(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】電動車両のリレー診断装置
(51)【国際特許分類】
B60L 3/00 20190101AFI20230120BHJP
B60L 50/60 20190101ALI20230120BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20230120BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20230120BHJP
H01M 10/42 20060101ALI20230120BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B60L3/00 J
B60L50/60
H02J7/00 P
H02J7/00 Q
H01M10/44 P
H01M10/42 P
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2018183051
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-08-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】高木 秀寛
(72)【発明者】
【氏名】町田 彰吾
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-219873(JP,A)
【文献】特開2004-014242(JP,A)
【文献】特開2006-320079(JP,A)
【文献】特開2008-131675(JP,A)
【文献】特開2018-042370(JP,A)
【文献】国際公開第2013/073034(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 - 13/00
B60L 15/00 - 58/40
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 - 10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有する電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行
い、
前記第1リレーセットは、前記一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1システムメインリレー及び第2システムメインリレーと、前記第1システムメインリレーと並列接続された電路にプリチャージ抵抗と直列に接続されたプリチャージリレーとを含み、
前記第2リレーセットは、前記一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する2つの機器リレーを含み、
前記診断処理部は、前記システム起動の処理期間における溶着診断の際、診断対象の前記機器リレーと前記第1システムメインリレーとを遮断の制御のままとし、診断対象でない前記機器リレーと前記第2システムメインリレーと前記プリチャージリレーとを遮断から接続の制御に切り替え、その後、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査し、溶着診断の結果を得ることを特徴とする電動車両のリレー診断装置。
【請求項2】
前記診断処理部は、前記システム起動の処理期間には、前記プリチャージリレーを用いて前記第2リレーセットの溶着診断を行い、前記分岐ラインの使用終了の処理期間には、前記プリチャージリレーを用いずに前記第2リレーセットの溶着診断を行うことを特徴とする請求項1記載の電動車両のリレー診断装置。
【請求項3】
前記診断処理部は、前記分岐ラインの使用終了の処理期間における溶着診断の際、前記第1システムメインリレー、前記第2システムメインリレー及び診断対象でない前記機器リレーを接続の制御のままとし、診断対象の前記機器リレーを接続から遮断の制御に切替え、その後、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査し、溶着診断の結果を得ることを特徴とする請求項
1又は請求項
2に記載の電動車両のリレー診断装置。
【請求項4】
前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された前記電動車両に搭載される請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載の電動車両のリレー診断装置であって、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備えることを特徴とする電動車両のリレー診断装置。
【請求項5】
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記充電器を用いた充電処理の異常終了が有るか否かに基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とす
る電動車両のリレー診断装置。
【請求項6】
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記バッテリのSOCに基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とす
る電動車両のリレー診断装置。
【請求項7】
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記電動車両のシステム終了時の位置情報に基づいて前記システム起動の処理期間における前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とす
る電動車両のリレー診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動車両のリレー診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(Electric Vehicle)、HEV(Hybrid Electric Vehicle)等の電動車両は、走行モータを駆動するインバータと、走行用の電力を蓄積するバッテリとを備える。インバータとバッテリとは電源ラインを介して接続され、電源ラインには電路を開閉できるシステムメインリレーが設けられる。さらに、このような電動車両には、バッテリと接続される充電器等の機器が設けられることがある。このような機器は、電源ラインから分岐した分岐ラインに接続される。分岐ラインには機器リレーが設けられ、機器リレーを切り替えることで、機器をバッテリに接続又はバッテリから切り離すことができる。
【0003】
システムメインリレー又は機器リレーなど、電力伝送用のラインに設けられるリレーは、規定外の使用等により接点が溶着していないか適宜診断が行われるとよい。特許文献1には、メインリレーと充電リレーとを有する電源制御システムを備えた車両において、充電リレーの溶着の有無を判定する異常診断装置について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リレーの溶着診断を行う際、なんら工夫がないと、診断処理でリレーを切り替えた際、バッテリから機器へリレーを介して大きな突入電流が流れ、いずれかのリレーを劣化させる場合がある。このため、通常、リレーの診断を行う際には、診断対象のリレー又はシステムメインリレーを含む診断対象でないリレーを適宜切り替えて、診断時にいずれかのリレーに大きな電流が流れないよう診断に適した状態が作り出される。
【0006】
しかしながら、機器リレーの溶着診断を行うたびに、システムメインリレーと機器リレーとを適宜切り替えて診断に適した状態を作りだすと、溶着診断の回数分、このリレーの切り替えが行われて、リレーの総合的な切替え回数が増加するという課題が生じる。特に、一度に複数個のリレーの溶着診断を行う場合、1個目のリレーの溶着診断を行った後に複数のリレーを適宜切り替えて、機器の接続端子の状態を放電状態又は電圧が加わった状態にリセットする処理が必要になる場合がある。そして、リセットした後、2個目のリレーの溶着診断でいずれかのリレーに大きな電流が流れないよう診断に適した状態を作りだし、2個目のリレーの溶着診断を行うことになる。これらによって、リレーの切り替え回数がより増加する。リレーの総合的な切り替え回数が増加すると、リレーの寿命が低下するという課題が生じる。
【0007】
本発明は、リレーの切り替え回数の増加を抑制しつつリレーの溶着診断を行うことのできる電動車両のリレー診断装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有する電動車両に搭
載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記第1リレーセットは、前記一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1システムメインリレー及び第2システムメインリレーと、前記第1システムメインリレーと並列接続された電路にプリチャージ抵抗と直列に接続されたプリチャージリレーとを含み、
前記第2リレーセットは、前記一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する2つの機器リレーを含み、
前記診断処理部は、前記システム起動の処理期間における溶着診断の際、診断対象の前記機器リレーと前記第1システムメインリレーとを遮断の制御のままとし、診断対象でない前記機器リレーと前記第2システムメインリレーと前記プリチャージリレーとを遮断から接続の制御に切り替え、その後、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査し、溶着診断の結果を得ることを特徴とする。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の電動車両のリレー診断装置において、
前記第2リレーセットは、前記一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する2つの機器リレーを含み、
前記診断処理部は、前記システム起動の処理期間には、前記プリチャージリレーを用いて前記第2リレーセットの溶着診断を行い、前記分岐ラインの使用終了の処理期間には、前記プリチャージリレーを用いずに前記第2リレーセットの溶着診断を行うことを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の電動車両のリレー診断装置において、
前記診断処理部は、前記分岐ラインの使用終了の処理期間における溶着診断の際、前記第1システムメインリレー、前記第2システムメインリレー及び診断対象でない前記機器リレーを接続の制御のままとし、診断対象の前記機器リレーを接続から遮断の制御に切替え、その後、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査し、溶着診断の結果を得ることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の発明は、
前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された前記電動車両に搭載される請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の電動車両のリレー診断装置であって、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備えることを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の発明は、
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記充電器を用いた充電処理の異常終了が有るか否かに基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の発明は、
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記バッテリのSOCに基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の発明は、
一対の電源ラインをそれぞれ開閉する第1リレーセットと、前記一対の電源ラインから分岐した一対の分岐ラインをそれぞれ開閉する第2リレーセットとを有し、前記電源ラインに走行用の電力を供給するバッテリが接続され、前記分岐ラインに前記バッテリを充電する充電器が接続された電動車両に搭載される電動車両のリレー診断装置であって、
前記第1リレーセット及び前記第2リレーセットのいずれかのリレーを動作させ、かつ、前記一対の分岐ライン間の電圧を検査して、前記第2リレーセットの溶着診断を行う診断処理部を備え、
前記診断処理部は、前記電動車両のシステム起動の処理期間、前記分岐ラインの使用終了の処理期間、あるいは、これら両方の処理期間に、前記第2リレーセットに含まれる個々のリレーの溶着診断を行い、かつ、1回の前記処理期間に1個以内の前記リレーの溶着診断を行い、
前記充電器の使用履歴に基づいて前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを決定するスケジュール処理部を更に備え、
前記スケジュール処理部は、前記電動車両のシステム終了時の位置情報に基づいて前記システム起動の処理期間における前記第2リレーセットの溶着診断のスケジュールを変更することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
電動車両のシステム起動時には、第1リレーセット及び第2リレーセットが予め定められた切り替え状態にあり、分岐ラインに接続された機器は放電済みの状態にある。さらに、電源ラインに接続された機器は、接続端子が放電された状態から電源電圧が入力される状態に遷移する。このように、システム起動時の予め定められた状態及び予め定められた状態の遷移を利用すると、リレーの切り替え回数を抑えて、リレーに大きな電流が流れる恐れなく、第2リレーセットに含まれる1個のリレーの溶着診断を行うことができる。同様に、分岐ラインの使用終了時には、第1リレーセット及び第2リレーセットが予め定められた切り替え状態にあり、分岐ラインに接続された機器は、接続端子に電源電圧が加わった状態から放電された状態へ遷移する。このように予め定められた状態及び予め定められた状態の遷移を利用すると、リレーの切り替え回数を抑えて、リレーに大きな電流が流れる恐れなく、第2リレーセットに含まれる1個のリレーの溶着診断を行うことができる。
【0017】
そこで、本発明においては、診断処理部が、システム起動の処理期間、分岐ラインの使用終了の処理期間、又はこれら両方の処理期間を利用して、1回の処理期間に1個以内のリレーの溶着診断を行う。したがって、各回の溶着診断では、リレーの切り替え回数の増加を抑えて、リレーに大きな電流が流れる恐れがないよう、溶着診断に適した状態で、機器リレーの溶着診断を実現できる。これらの結果、総合的なリレーの切り替え回数の増加を抑制しつつリレーの溶着診断を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係るリレー診断装置を搭載した電動車両を示すブロック図である。
【
図2】スケジュール処理部が実行するスケジュール処理の一例を示すフローチャートである。
【
図3】システム起動の処理期間を利用した溶着診断処理の一例を示すタイミングチャートである。
【
図4】分岐ラインの使用終了の処理期間を利用した溶着診断処理の一例を示すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るリレー診断装置を搭載した電動車両を示すブロック図である。
【0020】
本実施形態に係る電動車両1は、EV又はHEV等である。電動車両1は、駆動輪2に動力を与える走行モータ11と、走行モータ11を駆動するインバータ12と、走行用の電力を蓄積しインバータに電力を供給するバッテリ13と、電動車両1の外部の電源を用いてバッテリ13を充電する充電器14と、ナビゲーション装置20と、制御装置30とを備える。
【0021】
バッテリ13とインバータ12とは一対の電源ラインL0を介して接続されている。一対の電源ラインL0には第1リレーセットB1が設けられている。第1リレーセットB1は、一方の電源ラインL0を接続又は遮断に切り替え可能な第1システムメインリレーSMR1と、他方の電源ラインL0を接続又は遮断に切り替え可能な第2システムメインリレーSMR2とを含む。リレーの遮断と接続は開閉と呼んでもよい。さらに、第1リレーセットB1は、第1システムメインリレーSMR1と並列接続された電路において互いに直列接続されたプリチャージリレーPR及びプリチャージ抵抗R1を含む。
【0022】
プリチャージリレーPRとプリチャージ抵抗R1は、電源ラインL0を遮断から接続に切り替える際に、バッテリ13とインバータ12又はバッテリ13と充電器14との間で大きな突入電流が流れるのを回避可能にするための構成である。例えば、第1システムメインリレーSMR1を接続に切り替える前に、プリチャージリレーPRを接続、第2システムメインリレーSMR2を接続に切り替えることで、バッテリ13からインバータ12へプリチャージリレーPRを介して電流が流れ、インバータ12の接続端子を緩やかにプリチャージできる。プリチャージの後、第1システムメインリレーSMR1を接続に切り替え、プリチャージリレーPRを遮断に切り替えることで、大きな突入電流なく、バッテリ13とインバータ12とを接続できる。
【0023】
充電器14は、一対の電源ラインL0から分岐された一対の分岐ラインL1に接続されている。一対の分岐ラインL1には第2リレーセットB2が設けられている。第2リレーセットB2は、一対の分岐ラインL1を接続又は遮断にそれぞれ切り替え可能な2つの機器リレーSRを含む。リレーの遮断と接続は開閉と呼んでもよい。第2リレーセットB2は、プリチャージリレーPR及びプリチャージ抵抗R1を含まず、充電器14の接続端子にプリチャージが必要なときには、第1リレーセットB1のプリチャージの機能を流用して、このプリジャージを実現できる。これにより、部品点数の削減及び製造コストの低減を図れる。
【0024】
バッテリ13は、例えばリチウムイオン二次電池又はニッケル水素二次電池などであり、補器又はアクセサリ機器を駆動する補器用バッテリの電圧よりも高い電圧を出力する。バッテリ13は高電圧バッテリ又は走行用バッテリと呼んでもよい。
【0025】
ナビゲーション装置20は、現在位置を測位する測位装置と、地図情報を表示する表示装置とを含み、ドライバーにルート情報を提供する。さらに、ナビゲーション装置20は、制御装置30へ測位情報を提供する。
【0026】
制御装置30は、ドライバーの運転操作に応じてインバータ12を制御して走行モータ11を駆動するモータ制御部31、バッテリ13の状態(SOC(State of Charge)、電圧、温度等)を管理するバッテリ管理部32、電動車両1のシステム全体を制御する車両制御部33を含む。車両制御部33は充電器14を介したバッテリ13の充電処理も行う。制御装置30は、複数のECU(Electronic Control Unit)を含み、複数のECUが通信により連携して各部の動作を制御する。
【0027】
制御装置30の各ECUは、CPU(Central Processing Unit)、制御プログラム及び制御データを格納した記憶装置、CPUがデータを展開するRAM(Random access memory)を含む。ECUでは、CPUが制御プログラムを実行することで複数の機能モジュールが実現される。車両制御部33に実現される機能モジュールには、第2リレーセットB2の溶着診断を行う診断処理部36と、第2リレーセットB2の溶着診断のスケジュールを設定するスケジュール処理部37とが含まれる。車両制御部33は、本発明に係るリレー診断装置の一例に相当する。
【0028】
<スケジュール処理>
図2は、スケジュール処理部37が実行するスケジュール処理の一例を示すフローチャートである。スケジュール処理部37は、電動車両1のシステム起動中、並びに、システム終了後の所定のタイミングで
図2のスケジュール処理を実行する。システム起動中とは、電動車両1の電源オン又はイグニションオンに基づき第1リレーセットB1が接続に切り替えられている期間を意味する。充電器14を介した充電処理中もシステム起動中に含まれる。システム終了後とは電動車両1の電源オフ又はイグニションオフに基づき第1リレーセットB1が遮断に切り替えられている期間を意味する。システム終了後でも、補器用バッテリから制御用の電源が供給されるため、スケジュール処理部37はスケジュール処理を実行できる。
【0029】
スケジュール処理が開始されると、スケジュール処理部37は、車両制御部33に記憶されている充電器14の使用履歴を取得する(ステップS1)。例えば、車両制御部33は、充電器14を使用したバッテリ13の充電処理を行うごとに充電の履歴情報を記憶装置に格納している。ステップS1では、スケジュール処理部37が充電の履歴情報を記憶装置から読み出すことで、充電器14の使用履歴を取得できる。
【0030】
次に、スケジュール処理部37は、充電の履歴情報から、過電圧又は過電流等により充電処理が異常終了した履歴が有るか否かを判別する(ステップS2)。
【0031】
続いて、スケジュール処理部37は、制御装置30のバッテリ管理部32により管理されているバッテリ13のSOCの情報を取得する(ステップS3)。
【0032】
さらに、スケジュール処理部37は、現在がシステム終了後であれば、システム終了時における電動車両1の位置情報を取得し、この位置情報と予め登録されている充電可能位置(自宅、充電ステーションの位置等)とを照合する(ステップS4)。位置情報は、電動車両1の停止時に車両制御部33がナビゲーション装置20から取得し、記憶装置に記憶しておくことで、ステップS4で、スケジュール処理部37がこれを利用できる。
【0033】
そして、スケジュール処理部37は、ステップS1~S4の情報に基づき、第2リレーセットB2の個々の機器リレーSRの溶着診断を行うスケジュールを決定する(ステップS5)。
【0034】
ここで、スケジュール処理部37は、機器リレーSRの溶着診断を行うタイミングを、システム起動の処理期間、充電器14の使用終了(すなわち分岐ラインL1の使用終了)の処理期間、又は、これら両方の処理期間に制限する。この処理期間のことを、以下、「特定処理期間」と呼ぶ。さらに、スケジュール処理部37は、1回の特定処理期間に1個以内の機器リレーSRの溶着診断を行うように制限する。すなわち、1回の特定処理期間にいずれか1個の機器リレーSRの溶着診断を行うか、あるいは、1回の特定処理期間に機器リレーSRの溶着診断を行わないかのいずれかに制限される。
【0035】
ステップS5において、スケジュール処理部37は、上記制限の範囲で、溶着診断のスケジュールを決定する。例えば、ステップS2の異常がなく、ステップS3のSOCが通常レベル以上であり、ステップS4の照合結果が充電可能位置でない場合には、充電器14が所定回数使用されるごとに、各機器リレーSRの溶着診断が行われるようにスケジュールを決定する。例えば、5回の充電器14の使用があった後の充電器14の使用終了時に一方の機器リレーSRの溶着診断を行い、その後のシステム起動時に他方の機器リレーSRの溶着診断を行うスケジュール等である。
【0036】
また、ステップS5において、スケジュール処理部37は、ステップS2の異常があった場合には、充電器14の使用回数に関係なく、続く2回の特定処理期間で2個の機器リレーSRの溶着診断が行われるようにスケジュールを変更する。同様に、スケジュール処理部37は、ステップS3のSOCが充電を要するレベルにある場合には、例えば溶着診断を行う充電器14の使用回数を減じる変更を行う。例えば5回の使用ごとに1回の溶着診断を行うスケジュールから、2回以上使用されていれば次の特定処理期間に溶着診断を行うスケジュールへ変更するなどである。
【0037】
また、ステップS5において、スケジュール処理部37は、ステップS4の充電可能位置でシステム終了時の位置があれば、次のシステム起動の特定処理期間に機器リレーSRの溶着診断が行われるようにスケジュールを変更する。
【0038】
その後、スケジュール処理部37は、決定したスケジュールを記憶装置に記憶し(ステップS6)、1回のスケジュール処理を終了する。診断処理部36は、記憶装置に記憶されたスケジュールに従って、機器リレーSRの溶着診断を実行する。
【0039】
なお、1回の特定処理期間に1個以内の機器リレーSRの溶着診断を行うといった制限は、絶対である必要はない。例えば通常モードでは、このような制限を付してスケジュールが決定される一方、フェールセーフ診断モードでは、このような制限を解除していつでも機器リレーSRの溶着診断が行われるようにスケジュールが決定されてもよい。
【0040】
<システム起動の処理期間を利用した溶着診断処理>
図3は、システム起動の処理期間を利用した溶着診断処理の一例を示すタイミングチャートである。
図3において、「VL」は第1リレーセットB1よりも機器側における一対の電源ラインL0間の電圧、「Vchg」は第2リレーセットB2より充電器14側における一対の分岐ラインL1間の電圧を示す。
図3は、陽極の機器リレーSRを診断対象とした一例を示し、破線は診断対象の機器リレーSRが溶着している場合の変化を示す。
図3では、リレーの接続をON、遮断をOFFと表わす。
【0041】
システム起動前は、
図3のタイミングt1に示すように、第1システムメインリレーSMR1、第2システムメインリレーSMR2、プリチャージリレーPR、2つの機器リレーSRが遮断の制御状態にある。なお、診断対象の陽極の機器リレーSRが溶着していると、遮断の制御に切り替えられていても破線に示すように機器リレーSRは接続状態となる。さらに、インバータ12の接続端子と充電器14の接続端子とは放電状態にあり、電源ラインL0間の電圧VLと分岐ラインL1間の電圧Vchgはローレベル(0V)である。
【0042】
診断処理部36は、続くタイミングt2~t4において、順に、陰極の機器リレーSRを接続、第2システムメインリレーSMR2を接続、プリチャージリレーPRを接続の制御に切り替える。すると、タイミングt4~t5に示すように、インバータ12の接続端子がプリチャージ抵抗R1を介して徐々にプリチャージされ、電圧VLが上昇する。
【0043】
ここで、診断対象の機器リレーSRが溶着していなければ、充電器14の接続端子はプリチャージされないので、電圧Vchgはゼロのままである。一方、診断対象の機器リレーSRが溶着していれば、充電器14の接続端子もプリチャージされて、電圧Vchgが電圧VLと同様に上昇する。したがって、タイミングt5において、診断処理部36は、電圧Vchgを電圧VLと比較(検査)することで、診断対象の機器リレーSRが溶着しているか否か診断結果を得る。
【0044】
その後、診断処理部36は、タイミングt5~t7の前段にかけて、順に、陰極の機器リレーSRを遮断、プリチャージリレーPRを遮断、第2システムメインリレーSMR2を遮断の制御に切り替えて、溶着診断処理を終了する。その後、車両制御部33は、タイミングt7、t8で、第2システムメインリレーSMR2、プリチャージリレーPRを接続に切り替え、電源ラインL0がプリチャージされて電圧VLが上昇した後、タイミングt9で、第1システムメインリレーSMR1を接続に、プリチャージリレーPRを遮断に切り替えてシステムの起動を完了する。なお、タイミングt6~t8のリレーの切り替えは省略し、車両制御部33がタイミングt9の第1システムメインリレーSMR1の接続及びプリチャージリレーPRの遮断の切り替えのみ行ってシステムの起動処理を完了してもよい。
【0045】
なお、
図3の例は、陽極の機器リレーSRを診断対象とした例であるが、陰極の機器リレーSRが診断対象である場合には、
図3の陽極の機器リレーSRの切り替え動作と陰極の機器リレーSRの切り替え動作とを交換して実施すればよい。この切り替え動作により、タイミングt5の電圧の比較(検査)の処理で陰極の機器リレーSRが溶着しているか否かを診断できる。
【0046】
<充電器14の使用終了の処理期間を利用した溶着診断処理>
図4は、充電器14の使用終了の処理期間を利用した溶着診断処理の一例を示すタイミングチャートである。
図3に示したのと同様に、「VL」は第1リレーセットB1よりも機器側における一対の電源ラインL0間の電圧、「Vchg」は第2リレーセットB2より充電器14側における一対の分岐ラインL1間の電圧を示す。
図4は、陰極の機器リレーSRを診断対象とした一例を示す。破線は、診断対象の機器リレーSRが溶着している場合の変化を示す。
図4では、リレーの接続をON、遮断をOFFと表わす。
【0047】
充電器14の使用終了前は、
図4のタイミングt10に示すように、第1システムメインリレーSMR1、第2システムメインリレーSMR2及び2つの機器リレーSRが接続の制御状態にあり、プリチャージリレーPRが遮断の制御状態にある。さらに、インバータ12の接続端子と充電器14の接続端子とは電源電圧が加えられた状態にあり、電源ラインL0間の電圧VLと分岐ラインL1間の電圧Vchgはハイレベル(バッテリ13の出力電圧)にある。
【0048】
診断処理部36は、充電器14の使用終了に基づき溶着診断処理を開始し、先ず、診断対象の陰極の機器リレーSRを遮断の制御に切り替える(タイミングt11)。ここで診断対象の陰極の機器リレーSRが溶着していなければ、タイミングt11の切り替えにより、バッテリ13から充電器14の接続端子へ出力される電圧が遮断され、この遮断に基づき充電器14が放電を行うことで、続くタイミングt12において、充電器14の接続端子の電圧Vchgが徐々に下降する。
【0049】
一方、診断対象の陰極の機器リレーSRが溶着していると、タイミングt11で遮断の制御に切り替えられても、破線に示すように陰極の機器リレーSRは接続の状態を維持し、タイミングt12の電圧Vchgの下降が生じない。したがって、診断処理部36は、タイミングt13で電圧Vchgを電圧VLと比較することで、陰極の機器リレーSRが溶着しているか否かの診断結果を得る。そして、診断処理部36は、この診断処理を終了する。
【0050】
その後、車両制御部33は、陽極の機器リレーSRを遮断の制御に切り替え(タイミングt14)、続いて、システムを終了する場合には、第2システムメインリレーSMR2と第1システムメインリレーSMR1を遮断に切り替える(タイミングt15以降)。これにより電源ラインL0の電圧VLも放電されて低下し、充電器14の使用終了の処理が完了する。
【0051】
なお、
図4の例は、陰極の機器リレーSRを診断対象とした例であるが、陽極の機器リレーSRが診断対象である場合には、
図4の陽極の機器リレーSRの切り替え動作と陰極の機器リレーSRの切り替え動作とを交換して実施すればよい。この切り替え動作により、タイミングt13の電圧の比較(検査)の処理で陽極の機器リレーSRが溶着しているか否かを診断できる。
【0052】
診断処理部36は、スケジュール処理部37が決定したスケジュールに従って、上述したシステム起動の処理期間の溶着診断と、充電器14の使用終了の処理期間の溶着診断とを行う。これにより、2つの機器リレーSRに溶着が生じていないか、少ないリレーの切り替え回数で診断することができる。
【0053】
以上のように、本実施形態の電動車両1及びリレー診断装置として機能する車両制御部33によれば、診断処理部36が、システム起動の処理期間と充電器14の使用終了の処理期間とに1つずつ機器リレーSRの溶着診断を行う。すなわち、複数の機器リレーSRの溶着診断が、1回の特定処理期間に1個以内の機器リレーSRの診断が行われるように、複数回の特定処理期間に分けて行われる。これにより、溶着診断を多く行っても、第1リレーセットB1及び第2リレーセットB2のリレーの切り替え回数のうち、溶着診断のために増加するリレーの切り替え回数は多くならない。したがって、溶着診断のために第1リレーセットB1及び第2リレーセットB2の切り替えの総回数が多くなって寿命が低減するといった事態を抑制できる。
【0054】
さらに、本実施形態の電動車両1及び車両制御部33によれば、診断処理部36は、システム起動の処理期間に、第1リレーセットB1のプリチャージリレーPRを用いて機器リレーSRの溶着診断を行う。また、診断処理部36は、充電器14の使用終了の処理期間に、プリチャージリレーPRを用いずに機器リレーSRの溶着診断を行う。このため、プリチャージリレーPRは、第1リレーセットB1に含まれればよく、第2リレーセットB2にプリチャージリレーPRを別個に設けることが不要となる。これにより、電動車両1の電力系統の部品点数の削減及び製造コストの低減を図れる。
【0055】
さらに、本実施形態の電動車両1及び車両制御部33によれば、診断処理部36は、システム起動時の溶着診断において、先ず、診断対象の機器リレーSRと第1システムメインリレーSMR1とを遮断の制御のままとする。そして、診断処理部36は、診断対象でない機器リレーSRと第2システムメインリレーSMR2とプリチャージリレーPRとを遮断から接続の制御に切り替え、その後、分岐ラインL1の電圧Vchgと電源ラインL0の電圧VLとを比較して、機器リレーSRの溶着診断を行う。このような診断方法によれば、システム起動時に必要なリレーの切り替えに、溶着診断用の少ないリレーの切り替え回数を加えるだけで、1つの機器リレーSRの溶着診断を実現できる。
【0056】
また、本実施形態の電動車両1及び車両制御部33によれば、診断処理部36は、充電器14の使用終了時の溶着診断において、先ず、第1システムメインリレーSMR1、第2システムメインリレーSMR2及び診断対象でない機器リレーSRを接続の制御のままとする。そして、診断処理部36は、診断対象の機器リレーSRを遮断の制御に切り替え、その後、分岐ラインL1の電圧Vchgと電源ラインL0の電圧VLとを比較して、機器リレーSRの溶着診断を行う。このような診断方法によれば、充電器14の使用終了時に必要なリレーの切り替えのみで、1つの機器リレーSRの溶着診断を実現でき、溶着診断のためにリレーの切り替え回数を増加する必要がない。
【0057】
また、本実施形態の電動車両1及び車両制御部33によれば、スケジュール処理部37が、充電器14の使用履歴に基づいて機器リレーSRの溶着診断のスケジュールを決定する。例えば、充電器14の使用回数が多ければ機器リレーSRの溶着診断が多く、使用回数が少なければ機器リレーSRの溶着診断が少なくなるように、溶着診断のスケジュールを決定する。これにより、溶着診断を効率的に行うことができ、無用の溶着診断が行われてリレーの切り替え回数が増加することを抑制できる。
【0058】
さらに、本実施形態の電動車両1及び車両制御部33によれば、スケジュール処理部37が、充電処理の異常終了が有るか否か、バッテリ13のSOC、及び、電動車両1のシステム終了時の位置情報に基づいて第2リレーセットB2の溶着診断のスケジュールを変更する。これにより、充電処理の異常終了で第2リレーセットB2の異常が疑われる際、SOCが低く充電器14が多く使われると予想される際、あるいは、充電可能箇所で電動車両1が止まって充電器14が使用されると予想される際などに、溶着診断の頻度を高くできる。これにより、状況に応じて溶着診断を効率的に行うことができ、ひいては無用の溶着診断が行われてリレーの切り替え回数が増加することを抑制できる。
【0059】
以上、本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、上記実施形態では、システム終了時の溶着診断の手順と、充電器14の使用終了時の溶着診断の手順について、
図3と
図4のタイミングチャートを用いて示したが、タイミングチャートは一つの具体例に過ぎず、本発明を限定するものではない。例えば、図示したタイミングチャートには、各リレーの切り替えの順番が入れ替え可能なものも含まれている。また、電圧Vchgと電圧VLとの比較は行わずに、電圧Vchgと所定の電圧閾値との比較等で電圧Vchgの検査を行うこともできる。また、スケジュール処理部37が決定及び変更する溶着診断のスケジュールの例も一例にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0060】
また、上記実施形態では、分岐ラインL1に充電器14が接続されている例を示したが、分岐ラインL1にその他の機器が接続され、第2リレーセットB2によりバッテリ13と接続又は遮断を切り替え可能に構成されていてもよい。また、分岐ラインL1及び第2リレーセットB2が複数組設けられていてもよい。また、プリチャージリレーとプリチャージ抵抗は、第2システムメインリレーに並列に接続されていてもよい。その他、実施形態で示した細部は、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 電動車両
11 走行モータ
12 インバータ
13 バッテリ
14 充電器
L0 電源ライン
L1 分岐ライン
B1 第1リレーセット
SMR1 第1システムメインリレー
SMR2 第2システムメインリレー
PR プリチャージリレー
R1 プリチャージ抵抗
B2 第2リレーセット
SR 機器リレー
30 制御装置
33 車両制御部(リレー診断装置)
36 診断処理部
37 スケジュール処理部