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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ガス検知装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/12 20060101AFI20230120BHJP
   G06N 20/00 20190101ALI20230120BHJP
【FI】
G01N27/12 A
G06N20/00 130
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019107854
(22)【出願日】2019-06-10
(65)【公開番号】P2020201116
(43)【公開日】2020-12-17
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000000284
【氏名又は名称】大阪瓦斯株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】傳寳 暁士
(72)【発明者】
【氏名】大西 久男
(72)【発明者】
【氏名】野中 篤
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-130017(JP,A)
【文献】特開2011-149754(JP,A)
【文献】特開2007-024508(JP,A)
【文献】特開2009-282024(JP,A)
【文献】特開2012-167954(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217038(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/173121(WO,A1)
【文献】特開2007-225564(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/12
G06N 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、
所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
前記検出部は、検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度が正しいと判断できる場合、この検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度と、前記電気的特性の時間変化とを前記教師データとすることができるガス検知装置。
【請求項2】
所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、
所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
サーバと通信可能な通信部を備え、
前記学習済みモデルは前記サーバに格納され、
前記検出部は、前記サーバに格納された前記学習済みモデルを用いて前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するガス検知装置。
【請求項3】
所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、
所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
前記特徴データに重み付けが行われ、それぞれの前記特徴データと、その他の前記電気的特性の時間変化の態様とに優先順位を異ならせて前記機械学習が行われるガス検知装置。
【請求項4】
前記ガス検知部の周囲の雰囲気温度および前記ガス検知部の周囲の雰囲気湿度を測定する環境測定部を備え、
前記検出部は、前記雰囲気温度、前記雰囲気湿度、所定の前記駆動条件下にて測定された前記電気的特性の時間変化と、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った前記学習済みモデルとに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出し、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記雰囲気温度、前記雰囲気湿度において、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件下にて測定される前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされる請求項1から3のいずれか一項に記載のガス検知装置。
【請求項5】
前記ガス検知部は半導体からなる請求項1からのいずれか一項に記載のガス検知装置。
【請求項6】
前記ガス検知部を覆う触媒部を備える請求項1からのいずれか一項に記載のガス検知装置。
【請求項7】
前記ガス検知部は薄膜状の半導体からなり、
前記ガス検知部を覆う触媒部としての触媒層を備え、
前記ガス検知部の厚さは前記触媒層の厚さの1/3以下である請求項1からのいずれか一項に記載のガス検知装置。
【請求項8】
前記加熱制御部は、前記ヒータ部を、所定の温度への加熱と前記加熱の停止とを所定の周期で繰り返すように制御する請求項1からのいずれか一項に記載のガス検知装置。
【請求項9】
前記検出部は、検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度が正しいと判断できる場合、この検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度と、前記電気的特性の時間変化とを前記教師データとすることができる請求項2又は3に記載のガス検知装置。
【請求項10】
サーバと通信可能な通信部を備え、
前記学習済みモデルは前記サーバに格納され、
前記検出部は、前記サーバに格納された前記学習済みモデルを用いて前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する請求項に記載のガス検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定条件で対象ガスと接触することにより、ガス検知部の電気的特性が変化することを利用したガス検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
対象ガスと接触することにより、対象ガスに応じた態様で電気的特性が変化するガス検知部位と、ガス検知部位を加熱するヒータ部位と、ヒータ部位による加熱を制御する加熱制御部と、ガス検知部位の電気的特性を測定して対象ガスを検出するガス検出部とを有するガス検知装置が知られている。このようなガス検知装置においては、加熱制御部によりヒータ部位を制御することにより、対象ガスの種類に応じた適切な温度にガス検知部位を加熱して、ガス検知部位の電気的特性(電気抵抗値、電圧値など)に基づいて対象ガスを検出する。具体的には、複数の対象ガスそれぞれについて、特定の駆動温度に加熱後、特定の時間経過後の電気抵抗値等の電気的特性を、対象ガスと関連付けてあらかじめ記憶しておき、駆動温度に加熱した際の電気的特性を測定し、駆動温度に対する測定値と合致する対象ガスを検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-190232号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、対象ガスの種類が多い場合、対象ガスと関連付けられる駆動温度および電気的特性の差異が、異なる対象ガスとの間で小さくなる場合があり、特定の対象ガスの検出精度が悪くなる場合があった。
【0005】
本発明は、対象ガスの検出を、容易、かつ高精度に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るガス検知装置は、所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
前記検出部は、検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度が正しいと判断できる場合、この検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度と、前記電気的特性の時間変化とを前記教師データとすることができる。
【0007】
このような構成により、人工知能(以下、AIと称す)等により機械学習された学習済みモデルを用いて対象ガスの検出を行うことができるため、ガス検知装置は、容易、かつ高精度に対象ガスの検出を行うことができる。
【0009】
このように、複数の駆動条件に対応する複数の電気的特性の時間変化から生成された学習済みモデルに基づいて、対象ガスの検出を行うことができるため、対象ガスを検出するために用いられる比較対象が増加するとともに、温度に依存するガスの吸着特性や反応特性の情報を含んだデータを用いることで特性の異なるガスを見分けやすくなり、より高精度かつ容易に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
更に、このような構成により、検出作業を繰り返すことにより、学習済みモデルの精度が向上し、より高精度に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
更に、対象ガスの検出に有効な特徴をあらかじめ調査し、この特徴にかかる特徴データについて特に機械学習させることにより、より最適な学習済みモデルを生成することができ、より高精度かつ容易に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
更に、このような構成により、適切な特徴データを用いて、より高精度かつ容易に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るガス検知装置は、
所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、
所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ、
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
サーバと通信可能な通信部を備え、
前記学習済みモデルは前記サーバに格納され、
前記検出部は、前記サーバに格納された前記学習済みモデルを用いて前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する。
このような構成により、特に、他のガス検知装置が検出作業中に取得したデータを含めて考慮して学習済みモデルの更新を行うことができ、より高精度に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
上記目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るガス検知装置は、
所定の駆動温度に加熱された際に電気的特性が変化するガス検知部と、
前記ガス検知部を加熱するヒータ部と、
前記ヒータ部の加熱動作を制御する加熱制御部と、
所定の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化により、対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った学習済みモデルに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出する検出部とを備え、
前記機械学習の際に入力される教師データは、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件にて測定される前記電気的特性の時間変化が1つの前記教師データとされ、
前記教師データは、複数の前記駆動条件下での電気的特性の時間変化を含み、
前記機械学習の際に入力される前記教師データは、同一の前記対象ガスの種類、および同一の前記対象ガスの濃度である場合に、前記複数の駆動条件それぞれで測定された複数の前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされ、
前記検出部は、前記複数の駆動条件下で測定された前記電気的特性の時間変化に基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出するものであり、
前記学習済みモデルは、前記電気的特性の時間変化における1または複数の所定の特徴データについて機械学習されたモデルであり、
前記特徴データは、測定開始から最小値の前記電気的特性の値を得るまでの時間、時間変化による前記電気的特性の変化率が正の比率、測定された前記電気的特性の最後の値を前記電気的特性の最小値で除した値、計測された前記電気的特性の値の平均値、変化率の平均値のうちのいずれかを含み、
前記特徴データに重み付けが行われ、それぞれの前記特徴データと、その他の前記電気的特性の時間変化の態様とに優先順位を異ならせて前記機械学習が行われる。
このような構成により、特に、対象ガスの検出に有効な特徴について機械学習を重点的に行うことができるので、より最適な学習済みモデルを生成することができ、より高精度かつ容易に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
【0010】
また、前記ガス検知部の周囲の雰囲気温度および前記ガス検知部の周囲の雰囲気湿度を測定する環境測定部を備え、前記検出部は、前記雰囲気温度、前記雰囲気湿度、所定の前記駆動条件下にて測定された前記電気的特性の時間変化と、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を推定するための機械学習を行った前記学習済みモデルとに基づいて、前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出し、前記機械学習の際に入力される教師データは、前記雰囲気温度、前記雰囲気湿度において、前記対象ガスの種類、前記対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件下にて測定される前記電気的特性の時間変化が前記教師データとされても良い。
【0011】
これにより、学習済みモデルはAI等により容易に生成できると共に、対象ガスの種類および対象ガスの濃度、および所定の前記駆動条件下にて測定された電気抵抗等の特性の時間変化が関連付けて生成されるため、複数の条件が考慮された学習済みモデルを用いた高精度な対象ガスの検出を容易に行うことが可能となる。
【0012】
また、前記ガス検知部は半導体からなっても良い。
【0013】
このような構成により、高精度な対象ガスの検出を容易に行うことが可能となる。
【0014】
また、前記ガス検知部を覆う触媒部を備えても良い。
【0015】
このような構成により、高精度な対象ガスの検出を容易に行うことが可能となる。
【0016】
また、前記ガス検知部は薄膜状の半導体からなり、前記ガス検知部を覆う触媒部としての触媒層を備え、前記ガス検知部の厚さは前記触媒層の厚さの1/3以下であることが好ましい。
【0017】
このような構成により、加熱の際にガス検知部と触媒層とで昇温に時間差が生じ、ガス検知部で対象ガスが早期に検知可能になるのに対し、触媒層で対象ガスが燃焼される時間が遅くなる。その結果、加熱の初期段階に比べて時間が経過するごとにガス検知部での対象ガスの検知感度が変化する。そして、この検知感度の時間変化はガスの反応特性等によって変化するため、より高精度かつ容易に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
【0018】
また、前記加熱制御部は、前記ヒータ部を、所定の温度への加熱と前記加熱の停止とを所定の周期で繰り返すように制御しても良い。
【0019】
このような構成により、所定の間隔で加熱が停止されるため、ガス検知装置の消費電力を抑制することができる。
【0020】
また、前記検出部は、検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度が正しいと判断できる場合、この検出された前記対象ガスの種類および検出された前記対象ガスの濃度と、前記電気的特性の時間変化とを前記教師データとすることができることが好ましい。
【0021】
このような構成により、検出作業を繰り返すことにより、学習済みモデルの精度が向上し、より高精度に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
【0022】
また、サーバと通信可能な通信部を備え、前記学習済みモデルは前記サーバに格納され、前記検出部は、前記サーバに格納された前記学習済みモデルを用いて前記対象ガスの種類および前記対象ガスの濃度を検出しても良い。
【0023】
このような構成により、他のガス検知装置が検出作業中に取得したデータを含めて考慮して学習済みモデルの更新を行うことができ、より高精度に対象ガスの検出を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】ガス検知装置の概要を示す概略図である。
図2】メタンの濃度によって異なる電気抵抗値の時間変化を例示する図である。
図3】水素の濃度によって異なる電気抵抗値の時間変化を例示する図である。
図4】教師データリストを例示する図である。
図5】アセトンの駆動条件毎の電気抵抗値の時間変化を例示する図である。
図6】アンモニアの駆動条件毎の電気抵抗値の時間変化を例示する図である。
図7】特徴量の候補を例示する図である。
図8】判別条件を例示する図である。
図9】特徴量の最適化を考察した結果を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本実施形態に係るガス検知装置100を図1に基づいて説明する。ガス検知装置100は、センサ素子20(ガスセンサの一例)と、加熱制御部12と、ガス検出部13(検出部の一例)と、温度検出部14(環境測定部の一例)と、湿度検出部15(環境測定部の一例)とを有する。センサ素子20は、ガス検知層10(ガス検知部の一例)と、触媒層11(触媒部の一例)と、ヒータ層6(ヒータ部の一例)とを少なくとも有している。
【0032】
ガス検知装置100は、所定の駆動条件で測定したガス検知層10の電気的特性(電気抵抗値、電圧値など)に基づいて対象ガスを検出する。駆動条件は、例えば、加熱制御部12がヒータ層6への通電を行うことにより、ガス検知層10を対象ガスの種類に応じた適切な温度に加熱する。このようなガス検知装置100は様々な種類の対象ガスの検出に用いることができる。まず、具体的なセンサ素子20の構成が説明される。
【0033】
(センサ素子)
センサ素子20は、シリコン基板1に支持されてダイアフラムを構成する。センサ素子20は、支持層5と、絶縁層7と、ガス検知層10と、触媒層11を有する。支持層5はシリコン基板1上に形成され、支持層5上にヒータ層6が形成される。絶縁層7は、ヒータ層6の全体を覆って支持層5上に形成される。絶縁層7の上に一対の接合層8が形成され、接合層8の上に電極層9が形成されている。絶縁層7の上の、一対の電極層9の間に、ガス検知層10が形成される。絶縁層7の上に、ガス検知層10を覆う形態にて、触媒層11が形成される。なお、センサ素子20は、ブリッジ構造をとっても良く、ヒータ層6は、電極として兼用されても良い。
【0034】
支持層5は、例えば、熱酸化膜2と、Si膜3と、SiO膜4とが順に積層されて形成されている。ヒータ層6は通電により発熱して、ガス検知層10および触媒層11を加熱する。
【0035】
ガス検知層10は、金属酸化物を主成分とする半導体の層である。例えば、ガス検知層10は、酸化スズ(SnO)を主成分とする混合物である。ガス検知層10は、対象ガスとの接触により電気抵抗値が変化する。このような酸化物半導体とすることで、ガス検知層10は昇温が早くなり、対象ガスに対する応答性が向上し、対象ガスの検知が容易かつ正確になる。
【0036】
触媒層11は、ヒータ層6により加熱されて高温となり、その温度において活性のある(燃焼する)ガスを燃焼させる。さらに、その温度では、触媒層11は、対象ガスである不活性な可燃性ガスを透過・拡散させてガス検知層10へ到達させる。これにより、加熱温度を適切に制御することによって、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)等の可燃性ガス(例えば、CH(メタン)、CO(アセトン)、C(プロパン)等)の検出精度が高められている。換言すれば触媒層11は、アセトン等の可燃性ガスを検出する際に、その温度に応じて、対象ガス以外の水素ガス、アルコールガスなどの還元性ガス(非対象ガス)を燃焼させてガス検知層10に到達しないようにし、ガス検知装置100にガス選択性を持たせるように機能させることができる。そのため、ガス検知層10は、触媒層11を透過・拡散したメタン等の対象ガスである可燃性ガスを効率的に検出することができる。なお、低温(160℃以下)ではCO(一酸化炭素)以外のガスはガス検知層10においてもその温度域では反応しない(200℃以上でないと反応しない)ため、ガス検知層10へ到達したとしても検出されないことから、一酸化炭素のみの検知を行う際には、触媒層11は必ずしも必要ではない。
【0037】
ガス検知層10は、厚さが30~10000nm、望ましくは100~1000nm程度の薄膜としても良い。ガス検知層10の厚さが触媒層11に比べて薄い薄膜型のセンサ素子20の場合、ヒータ層6で加熱された際に、ガス検知層10と触媒層11との間で昇温時間にタイムラグが生じる。そのため、加熱初期においては、ガス検知層10と対象ガスとの反応性に応じた検出感度を得ることができ、加熱時間が経過するにしたがって、触媒層11にて非対象ガスが燃焼することによって感度が変化していくという、対象ガスに応じた時間応答特性を示す。その結果、ガス検知層10の厚さを触媒層11に比べて薄くすることにより、時間応答特性による対象ガスの種類の識別が、容易かつ正確になる。なお、このように、時間応答特性によって検出精度を向上させるために、ガス検知層10の膜厚は、触媒層11の膜厚に対して、1/3以下程度にされる。さらに、ガス検知層10の膜厚は、触媒層11の膜厚に対して、1/1000以上1/3以下であることが好ましく、1/200以上1/10以下であることがより好ましい。
【0038】
触媒層11は、金属酸化物を主成分とする担体に、触媒金属を担持させて構成される。具体的には、触媒層11は、触媒金属を担持した金属酸化物を、バインダーを介して互いに結合させて形成される。
【0039】
メタン等の可燃性ガスを検知する際には、触媒金属は、対象ガスの検知に際して誤検知を引き起こし得る干渉ガス(エタノールやH(水素)等の還元性ガスその他の雑ガス)を、酸化除去できる触媒となる金属が用いられる。メタン等の可燃性ガスを検知する際には、触媒金属としてパラジウム(Pd)、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)等が使用可能であるが、例えば、パラジウム、白金、イリジウム、ロジウムのうち少なくとも一つを含むものが用いられる。
【0040】
触媒金属を担持する担体としては、遷移金属酸化物等が用いられ、例えば、アルミナ(Al)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化イットリウム(Y)、酸化セリウム(CeO)、酸化ランタン(La)、酸化チタン(TiO)、酸化ハフニウム(HfO)、酸化ニオブ(Nb)、または酸化タンタル(Ta)が用いられる。
【0041】
担体を結合させるバインダーとしては、金属酸化物の微粉末、例えば酸化ジルコニウム、シリカ微粉末、シリカゾル、マグネシア等が用いられる。バインダーとしての微量の使用であれば、触媒層11の機能を阻害しない範囲で、アルミナ微粉末またはアルミナゾルを用いることも可能である。また、上述した触媒金属、担体としての金属酸化物、バインダーはいずれも、1種類を単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
【0042】
触媒層11に含有される触媒金属の量(合計含有率)は、触媒金属と担体の合計質量に対して0.3~9質量%とするのが好適であり、さらに望ましくは触媒金属と担体の合計質量に対して0.5質量%~6質量%とするのが良い。
【0043】
(加熱制御部等)
加熱制御部12は、駆動条件の1つとして、ヒータ層6に対する通電制御を行う。加熱制御部12は、例えば、ヒータ層6に通電してガス検知層10を加熱する加熱動作と、ヒータ層6に通電しない非加熱動作(ガス検知層10の加熱を停止する非加熱動作)とを行う。また加熱制御部12は、ヒータ層6に対する通電電圧または通電電流を制御することにより、ヒータ層6を設定された任意の温度に加熱することができる。
【0044】
具体的には加熱制御部12は、図示しない電池等の電源から電源供給を受け、センサ素子20のヒータ層6に通電して、センサ素子20を加熱する。加熱する温度、すなわちガス検知層10および触媒層11の到達温度は、例えばヒータ層6に印可する電圧を変更することにより制御される。
【0045】
ガス検出部13は、ガス検知層10の電気的特性を測定して対象ガスを検出する。例えば、ガス検出部13は、一対の電極層9の間の電気抵抗値(電気的特性)を測定することにより、ガス検知層10の抵抗値を測定して、その変化から対象ガスの存在と対象ガスの濃度とを検出する。
【0046】
温度検出部14は、ガス検知層10の周辺の雰囲気温度を検出する。具体的には温度検出部14は、サーミスタ等の温度センサである。温度検出部14によって検出された温度は、ガス検出部13へ送られる。
【0047】
湿度検出部15は、ガス検知層10の周辺の雰囲気湿度を検出する。湿度検出部15は、各種湿度センサを用いることができる。湿度検出部15によって検出された湿度は、ガス検出部13へ送られる。
【0048】
(対象ガスの検出)
以上の様に構成されたガス検知装置100における、対象ガスの検出の際の動作について説明する。ガス検知装置100は、所定の駆動条件にて測定された電気的特性の時間変化と、対象ガスの種類および対象ガスの濃度とを機械学習させることにより得られる学習済みモデルに基づいて、所定の駆動条件にて測定された電気的特性の時間変化から対象ガスの種類および対象ガスの濃度を検出する。
【0049】
駆動条件は種々の条件を設定することができるが、例えば、加熱制御部12を駆動する条件である。この際、駆動条件は、加熱制御部12が制御するヒータ層6に対する通電電圧または通電電流、更には通電時間により規定される。なお、加熱制御による駆動条件は、加熱制御部12が制御する通電電圧または通電電流に応じて決まる、駆動温度と対応させて制御することもできる。
【0050】
電気的特性の時間変化は、所定の加熱制御(駆動制御)が開始されてからの電気的特性の時間変化である。加熱制御は、例えばパルス加熱が行われる。パルス加熱は、1または複数の駆動温度への加熱を、加熱の停止を含んで行われる。
具体的には、例えば、加熱制御は、High駆動と、High駆動より通電電圧または通電電流が小さい(駆動温度が低い)Low駆動とが行われる。より具体的には、例えば、加熱制御は、High駆動が0.05秒~0.5秒間行われ、10秒~30秒間駆動が停止された後、Low駆動が0.05秒~0.5秒間行われ、10秒~30秒間駆動を停止される。そして、High駆動が開始(加熱開始)されてから、Low駆動後の駆動停止期間が終了するまでの、電気的特性の時間変化が測定される。そして、測定された電気的特性の時間変化から、機械学習された後述の学習済みモデルに基づいて、AIにより対象ガスの種類および対象ガスの濃度が検出される。
また、例えば、一つの駆動温度への加熱と加熱停止とを繰り返し行うようにしても良いし、複数の駆動温度として2つ以上の駆動温度を設定して当該駆動温度への加熱と加熱停止とを繰り返すようにしても良い。
【0051】
なお、加熱制御は、それぞれの動作の時間は適宜設定・変更が可能であり、例えば、駆動停止期間は省略することも可能である。
【0052】
ガス検出部13は、雰囲気温度、雰囲気湿度およびガス検出部13で測定されたガス検知層10の加熱開始からの電気的特性(電気抵抗値等)の時間変化と、学習済みモデルに基づいて、対象ガスの種類および対象ガスの濃度を検出する。学習済みモデルは、AIを用いた一般的な機械学習・深層学習を用いた分析(以下、単に機械学習と総称する)によって生成されたモデルであり、後述のように、機械学習は複数の教師データが入力されて行われる。対象ガスの種類および対象ガスの濃度の検出は、測定された電気的特性の時間変化を学習済みモデル(ニューラルネットワーク)に入力することにより行われる。
【0053】
ガス検出部13は、学習済みモデルを格納する記憶部16を備える。学習済みモデルは、後述のように、所定の雰囲気温度、所定の雰囲気湿度、所定の駆動条件の組み合わせにおいて測定されたガス検知層10の加熱開始からの電気抵抗値の時間変化と対象ガスの種類および濃度との関係がモデル化されたデータである。
【0054】
所定の雰囲気温度、所定の雰囲気湿度、所定の駆動温度における、ガス検知層10の加熱開始からの電気抵抗値の時間変化は、対象ガスの種類および対象ガスの濃度ごとに異なる。例えば、図2図3に示すように、メタンと水素では、濃度ごとの電気抵抗値の時間変化の振る舞いが異なる。図2は、雰囲気温度が20℃、雰囲気湿度が65%RH、駆動温度が400℃における、濃度がそれぞれ、0ppm、300ppm、1000ppm、3000ppm、10000ppmのメタンを実測した場合のガス検知層10の加熱開始からの電気抵抗値の時間変化を示すグラフである。また、図3は、雰囲気温度が20℃、雰囲気湿度が65%RH、駆動温度が450℃における、濃度がそれぞれ、0ppm、1000ppmの水素を実測した場合のガス検知層10の加熱開始からの電気抵抗値の時間変化を示すグラフである。ガス検出部13は、このような、ガス検知層10が測定した電気抵抗値の時間変化の差異と、学習済みモデルとを比較することにより、対象ガスの存在とその濃度を検出することができる。なお、図2及び図3では、ガス検知層10を200msパルス加熱した際に、加熱開始(0ms)から200msが経過するまでの電気抵抗値の時間変化を示している。
【0055】
(学習済みモデル)
上述の機械学習は、複数の教師データを入力することにより行われる。教師データは、対象ガスの種類、対象ガスの濃度、および、所定の駆動条件下で測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化であり、あらかじめ実測される。ガス検知層10の電気抵抗値の時間変化は、雰囲気温度(環境条件)と雰囲気湿度(環境条件)とからなる環境条件下において存在する対象ガスの種類と対象ガスの濃度によって特異なデータとなる。そのため、これら所定の環境条件および所定の駆動条件にて測定された電気抵抗値の時間変化を対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして大量に入力して、AIにより機械学習を行うことにより、環境条件における対象ガスの種類と対象ガスの濃度に対応するガス検知層10の電気抵抗値の時間変化が関連付けられた学習済みモデルが生成される。
【0056】
このように、対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出が、特定の温度における電気抵抗の測定値ではなく、特定の温度に加熱を開始してからのガス検知層10の電気抵抗値の時間変化を用いて行われるため、対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出を容易、かつ高精度に行うことができる。また、あらかじめ、一定の環境条件下における測定値と対象ガスの種類および対象ガスの濃度との関係を実験等により求めるのではなく、教師データを用いた機械学習により生成した学習済みモデルを用いて対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出を行うため、実験等で求めるよりも詳細かつ正確な学習済みモデルを用いて検出することができ、対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出をより容易、かつ高精度に行うことができる。
【0057】
なお、1つの対象ガスの種類、1つの対象ガスの濃度において、複数の駆動条件で測定された複数の電気抵抗値の時間変化が1組の教師データとされても良い。例えば、雰囲気温度が20℃、雰囲気湿度が65%RHにおける、10ppmのメタンの場合の、駆動温度が150℃、200℃、300℃、400℃であるそれぞれの駆動条件にて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に1組の教師データとして入力されて、学習済みモデルが生成される。さらに、これらの教師データが複数の対象ガスの種類および複数の対象ガスの濃度について入力されても良い。
【0058】
具体的には、図4に示すように、雰囲気温度が20℃、雰囲気湿度が65%RHにおいて、対象ガス種としてメタンについて、濃度がそれぞれ0ppm、1000ppm、3000ppm、10000ppmの場合の、駆動条件(駆動温度)が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種として一酸化炭素について、濃度がそれぞれ0ppm、30ppm、1000ppm、3000ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、雰囲気温度が20℃、雰囲気湿度が65%RHにおいて、対象ガス種として水素について、濃度がそれぞれ0ppm、300ppm、1000ppm、3000ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種としてアセトンについて、濃度がそれぞれ0ppm、0.2ppm、1ppm、10ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種としてエタノールについて、濃度がそれぞれ0ppm、1ppm、2ppm、5ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種として酢酸エチルについて、濃度がそれぞれ0ppm、0.5ppm、1ppm、5ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種として硫化水素について、濃度がそれぞれ0ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種として一酸化窒素について、濃度がそれぞれ0ppm、0.1ppm、0.5ppm、1ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。また、対象ガス種としてアンモニアについて、濃度がそれぞれ0ppm、0.5ppm、1ppm、5ppmの場合の、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおいて測定されたガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が対象ガスの種類および対象ガスの濃度と共に教師データとして入力される。
【0059】
このように、複数の駆動条件で測定された複数の電気抵抗値の時間変化を1組の教師データとして学習済みモデルを生成した場合は、1回の検出動作ごとに、雰囲気温度と雰囲気湿度とを一定にした状態で、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおけるガス検知層10の電気抵抗値の時間変化を測定し、これらの電気抵抗値の時間変化を用いて、ガス検出部13は、学習済みモデルに基づいて対象ガスの種類と対象ガスの濃度を検出することもできる。
【0060】
駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおけるガス検知層10の電気抵抗値の時間変化は、対象ガスの種類によって異なるし、同じ対象ガスであってもその濃度によっても異なる。例えば、メタンが10ppm含まれる場合は図5のようになり、アンモニアが5ppm含まれた場合は図6のようになる。図5図6に示すように、電気抵抗値の時間変化は、対象ガスの種類によって異なり、対象ガスの濃度によっても異なり、駆動条件によっても異なる。そのため、駆動条件によって異なる4つの電気抵抗値の時間変化を1組とする学習済みモデルを用いて対象ガスの種類と対象ガスの濃度を検出することができ、対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出をより容易、かつ高精度に行うことができる。
【0061】
(機械学習)
教師データを用いて機械学習を行う際には、まず、異なる対象ガスの種類および異なる対象ガスの濃度の組み合わせそれぞれについて、雰囲気温度、雰囲気湿度、および駆動条件を適宜組み合わせた条件で、ガス検知層10の電気抵抗値の時間変化の実測値が取得される。そして、これらの条件と実測値それぞれに対して、カテゴリとして識別できる文字列や数値等によるラベルを付与して、各条件と実測値との組が複数含まれる実測データを作成する。
【0062】
次に、必要に応じて実測した電気抵抗値を基に特徴量(特徴データ)が算出される。特徴量は、例えば、電気抵抗値の時間変化のうち、電気抵抗値の最小値、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間、時間変化による電気抵抗値の変化率が正となる比率、測定された電気抵抗値の最後の値を電気抵抗の最小値で除した値、計測された電気抵抗値の平均値、変化率の平均値等である。測定された電気抵抗値の最後の値を電気抵抗の最小値で除した値とは、測定を所定時間行う(電気抵抗値の時間変化を所定時間取得する)場合の測定開始から所定時間後に測定された電気抵抗値の値を電気抵抗値の最小値で除した値であり、例えば、測定を200ms行う場合は、測定開始から200ms後に測定された電気抵抗値の値を電気抵抗値の最小値で除した値である。計測された電気抵抗値の平均値とは、測定される測定時間を複数の区間に等分し、それぞれの区間における電気抵抗値の平均値である。例えば、計測された電気抵抗値の平均値とは、200msにわたって電気抵抗値の時間変化を測定(取得)した場合、データを5等分して40msごとの区間における電気抵抗値の平均値である。変化率の平均値とは、測定される測定時間を複数の区間に等分し、それぞれの区間における電気抵抗値の変化率を平均した値である。例えば、変化率の平均値とは、200msにわたって電気抵抗値の時間変化を測定(取得)した場合、データを5等分して40msごとの区間における電気抵抗値の変化率を平均した値である。また、特徴量には重み付けを行っても良く、この場合、重み付けを考慮して学習済みモデルが作成されたり、検出の際の比較において重み付けが考慮されたりされる。特定の特徴量に重み付けを行って対象ガスの存在および対象ガスの濃度を検出することにより、あらかじめ分かっている、検出を行う際に重要な項目を優先して検出に用いることができ、より容易、かつ高精度に対象ガスの種類と対象ガスの濃度の検出を行うことができる。
【0063】
次に、実測データが、学習用データと検証用データに分割される。実測データから一定割合(10%~20%程度)の任意のデータが検証用データとして抽出され、残りが学習用データとされる。
【0064】
次に、ID3(Iterative Dichotomiser 3)、CART(Classification and Regression Tree)、CHAID(Chi-squared Automatic Interaction Detection)等の決定木分析、電気抵抗値の時間変化にかかるデータ全体またはそれをグラフ化した画像を基にしたCNN(Convolutional Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)等のニューラルネットワークを用いた分析等により、学習用データを分析して学習済みモデルが生成される。
【0065】
最後に、学習済みモデルを用いて、検証用データについて検証し、検証用データに応じた検出結果が得られるか否かを確認する。十分な正答率の検出結果が得られない場合、教師データを増やしたり、特徴量に付与した重み付けを変更したり、特徴量自体を再検討する等して、十分な正答率が得られるまで学習済みモデルの生成を繰り返す。
【0066】
(特徴量の決定と調整)
以下、具体的な特徴量の決定方法を例示する。以下は、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃において、対象ガスとしてエタノール、一酸化窒素、酢酸エチル、アセトン、アンモニア、メタン、水素、一酸化炭素、硫化水素を検出する場合に特徴量を決定する例である。特徴量は、図7に示すように、駆動条件が150℃、200℃、300℃、400℃それぞれにおける、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間(図では、最小値を与える時刻と示す)、時間変化による電気抵抗値の変化率が正となる比率(図では、変化率が正の比率と示す)、測定された電気抵抗値の最後の値を電気抵抗の最小値で除した値(図では、末尾の値/最小値と示す)、計測された電気抵抗値の平均値(図では、計測値1/5ずつ平均と示す)、変化率の平均値(図では、変化率1/5ずつ平均と示す)である。また、それぞれの特徴量は、図7に示すように、各駆動条件と紐付けられた上、ラベルが付与される。例えば、駆動条件が150℃における、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間はT1が付与され、時間変化による電気抵抗値の変化率が正となる比率はRch1が付与され、測定された電気抵抗値の最後の値を電気抵抗の最小値で除した値はRmin1が付与され、計測された電気抵抗値の平均値はx11~x15が付与され、変化率の平均値はv11~v15が付与される。そして、このような特徴量を考慮して、機械学習により、学習済みモデルが生成される。
【0067】
このようにして生成された学習済みモデルから、各対象ガスを検出する際に決め手となる特徴量とその値が判別条件として明らかになる。例えば、図8に示すように、エタノールを検出する際は、判別条件が、v15≦-0.00109、かつT4≦38となる。また、一酸化窒素を検出する際は、判別条件が、v15≦-0.00109、かつT4>38、かつv12≦-0.012となる。また、酢酸エチルを検出する際は、判別条件が、v15≦-0.00109、かつT4>38、かつv12>-0.012となる。また、アセトンを検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11≦-0.06668、かつv24≦-0.00118、かつT4≦64となる。また、アンモニアを検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11≦-0.06668、かつv24≦-0.00118、かつT4>64となる。また、メタンを検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11≦-0.06668、かつv24>-0.00118となる。また、水素を検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11>-0.06668、かつv21≦-0.04027、かつv24≦-0.00059となる。また、一酸化炭素を検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11>-0.06668、かつv21≦-0.04027、かつv24>-0.00059となる。また、硫化水素を検出する際は、判別条件が、v15>-0.00109、かつv11>-0.06668、かつv21>-0.04027となる。この結果、駆動条件が150℃における変化率の平均値v11、v12、v15と、駆動条件が200℃における変化率の平均値v21、v24と、駆動条件が400℃における測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間はT4とが、判別条件として特に重要であることがわかる。そのため、この例では、これらの特徴量は、機械学習や対象ガスの検出の際に重み付けが高くされることが好ましい。
【0068】
この学習済みモデルを用いて、対象ガスとしてエタノール、一酸化窒素、酢酸エチル、アセトン、アンモニア、メタン、水素、一酸化炭素、硫化水素を検出した場合、検出精度(正答率)は97.95%となった。
【0069】
このような学習済みモデルに対して、さらに特徴量を調整して、学習済みモデルを最適化することもできる。図9に特徴量を調整した内容と、その場合の検出精度(正答率)とが示される。ここで、特徴量を調整する前の上記学習済みモデルを用いた検出結果をケース0とする。また、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間を「最小値」と記す。
【0070】
図9の結果から、ケース0に対して、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間T1~T4を除いた場合は、正答率が98.2%となり、正答率が向上することがわかる。そのため、特徴量から、測定開始から最小値の電気抵抗値を得るまでの時間T1~T4を除くことが好ましい。また、ケース0に対して、変化率の平均値v*3を除いた場合(ケース1-3)は、正答率が98.5%となり、正答率が向上することがわかる。そのため、特徴量から、変化率の平均値v*3を除くことが好ましい。ケース0に対して、変化率の平均値を求める期間の分割数を7にした場合(ケース3-2)は、正答率が99.0%となり、正答率が向上することがわかる。そのため、特徴量として、変化率の平均値を求める期間の分割数を7にすることが好ましい。
【0071】
(別実施形態)
<1>ガス検知装置100は、あらかじめ生成された学習済みモデルを用いて対象ガスの検出を行っても良いが、検出結果の成否が明らかな場合、その検出結果を用いて、検出作業中に学習済みモデルを更新していっても良い。さらに、ガス検知装置100はさらに通信装置(図示せず)を備え、他のガス検知装置100での検出結果を受信して学習済みモデルを更新しても良く、他のガス検知装置100やサーバ(図示せず)等から最新の学習済みモデルを入手して置き換える構成としても良い。この際、学習済みモデルは、記憶部16でなく、サーバに格納される構成としても良い。
【0072】
<2>上述の実施形態では、特徴量を算出し、特徴量に重み付けを行ったが、必ずしも、重み付けの付与を行う必要はない。




【0073】
<3>上述のように、雰囲気温度および雰囲気湿度を考慮して、学習済みモデルを生成し、対象ガスの存在および対象ガスの濃度を検出することにより、より正確な検出を行うことができるが、雰囲気温度および雰囲気湿度の少なくともいずれかを考慮しない構成とすることもできる。
【0074】
<4>なお、センサ素子20の構成は上記した薄膜型の半導体であるガス検知層10を備えたセンサ素子20の構成に限らず、任意の構成のガスセンサを用いることができる。例えば、上記実施形態のセンサ素子20において、ガス検知層10を比較的厚さの厚い半導体からなるガス検知層10を採用した2層構造のガスセンサとしてもよい。また、例えば、上記実施形態のセンサ素子20において、ガス検知層10を覆う触媒層11を設けない基板型のガスセンサとしてもよい。また、ガス検知層10としての電極とヒータ部としてのヒータとを兼ねる電極線のコイルを備え、当該コイルの周囲に酸化物半導体を備えたセンサ素子20を用いることもできる。
【0075】
なお上述の実施形態(他の実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
6 ヒータ層(ヒータ部)
10 ガス検知層(ガス検知部)
11 触媒層(触媒部)
12 加熱制御部
13 ガス検出部(検出部)
14 温度検出部(環境測定部)
15 湿度検出部(環境測定部)
16 記憶部
20 センサ素子(ガスセンサ)
100 ガス検知装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9