(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】注射用水の製造装置及び製造方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/44 20230101AFI20230120BHJP
B01D 61/18 20060101ALI20230120BHJP
B01D 63/02 20060101ALI20230120BHJP
C02F 1/42 20230101ALI20230120BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230120BHJP
B01D 61/08 20060101ALI20230120BHJP
B01D 61/58 20060101ALI20230120BHJP
B01D 61/16 20060101ALI20230120BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C02F1/44 J
B01D61/18
B01D63/02
C02F1/42 A
C02F1/42 B
C02F1/469
B01D61/08
B01D61/58
B01D61/16
A61K9/08
(21)【出願番号】P 2019036115
(22)【出願日】2019-02-28
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000245531
【氏名又は名称】野村マイクロ・サイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 有宏
(72)【発明者】
【氏名】丹治 輝
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特許第2799995(JP,B2)
【文献】特開2019-025456(JP,A)
【文献】特開2018-144014(JP,A)
【文献】特開2019-25456(JP,A)
【文献】特開2001-172202(JP,A)
【文献】特表2002-532220(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/44
B01D 61/00-71/82
B01D 53/22
C02F 1/42
C02F 1/469
A61K 9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を逆浸透ろ過及び/又はイオン交換して精製水とする精製水製造部と、
中空糸膜の外表面に前記精製水が供給され中空糸膜の内表面から透過水が取り出される外圧式により限外ろ過を行うUFモジュールと、
前記UFモジュールの透過水を貯留する滅菌注射用水タンクと、を備え
前記中空糸膜は分画分子量3,000~10,000の細孔径を用い、
前記UFモジュールの供給側に対しレイノルズ数が、2,500~5,000で精製水を供給することを特徴とする注射用水の製造装置。
【請求項2】
前記UFモジュールの上流側又は下流側で且つ前記滅菌注射用水タンクより上流側に熱交換器が配置されていることを特徴とする請求項1記載の注射用水の製造装置。
【請求項3】
前記UFモジュールの後段には、膜処理装置と蒸留装置のいずれも設置されてないことを特徴とする請求項1記載の注射用水の製造装置。
【請求項4】
前記滅菌注射用水タンクには、50~90℃の注射用水が貯留され、かつ使用場所(POU)への循環ラインが備えられていること特徴とする請求項1記載の注射用水の製造装置。
【請求項5】
原水を逆浸透ろ過及び/又はイオン交換して精製水とする精製水製造段階と、
中空糸膜の外表面に前記精製水が供給され中空糸膜の内表面から透過水が取り出される外圧式により限外ろ過を行うUFモジュールによって前記精製水を限外ろ過して透過水とする透過水製造段階と、
前記透過水を滅菌注射用水タンクに貯留する透過水貯留段階と、によって注射用水を製造
し、前記透過水製造段階では、分画分子量3,000~10,000の細孔径の中空糸膜を用いると共に、前記UFモジュールの供給側に対しレイノルズ数が、2,500~5,000で精製水を供給することを特徴とする注射用水の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、注射用水の製造装置及び製造方法に関し、より詳しくは、逆浸透膜ろ過及びイオン交換した精製水、限外ろ過して製造する注射用水の製造装置及び製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
注射薬の溶解や調整に使用する滅菌注射用水(WFIと略称することがある)は、あらゆる種類の微生物や発熱性物質(エンドトキシン)を除去しなければならない。このため、古来より、注射用の希釈液又は溶解液には精密ろ過やイオン交換した精製水を蒸留した蒸留水が使用されてきた。
この注射液用の無菌水を製造する従来の装置は、固形物質、コロイド物質を除去するために精密ろ過器と、不純物や電解質を除去するためのイオン交換器と、微生物やエンドトキシンを除去するための逆浸透膜ろ過器又は限外ろ過器と、これらの設備を通過させた精製水を貯留し、加熱蒸発させるための加熱タンクと、このタンクを加熱して蒸発させた蒸気を飛沫と分離するデミスターと、デミスターで分離された蒸気を凝縮させるコンデンサーとを備える構造となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、このような蒸留を伴う注射液用の無菌水を製造する従来の装置は、蒸留を必須要件としているため大掛かりな装置にならざるを得ず、また、精製した水を加熱して蒸発させ、これをまた冷却して蒸気を凝縮させるなど、エネルギーの無駄が多いという問題点がある。
一方、近年、蒸留による注射液用の無菌水製造方法の代替として逆浸透ろ過や限外ろ過(ultrafiltration:以下、UFと略称することがある)の使用が各国の薬局方で承認されている。しかし、蒸留によらない注射液用の無菌液を製造するのに膜ろ過を使用するには、従来の後段に蒸留装置が設置されていた場合と違い、膜ろ過装置でのろ過水滞留による生菌およびエンドトキシン等の増加防止が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであって、その目的とするところは、蒸留装置を含まない注射用水の製造装置及び製造方法において膜ろ過装置でのろ過水滞留による不純物増加防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本発明の注射用水の製造装置は、原水を逆浸透ろ過及び/又はイオン交換して精製水とする精製水製造部と、中空糸膜の外表面に精製水が供給され中空糸膜の内表面から透過水が取り出される外圧式により限外ろ過を行なう限外ろ過モジュールと、限外ろ過モジュールの透過水を貯留する滅菌注射用水タンクと、を備えていることを特徴とする。
【0007】
前記UFモジュールの上流側又は下流側で且つ滅菌注射用水タンクより上流側に熱交換器が配置されていることが好ましい。
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明の注射用水の製造方法は、原水を逆浸透ろ過及び/又はイオン交換して精製水とする精製水製造段階と、精製水を外圧式UFモジュールで限外ろ過して透過水とする透過水製造段階と、透過水を滅菌注射用水タンクに貯留する透過水貯留段階と、によって注射用水を製造することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の注射用水の製造装置によれば、蒸留装置を含まず、精製水製造部及び、限外ろ過だけで注射用水を得ることができるため、操作が簡単であり、装置を簡素化することができる。また、蒸留と異なり、精製水を一度蒸発させてからそれをまた冷却する分の熱量は不要になるため、必要なエネルギーを削減できることから製造コストを安くすることができる。
さらに、外圧式UFモジュールを用いることで、内圧式UFモジュールを用いた場合よりも透過水の滞留による不純物増加を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本発明の注射用水の製造装置のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付した図面に基づき、本発明の実施形態について、詳しく説明する。なお、本発明の構成は、本実施形態に限定されない。
図1は、本発明の一実施形態の注射用水の製造フロー図であり、
図2は、本発明の注射用水の製造装置のブロック図である。
図1、2に示したとおり、本実施形態の限外ろ過を用いた注射用水の製造装置は、まず、原水を逆浸透膜(Reverse Osmosis Membrane:以下、RO膜と略称することがある)によってろ過し、次に連続イオン交換(Electro Deionization:以下、EDIと略称することがある)して精製水とする精製水製造部10と、中空糸膜の外表面に精製水が供給され中空糸膜の内表面から透過水が取り出される外圧式により限外ろ過(UF)を行なう限外ろ過モジュール20と、限外ろ過モジュール20の透過水を貯留する滅菌注射用水タンク(WFITK)30と、を備える。
【0012】
逆浸透膜ろ過装置12は、逆浸透膜(RO膜)を備えるろ過器であって、孔の大きさが2ナノメートル以下の逆浸透膜(RO膜)に対して水を通す一方で、イオンや塩類など水以外の不純物は透過しない性質を有した膜であり、海水から真水を得るためや、乳製品や果汁から水を除いて濃縮するために使用されている。逆浸透膜を使用して水の精製や飲料の濃縮を行う場合にはろ過する液体(原水)に圧力をかける必要があるが、その圧力はろ過する液体の塩分濃度に依存し、最低でも5気圧程度は必要となる。原水として海水を用いる場合、海水から真水を得るためには55気圧以上が必要となる。このため、逆浸透膜ろ過装置12には液体(原水)を圧送するためのポンプ14が備えられる。RO膜ろ過としては、超低圧、低圧、中圧、高圧、いずれも使用可能であるが、超低圧、低圧、中圧がランニングコストの面から好ましい。膜の素材としては、ポリアミド(PA)製、酢酸セルロースの膜等が使用可能であるが、ポリアミド製のものが処理水水質の面で好ましい。膜の形状としては、中空糸、スパイラル、プレートアンドフレーム型等が考えられるが、スパイラル式のものが濁質等による詰まりに強いため好ましい。
孔の大きさが1~2ナノメートルのろ過膜からなるナノフィルター(NF膜)の場合、上記RO膜に代えて使用することができる。
【0013】
逆浸透膜ろ過装置12を透過した精製水はイオン交換により電解質が取り除かれる。このイオン交換には連続イオン交換装置(EDI)16が用いられる。この装置は、従来、イオン交換樹脂を一本一本設置して水を透過させていた技術を発展させ、イオン交換膜とイオン交樹樹脂とを組み合わせ、電気透析のように連続的に水を精製するものである。
連続イオン交換装置(EDI)16は陽極と陰極を備える電解槽に、通電時に陰イオンだけを陽極側に通過させる陰イオン交換膜と、通電時に陽イオンだけを陰極側に通過させる陽イオン交換膜を交互に並べ、その間にイオン交換樹脂を封入した構造で、電極に直流電流を流すと、水中の陰イオンは陽極側に、陽イオンは陰極側に泳動し、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜の働きで、イオンが希釈される領域、濃縮される領域が現れる。イオンが希釈される領域を通過する水は純水になり、濃縮される領域を通過する濃縮水は排水される。イオン交換樹脂はイオンを一時的に保留する役割を担っている。
このような連続イオン交換装置16はEDIモジュールとして、例えばGE製の型式:MK-3 Mini HT,MK-2 Mini HTなどが市販されており、これらを好ましく使用することができる。連続イオン交換装置16に代わり、陽イオン交換樹脂、及び、または、陰イオン交換樹脂を充填した充填塔を用いることも可能である。
【0014】
連続イオン交換装置16で生成された脱イオン水は精製水タンク18に貯留された後、ポンプ21により圧送され、限外ろ過モジュール20において限外ろ過(UF)される。限外ろ過(UF)は、飲料水の細菌やウイルスの除去、食品加工分野では蛋白質や酵素など熱に弱い物質の分離または濃縮、及び医療分野で人工透析等に使用される。この限外ろ過(UF)によって脱イオン水に含まれる微細な固形物、ウイルスを含む微生物及びエンドトキシンが除去される。
限外ろ過(UF)は、超純水製造分野で仕上げ段階の微粒子除去に使用されるろ過技術である。この実施形態では、直径0.5~30mm程度の太さで中空上の糸状に成型した中空糸膜を用いて、クロスフローろ過を行う。クロスフローろ過とすることで、全量ろ過よりも膜閉塞による劣化や破損が抑えられるようになり、長期運転が容易となる。
【0015】
UFモジュール20としては、中空糸膜の外表面から透過し、内表面から透過水が取り出されるように中空糸膜の外側から内側へろ過する(外圧式)と糸の内側から外側へろ過する(内圧式)が用いられるが外圧式を用いる方が次の点で好ましい。
・2次側(透過水側)の流路がシンプルであるため、少ない透過水量でも透過水側の滞留を防止でき、滞留による菌の発生やパイロジェンによる透過水の水質低下を防止できる。
・2次側がモジュールのハウジング内面と接触しないため、ハウジング内面への微生物付着、増加による透過水の水質低下を防止できる。
・均一な流路確保が難しい中空糸外表面側について、中空糸への透過流速を一定にしながら供給水量と濃縮水量を上げることにより供給水の滞留による微生物の繁殖を防止できる。
【0016】
中空糸膜の素材としては、特に限定されるものではなく、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体、ポリテトラフルオロエチレンポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(4-メチルペンテン)、ポリビニルアルコール共重合体、セルロース、酢酸セルロースやセラミック等の無機素材を選択できる。中でも膜強度の点からはポリフッ化ビニリデン、ポリスルホンが好ましい。
中空糸膜の細孔径については特に限定されず、0.001μm~1μmの範囲内で便宜選択することができる。分画分子量は1000~20000のものが好ましく、更に好ましくは3000~10000が望ましい。その場合、限外ろ過(UF)膜の孔の大きさが10nm未満と考えられるため、現在最も小さいウイルスといわれるピコルナウイルスやバルボウイルスの除去が可能になり、同時にエンドトキシンも除去することができる。
中空糸膜への透過流速は0.1m/h~0.3m/hが好ましく、さらに好ましくは0.15~0.25m/hが望ましい。
【0017】
UF膜モジュール20としては、多数本の上記中空糸膜からなる中空糸膜束を耐圧性の筒状ケース内に装填し、膜束の両端を筒状ケースに接着固定するとともに、片端または両端の接着固定部を切断して中空糸膜の内部を開口した構造を用いることができる。また、加圧した原水をモジュール内に導入し、中空糸膜面によってろ過を行うタイプの加圧型膜モジュールなどを用いることができる。
UF膜モジュール20は、縦置き、すなわち両端の接着固定部を略鉛直方向に配置しても、横置き、すなわち両端の接着固定部を略水平方向に配置しても構わない。
【0018】
外圧式の中空糸膜を備えるUF膜モジュール20としては、例えば、旭化成株式会社製の商品名「マイクローザUF(OLT6036H)」等を好ましく使用できる。また、内圧式中空糸を備えるUF膜モジュールとしては、例えば、旭化成株式会社製の商品名「マイクローザUF(SIP-3023)」があるが、これを外圧式として使用することも可能である。
外圧式の場合、UFモジュール内の供給水側は、入口ノズルの内径に対してUF膜モジュールのハウジングを一つの配管と考えると、内径が大きいため、UF膜モジュール内の流速が遅くなる。流速が遅くなると、UF膜モジュール内で滞留が生じ、ハウジング内面への微生物付着や滞留による水質低下が懸念される。
【0019】
これを防ぐためには、供給水の流量を上げて流速を上げればよく、そのためには濃縮水の流量を上げればよい。すなわち、UF膜モジュール径をL1、中空糸膜外径をL2、中空糸膜本数をn、処理水の動粘性係数[温度により決定]をνとした場合に、供給水の流量がSとなるよう適宜調整して、下記レイノルズ数が、1000~10000となるように運転することが好ましく、2500~5000がより好ましい。
ここで、Dは代表径、Vは代表流速を表しており、
レイノルズ数が過剰に大きくなると、供給水がUF膜に与える衝撃が大きくなり、膜が折れる可能性があるため好ましくない。
なお、濃縮水流量を上記範囲にするために、濃縮水の一部をポンプのサクション側に戻すことにより循環運転することも有効である。
【0020】
限外ろ過モジュール20を透過した水は、まず滅菌注射用水タンク(WFITK)に貯留される。滅菌注射用水タンク(WFITK)は、外部から不純物や微生物が入り込まないように隔離された貯蔵容器であればその形状に制限はない。また、タンクの材質についても特に制限はないが、容器から成分が溶出したり、錆の発生がないものを選定することがよい。例えば、SUS316Lの電解研磨品が好ましく使われる。
滅菌注射用水タンク(WFITK)に貯留された水は、使用時になると液送ラインを通じて使用場所(point of use:POU)に送られる。液送ラインは、無菌かつ清浄な状態で生産ラインの次工程又は小分け充填工程に滅菌注射用水を提供できる構造であることが好ましい。例えば、液送ラインに注射用水タンク(WFITK)に戻す循環ラインを備え、POUで使用されなかった滅菌注射用水が滅菌注射用水タンク(WFITK)に常時循環される構造とすると、滞留による汚染を抑えられて好ましい。
【0021】
タンクの容量についても特に制約はなく、必要量に合わせて適宜設定することができる。
限外ろ過(UF)モジュール20の上流側又は下流側で且つ滅菌注射用水タンク(WFITK)より上流側には熱交換器40を配置してもよい。熱交換器40は、精製した注射用水を加熱殺菌して滅菌注射用水(WFI)を製造するための設備であって、精製水を50~90℃(好ましくは70~80℃)に加熱して殺菌を行う。この加熱殺菌により製造される注射用水は殺菌され、滅菌注射用水(WFI)として使用することができる。
【0022】
熱交換器40における加熱方法に特に制限はなく、例えば、蒸気配管した加熱タンクで行うこともでき、また、二重管による対流式の熱交換器を使用して加熱殺菌することもできる。熱交換器40が設置される位置は、滅菌注射用水タンク(WFITK)より上流側であれば、限外ろ過(UF)モジュール20の上流側及び下流側の何れであってもよい。熱交換器40が限外ろ過(UF)モジュール20の上流側に設置される場合、限外ろ過(UF)モジュール20に送り込まれる水の温度は、50~90℃以下であり、この温度領域で使用できる限外ろ過(UF)モジュールを選択する必要がある。例えば、クラレアクア株式会社製の商品名「C-02-HR」、旭化成株式会社製の商品名「マイクローザUF(OLT6036H)」「マイクローザUF(SIP-3023)」等を好ましく使用できる。一方、熱交換器40が限外ろ過(UF)モジュール20の下流側に設置される場合、限外ろ過(UF)モジュール20に送り込まれる水は、常温であり、問題なく限外ろ過(UF)することができる。
更に限外ろ過モジュール20に熱交換器40を設置し、限外ろ過を行いながら殺菌することもできる。
【0023】
以下に、限外ろ過を用いた注射用水の製造装置の使用法について説明する。
図1に示すように、原水をポンプ14により逆浸透膜(RO膜)ろ過装置12に送り、ろ過された精製水を連続イオン交換装置16で電解質を除去する。連続イオン交換装置16を通過した脱イオン水は、精製水タンク18に貯留される。その後、貯留された精製水は、ポンプ21により圧送され、限外ろ過モジュール20より上流側に配置された熱交換器(HEX)40により50~90℃(好ましくは70~80℃)に加熱されてから、限外ろ過モジュール20に送られ、限外ろ過される。限外ろ過モジュール20で仕上げられた精製水は、滅菌注射用水として滅菌注射用水タンク30に貯留される。
限外ろ過により滅菌注射用水から分離された濃縮水は、濃縮水ラインから廃棄及び/もしくは精製水製造ラインの任意の場所に戻される。UFモジュール内のレイノルズ数を最適にするため、必要に応じて、濃縮水の一部をポンプのサクション側に戻すと良い。
【実施例】
【0024】
[実施例1]
図2に示した製造装置を使用し、次の条件で通水を実施した。
限外ろ過モジュール20は、旭化成株式会社製の商品名「マイクローザUF(OLT6036H)」を使用した。この限外ろ過モジュール20はクロスフローろ過、有効膜面積が34m
2、分画分子量が6000、中空糸材質はポリスルホンであり、このモジュール20を1本使用した。透過水流量8.0m
3/h、温度80℃で運転した。また、濃縮水の一部はポンプのサクション側に戻すことにより、UFモジュール内のレイノルズ数が3000となるようにした。
[水質検査]
実施例1で製造した注射用水の品質を検査するために、限外ろ過モジュール20を通過した注射用水をサンプリングして、エンドトキシン濃度を測定した。
エンドトキシン濃度測定は、日本薬局方におけるエンドトキシン試験法のうち、比濁法(光学的測定法)を用いた。この測定は、エンドトキシンによるライセート試液のゲル化に伴う濁度の変化を光学的に測定する方法である。
比較例1として、実施例1のUFを自社製の蒸留器に入れ替え運転を行った。処理流量は、実施例1よりも少ない2.0m
3/hとした。実施例1と同様に蒸留器を通過した注射用水をサンプリングして、比濁法によりエンドトキシンを測定した。
[試験結果]
実施例1で得られた注射用水に含まれるエンドトキシンの濃度は、検出限界の0.005EU/mL以下であり、比較例1より2桁以上優れた結果であった。
以上のことから、本発明の注射用水の製造装置は、注射用水の製造装置として好ましく使用できることが示されている。
【0025】
[実施例2及び比較例2]
実施例2では、実施例1と同様のUFモジュールを用い、同様の条件で通水を実施した。
比較例2では、実施例2の外圧式のUFモジュールに対し、中空糸膜の内側から外側にろ過する内圧式に変更した。比較例2のUFモジュールは、旭化成株式会社製の型式SIP-3023(有効膜面積:7.2m2、分画分子量:6000)とし、有効膜面積を合わせるため5本とした。
これらの実施例では、WFI製造時にUFモジュールの処理水をサンプリングしてエンドトキシン濃度を測定した。エンドトキシン濃度測定は日本薬局方におけるエンドトキシン試験法の内、比濁法を用いた。表1は、エンドトキシン濃度の測定結果を示す。
実施例2では、エンドトキシン濃度測定値の増加が1600日後から始まり、比較例2では、エンドトキシン濃度測定値の増加が1100日後から始まっている。すなわち、エンドトキシン濃度の増加は外圧式UFの方が遅く、外圧式UFの方が長期運転に好ましいことが確認された。
【0026】
【符号の説明】
【0027】
10:精製水製造部
12:逆浸透膜ろ過装置
14、21:ポンプ
16:連続イオン交換装置(EDI)
18:精製水タンク
20:限外ろ過モジュール
30:滅菌注射用水タンク(WFITK)
40:熱交換器
EDI:連続イオン交換
HEX:熱交換器
POU:使用場所
RO:逆浸透
TK:タンク
UF:限外ろ過
WFI:滅菌注射用水