019】
エネルギー消費量および製品の安定性を総合的に考慮して、好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法において、ステップ3)の反応が-10~-5℃で行われる。
【0020】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ3)において、ナトリウムメトキシドとテトラアセチルリボフラノースとのモル比は1~5:1である。
【0021】
エネルギー消費量および製品の安定性を総合的に考慮して、好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法において、ステップ4)の過程で反応液の温度が-10~-5℃に保たれる。
【0022】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ5)において、反応液中の微生物と粒の大きい分子を除去するために精密濾過過程が採用した精密濾過膜の孔径は0.2-1μmであり、反応液中のニコチンアミド、残留溶媒および無機塩不純物のほとんどを除去するためにナノ濾過過程で分画分子量は150~250である中空繊維膜を採用する。
【0023】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ6)において、酵素触媒反応系全体における各物質の添加量は、10~50mMのMgイオン、10~30mMのATP、20~100mMの緩衝液、9~27mMのニコチンアミドリボシド、および0.2~1g/Lのニコチンアミドリボシドキナーゼである。
【0024】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ6)において、MgイオンはMgCl2である。
【0025】
好ましくは、本発明が提供した上記のニコチンアミドを原料としてニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する方法のステップ6)において、緩衝液はK2HPO4緩衝液である。
【発明の効果】
【0026】
従来技術に比べて、本発明が提供したニコチンアミドモノヌクレオチドの調製方法はニコチンアミドとテトラアセチルリボフラノースを出発原料とし、ニコチンアミドリボシドを反応中間体とし、プロセス全体は従来技術において結晶化などの方法によってニコチンアミドリボシドを精製しないと後続のニコチンアミドモノヌクレオチドに変換される反応に関与できないという技術要求を避けるので、ニコチンアミドリボシドを精製するステップを省いており、プロセスがさらに簡素化され、操作がもっと簡単で、コストがもっと低く、かかる時間がもっと短いである。それと同時に、この方法で合成された未精製のニコチンアミドリボシド溶液を後続の酵素触媒によってニコチンアミドモノヌクレオチドを調製する反応に応用する場合はニコチンアミドリボシドの精製固体を直接採用する場合よりも速い反応速度、少ない酵素使用量などの予想外の利点を取得していると共に、さらに時間を短縮していてコストを低減している。また、この方法は化学合成に基づいて生体酵素触媒の手段を導入するので、純粋の化学合成よりも環境に優しいである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に本発明について具体的な実施例を参照してさらに詳細に説明する。以下の実施例は本発明に対する説明であり、本発明は以下の実施例に限定されるわけではない。
【0028】
以下の実施例で使用される原料と試薬は、特記しない限り、市場から購入されるものである。
【実施例1】
【0029】
中間体産物であるニコチンアミドリボシド溶液の調製
【0030】
窒素の保護下で、2Lの三つ口フラスコに順次100gのテトラアセチルリボフラノース(314.5mmol、1.0eq)、115.1gのニコチンアミド(943.4mmol、3eq)および700mlのアセトニトリルを加え、20℃で撹拌してから、溶液は懸濁液になっており、170.3ml(943.4mmol、3eq)のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを徐々に滴下し、滴下過程において懸濁液が澄んでいてから濁っており、20℃で撹拌を45分間続けた後、薄層クロマトグラフィープレートは原料完全変換と表示した。反応液に重曹を加え、pHを3~5に調整し、溶媒を濃縮蒸発させて淡黄色の油状液体を得た(収率100%)。
【0031】
上記の得られた淡黄色の油状液体を500mlのメタノールに溶解し、撹拌下で温度を-10℃に下げ、314.5ml(1572.5mmol、5eq)のナトリウムメトキシド溶液を徐々に滴下し、滴下過程において反応液は-5℃より低い内部温度に保たれ、滴下が終わってから-5~-10℃で反応を40分間行った後、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)検出は原料完全変換と表示した。反応液に250mL(1500mmol)の6M塩酸を徐々に滴下し、pHを3~4に調整し、反応液を濃縮して淡黄色の液体を得た(収率100%)。
【0032】
上記の得られた淡黄色の液体を水に溶解し、そして膜濃縮装置に送り込み、順に精密濾過とナノ濾過処理(そのうち、精密濾過過程が採用した精密濾過膜の孔径は0.2μmであり、ナノ濾過過程で分画分子量は150である中空繊維膜を採用した)を行ってニコチンアミドリボシド溶液(有機溶媒の溶け残りは0.5%より小さい)を得、得られた溶液は後で使用される。
【実施例2】
【0033】
中間体産物であるニコチンアミドリボシド溶液の調製
【0034】
窒素の保護下で、2Lの三つ口フラスコに順次100gのテトラアセチルリボフラノース(314.5mmol、1.0eq)、76.7gのニコチンアミド(628.7mmol、2eq)および700mlのジクロロメタンを加え、25℃で撹拌してから、溶液は懸濁液になっており、113.5ml(628.7mmol、2eq)のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを徐々に滴下し、25℃で撹拌を50分間続けた後、原料が完全に変換された。反応液に重曹を加え、pHを3~5に調整し、溶媒を濃縮蒸発させて淡黄色の油状液体を得た(収率100%)。
【0035】
上記の得られた淡黄色の油状液体を500mlのメタノールに溶解し、撹拌下で温度を-10℃に下げ、188.7ml(943.5mmol、3eq)のナトリウムメトキシド溶液を徐々に滴下し、滴下過程において反応液は-5℃より低い内部温度に保たれ、滴下が終わってから-5~-10℃で反応を60分間行った後、原料が完全に変換され、反応液に150mL(900mmol)の6M塩酸を徐々に滴下し、pHを3~4に調整し、反応液を濃縮して淡黄色の液体を得た(収率100%)。
【0036】
上記の得られた淡黄色の液体を水に溶解し、そして膜濃縮装置に送り込み、順に精密濾過とナノ濾過処理(そのうち、精密濾過過程が採用した精密濾過膜の孔径は0.5μmであり、ナノ濾過過程で分画分子量は200である中空繊維膜を採用した)を行ってニコチンアミドリボシド溶液(有機溶媒の溶け残りは0.5%より小さい)を得、得られた溶液は後で使用される。
【実施例3】
【0037】
中間体産物であるニコチンアミドリボシド溶液の調製
【0038】
窒素の保護下で、2Lの三つ口フラスコに順次100gのテトラアセチルリボフラノース(314.5mmol、1.0eq)、57.5gのニコチンアミド(471.3mmol、1.5eq)および700mlの1,2-ジクロロエタンを加え、35℃で撹拌してから溶液が懸濁液になっており、85.1ml(471.3mmol、1.5eq)の四塩化スズを徐々に滴下し、35℃で撹拌を45分間続けた後、原料が完全に変換された。反応液に炭酸ナトリウムを加え、pHを3~5に調整し、溶媒を濃縮蒸発させて淡黄色の油状液体を得た(収率100%)。
【0039】
上記の得られた淡黄色の油状液体を500mlのメタノールに溶解し、撹拌下で温度を-10℃に下げ、125.8ml(629mmol、2eq)のナトリウムメトキシド溶液を徐々に滴下し、滴下過程において反応液は-5℃より低い内部温度に保たれ、滴下が終わってから-5~-10℃で反応を90分間行った後、原料が完全に変換され、反応液に100mL(600mmol)の6M塩酸を徐々に滴下し、pHを3~5に調整し、反応液を濃縮して淡黄色の液体を得た(収率100%)。
【0040】
上記の得られた淡黄色の液体を水に溶解し、そして膜濃縮装置に送り込み、順に精密濾過とナノ濾過処理(そのうち、精密濾過過程が採用した精密濾過膜の孔径は0.7μmであり、ナノ濾過過程で分画分子量は200である中空繊維膜を採用した)を行ってニコチンアミドリボシド溶液(有機溶媒の溶け残りは0.5%より小さい)を得、得られた溶液は後で使用される。
【実施例4】
【0041】
中間体産物であるニコチンアミドリボシド溶液の調製
【0042】
窒素の保護下で、2Lの三つ口フラスコに順次100gのテトラアセチルリボフラノース(314.5mmol、1.0eq)、46gのニコチンアミド(377mmol、1.2eq)および700mlの液体二酸化硫黄を加え、40℃で撹拌してから、溶液が懸濁液になっており、68.0ml(377mmol、1.2eq)のトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルを徐々に滴下し、40℃で撹拌を45分間続けた後、原料が完全に変換された。反応液に水酸化ナトリウムを加え、pHを3~5に調整し、溶媒を濃縮蒸発させて淡黄色の油状液体を得た(収率100%)。
【0043】
上記の得られた淡黄色の油状液体を500mlのメタノールに溶解し、撹拌下で温度を-10℃に下げ、94.3ml(471.7mmol、1.5eq)のナトリウムメトキシド溶液を徐々に滴下し、滴下過程において反応液は-5℃より低い内部温度に保たれ、滴下が終わってから-5~-10℃で反応を120分間行った後、原料が完全に変換され、反応液に75mL(450mmol)の6M塩酸を徐々に滴下し、pHを3~5に調整し、反応液を濃縮して淡黄色の液体を得た(収率100%)。
【0044】
上記の得られた淡黄色の液体を水に溶解し、そして膜濃縮装置に送り込み、順に精密濾過とナノ濾過処理(そのうち、精密濾過過程が採用した精密濾過膜の孔径は1μmであり、ナノ濾過過程で分画分子量は250である中空繊維膜を採用した)を行ってニコチンアミドリボシド溶液(有機溶媒の溶け残りは0.5%より小さい)を得、得られた溶液は後で使用される。
【実施例5】
【0045】
中間体産物であるニコチンアミドリボシド溶液の調製過程における各パラメーターに対する調査の結果を表1から表5に示す。
【0046】
【実施例6】
【0047】
ニコチンアミドモノヌクレオチドの調製
【0048】
【0049】
ニコチンアミドリボシドキナーゼを1g量り取り、10mLの純水を加えて酵素希釈標準溶液を調製し、4℃で保存した。
【0050】
表6によって最初の三種類の材料を量り取り、それぞれ純水を約70mL加えて溶解を行い、そしてそれぞれ市販のNR固体(含有量80%)または本発明の実施例が調製したNR溶液(含有量300mM)を加え、3M NaOHでpHを7.5~8.0に調整し、100mLに希釈し、37℃で予熱した後に酵素希釈標準溶液を330-500uL加え、220rpmで恒温で振盪して反応を行い、反応終了後にニコチンアミドモノヌクレオチドを得た。
【0051】
反応過程において30分ごとにサンプルを取り、HPLCで生成物を分析し、pHに対して監視と調整を行い、結果を表7に示す。
【0052】
【0053】
表7から、市販のNR固体と比較して本発明の実施例が調製したNR溶液は、反応における初期速度がもっと速く、所要の酵素量がもっと低いことがわかる。
【実施例7】
【0054】
ニコチンアミドモノヌクレオチドの調製
【0055】
【0056】
ニコチンアミドリボシドキナーゼを1g量り取り、10mLの純水を加えて酵素希釈標準溶液を調製し、4℃で保存した。
【0057】
表8によって最初の三種類の材料を量り取り、それぞれ純水を約70mL加えて溶解を行い、そしてそれぞれ市販のNR固体(含有量50%)または本発明の実施例が調製したNR溶液(含有量570mM)を加え、3M NaOHでpHを7.5~8.0に調整し、100mLに希釈し、37℃で予熱した後、酵素希釈標準溶液を650uLを加え、220rpmで恒温で振盪して反応を行い、反応終了後にニコチンアミドモノヌクレオチドを得た。
【0058】
反応過程において30分ごとにサンプルを取り、HPLCで生成物を分析し、pHに対して監視と調整を行い、結果を表9に示す。
【0059】
【0060】
表9から、市販のNR固体と比較して、本発明の実施例が調製したNR溶液は、反応における初期速度がもっと速く、且つ市販のNR固体-バッチ2に示されるようないくつかの不純物の存在による反応への抑制を回避できることがわかる。
【実施例8】
【0061】
ニコチンアミドモノヌクレオチドの調製
【0062】
【0063】
ニコチンアミドリボシドキナーゼを1g量り取り、10mLの純水を加えて酵素希釈標準溶液を調製し、4℃で保存した。
【0064】
表10によって最初の三種類の材料を量り取り、それぞれ純水を約70mL加えて溶解を行い、そしてそれぞれ市販のNR固体(含有量98%)または本発明の実施例が調製したNR溶液(含有量1020mM)を加え、3M NaOHでpHを7.5~8.0に調整し、100mLに希釈し、37℃で予熱した後、酵素希釈標準溶液を1mL加え、220rpmで恒温で振盪して反応を行い、反応終了後にニコチンアミドモノヌクレオチドを得た。
【0065】
反応過程において30分ごとにサンプルを取り、HPLCで生成物を分析し、pHに対して監視と調整を行い、結果を表11に示す。
【0066】
【0067】
表11から、市販のNR固体と比較して本発明の実施例が調製したNR溶液は、反応における初期速度がやや速く、且つ基質の濃度が上がり、変換率が下がることがわかる。