(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】突入電流抑制回路及び突入電流抑制回路を備える分散型発電システム
(51)【国際特許分類】
H02H 9/02 20060101AFI20230120BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
H02H9/02 H
H02J3/38 170
H02J3/38 180
(21)【出願番号】P 2019058852
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】宅和 雄也
(72)【発明者】
【氏名】御堂 俊哉
(72)【発明者】
【氏名】上野山 覚
(72)【発明者】
【氏名】井上 修一
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-165577(JP,A)
【文献】特開平09-046925(JP,A)
【文献】特開2014-011057(JP,A)
【文献】特開2015-165729(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散電力発電装置が発電した発電電力の供給を受ける自立電源装置に設けられ、電力系統からの系統電力の供給が停止し、前記自立電源装置の自立コンセントに自立負荷が接続された場合に、前記自立負荷からの突入電流を抑制可能
であり、
前記分散電力発電装置と前記自立電源装置とを接続する自立側供給線と前記自立コンセントが接続された自立接続線とを接続する第1接続線と、
前記自立側供給線と前記自立接続線とを、前記自立負荷からの突入電流を抑制可能な抵抗を介して接続する第2接続線と、
前記自立側供給線と前記自立接続線との接続を、前記第1接続線と前記第2接続線との間で切り換える切換器とを備え、
前記自立電源装置が前記分散電力発電装置から解列されると、前記切換器を制御して前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える制御部を備える、突入電流抑制回路。
【請求項2】
前記制御部は、前記自立コンセントに接続された前記自立負荷からの突入電流を検出すると、前記切換器を制御して前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える、請求項
1に記載の突入電流抑制回路。
【請求項3】
前記制御部は、前記自立負荷と前記自立コンセントとの接続が解除された場合、前記第1接続線から前記第2接続線への切換から所定時間が経過した場合、前記突入電流が所定の閾値以下となった場合、及び前記電力系統からの系統電力が回復した場合の少なくともいずれかに基づいて、前記切換器を制御して前記第2接続線から前記第1接続線に切り換える、請求項
1又は2に記載の突入電流抑制回路。
【請求項4】
前記制御部は、前記切換器を制御して前記第2接続線への切り換えを維持する、請求項
1又は2に記載の突入電流抑制回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える切換機能を利用する第1選択ボタン、及び前記切換機能を利用しない第2選択ボタンの選択をユーザから受け付け、受け付けた選択に基づいて前記切換器を制御する、請求項
1~4のいずれか1項に記載の突入電流抑制回路。
【請求項6】
分散電力発電装置と、
前記分散電力発電装置が発電した発電電力の供給を受ける自立電源装置と、
前記自立電源装置に設けられている、請求項1~
5のいずれか1項に記載の突入電流抑制回路と、
を備える分散型発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突入電流抑制回路及び突入電流抑制回路を備える分散型発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、停電時に発電装置が発電した電力を自立負荷に供給する電力変換システムが開示されている。特許文献1の電力変換システムは、太陽光発電装置などの分散型発電装置と、分散型発電装置が発電した発電電力と電力系統からの系統電力との連系を図る電力変換装置と、一般負荷と、自立負荷とを備えている。電力系統から系統電力が供給されている場合は、分散型発電装置、電力変換装置及び電力系統が接続されている状態で一般負荷に系統電力及び発電電力の少なくともいずれかの電力が供給される。一方、系統電力の供給が停止した停電時には、分散型発電装置及び電力変換装置が接続されている状態で自立負荷に発電電力が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の電力変換システムでは、停電時に自立負荷に発電電力が供給されるため、例えば冷蔵庫などの自立負荷に発電電力を供給して自立負荷を運転させることができる。しかし、許容電流量以上の電流が流れると分散型発電装置において自立負荷を解列する機能が備わっている場合には、自立負荷を分散型発電装置に接続した場合に、分散型発電装置に突入電流が流れ、自立負荷が分散型発電装置から解列されてしまう場合がある。そのため、自立負荷を使用できなくなり、ユーザの利便性が低下する。そこで、突入電流の発生に備えた対策が望まれている。
【0005】
そこで、本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、突入電流抑制回路及び突入電流抑制回路を備える分散型発電システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る突入電流抑制回路の特徴構成は、
分散電力発電装置が発電した発電電力の供給を受ける自立電源装置に設けられ、電力系統からの系統電力の供給が停止し、前記自立電源装置の自立コンセントに自立負荷が接続された場合に、前記自立負荷からの突入電流を抑制可能であり、
前記分散電力発電装置と前記自立電源装置とを接続する自立側供給線と前記自立コンセントが接続された自立接続線とを接続する第1接続線と、
前記自立側供給線と前記自立接続線とを、前記自立負荷からの突入電流を抑制可能な抵抗を介して接続する第2接続線と、
前記自立側供給線と前記自立接続線との接続を、前記第1接続線と前記第2接続線との間で切り換える切換器とを備え、
前記自立電源装置が前記分散電力発電装置から解列されると、前記切換器を制御して前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える制御部を備える点にある。
【0007】
系統電力の供給が停止した場合に分散電力発電装置が発電した発電電力の供給を受けるために、自立電源装置の自立コンセントに自立負荷が接続される。自立負荷を自立コンセントに接続すると、自立電源装置に突入電流が流れ込む場合がある。これにより、ひいては分散電力発電装置に突入電流が流れ込み、自立電源装置が分散電力発電装置から解列される場合がある。
上記特徴構成によれば、突入電流抑制回路が設けられているため、自立負荷からの突入電流が分散電力発電装置に流れ込むのを抑制できる。そのため、突入電流を生じさせる自立負荷を自立電源装置に接続した場合に、自立電源装置が分散電力発電装置から解列されるのを抑制できる。これにより、系統電力の供給を受けることができない場合に、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
【0009】
さらに、上記特徴構成によれば、突入電流抑制回路は、自立側供給線と自立接続線とを接続する第1接続線とは別に、自立側供給線と自立接続線とを抵抗を介して接続する第2接続線を有している。そして、第1接続線と第2接続線とは切換器により切り換え可能である。よって、自立負荷からの突入電流が自立電源装置に流れ込み、ひいては自立電源装置が分散電力発電装置から解列された場合には、切換器は第2接続線側に経路を切り換えることができる。
【0010】
そして、自立電源装置が分散電力発電装置から解列された後に、当該解列が解除され自立電源装置が分散電力発電装置から発電電力の供給を受けることが可能となったとする。この状態で、自立コンセントに再び自立負荷が接続された場合、切換器は抵抗を有する第2接続線側に経路を切り換えられているので、自立電源装置に突入電流が流れ込んでも第2接続線の抵抗において突入電流による電力が消費される。よって、分散電力発電装置に突入電流が流れず、自立電源装置が分散電力発電装置から解列されるのを抑制でき、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
ここで、突流電流を生じる自立負荷が接続されて自立電源装置が分散電力発電装置から解列された場合にのみ、抵抗を有する第2接続線側に経路を切り換えることで、言い替えれば、突入電流を生じない自立負荷が接続される場合には、第1接続線側に経路を切り換える、又は維持することで、突入電流が流れ込まない場合における抵抗での発電電力の消費を抑えることができる。
【0012】
さらに、上記特徴構成によれば、制御部は、自立電源装置が分散電力発電装置から解列されると、第1接続線から第2接続線に切り換える。これにより、自立電源装置が分散電力発電装置から解列された後に、当該解列が解除され、その後、自立コンセントに再び自立負荷が接続された場合、自立電源装置に突入電流が流れ込んでも自立電源装置が分散電力発電装置から解列するのを抑制でき、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
【0013】
本発明に係る突入電流抑制回路の更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記自立コンセントに接続された前記自立負荷からの突入電流を検出すると、前記切換器を制御して前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える点にある。
【0014】
上記特徴構成によれば、制御部は、突入電流を検出すると、第1接続線から第2接続線に切り換える。これにより、自立電源装置が分散電力発電装置から解列された後に、当該解列が解除され、その後、自立コンセントに再び自立負荷が接続された場合、自立電源装置に突入電流が流れ込んでも自立電源装置が分散電力発電装置から解列するのを抑制でき、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
【0015】
本発明に係る突入電流抑制回路の更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記自立負荷と前記自立コンセントとの接続が解除された場合、前記第1接続線から前記第2接続線への切換から所定時間が経過した場合、前記突入電流が所定の閾値以下となった場合、及び前記電力系統からの系統電力が回復した場合の少なくともいずれかに基づいて、前記切換器を制御して前記第2接続線から前記第1接続線に切り換える点にある。
【0016】
上記の場合、突入電流が分散電力発電装置に流れ込む可能性が低く、第2接続線から第1接続線に戻し、抵抗を介さずに分散電力発電装置の発電電力を自立コンセントに供給しても問題はない。よって、制御部は、これらの状態を検出すると、切換器を制御して第2接続線から第1接続線に切り換える。そして、自立電源装置が分散電力発電装置から解列された後に、当該解列が解除され自立電源装置が分散電力発電装置から発電電力の供給を受けることが可能となったとする。その後、再度、自立負荷を自立コンセントに接続する場合に、第2接続線から第1接続線に戻されていることで、抵抗を介さない第1接続線を介して、分散電力発電装置と自立コンセントとを接続する状態をデフォルトの状態とすることができる。よって、自立負荷を自立コンセントに接続しても突入電流が流れ込まない場合には、第1接続線を介して抵抗を介さずに発電電力を自立コンセントに供給可能であるので、自立コンセントからの供給電力の低下を抑制できる。
【0017】
本発明に係る突入電流抑制回路の更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記切換器を制御して前記第2接続線への切り換えを維持する点にある。
【0018】
自立負荷と自立コンセントとの接続が解除された場合、第1接続線から第2接続線への切換から所定時間が経過した場合、突入電流が所定の閾値以下となった場合、及び電力系統からの系統電力が回復した場合であっても、制御部は第1接続線から、抵抗を有する第2接続線への切り換えを維持する。そして、自立電源装置が分散電力発電装置から解列され、その後、当該解列が解除され自立電源装置が分散電力発電装置から発電電力の供給を受ける。この状態で再び自立負荷を自立コンセントに接続した場合に、この接続により突入電流が流れ込んでも、抵抗を有する第2接続線の存在により突入電流による分散電力発電装置の解列を抑制できる。よって、自立電源装置が分散電力発電装置から解列されるのを抑制でき、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
【0019】
本発明に係る突入電流抑制回路の更なる特徴構成は、
前記制御部は、前記第1接続線から前記第2接続線に切り換える切換機能を利用する第1選択ボタン、及び前記切換機能を利用しない第2選択ボタンの選択をユーザから受け付け、受け付けた選択に基づいて前記切換器を制御する点にある。
【0020】
突入電流が生じる自立負荷を自立コンセントに接続する場合に、ユーザによっては、抵抗を介さない第1接続線を介した自立コンセントと分散電力発電装置との接続を望む場合もある。逆に、ユーザによっては、抵抗を有する第2接続線を介した自立コンセントと分散電力発電装置との接続を望む場合もある。自立コンセントと分散電力発電装置との接続状態をどのようにするかをユーザが選択できるため、ユーザの自由度を向上できる。
【0021】
本発明に係る分散型発電システムの特徴構成は、
分散電力発電装置と、
前記分散電力発電装置が発電した発電電力の供給を受ける自立電源装置と、
前記自立電源装置に設けられている、上記の突入電流抑制回路と、
を備える点にある。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】突入電流抑制回路を備える分散型発電システムのブロック図である。
【
図2】
突入電流抑制回路において、抵抗を有さない第1接続線に切り換えられている場合の説明図である。
【
図3】
突入電流抑制回路において、抵抗を有する第2接続線に切り換えられている場合の説明図である。
【
図4】
突入電流抑制回路を利用した突入電流抑制処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
〔実施形態〕
以下に、本発明の実施形態に係る突入電流抑制回路を備える分散型発電システムについて、
図1を用いて説明する。
以下の分散型発電システムでは、分散型発電装置が発電した発電電力と電力系統からの系統電力とを連系させて電力を一般負荷に供給できる。しかし、電力系統からの系統電力の供給が停止する停電時などには、分散型発電装置が自立運転し、分散型発電装置からの発電電力のみが利用可能である。このような停電時には、一般負荷のうちの一部の負荷、又は一般負荷とは異なる負荷である自立負荷が、自立コンセントを介して分散型発電装置が発電した発電電力の供給を受ける。自立負荷が自立コンセントに接続された場合に、いわゆる突入電流と言われる大電流が生じる場合があり、突入電流が分散型発電装置に流れ込むことで、自立コンセントが分散型発電装置から解列される。つまり、自立負荷は自立コンセントから発電電力の供給を受けることができなくなる。
そこで、以下の分散型発電システムでは、自立負荷からの突入電流によって分散型発電装置が解列された場合に、当該解列が解除され自立負荷が再び自立コンセントに接続された場合に、自立コンセントが分散型発電装置から解列されるのを抑制する。
【0024】
なお、本実施形態において、突入電流とは、自立負荷を自立コンセントに接続した場合に流れる大電流をいう。自立負荷が運転、運転停止及び運転再開などのように間欠運転する場合には、間欠運転の最初、つまり運転が開始されるたびに自立負荷と自立コンセントとが電気的に接続される。よって、間欠運転の最初において流れる大電流もまた突入電流に含まれる。例えば、冷蔵庫などの自立負荷は、稼働状態が低下した待機期間と稼働状態が上昇した稼働期間とが交互である間欠運転を行っており、冷蔵庫が稼働期間を迎えるたびに大電流が流れる。
【0025】
ここで、燃料電池発電装置は、約7Aの電流及び約100Vの電圧によって約700Wの発電電力を出力している。そして、約7Aよりも大きい例えば10A以上の電流が突入電流である。また、突入電流が流れる期間はこれに限定されないが、自立負荷を自立コンセントに接続してから、例えば500μs程度の一時的な期間である。
【0026】
(1)分散型発電システムの構成
まず、分散型発電システム1の構成について説明する。
図1に示すように、分散型発電システム1は、燃料電池発電装置(分散電力発電装置)10と、電力変換装置20と、自立電源装置30と、電力系統からの系統電力40と、自立電源装置30に設けられた突入電流抑制回路50と、分散型発電システム1の各部を制御する制御部70と、ユーザからの入力を受け受けるリモコン80とを備えている。
【0027】
燃料電池発電装置10は、図示しないアノード、カソード及び電解質を有する燃料電池セルを備えており、供給された燃料ガス及び空気を反応させて発電する。燃料電池発電装置10は、電力変換装置20を介して系統電力40に接続されている。
【0028】
電力変換装置20は、燃料電池発電装置10と系統電力40との間で連系運転可能なように、燃料電池発電装置10で発電された直流電力の直流電圧を、系統電力の交流電圧に変換する。電力変換装置20は、燃料電池発電装置10のアノード及びカソードそれぞれに接続された系統連系線29、29を有している。系統連系線29、29には、昇圧回路21、インバータ回路23、平滑回路25及び連系切換器27が接続されている。
【0029】
昇圧回路21は、燃料電池発電装置10の直流の発電電力の直流電圧を昇圧する。インバータ回路23は、昇圧回路21で昇圧された直流電圧を交流電圧に変換する。平滑回路75は、インバータ回路23で変換された交流電圧のノイズを除去する。
【0030】
連系切換器27は、スイッチング素子27a、27aを有しており、系統連系線29、29と、系統電力40が接続された系統側供給線41、41との接続及び切断を切り換える。連系切換器27は、系統電力40の供給が停止する停電時などに、スイッチング素子27a、27aを開状態とし、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを切断する。連系切換器27は、系統電力40の供給が回復すると、スイッチング素子27a、27aを閉状態とし、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを接続する。
【0031】
系統側供給線41には一般負荷61が接続される。系統連系線29、29と系統側供給線41、41とが接続されている場合に、一般負荷61は、系統連系線29、29及び系統側供給線41介した燃料電池発電装置10が発電した発電電力の供給、及び、系統電力40の供給の少なくともいずれかの供給を受けることができる。一般負荷61は、例えばエアコン、照明、テレビ及び冷蔵庫などの家電機器である。
【0032】
系統連系線29、29から自立側供給線37、37が分岐しており、自立電源装置30は、自立側供給線37、37を介して系統連系線29、29と接続されている。よって、燃料電池発電装置10で発電された発電電力が自立側供給線37から自立電源装置30に供給される。
【0033】
自立電源装置30は、自立トランス31、自立切換器33、突入電流抑制回路50、及び、自立コンセント35を備えている。
自立トランス31は、自立側供給線37、37に接続されており、燃料電池発電装置10で発電された発電電力である交流電力の電圧を変圧して調整する。
【0034】
自立切換器33は、自立トランス31から自立コンセント35まで延びる自立接続線39、39に設けられており、スイッチング素子33a、33aを有している。自立切換器33は、スイッチング素子33a、33aにより、自立トランス31の出力と自立コンセント35との接続及び切断を切り換える。
自立コンセント35は、自立接続線39に設けられており、接続された自立負荷63に、燃料電池発電装置10の自立運転により発電された発電電力を供給する。
【0035】
前述の通り、連系切換器27は、系統電力40の供給が停止する停電時などに、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを切断する。この場合、自立切換器33は、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とが切断されている状態で、スイッチング素子33a、33aを閉状態とし、系統連系線29、29と自立コンセント35とを接続する。これにより、自立負荷63を自立コンセント35に接続すると、自立負荷63は自立コンセント35から燃料電池発電装置10が発電した発電電力の供給を受けることができる。自立負荷63は、例えば一般負荷61のうち限られた装置であり、冷蔵庫及びエアコン等である。
【0036】
逆に、連系切換器27は、系統電力40の供給が回復すると、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを接続する。この場合、自立運転を解除するために、自立切換器33は、スイッチング素子33a、33aを開状態とし、系統連系線29、29及び自立側供給線37、37と自立コンセント35とを切断する。
【0037】
突入電流抑制回路50は、自立切換器33と自立コンセント35との間において、自立接続線39に設けられている。突入電流抑制回路50は、切換器51と、第1接続線53と、第2接続線55とを有する。切換器51は、一端51aが自立切換器33の出力端側に接続されており、他端が第1接続線53の一端51b又は第2接続線55の一端51cのいずれかに切り換えて接続可能に構成されている。第1接続線53は、一端51bから自立コンセント35側に延びている。第2接続線55も同様に、一端51cから自立コンセント35側に延びている。第2接続線55には、抵抗56が接続されている。
【0038】
ここで、自立切換器33が、系統連系線29、29と自立コンセント35とを接続している場合、燃料電池発電装置10の発電電力が自立コンセント35に供給可能である。上記構成の突入電流抑制回路50において、
図2に示すように切換器51の他端が第1接続線53の一端51bに接続されると、燃料電池発電装置10と自立電源装置30とを接続する自立側供給線37が、自立コンセント35が接続された自立接続線39に接続される。
一方、
図3に示すように、切換器51の他端が第2接続線55の一端51cに接続されると、自立側供給線37が抵抗56を介して自立接続線39に接続される。
【0039】
上記構成によれば、突入電流抑制回路50は、自立側供給線37と自立接続線39とを接続する第1接続線53とは別に、自立側供給線37と自立接続線39とを抵抗56を介して接続する第2接続線55を有している。そして、第1接続線53と第2接続線55とは切換器51により切り換え可能である。よって、自立負荷63からの突入電流が自立電源装置30に流れ込み、ひいては自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列された場合には、切換器51は第1接続線53側から第2接続線55側に経路を切り換えることができる。なお、切換器51はデフォルトでは第1接続線53側接続されているものとする。
【0040】
そして、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列された後に、当該解列が解除され自立電源装置30が燃料電池発電装置10から発電電力の供給を受けることが可能となったとする。この状態で、自立コンセント35に再び自立負荷63が接続された場合、自立電源装置30に突入電流が流れ込んでも第2接続線55の抵抗56において突入電流による電力が消費される。よって、燃料電池発電装置10に突入電流が流れず、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列されるのを抑制でき、自立負荷63が使用できなくなるのを抑制できる。
【0041】
ここで、突流電流を生じる自立負荷63が接続されて自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列された場合にのみ、抵抗56を有する第2接続線55側に経路を切り換える。言い替えれば、突入電流を生じない自立負荷63が接続される場合には、第1接続線53側に経路を切り換える、又は第1接続線53側に維持することで、突入電流が流れ込まない場合における抵抗での発電電力の消費を抑えることができる。
【0042】
さらに説明すると、突流電流の流れ込みに備えて常に抵抗を介して発電電力を自立コンセント35に供給する場合には、突入電流が流れ込まない場合においても抵抗で発電電力が消費される。つまり、上記突入電流抑制回路50が抵抗56を有する第2接続線55のみを有しており、第1接続線53を有していない場合、燃料電池発電装置10からの発電電力が抵抗56において常に消費される。
【0043】
一方、上記の突入電流抑制回路50では、切換器51により、燃料電池発電装置10からの発電電力が抵抗を通過しない第1接続線53と、発電電力が抵抗56を通過する第2接続線55とを切り換えることができる。よって、突入電流が流れ込まない場合には抵抗を介さずに第1接続線53を介して発電電力を自立コンセント35に供給可能であるので、自立コンセント35からの供給電力の低下を抑制できる。
【0044】
(2)突入電流抑制処理の流れ
上述の連系切換器27における切換制御、自立切換器33における切換制御、及び、突入電流抑制回路50における切換制御等は、制御部70によって行われる。これにより、突入電流抑制処理が行われる。制御部70による突入電流抑制処理の流れについて、
図4を用いて説明する。
【0045】
ステップS1:制御部70は、系統電力40の供給が停止する停電を検出すると(ステップS1においてYes)、ステップS2に処理を進める。
制御部70は、停電を検出していない場合は、ステップS1の処理を継続する。この場合、制御部70は、連系切換器27においてスイッチング素子27a、27aを閉状態とし、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを接続している。さらに、制御部70は、自立切換器33においてスイッチング素子33a、33aを開状態とし、系統連系線29、29と自立コンセント35とを切断している。
【0046】
ステップS2:制御部70は、停電を検出すると、連系切換器27においてスイッチング素子27a、27aを開状態とし、系統連系線29、29と系統側供給線41、41とを切断する。さらに、制御部70は、自立切換器33においてスイッチング素子33a、33aを閉状態とし、系統連系線29、29と自立コンセント35とを接続する。
【0047】
ステップS3:自立コンセント35に自立負荷63が接続されると、突入電流が流れる場合がある。突入電流が燃料電池発電装置10に流れ込むと、自立コンセント35が燃料電池発電装置10から解列される。これは、例えば、大電流が流れ込むことで燃料電池発電装置10が故障等することを阻止するためである。
【0048】
例えば、電力変換装置20において、系統連系線29の電流を検出する検出器が設けられている。制御部70は、検出器で検出された電流値の上昇値が所定の閾値以上の場合に突入電流が流れ込んだことを検出する。この場合、制御部70は、自立切換器33のスイッチング素子33aを開状態とし、燃料電池発電装置10から自立コンセント35を解列する。なお、突入電流の流れ込みにより電圧及び電力等が上昇するため、制御部70は、検出器が検出した電圧値及び電力値等の上昇に基づいて突入電流の流れ込みを検出してもよい。
自立コンセント35が燃料電池発電装置10から解列されると(ステップS3においてYes)、制御部70はステップS4に処理を進める。
【0049】
ステップS4:制御部70は、突入電流により自立コンセント35を燃料電池発電装置10から解列すると、突入電流抑制回路50をON側に切り換える。つまり、制御部70は、
図3に示すように、切換器51の他端を第2接続線55の一端51cに接続する。よって、自立側供給線37が抵抗56を介して自立接続線39に接続される。
この場合、ステップS3において自立コンセント35が燃料電池発電装置10から解列された後に、当該解列が解除され自立電源装置30が燃料電池発電装置10から発電電力の供給を受けることが可能となったとする。そして、自立コンセント35に再び自立負荷63が接続された場合、突入電流抑制回路50がON側に切り換えられているので、自立電源装置30に突入電流が流れ込んでも自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列されるのを抑制できる。結果として、自立負荷63が使用できなくなるのを抑制できる。
【0050】
なお、通常時(電流値が所定の閾値に到達まで上昇せず、突入電流が流れていない場合)は、突入電流抑制回路50はOFF側に接続されている。つまり、突入電流抑制回路50において、
図2に示すように切換器51の他端が第1接続線53の一端51bに接続されている。これにより、自立側供給線37が自立接続線39に接続されており、燃料電池発電装置10から自立コンセント35に抵抗を介さずに発電電力が供給される。
【0051】
ステップS5、S6:制御部70は、突入電流抑制回路50をOFF側に切り換えるか否かを判断する。制御部70は、自立負荷63と自立コンセント35との接続が解除された場合、第1接続線53から第2接続線55への切換から所定時間が経過した場合、突入電流が所定の閾値以下となった場合、及び電力系統からの系統電力40が回復した場合の少なくともいずれかに基づいて、突入電流抑制回路50をOFF側に切り換えると判断すると(ステップS5においてYes)、切換器51を制御して第2接続線55から第1接続線53に切り換える(ステップS6)。
【0052】
自立負荷63が自立コンセント35から外された場合には、自立電源装置30に突入電流が流れ込むことがなく、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列されることはない。
また、突入電流の自立電源装置30への流れ込みに備えて第2接続線55に切り換えた後、所定時間経過すると、突入電流が小さくなっている可能性がある。小さな突入電流の流れ込みによっては、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列される可能性が低い。
また、突入電流が所定の閾値以下となり小さくなっている場合、当該突入電流の流れ込みによっては、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列される可能性が低い。
また、電力系統からの系統電力40が回復した場合には、自立負荷63は、自立コンセント35から外され、系統電力40の供給を受けるように接続されるようになる。
【0053】
上記の場合、突入電流が燃料電池発電装置10に流れ込む可能性が低く、第2接続線55から第1接続線53に戻しても、抵抗56を介さずに燃料電池発電装置10の発電電力を自立コンセント35に供給しても問題はない。よって、制御部70は、これらの状態を検出すると、切換器51を制御して第2接続線55から第1接続線53に切り換える。
ステップS3において自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列されると、その後、当該解列が解除され自立電源装置30が燃料電池発電装置10から発電電力の供給を受ける。そして、前述のように第2接続線55から第1接続線53に戻すことで、再度、自立負荷63を自立コンセント35に接続する場合に、抵抗を介さない第1接続線53を介して、燃料電池発電装置10と自立コンセント35とを接続する状態をデフォルトの状態とすることができる。よって、自立負荷63を自立コンセント35に接続しても突入電流が流れ込まない場合には、第1接続線53を介して抵抗を介さずに発電電力を自立コンセント35に供給可能であるので、自立コンセント35からの供給電力の低下を抑制できる。
【0054】
なお、突入電流抑制回路50をOFF側に切り換えないと判断すると(ステップS5においてNo)、第2接続線55への切換を維持する(ステップS6)。
つまり、自立負荷63と自立コンセント35との接続が解除された場合、第1接続線53から第2接続線55への切換から所定時間が経過した場合、突入電流が所定の閾値以下となった場合、及び電力系統からの系統電力40が回復した場合であっても、制御部70は第1接続線53から、抵抗56を有する第2接続線55への切り換えを維持する。そして、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列され、その後、当該解列が解除され自立電源装置30が燃料電池発電装置10から発電電力の供給を受ける。この状態で再び自立負荷63を自立コンセント35に接続した場合に、この接続により突入電流が流れ込んでも、抵抗56を有する第2接続線55の存在により突入電流による燃料電池発電装置10の解列を抑制できる。よって、自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列されるのを抑制でき、自立負荷が使用できなくなるのを抑制できる。
【0055】
上記において、突入電流によって自立電源装置30が燃料電池発電装置10から解列された場合、自立運転は解除される。よって、自立負荷63は燃料電池発電装置10から解列されており、燃料電池発電装置10から発電電力の供給を受けることができない。なお、この場合、燃料電池発電装置10はアイドリング運転している。
【0056】
〔他の実施形態〕
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【0057】
(1)上記実施形態では、自立コンセント35に自立負荷63を接続した場合に突入電流が自立電源装置30に流れ込んで、自立コンセント35が燃料電池発電装置10から解列されると、制御部70が自動的に突入電流抑制回路50において第1接続線53から第2接続線55に切り換える。しかし、突入電流が自立電源装置30に流れ込んだ場合に、突入電流抑制回路50において第1接続線53から第2接続線55に切り換えるか否かをユーザが選択可能であってもよい。
【0058】
図5に示すようにリモコン80には、突入電流対策ONボタン(第1選択ボタン)81と、突入電流対策OFFボタン(第2選択ボタン)83とが設けられている。突入電流対策ONボタン81は、突入電流抑制回路50において第1接続線53から第2接続線55に切り換える機能を利用するための入力ボタンである。突入電流対策OFFボタン83は、突入電流抑制回路50において第1接続線53から第2接続線55に切り換える機能を利用しないための入力ボタンである。
【0059】
制御部70は、突入電流対策ONボタン81が入力されると、上記の通り、自立コンセント35に自立負荷63を接続した場合に突入電流が自立電源装置30に流れ込んで、自立コンセント35が燃料電池発電装置10から解列されると、突入電流抑制回路50において第1接続線53から第2接続線55に切り換える。
一方、制御部70は、突入電流対策OFFボタン83が入力されると、制御部70は突入電流抑制回路50において切換器51を第1接続線53のみに接続する。
【0060】
突入電流が生じる自立負荷63を自立コンセント35に接続する場合に、ユーザによっては、抵抗が設けられていない第1接続線53を介した自立コンセント35と燃料電池発電装置10との接続を望む場合もある。逆に、ユーザによっては、抵抗56を有する第2接続線55を介した自立コンセント35と燃料電池発電装置10との接続を望む場合もある。自立コンセント35と燃料電池発電装置10との接続状態をどのようにするかをユーザが選択できるため、ユーザの自由度を向上できる。
【0061】
(2)上記実施形態では、突入電流抑制回路50は、自立接続線39において自立コンセント35に隣接して配置されている。しかし、自立コンセント35に自立負荷63を接続した場合に、当該接続により生じる突入電流が燃料電池発電装置10に流れ込まなければよく、突入電流抑制回路50は、電力変換装置20、自立側供給線37及び自立接続線39の経路内のいずれかの場所に接続されていればよい。
例えば、突入電流抑制回路50は、自立接続線39のうち自立トランス31と自立切換器33との間に設けられていてもよい。また、例えば、突入電流抑制回路50は、自立側供給線37に設けられていてもよい。また、例えば、突入電流抑制回路50は、電力変換装置20において系統連系線29のいずれかの位置に設けられていてもよい。
【0062】
また、上記実施形態では、突入電流抑制回路50は、一対の自立接続線39の一方にのみ設けられているが、一対の自立接続線39の両方に設けられていてもよい。
【0066】
(3)上記実施形態では、発電装置として燃料電池発電装置を例に挙げたが、これに限定されず発電装置は太陽光発電装置及び風力発電装置等の分散型発電装置を挙げることができる。
【符号の説明】
【0067】
1 :分散型発電システム
10 :燃料電池発電装置(分散電力発電装置)
27 :連系切換器
29 :系統連系線
30 :自立電源装置
35 :自立コンセント
37 :自立側供給線
39 :自立接続線
40 :系統電力
41 :系統側供給線
50 :突入電流抑制回路
51 :切換器
53 :第1接続線
55 :第2接続線
56 :抵抗
63 :自立負荷
81 :突入電流対策ONボタン(第1ボタン)
83 :突入電流対策OFFボタン(第2ボタン)