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特許7213824有機化合物における、またはそれらに関する改善
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】有機化合物における、またはそれらに関する改善
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/60 20060101AFI20230120BHJP
   A61Q 15/00 20060101ALI20230120BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 8/9789 20170101ALI20230120BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20230120BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K8/60
A61Q15/00
A61Q19/00
A61K8/9789
A61K8/34
A61Q13/00
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2019554691
(86)(22)【出願日】2018-04-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 EP2018058408
(87)【国際公開番号】W WO2018185060
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-03-30
(31)【優先権主張番号】1705403.2
(32)【優先日】2017-04-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【弁理士】
【氏名又は名称】葛和 清司
(74)【代理人】
【識別番号】100195419
【弁理士】
【氏名又は名称】矢後 知美
(72)【発明者】
【氏名】ルフェーブル,ファブリス
(72)【発明者】
【氏名】オリオール,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ハリン,シリル
(72)【発明者】
【氏名】ローブ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】レノー,ロマーン
【審査官】小川 慶子
(56)【参考文献】
【文献】特表平6-508601(JP,A)
【文献】RENIMEL,I. et al.,NOUVEL ANTI-RADICALAIRE NATUREL:OROBANCHE RAPUM,RIVISTA ITALIANA EPPOS,1997年,Vol.9,p.265-268
【文献】VIRON,C. et al.,Isolation of Phenylpropanoid Glycosides from Orobanche rapum by High Speed Countercurrent Chromatography,PHYTOCHEMICAL ANALYSIS,1998年,Vol.9,p.39-43
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00-8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレナトシドおよびアクテオシドを含む、デオドラント組成物または制汗剤組成物用の化粧原料。
【請求項2】
クレナトシドおよびアクテオシドを含む植物抽出物の形態である、請求項1に記載の化粧原料。
【請求項3】
当該抽出物および少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する有機溶媒を含む、請求項2に記載の化粧原料。
【請求項4】
有機溶媒がグリセロールまたはグリコールである、請求項3に記載の化粧原料。
【請求項5】
有機溶媒が1,3-プロパンジオールである、請求項4に記載の化粧原料。
【請求項6】
請求項1~のいずれか一項に記載の化粧原料を含む、デオドラント組成物または制汗剤組成物。
【請求項7】
少なくとも1種の香料原料を含有する香料組成物を含む、請求項に記載のデオドラント組成物または制汗剤組成物。
【請求項8】
アルミニウムまたはジルコニウム塩を含まない、請求項またはに記載のデオドラント組成物。
【請求項9】
皮膚に適用される香料組成物の蒸発を調節する方法であって、当該方法が、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧原料および香料組成物を同時に、連続してまたは別々に皮膚に適用するステップを含む、前記方法。
【請求項10】
デオドラント組成物の有効性および/または持続性を改善するための方法であって、デオドラント組成物に、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧原料を添加するステップを含む、前記方法。
【請求項11】
デオドラント組成物または制汗剤組成物における、請求項1~のいずれか一項に記載の化粧原料の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、香料に、または経時的な皮膚の美しさの保護に関連する有益な効果を提供するために、皮膚に局所的に適用し得る化粧原料に関する。本発明は、特に、皮膚マイクロバイオータの組成に影響を与えることにより有益な効果を発揮することができる前記化粧原料に関係する。
【背景技術】
【0002】
20代では、私たちの皮膚はおおよそ27日毎に1回再生するが、50代では、この同じプロセスは最大39日かかる。言い換えれば、ほんの数十年のうちに、私たちの皮膚は、再生するために約44%も多くの時間を必要とする。
皮膚の再生プロセスは複雑である。皮膚の健康および美しさを維持するプロセスは、皮膚の基底層における幹細胞の活性化から始まり、角質層および微生物層の表層まで続く。
【0003】
微生物層は、皮膚の表面にコロニーを形成する大量の有益な微生物の指す用語であり、技術的には皮膚の層ではないが、日常的に個人が健康を維持できるように、皮膚と共生的に相互作用する。微生物層は、宿主の内因性および外因性の両方の要因に応じて、常在マイクロフローラ(またはマイクロバイオータ)の組成が経時的に変化する流動状態を維持する。現在、健康でバランスの取れた微生物叢は、健康上の利点だけでなく、ヒト宿主に美容上の利点も提供できることが認識されている。
【0004】
皮膚の若返りプロセスを加速するなど、有益な効果を提供することができ、表皮の低層から高層に標的生物作用を全体的に提供することができ、健康でバランスのとれたマイクロバイオータを促進できる、化粧原料ならびに美容介入の方法を提供することによってヒトの皮膚の健康および/または外観を改善する必要がある。
本出願人は、驚くべきことに、先行技術の欠陥に対処する化粧原料を見出した。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明は、第1の側面において、クレナトシドおよびアクテオシドの混合物を含む化粧原料を提供する。
本発明は、以下にも関する:
1. クレナトシドおよびアクテオシドを含む化粧原料。
2. クレナトシドおよびアクテオシドを含む植物抽出物の形態である、1に記載の化粧原料。
3. 当該抽出物および水素含有有機溶媒を含む、2に記載の化粧原料。
4. 水素含有有機溶媒がグリセロール、グリコールまたは1,3-プロパンジオールである、3に記載の化粧原料。
5. 1~4のいずれか1つに記載の化粧原料を含む、皮膚への局所適用に適した製剤。
6. 少なくとも1種の香料原料を含有する香料組成物を含む、5に記載の製剤。
7. 化粧クリーム、化粧ローション、化粧ボディースプレー、化粧セラム、デオドラントまたは制汗剤、またはファインフレグランスからなる群から選択される、5または6に記載の製剤。
8. 皮膚に適用される香料組成物の蒸発を調節する方法であって、当該方法が、1~4のいずれか一つに記載の化粧原料を同時に、連続してまたは別々に皮膚に適用するステップを含む、前記方法。
9. デオドラント組成物の有効性および/または持続性を改善するための方法であって、デオドラント組成物に、1~4のいずれか一つに記載の化粧原料を添加するステップを含む、前記方法。
10. 1~4のいずれか一つに記載の化粧原料を含むデオドラント組成物を提供することによって、制汗剤からデオドラント組成物への移行を促進する方法。
11. デオドラントまたは制汗剤組成物における、特にアルミニウムまたはジルコニウム塩を含まないデオドラント組成物における、1~4のいずれか一つに記載の化粧原料の使用。
他の側面において、本発明は、ヒトの皮膚の状態また外観を改善する方法であって、当該方法が、当該化粧原料を皮膚に局所的に適用するステップを含む、前記方法を提供する。
【0006】
別の側面において、本発明は、ヒト宿主の皮膚マイクロバイオータのバランスを取る方法であって、当該方法が、当該化粧原料を皮膚に局所的に適用するステップを含む、前記方法を提供する。
別の側面において、本発明は、当該化粧原料を含有する、皮膚に局所適用するために適した製剤を提供する。
本発明のこれらおよび他の側面は、本発明の特定の態様の以下の詳細な説明を考慮してさらに理解されるであろう。
【0007】
本発明の化粧原料は、クレナトシドおよびアクテオシドが豊富な植物抽出物であり得る。
植物抽出物は、ハマウツボ科の植物、より具体的にはOrobanche rapumから得てもよい。
【0008】
化合物クレナトシドおよびアクテオシドは、両方とも水溶性であるが、本出願人は、それらが水中で不安定であることを発見した。したがって、抽出物は、好ましくは、植物材料からアルコール、およびより具体的にはエタノールを使用して、化合物を抽出することにより得る。アルコールが水を含まないことが特に好ましい。
抽出物が、活性成分の含有量および着色の両方の観点で安定であることを保証するために、本発明の化粧原料は、水素含有(hydric)溶媒中の抽出物として提供されることが望ましい。
【0009】
本発明において使用される用語として、水素含有溶媒は、少なくとも2つのヒドロキシル基を含有する溶媒を指す。適切な水素含有溶媒は、グリセロール、またはジプロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジブチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘプチレングリコール、およびヘキシレングリコールなどのグリコールを含む。
抽出物における使用のために特に好ましい溶媒は、1,3-プロパンジオールである。
【0010】
植物材料は上記の水素含有溶媒を使用して直接抽出することができる。しかしながら、化粧原料を安定化させるために、エタノールなどのアルコールを抽出媒体として用い、その後の溶媒交換ステップを実行し、抽出溶媒を水素含有溶媒に置き換えることが好ましい。抽出溶媒は、水素含有溶媒と比較して沸点の低い溶媒である場合、比較的単純なやり方で取り除くことができる。
【0011】
本発明の態様において、植物抽出物の形態の化粧原料を、以下のステップを含むプロセスにおいて得ることができる:
I) 化合物クレナトシドおよびアクテオシドを含有する植物源を、抽出溶媒、好ましくはエタノールで抽出すること;
II) 抽出物をろ過して、固体を除去すること;
III) 抽出物を水素含有溶媒と混合し、蒸発により抽出溶媒を除去することを含む、溶媒交換ステップを実行すること;
IV) 任意に、ステップIII)において得られた抽出物を、活性炭などの好適な脱色剤を使用して、脱色すること;
V) 抽出物をろ過して、固体を除去すること;および
VI) 任意に、蒸発により、抽出物を所望の乾物含量に調整すること。
【0012】
本発明の化粧原料は、クレナトシドおよびアクテオシドの非常に高い含有量で特徴づけられる。本発明の一態様において、植物抽出物の形態の化粧原料は、抽出物の乾燥物の総重量に基づいて、少なくとも15wt%、より具体的には少なくとも16wt%、より具体的には少なくとも17wt%、より具体的には少なくとも18wt%、より具体的には少なくとも19wt%のクレナトシドおよびアクテオシドの混合物を含有する。一態様において、前記混合物は、前記混合物の総重量に基づいて、約20wt%~約60wt%のクレナトシドおよび約80wt%~約40wt%のアクテオシド、好ましくは約30wt%~約50wt%のクレナトシドおよび約70wt%~約50wt%のアクテオシド、より好ましくは約35wt%~約45wt%のクレナトシドおよび約65wt%~約55wt%のアクテオシド、例えば約40wt%のクレナトシドおよび約60wt%のアクテオシドを含む。本発明の化粧原料は、抽出物の乾燥物の総重量に基づいて、少なくとも15wt%、より具体的には少なくとも16wt%、より具体的には少なくとも17wt%、より具体的には少なくとも18wt%、より具体的には少なくとも19wt%のクレナトシドおよびアクテオシドそれぞれを含有することも可能である。
【0013】
化粧原料が、化粧調製物およびファインフレグランスを含む局所適用品における使用に適したあらゆる様式の製剤に容易に組み込まれることは、本発明の有利な点である。
高度に着色された原料は、化粧調製物またはファインフレグランスの製造のための原材料として受け入れられない可能性があるため、本発明による化粧原料が、その色または色相が、所望の美容上のまたは他の有益な効果を送達するために必要なレベルで組み込まれ得る、あらゆる化粧調製物またはファインフレグランスの色調を変えたり、損なったりすることなく、調製することができるため、非常に有利である。
【0014】
植物抽出物の形態の化粧原料が、必要な色の明度または色相を有して得ることができ、これは、化粧調製物またはファインフレグランスの色調に影響を与えることなく、化粧調製物またはファインフレグランス適用品において効果のあるレベルでこれらを使用することを可能とすることは、本発明の特別有利な点である。
【0015】
化粧原料の明度および色相は、当該技術分野で知られている比色法に従ってCIELAB色度座標Lによって特徴付けることができる。L値は、物質の明度を特定する値であり、0~100の値で示される。100のL値は最も明るい状態(完全な白)を示し、0のL値は最も暗い状態(完全に黒)を示す。b値は、物質の青‐黄相を特定する。b値が大きいほど、黄色さの度合いが高くなる。b値が小さいほど、青さの度合いが高くなる。
【0016】
サンプルのL値は、Lico 690などのあらゆる適切な市販の分光光度計を使用して測定してもよい。分光光度計は典型的に、測定を行う前に少なくとも1時間電源を入れる。そのために提供されるガラス容器は、容器の底がサンプルで完全に覆われるように注意しながら、測定されるサンプルで半分満たされるべきである。その後、満たされた容器は、そのために提供されたサンプルスタンドに置かれるべきである。機器のサンプルキーを押して、L値、a値およびb値を表示パネルから読み取る。測定値を取得する前に、機器の光学センサーの窓に、そのために提供された黒および白のオブジェクトを配置して、ゼロおよび100%の反射について調整する必要がある。
【0017】
本発明の一態様において、化粧原料は、少なくとも約70のL値;約4より大きく、約19より小さいa値;約78より大きく、約91より小さいb値の少なくとも1つを有し、ここで、L値、a値およびb値はCIELABシステムの色度座標を表す。
【0018】
本発明による化粧原料は、上から下への、すなわち角質層および微生物層の表層から皮膚の基底層の幹細胞への自然な皮膚再生サイクルに再活性化効果を及ぼすことができる。
【0019】
特に、本出願人は、化粧原料が自然な皮膚再生サイクルに以下の全体的効果の少なくとも1つ、好ましくはすべてを発揮できるという点で、化粧原料が多機能であることを実証した:
- 本発明の化粧原料は、表皮幹細胞に保護を提供することができる。
- 本発明の化粧原料は、抗アポトーシス活性をもたらすことができる。
- 本発明の化粧原料は、表皮の代謝を刺激することができる。
- 本発明の化粧原料は、表皮細胞の分化を刺激することができる。
- 本発明の化粧原料は、皮膚のバリア成分の生成を刺激することができる。
- 本発明の化粧原料は、自然な剥離のプロセスを活性化できる。
- 本発明の化粧原料は、皮膚マイクロフローラ(マイクロバイオータ)のバランスを維持する働きをすることができる。
【0020】
より具体的には、本発明の化粧原料は、肝細胞が経時的に複製する能力を維持することを助けることができる。この効果は、化粧原料の有りおよび無しで培養した場合の、経時的な幹細胞のクローン形成能力を、光学顕微鏡を使用して観察することで実証された。さらに、化粧原料の存在の有りまたは無しで、毎日のUV暴露のヒト幹細胞への影響を調べるin vitro研究において、アポトーシス阻害タンパク質サバイビンのレベルが化粧原料にさらされたサンプルにおいて有意に高いことを実証した。
【0021】
より具体的には、本発明の化粧原料は、どちらもアポトーシス促進酵素である、酵素Caspase 9およびCaspase 3を阻害することが研究で示されている。
より具体的には、本発明の化粧原料で処理したおよび処理していない、健康なドナーからのヒト皮膚外植片に関する研究は、化粧原料で処理されたサンプルが、表皮における増加した細胞代謝を意味する、増加したKi67陽性細胞の発現(免疫組織化学により測定)を示すことを実証する。
【0022】
より具体的には、表皮分化遺伝子のトランスクリプトーム解析は、表皮細胞分化に関連する特定のタンパク質の発現の刺激を実証した。これらのタンパク質は、フィラグリン、インボルクリン、およびロリクリンを含んでいた。
より具体的には、本発明の化粧原料は、セラミド産生を増加させることができ、これは皮膚のバリア機能を回復する能力を実証する。
より具体的には、本発明の化粧原料は、落屑プロセスに関与する、酵素Kallikrein 5プロテアーゼの産生を刺激することができる。
【0023】
ヒトの皮膚の表面には、多種多様な微生物が存在する。集合的に、これらの微生物は、マイクロバイオームを形成し、これは皮膚のマイクロバイオータとたびたび呼ばれる。一般に、皮膚の健康および外観は、皮膚微生物のバランスの取れたコレクションが必要であると考えられている。しかしながら、皮膚のマイクロフローラのバランスは、内因性および外因性の理由により経時的に変化する可能性があることが知られている。例えば、病原菌、カビおよび酵母などの特定の望ましくない微生物は、常在微生物を損ねるほどに皮膚に定着しようとする場合がある;または皮膚の表面に到達する栄養素は、一部の微生物には効果的であるが、他の微生物には効果がない場合がある;または、ヒト宿主がその皮膚に適用する殺菌製品は、他の微生物よりも一部の微生物にとって比較的有害である場合がある。
【0024】
しかしながら、本出願人は、皮膚の表面が本発明の化粧原料で処理されているか、未処理のままであるかによって、皮膚マイクロフローラのバランスが経時的に異なって進化することを見出した。より具体的には、本出願人は、健康なボランティア(女性、前腕の皮膚)の全微生物DNAを、T=0および14日後に拭き取り、抽出およびシーケンシングすることによりメタゲノム研究を実施し、当該化粧原料が、相対的な豊富さの観点から、主要な門として、Actinobacteria、Cyanobacteria、Proteobacteria、Chloroflexi、Firmicutes、SaccharibacteriaおよびBacteroidetesを含む、マイクロバイオータの組成構成のバランスをしっかりととることを見出した。
【0025】
このように皮膚のマイクロバイオータを好ましくバランスをとることにより、本発明の化粧原料は、皮膚の健康および外観の改善、ならびに多くの皮膚疾患を潜在的に軽減するなど、宿主にとって有益な効果をもたらす。
【0026】
本明細書において使用される、マイクロバイオータに関する用語「バランス」は、適切な時間間隔、例えば、2週間、化粧原料で処理した皮膚上の上記の主要門の少なくとも1つの量の差が、未処理のコントロールと比較して(プラスにもマイナスにも)変化しないことを意味する。マイクロバイオータはまた、同じ時間間隔で、未処理のコントロールと比較して、化粧原料で処理された皮膚の病原体(例えば:Finegoldia magna)の増殖が少ない場合、バランスが取れていると見なされる。
マイクロバイオータのバランスを評価する方法は、以下の例でより詳細に説明する。
【0027】
バランスのとれたマイクロバイオータは、多くの受動的および能動的なメカニズムによってヒトの皮膚の健康および状態をサポートすることができる:常在微生物は、皮膚表面の適所のために病原体と受動的に競合するか、病原体の増殖に不可欠な栄養素を消費する。また、それらは、身体の排泄物の混合物ならびに皮膚に適用されるか外部ソースから皮膚に接触する材料を含む、皮膚に散らばる材料を積極的に消費して、病原体を阻害または殺すことさえできる代謝産物および副産物の複雑な混合物を生成する。
【0028】
マイクロバイオータとこの皮膚材料との相互作用の結果、皮膚の表面には、タンパク質、脂質、および炭水化物を含む化合物の混合物、ならびにアルコール、脂肪酸、アルデヒドおよび同様のものを含み得る代謝産物および副産物が存在する。この複雑な化学環境は、揮発性であり香気のある化合物を含み得、個人の特徴的な香気または悪臭に寄与し得る。さらに、この表面の化学的性質は、皮膚に適用される香料組成物のヘッドスペースが一定期間にわたって進化する方法に影響を与える可能性がある。
【0029】
香料原料は油であり、それらが皮膚の上のヘッドスペースに急速に拡散するか、または皮膚の表層に分配されてゆっくり蒸発するかの傾向は、皮膚表面の化学的性質にある程度依存し、これはマイクロバイオータのバランスの影響を直接受ける。例えば、化学混合物の疎水性/親水性バランスにより、香料原料の一部がヘッドスペースに急速にブルームし、その他が表面に固定される場合がある。他の香料原料は、皮膚表面に存在する成分と反応することさえある。
【0030】
身体が発する香気を制御することは、重要な美容上の利点である。確かに、香料は何世紀にもわたって、全体的な個人の外観を向上させる方法として使用されてきた。特に、魅力が匂いの影響を受ける可能性があることを研究が示してきている。香気が顔の特徴の視覚による認知を変えるのか、あるいは顔が脳によって感情的にどのように評価されるのかを変えるのかは不明であるが、明らかなのは、心地よい香気と顔の魅力とが1つの繋がった感情評価に統合されることである。さらに、個人の幸福が、個人がどれほど魅力的であると感じるか、または個人が他の人にどれほど魅力的であると受け取られるかによって影響を受ける可能性がある限り、体臭の制御は、人間が互いを知覚する方法を変える可能性があるため、コミュニティ内で肯定的な社会的影響を助長する可能性がある。
【0031】
悪臭をマスクするため、または皮膚から発せられる心地よい香気を作り出すための香料の使用は、化粧品との関連で特に有用な利点である:なぜなら、心地よい香気は、これらの製品が与えるように設計された健康および魅力の印象を強化するのに役立ち得るからである。
【0032】
ファインフレグランスなどの香料の設計において、香料の性能は、吸い取り紙から蒸発する方法によって評価される。これらの吸い取り紙は、実質上セルロース性であり、皮膚の見本とならない蒸発表面を提供する。経験豊富な調香師は、吸い取り紙の表面がヒトの皮膚の表面とは異なることを理解し、これを香水の設計で考慮する。しかし、マイクロバイオータのバランスが崩れ、経時的に予測できないほど変化し、同様に予測不可能な方法で皮膚の表面の化学的性質を改変すると、調香師の仕事は複雑になる。
【0033】
皮膚の表面から、より予測可能に蒸発する香料を設計するために、これらの技術的制約を克服することは、満たされていないニーズである。
驚くべきことに、出願人は、本発明の化粧原料を香料組成物と組み合わせて使用すると、一定期間にわたって皮膚のマイクロバイオータのバランスをとることができ、それにより香料組成物がより予測可能な方法で発散できる、より一貫性のある表面を提供できることを発見した。
【0034】
さらに、本発明の化粧原料を用いて皮膚のマイクロバイオータのバランスをとることにより、例えば、特定の香料原料の初期ブルームを強化すること、または皮膚の表面において他の香料原料を、より実質的および長持ちにすることにより、特定の快楽効果を達成するため、または香料組成物の時間的プロファイルを変更するために、調香師は香料原料のより考慮された選択を行うことができる。
【0035】
したがって、本発明は、その別の側面において、皮膚の表面に適用される香料組成物の蒸発を調節する方法であって、当該方法は、皮膚に化粧原料を同時に、連続してまたは別々に適用するステップを含む、前記方法を提供する。
本発明の特定の態様において、香料組成物の蒸発を調節する方法は、皮膚上の香料組成物の初期知覚を向上させるか、皮膚上の香料組成物の保持を向上させるか、またはその両方である。
【0036】
今日、多くの人々は、アルミニウムまたはジルコニウム塩または殺菌剤および静菌剤などの一般的に使用される特定の制汗活性成分を避けようとしており、これは、それらがヒトの皮膚、またはヒトの皮膚に含まれるマイクロフローラの集団に対して優しくないと認識されているためである。その結果、消費者は、制汗剤からより皮膚に優しいデオドラント製品への移行をますます望んでいる。しかしながら、移行期間において突発的な悪臭が発生する可能性があるため、場合によってはそうすることを思いとどまる。出願人は、このような突発的な悪臭は、マイクロバイオームの変化の結果である可能性があると考える。
【0037】
本発明の化粧原料は、デオドラント組成物の有効性および持続性を改善することができる。特に、それは、デオドラント組成物において使用した場合、より優れた悪臭の減少およびフレグランス強度の向上を与える(以下の例3を参照)。これは、制汗剤組成物からデオドラント組成物に変更する人々にとって特に有利であり、これが2種類の組成物の効果の違いを減少するためである。
【0038】
したがって、別の側面において、本発明は、化粧原料をデオドラント組成物に添加するステップを含む、デオドラント組成物の有効性および/または持続性を改善するための方法を提供する。
本発明はさらに、本発明の化粧原料を含むデオドラント組成物を提供することにより、制汗剤からデオドラント組成物への移行を促進する方法に関する。本発明はさらに、制汗剤またはデオドラント組成物、特にアルミニウム塩またはジルコニウム塩を含まないデオドラント組成物における化粧原料の使用に関する。
【0039】
本発明の別の側面において、香料組成物および上記で定義された化粧原料を含む増強された(augmented)香料組成物が提供される。
本発明の特定の態様において、増強された香料組成物はファインフレグランスである。
本発明のより特定の態様において、増強された香料組成物は、香料組成物、上記で定義された化粧原料、およびエタノールを含むファインフレグランスである。
【0040】
化粧原料は、皮膚のマイクロフローラの調子を整えるため、またはバランスをとるために有用であり、エタノールが、マイクロフローラを阻害または死滅させると予測するため、ファインフレグランス製剤などの、大量のエタノールを含有する局所製剤において使用することは、いくらか反直感的である。しかしながら、ファインフレグランス組成物において、本発明の化粧原料は、エタノールによってマイクロフローラに引き起こされるあらゆるダメージを相殺することを助けることができる。
【0041】
本明細書において使用される、香料組成物の蒸発は、化粧原料の同時、連続、または個別の適用によって皮膚の表面上の香料組成物のヘッドスペースが、同じ香料組成物のヘッドスペースに対して改変された場合に、調節されたとみなされる。同様に、増強された香料組成物は、上記で定義した化粧原料を含むおかげで、調節されたヘッドスペースを示す香料組成物である。
【0042】
本発明の化粧原料が皮膚のマイクロバイオータのバランスを取ることができるという発見により、熟練した調香師は、マイクロバイオータを構成する組成および皮膚表面上の関連する化学環境を考慮して、事前に定義された速度で蒸発するように選択された香料原料を含有する特注の香水組成物を作成することができる。
【0043】
本発明の化粧原料は、皮膚に局所的に適用されて、経時的な皮膚の美しさの保存に関連する効果、ならびに上述の香料の利点を含む、あらゆる種類の有益な効果を提供し得る。特に、化粧原料は、皮膚のリサーフェシング;皮膚再生の活性化;皮膚再生;乾燥した皮膚の処理;老化防止;しわ防止;皮膚の保湿および水分補給;皮膚バリア強化;自然な皮膚の剥離;および皮膚マイクロバイオータ保護、に有用であるあらゆる種類の化粧製品において使用することができる。
【0044】
本発明の化粧原料を適用することで達成できる特定の美容上の利点は以下を含む:皮膚の外観の改善、皮膚の感触の改善、皮膚の1つ以上の層の厚さの増加、皮膚の弾性(elasticity)の増加、皮膚の弾力性(resiliency)の増加、皮膚の堅さの増加、皮膚の油っぽい外観の減少、皮膚の光沢のある外観の減少、皮膚のくすんだ外観の減少、皮膚の水分補給の増加、皮膚への保湿効果の作成、細い線の出現の減少、しわの出現の減少、皮膚の質感の改善、皮膚の滑らかさの改善、皮膚の剥離の改善、皮膚の落屑の改善、皮膚をふっくらさせる、皮膚のバリア特性の改善、皮膚のトーンの改善、赤みの出現の減少、皮膚のしみの出現の減少、皮膚の明るさの改善、皮膚の輝きの改善、および皮膚の半透明性の改善。
【0045】
本発明による化粧原料は、皮膚への局所適用に適した製剤に製剤化してもよい。
局所適用に適した製剤は、リーブオンまたはリンスオフのあらゆる種類のパーソナルケア製品であり得、メイクアップ調製物、ファインフレグランス、コロン、オードトワレ、石鹸および洗剤、デオドラント、ビデ、女性用衛生デオドラント、シェービング調製物、スキンケア調製物、例えば、クレンジング、脱毛、顔および首、ボディおよびハンド、保湿剤、日焼け調製物、例えばゲル、クリーム、および液体、および室内日焼け調製物を含むがこれらに限定されない。
【0046】
局所適用に適した製剤は、少なくとも1つの化粧品として許容される賦形剤を含んでもよい。
いくつかの態様において、化粧品として許容される賦形剤は、液体または固体の充填剤、希釈剤、溶媒、またはカプセル化材料などの化粧品として許容される材料、組成物、またはビヒクルを指す。いくつかの態様において、賦形剤は、局所製剤の他の原料と適合性がある、および皮膚との接触での使用に適しているという意味で化粧品として許容される。化粧調製物およびファインフレグランスなどの、ヒトの皮膚への局所適用に適した製剤の調製に一般的に使用されるあらゆる賦形剤を本発明で用いても良い。適切な賦形剤は、感覚刺激特性、皮膚の浸透、および化粧原料のバイオアベイラビリティに影響を及ぼすことができる原料を含むが、これらに限定されない。より具体的には、これらは、水、油または界面活性剤などの液体を含み、石油、動物、植物または合成起源のもの、例えば、これらに限定されないが、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油、ヒマシ油、ポリソルベート、ソルビタンエステル、エーテルスルファート、スルファート、ベタイン、グリコシド、マルトシド、脂肪アルコール、ノノキシノール、ポロキサマー、ポリオキシエチレン、ポリエチレングリコール、デキストロース、グリセロール、ジギトニンなどを含む。
【0047】
皮膚への局所適用のための製剤は、いかなる物理的形態をとってもよい。
製剤は、リポソーム組成物、混合リポソーム、オレオソーム、ニオソーム、エトソーム、ミリ粒子、マイクロ粒子、ナノ粒子および固体脂質ナノ粒子、ビヒクル、ミセル、界面活性剤の混合ミセル、界面活性剤-リン脂質混合ミセル、ミリスフェア、マイクロスフェアおよびナノスフェア、リポスフェア、ミリカプセル、マイクロ-カプセルおよびナノカプセル、ならびにマイクロエマルジョンおよびナノエマルジョンの形態であってもよく、これらは化粧原料のより高い浸透を達成するために添加することができる。
【0048】
製剤は、皮膚への局所適用に有用なあらゆる固体、液体、または半固体の形態に製造されてよい。したがって、これらの局所適用の調製物は、これらに限定されないが、クリーム、多重エマルジョン、例えばこれらに限定されないが、水中油および/または水中シリコーンエマルジョン、油中水および/またはシリコーン中水エマルジョン、水/油/水または水/シリコーン/水型エマルジョン、および油/水/油またはシリコーン/水/シリコーン型エマルジョン、マイクロエマルジョン、エマルジョンおよび/または溶液、液晶、無水組成物、水性分散液、油、ミルク、バルサム、泡、水性または油性ローション、水性または油性ゲル、クリーム、水性アルコール溶液、水性グリコール溶液、ヒドロゲル、リニメント、美容液、石鹸、フェイスマスク、セラム、多糖類フィルム、軟膏、ムース、ポマード、ペースト、粉末、バー、ペンシル、スプレーまたはエアロゾル(スプレー)を含み、これらはリーブオンおよびリンスオフ製剤を含む。
【0049】
次に、本発明をさらに説明するのに役立つ一連の例が続く。
例1:化粧原料の調製
フランスのロゼールにおいて手作業で収集されたOrobanche rapumを、粉末に粉砕する前に、1日間日陰で乾燥した。1kgのOrobanche rapum粉末を、水なしで6kgの96%エタノールで抽出した。その後、セルロースフィルター(0.7ミクロン)でろ過することにより、液体抽出物から固体材料を分離した。
エタノールを真空蒸発により除去する前に、ろ液を同質量の1,3-プロパンジオールと組み合わせた。1,3-プロパンジオール中の得られた抽出物を木炭フィルターでろ過した。脱色した抽出物を1重量%の乾物に調整し、0.3ミクロンフィルターでろ過した。
2D NMRによる解析で、クレナトシドおよびアクテオシドに対応する18.9wt%(乾物の総重量に基づく)を表す2つの主要なピークを特定した。
【0050】
例2:メタゲノム解析
例1にしたがって形成した化粧原料の臨床評価を、ヒトボランティアで実施した。
二重盲検およびプラセボ対照臨床評価を、乾燥した皮膚(40AU未満の角膜計値)を持つ19人の女性(年齢:18~50歳、平均年齢:39.5歳)で実施した。この研究に参加したすべての被験者は、研究の開始時にインフォームドコンセントに署名した。測定を、使用の14および28日後に、例1にしたがって得られた抽出物0.5%を含む試験処方(下記に記載)を用いて行われた。プラセボは、抽出物を含まない同じ製剤(下記)で構成された。
この研究において、皮膚メタゲノムの進化を追跡した。調べた身体の領域は前腕であった。
【0051】
クリームの形態の試験製剤は、以下の原料を含んでいた:
水、カプリル/カプリルトリグリセライド、セテアリルコムギワラグリコシズ、セテアリルアルコール、例1の抽出物、フェノキシエタノール、ジメチコン、メチルパラベン、プロピルパラベン、エチルバラベン、フレグランス、ヘキシルシンナマル、ブチルフェニルメチルプロパナール、シトロネロール、アルファ-イソメチルイオノン、ヒドロキシイソヘキシル3-シクロヘキセンカルボキサルデヒド、水酸化ナトリウム。
【0052】
プラセボ製剤は、例1の抽出物を省いたことを除いて、試験製剤(上記)と同一であった。
皮膚のマイクロフローラの皮膚サンプルは、0.15MのNaCl滅菌溶液で湿らせた滅菌スワブを使用した非侵襲的スワブ法により、健康なボランティアの前腕(50cm)から収集した。スワブを-20℃で移し、DNA抽出まで凍結状態を維持した。
【0053】
PowerLyzer(R) PowerSoil(R) DNA Isolation Kit (MO BIO Labora-tories, Inc., Carlsbad, USA)を使用し、以下の変更を加えて、DNA抽出を行った。各スワブの先端を滅菌外科用ブレードで取り外し、750μLのビーズ溶液が加えられた1.5mLチューブに移した。サンプルバイオマスを撹拌およびピペッティングにより再懸濁し、生物学的懸濁液をビーズビーティングチューブ(bead beating tube)に移した。残りの手順は、製造元の指示にしたがって行った。
【0054】
シーケンシングおよびDNA解析を、以下に説明するように行った。
16S rRNA遺伝子シーケンシング:
MiSeqデバイス(Illumina, Inc., San Diego, CA, USA)で、次のプライマー:16S-Mi341Fフォワードプライマー5’-CCTACGGGNGGCWGCAG-3’および16S-Mi805Rリバースプライマー5’-GACTACHVGGGTATCTAATCC-3’を使用して、V3V4 16S可変領域をターゲットとし、500サイクルのペアエンドラン(paired-end run)で、約460bpのアンプリコンを生成し、シーケンシングを行った。
【0055】
PCR1を以下のように行った:8μLのテンプレートDNA(0.2ng)を5μLの各リバースおよびフォワードプライマー(1μM)、5μLのKAPA HiFi Fidelityバッファー(5X)、0.8μLのKAPA dNTP Mix(10mM)、0.7μLのRT-PCRグレードの水(Ambion)、0.6μLのKAPA HiFi hotstart Taq(1U/μL)と混合し、総容量25μLとした。各増幅を繰り返し、増幅後に複製をプールした。PCR1サイクルは、95℃で3分間、そして95℃で30秒間、59℃で30秒間、および72℃で30秒間を32サイクル、その後に続く72℃で3分間の最終延長から構成され、BioRad CFX1000サーモサイクラーを使用した。コンタミネーションをチェックするためのすべてのステップに、陰性対照および陽性対照を含ませた。すべての複製プールをゲル電気泳動によって制御し、蛍光測定を使用してアンプリコンを定量化した。
【0056】
16Sメタゲノミクスライブラリーの準備のためのIlluminaのガイドラインにしたがった、解析の準備が整ったライブラリーを作成した。手短に言えば、Agilent 2100 Bioanalyzer(Agilent Technologies、Santa Clara, USA)を使用してPCR1アンプリコンを精製および制御した。複数のサンプルの同時解析(マルチプレックス)を可能にするために、PCR1アンプリコン15~30ngを使用して、PCR2中にNextera(R) XTインデックス(Illumina)を追加した。PCR2サイクルは、94℃で1分間、そして94℃で60秒間、65℃で60秒間、および72℃で60秒間の12サイクル、その後に続く72℃で10分間の最終伸長から構成された。インデックス付きライブラリーは、Agilent 2100 Bioanalyzerを使用して精製、定量、および制御した。等モル混合物を得るために、検証済みのインデックス付きライブラリーをプールした。
【0057】
ラン(500サイクル)は、MiSeq Reagent Kit v3 600サイクル(Illumina)を使用して、MiSeqシーケンサー(Illumina)で達成した。シーケンシングランは、250塩基のペアエンドリード(paired-end reads)の2500万回、すなわち最大6ギガベースが出力された。ライブラリーおよびMiSeqランは、Libragenによって、GeT-PlaGeプラットフォーム(INRA、Auzeville, France)において行った。
【0058】
MiSeqランの後、生データシーケンスを非マルチプレックスとし、あいまいな塩基を持つすべてのリードを削除するために品質チェックを行った。次に、インデックスおよびプライマーシーケンスをトリミングし、フォワードおよびリバースシーケンスをペアにした。そして、ペアにしたシーケンスを、キメラおよびPCRエラーのある読み取りを削除するために、社内パイプラインを使用して処理し、1%の相違レベルで操作的分類単位(Operational Taxonomic Unit:OTU)に分割した。分類上の割り当てのために、高品質のビン化しペアにしたシーケンス(binned paired-sequences)をSILVA SSU Ref データベース(Release 123; https://www.arb-silva.de/)にマッピングした。そして、データをノーマライズし、ホワイトのノンパラメトリック検定(White et al., 2009)を用いて比較した。
【0059】
結果を次の2つの表に示す。
【表1】
【0060】
表1は、当該研究において見つかった、(相対的な存在量の観点で)主な門を示す。表1は、皮膚を試験製剤(「ビヒクル+活性物質」)またはプラセボ(「ビヒクル」)製剤で処理したかによって、マイクロバイオータが異なって進化することも示す。門レベルでは、プラセボ製剤で処理した皮膚は、D0とD14の間に、Firmicutesの優位な増加を示したが、他の門のレベルは実質的に安定なままであった。一方で、試験製剤で処理した皮膚に関しては、Firmicutesを含むすべても門のレベルが実質的に安定なままであった。
化粧原料がマイクロバイオータを安定化し、皮膚のマイクロフローラの本質的なバランスを維持していると結論付けることがでる。
【0061】
【表2】
【0062】
表2は、14日の期間にわたる、試験製剤およびプラセボ(ビヒクル)で処理した皮膚におけるFinegoldia magnaのレベルを示す。
Finegoldia magnaは、ヒトの皮膚の常在菌であり、感染病変から分離されることが最も頻繁であるグラム陽性球菌である。F. magnaは、皮膚、骨、心臓、および髄膜の単一および複数微生物感染に関係する。F. magnaに起因するトキシックショック症候群の症例も文献で報告されている。
当該研究の結果は、試験製剤(「活性物質0.5%」)で処理した皮膚が、14日の試験期間にわたってFinegoldiaの相対的な存在量における優位な減少(-58%)を示すことを示す。一方、皮膚がプラセボ製剤(「ビヒクル」)で処理された場合、Finegoldiaのレベルは安定したままである。これらの発見は、化粧原料が日和見病原体の増殖を抑制することを示唆する。
【0063】
例3:デオドラント組成物
本発明の化粧原料のデオドラント有効性に対する効果を評価するために、10人のボランティアで二重盲検試験を実施した。すべてのボランティアは制汗剤使用者であった。
ボランティアは通常の制汗剤の使用を中止しなければならなかった。代わりに、彼らは毎朝、左の脇の下に第1の試験デオドラント組成物を、右の脇の下に第2試験デオドラント組成物を塗布した。
5日の試験期間の終わりに、ボランティアはそれぞれの側の悪臭およびフレグランスの自己評価を行った。
両方の試験デオドラント組成物はスプレーの形態で提供され、以下の標準デオドラントベースを含んでいた:
【0064】
【表3】
【0065】
上記の原料を、噴射剤なしで混合し、1.75wt%のフレグランス組成物を補充した。2つのテストデオドラント組成物のうちの1つに対して、0.5wt%の本発明の化粧原料を添加した。混合物をスプレー容器に充填し、噴射剤を充填した。
自己評価は、10人のボランティアのうち9人が、本発明の化粧原料を含むテスト消臭剤組成物が、より良い悪臭の減少とフレグランス強度の向上をもたらすことを見出したことを示した。
したがって、本発明の化粧原料は、デオドラント組成物の持続性を改善することができる。