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特許7213619物品輸送管理方法および物品輸送管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】物品輸送管理方法および物品輸送管理システム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/0832 20230101AFI20230120BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20230120BHJP
   G06K 7/016 20060101ALI20230120BHJP
   G06K 7/10 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G06Q10/0832
B65G61/00 526
G06K7/016
G06K7/10 100
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2018040946
(22)【出願日】2018-03-07
(65)【公開番号】P2019159394
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】507212768
【氏名又は名称】三菱ケミカルグループ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】IAT弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】般谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】加賀 邦明
【審査官】加内 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-027345(JP,A)
【文献】特開2006-240809(JP,A)
【文献】特開2004-262622(JP,A)
【文献】特開2015-187857(JP,A)
【文献】特開2012-141755(JP,A)
【文献】特開2017-058886(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0239802(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
B65G 61/00
G06K 7/016
G06K 7/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程を含むことを特徴とする物品輸送管理方法。
(a)通箱に物品を収容する工程。
前記通箱は、その通箱内に収容されている物品からその物品に関する情報である物品情報を読み取る読取手段と、その読取手段により読み取った前記物品情報を記憶部に記憶する記憶手段と、前記通箱の衝撃、前記通箱内の温度または湿度の少なくとも一つの環境を検知して環境情報を出力する環境センサと、前記記憶部に記憶されている物品情報および前記環境センサが出力する環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段とを有するものである。前記物品は、その物品に関する前記物品情報を前記読取手段により読み取り可能に有する。
(b)前記通箱の施錠後、前記通箱内に収容されている前記物品から前記読取手段により前記物品情報を読み取って前記記憶部に記憶する工程。
(c)前記物品情報の読み取りに続き、前記記憶部に記憶されている物品情報および前記環境センサが出力した環境情報を前記送信手段により電気通信回線を介して前記物品管理装置に送信する工程。
(d)前記物品管理装置において、受信した物品情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程。
(e)前記通箱内の物品に異常が発生したと判定した場合に、その事実を表示または記録する工程。
(f)前記物品管理装置において、受信した物品情報、環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程は、前記物品情報に基づいていずれかの物品の滅失の有無を判定し、前記環境情報に基づいて前記通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を外れたか否かを判定することを含み、前記物品が滅失したと判定した時およびまたは通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を外れた場合は、前記物品管理装置において、その時の通箱内に収容されている物品の代替品の出荷を要請する工程を含む
【請求項2】
次の工程を含むことを特徴とする物品輸送管理方法。
(a)通箱に物品を収容する工程。
前記通箱は、その通箱内に収容されている物品からその物品に関する情報である物品情報を読み取る読取手段と、その読取手段により読み取った前記物品情報を記憶部に記憶する記憶手段と、前記通箱の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、前記通箱の衝撃、前記通箱内の温度または湿度の少なくとも一つの環境を検知して環境情報を出力する環境センサと、前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力する位置情報および前記環境センサが出力する環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段とを有するものである。前記物品は、その物品に関する前記物品情報を前記読取手段により読み取り可能に有する。
(b)前記通箱の施錠後、前記通箱内に収容されている前記物品から前記読取手段により前記物品情報を読み取って前記記憶部に記憶する工程。
(c)前記物品情報の読み取りに続き、前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力した位置情報および前記環境センサが出力した環境情報を前記送信手段により電気通信回線を介して前記物品管理装置に送信する工程。
(d)前記物品管理装置において、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程。
(e)前記通箱内の物品に異常が発生したと判定した場合に、その事実を表示または記録し、併せてその判定をした時の位置情報を記録する工程。
(f)前記物品管理装置において、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程は、前記物品情報に基づいていずれかの物品の滅失の有無を判定し、前記位置情報に基づいて前記通箱の現在位置を把握し、前記環境情報に基づいて前記通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を外れたか否かを判定することを含み、前記物品が滅失したと判定した時およびまたは通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を外れた場合は、前記物品管理装置において、その時の通箱内に収容されている物品の代替品の出荷を要請する工程を含む
【請求項3】
請求項に記載の物品輸送管理方法において、
前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力した位置情報および前記環境センサが出力した環境情報を常時送信手段により電気通信回線を介して前記物品管理装置に送信し、前記物品管理装置において、前記通箱から受信した物品情報に基づいて前記物品の滅失の有無を判定し、前記通箱から受信した位置情報に基づいて通箱の現在位置を把握し、前記通箱から受信した環境情報に基づいて通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を超えたか否かを判定し、前記物品の滅失が生じた場合、およびまたは前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を超えた場合に、その事実を表示または記録することを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項4】
請求項に記載の物品輸送管理方法において、
前記物品の滅失が生じた場合、およびまたは前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を超えた場合に、その事実を表示または記録するとともに、前記物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは前記許容値を超えたときの位置情報を表示または記録することを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項5】
次の工程を含むことを特徴とする物品輸送管理方法。
(a)通箱に物品を収容する工程。
前記通箱は、その通箱内に収容されている物品からその物品に関する情報である物品情報を読み取る読取手段と、その読取手段により読み取った前記物品情報を記憶部に記憶する記憶手段と、前記通箱の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、前記通箱の衝撃、前記通箱内の温度または湿度の少なくとも一つの環境を検知して環境情報を出力する環境センサと、前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力する位置情報および前記環境センサが出力する環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段とを有するものである。前記物品は、その物品に関する前記物品情報を前記読取手段により読み取り可能に有する。
(b)前記通箱の施錠後、前記通箱内に収容されている前記物品から前記読取手段により前記物品情報を読み取って前記記憶部に記憶する工程。
(c)前記物品情報の読み取りに続き、前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力した位置情報および前記環境センサが出力した環境情報を前記送信手段により電気通信回線を介して前記物品管理装置に送信する工程。
(d)前記物品管理装置において、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程。
(e)前記通箱内の物品に異常が発生したと判定した場合に、その事実を表示または記録し、併せてその判定をした時の位置情報を記録する工程。
(f)出荷人および/または荷受人の物品管理装置の機能と同様の機能を有する別の物品管理装置を通箱側に備え、その通箱側の物品管理装置により受信した物品情報に基づいて物品の滅失の有無を判定し、受信した環境情報に基づいて通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を超えたか否かを判定し、前記物品の滅失が生じた場合、およびまたは前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが前記許容値を超えた場合に、前記物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を超えた時の位置情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する工程。
(g)出荷人または荷受人または通箱側の物品管理装置において物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが前記許容値を超えた時の状況内容を表示または記録し、その時の通箱内に収容されている物品の代替品の出荷を要請する工程
【請求項6】
請求項に記載の物品輸送管理方法において、
前記出荷人または荷受人または通箱側の物品管理装置において物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが前記許容値を超えた時の位置情報をも表示または記録することを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項7】
請求項1に記載の物品輸送管理方法において、
(a1)前記通箱の少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと電源とを含むRFIDリーダライタと、前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つの状況を検知する環境センサと、前記RFIDリーダライタに接続された通信機とを有する前記通箱を用意し、(b1)RFIDタグを備えた1つ以上の物品を、前記RFIDタグが前記通箱の内部通信用アンテナの少なくとも1つに対面するように前記通箱に収容し、(c1)前記RFIDリーダライタの内部通信用アンテナと前記物品のRFIDタグのアンテナとの間で通信させて前記RFIDタグに記録されている前記物品に関する情報である物品情報を前記RFIDリーダライタで読み取って記憶し、(d1)前記環境センサの検知信号が許容値を超えた場合に、前記RFIDリーダライタに記憶された前記物品情報を前記通信機から無線通信回線を経て前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信することを含むことを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項8】
請求項2~のいずれか1項に記載の物品輸送管理方法において、
(a1)前記通箱の少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと電源とを含むRFIDリーダライタと、前記通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つの状況を検知する環境センサと、前記RFIDリーダライタに接続された通信機とを有する前記通箱を用意し、(b1)RFIDタグを備えた1つ以上の物品を、前記RFIDタグが前記通箱の内部通信用アンテナの少なくとも1つに対面するように前記通箱に収容し、(c1)前記RFIDリーダライタの内部通信用アンテナと前記物品のRFIDタグのアンテナとの間で通信させて前記RFIDタグに記録されている前記物品に関する情報である物品情報を前記RFIDリーダライタで読み取って記憶し、(d1)前記環境センサの検知信号が許容値を超えた場合に、前記RFIDリーダライタに記憶された前記物品情報を前記通信機から無線通信回線を経て前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信することを含むことを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項9】
請求項に記載の物品輸送管理方法において、
前記環境センサの検知信号が前記許容値を超えた場合に、前記RFIDリーダライタに記憶された前記物品情報を前記通信機から無線回線を経て前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する際に、前記環境センサからの出力が前記許容値を超えたときに前記RFIDリーダライタに記憶された前記物品情報を読出して、その物品情報をそのときの位置情報とともに前記通信機に与え、または、前記RFIDリーダライタに記憶された前記物品情報を常時読み出して前記通信機に与え、前記環境センサの検知出力が前記許容値を超えたときに前記通信機に前記物品情報を前記位置情報および前記環境情報とともに送信させることを特徴とする物品輸送管理方法。
【請求項10】
RFIDタグが取り付けられた物品と、前記物品を収容する通箱と、前記通箱に設けられたRFIDリーダライタと、前記通箱に備えられた、衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つを検知する環境センサと、前記通箱に設けられた測位手段と、前記通箱に備えられた通信機とを有し、
前記通箱は、前記物品を前記RFIDタグのアンテナが前記通箱の内壁面に設けられた内部通信用アンテナに対面するように保持するものであり、
前記RFIDリーダライタは、前記通箱の内壁面に設けられた前記内部通信用アンテナと電源とを含み、前記通箱の施錠後、前記通箱内に収容された前記物品のRFIDタグと順次通信して各物品の物品に関する情報である物品情報を読み取るものであり、
前記測位手段は、前記通箱の現在位置を測定するものであり、
前記通信機は、前記RFIDリーダライタの物品情報の読み取りに続いて、前記RFIDリーダライタが前記RFIDタグから読取った前記物品情報、前記環境センサが出力する環境情報および前記測位手段が出力する位置情報を無線通信回線を経て前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信するものであり、
前記環境センサの検知出力が前記許容値を超えた場合に、前記物品情報を前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信するために、前記環境センサからの検知信号の出力レベルが前記許容値を超えた時に、前記通信機に前記RFIDリーダライタから与えられている前記物品情報の送信を開始させる通信制御部を備え
前記通信機は、前記環境センサの検知出力が許容値を超えた場合に、前記RFIDリーダライタが前記RFIDタグから読取った前記物品情報および前記測位手段が出力する位置情報を送信し、
前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置は、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程は、前記物品情報に基づいていずれかの物品の滅失の有無を判定し、前記位置情報に基づいて前記通箱の現在位置を把握し、前記環境情報に基づいて前記通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を外れたか否かを判定し、前記物品が滅失したと判定した時およびまたは通箱内の温度、湿度または衝撃の少なくとも一つが許容値を外れた場合は、前記物品管理装置において、その時の通箱内に収容されている物品の代替品の出荷を要請する、
ことを特徴とする物品輸送管理システム。
【請求項11】
請求項10に記載の物品輸送管理システムにおいて、
前記通信制御部は、前記通箱の施錠後、前記環境センサからの検知信号の出力レベルが前記許容値を超えた時のみ一定時間、前記通信機の送信を可能にするものであることを特徴とする物品輸送管理システム。
【請求項12】
請求項11に記載の物品輸送管理システムにおいて、
前記環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時、前記物品情報を前記通箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信するために、前記環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時に前記RFIDリーダライタに前記RFIDタグから前記物品情報を読取らせる駆動部を備え、前記通信機に前記RFIDリーダライタから与えられる前記物品情報を送信させることを特徴とする物品輸送管理システム。
【請求項13】
請求項12に記載の物品輸送管理システムにおいて、
前記通箱に蓋の開閉を検知する開閉センサが設けられ、前記開閉センサが前記蓋の開閉を検知した時刻と開閉した累積回数の少なくとも一方(開閉情報)を記録する制御部を備え、前記通信機は前記物品情報に前記記録された開閉情報を付加して送信することを特徴とする物品輸送管理システム。
【請求項14】
請求項10~13のいずれか1項に記載の物品輸送管理システムにおいて、
物品輸送管理システムには、前記通箱に、出荷時に計時を開始し、回収時に輸送に要した時間を計測して記録する輸送時間管理手段を付加したことを特徴とする物品輸送管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品輸送管理方法および物品輸送管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、出荷人が物品を所定の荷受人に届ける場合、物品を通箱に収容し、その通箱を輸送会社に依頼して荷受人の住所まで輸送してもらうことが行われている。
【0003】
本出願人は、特許文献1において、通箱に収容された物品に付加されているその物品に関する情報(物品情報)を読取装置により読取って出荷人および/または荷受人の物品管理装置(以下、単に物品管理装置という場合がある。)に送信することにより、輸送中(出荷時、輸送途上、荷受時)の物品の所在位置、安全性および保全性の確認ならびに輸送中に事故が発生した場合の迅速な対応を可能にする、次のような物品輸送管理方法を提案した。
【0004】
その物品輸送管理方法は、次のような通箱を用いる。通箱は、読取装置として、少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと、外側面に設けられた外部通信用アンテナと、電源とを含むRFIDリーダライタを備える。また、通箱は、通箱の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、通箱の受ける衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つを検出して環境情報を出力する環境センサとを有するとともに、位置情報と環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段を有する。また、その物品輸送管理方法は、通箱の中にRFIDタグが取り付けられた物品を、RFIDタグのアンテナが通箱の内部通信用アンテナの少なくとも一つに対面するように保持する。そして、RFIDリーダライタを起動させて、内部通信用アンテナとRFIDタグのアンテナとの間で通信をさせ、RFIDタグに記録されている物品情報をRFIDリーダライタに読み取って記憶する。通箱はこの状態で輸送される。輸送者(運転手)が携帯端末を操作すると、携帯端末はRFIDリーダライタの外部通信用アンテナとの間で通信して、受信した物品情報、位置情報および環境情報を、インターネットなどの電気通信回線を介して物品管理装置に伝送する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-27345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記物品輸送管理方法においては、輸送者が携帯端末を起動させると、携帯端末は輸送中の通箱から送信される物品情報、位置情報および環境情報を物品管理装置に伝送する。
【0007】
したがって、輸送者が携帯端末を稼働させた時にのみ、輸送中の通箱の物品情報、位置情報および環境情報が物品管理装置に送出される。これでは、輸送中の物品に異常が生じた時、たとえば、輸送者が携帯端末を稼働する時間的余裕が無いような交通事故や大地震に遭遇したり、車道沿いの火災または突然の冷風吹付・集中豪雨などによる急激な温度や湿度などの環境変化が発生した場合には、その時の物品情報、位置情報および環境情報が出荷人および/または荷受人に送信できない場合があるため、異常発生時の物品の所在位置、安全性、保全性の確認および異常発生後の迅速な対応を行うという当初の目的が十分に達成されない虞がある。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、輸送中の平常時はもちろん、異常時も物品の所在位置、安全性、保全性の確認ができ、異常時には迅速な対応を行うことができる物品輸送管理方法およびシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る物品輸送管理方法は、一側面において、次の工程を含むことを特徴とする。(請求項1)
(a)通箱に物品を収容する工程。
通箱は、その通箱内に収容されている物品からその物品に関する情報である物品情報を読み取る読取手段と、その読取手段により読み取った物品情報を記憶部に記憶する記憶手段と、通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つを検知して環境情報を出力する環境センサと、記憶部に記憶されている物品情報、測位手段が出力する位置情報および環境センサが出力する環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段とを有するものである。物品は、その物品に関する物品情報を読取手段により読み取り可能に有する。
(b)通箱内に収容されている物品から読取手段により物品情報を読み取って記憶する工程。
(c)記憶されている物品情報および環境センサが出力した環境情報を送信手段により電気通信回線を介して物品管理装置に送信する工程。
(d)物品管理装置において、受信した物品情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程。
(e)通箱内の物品に異常が発生したと判定した場合に、物品管理装置にその事実を表示または記録する工程。
【0010】
本発明に係る物品輸送管理方法は、他側面において、次の工程を含むことを特徴とする。(請求項2)
(a)通箱に物品を収容する工程。
前記通箱は、その通箱内に収容されている物品からその物品に関する情報である物品情報を読み取る読取手段と、その読取手段により読み取った前記物品情報を記憶部に記憶する記憶手段と、前記通箱の現在位置を測定して位置情報を出力する測位手段と、前記通箱の衝撃、前記通箱内の温度または湿度の少なくとも一つの環境を検知して環境情報を出力する環境センサと、前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力する位置情報および前記環境センサが出力する環境情報を出荷人および/または荷受人の物品管理装置に送信する送信手段とを有するものである。前記物品は、その物品に関する前記物品情報を前記読取手段により読み取り可能に有する。
(b)前記通箱内に収容されている前記物品から前記読取手段により前記物品情報を読み取って前記記憶部に記憶する工程。
(c)前記記憶部に記憶されている物品情報、前記測位手段が出力した位置情報および前記環境センサが出力した環境情報を前記送信手段により電気通信回線を介して前記物品管理装置に送信する工程。
(d)前記物品管理装置において、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて前記通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程。
(e)前記通箱内の物品に異常が発生したと判定した場合に、その事実を表示または記録し、併せてその判定をした時の位置情報を記録する工程。
【0011】
上記物品輸送管理方法は、物品管理装置において、受信した物品情報、位置情報および環境情報を記憶し、物品情報または環境情報に基づいて通箱内の物品に異常が発生したか否かを判定する工程は、物品情報に基づいていずれかの物品の滅失の有無を判定し、位置情報に基づいて通箱の現在位置を把握し、環境情報に基づいて通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を外れたか否かを判定することを含む。(請求項3)
「物品の滅失」には、物品が通箱から取り出された場合のほか、物品の破壊などにより読取手段が物品から物品情報を読み取ることができなくなった場合、読み取った物品情報を記憶する記憶手段に故障が生じた場合が含まれる。
【0012】
上記物品輸送管理方法には、物品が滅失したと判定した時およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を外れた場合は、物品管理装置において、その時の通箱に収容されている物品の代替品の出荷を要請する工程を含むことが望ましい。(請求項4)
【0013】
上記物品輸送管理方法は、一側面において、記憶部に記憶されている物品情報、測位手段が出力した位置情報および環境センサが出力した環境情報を常時送信手段により電気通信回線を介して物品管理装置に送信し、その物品管理装置において、通箱から受信した物品情報に基づいて物品の滅失の有無を判定し、通箱から受信した位置情報に基づいて通箱の現在位置を把握し、通箱から受信した環境情報に基づいて通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を超えたか否かを判定し、物品の滅失が生じた場合、およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を超えた場合に、その事実を表示または記録する。(請求項5)
【0014】
物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは許容値を超えたときの位置情報をも表示または記録することが好ましい。(請求項6)
【0015】
上記物品輸送管理方法は、他側面において、物品管理装置の機能と同様の機能を有する別の物品管理装置を通箱側に備え、その通箱側の物品管理装置により受信した物品情報に基づいて物品の滅失の有無を判定し、受信した環境情報に基づいて通箱の衝撃、通箱内の温度または湿度の少なくとも一つが許容値を超えたか否かを判定し、物品の滅失が生じた場合、およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を超えた場合に、物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を超えた時の位置情報を物品管理装置に送信し、その物品管理装置において物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を超えた時の状況内容および位置情報を表示または記録するようにしてもよい。(請求項7)
この方法によれば、通信コストの大幅な削減が可能である。
【0016】
物品の滅失が生じたと判定した時およびまたは通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つが許容値を超えた時の状況内容に加えて、位置情報をも表示または記録することが好ましい。(請求項8)
【0017】
本発明に係る物品輸送管理方法は、一実施の形態においては、(a1)通箱の少なくとも1対の対向する内壁面に設けられた内部通信用アンテナと電源とを含むRFIDリーダライタと、通箱の衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つの状況を検知する環境センサと、RFIDリーダライタに接続された通信機とを有する前記通箱を用意し、(b1)RFIDタグを備えた1つ以上の物品を、RFIDタグが通箱の内部通信用アンテナの少なくとも1つに対面するように通箱に収容し、(c1)RFIDリーダライタの内部通信用アンテナと物品のRFIDタグのアンテナとの間で通信させて前記RFIDタグに記録されている物品に関する情報である物品情報をRFIDリーダライタで読み取って記憶し、(d1)環境センサの検知信号が許容値を超えた場合に、RFIDリーダライタに記憶された物品情報を通信機から無線通信回線を経て物品管理装置に送信することを含む。(請求項9、請求項10)
【0018】
環境センサの検知信号が許容値を超えた場合に、RFIDリーダライタに記憶された物品情報を通信機から無線通信回線を経て物品管理装置に送信するには、環境センサからの出力が許容値を超えた場合にRFIDリーダライタに記憶された物品情報を読出して、その時の位置情報とともに通信機に与えるようにしてもよいし、RFIDリーダライタに記憶された物品情報を常時読み出して通信機に与え、環境センサの検知出力が許容値を超えた場合に通信機に物品情報を位置情報および環境情報とともに送信させるようにしてもよい。(請求項11)
【0019】
本発明に係る物品輸送管理システムは、RFIDタグが取り付けられた物品と、物品を収容する通箱と、通箱に設けられたRFIDリーダライタと、通箱に備えられた、衝撃、通箱内の温度、湿度の少なくとも一つを検知する環境センサと、通箱に設けられた測位手段と、通箱に備えられた通信機とを有し、通箱は、物品をRFIDタグのアンテナが内部通信用アンテナに対面するように保持するものであり、RFIDリーダライタは、通箱の内壁面に設けられた内部通信用アンテナと電源とを含み、通箱内に収容された物品のRFIDタグと順次通信して各物品の物品情報を読み取るものであり、測位手段は通箱の現在位置を測定するものであり、通信機は、RFIDリーダライタがRFIDタグから読取った物品情報、環境センサが出力する環境情報および測位手段が出力する位置情報を無線通信回線を経て物品管理装置に送信するものである、ことを特徴とする。(請求項12)
【0020】
前記通信機は、環境センサの検知出力が許容値を超えた場合に、RFIDリーダライタがRFIDタグから読取った物品情報および測位手段が出力する位置情報を送信するものとしてもよい。(請求項13)
環境センサの検知出力が許容値を超えた場合に、物品情報を物品管理装置に送信するためには、環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時に、通信機にRFIDリーダライタから与えられている物品情報の送信を開始させる通信制御部を備えるようにしてもよい。(請求項14)
通信制御部は、環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時のみ一定時間、通信機の送信を可能にするものであってもよい。(請求項15)
【0021】
また、前記環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時、物品情報を物品管理装置に送信するためには、環境センサからの検知信号の出力レベルが許容値を超えた時にRFIDリーダライタにRFIDタグから物品情報を読取らせる駆動部を備え、通信機に前記RFIDリーダライタから与えられる物品情報を送信させるようにしてもよい。(請求項16)
【0022】
上記環境情報を出力する環境センサは、衝撃センサ、温度センサ、湿度センサなどの少なくとも一つである。
【0023】
上記物品輸送管理システムにおいて、通箱に蓋の開閉を検知する開閉センサを設けるとともに、開閉センサが蓋の開閉を検知した時刻と開閉した累積回数の少なくとも一方(開閉情報)を記録する制御部を備え、通信機は物品情報に記録された開閉情報を付加して送信することが好ましい。(請求項17)
【0024】
さらに、上記物品輸送管理システムには、通箱に、出荷時に計時を開始し、回収時に輸送に要した時間を計測し、記録する輸送時間管理手段を付加することが望ましい。(請求項18)
【発明の効果】
【0025】
請求項1に係る発明によれば、輸送中に物品の物品情報が箱の出荷人および/または荷受人の物品管理装置に随時送信されるので、出荷人および/または荷受人は輸送中の物品の存否、安全性、保全性等を迅速に確認することができる。また、輸送中に物品に異常が生じた場合は、そのことが物品管理装置に迅速に表示または記録されるので、迅速に代替品の出荷の要否を判断することができる。したがって、事故発生後の迅速適切な対応が可能である。
【0026】
請求項2に係る発明によれば、輸送中に物品に異常が生じた場合、異常の原因が物品の滅失か、衝撃、温度、湿度のいずれの環境であるかを出荷人および/または荷受人が知ることができる。請求項3に係る発明によれば、異常が発生した位置はどこかを出荷人および/または荷受人が知ることができる。
【0027】
請求項4に係る発明によれば、輸送中に物品に異常が生じた場合、出荷人および/または荷受人は、迅速に代替品の出荷を指示することができる。また、異常が生じた場合にのみ物品情報を送信させると、通信コストの削減と、物品状況確認の労力軽減の効果が得られる。
【0028】
請求項5に係る発明によれば、出荷人および/または荷受人において、常に輸送中の物品の所在位置、異常発生の有無を知ることができる。請求項6に係る発明によれば、異常発生時の物品の位置を知ることができる。
【0029】
請求項7、8に係る発明によれば、通箱の出荷人および/または荷受人ばかりでなく、通箱の運送者も、通箱内の物品の所在位置、滅失の有無、環境状態を知ることができる。
【0030】
請求項9、10に係る発明によれば、通箱内の物品の収容位置に関わりなく、全ての物品について漏れなく存在を検知することができる。
【0031】
請求項11に係る発明によれば、環境センサからの出力が許容値を超えた場合にRFIDリーダライタに記憶された物品情報を読出して、その時の位置情報とともに通信機に与えるか、RFIDリーダライタに記憶された物品情報を常時読み出して通信機に与え、環境センサの検知出力が許容値を超えた場合に通信機に物品情報を位置情報および環境情報とともに送信させるから、物品に異常が発生した時は、通箱内の物品の欠損状態または欠損状態とともに異常発生時の通箱の所在位置および環境変化の内容を出荷人および/または荷受人において知ることができる。
【0032】
請求項12に係る発明によれば、出荷人および/または荷受人は、輸送中の平常時の物品の存在位置、安全性、保全性等を迅速に確認することができ、輸送中に物品に異常が生じた場合は物品の欠損状態または欠損状態とともに異常発生時の通箱の所在位置および環境変化の内容を知ることができ、かつ、迅速に代替品の出荷の要否を判断して、異常発生後の迅速適切な対応が可能な物品輸送管理システムを提供することができる。
【0033】
請求項13に係る発明によれば、環境センサの検知出力が許容値未満の場合は、通信機が送信しないので、通信費の削減効果が得られる。
【0034】
請求項14および15に係る発明によれば、通信機と物品管理装置との間の不要な通信を回避し、通信コストの削減効果が得られる。
【0035】
請求項16に係る発明によれば、各物品のRFIDタグとRFIDリーダライタとの間の不要な通信を回避することができる。
【0036】
請求項17に係る発明によれば、通箱の出荷時から回収時までの間の、通箱の蓋の開閉情報を送信することにより、出荷人または荷受人が輸送される物品の安全性が脅かされなかったか否かを知ることができる。
【0037】
請求項18に係る発明によれば、物品の輸送に要した時間を管理することができるので、物品の品質低下の有無を容易に判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施の形態に係る物品輸送管理方法の使用の際に用いられる要素を模式的に示す概念図である。
図2】同方法において用いられる通箱の一例の縦断面図である。
図3A図2の通箱に備えられるRFIDリーダライタの構成および物品情報送信系の一例を示すブロック図である。
図3B図2の通箱に備えられるRFIDリーダライタの構成および物品情報送信系の他例を示すブロック図である。
図4図2の通箱により輸送される物品の一例を示す斜視図である。
図5図2の通箱により輸送される物品に取付けられるRFIDタグの構成の一例を示すブロック図である。
図6】物品管理装置の構成の一例を示すブロック図である。
図7】本発明の実施の形態に係る物品輸送管理方法の工程を説明するフローチャートである。
図8】通箱の対向する2対の内壁面にRFIDリーダライタの内部通信用アンテナが設けられている場合の物品のRFIDタグとRFIDリーダライタとの間の通信可能性を説明する図である。
図9】物理的保温手段が設けられている場合の通箱の縦断面図である。
図10図9の通箱の横断面図である。
図11】通箱に電気的保温手段が設けられている場合の通箱の蓋の要部の縦断面図である。
図12】通箱の衝撃検出記録手段の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
続いて、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0040】
[構成]
<通箱>
本発明に係る物品輸送管理方法を使用するには、まず、図1に模式的に示すように、出荷人または運送会社が通箱1を用意する。通箱1は、図2に示すように、物品を収容するための収容空間2を有する本体3と、その本体3の収容空間2の上面を密閉する蓋4とを有する。蓋4は、図示の例では、本体3に対してヒンジ(図示省略)により開閉可能に結合されている。しかし、蓋4は、ヒンジを有しない、本体3から分離可能なものであってもよい。物品の安全性確保のため、蓋4には、所定の鍵を有する管理者(輸送者を含む。)がその鍵を用いないと開錠されない錠5を備えることが望ましい。また、通箱1は、蓋4の上面に取付けられている手提げ用取っ手6を持って、または、図示されていないベルトなどを肩に掛けて、水平状態で移動することができる。
【0041】
通箱1は、図2図3Aに示すように、RFIDリーダライタ7を備えている。このRFIDリーダライタ7は、電源7aから制御基板7bへの電源供給のON/OFFをするためのスイッチ7cと、通箱1の本体3の内壁面2aに設けられた内部通信用アンテナ7dとを含む。RFIDリーダライタ7の制御基板7bには、通信機8aが有線又は無線で接続されている。
【0042】
電源7aには、できるだけ軽量なバッテリ、たとえば、リチウムイオン電池、アルカリ電池、ニッケル電池等が使用されている。制御基板7bは、マイクロコンピュータで構成れた制御部7、データ記憶部7、データ処理部7が搭載されている。
【0043】
内部通信用アンテナ7dは、後述されるように、通箱1に収容される物品11に取付けられているRFIDタグ12との間で無線通信を行なうためのアンテナであり、パッシブ型のRFIDタグ12に対して電力を供給するとともに、RFIDタグ12のアンテナから発信される、各物品11に関する情報である物品情報を受信する。
【0044】
また、内部通信用アンテナ7dは、通箱1の本体3の少なくとも1つの内壁面2aに設けられていればよいが、物品11が比較的細い円筒状または多角筒状である場合は、互いに対向する2対の内壁面2a1~2a4に設けられる。そして、本体2の各側壁の中にカプラー調整部7ac1~7ac4(図2参照)が設けられ、各カプラー調整部は制御部7に接続されて、4個の内部通信用アンテナ7a1~7a4を順次有効化させる。
【0045】
データ処理部7は、複数の内部通信用アンテナ7aを介して、通箱1に収容されている後記物品11のRFIDタグ12から受信した物品情報同士を比較し、同一のRFIDタグから複数の情報を読み取った場合は、最も明確な一つの情報のみをデータ記憶部7に保持し、他の情報を消去する。
【0046】
そして、RFIDリーダライタ7の内部通信用アンテナ7dが通箱1に収容されている後記物品11のRFIDタグ12以外からの不要な電磁波(ノイズ)を受信することを避けるため、また、物品11のRFIDタグ12から出される電波の通箱1外への漏出を防止するため、通箱1の本体2および蓋3の中に既知の電磁波シールド材9が設けられている。
【0047】
RFIDリーダライタ7の制御部71は、制御部71に内蔵したタイマを用いてデータ記憶部7の物品情報を定期的に読み出し、通信制御部8bに出力する。通信制御部8bには通箱1に備えられた環境センサSが結合されている。この環境センサSは、通箱1に収容されている物品に、破損、品質悪化などの異常を生じさせる環境変化が発生したときにこれを検出するものである。環境センサSは、たとえば、衝撃センサ(加速度センサ)、温度センサ、湿度センサなどの少なくとも一つである。環境センサSは、検知出力レベルが予め設定されている許容値を超えた時、または許容値から外れた時に、その検知信号を環境情報として出力して通信制御部8aに与える。通信制御部8aには、通箱1に備えられた通信機8bが接続されている。こうして、通信制御部8aは、環境センサSから検知信号を入力した時、一定時間、通信機8bによる物品情報および環境情報の送信を可能にする。
【0048】
通信機8bは、図2に示すように、通箱1の蓋4の上面に設けた外部通信用アンテナ8dを用いてもよい。RFIDリーダライタ7と通信機8bとは、制御基板7bに設けたコネクタにUSBケーブルを結合するようにしてもよい。
【0049】
通信機8bは、インターネット回線を経て出荷人および/または荷受人の物品管理装置A,Bに物品情報および環境情報を送信することができる。通信機8bは、SIM(subscriber identification module)を有し、インターネット回線に直接アクセスできる。通信機8bからクラウド(図示せず)に送信し、物品管理装置A,Bからそのクラウドにアクセスして物品情報および環境情報を受信するようにしてもよい。
【0050】
図3Bは、RFIDリーダライタ7が物品11のRFIDタグ12から読み取った物品情報を通信機8bから送信する他の構成例を示す。すなわち、環境センサSに駆動部8cを接続し、環境センサSから検知信号が駆動部8cに与えられた時、駆動部8cはRFIDリーダライタ7にRFIDタグから物品情報を読取らせる。通信機8bは、RFIDリーダライタ7から与えられる物品情報および環境情報を送信する。
【0051】
環境センサSが特定の異常を検知した時にRFIDリーダライタ7にRFIDタグから物品情報を読取らせ、その物品情報を環境情報とともに通信機8bから物品管理装置A,Bに送信するようにした場合は、異常発生時点における通箱1内の物品の状況をリアルタイムで知ることができるので、物品情報の信頼性が高く、異常発生後の対応を迅速かつ的確に行うことができる。
【0052】
通箱1には、測位手段として既知のGPS(図示省略) が備えられている。GPSは、電源7aから電力を供給されて常時、通箱1の現在位置を測定し、位置情報を出力する。その位置情報は通信機8bにより物品管理装置A,Bに送信される。送信条件については後述される。
【0053】
通箱1の本体3の収容空間2の底部には、物品保持具であるラック10が静置され、または固定されている。ラック10は、上面に開口する穴101を1個または複数個有する。穴101には、物品11を挿入することができる。物品11が比較的細い円筒状または多角筒状である場合は、穴101は、挿入された物品11を直立状態に保持することができるように形成される。そして、穴101は、好ましくは多数個がマトリックス状に配設されている。
【0054】
<物品>
この実施の形態においては、図4に例示するように、側面にRFIDタグ12が取付けられた物品11が、通箱1の中のラック10に収容され、直立状態に保持される。ラック10は、物品11の破損などにより物品から液状の中身が漏出した場合に、これを吸収できるように、吸水性を有する材料で作られていることが好ましい。
【0055】
RFIDタグ12は、図5に例示するように、アンテナ12aと、ICチップにより構成された制御部12bと記録部12cとを有する。図4に例示するように、RFIDタグ12はラベル12dに設けられ、そのRFIDタグ付きラベル12dが物品11の側面に貼り付けられる。そして、RFIDタグ12の記録部12cには、たとえば、出荷人名、物品の名称または種類、生産もしくは産出または製造日時、出荷日時、荷受人名などの物品情報が記録される。
【0056】
通常、RFIDタグ12には、出荷人に設置されている物品管理装置Aから入力された情報に基づいて、その物品管理装置Aに接続されている既知のタグ記録装置(図示省略)により物品情報の記録が行われる。しかし、タグ記録装置は、物品管理装置Aから独立した存在であってもよい。RFIDタグ12に記録された物品情報は、出荷人の物品管理装置Aにも伝送され、保存され、管理される。また、同じ物品情報は、通箱1の発送前に、通箱1の荷受人に設置されている物品管理装置Bに、インターネットCその他の電気通信回線を介して伝送され、管理される。物品管理装置A,Bは、後述されるように、ほぼ同様のコンピュータで構成されている。
【0057】
<物品管理装置>
出荷人の物品管理装置Aは、図6に示すように、通信部21と、信号分析部22と、出荷時物品情報記憶部23と、出荷後物品情報記憶部24と、照合部25と、位置情報記憶部26と、環境情報記憶部27と、表示部28とを備えている。
【0058】
通信部21は、インターネットを介して通箱1の通信機8bとの間で通信する。また、通信部21は、通箱1に収容されるべき全ての物品の物品情報を原始的に保有するタグ記録装置(図示せず)との間でも通信し、タグ記録装置が与える物品情報を受信する。信号分析部22は、通信機8bおよびタグ記録装置から受信する信号を分析して、物品情報、位置情報、環境情報に分け、それぞれを記憶部23,24,27に記憶する。タグ記録装置から受信する物品情報は、出荷時物品情報記憶部23に格納される。その後に通信機8bから随時受信する物品情報は、出荷後物品情報記憶部24に置換的に記憶される。
【0059】
そして、出荷時物品情報と出荷後物品情報は照合部25において照合され、いずれかの物品の物品情報に不一致が生じた場合は、その物品が破壊または滅失したと判定される。その判定結果は表示部28 に表示される。位置情報記憶部26は、常時GPSから出力される位置情報を記憶して更新する。また、その位置情報も表示部28に表示される。すなわち、通箱1の現在位置が常に表示される。
【0060】
信号分析部22が環境情報を受信すると、その環境情報は環境情報記憶部27に記憶される。すなわち、衝撃センサ(加速度センサ)、温度センサ、湿度センサなどの少なくとも一つの環境センサSが、許容値を超える衝撃、温度または湿度を検出した時は、その事実が環境情報記憶部27に記憶され、表示部28に表示される。
【0061】
[作用]
図7は、上記実施の形態の物品輸送管理方法の基本的な動作の流れを示す工程図である。基本的な工程は、物品収容工程(P1)と、物品情報読取工程(P2)と、送信工程(P3)と、異常有無判定工程(P4)と、判定結果表示・記録工程(P5)と、物品取出し工程(P6)とからなっている。以下、順次説明する。
【0062】
≪物品収容工程(P1)≫
上記の通箱1に、それぞれ物品情報が記録されたRFIDタグ付きラベルが貼り付けられた物品を収容する。収容し終えた時は、通箱1の蓋3が密閉され、施錠される。したがって、通箱1の中の物品を輸送中の盗難、紛失、加害行為などから保護することができる。
【0063】
≪物品情報読取工程(P2)≫
通箱1の施錠に続き、RFIDリーダライタ7の電源ON/OFFスイッチ7cをONすると、RFIDリーダライタ7が起動する。RFIDリーダライタ7では、制御部61が物品情報読み取りプログラムを実行させる。まず、各カプラー調整部を介して4個の内部通信用アンテナ7d1~7d4を順次有効化させる。内部通信用アンテナ7d1~7d4は、それぞれ通箱1の収容空間2の1つの内壁面から対向する内壁面に向けて電力供給波を放射する。通箱1の収容空間2に直立状態で保持されている物品のうち、電力供給波の照射を受けるアンテナ12aを有する物品11のRFIDタグ12は、電力を発生するとともに、記録部12cに記録されている物品情報を読み出して、そのアンテナ12aから通箱1のアンテナ12aに対向している内部通信用アンテナ7dに物品情報を送信する。
【0064】
図8は、通箱1の内部通信用アンテナ7d1~7d4の配置位置と、通箱1の中に収容され、直立状態で保持されている12個の物品11,11,11,~1110,1112のRFIDタグ12のランダムな向きの例を示している。1番目の物品11のRFIDタグ12は、その全面が内部通信用アンテナ7d1に対向しているので、そのRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ6a1からの電力波をアンテナ12aで受信し、記録部12cから物品情報を読み出して内部通信用アンテナ7d1に送信する。すなわち、1番目の物品11の物品情報は内部通信用アンテナ7d1を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部7に格納される。
【0065】
また、2番目の物品11のRFIDタグ12は、その全面が内部通信用アンテナ7d3側に対向しているので、そのRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ7d3からの電力波をアンテナ12aで受信し、記録部12cから物品情報を読み出して内部通信用アンテナ7d3に送信する。すなわち、2番目の物品11の物品情報は内部通信用アンテナ7d3を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部7に格納される。
【0066】
3番目の物品11のRFIDタグ12は、内部通信用アンテナ7d1側に対向しているが、3番目の物品11のRFIDタグ12よりも内部通信用アンテナ7d1に近い位置に、1番目の物品11のRFIDタグ12が全面的に内部通信用アンテナ7d1側に対向しているので、3番目の物品11のRFIDタグ12と内部通信用アンテナ7d1との間の電磁結合力が弱ぃ。これに対し、3番目の物品11のRFIDタグ12は一部が内部通信用アンテナ7d3にも対向していて、そのRFIDタグ12と内部通信用アンテナ7d3との間の電磁結合力が内部通信用アンテナ7d1との間の電磁結合力よりも強いので、3番目の物品11の物品情報は内部通信用アンテナ7d3を経てRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部72に格納される。
【0067】
同様の原理で、他の物品11,11~1112の物品情報は、各RFIDタグ12の向きにおいて最も強い電磁結合力が発生する内部信用アンテナ7d1~7d4との間の通信によりRFIDリーダライタ7に読み取られ、データ記憶部7に格納される。すなわち、内部信用アンテナ7d1~7d4を通箱1の4つの内壁面に設けたことにより、通箱1に収容された物品(RFIDタグ12)の向きに関わりなく、その物品情報の読み取りが可能であるという利点を有する。したがって、物品を通箱に収容する際に、その物品のRFIDタグ12の向きに注意を払う必要がないので、物品収容能率が高い。また、いずれの物品も、物品情報読み取り漏れが生じることがない。
【0068】
上記のように、RFIDリーダライタ7の電源ON/OFFスイッチ7eをONすると、通箱1内の物品の物品情報が瞬時に読み取られ、データ記憶部7に格納される。収容されている全ての物品からの物品情報の読み取りを終了したときは、通箱1の外面、たとえば、蓋4の上面に設けた表示手段(図示省略)により、読み取り終了を表示することが望ましい。
【0069】
≪送信工程(P3)≫
物品情報の読み取り終了に続き、RFIDリーダライタ7の制御部7は、データ記憶部7に格納されているその通箱1の中の物品の物品情報を呼び出し、これを通信機8bに出力する。通信機8bは受信した物品情報を、インターネット等Cを介して所定の送信先に送信する。その送信先の一つは、通箱1の出荷人の物品管理装置Aであり、もう一つは、通箱1の荷受人の物品管理装置Bである。
【0070】
≪異常有無判定工程(P4)≫
出荷人の物品管理装置Aは、通信機8bから随時受信する物品情報を出荷後物品情報記憶部24に置換的に格納する。出荷後物品情報記憶部24に置換的に格納された出荷後物品情報は、照合部25により出荷時物品情報記憶部23に格納されている出荷時物品情報と照合される。照合の結果は、表示部29に表示される。これにより、物品収納工程を終了した時点の表示部28に「一致」または[不一致]のいずれが表示されたかにより、通箱1に所定の物品が指示通り収容されたか否かを確認することができる。また、荷受人の物品管理装置Bは、出荷時点に、すなわち、通箱1が荷受人に到着する前に物品情報を受信するので、荷受人は通箱1が到着するまでの間に十分な時間的余裕をもって検品・分析などの準備を始めることが可能である。
【0071】
所定の物品が収容された通箱1の輸送が開始されると、RFIDリーダライタ7は、たとえば数十秒間隔、または数分間隔でRFIDタグ12の物品情報、GPSの位置情報、および環境センサSの環境情報を読み取り、通信機8aに出力するので、通信機8aはこれらを物品管理装置A,Bに送信する。
【0072】
物品管理装置A,Bにおいては、輸送途中に送信機8bから送信され、物品管理装置に表示された物品情報を見て、通箱1中の物品の保存状態を確認することができる。
【0073】
輸送途中で、輸送車が交通事故に遭い、または大地震などにより通箱1内の物品が破損した場合は、RFIDリーダライタ7は全部または一部の物品のRFIDタグ12から物品情報を読み取ることができないので、物品管理装置A,Bでは受信する出荷後物品情報が出荷時物品情報と一致しなくなることにより、照合部25 は異常が発生した物品を識別し、その識別信号に基づき、表示部29に異常を発生した物品が表示される。表示部29には記録部を含むことができる。
【0074】
≪判定結果表示・記録工程(P5)≫
物品が破壊した時は、環境センサSが許容値を超える検知信号を出力するので、その信号は環境情報記憶部27に記憶されて異常発生と判定され、表示部28に異常発生が表示・記録される。また、異常発生時の位置情報も表示部28に表示・記録される。
【0075】
通箱1内の温度又は湿度が許容値を超えたことが温度センサまたは湿度センサにより検知された場合にも、環境情報記憶部27に記憶され、異常発生がその時の位置情報とともに表示部28に表示・記録される。
【0076】
通箱1が荷受人に到着した時点にも、通信機8bは、データ記憶部7から呼び出された物品情報を、物品管理装置A,Bに送信する。これにより、出荷人および荷受人は、通箱1を開けずに表示部29の表示内容を見て、出荷時に通箱1に収容された物品が無事に荷受人に届いたか否かを確認することができる。
【0077】
物品の破損の程度によっては、RFIDタグ12の物品情報の読取りが不可能になる。したがって、出荷人および/または荷受人で受信された情報の中にその物品情報が欠落していることから、所要の物品の到着不能が予測可能であるので、出荷人は迅速に代替品の出荷を準備することができる。あるいは、荷受人が出荷人に対して代替品の出荷を速やかに要請することができる。
【0078】
[第1の実施の形態の拡張例 その1]
輸送される物品には、通箱1内の温度の上昇により品質が悪くなるものがある。鮮魚、生鮮野菜、生菓子、検体などはその一つである。そこで、このような物品の輸送に供される通箱1には、通箱1の収容空間内温度を一定の低い温度に保つ手段(保温手段)が備えられている。図9は、通箱1Aの蓋3に開閉可能な保冷剤収容部13を形成し、その保冷剤収容部13に保冷剤14を交換可能に収容できるようにした物理的保温手段の例を示している。
【0079】
保温手段を備えた通箱1Aには、図9および図10に示すように、本体3および蓋4に断熱材15が備えられることが好ましい。通箱1Aの一番外側には、軽くて硬い金属、たとえばアルミニウム板1aが設けられ、その内側に断熱材15が設けられ、断熱材15の内側にカプラー調整部7dc1~7dc4が設けられ、通箱1Aの一番内側には、内部信用アンテナ7d1~7d4が設けられている。
【0080】
図9および図10に例示された断熱材15には、衝撃吸収ウレタンフォーム15aと、発泡スチロール15bと、真空断熱材15cとを積層して用いられている。また、発泡スチロール15bの間に電磁波シールド材8が設けられている。しかし、衝撃吸収ウレタンフォーム15a、発泡スチロール15bおよび真空断熱材15cの配置順序は任意である。
【0081】
図11は、通箱1Aの保温手段として電気的保温手段16を用いる例を示す。この電気的保温手段16は、蓋4に設けられ、電源としてのバッテリ16aと、ペルチェ素子16bと、バッテリ16aからペルチェ素子16bに与えられる電流を制御する制御基板16cと、ペルチェ素子16bの上下両側に配置され、それぞれ反対方向に送風するファン16d,16eと、ファン16d,16eに駆動電源を供給するバッテリ16fとを有する。ペルチェ素子16bは、電源を与えられると、上面に温熱を発生し、下面に冷熱を発生する。そして、温熱はファン16dにより蓋4の外方に放散され、冷熱はファン16eにより通箱1の収容空間2に流下される。
【0082】
通箱1Aの収容空間2内の温度は、常に一定とは限らず、通箱1Aの外気温で変動する可能性がある。その変動を阻止するため、収容空間2内の温度を測定する温度センサ(図示省略)を設け、測定温度が制御基板16cの制御部による設定温度からずれた場合は、その制御部がペルチェ素子16bに与える電流を測定温度が設定温度と等しくなるように制御するようになっている。
【0083】
電気的保温手段16に、何らかの故障、たとえばバッテリ16a、16fまたはペルチェ素子16bのいずれかに不具合が発生して、収容空間2内の温度が物品の品質等に影響を与える程度に上昇した場合に、その事実を検証できるようにするため、上記温度センサの測定温度を時系列的に記録しておくことが好ましい。
【0084】
このような温度記録手段を備えた場合は、通箱1Aの輸送中または検査機関に到着後に、通信機8を介してその記録された測定温度を読み取り、出荷人または/および荷受人の物品管理装置A,Bに送信して、記録内容から温度の異常上昇の有無、したがって、また、物品の品質悪化の有無を確認することができる。したがって、物品の保全性の確認に資することができる。
【0085】
電気的保温手段16には、加温手段と冷却手段の両方を備え、かつ、収容空間2内の測定温度が通箱に収容される物品の保存適温よりも所定範囲以下に下がったとき、または所定範囲以上に上がった時に、それぞれ加温手段と冷却手段を作動させる制御部を備えてもよい。
【0086】
第1の実施の形態の拡張例その1は、通箱1Aに温度管理手段を設けたものであるが、収容される物品によって、温度管理手段に加えて、または温度管理手段に代えて、加湿と除湿を行い、湿度を調整する湿度管理手段を設けてもよい。
【0087】
[第1の実施の形態の拡張例 その2]
輸送中の通箱1に何らかの衝撃が加わったとき、たとえば、輸送車の交通事故、悪路走行による衝撃、あるいは通箱の落下などが生じた場合は、通箱1に収容されている物品に破損、漏れなどが発生する場合があり得る。物品に破損または中身の漏れが生じた場合は、速やかな代替品の輸送が望まれる。しかし、従来の物品輸送管理方法では、このような輸送中の物品の破損などを知る術はなく、したがって、輸送中の物品の破損などに基づく迅速な物品の再生産などおよび再輸送の対応を行うこともなかった。
【0088】
本発明の好ましい実施の形態の一つとして、図12に例示するように、通箱1Bの本体3または蓋4のいずれかに、通箱1Bに加わる衝撃を検知し記録する手段17が備えてある。この衝撃検知記録手段17は、たとえば、加速度センサからなる衝撃センサ17aと、その衝撃センサ17aが出力する測定値(衝撃度)が所定の閾値を超えた場合に測定値を出力する処理手段17bと、その測定値を記録するデータ記録部17cとを含む。データ記録部17cは、RFIDリーダライタのデータ記録部7で兼ねてもよい。そして、輸送者は、通箱に衝撃が加わった時、または通箱が荷受人に到着した時に、通信機8bによりデータ記録部18または7から衝撃情報を読み出して、出荷人または/および荷受人に送信する。これにより、出荷人は出荷された通箱1Bの物品に衝撃による異常の発生した可能性を知ることができるので、迅速に物品の再生産などおよび再輸送の準備をすることができる。また、荷受人は届いた通箱の中を見て、物品の破損状況を確認し、必要な場合は、出荷人に対して物品の再生産などおよび再輸送の要請を行うことができる。
【0089】
[第1の実施の形態の拡張例 その3]
さらに、本発明の好ましい実施の形態においては、通箱1、1A、1Bのいずれか、または全てに、GPSなどの測位手段と時計が設けられる。そして、その測位手段により取得される通箱の所在位置データが、その時の時刻データとともに、通信機8bから送信される。したがって、出荷人または/および荷受人に、その通箱がいつ、どこに存在するかを送信することができるから、輸送中の通箱の現在位置と安全性と保全性を確認することができる。また、通箱1Bの物品に衝撃による異常が発生したときは、異常発生時刻と異常発生位置を送信することができる。これは、たとえば通箱1Bで危険度の特に高い物品等を輸送する場合などの各種対策に有効である。
【0090】
[第1の実施の形態の拡張例 その4]
好ましい実施の形態においては、通箱に、蓋4の開閉を検知する開閉センサが設けられる。また、RFIDリーダライタ7の制御部7には、開閉センサが蓋4の開閉を検知した時刻と開閉した累積回数(開閉情報)を記録し、かつ、通信機8bを介して開閉情報の伝送を求められた時に、開閉情報を伝送する機能が付加されている。
【0091】
これにより、通箱の出荷時から回収時までの間の蓋4の開閉痕跡(開閉時刻および開閉回数等)の送信または記録を可能にして、輸送される物品の安全性が脅かされなかったか、否かを確認することができる。開閉の痕跡がない場合は、輸送中に物品の安全性が脅かされなかったことを保証することができる。
【0092】
[第1の実施の形態の拡張例 その5]
また、RFIDタグから読み取った物品情報が部外者により不正に取得されることを防止するため、通箱の通信機8bは、通箱に設けられた通信許可スイッチ(図示省略)が操作されてON状態にある時のみ、有効にすることが望ましい。
【0093】
[他の実施の形態]
以上には、収容される物品がすべて同一または類似の形状、大きさのものである場合の適用例を説明したが、収容される物品の形状、大きさには限定されない。そして、通箱は、被収容物品の大きさや数あるいは形状などに応じて、小型から大型まで様々なものを用いることができる。また、温・湿度管理が必要な物品、温・湿度管理を必要としない物品の輸送管理にも適用することができる。鮮魚、生鮮食料品などは、1個または複数個を樹脂シートパックに収容される。したがって、樹脂シートパックに物品情報が記録されたRFIDタグ付きラベルが貼り付けられ、電気的保温手段(冷却手段)を備えた通箱に収容して輸送される。物品の種類により、適温・湿度が異なることが多いので、冷却温度・湿度を物品に応じて適宜設定できる冷却手段や加湿手段を用いると良い。
【0094】
同じ通箱1を他の物品の輸送に用いる場合は、物品保持具は、ラック10の代わりに、物品の収容・保持に適する任意の形の穴、凹部または溝を有するものを交換可能に、本体3の収容空間2の底部に交換可能に静置または固定することが良い。
【0095】
温・湿度管理を必要としない物品の輸送に用いられる通箱には、保温手段を設けない。しかし、保温手段を備えた通箱に保温手段のON/OFFスイッチを設けた場合は、その通箱を温・湿度管理が必要でない物品の輸送に用いることもできる。これらの物品には、物品を収容する、または包装するラッピングなどにRFIDタグラベルが貼り付けられる。また、通箱の収容空間の底部には、その物品の安定した保持に適するトレイ、受け座などを備えるとよい。さらに、通箱の内部通信用アンテナは、その通箱に収容される物品の数や形状に応じて、物品のRFIDタグとの間で確実に通信が可能な数が設けられる。
【0096】
本発明は、医療機関で採取される検体を検査機関まで輸送する場合に適用するのに好適である。検体とは、検査の対象となる血液、髄液、穿刺液、膿、尿、大便などである。採取された検体は試験管に収容され、輸送用の容器に収容されて輸送される。この場合、検体が収容された試験管、すなわち一次容器は、輸送される物品に相当し、一次容器が収容される二次容器、すなわち輸送用の容器は、通箱に相当する。RFIDタグ付きラベルは、試験管の側面に貼り付けられ、RFIDタグには、物品情報に相当する検体情報として、たとえば、これに限定されないが、医療機関名、被検査者名、検体の種類、採取日時、出荷日時、検査機関名などが記録される。
【0097】
輸送される物品には、直射日光を避けることが望まれるものがある。たとえば、直射日光によりビリルビン、ビタミンC、ボルフィリン、葉酸、KC活性等が低下する物品である。このような物品を収容する通箱には、遮光性等の光管理が可能な材質、構造のものが使用される。
【0098】
さらに、品質、鮮度等が輸送時間に依存する物品の輸送に使用される通箱には、計時手段と記録手段を設け、出荷時に計時を開始し、回収時に輸送に要した時間を記録することにより、輸送時間の管理を行うことが望ましい。
【符号の説明】
【0099】
A 出荷人の物品管理装置
B 荷受人の物品管理装置
C インターネット
1,1A 通箱
7 RFIDリーダライタ(読取手段)
データ記憶部(記憶手段)
S 環境センサ
7d,7d1~7d4 内部通信用アンテナ
8b 通信機(送信手段)
11,11,11,~1112 物品
12 RFIDタグ
図1
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図3A
図3B
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