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  • 特許-3次元形状加工方法 図1
  • 特許-3次元形状加工方法 図2
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  • 特許-3次元形状加工方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】3次元形状加工方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/10 20170101AFI20230120BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230120BHJP
【FI】
B29C64/10
B33Y10/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019082154
(22)【出願日】2019-04-23
(65)【公開番号】P2020179522
(43)【公開日】2020-11-05
【審査請求日】2021-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078721
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 喜樹
(74)【代理人】
【識別番号】100121142
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 恭一
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 亮輔
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-203191(JP,A)
【文献】特開2005-349583(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/10,64/118,64/20
B33Y 10/00,30/00,40/00,50/00,70/00,
80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
切削加工と積層造形とによってワークを所定の3次元形状に加工する3次元形状加工方法であって、
前記積層造形の対象部のみを、前記3次元形状の形状寸法より大きく形成する工程と、
大きく形成した前記対象部に前記積層造形を行う工程と、
前記積層造形を行った領域を切削加工して前記3次元形状を完成させる工程と、
を実行することを特徴とする3次元形状加工方法。
【請求項2】
前記対象部のみを大きく形成する工程では、前記積層造形により前記対象部のエッジ部にビードを形成して大きくすることを特徴とする請求項1に記載の3次元形状加工方法。
【請求項3】
前記対象部のみを大きく形成する工程では、前記ワークを切削加工する際に前記対象部のエッジ部を前記3次元形状の形状寸法よりも大きくなるように切削加工して大きくすることを特徴とする請求項1又は2に記載の3次元形状加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削加工と積層造形とを用いて3次元形状物を加工する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、切削加工技術と積層造形技術とを組み合わせることで、形状的な自由度が高く形状精度も良い3次元形状加工技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、パウダーベッドタイプの積層造形と切削加工とを組み合わせて造形途中に造形物表面を切削除去して形状精度を向上する技術が開示されている。
また、特許文献2には、材料噴射タイプの積層造形と切削加工とを組み合わせて造形物の表面粗さを低減する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-280173号公報
【文献】特開2018-12336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、前述の技術では、切削加工面に積層造形を行った場合、切削加工での仕上げ加工が必要な場合に削り残しが発生してしまう場合がある。積層造形はその特性上、オーバーハング形状の造形が困難であり、切削加工で仕上げた面に積層造形を行うとその境界面及び積層造形部の切削代が確保できなくなる場合がある。また、積層造形により積層を重ねると先細りが発生し、同様に切削代が確保できなくなる場合がある。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような問題を解決すべく案出されたもので、切削加工と積層造形とを組み合わせても形状が良好な3次元形状物を作製できる3次元形状加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、切削加工と積層造形とによってワークを所定の3次元形状に加工する3次元形状加工方法であって、
前記積層造形の対象部のみを、前記3次元形状の形状寸法より大きく形成する工程と、
大きく形成した前記対象部に前記積層造形を行う工程と、
前記積層造形を行った領域を切削加工して前記3次元形状を完成させる工程と、を実行することを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1の構成において、前記対象部のみを大きく形成する工程では、前記積層造形により前記対象部のエッジ部にビードを形成して大きくすることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2の構成において、前記対象部のみを大きく形成する工程では、前記ワークを切削加工する際に前記対象部のエッジ部を前記3次元形状の形状寸法よりも大きくなるように切削加工して大きくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、積層造形の対象部のみを大きく形成して積層造形を行うので、切削加工領域と積層造形領域との境界面及び積層造形領域の切削代を確保することができ、良好な形状で3次元形状物を作製できる。また、最小限の切削代で加工可能であるため生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】3次元形状加工装置の概略図である。
図2】3次元形状物の斜視図である。
図3】(A)は切削加工により作製される3次元形状物を、(B)は切削加工と積層造形とにより作製される3次元形状物をそれぞれ示す。
図4】(A)~(E)は3次元形状加工方法の手順を示す説明図である。
図5】積層開始面の拡大図で、(A)は積層造形の場合、(B)は切削加工の場合をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に関する3次元形状加工方法を実施する3次元形状加工装置の構成の一例を示した概略図を示す。
この3次元形状加工装置1は、切削加工用主軸2、切削工具3、積層造形ユニット4、ワーク6を固定するテーブル5、NC装置7を含んでなる。
NC装置7は、加工プログラムを記憶する記憶部8、加工プログラム解釈部9、機械動作制御部10を備えている。
記憶部8に記憶された加工プログラムは加工プログラム解釈部9にて機械動作に変換され、機械動作制御部10を介して切削加工用主軸2、積層造形ユニット4、ワーク6が固定されたテーブル5を動作させながら切削工具3による切削加工と、積層造形ユニット4による積層造形を行い、所定の3次元形状物を作製する。積層造形ユニット4は、供給した材料粉末に光ビームを照射して固化させる等の周知の構造となっている。
【0010】
図2は、3次元形状加工装置1で作製可能な3次元形状物の一例を示している。この3次元形状物11では、図3(A)にも示すように、Z方向へカーブしながら突出する突出部12,12がX方向で所定間隔をおいて並設されていることから、突出部12,12の間では切削工具3が干渉するため切削加工のみでは作製できない。よって、図3(B)に示すように、切削加工により形成される切削加工領域13と、積層造形により形成される積層造形領域14(ハッチングで示す)とを組み合わせることにより作製する。以下、その作製手順を説明する。
まず、図4(A)に示すワーク6を切削工具3により切削加工して、図4(B)に示すように、加工形状の下部を形成する。ここでは切削加工領域13と積層造形領域14との境界面より下部を形状寸法まで加工を行う。なお、本形態では切削加工により加工形状の下部を加工しているが、他の金属加工方法(鋳造や鍛造等)を用いてあらかじめ形成しておいてもよい。
【0011】
続いて、図4(C)に示すように、切削加工領域13と積層造形領域14との境界面のエッジ部に、積層造形または切削加工により、形状寸法より大きい積層開始面17を形成する。
図5は、積層開始面17の拡大図である。積層造形により積層開始面17を形成する場合は、図5(A)のように境界面のエッジ部にビード16を形成し、寸法形状より大きくする。この際、積層開始面17に対して積層造形ユニット4の積層造形用加工ヘッド18を傾斜させて積層造形を行うことで、エッジ部に効率的にビード16が形成され、寸法形状より大きい積層開始面17が形成される。
一方、切削加工により積層開始面17を形成する場合は、図5(B)のように境界面のエッジ部が寸法形状より大きくなるように切削工具3によってワーク6の切削加工を行うことで、寸法形状より大きい積層開始面17ができる。
【0012】
これにより切削加工領域13と積層造形領域14との境界面での切削代が十分に確保できる。境界面のエッジ部は全周を拡大することで均一な取り代が得られるが、機能上切削加工で仕上げる必要のない面に関してはエッジ部を拡大しなくてもよい。また、積層開始面17は切削加工と積層造形とを組み合わせて形成してもよい。
【0013】
続いて、寸法形状の大きい積層開始面17から積層造形領域14を積層造形し加工形状の上部を形成する。この際、積層造形領域14や積層開始面17を切削加工する場合に切削工具3が干渉する場合は、図4(D)に示すように、途中で切削加工に切り替えて、干渉を回避しながら積層造形を行う。積層開始面17を大きく形成したことにより、積層造形領域14を寸法形状より大きく積層造形可能であるため、切削での仕上げ加工時の取り代の確保も容易となる。
最後に、図4(E)に示すように、積層造形領域14の表面及び切削加工領域13との境界面を切削工具3で切削加工して3次元形状物11を完成させる。
【0014】
このように、上記形態の3次元形状加工方法によれば、積層開始面17(積層造形の対象面)を、3次元形状の形状寸法より大きく形成する工程(図4(C))と、大きく形成した積層開始面17に積層造形を行う工程(図4(D))と、積層造形領域14を切削加工して3次元形状を完成させる工程(図4(E))と、を実行することで、切削加工領域13と積層造形領域14との境界面及び積層造形領域14の切削代を確保することができ、良好な形状で3次元形状物11を作製できる。また、最小限の切削代で加工可能であるため生産性が向上する。
【0015】
なお、以上の加工方法では1つの3次元形状加工装置を用いて説明したが、切削加工と積層造形とを別々の装置として本発明の加工方法を実行しても良い。3次元形状物も上記形態に限定されないことは当然である。
また、上記形態では、切削加工領域と積層造形領域との境界面を積層開始面(積層造形の対象面)として説明を行ったが、積層造形領域で切削加工を実施した面や積層造形の途中の面も積層造形の対象面として本発明を実施して差し支えない。
【符号の説明】
【0016】
1・・3次元形状加工装置、2・・切削加工用主軸、3・・切削工具、4・・積層造形ユニット、5・・テーブル、6・・ワーク、7・・NC装置、8・・記憶部、9・・加工プログラム解釈部、10・・機械動作制御部、11・・3次元形状物、12・・突出部、13・・切削加工領域、14・・積層造形領域、16・・ビード、17・・積層開始面、18・・積層造形用加工ヘッド。
図1
図2
図3
図4
図5