(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】搬送装置および搬送方法
(51)【国際特許分類】
B65G 43/00 20060101AFI20230120BHJP
B65G 47/31 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B65G43/00 D
B65G47/31 F
B65G47/31 G
(21)【出願番号】P 2019083823
(22)【出願日】2019-04-25
【審査請求日】2021-09-17
(73)【特許権者】
【識別番号】309036221
【氏名又は名称】三菱重工機械システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100077
【氏名又は名称】大場 充
(74)【代理人】
【識別番号】100136010
【氏名又は名称】堀川 美夕紀
(74)【代理人】
【識別番号】100130030
【氏名又は名称】大竹 夕香子
(74)【代理人】
【識別番号】100203046
【氏名又は名称】山下 聖子
(72)【発明者】
【氏名】右高 綾
【審査官】寺川 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-261802(JP,A)
【文献】特開2011-088741(JP,A)
【文献】特開2006-056693(JP,A)
【文献】特開2002-113679(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 43/00
B65G 47/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流工程から受け渡される物品を搬送し、かつ、下流工程に向けて受け渡す搬送部と、
前記搬送部の動作を制御する制御部と、を備え、
前記搬送部は、
前記物品を搬送するコンベヤと、
前記コンベヤ上に撮影視野を有するカメラと、を備え、
前記カメラは、
前記撮影視野において連続的に撮影される画像が、搬送方向に部分的に重なるように撮影し、
前記制御部は、
前記画像の搬送方向の寸法をL、連続して撮影された所定数の前記画像に存在する前記物品の平均個数をNa、および、前記下流工程において要求される搬送能力をSとすると、前記コンベヤの搬送速度を以下の式(2)により算出し、
Vn=L×S/Na…式(2)
かつ、
前記画像の搬送方向の寸法に相当する前記コンベヤの移動距離において、前記搬送速度を維持して前記コンベヤが走行するように制御する、
搬送装置。
【請求項2】
前記コンベヤの走行距離を検出する距離計を備え、
前記制御部は、
前記距離計で検出された前記走行距離に基づいて、前記搬送速度で前記コンベヤが走行する距離を制御する、
請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記搬送部は、
前記上流工程から前記物品を受け渡すアキュームコンベヤ
と、
前
記アキュームコンベヤの下流に隣接して配置され、かつ、前記アキュームコンベヤから搬送の向きを90度かえて前記物品が受け渡される
搬出コンベアと、を備える、
請求項
1または請求項2に記載の搬送装置。
【請求項4】
上流工程から受け渡される物品を搬送し、かつ、下流工程に向けて受け渡すコンベヤによる搬送方法であって、
カメラで撮影された前記コンベヤ上の撮影視野に存在する前記物品の
平均個数から前記下流工程において要求される搬送能力に対応する前記コンベヤの搬送速度を求め、かつ、前記撮影視野の搬送方向の寸法Lに相当する距離だけ、前記搬送速度で前記コンベヤが走行するように制御
し、
前記カメラは、
前記撮影視野において連続的に撮影される画像が、搬送方向に部分的に重なるように撮影し、
前記搬送速度は、
前記搬送方向の寸法L、連続して撮影された所定数の前記画像に存在する前記物品の前記平均個数をNa、および、前記下流工程において要求される搬送能力をSとすると、以下の式(2)により算出される、
搬送方法。
Vn=L×S/Na…式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば飲料充填システムにおいて、飲料が充填された容器を上流工程から下流工程に向けて搬送する搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック製の容器に製品液を充填する飲料充填システムにおいては、上流工程に該当する例えばフィラ(充填機)およびキャッパ(打線機)と下流工程に該当する例えばラベラ(ラベル貼付け機)との間に、コンベヤ装置が設けられている。
フィラおよびキャッパにおいては、容器に製品液が充填されるとともに封栓される。封栓された容器は、鉛直方向に立った状態でコンベヤ装置によりラベラまで搬送される。ラベラでは、搬送されてきた容器の胴体を覆うようにラベルが貼り付けられる。
【0003】
このコンベヤ装置は、フィラおよびキャッパから、ランダムな分布となって複数列の状態で送り出される容器を搬送する。このコンベヤ装置は、上流側においては複数列とされた容器を搬送するが、搬送が進むのにつれて容器の列数を絞っていき、最終的には単列の状態で容器を搬送して、ラベラに供給する。コンベヤ装置は、一例として、上流側から下流側に沿い、アキュームコンベヤと、多列コンベヤと、コンバイナと、単列コンベヤを順に配列して、前述の複数列から単列への搬送を実現する。
【0004】
特許文献1には、アキュームコンベヤから多列コンベヤに供給する容器の単位時間当たりの供給量を均一に制御することができるコンベヤ駆動制御装置が開示されている。特許文献1の制御装置によれば、ラベラへの容器の供給が過剰になったり、過少になったりするのを避けて、ラベラへの容器の供給量を適正に制御することができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1は、アキュームコンベヤ上の撮影領域をカメラで撮影し、画像処理することにより、撮影領域に存在する容器本数、さらには計測領域に存在する容器群の本数を算出する。各容器群が、アキュームコンベヤから多列コンベヤに搬出される際には、容器本数が多いときにはアキュームコンベヤ速度を減速し、容器本数が少ないときにはアキュームコンベヤ速度を増速する。
【0007】
しかし、アキュームコンベヤにおいて容器を搬送している過程で容器の配列が変わることがあり、例えばカメラで撮影したあとに撮影領域に存在する容器の本数が変わりえる。また、アキュームコンベヤにおける容器の搬送状態が下流の多列コンベヤに引き継がれるとは限らない。したがって、アキュームコンベヤの速度を増減させても、アキュームコンベヤより下流における容器の供給量を均一に制御することができないことがある。そうすると、下流工程の例えばラベラへの容器の供給に過不足が生じてしまう。
以上より、本発明は、上流工程から受け渡される容器などの物品を下流工程で要求される搬送能力に整合した搬送速度で供給できる搬送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の搬送装置は、上流工程から受け渡される物品を搬送し、かつ、下流工程に向けて受け渡す搬送部と、搬送部の動作を制御する制御部と、を備える。
本発明における搬送部は、物品を搬送するコンベヤと、コンベヤ上に撮影視野を有するカメラと、を備える。
また、本発明における制御部は、カメラで撮影された画像に存在する物品の個数から下流工程において要求される搬送能力に対応するコンベヤの搬送速度を求める。本発明における制御部は、当該画像の搬送方向の寸法に相当するコンベヤの移動距離において、搬送速度を維持してコンベヤが走行するように制御する。
【0009】
本発明は、好ましくは、コンベヤの走行距離を検出する距離計を備え、制御部は、距離計で検出された走行距離に基づいて、搬送速度でコンベヤが走行する距離を制御する。距離計として、好ましくは、エンコーダが用いられる。
コンベヤの搬送速度が一定であれば計時することによりコンベヤの走行距離を正確に特定できる。しかし、本発明の搬送装置によれば、コンベヤの搬送速度が変わるので計時によって走行距離を特定することは煩雑である。そこで、本発明においては、例えばエンコーダからなる距離計を用いることにより、走行距離を正確に特定する。
【0010】
本発明におけるカメラは、好ましくは、撮影視野において連続的に撮影される画像を、画像間で撮影内容の重複および間隙がないように撮影する。制御部は、好ましくは、画像の搬送方向の寸法をL、それぞれの画像に存在する物品の個数をN、および、下流工程において要求される搬送能力をSとすると、搬送速度を以下の式により算出する。
Vn=L×S/N…式(1)
このように、連続的に撮影される画像を、画像間で撮影内容の重複および間隙がないように撮影すれば、搬送される全ての物品を漏れなく考慮した、搬送される物品の状態を正確に反映した搬送速度が算出できる。
【0011】
本発明におけるカメラは、好ましくは、撮影視野において連続的に撮影される画像が、搬送方向に部分的に重なるように撮影する。制御部は、画像の搬送方向の寸法をL、連続して撮影された所定数の画像に存在する物品の平均個数をNa、および、下流工程において要求される搬送能力をSとすると、搬送速度を以下の式(2)により算出する。
Vn=L×S/Na…式(2)
このように、搬送方向に部分的に重なる画像を用いて算出される物品の平均個数Naに基づいて搬送速度を求めるので、相前後する搬送速度の差を小さく抑えることができる。つまり、搬送速度の変化を小さく抑えることができるので、電動モータを制御する負担を軽減できる。
【0012】
本発明の搬送装置において、好ましくは、上流工程から物品を受け渡すアキュームコンベヤを備え、搬送部は、アキュームコンベヤの下流に隣接して配置され、かつ、アキュームコンベヤから搬送の向きを90度かえて物品が受け渡される。
本発明の搬送装置が設けられる部位は任意である。しかし、アキュームコンベヤにおいては、現実にはコンベヤを搬送される多数の物品の密度にはばらつきがある。したがって、アキュームコンベヤの下流に本発明の搬送装置を配置すれば、下流工程に対する物品の安定した搬送を実現する意義が大きい。また、本発明の搬送装置をアキュームコンベヤの直後に配置すれば、下流工程までの距離を稼ぐことができるので、算出した搬送速度による安定した個数の物品の搬送できるという効果を確実に享受できる。
【0013】
本発明は、上流工程から受け渡される物品を搬送し、かつ、下流工程に向けて受け渡すコンベヤによる搬送方法を提供する。
本発明の搬送方法は、カメラで撮影されたコンベヤ上の撮影視野に存在する物品の個数から下流工程において要求される搬送能力に対応するコンベヤの搬送速度を求め、かつ、撮影視野の搬送方向の寸法Lに相当する距離だけ、搬送速度でコンベヤが走行するように制御する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、例えばアキュームコンベヤよりも下流に配置される搬出コンベヤに適用されると、この搬出コンベヤにおいては物品の整列状態は確定しているといえるので、下流工程において要求される搬送能力に整合された搬送速度を算出できる。したがって、本発明によれば、上流工程から受け渡される容器などの物品を下流工程で要求される搬送能力に整合した搬送速度で供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る搬送装置の概略構成を示す平面図である。
【
図2】第1実施形態に係るコンベヤの撮影手順を説明する図である。
【
図3】第1実施形態に係る搬送装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図4】第2実施形態に係るコンベヤの撮影手順を説明する図である。
【
図5】第2実施形態に係る搬送装置の制御手順を示すフローチャートである。
【
図6】任意の位置に撮影視野を設ける場合の、搬送速度を維持する時間のシフトを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、実施形態に係る搬送装置1に基づいて本発明を説明する。
本実施の形態に係る搬送装置1は、上流工程から受け渡される物品としての容器Pを搬送し、かつ、下流工程に向けて受け渡す。搬送装置1は、例えば飲料充填システムに適用され、上流工程において、図示を省略するフィラ(充填機)により飲料を容器Pに充填した後に、キャッパ(打栓機)により容器Pにキヤッビングがなされる。搬送装置1は、アキューム機能を有し、下流工程に設けられる図示を省略するラベラに向けて容器Pを搬送する。搬送装置1は、下流工程に向けた容器Pの払い出し量を安定させることができる。
【0017】
搬送装置1は、
図1に示すように、容器Pの搬送を担う搬送部10と、搬送部10の動作を制御する制御部20を備えている。なお、
図1において、容器Pが搬送される向きは白抜き矢印で示されている。
【0018】
以下、搬送部10を構成する各要素について説明する。
搬送部10は、上流工程から容器Pを搬入する搬入コンベヤ11と、搬入コンベヤ11から受け渡される容器Pを移送する移送コンベヤ13と、を備えている。また、搬送部10は、移送コンベヤ13の下流側に設けられるアキュームコンベヤ15と、アキュームコンベヤ15を搬送されてきた容器Pを受け取って下流工程に向けて搬送する搬出コンベヤ17と、を備える。搬送部10において、容器Pは、搬入コンベヤ11から移送コンベヤ13に受け渡される際に90度だけ向きを変え、さらに、アキュームコンベヤ15から搬出コンベヤ17に受け渡される際に90度だけ向きを変える。
【0019】
[搬入コンベヤ11]
搬入コンベヤ11は、例えば上流工程に設けられるキャッパから搬出される容器Pを移送コンベヤ13まで第1方向Xに搬送する。搬入コンベヤ11を搬送される多数の容器Pは、2系列に区分されて搬送方向に密着した状態で搬送される。
搬入コンベヤ11は、その幅方向(第2方向Yと一致)に隣接して配置される2つの搬入コンベヤ11A、11Bを備えており、搬入コンベヤ11A、11Bは、各々、電動モータM1,M2により駆動される。搬入コンベヤ11上で容器Pの滞留が発生することなく、移送コンベヤ13上において容器Pが幅方向に広がって乗り移れるように、電動モータM1,M2の動作設定がなされている。
【0020】
搬入コンベヤ11上には、この搬入コンベヤ11によって搬送されてきた容器Pを、移送コンベヤ13に乗り移らせるためのガイド12A、12B、12Cが設けられている。三つのガイド12A、12B、12Cは、ガイド12Bを中央に挟み、かつ、ガイド12A、12Cの各々をガイド12Bから間隔をあけて設けることにより、搬入コンベヤ11を搬送されてきた容器Pを、ガイド12Bを境にして二列に区分して移送コンベヤ13に受け渡す。なお、ここで示す二列は例示に過ぎず、本発明は一列又は三列以上にすることを許容する。一般的には、容器Pの強度が弱い場合、あるいは、コンベヤの幅が広い場合には、列数を多くする傾向にある。ガイドの数は、列数に応じて定められる。
【0021】
ここで説明した搬入コンベヤ11は一例として容器Pを2系列で搬送することとしたが、本実施形態は3系列以上で搬送する搬入コンベヤ11とすることもできる。この場合には、ガイド12Bを省き、ガイド12Aとガイド12Cに対応する二つのガイドがあれば足りる。
【0022】
[移送コンベヤ13]
移送コンベヤ13は、搬入コンベヤ11で搬送されてきた容器Pを受け取って、アキュームコンベヤ15に移送する。移送コンベヤ13は、搬入コンベヤ11に比べて幅広とされており、容器Pを第2方向Yに沿って搬送する。
移送コンベヤ13は、電動モータM3により駆動される。電動モータM3は、搬入コンベヤ11A,11Bを駆動する電動モータM1,M2よりも遅い速度で運転される。
【0023】
[アキュームコンベヤ15]
搬送部10は、
図1に示すように、移送コンベヤ13の下流側に設けられアキュームコンベヤ15を備えている。アキュームコンベヤ15は、下流工程の例えばラベラの動作状況に合わせて容器Pを搬出コンベヤ17に搬送することなく滞留させることができる。
アキュームコンベヤ15は、移送コンベヤ13よりも少し幅が狭く設定されるとともに、容器Pの滞留に必要な第2方向Yの長さを有している。第2方向Yの長さは、例えば10m以上になる。
【0024】
アキュームコンベヤ15は、上流側からコンベヤ15A、コンベヤ15B、コンベヤ15C、コンベヤ15D、コンベヤ15Eおよびコンベヤ15Fの6つが直列に並んで構成される。
コンベヤ15A、コンベヤ15B、コンベヤ15C、コンベヤ15D、コンベヤ15Eおよびコンベヤ15Fは、それぞれ電動モータM4、電動モータM5、電動モータM6、電動モータM7、電動モータM8および電動モータM9により、独立した速度で容器Pを搬送できる。また、アキュームコンベヤ15は、電動モータM4~電動モータM9の速度を調整することにより多数の容器Pを適切な時間だけアキュームコンベヤ15に滞留できる。電動モータM5、電動モータM6、電動モータM7、電動モータM8および電動モータM9には、それぞれロータリ式のエンコーダE5、エンコーダE6、エンコーダE7、エンコーダE8およびエンコーダE9が付設されている。制御部20は、電動モータM5~電動モータM9の駆動によるコンベヤ15B、コンベヤ15C、コンベヤ15D、コンベヤ15Eおよびコンベヤ15Fの走行距離をエンコーダE5~エンコーダE9の出力として取得する。
エンコーダは、構造的にインクリメンタルエンコーダとアブソリュートエンコーダに分類されるが、本実施形態のエンコーダE5~エンコーダE9、および、後述するエンコーダE11においてはいずれの形式のエンコーダを用いることができる。
【0025】
アキュームコンベヤ15は幅広のコンベヤであり、例えばフィラおよびキャッパから送り出される容器を、ランダムな分布となっている複数列の状態で搬送する。このアキュームコンベヤ15は、幅広であるため、下流側のラベラが一時的に停止した場合には、フィラおよびキャッパから次々と送り出される容器を、このコンベヤ上に集積・蓄積することができる。このため、ラベラが一時的に停止したとしても、フィラおよびキャッパの連続運転を継続することができる。
【0026】
[搬出コンベヤ17]
搬送部10は、アキュームコンベヤ15の下流側の直後に、アキュームコンベヤ15と直交する第1方向Xに容器Pを搬送する搬出コンベヤ17が配置されている。この搬出コンベヤ17は、アキュームコンベヤ15から受け取った容器Pを、向きを90度だけかえて図示を省略する下流システムに向けて搬送する。
搬出コンベヤ17は、上流側から順にコンベヤ17Aとコンベヤ17Bを備えており、それぞれ電動モータM10、電動モータM11により独立して駆動される。電動モータM11にはロータリ式のエンコーダE11が付設されており、制御部20は電動モータM11の駆動によるコンベヤ17Bの走行距離をエンコーダE11の出力に基づいて算出する。
コンベヤ17A、17Bにおいて容器Pは概ね2列となって搬送される例がここでは示されているが、2列を超える列数となって搬送され得る。
【0027】
搬出コンベヤ17は、本実施形態の搬送装置1において、下流工程に対して容器Pの搬送能力を生み出す機能を有している。この搬送能力発生機能は、コンベヤ17Aの下流側に設けられるカメラ18とエンコーダE11の出力を取得した制御部20による電動モータM11の速度制御により実現される。
【0028】
カメラ18は、予め定められた撮影視野FVにおいて、コンベヤ17Aを搬送される容器Pを撮影する。撮影視野FVは、コンベヤ17Aにおける搬送方向の寸法がL、コンベヤ17Aの幅方向の寸法Wを有しており、コンベヤ17Aを搬送される容器Pの幅方向の全域を捉えることができる面積を有している。カメラ18で撮影された画像データは制御部20に送られる。本実施形態における撮影視野FVは、一例としてコンベヤ17Aの下流側の端部とその下流側の端部と一致するように設けられている。
カメラ18は、時間間隔をあけて撮影視野FVを搬送される容器Pを撮影する。時間間隔は、制御部20の指示により定められるが、本実施形態では2つの異なる時間間隔をあけた撮影手順である第1形態と第2形態を提案する。第1形態と第2形態については後述する。
カメラ18としては、画像を電気信号に変換して取り出す半導体の素子、例えばCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)からなる撮像素子、また、例えばCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)からなる撮像素子を搭載したデジタル式カメラを用いることができる。
【0029】
エンコーダE11は電動モータM11の回転数を検出し、この回転数に関する情報は制御部20に送られる。制御部20は取得した電動モータM11の回転数に基づいて電動モータM11の移動量、つまりコンベヤ17Bによる容器Pの走行距離を求めることができる。
【0030】
搬出コンベヤ17よりも下流には、例えばコンバイナ、単列コンベヤが順に配列される。コンバイナは、多列コンベヤである搬出コンベヤ17から受け渡される複数列の容器Pを、搬送しつつ整列して直列の一列状態に並べる。また、単列コンベヤは、直列の一列状態に並んだ容器Pを搬送して、例えばラベラに供給する。
【0031】
[制御部20]
制御部20は、搬送部10の動作を制御するが、本実施形態においてはコンベヤ17Aの速度を制御することにより下流工程に向けた容器Pの搬送能力を生み出す機能を実現する。以下、この機能に係わる部分に絞って制御部20を説明する。
【0032】
制御部20は、下流工程において想定される容器Pの搬送能力に関するデータを保持する。この搬送能力Sは単位時間(分)当たりに供給される容器Pの数として特定される。この搬送能力Sは、通常、BPM(Bottle Per Minute)で表される。搬送能力Sはコンベヤ17Bの搬送速度の制御に用いられる。
【0033】
制御部20は、カメラ18が撮影する撮影視野FVの搬送方向の寸法Lに関する情報を保持している。
また、制御部20は、カメラ18から取得した容器Pを撮影した画像データを処理することにより、撮影された撮影視野FVに存在する容器Pの個数Nを割り出す。
制御部20は、想定される搬送能力S、撮影視野FVの搬送方向の寸法Lおよび画像データから割り出された容器の個数Nに基づいて、コンベヤ17Bの搬送速度Vnを求める。制御部20は、求めた搬送速度Vnでコンベヤ17Aが駆動するように、電動モータM11を制御する。
【0034】
[搬送部10の動作]
以上の構成を備える搬送部10の動作の概略について説明する。
搬送部10は、アキュームコンベヤ15を備えているが、下流工程の処理システムが正常な運転を続けている場合にはアキューム機能は動作しないが、下流工程の処理システムに停止などの異常が生じるとアキューム機能が動作する。これにより、アキュームコンベヤ15に容器Pを滞留させることにより、搬送装置1よりも上流工程のフィラ、キャッパ等の運転を停止させる必要がないか、停止させたとしても最小限に抑えることができる。アキュームコンベヤ15によるアキューム動作については当業者間でよく知られていることであるから、以降の説明を省略する。
【0035】
[搬出コンベヤ17の動作]
次に、搬出コンベヤ17の特にコンベヤ17Aの速度制御による搬送能力の生成機能について、
図2~
図6を参照して説明する。搬送能力の生成については第1形態と第2形態に区分されるが、以下、順に説明する。
【0036】
[第1形態(
図2,
図3参照)]
第1形態は、カメラ18による撮影視野FVの撮影を連続的に行うが、連続して撮影される画像間で重複および間隙がないように撮影される。これを
図2を参照して説明する。なお、
図2の(a)~(d)に向けて搬送が進行するものとする。また、
図2において容器Pの記載を省略している。
はじめに、
図2(a)に示すように、撮影視野FVに達している白抜きの領域α1がカメラ18により撮影される。領域α1の搬送方向の寸法は撮影視野FVの寸法Lと一致している。領域α2~領域α4も同様である。
領域α1が撮影されたのちに搬送が進み、図中の左下がりのハッチングが施された領域α2が撮影視野FVに達すると、カメラ18により領域α2が撮影される。領域α2が撮影されたのちに搬送が進み、図中の右下がりのハッチングが施された領域α3が撮影視野FVに達すると、カメラ18により領域α3が撮影される。さらに、領域α3が撮影されたのちに搬送が進み、白抜きの領域α4が撮影視野FVに達すると、カメラ18により領域α4が撮影される。
【0037】
領域α1について撮影された画像β1と領域α2について撮影された画像β2とは、重複および間隙がない。領域α2に関する画像β2と領域α3に関する画像β3、および、領域α3に関する画像β3と領域α4に関する画像β4についても同様に重複および間隙がない。第1形態においては、領域α1に対応する画像β1、領域α2に対応する画像β2、領域α3に対応する画像β3、および、領域α4に対応する画像β4が、それぞれ容器Pの個数を特定する画像に該当する。
【0038】
次に、
図3を参照して、制御部20によるコンベヤ17Aの搬送速度Vの制御の手順について説明する。
制御部20は、カメラ18により撮影視野FVを撮影し、撮影した画像、例えば領域α1に関する画像β1を取得して容器Pの個数N1を割り出す(
図3 S101,S103)。
制御部20は、容器Pの個数N1を割り出すと、式(1)に基づいて、領域α1に存在する容器Pに求められる搬送速度V1を算出する(S105)。
V1=L×S/N1 (m/min) …式(1)
【0039】
制御部20は、算出された搬送速度V1でコンベヤ17Aを走行するように、電動モータM11に指示する。この搬送速度V1は、領域α1が距離Lだけ下流に進むまで維持される(S107)。領域α1が距離Lだけ下流に進むことはエンコーダE11が検出し、検出結果は制御部20に送られる。
【0040】
制御部20は、領域α1が距離Lだけ下流に進むとエンコーダE11の検出結果を取得する。制御部20は、所定本数の容器Pの処理が済んでいなければ、次の領域α2をカメラ18で撮影するように指示する。領域α1が距離Lだけ下流に進むと、
図2(b)に示すように、領域α2はちょうど撮影視野FVに達する。以降は、領域α2、領域α3、領域α4、…、領域αnについてそれぞれの搬送速度V2、V3、V4、VNを順に算出するとともに、領域α2~領域αnが距離Lだけ下流に進む間に算出された搬送速度V2~VNが維持される。
【0041】
[第1形態が奏する効果]
第1形態によれば、
図2に示されるS101~S107を1単位として、コンベヤ17Bが距離Lだけ進む1単位ごとに、コンベヤ17Bは下流工程に対して、1単位の所要時間における平均値として想定される搬送能力Sで容器Pを受け渡すことができる。この1単位の動作を連続して繰り返すことにより、搬送能力Sで下流工程に容器Pを受け渡すことができる。
ここで、アキュームコンベヤにおいて容器を搬送している過程で容器の配列が変わることがあり、また、アキュームコンベヤにおける容器の搬送状態が下流の多列コンベヤに引き継がれるとは限らない。したがって、アキュームコンベヤの速度を増減させても、アキュームコンベヤより下流における容器の供給量を均一に制御することができないことがある。これに対して、第1形態においては、アキュームコンベヤ15よりも下流の搬出コンベヤ17を搬送される容器Pに基づいて搬送速度V1などを算出するが、搬出コンベヤ17においては容器Pの整列状態は確定しているといえる。したがって、第1形態によれば、上流工程から受け渡される容器Pを下流工程で要求される搬送能力に整合した搬送速度で供給できる。
【0042】
[第2形態(
図4,
図5参照)]
次に、第2形態においても、カメラ18による撮影視野FVの撮影を連続的に行うが、連続して撮影される画像が重なるように撮影される。
図4を参照してこの例を説明する。なお、
図4の(a)~(d)の順に搬送が進行するものとする。
はじめに、
図4(a)に示すように、撮影視野FVに達している白抜きの領域α1がカメラ18により撮影される。領域α1の搬送方向の寸法は撮影視野FVの寸法Lと一致している。領域α2~領域α4も同様である。ここまでは、第1形態と同じである。
領域α1が撮影されたのちに搬送が進み、図中の左下がりのハッチングが施された領域α2が撮影視野FVに部分的に重複すると、カメラ18により領域α1と領域α2が撮影される。(a)から(b)にかけてコンベヤ17BはL/2ピッチだけ進んでいるので、この撮影では領域α1の搬送方向の下流側の半分と領域α2の搬送方向の上流側の半分が撮影される。
図4(a)で撮影された画像と
図4(b)で撮影された画像は、L/2ピッチの分だけ重なっている。
【0043】
領域α1と領域α2が撮影されたのちに搬送が進み、領域α2が撮影視野FVに一致すると、
図4(c)に示すように、カメラ18により領域α2の全域が撮影される。さらに、領域α2が撮影されたのちに搬送が進み、図中の右下がりのハッチングが施された領域α3が撮影視野FVに部分的に重複すると、カメラ18により領域α2と領域α3が撮影される。(c)から(d)にかけてコンベヤ17BはL/2ピッチだけ進んでいるので、この撮影では領域α2の搬送方向の半分と領域α3の搬送方向の半分が撮影される。
図4(c)で撮影された画像と
図4(d)で撮影された画像は、L/2ピッチの分だけ重なっている。
【0044】
以後、同様の手順でカメラ18による撮影が繰り返されるが、第2形態においては、先行して撮影された画像と続いて撮影された画像とが、部分的に重なっている。
【0045】
次に、
図5を参照して、制御部20によるコンベヤ17Aの搬送速度Vnの制御の手順について説明する。
制御部20は、カメラ18により撮影視野FVを撮影するが、第2形態においては3枚の画像が連続して撮影され、この3枚の単位で搬送速度Vnが制御される。具体的には、撮影視野FVを撮影し(
図5 S201 カメラ撮影1)、次いで、コンベヤ17BがL/2ピッチだけ進むと撮影視野FVを撮影し(S203 カメラ撮影2)、さらにコンベヤ17BがL/2ピッチだけ進むと撮影視野FVを撮影する(S205 カメラ撮影3)。このように、第2形態においては、複数枚、ここでは一例としてL/2ピッチだけ重なる3枚の画像が撮影される。ただし、3枚はあくまで一例であり2枚、4枚以上にできるし、互いに重なる範囲についてもL/2ピッチはあくまで一例でありL/3ピッチ、L/4ピッチなどの重なりの範囲を設定できる。
【0046】
制御部20は、カメラ撮影1~カメラ撮影3による3枚の画像を取得して、容器Pの平均個数N1を割り出す(S207)。つまり、それぞれの画像に存在する容器Pの数をN1、N2、N3とすると、N1は以下の式(3)により求められる。
N1=(N1+N2+N3)/3 …式(3)
【0047】
制御部20は、容器Pの個数N1を割り出すと、式(2)に基づいて、3枚の画像に係わる領域α1、領域α2および領域α3の上流側の半分に存在する容器Pに求められる搬送速度V1を算出する(S209)。3枚の画像に係わる領域α1、領域α2および領域α3の上流側の半分を、容器Pの平均個数N1を割り出すための画像γ1とする。画像γ1の搬送方向の距離は3/2×Lである。
V1=L×S/N1=L×S/(N1+N2+N3)/3(m/min) …式(2)
【0048】
制御部20は、算出された搬送速度V1でコンベヤ17Aを走行するように、電動モータM11に指示する。この搬送速度V1は、画像γ1が距離3/2×Lだけ下流に進むまで維持される(S211)。画像γ1が距離3/2×Lだけ下流に進むことはエンコーダE11が検出し、検出結果はエンコーダ11Eから制御部20に送られる。
【0049】
制御部20は、画像γ1が距離3/2Lだけ下流に進むとエンコーダE11の検出結果を取得する。制御部20は、所定本数の容器Pの処理が済むまで、次の画像γ2をカメラ18で撮影するように指示する。画像γ2が距離3/2Lだけ下流に進むと、
図4(a)~(d)に示す手順により撮影視野FVを撮影する。
図4(d)に示すように、画像γ2は画像γ1よりL/2ピッチだけ遅れ、画像γ3は画像γ2よりL/2ピッチだけ遅れている。以降は、領域α2、領域α3、領域α4、…、領域αnについてそれぞれの搬送速度V2、V3、V4、…、Vnを順に算出するとともに、領域α2~領域αnが距離3/2Lだけ下流に進む間に算出された搬送速度V2~Vnが維持される。
【0050】
[第2形態が奏する効果]
第2形態によれば、第1形態が奏する効果に加えて以下の効果を奏する。
第2形態によれば、連続して撮影され部分的に重なる画像に存在する容器Pの平均値を基準にして搬送速度V1~Vnを求める。したがって、相前後する搬送速度、例えばV1とV2の差を小さく抑えることができるので、搬送速度の変化を小さく抑えることができる。これにより、電動モータM11を制御する負担を軽減できる。
一例として、重なりがない場合に、先行する画像に存在する容器Pが10本、後に続く画像に存在する容器Pが5本だとすると、10本に対して両者の差分である5本に相当する搬送速度の増減が必要である。ところが、平均値に基づいて搬送速度を求める場合だと、10本に対して平均値である7.5本に相当する搬送速度の増減に留まる。
【0051】
また、平均値に基づいて搬送速度V1~Vnを求めれば、容器Pの数の誤認識を減らすことができる。つまり、先行する画像に存在する容器Pの10本というのが誤認識であったとしても、後に続く画像に存在する容器Pの8本という認識が正しければ、ご認識の程度を軽減できる。
【0052】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。
例えば、以上の実施形態においては、下流工程において求められる容器Pの搬送能力(BPM)が得られるように、式を用いてコンベヤ17Aの搬送速度を求めたが、本発明はこれに限定されない。
例えば、制御部20が、撮影視野FVに存在する基準となる容器Pの個数Nsにコンベヤ17Aの搬送速度Vsを対応付けた基準データを保持しておき、実際に特定された容器Pの数例えばN1と基準データを照合する。照合は、はじめに、容器個数N1と基準個数Nsを比較しその比に応じて搬送速度Vsを変化させる。例えば、容器個数N1と基準個数Nsが一致していれば、搬送速度V1はVsをそのまま採用する。また、容器個数N1が基準個数Nsの1/2だとすれば、搬送速度V1は1/2Vsを採用し、容器個数N1が基準個数Nsの3/2だとすれば、搬送速度V1は3/2Vsを採用すればよい。
【0053】
次に、本発明におけるカメラ18の位置について説明する。
先に説明した第1形態において、
図6(a)に示すように、カメラ18の撮影視野FVがコンベヤ17Aの下流端に接している。しかし、本発明はこれに限定されずに、
図6(b)に示すように、任意の位置に撮影視野FVを設けることができる。この場合には、算出された搬送速度Vnを維持する時間を以下説明するようにシフトすればよい。
なお、
図6(b)において、P1,P2,P3は以下の通り定義される。
P1:カメラ18の撮影視野FVの容器Pの搬送方向の下流端位置
P2:カメラ18の撮影視野FVの容器Pの搬送方向の上流端位置
P3:コンベヤ17Aとコンベヤ17Bの境界位置
【0054】
算出された搬送速度Vn(V1)が維持されるのは、
図6(b)において、下流端位置P1が境界位置P3に到達したときT1-3から上流端位置P2が境界位置P3に到達したときT2-3までの間である。
次の搬送速度Vn(V2)を算出するためのカメラ18による撮影は、上流端位置P2が境界位置P3に到達したときに行われる。
【0055】
次に、以上の実施形態はアキュームコンベヤ15の下流に設けられる搬出コンベヤ17について能力発生機能を設ける例を説明したが、本発明における能力発生機能はアキュームコンベヤ15に限って設けられるものではない。つまり、上流工程から下流工程に容器Pなどの物品を搬送する過程において、下流工程に物品を搬送する能力を調整する必要があるいずれの部位にも設けることができる。
【0056】
次に、第1形態において、好ましい例として、先行する画像と後に続く画像の間に間隙を設けない例を示したが、先行する画像と後に続く画像の間に間隙を設けることを許容する。例えば、この間隙が搬送の対象である容器Pの1本分あるいは2本分に満たないような短ければ、求められる搬送速度V1~Vnの結果に与える影響は小さい。
【0057】
本実施形態では、エンコーダ11Eが設けられているコンベヤ17Aの速度を制御することにしているが、本発明においてはコンベヤ17Aまたはコンベヤ17Bよりも下流側のコンベヤの速度を制御してもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 搬送装置
10 搬送部
11,11A,11B 搬入コンベヤ
12A,12B,12C ガイド
13 移送コンベヤ
15 アキュームコンベヤ
15A,15B,15C,15D,15E,15F コンベヤ
17 搬出コンベヤ
17A,17B コンベヤ
18 カメラ
20 制御部
E11 エンコーダ
M11 電動モータ