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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 19/04 20060101AFI20230120BHJP
   E04D 15/04 20060101ALI20230120BHJP
   E04D 5/14 20060101ALI20230120BHJP
   E04D 15/06 20060101ALI20230120BHJP
   G01M 99/00 20110101ALI20230120BHJP
【FI】
G01N19/04 B
E04D15/04 K
E04D5/14 K
E04D15/04 Z
E04D15/06 J
G01M99/00 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018174144
(22)【出願日】2018-09-18
(65)【公開番号】P2020046268
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩和
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-037359(JP,A)
【文献】特開2018-062799(JP,A)
【文献】実開昭63-035979(JP,U)
【文献】特開昭62-153458(JP,A)
【文献】特開昭59-176650(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0238428(US,A1)
【文献】特開昭61-175540(JP,A)
【文献】特開2000-218601(JP,A)
【文献】実公昭48-020075(JP,Y1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 19/04
E04D 15/04
E04D 5/14
E04D 15/06
G01M 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に対する防水シートの接合状態を検査する検査装置であって、
前記防水シートを表側から気密的に覆い、その覆った状態で前記防水シートとの間に空間を形成するフード部と、
前記空間内を減圧する操作を行う操作部を有する減圧部とを備え、
前記操作部は、前記フード部から500mm以上1200mm以下の高さに配置され、
前記フード部は、その少なくとも一部が透明性を有し、前記減圧部により前記空間内を減圧した減圧状態で、該空間内の前記防水シートの状態を視認可能であり、
前記減圧部は、前記フード部に接続され、前記空間内に連通する連通管と、
前記連通管に接続され、該連通管を介して前記空間内を吸引する吸引部とを有し、
前記吸引部は、前記連通管内で摺動するガスケットと、前記ガスケットに連結されたプランジャとを有し、
前記ガスケットの前記フード部に接近する方向への移動限界の位置である第1の位置を規制する第1の規制部と、
前記ガスケットの前記フード部から離間する方向への移動限界の位置である第2の位置を規制する第2の規制部とを有し、
前記操作部は、前記プランジャの前記ガスケットと反対側に設けられており、
前記操作は、前記ガスケットが前記第1の位置から前記第2の位置まで移動するまで行われることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
躯体に対する防水シートの接合状態を検査する検査装置であって、
前記防水シートを表側から気密的に覆い、その覆った状態で前記防水シートとの間に空間を形成するフード部と、
前記空間内を減圧する操作を行う操作部と、前記操作部の高さを調整する高さ調整部とを有する減圧部とを備え、
前記操作部は、前記フード部から500mm以上1200mm以下の高さに配置され、
前記フード部は、その少なくとも一部が透明性を有し、前記減圧部により前記空間内を減圧した減圧状態で、該空間内の前記防水シートの状態を視認可能であることを特徴とする検査装置。
【請求項3】
前記減圧部は、前記フード部に接続され、前記空間内に連通する連通管と、
前記連通管に接続され、該連通管を介して前記空間内を吸引する吸引部とを有する請求項に記載の検査装置。
【請求項4】
前記操作部は、前記連通管の前記フード部と反対側に配置されている請求項1または3に記載の検査装置。
【請求項5】
前記防水シートの状態に応じて、前記接合状態の良否の判断が可能である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項6】
前記防水シートは、円板状をなす固定部材を介して前記躯体に接合されるものであり、
前記フード部は、前記防水シートを表側から覆った状態で前記固定部材を包含する程度の大きさを有する請求項1ないし5のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項7】
前記フード部は、前記防水シートを表側から覆った状態で該防水シートと接する部分にパッキンを有する請求項1ないしのいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項8】
前記フード部は、外形形状が異なる複数種のものが用意されており、該複数種のものの中から選択して用いられる請求項1ないしのいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項9】
前記減圧状態を解消する減圧解消部を備える請求項1ないし8のいずれか1項に記載の検査装置。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項に記載の検査装置を用いて、前記接合状態を検査する検査工程を有することを特徴とする検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築物の高耐久化が求められるに伴って、多くの建築物の屋上やベランダ等において、防水シートを躯体上に敷設施工した防水構造が採用されている。防水構造では、防水シートは、円盤状の固定部材を介して、躯体に対して固定されている場合がある。また、防水シートと固定部材とは、溶着により接合されている。そして、この接合状態を検査する検査方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載の検査方法では、防水シートに対し、固定部材の周辺の部分を吸盤で吸引して、そのまま鉛直上方に向かって持ち上げて、防水シートと固定部材との接合状態の良否を判断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4197989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の検査方法では、吸盤で防水シートを持ち上げる際、作業者は、屈んだ姿勢で、すなわち、吸盤に手が届く位置までひざまずきながら、その持ち上げ作業を行わなければならず、身体への負担が大きい。
【0006】
また、特許文献1に記載の検査方法では、1つの固定部材に対する防水シートの接合状態の良否判断には、吸盤で防水シートを持ち上げる箇所は、1箇所では不十分であり、固定部材の周方向に沿って複数箇所要するため、その分、検査時間がかかるという問題もある。
【0007】
本発明の目的は、躯体に対する防水シートの接合状態を検査する際、その検査作業を迅速かつ楽に行うことができる検査装置および検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(10)の本発明により達成される。
(1) 躯体に対する防水シートの接合状態を検査する検査装置であって、
前記防水シートを表側から気密的に覆い、その覆った状態で前記防水シートとの間に空間を形成するフード部と、
前記空間内を減圧する操作を行う操作部を有する減圧部とを備え、
前記操作部は、前記フード部から500mm以上1200mm以下の高さに配置され、
前記フード部は、その少なくとも一部が透明性を有し、前記減圧部により前記空間内を減圧した減圧状態で、該空間内の前記防水シートの状態を視認可能であり、
前記減圧部は、前記フード部に接続され、前記空間内に連通する連通管と、
前記連通管に接続され、該連通管を介して前記空間内を吸引する吸引部とを有し、
前記吸引部は、前記連通管内で摺動するガスケットと、前記ガスケットに連結されたプランジャとを有し、
前記ガスケットの前記フード部に接近する方向への移動限界の位置である第1の位置を規制する第1の規制部と、
前記ガスケットの前記フード部から離間する方向への移動限界の位置である第2の位置を規制する第2の規制部とを有し、
前記操作部は、前記プランジャの前記ガスケットと反対側に設けられており、
前記操作は、前記ガスケットが前記第1の位置から前記第2の位置まで移動するまで行われることを特徴とする検査装置。
(2) 躯体に対する防水シートの接合状態を検査する検査装置であって、
前記防水シートを表側から気密的に覆い、その覆った状態で前記防水シートとの間に空間を形成するフード部と、
前記空間内を減圧する操作を行う操作部と、前記操作部の高さを調整する高さ調整部とを有する減圧部とを備え、
前記操作部は、前記フード部から500mm以上1200mm以下の高さに配置され、
前記フード部は、その少なくとも一部が透明性を有し、前記減圧部により前記空間内を減圧した減圧状態で、該空間内の前記防水シートの状態を視認可能であることを特徴とする検査装置。
(3) 前記減圧部は、前記フード部に接続され、前記空間内に連通する連通管と、
前記連通管に接続され、該連通管を介して前記空間内を吸引する吸引部とを有する上記(2)に記載の検査装置。
(4) 前記操作部は、前記連通管の前記フード部と反対側に配置されている上記(1)または(3)に記載の検査装置。
【0009】
) 前記防水シートの状態に応じて、前記接合状態の良否の判断が可能である上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の検査装置。
【0010】
) 前記防水シートは、円板状をなす固定部材を介して前記躯体に接合されるものであり、
前記フード部は、前記防水シートを表側から覆った状態で前記固定部材を包含する程度の大きさを有する上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の検査装置。
【0011】
) 前記フード部は、前記防水シートを表側から覆った状態で該防水シートと接する部分にパッキンを有する上記(1)ないし()のいずれかに記載の検査装置。
【0012】
) 前記フード部は、外形形状が異なる複数種のものが用意されており、該複数種のものの中から選択して用いられる上記(1)ないし()のいずれかに記載の検査装置。
【0016】
(9) 前記減圧状態を解消する減圧解消部を備える上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の検査装置。
【0017】
(10) 上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の検査装置を用いて、前記接合状態を検査する検査工程を有することを特徴とする検査方法。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、躯体に対する防水シートの接合状態を検査する際、その検査作業を迅速かつ楽に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の検査装置(第1実施形態)を用いた防水シートの接合状態を検査する過程(本発明の検査方法が有する検査工程)を順に示す垂直断面図である。
図2図2は、本発明の検査装置(第1実施形態)を用いた防水シートの接合状態を検査する過程(本発明の検査方法が有する検査工程)を順に示す垂直断面図である。
図3図3は、本発明の検査装置(第1実施形態)を用いた防水シートの接合状態を検査する過程(本発明の検査方法が有する検査工程)を順に示す垂直断面図である。
図4図4は、本発明の検査装置(第1実施形態)を用いた防水シートの接合状態を検査する過程(本発明の検査方法が有する検査工程)を順に示す垂直断面図である。
図5図5は、防水シートの接合状態が良である場合の一例を示す垂直断面図である。
図6図6は、図5中の矢印A方向から見た図である。
図7図7は、防水シートの接合状態が不良である場合の一例を示す垂直断面図である。
図8図8は、図7中の矢印B方向から見た図である。
図9図9は、本発明の検査装置の第2実施形態を示す垂直断面図である。
図10図10は、本発明の検査装置の第2実施形態を示す垂直断面図である。
図11図11は、本発明の検査装置(第3実施形態)が備えるフード部の変形例を示す斜視図である。
図12図12は、本発明の検査装置(第3実施形態)が備えるフード部の変形例を示す斜視図である。
図13図13は、本発明の検査装置(第3実施形態)が備えるフード部の変形例を示す斜視図である。
図14図14は、本発明の検査装置(第3実施形態)が備えるフード部の変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の検査装置および検査方法を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0021】
<第1実施形態>
図1図4は、それぞれ、本発明の検査装置(第1実施形態)を用いた防水シートの接合状態を検査する過程(本発明の検査方法が有する検査工程)を順に示す垂直断面図である。図5は、防水シートの接合状態が良である場合の一例を示す垂直断面図である。図6は、図5中の矢印A方向から見た図である。図7は、防水シートの接合状態が不良である場合の一例を示す垂直断面図である。図8は、図7中の矢印B方向から見た図である。なお、以下では、説明の都合上、図1図5および図7中(図9図14についても同様)の上側を「上(上方)」または「表」、下側を「下(下方)」または「裏」と言う。また、図2図4では、作業者を省略している。
【0022】
図1図4に示すように、躯体100には、防水構造200が施工されている。躯体100の中で、防水構造200が施工される部分としては、特に限定されず、例えば、平屋の屋根やベランダ等が挙げられ、本実施形態では、床面101を有している。なお、床面101は、図1図4中、例えば、左側から右側に向かって緩やかに傾斜して下っているのが好ましい。これにより、雨水等が傾斜方向下側に向かって流れることができ、防水構造200での排水効果が向上する。
【0023】
防水構造200は、躯体100上に敷設され、躯体100に対する防水性を有する防水シート300と、防水シート300の裏側、すなわち、躯体100と防水シート300との間に配置された固定部材400とを有している。
【0024】
防水シート300は、1枚当たり、複数の固定部材400を介して、躯体100に接合される。
【0025】
防水シート300の構成材料としては、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができるが、ポリ塩化ビニルであるのが好ましい。
【0026】
固定部材400は、円板状をなし、直径が例えば50mm~100mmの部材である。固定部材400は、例えば、ビス止めにより躯体100に固定されている。
【0027】
固定部材400は、金属板401と、金属板401の上面を被覆する被覆層402とを有している。金属板401は、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)やステンレス鋼板等の各種鋼板で構成されている。被覆層402は、例えば、ポリ塩化ビニルで構成された膜で構成されている。これにより、例えば防水シート300がポリ塩化ビニルで構成されている場合、防水シート300と被覆層402との密着性を向上させることができる。なお、防水シート300と被覆層402とは、溶着、融着(熱融着、高周波融着、超音波融着等)、接着(接着剤や溶媒による接着)等の各種接合方法により接合されている。
【0028】
このような構成の防水構造200を施工した後には、固定部材400(躯体100)に対する防水シート300の接合状態(以下単に「接合状態」と言う)の良否を検査する検査工程に移る。この検査工程では、検査装置1を用いる。
【0029】
図1図4に示すように、検査装置1は、フード部2と、減圧部3と、減圧解消部4とを備えている。以下、各部の構成について説明する。
【0030】
フード部2は、いわゆる「平場」での接合状態の検査時に、防水シート300を表側から気密的に覆うことができる(図1参照)。このとき、フード部2で防水シート300が覆われた部分では、その裏側に固定部材400が位置している。固定部材400の位置は、平面視で、できる限りフード部2の中心と重なった位置であるのが好ましい。なお、以下では、フード部2が防水シート300を表側から覆った状態を「カバー状態」と言う。
【0031】
また、フード部2は、カバー状態で、防水シート300との間に空間(減圧空間)20を形成することができる。空間20内は、減圧部3によって減圧される。
フード部2は、フード本体21と、パッキン22とを有している。
【0032】
フード本体21は、本実施形態では、半球状またはドーム状をなす。フード本体21は、その内側で空間20を画成することができる。
【0033】
また、カバー状態にあるフード本体21(フード部2)は、平面視で、固定部材400を包含する程度の大きさを有する。
【0034】
フード本体21は、内部の視認性を確保するために、透明性を有する材料で構成されている。このような材料としては、特に限定されず、例えば、ポリカーボネート等のような各種樹脂を用いることができる。
【0035】
フード部2は、カバー状態で防水シート300と接する部分に、弾性を有するパッキン22が設けられている。本実施形態では、パッキン22は、フード本体21の下側縁部211に設けられており、その縁部に沿ったリング状をなす。これにより、カバー状態で防水シート300との間に隙間が生じるのが防止され、よって、空間20内の気密性を確実に維持することができる。そして、減圧部3を操作すれば、空間20内を迅速に減圧することができる。
【0036】
パッキン22の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリウレタン系等の各種熱可塑性エラストマーを用いることができる。
【0037】
減圧部3は、カバー状態で空間20内を減圧することができる。減圧部3は、フード部2に接続された連通管31と、空間20内を吸引する吸引部32と、吸引部32を操作する操作部33とを有している。
【0038】
連通管31は、フード本体21の上部(頂部)に接続され、鉛直上方に向かって突出した硬質管である。この連通管31は、空間20内に連通している。
【0039】
連通管31には、吸引部32が接続されている。吸引部32は、連通管31内で摺動するガスケット321と、ガスケット321に連結されたプランジャ322とを有している。
【0040】
ガスケット321は、弾性を有する円柱状をなす部材で構成されている。このガスケット321の外周部が連通管31の内周部に対し密着しつつ摺動することにより、ガスケット321と連通管31との間の気密性を確実に保持することができ、よって、連通管31を介して空間20内を確実に吸引することができる。
【0041】
また、連通管31は、ガスケット321の上側への移動限界を規制する規制部311を有している。規制部311は、連通管31の内周部から突出形成された突出部で構成されている。そして、図2に示すように、ガスケット321が上側に移動した際、規制部311に当接することにより、ガスケット321の上側への移動限界が規制される。これにより、ガスケット321が連通管31から離脱するのが防止される。
【0042】
なお、図1に示すように、ガスケット321の下限位置は、操作部33が連通管31の上端312に当接することにより規制される。
【0043】
ガスケット321の上部には、棒状をなすプランジャ322が連結されている。プランジャ322は、鉛直上方に向かって延在しており、その上部で操作部33と連結されている。なお、プランジャ322と操作部33とは、一体的に形成されているのが好ましい。
【0044】
操作部33は、吸引部32の操作、すなわち、空間20内を減圧する操作を行うことができる。操作部33の形状としては、特に限定されず、例えば、平板状、棒状等とするのが好ましい。これにより、操作部33は、把持し易い部分となる。
【0045】
そして、図1に示す状態から吸引部32を操作する際には、図2に示すように、作業者Wは、操作部33を把持して、そのまま上方に向かって、すなわち、矢印α33方向に引張ることにより、その吸引操作を行うことができる。これにより、空間20内は、減圧状態となる。また、減圧状態にある空間20内では、防水シート300に対して、上方に向かった吸引力Fが作用し、防水シート300の固定部材400と接合されていない部分は、浮き上がる(図5図7参照)。
【0046】
接合状態には、図5に示す「良」の場合と、図7に示す「不良」の場合とがある。ここで、「接合状態が良」とは、固定部材400の被覆層402の上面402aのほぼ全体(例えば90%以上)が防水シート300と接合されていることを言う。「接合状態が不良」とは、固定部材400の被覆層402の上面402aが防水シート300と接合されていない、または、接合されていても、防水シート300との接合面積が上面402aの例えば90%未満のことを言う。
【0047】
そして、図6に示すように、接合状態が良の場合には、防水シート300の固定部材400と接合された部分の輪郭OL300は、固定部材400の上面402aの輪郭OL402aと同じかまたはそれに近似した形状となる。なお、図6中では、輪郭OL402aは、円形をなし、輪郭OL300も、輪郭OL402aとほぼ同じ大きさの円形をなす。
【0048】
一方、図8に示すように、接合状態が不良の場合には、防水シート300の固定部材400と接合された部分の輪郭OL300は、固定部材400の上面402aの輪郭OL402aと明らかに異なる形状となる。なお、図8中では、輪郭OL402aは、円形をなしているが、輪郭OL300は、ほぼ半月状をなしている。
【0049】
作業者Wは、透明性を有するフード本体21を介して、減圧状態の空間20内の防水シート300の状態、すなわち、輪郭OL300を視認することができる。これにより、作業者Wは、防水シート300の状態、すなわち、輪郭OL300の形状に応じて、接合状態の良否を判断することができる。
【0050】
このように、接合状態を検査する検査工程で検査装置1を用いることにより、輪郭OL300を観察するという簡単な方法で、検査作業を迅速に行うことができる。
【0051】
また、前述したように、カバー状態にあるフード本体21は、平面視で、固定部材400を包含する程度の大きさを有する。これにより、固定部材400を包含した状態で空間20内を吸引すれば、その1回の吸引で、接合状態の良否判断を正確に行うことができる。
【0052】
また、検査装置1では、操作部33は、連通管31のフード部2と反対側に配置されている。これにより、検査装置1を用いて接合状態を検査する際、操作部33を高い位置に配置することができる。この操作部33の高さH33としては、フード部2の最下点、すなわち、フード部2のパッキン22が当接する防水シート300から500mm以上1200mm以下であり、好ましくは600mm以上1100mm以下であり、より好ましくは700mm以上1000mm以下である。
【0053】
高さH33を上記数値範囲に設定することにより、作業者Wが一般的な体格の持ち主である場合、この作業者Wは、立ったまま操作部33を操作することができ、よって、楽な姿勢で検査作業を行うことができる。
なお、高さH33は、ガスケット321の位置に関わらず、この範囲内にある。
【0054】
また、連通管31、プランジャ322、操作部33の構成材料としては、特に限定されず、例えば、各種樹脂材料や各種金属材料等を用いることができる。
【0055】
減圧解消部4は、空間20内の減圧状態を解消することができる。減圧解消部4は、吸気管41と、フード部2の外側で吸気管41を開閉する切換弁42とを有している。
【0056】
吸気管41は、フード本体21の連通管31と異なる部分に接続され、鉛直上方に向かって突出した硬質管である。この吸気管41は、空間20内に連通している。
【0057】
切換弁42は、吸気管41の上部に設けられている。切換弁42を操作することにより、吸気管41を開閉することができる。これにより、図2に示すように、空間20内を減圧状態とするときには、吸気管41を閉状態とすることができる。また、図3に示すように、空間20内の減圧状態を解消するときには、吸気管41を開状態にして大気解放することができる。これにより、空気Gが吸気管41を介して空間20内に吸引される、すなわち、流入することができ、よって、図4に示すように、フード部2を防水シート300から容易に離間させることができる。
【0058】
なお、切換弁42のフード部2の最下点からの高さH42は、操作部33の高さH33と同様の数値範囲内にあるのが好ましい。これにより、作業者Wが一般的な体格の持ち主である場合、この作業者Wは、立ったまま切換弁42を操作することができる。
【0059】
次に、検査装置1の使用方法の一例について、図1図4を参照しつつ説明する。
[1] まず、図1に示すように、検査装置1を防水シート300上に載置してカバー状態とする。このとき、平面視で、フード部2が固定部材400を包含する位置に、検査装置1を配置する。
【0060】
また、操作部33が連通管31の上端312に当接しており、ガスケット321は、下限位置にある。
また、切換弁42により、吸気管41が閉状態となっている。
【0061】
[2] 次いで、図2に示すように、操作部33を把持して、そのまま矢印α33方向に引張る。この引張り操作は、ガスケット321の上限位置となるまで、すなわち、ガスケット321が規制部311で規制されるまで行われる。これにより、空間20内が減圧状態となり、防水シート300に吸引力Fが作用する。
【0062】
検査装置1では、操作部33の引張り操作は、ガスケット321が下限位置から上限位置まで移動するまで行われる。これにより、作業者Wが熟練者か否かに関わらず、防水シート300に作用する吸引力Fを一定に維持することができる。
【0063】
例えば、作業者Wが比較的初心者であり、検査装置1で操作部33の操作の限界が規制されていない場合、吸引力Fが防水シート300に過剰に作用して、防水シート300を固定部材400から剥離したり、防水シート300を破損したりするおそれがある。また、その反対に、吸引力Fが不足すると、防水シート300が浮かず、その結果、接合状態の良否判断に必要な輪郭OL300が見えづらくなり、正確な良否判断を行うのが困難となるおそれがある。
【0064】
これに対し、吸引力Fを一定に維持することができることにより、初心者にありがちなこのような不具合を確実に防止することができる。
【0065】
また、操作部33の高さH33が上記数値範囲に設定されているため、作業者Wは、立ったまま楽な姿勢で操作部33を操作することができる。
そして、前述したように、輪郭OL300を観察して、接合状態の良否判断を行う。
【0066】
[3] 次いで、図3に示すように、切換弁42を操作して、吸気管41を開状態とする。これにより、空気Gが空間20内に入り込んで、減圧状態が解消される。
【0067】
[4] 次いで、図4に示すように、検査装置1を防水シート300上から持ち上げて、検査工程を終了する。
【0068】
<第2実施形態>
図9および図10は、それぞれ、本発明の検査装置の第2実施形態を示す垂直断面図である。
【0069】
以下、これらの図を参照して本発明の検査装置および検査方法の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
本実施形態は、減圧部の構成が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0070】
図9図10に示すように、本実施形態では、吸引部32は、真空ポンプで構成されている。従って、吸引部32の作動を操作する操作部33は、吸引部32と電気的に接続された操作パネルとなっている。
【0071】
また、減圧部3は、操作部33の高さH33を段階的または無段階に調整する高さ調整部34を有している。これにより、作業者Wの体格に合わせて検査装置1を使用でき、よって、その作業者Wにとって楽な姿勢で検査作業を行うことができる。なお、高さH33は、調整前および調整後のいずれも、前記第1実施形態で述べた数値範囲内にある。
【0072】
高さ調整部34は、連通管31と吸引部32とを連結する連結管341で構成されている。連結管341は、上端部が吸引部32に固定されている。一方、連結管341は、下端側で連通管31に対して摺動する。この摺動により、高さH33が変化する。
【0073】
また、連通管31の外周部には、弾性を有するパッキン35が固定されている。これにより、連通管31と連結管341との間の気密性を維持することができるとともに、調整後の高さH33を維持することができる。
【0074】
<第3実施形態>
図11図14は、それぞれ、本発明の検査装置(第3実施形態)が備えるフード部の変形例を示す斜視図である。
【0075】
以下、これらの図を参照して本発明の検査装置および検査方法の第3実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0076】
本実施形態は、フード部の外形形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。
【0077】
本実施形態では、フード部2は、外形形状が異なる複数種のものが用意されている。そして、検査装置1では、検査箇所に応じて、これら複数種のフード部2の中から1つのフード部2を選択して用いられる。選択されたフード部2は、減圧部3に接続される。検査箇所としては、例えば、前記第1実施形態で述べた「平場」と呼ばれる部分、その他に、「入隅」と呼ばれる部分、「出隅」と呼ばれる部分等がある。
【0078】
本実施形態では、一例として、図11図14に示すフード部2が挙げられている。図11に示すフード部2は、入隅に用いられる。図12に示すフード部2は、平場に用いられる。図13に示すフード部2は、入隅に用いられる。図14に示すフード部2は、出隅に用いられる。
【0079】
このように検査装置1では、検査箇所に応じて、フード部2を使い分けることができ、よって、接合状態の検査を容易かつ正確に行なうことができる。
【0080】
以上、本発明の検査装置および検査方法を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。検査装置を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0081】
また、本発明の検査装置および検査方法は、前記各実施形態のうちの、任意の2以上の構成(特徴)を組み合わせたものであってもよい。
【0082】
また、減圧部は、前記各実施形態で述べた構成のものに限定されず、例えば、その他に、コンプレッサや掃除機、真空ポンプ、バキューム装置等で構成することもできる。
【符号の説明】
【0083】
1 検査装置
2 フード部
20 空間(減圧空間)
21 フード本体
211 下側縁部
22 パッキン
3 減圧部
31 連通管
311 規制部
312 上端
32 吸引部
321 ガスケット
322 プランジャ
33 操作部
34 高さ調整部
341 連結管
35 パッキン
4 減圧解消部
41 吸気管
42 切換弁
100 躯体
101 床面
200 防水構造
300 防水シート
400 固定部材
401 金属板
402 被覆層
402a 上面
F 吸引力
G 空気
33 高さ
42 高さ
OL300 輪郭
OL402a 輪郭
W 作業者
α33 矢印
図1
図2
図3
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図5
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