(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】冷蔵・冷凍耐性を有し、加熱調理のできる咀嚼困難者用食品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230120BHJP
A23L 29/269 20160101ALI20230120BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L29/269
(21)【出願番号】P 2017531018
(86)(22)【出願日】2016-07-27
(86)【国際出願番号】 JP2016003478
(87)【国際公開番号】W WO2017017953
(87)【国際公開日】2017-02-02
【審査請求日】2019-06-12
【審判番号】
【審判請求日】2021-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2015147527
(32)【優先日】2015-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】金平 圭介
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 好美
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】加藤 友也
【審判官】三上 晶子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/125064(WO,A1)
【文献】特開平11-56264(JP,A)
【文献】月刊フードケミカル、2010年、2010-2、p.29-32
【文献】調理科学、1989年,Vol.22、No.3、p.10-18、p.164-172
【文献】奈良 潔、カードランの性質と食品への利用、食品工業、1991年7月、p.31-40
【文献】日本食品工業学会誌、1978年、第25巻、第12号、p.677-681、p.15-19
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L33/10
A23L29/269
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カードラン、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、及び食品ペースト含有咀嚼困難者用食品原料を含み、カードランの配合量が、
1.5~5.0質量%である、カードランのゲル化により食品ペーストを固めたゲル状の咀嚼困難者用食品(寒天を0.05~1.5質量%含むものは除く)。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの配合量が、2.0~6.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の咀嚼困難者用食品。
【請求項3】
品温20℃のかたさが、3000~20000N/m
2であることを特徴とする請求項1
又は2記載の咀嚼困難者用食品。
【請求項4】
カードランとヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンの配合割合が、1:0.4~1:2であることを特徴とする請求項1~
3のいずれか記載の咀嚼困難者用食品。
【請求項5】
カードラン及びヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプンと、食品ペースト含有咀嚼困難者用食品原料とを混合し、80℃以上に加熱する、カードランの配合量が、
1.5~5.0質量%である、カードランのゲル化により食品ペーストを固めたゲル状の咀嚼困難者用食品(寒天を0.05~1.5質量%含むものは除く)の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、咀嚼困難者用食品,特に、冷蔵・冷凍耐性を有し、加熱調理のでき、離水が抑制されたゲル状の咀嚼困難者用食品に関する。
【背景技術】
【0002】
医療・介護用途の食品として、咀嚼困難者用食品が知られている。これらの食品は、口腔内での押しつぶしが容易で、かたすぎず、飲込みやすい特徴がある。また、咀嚼困難者用食品を主に利用する対象は高齢者であり、加齢・基礎疾患、それに伴う諸症状により嚥下機能が衰えている場合が多い。嚥下機能が低下している者は、誤嚥を起こす危険性が高く、食品から離水が生ずると、飲み込みの際に誤嚥を起こす可能性が高まるため、食品の離水が抑制されている必要がある。
【0003】
これまでは、これらの咀嚼困難者用食品は、病院や施設などの介護の現場で食事のたびに手作りされていたが、対象者が少ないこと、調理時間の短縮などの理由により、近年、利便性のある加工済みの咀嚼困難者用食品を、病院・施設なども購入するようになっている。これらの加工済み咀嚼困難者用食品は、冷蔵・冷凍されて配送されることが多く、特に冷凍の場合では、解凍後の離水が問題となっていた。また、食事の配膳の際には、加熱されるため、耐熱性も必要となっていた。
【0004】
従来、カードランを使用して食品に耐熱性を付与することが行われている。カードランを添加した、加熱可能食品としては、カードラン及びデンプンを具材のつなぎ剤として含有する、加熱後冷蔵しても老化・糊化しない固形状調理食品が知られている(特許文献1参照)。
【0005】
また、食品の離水については、カードラン使用時に生デンプンやデキストリン等の糊料を併用することで低減させられることも知られていた(特許文献2及び3参照)。その他、カードランとα化デンプンを含む粘稠食品(特許文献4参照)等も提案されているが、カードランは溶解時の分散性が悪く、均一に分散させることが困難であり、この点においても課題があった(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平02-261364号公報
【文献】特開2003-259820号公報
【文献】特開平02-411号公報
【文献】特開平05-308913号公報
【非特許文献】
【0007】
【文献】『食品多糖類 乳化・増粘・ゲル化の知識』(幸書房,2001)168頁~175頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、冷蔵・冷凍耐性を有し、加熱調理ができ、離水が抑制された咀嚼困難者用食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、カードランとともに特定の処理を施した加工デンプンを配合することでこれらの課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。より詳細には、食品中でカードランと加工デンプンを併用しつつ、その配合量を特定することで、よりカードランの分散を容易にし、効率よくカードランを含有せしめ、咀嚼困難者用食品として最適な物性が得られることを見いだした。そして、得られた咀嚼困難者用食品はカードランにより耐熱性を有するため、冷凍保存したものを加熱解凍することができ、加工でん粉により解凍後も内部から水が滲出するというような離水が抑制されているという利点を有することを確認した。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりのものです。
(1)カードラン、加工デンプン、及び食品ペースト含有咀嚼困難者用食品原料からなる咀嚼困難者用食品。
(2)加工デンプンが、架橋デンプンであることを特徴とする上記(1)の咀嚼困難者用食品。
(3)架橋デンプンが、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、又はアセチル化リン酸架橋デンプンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の架橋デンプンであることを特徴とする上記(2)の咀嚼困難者用食品。
(4)加工デンプンの配合量が、2.0~6.0質量%であることを特徴とする上記(1)~(3)のいずれかの咀嚼困難者用食品。
(5)カードランの配合量が、1.5~5.0質量%であることを特徴とする上記(1)~(4)のいずれかの咀嚼困難者用食品。
(6)品温20℃のかたさが、3000~20000N/m2であることを特徴とする上記(1)~(5)のいずれかの咀嚼困難者用食品。
(7)カードランと加工デンプンの配合割合が、1:0.4~1:2であることを特徴とする上記(1)~(6)のいずれかの咀嚼困難者用食品。
(8)カードラン及び加工デンプンと、食品ペースト含有咀嚼困難者用食品原料とを混合し、80℃以上に加熱することを特徴とする咀嚼困難者用食品の製造方法。
(9)カードランと加工デンプンを含む咀嚼困難者用食品の離水抑制剤。
(10)加工デンプンが、架橋デンプンであることを特徴とする上記(9)の咀嚼困難者用食品の離水抑制剤。
(11)架橋デンプンが、ヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン、又はアセチル化リン酸架橋デンプンからなる群より選ばれた1種又は2種以上の架橋デンプンであることを特徴とする上記(10)の咀嚼困難者用食品の離水抑制剤。
【0011】
また上記(9)カードランと加工デンプンを含む咀嚼困難者用食品の離水抑制剤に関する発明の他の態様としては、カードラン及び加工デンプンの、咀嚼困難者用食品の離水抑制剤の製造における使用や、咀嚼困難者用食品の離水抑制剤の製造のためのカードラン及び加工デンプンや、食品ペースト含有咀嚼困難者用食品原料にカードランと加工デンプンを配合することを特徴とする咀嚼困難者用食品の離水抑制方法を挙げることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、冷蔵・冷凍耐性や耐熱性を有し、加熱調理ができ、離水が抑制された咀嚼困難者用食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明におけるカードランは、β-1,3-グルコシド結合を主体とする加熱凝固性多糖類の総称であり、かかるカードランとしては、例えば、アルカリゲネス属又はアクロバクテリウム属の微生物によって生産することもできるが、市販品を好適に用いることができる。カードランの配合量は、咀嚼困難者用食品中1~6質量%、好ましくは1.5~5.0質量%であり、特に硬さの面からは1.5~3.5質量が%より好ましい。
【0014】
本発明における加工デンプンは、バレイショ、コーン、タピオカなどからとれるデンプンを化学的に変性させたものであり、具体的には、酢酸デンプン、酸化デンプン、ヒドロキシプロピルデンプン、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、リン酸架橋デンプン、リン酸化デンプン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化酸化架橋デンプン、オクテニルコハクデンプンナトリウムなどを挙げることができる。好ましくは架橋剤を使用して原料デンプンを処理し、化学的に架橋させたデンプンである架橋デンプンが咀嚼困難者用食品の利用に適している。さらに好ましくは置換基がエステル化又はエーテル化処理された架橋デンプンが適しており、具体的にはヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプンなどが特に好ましい態様として使用できる。加工デンプンの配合量は、咀嚼困難者用食品中1~10質量%、好ましくは2~6質量%である。
【0015】
上記食品ペーストは、野菜、果物、魚介類、肉類、卵類、乳製品類、また、これらの加工品を、生又は加熱した後、大きな塊のないように破砕、摩砕や、裏ごしなど従来知られた方法で微細化することにより、柔らかで口当たりの良い状態にしたペースト状食品である。
【0016】
本発明の咀嚼困難者用食品には、発明の効果を阻害しない限りにおいて、味付けやテクスチャー改善、日持ち向上などの目的から、調味料や香辛料、甘味料などの食品素材、増粘多糖類やデキストリン、油脂、食品添加物などを適用してもよい。すなわち、咀嚼困難者用食品原料には、食品ペーストに加えて、動植物油脂類、カードランや加工デンプン以外の増粘多糖類、水溶性食物繊維、水飴、デキストリン等の糖質、保存料、香料、着色料などを適宜配合することができる。すなわち本発明は、カードラン、加工デンプン、及び食品ペーストを含む咀嚼困難者用食品、あるいは、カードラン、加工デンプン、及び食品ペーストと、動植物油脂類、カードランや加工デンプン以外の糖質、保存料、香料、着色料等からなる群から選ばれる1種又は2種以上とからなる咀嚼困難者用食品に関するということができる。また、上記動植物油脂類としては、オリーブ油、パーム油、パーム核油、菜種油、ヤシ油、落花生油、サフラワー油、ひまわり油、綿実油、コーン油、ごま油、大豆油及び米油、カカオ脂等の植物油脂類、並びに、牛脂、豚脂、魚油、鯨油、乳脂等の動物油脂類を挙げることができ、保存料としては、制菌作用のある、有機酸やその塩、グリシン等のアミノ酸、リゾチーム、プロタミン等のタンパク質、及びL-アスコルビン酸、トコフェロール等の酸化防止剤を挙げることができる。
【0017】
上記カードランと加工デンプンは、咀嚼困難者用食品を製造する際に、食品ペーストを含む咀嚼困難者用食品原料と混合されることで咀嚼困難者用食品に含有されるが、カードランと加工デンプンの配合量が多くなると咀嚼困難者用食品として、かたさが出すぎるおそれがある。また、カードランの配合量が少なくなると、十分な加熱耐性が得られないし、加工デンプンの配合量が少なくなると、咀嚼困難者用食品から離水が生じ、また、カードランの分散が悪くなるおそれがある。
【0018】
本発明の嚼困難者用食品は、品温20℃のかたさが、50000N/m2以下、好ましくは30000N/m2以下、さらに好ましくは20000N/m2以下であり、3000N/m2以上が好ましい。ここで、咀嚼困難者用食品のかたさは、テクスチャーアナライザーやクリープメーターなどの物質の圧縮応力を測定できる装置を用い、直径20mmの円柱型プランジャーを10mm/秒の速度で測定した結果で示されている。
【0019】
本発明の咀嚼困難者用食品の製造方法としては、咀嚼困難者用食品の素材としたい食品ペーストを含む咀嚼困難者用食品原料と、カードラン、加工デンプン及び水分とを適宜混合し、カップや食品型などに充填して、その後80℃以上に加熱する方法を挙げることができる。このように、カップや食品型に充填された原料を80℃以上に加熱することで、カードランにゲル化が生じ、食品ペーストを固めたゲル状の咀嚼困難者用食品を得ることができる。こうして得られた咀嚼困難者用食品は、冷蔵・冷凍することもでき、また耐熱性を有するため、加熱調理することもできる。
【0020】
なお、咀嚼困難者用食品に離水が生じる場合は、カップや食品型内で加熱成形し、そのまま冷蔵・冷凍したのちに常温に戻した咀嚼困難者用食品を皿などに出した際に、保形性のある食品ゲルには含まれない水分が、皿などに広がることで、その多寡を知ることが出来る。
【0021】
また、カードランと加工デンプンを含む本発明の咀嚼困難者用食品に用いるための離水抑制剤は、食品ペーストを含む咀嚼困難者用食品原料に対して用いられ、離水抑制剤におけるカードランと加工デンプンの配合割合は、1:0.2~1:3、好ましくは1:0.4~1:2、より好ましくは1:1~1:2である。本発明の咀嚼困難者用食品の離水抑制剤は、通常、咀嚼困難者用食品用途である旨の取扱説明書が添付されることがある。
【0022】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、かかる実施例により限定されるものではない。
【0023】
<実施例1~15>
表1及び表2の配合で食品ペーストとカードラン、加工デンプン、水等を用意した。これらのうち、食品ペーストとカードランと加工デンプンと水等をミキサーで撹拌したのちに、食品カップに60gずつ充填した。なお、ミキサーでの撹拌の際には40℃以上にならないように断続的に撹拌を行った。カップにフィルムをヒートシールし密閉して、スチームコンベクションオーブンで90℃、30分間加熱することで咀嚼困難者用食品を得た。
【0024】
カードランはMCフードスペシャリティーズ社のカードランを用い、加工デンプンは実施例1~6、実施例12~15はタピオカ由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(沈降積:4.0ml)を、実施例7、11はタピオカ由来のアセチル化リン酸架橋デンプン(沈降積:7.9ml)を、実施例8はコーン由来のヒドロキシプロピル化リン酸架橋デンプン(沈降積:2.5ml)を、実施例9はタピオカ由来のリン酸架橋デンプン(沈降積:9.2ml)を、実施例10はタピオカ由来の酢酸デンプンをそれぞれ用いた。
【0025】
なお、架橋デンプンの架橋の程度を表す沈降積は、以下のように測定した。
試料とする架橋デンプンを無水換算150mg精秤し、試験管に移す。その中へ後述する試験用液を正確に15ml加え、よく振とうして分散させたのち、直ちに沸騰水浴中に入れ5分間加熱する。その後、急冷して室温まで冷却した後、再度振とうし、均一化して10mlメスシリンダーに10ml移し、20℃で18時間静置後、沈殿物の目盛を読み取り、この値を沈降積とする。
試験用液の調製方法はイオン交換水64質量%に、塩化亜鉛10質量%、塩化アンモニウム26質量%となるように加温溶解して調整し、この液10mlを取り、ブロムフェノールブルー液を加え、0.1mol/LのHClで呈色が紫から黄色に変わる点を終点として滴定して塩酸度(塩酸度=HClのファクター×滴定に要したml数)を求める。塩酸度が3.9±0.1になるようにアンモニア水、塩酸を用いて調整する。調整後、再度塩酸度を確認して、最後にろ過して用いる。
【0026】
また食品ペーストは、実施例1~10はにんじんペーストを、実施例11はかぼちゃペーストを、実施例12はホウレンソウペーストを、実施例13はキャベツペーストを、実施例14は鶏肉ペーストを、実施例15は鮭ペーストをそれぞれ用いた。
【0027】
さらに、実施例8~15では食品素材としてデキストリン及び/又は油脂として市販の家庭用サラダ油を用いた。
【0028】
【0029】
【0030】
<比較例1~4>
比較例として、加工デンプンを用いない例及び加工デンプンの代わりに化学的変性のされていない生デンプンを用いたほかは、実施例と同様にして咀嚼困難者用食品を得た。生デンプンは、比較例3はコーンスターチを、比較例4はバレイショデンプンを用いた。なお、食品ペーストは、比較例1、3、4はにんじんを、比較例2はホウレンソウを用いた。配合は表3に示す通りである。
【0031】
【0032】
<結果>
実施例1~15及び比較例1~4の各咀嚼困難者用食品について、かたさ、離水、耐熱性及び分散性の各項目について評価した。結果を表1~表3に示す。咀嚼困難者用食品は、もっとも離水しやすい冷凍後常温に戻した状態で離水を確認し、その後かたさを測定した。離水については、冷凍後皿に出した際に、ほとんど水が広がらない場合を○、少し水が出るが許容範囲の場合を△、多くの水が皿に広がる場合を×とした。かたさは直径20mmの円柱型プランジャーを10mm/秒の速度で測定した結果(N/m2)を示す。
【0033】
また、耐熱性の確認のため、冷凍した咀嚼困難者用食品を家庭用電子レンジ(600W設定)で1分間加熱し、加熱後に形を保っているかどうかを確認した。加熱後もゲルが崩れず保形している場合を○、多少型崩れするが自立できている場合を△、形が崩れてしまう場合を×とした。
【0034】
さらに、カードランの分散性については、カードランを食品ペーストと混合したときに、均一に分散でき、加熱後のゲルが均一な場合を○、均一な分散はできるが、加熱後のゲルに少しムラがある場合を△、分散が均一にならず、カードランの濃い部分と薄い部分が出来ることによってゲルの部位によってかたさが異なってしまった場合を×とした。
【0035】
表1~表3の結果からわかるように、カードランと加工デンプンを含む咀嚼困難者用食品は、製造時にカードランの分散が均一となり、得られた咀嚼困難者用食品に耐熱性があり、離水が抑制されているが、加工デンプンを用いない場合や、加工デンプンではなく生デンプンを用いた場合にはカードランの分散がうまくいかない場合があり、またいずれも離水がみられ、咀嚼困難者用食品として適していなかった。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の咀嚼困難者用食品は、医療・介護の分野で産業上の利用可能性がある。