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  • 特許-スピニングリール 図1
  • 特許-スピニングリール 図2
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  • 特許-スピニングリール 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】スピニングリール
(51)【国際特許分類】
   A01K 89/01 20060101AFI20230120BHJP
【FI】
A01K89/01 E
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018242862
(22)【出願日】2018-12-26
(65)【公開番号】P2020103063
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-10-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】落合 浩士
【審査官】吉原 健太
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-013165(JP,U)
【文献】特開2005-192527(JP,A)
【文献】特開2017-216946(JP,A)
【文献】特開2013-000110(JP,A)
【文献】特開2007-267708(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 89/00 ー 89/08
F16C 35/00 ー 39/06
F16C 43/00 ー 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を前方に繰り出し可能なスピニングリールであって、
リール本体と、
前記リール本体に前後方向に移動可能に支持されたスプール軸と、
前記スプール軸が内部を貫通する筒状のピニオンギアと、
前記ピニオンギアを介さずに前記スプール軸を支持する支持部、及び前記支持部の内径よりも大径の軸受収納部、を有し、前記リール本体に圧入により固定されたブッシュと、
前記ブッシュの前記軸受収納部に装着され、前記ピニオンギアを支持する軸受と、
を備えた、
スピニングリール。
【請求項2】
前記軸受は、前記ブッシュの前記軸受収納部の内周部に接触する外輪、及び前記ピニオンギアの外周部に接触する内輪と、を有する、
請求項1に記載のスピニングリール。
【請求項3】
前記リール本体は、前記ブッシュが圧入される圧入孔を有し、
前記ブッシュは、外周部から径方向に突出する圧入リブを有する、
請求項1又は2に記載のスピニングリール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特に、釣り糸を前方に繰り出し可能なスピニングリールに関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールは、ハンドルの回転に応じてスプール軸がリール本体に対して前後方向に往復移動する。スプール軸は、後部がカラー部材(支持部材)を介してリール本体に支持されている。スプール軸が前後方向に往復移動するとき、スプール軸は、カラー部材に対して摺動する。カラー部材は、リール本体に配置された軸受によって支持されている。軸受は、リール本体に設けられた軸受収納部に配置され、ピニオンギアの後端を回転自在に支持している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3898136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スプール軸がリール本体に対して前後方向に移動するときに、リール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきが大きくなると、摺動フィーリングに悪影響を及ぼすことがある。例えば、特許文献1では、軸受収納部の内径、ピニオンギアの外径、カラー部材の内外径、及びスプール軸の外径、といった各部分の寸法がリール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきに影響を与えるため、これら各部分の寸法精度を高くしなければ、リール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきが大きくなり、摺動フィーリングに悪影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
本発明の課題は、リール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきを抑制して摺動フィーリングの向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係るスピニングリールは、釣り糸を前方に繰り出し可能である。スピニングリールは、リール本体と、スプール軸と、ピニオンギアと、ブッシュと、軸受と、を備える。スプール軸は、リール本体に前後方向に移動可能に支持されている。ピニオンギアは、筒状であり、スプール軸が内部を貫通する。ブッシュは、リール本体に圧入により固定される。ブッシュは、スプール軸を支持する支持部、及び支持部の内径よりも大径の軸受収納部、を有する。軸受は、ブッシュの軸受収納部に装着され、ピニオンギアを支持する。
【0007】
このスピニングリールでは、リール本体に圧入により固定されたブッシュの支持部によってスプール軸が支持される。この場合、リール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきに影響を与える部分は、ブッシュの支持部の内径とスプール軸の外径であり、スプール軸の径方向のがたつきに影響を与える部分が少ない。これにより、リール本体に対するスプール軸の径方向のがたつきが抑制されるので、摺動フィーリングの向上を図ることができる。また、ピニオンギアを支持する軸受がブッシュの軸受収納部に装着されるので、例えばリール本体に軸受を直に装着した場合に比べて、ピニオンギアを軸受で精度よく支持することができる。
【0008】
好ましくは、軸受は、ブッシュの軸受収納部の内周部に接触する外輪、及びピニオンギアの外周部に接触する内輪と、を有する。
【0009】
好ましくは、リール本体は、ブッシュが圧入される圧入孔を有し、ブッシュは、外周部から径方向に突出する圧入リブを有する。この場合は、圧入リブを設けることで、圧入孔へのブッシュの圧入が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、スプール軸の径方向のがたつきを抑制して摺動フィーリングの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態が採用されたスピニングリールの側面図。
図2】スピニングリールの断面図。
図3】軸受収納部周辺の拡大断面図。
図4】ブッシュの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態が採用されたスピニングリール100は、釣り糸を前方に繰り出し可能である。スピニングリール100は、図1及び図2に示すように、リール本体2と、ハンドル3と、スプール軸4と、スプール5と、ロータ6と、ピニオンギア7と、ブッシュ8と、軸受9と、を備えている。
【0013】
なお、以下の説明において、釣りを行うときに、釣り糸が繰り出される方向を前、その反対方向を後という。また、左右とは、スピニングリール100を後方から見たときの左
右をいう。また、スプール軸4が延びる方向を軸方向という。スプール軸4と直交する方向を径方向という。また、スプール軸4の軸周りの方向を周方向という。なお、本実施形態における軸方向は、前後方向と一致している。
【0014】
リール本体2は、図2に示すように、内部空間を有しており、内部空間には、周知のオシレーティング機構12や、ロータ6が駆動される図示しない周知のロータ駆動機構の一部が収容されている。
【0015】
リール本体2は、図3に拡大して示すように、ブッシュ8が圧入される圧入孔2aを有している。圧入孔2aは、筒状であり、リール本体2の内部空間内で径方向に延びて形成された壁部2bを軸方向に貫通して形成されている。圧入孔2aの後部には、ブッシュ8を位置決めする位置決め突起2cが形成されている。位置決め突起2cは、圧入孔2aの後部から径方向内側に向かって円環状に突出して形成されている。
【0016】
ハンドル3は、図1に示すように、リール本体2に回転可能に支持されている。本実施形態では、ハンドル3は、リール本体2の左側に装着されている。なお、ハンドル3は、リール本体2の右側に装着することもできる。
【0017】
スプール軸4は、前後方向に延び、リール本体2に前後方向に移動可能に支持されている。スプール軸4は、図1に示すように、前部がスプール5の内部に配置された軸受14にカラー部材を介して支持され、中間部が後述するナット部材18の内周部に配置された軸受16にカラー部材を介して支持されている。また、スプール軸4は、図3に示すように、後部がブッシュ8の後述する支持部8aに支持されている。スプール軸4は、ハンドル3の回転に応じて、オシレーティング機構12によりリール本体2を前後方向に往復移動する。
【0018】
スプール5は、外周に釣り糸が巻き付けられる部材である。スプール5は、スプール軸4の先端に螺合する図示しないナット部材によって、スプール軸4に装着されており、スプール軸4と一体的に移動する。すなわち、スプール5は、ハンドル3の回転に応じてスプール軸4とともにリール本体2に対して前後方向に往復移動する。
【0019】
ロータ6は、リール本体2に対して回転可能であり、ハンドル3の回転に応じてスプール5に釣り糸を巻き付ける。ロータ6は、ピニオンギア7の先端に螺合するナット部材18によってピニオンギア7に一体回転可能に連結されている。
【0020】
ピニオンギア7は、中空筒状の部材であり、スプール軸4が内部を貫通している。ピニオンギア7とスプール軸4とは、径方向において僅かな隙間が設けられている。ピニオンギア7は、リール本体2に回転自在に支持されている。詳細には、ピニオンギア7は、中間部がリール本体2に配置された軸受20によって支持されている。ピニオンギア7は、後端部が軸受9によって支持されている。ピニオンギア7には、ロータ駆動機構を介してハンドル3の回転が伝達される。ピニオンギア7にハンドル3の回転が伝達されると、ピニオンギア7とロータ6とがリール本体2に対して一体回転する。
【0021】
ブッシュ8は、図3及び図4に示すように、円筒状であり、リール本体2の圧入孔2aに圧入により固定される。ブッシュ8は、例えば合成樹脂、又はステンレス等の金属で形成されている。ブッシュ8は、支持部8aと、軸受収納部8bと、接続部8cと、を有している。また、ブッシュ8は、好ましくは、1以上の圧入リブ8dをさらに有している。
【0022】
支持部8aは、スプール軸4を支持する。支持部8aは、円筒状であり、内周面がスプール軸4の外周面に接触している。スプール軸4が前後方向に往復移動するとき、スプール軸4の外周面が支持部8aの内周面に対して摺動する。支持部8aは、径方向において、圧入孔2aの一部と重なる。
【0023】
軸受収納部8bは、円筒状であり、支持部8aと一体的に形成されている。軸受収納部8bの外径は、支持部8aの外径よりも大きい。軸受収納部8bの内径は、支持部8aの内径よりも大きい。
【0024】
接続部8cは、支持部8aと軸受収納部8bとを接続する。接続部8cは、支持部8aの前端部と軸受収納部8bの後端部とを接続するように、径方向に円環状に延びている。接続部8cは、図3に示すように、軸方向において、後部が圧入孔2aの位置決め突起2cに接触する。これにより、ブッシュ8が軸方向において位置決めされている。
【0025】
圧入リブ8dは、軸受収納部8bの外周部から径方向に突出するとともに、軸方向に延びている。圧入リブ8dは、本実施形態では、周方向に間隔を隔てて複数形成されている。
【0026】
軸受9は、ブッシュ8の軸受収納部8bに装着されている。軸受9は、ピニオンギア7の後端を回転自在に支持している。軸受9は、外輪9aと、内輪9bと、を有している。外輪9aは、軸受収納部8bの内周部に接触している。外輪9aは、軸方向において、接続部8cに接触している。内輪9bは、ピニオンギア7の外周部に接触している。なお、内輪9bと支持部8aとの軸方向間には、隙間が設けられており、内輪9bが支持部8a及び接続部8cに接触しないように構成されている。
【0027】
上記構成のスピニングリール100では、リール本体2の圧入孔2aに圧入して固定されたブッシュ8の支持部8aによってスプール軸4が支持されているので、ブッシュ8の支持部8aによってスプール軸4を精度よく支持することができる。すなわち、リール本体2に対するスプール軸4の径方向のがたつきに影響を与える部分は、ブッシュ8の支持部8aの内径とスプール軸4の外径であり、スプール軸4の径方向のがたつきに影響を与える部分が少ない。これにより、リール本体に対するスプール軸4の径方向のがたつきが抑制されるので、スプール軸4が軸方向に往復移動するときの摺動フィーリングの向上を図ることができる。
【0028】
また、ブッシュ8の軸受収納部8bを介して軸受9がリール本体2に支持されているので、例えば、リール本体2に軸受9を直に配置した場合と比べて、軸受9を精度よく支持することができる。これにより、軸受9によってピニオンギア7を精度よく支持することができる。
【0029】
<他の実施形態>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組合せ可能である。
【符号の説明】
【0030】
2 リール本体
2a 圧入孔
4 スプール軸
7 ピニオンギア
8 ブッシュ
8a 支持部
8b 軸受収納部
8d 圧入リブ
9 軸受
9a 外輪
9b 内輪
100 スピニングリール
図1
図2
図3
図4