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特許7213864経皮照射装置および神経変性疾患の治療への応用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】経皮照射装置および神経変性疾患の治療への応用
(51)【国際特許分類】
   A61N 5/067 20060101AFI20230120BHJP
   A61N 5/06 20060101ALI20230120BHJP
   A61N 2/08 20060101ALI20230120BHJP
   A61N 2/02 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
A61N5/067
A61N5/06 A
A61N5/06 Z
A61N2/08 A
A61N2/08 B
A61N2/02 A
A61N2/02 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020505532
(86)(22)【出願日】2018-04-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 EP2018059596
(87)【国際公開番号】W WO2018189393
(87)【国際公開日】2018-10-18
【審査請求日】2021-04-06
(31)【優先権主張番号】17305450.3
(32)【優先日】2017-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】519367153
【氏名又は名称】レーゲンライフ
【氏名又は名称原語表記】REGENLIFE
【住所又は居所原語表記】Pepiniere d’entreprises Cap Omega, CS 39521 Rond-Point Benjamin Franklin, 34960 Montpellier Cedex 2, FRANCE
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ブリヴェ、 ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】モロー、 ギヨーム
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0024853(US,A1)
【文献】特表2002-511323(JP,A)
【文献】特表2011-515152(JP,A)
【文献】特開平02-026568(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 5/067
A61N 5/06
A61N 2/08
A61N 2/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
神経障害および/または神経変性疾患の予防または治療のために構成された経皮照射装置であって、
ユーザの頭部(3)に配置され、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)からなる少なくとも1つの経皮照射モジュール(10)を含む上部(1)と、
前記ユーザの腹部(16)に配置され、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)からなる少なくとも1つの経皮照射モジュール(10)を含む下部(9)と、
を備え、
各々の前記経皮照射モジュール(10)が少なくとも1つのパルスレーザー光源(14a)を含み、
前記照射源(14a、14b、14c)に、非照光範囲と照光範囲との交互の確立である全体変調周波数が適用され、前記パルスレーザー光源(14a)は二重パルスにさらされ
前記二重パルスは、
内因性であって、前記少なくとも1つのパルスレーザー光源によって生成されたパルスに相当するとともに1kHz以上25kHz以下の繰り返し周波数を含む第1のパルスと、
外因性であって、前記少なくとも1つのパルスレーザー光源によって生成されたパルスへの前記全体変調周波数の適用から生じるとともに0~4000Hzの繰り返し周波数を含む第2のパルスと
を備えることを特徴とする経皮照射装置。
【請求項2】
前記全体変調周波数は、1~1000Hz、好ましくは1~100Hz、好ましくは約10Hzであることを特徴とする、請求項1に記載の経皮照射装置。
【請求項3】
前記パルスレーザー光源(14a)は、赤外スペクトルで放射するビームを生成し、前記ビームは、700~1200ナノメートルの間の波長と、
20~200ナノ秒のパルス幅、
1kHz以上25kHz以下、好ましくは10kHz以上15kHz以下、好ましくは15kHzのパルス列繰り返し周波数、
前記パルスレーザー光源(14a)の出力が有する0.5ワット以上12ワット以下のインパルス電力、および
前記パルスレーザー光源(14a)の出力が有する2ボルト以上5ボルト以下の電圧、
を含むパルス列と、
を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の経皮照射装置。
【請求項4】
前記ビームは、800~900ナノメートル、好ましくは約850ナノメートルの波長を有することを特徴とする、請求項3に記載の経皮照射装置。
【請求項5】
前記パルスレーザー光源(14a)によって生成される前記ビームのパルス持続時間が75~150ナノ秒、好ましくは90~110ナノ秒であることを特徴とする、請求項3または4に記載の経皮照射装置。
【請求項6】
前記パルスレーザー光源(14a)によって生成された前記ビームの繰り返し周波数が10kHz以上15kHz以下、好ましくは約15kHzであることを特徴とする、請求項3~5のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項7】
前記パルスレーザー光源(14a)によって生成された前記ビームのパルス電力が1ワット以上7ワット以下であることを特徴とする、請求項3~6のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項8】
各々の前記経皮照射モジュール(10)が、可視スペクトルまたは赤外スペクトルで放射するビームを生成する少なくとも1つの発光ダイオード(14b、14c)を備えることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項9】
各々の前記経皮照射モジュール(10)が、少なくとも
赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザー光源(14a)と、
赤色スペクトルで放射するビームを生成する、発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)と、
赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(14c)と、を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項10】
前記少なくとも1つの発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)によって生成される赤色スペクトルで放射する前記ビームは600~700ナノメートルの間の波長を有し、前記少なくとも1つの発光ダイオード(14c)によって生成される赤外スペクトルの波長は700~1200ナノメートルであることを特徴とする、請求項9に記載の経皮照射装置。
【請求項11】
前記少なくとも1つの発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)によって生成される赤色スペクトルで放射する前記ビームは、620~650ナノメートル、好ましくは約640ナノメートルまたは約625ナノメートルの波長を有することを特徴とする、請求項9または10に記載の経皮照射装置。
【請求項12】
前記少なくとも1つの発光ダイオード(14c)によって生成された赤外スペクトルで放射する前記ビームの波長が約850ナノメートルであることを特徴とする、請求項9~11のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項13】
各々の前記経皮照射モジュール(10)が、静磁場(18)の生成源、好ましくは磁石または電磁石をさらに備えることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項14】
前記静磁場の生成源は、前記少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)によって前記経皮照射が生成される平面に垂直に配置されるリング形状を有することを特徴とする、請求項13に記載の経皮照射装置。
【請求項15】
1000ヘルツ以下、好ましくは1ヘルツ以上1000ヘルツ以下の周波数により前記少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)による照射を加える手段を備えることと、
前記照射を加える手段は、前記上部(1)の前記経皮照射モジュールによる前記放射を前記下部(9)の前記経皮照射モジュールによる前記放射と同期させるためのモジュールを含み、前記ビームは、前記上部(1)および前記下部(9)のそれぞれの前記経皮照射モジュール(10)について、約9~11Hz、好ましくは約10Hzである全体変調周波数で送信されることと
を特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項16】
前記ユーザの頭部に配置された、好ましくは対称的に配置された少なくとも2つの経皮照射モジュールと、前記ユーザの腹部に配置された、好ましくは対称的に配置された少なくとも2つの経皮照射モジュール(10)と、を備えることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項17】
少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)は、実質的に円筒の形状の保持手段内に保持され、前記保持手段は、前記ビームが前記円筒の軸線に平行に放射されるように患者と接触するようになっていることを特徴とする、請求項1~16のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)の各々のパラメータを構成するための制御インターフェースと、前記経皮照射装置にデジタル制御命令を提供するための通信インターフェースとを含む制御コンソールを含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項に記載の経皮照射装置を備えたシステム。
【請求項19】
アルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病の予防または治療のために構成された、請求項1~17のいずれか一項に記載の経皮照射装置、または請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記上部(1)の前記少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)に適用される前記全体変調周波数は、前記下部(9)の前記少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)に適用される前記全体変調周波数とは異なる、請求項1~15のいずれか一項に記載の経皮照射装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮照射による治療の分野に含まれる。
本発明は、より詳細には、経皮照射による治療の実施を可能にする装置に関する。
本発明の装置の範囲は、神経疾患の治療の分野に含まれる。
【背景技術】
【0002】
経皮照射は、波または粒子の放射が皮膚と接触して放射され、深く浸透する公知の技術である。
【0003】
これらの技術は、損傷した組織を修復および再生するために、それぞれ発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオードを使用した光生体変調および低レベルレーザー治療(LLLT)を含む。この技術は、患者の皮膚にプローブを配置し、損傷した組織領域で一定時間フォトニック放射を行うことで構成される。たとえば、THORによって販売されているプローブは、皮膚に配置された放射ヘッドと、放射ヘッドを保持するハンドルと、制御ユニットに接続された電源ケーブルとを含む。放射ヘッドは、セッション中、施術者によって所定の位置に保持される。
【0004】
特に光線療法によるこれらの経皮照射技術は、神経学的治療および/または精神医学的治療にも適用される。これは経頭蓋照射と呼ばれる。この場合、上記のタイプの可視から赤外の発光プローブは、施術者によって患者の頭部の表面に配置され、保持される。この手法は、神経障害を治療的に扱って、神経機能を回復し、アルツハイマー病などの神経変性疾患などの認知障害の進行を停止し、生活の質を維持するために使用できる。
【0005】
さらに、これらの技術を神経学的治療に適用するには、治療する障害に関与する脳の一部に向けた照射源の正確な位置決めが必要である。これはもちろん、隣接する領域に影響を与える危険を冒して、関係する領域のみを対象とする問題である。これを行うために、NEUROTHERAによって知られ販売されている装置は、ヘルメットを形成し、患者の頭部上に分散されたリングを含むプローブ支持体を提供する。ヘルメットは、各側面の2つの周辺リングに取り付けられた顎ストラップを含むストラップによって所定の位置に保持される。各リングは、脳の標的領域に向かう位置の指標である。プローブは施術者によってリングに配置され、治療の間この位置に保持される。
【0006】
最後に、神経障害または精神障害の治療に使用される別の手法として、経頭蓋磁気刺激がある。この手法は、1つまたは一連の磁気パルスを大脳皮質に適用することで構成される。アルツハイマー病の治療(コッホらによる、Neuroimage 169巻,2018年,302-311頁参照)、前頭側頭葉変性症の治療(アントザクらによる、Neuropsychiatr Dis Treat.14巻,2018年,749-755頁参照)、およびうつ病の治療(Pridmore&Pridmore、2018年,Aust J Gen Pract.47(3),122-125頁参照)において効果が観察されている。
【0007】
ここで、本発明者らは、光生体調節、低レベルのレーザー治療、および磁気刺激を組み合わせた多目標(multi-targeted)且つ多モード(multimodal)のアプローチを開発した。驚くべきことに、治療された解剖学的標的とこれらの技術との組み合わせは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの神経変性疾患の治療に相乗効果をもたらす。
【0008】
[先行技術の欠点]
上記の照射技術では、神経障害の進化に関して十分に満足のいく結果が得られない。
【0009】
さらに、NEUROTHERAによって販売されている装置は、標的領域に向かって発光を正確に配置するには不十分である。実際、施術者によるプローブの保持は、プローブがリング内の位置に留まっている場合でも、光放射の角度の変化を引き起こす可能性がある。また、施術者は治療中に必ずプローブを保持する必要がある。さらに、このシステムでは、各プローブが施術者によって所定の位置に保持され、面倒な制御装置がプローブに接続されていることを考慮すると、脳のいくつかの領域の同時治療を実行することはできない。しかし、一部の神経学的治療の有効性は、脳の標的部位を同時に刺激するために同時にいくつかの領域を照射する可能性に依存する場合がある。
【0010】
[発明の目的]
本発明は、アルツハイマー病などの神経疾患および/または精神疾患の症状に対して実質的な効能を有する経皮照射装置を主に目的としている。
【0011】
本発明はまた、身体の特定の領域に経皮照射を行うための装置を含む。特に、本発明は、患者の頭部および腹部の形態に適合した放射線源の位置決めを保証するシステムを目的としている。
【発明の概要】
【0012】
この目的のために、本発明の経皮照射装置は、ユーザの頭部(3)に配置するのに適し、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)からなる少なくとも1つの経皮照射モジュール(10)を含む上部(1)と、ユーザの腹部(16)に配置するのに適し、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)からなる少なくとも1つの経皮照射モジュール(10)を含む下部(9)と、を備えることを本質的に特徴とする。
【0013】
本発明の装置は、個別にまたはすべての可能な技術的組み合わせで考慮される以下の随意的な特徴を含んでもよい。
・各々の経皮照射モジュール(10)が少なくとも1つのパルスレーザー光源(14a)を含む。
・パルスレーザー光源(14a)は、赤外スペクトルで放射するビームを生成し、前記ビームは、700~1200ナノメートルの波長と、
20~200ナノ秒のパルス幅、
1kHz以上25kHz以下のパルス列繰り返し周波数、
0.5ワット以上12ワット以下のインパルス電力、および
2ボルト以上5ボルト以下の電圧、を含むパルス列と、を有する。
・ビームは、800~900ナノメートル、好ましくは約850ナノメートルの波長を有する。
・パルスレーザー光源(14a)によって生成されるビームのパルス持続時間が75~150ナノ秒、好ましくは90~110ナノ秒である。
・パルスレーザー光源(14a)によって生成されたビームの繰り返し周波数が10kHz以上15kHz以下、好ましくは約15kHzである。
・パルスレーザー光源(14a)によって生成されたビームのインパルス電力が1ワット以上7ワット以下である。
・各々の経皮照射モジュール(10)が、可視スペクトルまたは赤外スペクトルで放射するビームを生成する少なくとも1つの発光ダイオード(14b、14c)を備える。
・各々の経皮照射モジュール(10)が、少なくとも
赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザー光源(14a)と、
赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)と、
赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(14c)と、を含む。
・少なくとも1つの発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)によって生成される赤色スペクトルで放射するビームは600~700ナノメートルの波長を有し、少なくとも1つの発光ダイオード(14c)によって生成される赤外スペクトルの波長は700~1200ナノメートルである。
・少なくとも1つの発光ダイオードまたはレーザー光源(14b)によって生成される赤色スペクトルで放射するビームは、620~650ナノメートル、好ましくは約640ナノメートルまたは約625nmの波長を有する。
・少なくとも1つの発光ダイオード(14c)によって生成された赤外スペクトルで放射するビームの波長が約850ナノメートルである。
・各々の経皮照射モジュール(10)が、静磁場(18)の生成源、好ましくは磁石または電磁石をさらに備える。
・静磁場(18)の生成源は、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)によって経皮照射が生成される平面に垂直に配置されるリング形状を有する。
・装置は、1000ヘルツ以下、好ましくは1ヘルツ以上1000ヘルツ以下の周波数により少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)によって照射を加える手段を備える。
・照射を加える手段は、上部(1)の経皮照射モジュールによる放射を下部(9)の経皮照射モジュールによる放射と同期させるためのモジュールを含み、前記ビームは:
上部(1)および下部(9)のそれぞれの経皮照射モジュール(10)について、約9~11Hz、好ましくは約10Hzである全体変調周波数、または
上部(1)の経皮照射モジュール(10)のそれぞれについて約9~11Hz、好ましくは約10Hz、および下部(9)の経皮照射モジュール(10)のそれぞれについて約900~1000kHz、好ましくは約1000Hz、である全体変調周波数で送信される。
・装置は、ユーザの頭部に配置された、好ましくは対称的に配置された少なくとも2つの経皮照射モジュール(10)と、ユーザの腹部に配置された、好ましくは対称的に配置された少なくとも2つの経皮照射モジュール(10)と、を備える。
・少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)は、実質的に円筒の形状の保持手段内に保持され、前記保持手段は、ビームが円筒の軸線に平行に放射されるように患者と接触するようになっている。
・装置は、ユーザの頭部に対称に配置された少なくとも2つの照射モジュールと、ユーザの腹部に配置された、好ましくは対称に配置された少なくとも2つの照射モジュールとを含む。
・各々のモジュールは、照射される領域のレベルに前記支持体を配置するための手段を含むモジュール支持体、ならびに弾性材料および/または可撓性材料で作られ、弾性グリップによって前記照射モジュールを固定するのに適した少なくとも1つのリングに固定される。
・モジュール支持体は、ユーザの頭部に配置するのに適した経頭蓋照射モジュール支持体を形成する接続要素によって互いに接続された複数のリングを含む。
・リングは、支持体がユーザの頭部に配置されているときに、頭部の中心軸と一致する軸の両側に対称的に配置され、リングは周辺リングを含み、その少なくともいくつかは接続要素によって互いに接続されていない。
・周辺リングは、接続要素によって互いに接続されていない。
・リングは第2の周辺リングと4つの中央リングとを含み、少なくともいくつかの第2の周辺リングは接続要素によって互いに接続されておらず、4つの中央リングは接続要素によって互いに接続されている。
・支持体は、周辺リングを接続する少なくとも1つの接続部を含む制御された締め付けストラップを含む。
・ストラップは、支持体の両側で2つの接続要素に伸びる顎ストラップを含み、顎ストラップは、ユーザの耳の両側にそれぞれ配置されることが意図されるとともに、前記顎ストラップと接続部との間に接合部を形成する。
・各々のリングの内面には、専用モジュールの固定に役立つ溝が含まれている。
・リングは、可撓性材料および/または弾性材料で作られている。
・本発明の装置は、上述の支持体を備え、照射モジュールは、支持体のリング上に同軸に固定されるように適合されている。
【0014】
本発明はまた、本発明の装置と、少なくとも1つの照射源(14a、14b、14c)のそれぞれのパラメータを構成する制御インターフェース、および前記装置にデジタル制御命令を提供する通信インターフェースを含む制御コンソールと、を備えたシステムに関する。
【0015】
本発明はまた、神経障害および/または神経変性疾患の予防または治療、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病の予防または治療のために構成された、本発明による装置またはシステムに関する。
【0016】
本発明はまた、神経障害の治療および/またはアルツハイマー病、パーキンソン病またはハンチントン病などの神経変性疾患の治療のための上記装置の適用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、限定することなく、情報提供のみを目的として、以下の説明から明らかになるであろう。
図1】ユーザの頭部に配置され、この例では4つの照射モジュール(この図ではそのうちの2つだけが見える)を含む本発明の装置の上部の概略側面図である。
図2】ユーザの腹部に配置され、この例では4つの照射モジュールを含む、本発明の装置の下部の概略正面図である。
図3】ユーザの頭部または腹部の皮膚に配置された、第1の変形例による本発明の装置の照射モジュールの図1の線III-IIIによる断面図である。
図4】第2の変形例による本発明の装置の照射モジュールの電子ボードの局所表示であり、照射源の位置と品質とを示している。
図5】ユーザの頭部に配置することを意図した本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略上面図である。
図6】ユーザの頭部に配置することを意図した本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略側面図である。
図7】ユーザの頭部の所定の位置にある本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略上面図である。
図8】ユーザの頭部の所定位置にある本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略正面図である。
図9】ユーザの頭部の所定の位置にある本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略背面図である。
図10】ユーザの頭部の所定位置にある本発明の装置の上部のモジュール支持体の概略側面図である。
図11】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスおよび照射治療を受けていない対照マウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの自発的空間記憶の変化を示す図である。
図12】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスおよび照射治療を受けていない対照マウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第1の試験による長期空間記憶の変化を示す図である。
図13】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスおよび照射治療を受けていない対照マウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第2の試験による長期空間記憶変化を示す図である。
図14】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスと照射治療を受けていない対照マウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬における脂質過酸化のレベルを示す図である。
図15】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスおよび照射治療を受けていない対照マウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35が注射されたマウスの海馬でELISAによって測定されたグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のレベルを示す図である。
図16】本発明による異なる装置による照射治療を受けたマウスおよび照射治療を受けていない対照マウスについてアミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬でELISAによって測定された腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルを示す図である。
図17図11と同様に、・2.5~10分の範囲の治療時間を適用することにより、発光ダイオード、パルスレーザー、および磁石を備えた照射モジュールを含む本発明による装置、および・ユーザの頭部にのみ適用される同じ照射モジュールを含む、本発明の範囲外の装置、による照射治療を受けていない対照マウスおよび照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの自発的空間記憶の変化を示す図である。
図18図12と同様に、照射されていない対照マウスおよび図17に示されているものと同じ装置で照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第1の試験による長期空間記憶の変化を示す図である。
図19図13と同様に、照射されていない対照マウスおよび図17に示されているものと同じ装置で照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第2の試験による長期空間記憶変化を示す図である。
図20図14と同様に、照射治療を受けていない対照マウスおよび図17で言及したものと同じ装置による照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬における脂質過酸化のレベルを示す図である。
図21図15と同様に、照射治療を受けていない対照マウスおよび図17に示したものと同じ装置を使用して照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬でELISAにより測定したグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のレベルを示す図である。
図22図16と同様に、照射されていない対照マウスおよび図17に示されているものと同じ装置で照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35が注射されたマウスの海馬でELISAによって測定された腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルを示す図である。
図23図11および図17と同様に、・0~1000ヘルツの範囲の異なる照射周波数を適用することにより、発光ダイオード、パルスレーザー、および磁石を備えた照射モジュールを含む本発明による装置、および、・ユーザの頭部または腹部にのみ適用される照射モジュールを含む、本発明の範囲外の装置、による照射処理を受けていない対照マウスおよび照射処理を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35が注射されたマウスの自発的空間記憶の変化を示す図である。
図24図12および図18と同様に、照射されていない対照マウス、および図23に示すものと同じ装置で照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第1の試験による長期空間記憶の変化を示す図である。
図25図13および図19と同様に、照射されていない対照マウス、および図23に示すものと同じ装置で照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの第2の試験による長期空間記憶変化を示す図である。
図26図14および図20と同様に、照射していない対照マウス、および図23に示したものと同じ装置で照射したマウスの両方について、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬における脂質過酸化のレベルを示す図である。
図27図15および図21と同様に、照射治療を受けていない対照マウス、および図23で述べたものと同じ装置を使用して照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬でELISAにより測定したグリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のレベルを示す図である。
図28図16および図22と同様に、照射されていない対照マウスと、図23に示すものと同じ装置を使用して照射されたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの海馬でELISAにより測定した腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルを示す図である。
図29】照射治療を受けていない対照マウス、ならびに発光ダイオード、パルスレーザーおよび磁石を備えた照射モジュールを含む本発明による装置による照射治療、および本発明による同じ装置であるが磁石なしによる照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの前頭皮質におけるインターロイキン-1ベータ(IL-1β)のレベルを示す図である。
図30】照射していない対照マウス、および図29に示したものと同じ装置で照射したマウスの両方について、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの前頭皮質におけるインターロイキン-6(IL-6)のレベルを示す図である。
図31】照射治療を受けていない対照マウス、および図29に示したものと同じ装置を使用した照射治療を受けたマウスの両方について、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの前頭皮質におけるBax/Bcl2タンパク質のレベルを示す図である。
図32図29に示すものと同じ装置を使用して、照射治療を受けていない対照マウスおよび照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの前頭皮質におけるThr81上のリン酸化タウタンパク質(pTau Thr81)のレベルを示す図である。
図33図29で言及されたものと同じ装置に従って、照射治療を受けていない対照マウスおよび照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35を注射したマウスの前頭皮質におけるアミロイドタンパク質-β(1-42)(Aβ1-42)のレベルを示す図である。
図34】照射処置を受けていない対照マウス、ならびに電界発光ダイオード、パルスレーザーおよび磁石を備えた照射モジュールを含む本発明による装置による照射処置を受けたマウスについて、オリゴマーAβ25-35を注入したマウス脳の一連の組織切片で海馬のCA1領域に観察される星状細胞の活性化を示す図である。
図35】照射治療を受けていない対照マウスおよび図34に示す装置による照射治療を受けたマウスについて、オリゴマーAβ25-35を注射したマウスの一連の組織学的脳切片の海馬のCA1領域の一連の脳切片で観察される活性化ミクログリア細胞の数を示す図である。
図36図36は、マウスの短期空間記憶(Y迷路試験)を示す図である。トンネル内のマウスの交替行動は左の図に示され、マウスの運動能力は右の図に示されている。この試験は、経皮照射治療を受けていない対照マウスおよび「RGn530」装置を使用した経皮照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35またはコントロールペプチド(Sc.Aβ)が注入されたマウスの異なるグループ(n=12匹のマウス/グループ)で実行された。統計分析は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001(対照ペプチド(Sc.Aβ25-35)グループに対する分析/治療なし)および#p<0.05、##p<0.01、###p<0.0001(アミロイドペプチドAβ25-35グループに対する分析)/治療なし)としてダンの試験(Dunn’s test)を使用して実行された。
図37】マウスの長期文脈記憶(受動的回避試験)を示す図である。マウスがトンネルに入るまでの待ち時間を左の図に示し、マウスを回避する待ち時間を右の図に示す。この試験は、「RGn530」装置を使用して、照射治療を受けていない対照マウスおよび経皮照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35またはコントロールペプチド(Sc.Aβ)が注入されたマウスの異なるグループ(n=12匹のマウス/グループ)で実行された。統計分析は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001(対照ペプチド(Sc.Aβ25-35)グループに対する分析/溶媒(蒸留水))および#p<0.05、##p<0.01、###p<0.0001(アミロイドペプチドAβ25-35グループに対する分析)/溶媒(蒸留水))としてダンの試験(Dunn’s test)を使用して実行された。
図38】「RGn530」装置を使用して、照射治療を受けていない対照マウスおよび経皮照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35またはコントロールペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウス(1グループあたりn=12匹のマウス)の海馬における脂質過酸化のレベルを示す図である。統計分析は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001(対照ペプチド(Sc.Aβ25-35)グループに対する分析/溶媒(蒸留水))および#p<0.05、##p<0.01、###p<0.0001(アミロイドペプチドAβ25-35グループに対する分析)/溶媒(蒸留水))としてダンの試験(Dunn’s test)を使用して実行された。
図39】「RGn530」装置を使用して、照射治療を受けていない対照マウスおよび経皮照射治療を受けたマウスについて、アミロイドペプチドAβ25-35または対照ペプチドが注射されたマウスの海馬(1グループあたりn=12匹のマウス)でELISAによって測定された腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルを示す図である。統計分析は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001(対照ペプチド(Sc.Aβ25-35)グループに対する分析/溶媒(蒸留水))および#p<0.05、##p<0.01、###p<0.0001(アミロイドペプチドAβ25-35グループに対する分析)/溶媒(蒸留水))としてダンの試験(Dunn’s test)を使用して実行された。
図40】対照ペプチド(Sc.Aβ25-35)またはアミロイドペプチドAβ25-35を照射治療なしで注射したマウス(1グループあたりn=12匹のマウス)、およびアミロイドペプチドAβ25-35が注射され、「RGn530」装置を使用した経皮照射によって治療されたマウス(6分、剃毛マウス)について、盲腸内の16S rDNAによって分析された3つの細菌門(ファーミキューテス門、テネリキューテス門、およびデフェリバクター門)の豊富さを示す図である。統計分析は、*p<0.05、**p<0.01、***p<0.0001(未処理のアミロイドペプチドAβ25-35グループ対コントロール(Sc.Aβ25-35)グループ)および#p<0.05、##p<0.01、###p<0.0001(治療アミロイドペプチドAβ25-35グループ対コントロール(Sc.Aβ25-35)グループ)としてマン・ホイットニー試験(Mann-Whitney test)を使用して実行された。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[照射装置]
図1図2および図3を参照すると、本発明の経皮照射装置は2つの部分からなる。第1の上部1は、ユーザの頭部3に配置するための1つまたは複数の経皮照射モジュール10を含む。また、第2の下部9は、ユーザの腹部16上に配置するための1つまたは複数の経皮照射モジュール10も備える。
【0019】
本発明の目的のために、「配置される」とは、モジュールがユーザの皮膚に貼り付けられることを意味する。装置の上部では、モジュールはユーザの頭部に取り付けられ、装置の下部では、モジュールはユーザの腹部に取り付けられる。
【0020】
各々の経皮照射モジュール10は、各々の経皮照射モジュール10内に配置された磁石18などの、静的な、好ましくは円形の磁場を生成するための手段と同様に、赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルス型レーザー源14a(好ましくはレーザーダイオードまたは当業者に知られている他のレーザー放射線源)、可視スペクトル14bで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)またはレーザー光源、および/または赤外スペクトル14cで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)の形態を取り得る1つまたは複数の照射手段14を含む。
【0021】
図1に示すように、この実施形態では、装置1の上部は、前頭葉に到達するように頭部3の前方に対称的に配置された4つの経皮照射モジュール10(この図では2つのみが見える)を含む。脳の任意の領域に配置される経皮照射モジュール10はより少なくても(本発明によれば少なくとも1つ)よく、または逆に、前頭葉、頭頂葉、小脳および/または後頭葉に到達するように配置されるより多くの経皮照射モジュール10があってもよい。好ましくは、経皮照射モジュール10の数は、8、10、12、14、16、18または20より多く、図1および図5図10の実施形態によれば22より多くてもよい。好ましくは、経皮照射モジュール10は偶数であり、ユーザの頭部3の表面上に対称的に分布している。
【0022】
図2に示されるように、装置9の下部は、対称的に配置され、ユーザの腹部16上に実質的に水平に整列された5つの経皮照射モジュール10を含む。本発明の装置によって覆われた腹部の領域は、径部から胃まで垂直に延び、腹部の幅にわたって水平に延びている。したがって、上部1に関しては、腹部16の任意の領域に配置される経皮照射モジュール10がより少なくてもよく(本発明によれば少なくとも1つ)、逆に、前に定義されたように腹部16の全部または一部を覆う複数の経皮照射モジュール10があってもよい。好ましくは、経皮照射モジュール10の数は、8、10、12、14、または16よりも多く、図1および図5図10の実施形態によれば18であってもよい。装置9の下部をより多くの数の経皮照射モジュール10に適合させることにより、より多くの数の経皮照射モジュール10(例えば、18、20、22またはそれ以上の数の経皮照射モジュール10)を提供することも可能である。好ましくは、経皮照射モジュール10は偶数であり、ユーザの腹部16の表面上に対称的に分布している。
【0023】
図3は、ユーザの頭部3に配置された経皮照射モジュール10の断面を示しているが、腹部16に配置された経皮照射モジュール10にも適用される。各経皮照射モジュール10は、以下に詳細に説明するモジュール支持体の一部を形成するリング2内に経皮照射モジュール10を確実に同軸に保持するための一般的な円筒形状を有する。この同軸構成は重要である。なぜなら、先行技術のようにモジュールが制御装置と電源装置とに接続されたハンドルおよびケーブルを備えたプローブの形態で提示され、リングが位置表示機能のみを形成する場合には当てはまらない、専用リング2の軸での経皮照射モジュール10の位置決めと固定メンテナンスとを保証するからである。
【0024】
リング2は、可撓性材料および/または弾性材料からなり、リング2の軸線において経皮照射モジュール10の固定された正確な位置決めを確実にするべく、経皮照射モジュール10の外面において対応する円形リブ11が挿入される内側溝8を有する。リング2およびその経皮照射モジュール10との結合手段の構造は、本発明の範囲を逸脱することなく、図3に示されたものと異なってもよい。
【0025】
一実施形態では、経皮照射モジュール10は、経皮照射モジュール10の外側に延びる電気ケーブル13を介して電力が供給される電子ボード12を含む。この電気ケーブル13は、図1および図2の各経皮照射モジュール10についても示されている。代替的な実施形態では、リング2は、対応するリング2上に配置された各経皮照射モジュール10に自動的に給電するために、当業者に知られている手段によって各リング2で開く単一の電力ケーブル13によって互いに接続される。電気ケーブル13はまた、データ線(例えば、CANバスタイプ)、照射源のための電力線、および1つ以上の接地線を含む。
【0026】
図3および図4に表される2つの実施形態によれば、本発明の装置の各経皮照射モジュール10は、赤外スペクトルで放射するビームを生成する少なくとも1つのパルスレーザー14aからなる照射源と、赤色スペクトルで放射するビームを生成する少なくとも1つの発光ダイオード(LED)14bと、赤外スペクトルで放射するビームを生成する少なくとも1つの発光ダイオード(LED)14cとを含む。あるいは、赤色スペクトルで放射するビームを生成する1つ以上の発光ダイオード14bの代わりに、またはそれと組み合わせて、赤色スペクトルで放射するビームを生成する1つ以上のレーザー源14bを使用してもよい。
【0027】
図3に示す実施形態では、経皮照射モジュール10は、経皮照射モジュール10の主軸XX’に配置されたパルスレーザー14aと、赤色スペクトル14bおよび赤外スペクトル14cでそれぞれ放射するビームを生成し、パルスレーザー14aの両側に対称的に配置されている2つのLEDを含む。
【0028】
図4に示される第2の好ましい実施形態では、経皮照射モジュール10は、4つのパルスレーザー14a、14a、14bと、赤色スペクトル14bで放射するビームを生成する3つの発光ダイオードと、赤外スペクトル14cで放射するビームを生成する3つの発光ダイオードと、を含む。
【0029】
したがって、照射源14は、3つのグループ、すなわち、より正確には、
・赤外スペクトル14cで放射するビームを生成し、700~1200ナノメートル、好ましくは800~900ナノメートル、好ましくは約850ナノメートルの波長を有する少なくとも1つ、優先的には2つ、さらに優先的には3つ以上の発光ダイオード(LED)(LED14cは円形であり、モジュールの主軸XX’の周りおよびその近くに均等に分布している);
・赤色スペクトル14bで放射するビームを生成し、600~700ナノメートル、好ましくは約640ナノメートル、または好ましくは約625nmの波長を有する少なくとも1つ、優先的に2つ、さらに優先的に3つ以上の発光ダイオード(LED)(LED14bは、主軸XX’上のLED14cの周りに、より大きな距離で、円形かつ均一に分布している);
・赤外スペクトルで放射するビームを生成し、700~1200ナノメートル、好ましくは800~900ナノメートル、好ましくは約850ナノメートルの波長を有する少なくとも1つ、優先的に2つ、さらに優先的に3つ、さらに優先的に4つ以上のパルスレーザー源(好ましくはレーザーダイオード)14a(一実施形態では、これらのレーザー源14aのそれぞれは、
・20~200ナノ秒のパルス幅、
・1kHz以上25kHz以下、好ましくは10kHz以上15kHz以下、好ましくは15kHzまたは好ましくは10kHzのパルス列繰り返し周波数、
・0.5ワット以上12ワット以下、好ましくは1ワット以上7ワット以下のインパルス電力、および
・2ボルト以上5ボルト以下、好ましくは4.24ボルト±10%、または好ましくは2.30ボルト±10%の電圧、
を含むパルス列を有する);
に分けられる。
【0030】
一実施形態では、第1のレーザー源14aは軸線XX’を中心とし、他の3つのレーザー源は、主軸XX’の周りに、LED14bと同じ円周で、LED14cより大きな距離で円形かつ均等に分布する。代替的な実施形態では、3つのレーザー源14aが、軸線XX’の周りに円形かつ均等に分布している。別の実施形態では、3つ未満のレーザー源14a、たとえば単一のレーザー源14aが、軸線XX’の中心にあるか、または軸線XX’の中心から外れている。
【0031】
本発明の範囲内で、レーザー光源およびLEDは、主軸XX’上にまたは主軸XX’からオフセットして配置することができ、本質的なことは、照射される表面(頭部または腹部)の方向で照明が行われることである。
【0032】
好ましい実施形態では、経皮照射モジュール10はまた、図示されていないが、パルスモードを提供する当業者に知られている手段、言い換えれば、発光ダイオード14b、14cおよびレーザー光源14aに印加される「全体変調周波数」を含む。一実施形態では、全体変調周波数は、0~4000Hz、好ましくは1~1000Hz、好ましくは1~100Hz、好ましくは約10Hzである。
【0033】
後者の好ましい実施形態では、ユーザの頭部3に適用される経皮照射モジュール10の照射源14a、14b、14cと、ユーザの腹部16に適用される経皮照射モジュール10の照射源14a、14b、14cとに、同一の全体変調周波数が適用される。したがって、一実施形態では、0~4000Hz、好ましくは1~1000Hz、好ましくは1~100Hz、好ましくは約10Hzの全体変調周波数が、ユーザの頭部3に適用される経皮照射モジュール10の照射源14a、14b、14cに適用されるとともに、同一の全体変調周波数が、ユーザの腹部16に適用される経皮照射モジュール10の照射源14a、14b、14cに適用される。
【0034】
あるいは、装置の上部1に所定の全体変調周波数(たとえば、10ヘルツ)を適用し、装置の下部9には別の全体変調周波数(たとえば、1000ヘルツ)を適用してもよい。
【0035】
「全体変調周波数」とは、非照光範囲と照光範囲との交互の確立を意味する。非限定的な例示的実施形態では、照明範囲は、非照明範囲の持続時間と等しい持続時間である。この全体変調周波数は、コンピューター制御の電子制御コンソールによって構成され、制御された送信周波数を適用する。
【0036】
好適には、各経皮照射モジュール10は、平面Pに延在し、20~2000ミリテスラ、好ましくは100~1000ミリテスラ、好ましくは約200ミリテスラの、好ましくは円形の静磁場を生成するように配置された磁石18を含む。磁石18は円形であり、経皮照射モジュール10の内側に取り付けられている。したがって、レーザー源14a、発光ダイオード(LED)14b、および発光ダイオード(LED)14cによって生成された光線Rは、磁石18の平面Pに対して垂直に、この磁石18の内側に延びる。
【0037】
したがって、レーザー源14a、好ましくはレーザーダイオード14aに関して、レーザー源14aは二重パルス、すなわち、
・内因性であって、1kHz以上25kHz以下、好ましくは10kHz以上15kHz以下、好ましくは15kHzまたは好ましくは10kHzの繰り返し周波数を含むパルス列を有する第1のパルス、および
・外因性であって、0~4000Hz、好ましくは1~1000Hz、好ましくは1~100Hz、好ましくは約10Hzの繰り返し周波数を含み、LED14bおよびLED14cにも適用可能な第2のパルス、にさらされる。
【0038】
照射源14a、14b、14cによって生成された電磁放射線は、患者の頭部3の髪16および皮膚17の近く(または腹部16の近く)の経皮照射モジュール10の底部に位置する光ガイド15を通過する。その後、放射線は脳または腹部の標的領域に入る。
【0039】
経皮照射モジュール10は、図3に示されるように、1つの部品、または2つの部品で作製することができる。後者の場合、経皮照射モジュール10は、環状の底部10aと環状の上部10bとを含む。底部10aおよび上部10bは、当業者に知られている任意の手段、特に差し込みシステム、ねじ止めまたはスナップ嵌めによって組み立てられてもよい。本発明の範囲内に留まる限り、モジュールの構造は異なっていてもよく、当業者によって適合されてもよい。
【0040】
この特定の実施形態について図3に示すように、円形リブ11は、光ガイド15を含む底部10aに配置され、この底部10aは、2つの治療の間、リング2上の所定位置に留まることができる。上部10bは、電子ボードと照射源とを含み、治療時に底部に配置することができる。
【0041】
[モジュール支持体]
頭部3または腹部16に適用される経皮照射モジュール10の固定された正確な位置決めを確実にするために、モジュールは、弾力性のあるグリップにより、経皮照射モジュールの固定メンテナンスを確実に行うことを可能にする可撓性材料および/または弾性材料で作られた1つ以上のリングを含むモジュール支持体上に配置される。可撓性材料および/または弾性材料は、前記リングを離すことにより、実質的に円筒形の外面弾性率をリングに挿入し、弾性率に対して弾性復帰することを可能にするエラストマーまたはゴムなどの材料を意味する。材料は、弾性を持たずに柔軟であり、モジュールを挿入および固定するための間隔は、材料の大幅な延長を意味し、摩擦によりモジュールをリングに保持できる。支持体はまた、照射される領域に配置する手段を含む。これらの手段は、ストラップの形をとってもよいが、さらに、または加えて、治療される領域に載ることにより、その領域に適応し、この適応した支持体形状により所定の位置に保持される支持体の形状であってもよい。
【0042】
本発明の装置の上部1のモジュール支持体20aは、頭部3の形状に適合しなければならない。図5図10は、神経治療に適用される本発明のモジュール支持体を説明するために使用される。このモジュール支持体は、腹部用のモジュール支持体20bの構造に構造的に適合されている。
【0043】
支持体20aは、頭部3の表面上に分布する経皮照射モジュール10を保持するための複数のリング2を含む(明確にするために、図ではすべてのリングが参照されるわけではない)。例として、各リングは、25ミリメートルの外半径、23ミリメートルの内半径(すなわち、厚さ2ミリメートル)、および6ミリメートルの高さを有するシリコーンで作られている。高さは、以下で説明するモジュールを保持するのに十分でなければならない。シリコーンの使用の代替として、リングは、ゴム、エラストマー材料、または本質的に円筒形の外面モジュールの挿入および保持を可能にするのに十分な可撓性を有する他のポリマーまたは非ポリマー材料で作られてもよい。
【0044】
リング2は、支持体上に対称的に分布しているため、頭部3に配置されたとき、支持体の対称軸XX’は、ユーザの頭部3の中心軸XX’と一致する。リング2は、例えばリングと同じ材料、この例ではシリコーンで作られた可撓性の接続要素4によって互いに接続されている。接続要素4は、支持体20a上に正確に配置され、支持体20aがユーザの頭部3の形状に適合できるようにし、支持体を頭部3上に保持できるようにする。
【0045】
リング2は、次のように分布する。すなわち、支持体20aは、10個の周辺リング2a、4つの第2の周辺リング2bおよび4つの中央リング2cを提供する。リングのこの正確な数と正確な配置は、制限なく例として与えられていることが理解される。リング2の数および位置は、本発明の範囲内に留まりながら変えることができる。
【0046】
リング2a、2b、2cに2a1、2a2、2a3、2a4、2a5、2b1、2b2、2b3、2b4、2c1、および2c2の符号が付されている図5は、その機能を説明するために使用されており、この図5は、支持体20aの半分のみを表していることが理解される。頭部3の前方に向けて配置された4つの周辺リング2a1、2a2および2つの第2の周辺リング2b1は、前頭葉に到達するように設計されている。前方の第2の周辺リングから延びる6つの周辺リング2a2、2a3および2a4は、側頭葉に到達するように意図されている。患者の耳の上にある4つの中央リング2c1、2c2と4つの第2の周辺リング2b2、2b3は、頭頂葉に到達するように意図されている。4つの最も後方の周辺リング2a4、2a5は、小脳に到達するように意図されている。そして、最後方の周辺リングの上方に位置する2つの第2の周辺リング2b4、および最後方の周辺リング2a5の前方にある2つの周辺リング2a4は、後頭葉に到達するように意図されている。すべてのリング2により、視床、海馬、および扁桃腺により深く到達することができる。
【0047】
4つの中央リング2cは、中央接合部4aによって互いに接続されている。第2の周辺リング2bは、第2の周辺接合部4bによって中央リング2cに接続されている。いくつかの第2の周辺リング2bもまた、第2の周辺接合部4bによって互いに接続されている。周辺リング2aはそれぞれ、周辺接合部4aによって第2の周辺リング2bに接続されている。一方、周辺リング2aは、接合部によって互いに接続されていない。接合部4a、4b、4cのうちの1つは、患者識別ラベルを取り付けることができる平坦な領域を含むことを提供し得る。
【0048】
周辺リング2a間に接続がないことにより、支持体20aは、程度の差はあれ開口することにより、患者の頭部の形状に適応することができる。本発明の範囲内にとどまる限り、この適応機能を提供しながらいくつかの周辺リング2aを互いにリンクすることができる。他方、すべての周辺リング2aが互いに接続される場合、支持体20aは異なる頭部形状に適応することができなくなる。
【0049】
第2の周辺リング2bについては、いくつかが互いに接続されており、支持体が十分に強く、ヘッド上の所定の位置に留まり、モジュールをリング内の所定の位置に保持する。いくつかの第2の周辺リング2bが互いに接続されていないという事実により、支持体20aを任意の頭部形状に適合させる機能を維持することも可能になる。
【0050】
第2の周辺接合部4bおよび周辺接合部4aの有無および位置は、患者の頭部の所定の位置に維持し、保持することを可能にするのに必要な支持体20aの剛性と、モジュール、および任意の頭部形状への支持体1の適応特性との間の妥協により当業者によって評価される。これらの接合部の有無は、支持体1上に存在するリング2の数、またはリング2と接合部4とを作るために使用される材料の剛性に応じて異なる。
【0051】
いずれにしても、少なくともいくつかの周辺リング2aが互いに接続されていないことが重要であり、好ましくはすべての周辺リング2aが互いに接続されていないことが好ましい。反対に、中央リング2cが接合部4aによって互いに接続されていることも、支持体の剛性にとって重要であると思われる。中央リング2cの完全な接続は、使用される中央リング2cの数に依存する。
【0052】
一例として、モジュール支持体20は、シリコーン成形により一部品で作成し得る。
【0053】
図8を参照すると、頭部への支持体20aの保持をさらに改善し、治療される脳の領域にリング2を正確に配置するために、制御された締め付けストラップ5が提供される。このストラップ5は、各周辺リング2aの下側周縁に配置された管状要素6を介して各周辺リング2aを接続する第1の接続部5aを含む。
【0054】
ストラップ5はまた、患者の耳の両側で対になって通過する4つの接続要素5cによって第1の接続部5aに接続された顎ストラップ5bを含む。
【0055】
3つのクランプ点7a、7b、7cを設けることができ、そのうちの2つのクランプ点7a、7bは接続要素5cと第1の接続部5aとの接合部に位置し、第3のクランプ点は顎ストラップ5bと2つの接続要素5cとの間の接合部に位置する。
【0056】
図3を参照して上述したように、リング2内の経皮照射モジュール10の性能をさらに改善するために、リング2の内側に溝8を設けることができる。この溝8は、関連するモジュール10の外面上の円形リブ11と一致するように意図されている。溝8の存在は、モジュールのグリップを改善するだけでなく、放射線が脳または腹部の標的領域に正確に向けられるようにするべく、モジュールのより正確な位置決めを提供する。
【0057】
図2を参照すると、本発明の下部9のモジュール支持体20bは、接合部4によって互いに接続されたリング2も含み、リング2および接合部4は、モジュール支持体20aについて上述したものと同一である。この目的のために、モジュール支持体20dは、径部と胃との間を垂直に、また腹部16の幅にわたって水平に延びる4本の線に沿ったリング2の分布を保証する周辺リング2aおよび中央リング2cを含む。モジュール支持体20aと同様に、周辺リング2aは、接合部4によって互いに接続されておらず、ユーザの腹部形態に最もよく適合する。
【0058】
本発明の底部を装置の下部9の腹部16上の所定の位置に保持するために、同じ列のリング2の両端にそれぞれ取り付けられ、固定のためにベルトストラップが挿入され得るループ19を設けることができる。
【0059】
[システム]
本発明はまた、少なくとも1つの照射源14a、14b、14cのそれぞれのパラメータを構成するための制御インターフェースと、前記装置へのデジタル制御命令を提供するための通信インターフェースとを含む制御コンソールを備えた、本発明による装置を備えたシステムに関する。
【0060】
[治療]
本発明はまた、それを必要とするユーザの神経障害および/または神経変性疾患の予防および/または治療のために構成された、本発明による装置またはシステムに関する。特に、本発明による装置またはシステムは、アルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病の予防および/または治療のために構成される。
【0061】
本発明はまた、神経障害および/または神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病を治療する方法に関し、本発明による装置またはシステムによってそれを必要とするユーザに経皮照射を行うことを含む。
【0062】
一実施形態では、ユーザは、神経学的障害および/または神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病と診断されている。ユーザは、ユーザが神経障害および/または神経変性疾患、好ましくはアルツハイマー病、パーキンソン病および/またはハンチントン病に罹患していることを認識し、評価し、判断し、確認し、結論付け、考え、または特定する医療従事者(医師や看護師など)、家族または知人によって診断される場合がある。
【0063】
一実施形態では、ユーザは、20歳以上、30歳以上、40歳以上、50歳以上、60歳以上、70歳以上、または80歳以上の、男性または女性である。
【0064】
一実施形態では、本発明の装置またはシステムによって、頭部または腹部に同時に、または連続的に経皮照射治療を実施することができる。一実施形態では、セッション当たりの経皮照射時間は、5~60分、好ましくは5~40分、好ましくは10~30分、好ましくは約25分である。一実施形態では、経皮照射治療は、1日1回、1日2回または1日3回、好ましくは1日1回実施される。一実施形態では、経皮照射治療は、週に1~7回、例えば、週に1日、週に2日、週に3日、週に4日、週に5日、週に6日または週に7日行われる。一実施形態では、経皮照射治療の合計期間は、治療の頻度、治療される病状、および患者の全身状態に応じて、1~365日である。
【0065】
優先的実施形態では、経皮照射治療は、7日間ごとに5日間、1日あたり25分間のセッションを1回の割合で、合計2ヶ月間実施される。
【0066】
[実施例]
[実施例1]
本発明の装置の有効性を評価するために試験が実施された。より具体的には、マウスへのベータアミロイドの注射によって誘発される病理の軽減に対する本発明の装置の有効性が評価された。これらの試験により、アルツハイマー病などの神経変性疾患の治療に使用される照射プロトコルを決定することも可能になった。
【0067】
本発明の装置を試験するために使用される動物モデルは、オリゴマー型のアミロイドペプチドAβ25-35のマウスへの脳室内注射からなるアルツハイマー病の非トランスジェニックAβ25-35モデルである。アミロイドペプチドの存在は、アルツハイマー病患者の脳で確認されており、ペプチドAβ25-35は、最も神経毒性があることが証明されている。ペプチドAβ25-35の脳室内注入は、7日後に脳内に、神経炎症および反応性神経膠症、アポトーシス促進性カスパーゼの活性化、酸化ストレス、海馬における錐体細胞数の減少、コリン作動性ニューロンの喪失、深刻な記憶障害が生じることが示されている。非常に興味深いことに、Aβ25-35ペプチドの注射は、特に内因性Aβ種の蓄積だけでなく、タウタンパク質の過剰リン酸化を伴う、ヒトのアルツハイマー病の生理病理学におけるすべての特徴を有する病理の発生をもたらす。
【0068】
1日目に、「試験」マウスのグループにアミロイドペプチドAβ25-35を9nmol/マウスの用量で注射してアミロイド毒性を誘発し、「陰性対照」マウスの別のグループには、9nmol/マウスの用量でペプチドSc.Aβ(スクランブルアミロイド-βタンパク質25-35)を注射した。
【0069】
マウスの「試験」グループの一部は、1日目(アミロイドペプチドAβ25-35の注射の2時間後)から10日目に経皮照射治療を受けた。照射治療は、頭部のみ、または腹部のみ、または頭部と腹部とに行われた。使用された照射装置は、本発明によるか、または(特に、頭部のみ、または腹部のみに適用される装置の場合)本発明の範囲外である。治療は1日に1回または2回行われた。使用および比較されるさまざまな装置を以下に説明する。
【0070】
8~10日目に、マウスのすべてのグループ(治療なしのSc.Aβ、治療なしのAβ25-35、治療ありのAβ25-35)について行動試験が行われた。
【0071】
8日目に行われた第1の行動試験では、Y字型迷路の交替行動を評価する試験を使用して、マウスの自発的空間記憶の変化を評価する。したがって、迷路には3本のアームがある。各マウスはアームの端に置かれ、8分間のセッション中に迷路内を自由に移動できる。同じアームでの戻りを含む各マウスの動きは、視覚的に確認される。交替は、いくつかの連続した機会における3つすべてのアームへの進入として定義される。交替の最大数は、アームの進入の総数から2を引いたものである。交替の割合は、(実際の交替の数/最大の交替の数)×100として計算される。この第1の行動試験の結果は、図11図17、および図23に示されている。
【0072】
9日目および10日目における第2の行動試験では、「受動的回避試験」とも呼ばれる長期の文脈記憶を評価する。この試験は9日目に行われるトレーニングセッションとともに、10日目に2段階で実行される。試験対象の装置は2区画箱であり、うち1つは照らされ、もう1つは暗闇に浸り、グリッドフロアがある。ギロチン型の閉鎖ドアが2つの区画を分離する。暗い区画のグリッドボードで衝撃が発生し得る。最初に、2つの区画を分離しているドアが閉じられる。トレーニングセッションでは、各マウスを照明付きの区画に配置する。5秒後にドアが開く。マウスが暗い区画に入ると、グリッドに電気ショックが発生する。10日目に、ドアを閉めた状態でマウスを照明付きの区画に再び配置する。ドアが開き、2つのパラメータが測定される。すなわち、待ち時間、つまりマウスが暗い区画に入るまでの時間、および脱出時間、つまりマウスが暗い区画を離れるまでの時間である。これらの2つのサブテストの結果(待ち時間および脱出時間)を図12図18図24および図13図19図25に示す。
【0073】
10日目にマウスを安楽死させる。マウスの海馬と前頭皮質とを解剖する。海馬における脂質過酸化のレベルは、組織のミリグラムあたりのCHP当量で、対照グループ(未処理のSc.Aβ)の割合として特定される。結果を図14図20、および図26に示す。グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)のレベルも、ELISAによって海馬で特定される。結果は、対照グループ(治療なしのSc.Aβ)の割合として表され、図15図21、および図27に示されている。海馬では、腫瘍壊死因子(TNFα)のレベルもELISAによって特定される。結果は、対照グループ(治療なしのSc.Aβ)の割合として表され、図16図22および図28に示されている。
【0074】
前頭皮質において、インターロイキン-1ベータ(IL-1β)(図23)およびインターロイキン-6(IL-6)(図24)のレベルも特定される。これら2つのサイトカインは、脳組織の炎症状態を反映している。その比率がアポトーシス(図25)、タウタンパク質(pTau)Thr81(図26)およびアミロイドタンパク質-β(1-42)(Aβ1-42)(図27)を反映する大脳皮質のBaxおよびBcl2タンパク質のレベルも特定される。異常に生産されたアミロイドタンパク質-β(1-42)および異常にリン酸化されたタウタンパク質は、アルツハイマー病の特徴である。
【0075】
最後に、海馬のC1領域の組織切片で組織学的分析が行われる。グリア線維性酸性タンパク質(GFAP)をマーカとして使用して、一連のセクションの活性化星状細胞の平均数を決定するために、視覚的なカウントが実行される。Iba1タンパク質をマーカとして使用して、活性化されたミクログリア細胞の平均数を決定するために視覚的なカウントも実行される。星状細胞およびミクログリア細胞の活性化は、神経病理学に関与する神経炎症プロセスの原因となる。
【0076】
図11から図35に示されている結果について、治療せずにSc.Aβを注射することによって得られた結果は、この注射がマウスの挙動または試験されたマーカの割合を変更しなかったため、第1の参照対照を構成することに留意されたい。治療せずにAβ25-35を注射して得られた結果は、第2の参照対照を構成する。
【0077】
また、表示###、##、および#はそれぞれ対照グループ(治療なしのSc.Aβ)との合計の、優れた、および良好な妥当性を意味し、表示***、**、*はそれぞれ対照(治療なしのSc.Aβ)では不十分である合計の、結果的なおよび敏感な欠乏を示すことに留意されたい。
【0078】
図11図16を参照すると、これらの図は、以下の動作条件下で1日に1回実行される照射治療について上記の試験によって得られた結果を示す。
・参照30:治療なしのSc.Aβの注射(対照1)。
・参照31:治療なしのAβ25-35の注射(対照2)。
・参照32:「装置A」による頭部と腹部に1日1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照33:「装置A」による頭部と腹部に1日1回、20分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照34:「装置B」による頭部と腹部に同時に1日1回、5分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照35:「装置C」による頭部と腹部に同時に1日1回、2.5分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照36:「装置D」による頭部と腹部に1日1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照37:「装置E」による頭部と腹部に同時に1日1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照38:「装置F」による頭部と腹部に1日1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
【0079】
「装置A」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・625ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・120~150ナノ秒のパルス持続時間、10kHz(または0.1ミリ秒)のパルス列繰り返し周波数、および1ワット~7ワットのパルス電力により、850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザーダイオード。
・2.30Vの電圧。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツの全体変調周波数においてパルスモードで確立される。
【0080】
「装置B」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・625ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・120~150ナノ秒のパルス持続時間、10kHz(または0.1ミリ秒)のパルス列繰り返し周波数、および1ワット~7ワットのパルス電力により、850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザーダイオード。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は連続モード、つまり、頭部と腹部の全体変調周波数がない(0ヘルツ)モードで確立される。
【0081】
「装置C」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・625ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する連続型レーザーダイオード。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツの全体変調周波数においてパルスモードで確立される。
【0082】
「装置D」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・625ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・120~150ナノ秒のパルス持続時間、10kHz(または0.1ミリ秒)のパルス列繰り返し周波数、および10ワット~13ワットのパルス電力により、850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザーダイオード。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツの全体変調周波数によりパルスモードで確立される。
【0083】
「装置E」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する3つの発光ダイオード(LED)。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツの全体変調周波数によりパルスモードで確立される。
【0084】
「装置F」は、それぞれが以下からなる経皮照射モジュール10を含む上部1と下部9とを備える。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・625ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する発光ダイオード(LED)。
・80~100ナノ秒のパルス持続時間、10kHz(または0.1ミリ秒)のパルス列繰り返し周波数、および1ワット~7ワットのパルス電力により、波長850ナノメートルの赤外スペクトルで放射するビームを生成するパルスレーザーダイオード。
・磁場なし。
治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツの全体変調周波数によりパルスモードで確立される。
【0085】
図11図16に示されている結果で最も効果的な治療は、10分間の「装置A」による治療であることがわかる。「装置A」による20分間の治療では、GFAPレベルとTNFαレベルを除き、結果も非常に重要である。「装置F」(磁場なし)によって実行された治療は、最初の行動試験(図11)とGFAPおよびTNFαレベルで優れた結果を示すが、第2の行動試験と脂質過酸化レベルで満足のいく結果が得られない。「装置D」によって提供される治療は、第2の行動試験(図12および図13)、脂質過酸化レベル、およびTNFαレベルに対して良好または優れた結果をもたらす。したがって、装置「A」、「B」、「D」、および「F」は、第2の対照31と比較して、Aβ25-35ペプチドによって誘発される行動およびマーカの両方の病理の実質的な減衰を示す重要な結果を少なくとも部分的に提示する。一方、「装置C」と「装置E」によって提供される治療は、有意な効果を示さない。本発明の装置においてパルスレーザーで動作する必要性が観察される。この重要な機能は、2つの点で驚くべきものである。まず、図11から図16に示されているすべての装置は、パルスモード(頭部で10ヘルツ、腹部で1000ヘルツ)である。したがって、二重パルスが発生するため(パルス周波数については、図17図22を参照してより正確に説明する)、同じパルスタイプのレーザーで動作させる必要があるのは驚くべきことである。さらに、パルス電力が高いほど効果が大きくなることが予想されるが、そうではない。なぜなら、パルス電力が10~13ワットのレーザー(「装置D」)の場合、1~7ワットのパルス電力(特に装置「A」と「F」)に比べて結果が満足できるものではないからである。
【0086】
ここで図17から図22を参照すると、これらの図は、以下の動作条件下で1日に1回または2回実行される照射治療について上記の試験によって得られた結果を示している。
・参照30:治療なしのSc.Aβの注射(対照1)。
・参照31:治療なしのAβ25-35の注射(対照2)。
・参照39:上記の「装置A」を使用して、頭部にのみ1日2回、2.5分間の治療を伴うAβ25-35の注射。
・参照40:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部に同時に1日2回、2.5分間の治療を行う。
・参照41:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部に同時に1日2回、5分間の治療を行う。
・参照42:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部に同時に1日1回、10分間の治療を行う(図11図16の参照32に相当)。
【0087】
図17図22に示された結果に対する最も効果的な治療は、参照42、すなわち、頭部と腹部とに同時に1日1回10分間の治療のために装置Aによって提供される治療に対応することが分かる。参照41は、同じ治療時間であるが、1日に2セッションにまたがっており、非常に効果的であるが、参照42よりも大幅に効果が低くなっている。一方、参照39および参照40に対応する結果は不十分である(TNFαレベルについて参照40で良好な結果が得られたことに注意する必要がある)。このことは、一方で、このタイプの病変の減衰のために、頭部および腹部に配置してこれらの2つの領域で照射治療を行うのに適した装置の必要性を示し、他方で、約2.5分と評価できる最小照射時間を示す。
【0088】
ここで図23図28を参照すると、これらの図は、以下の動作条件下で1日に1回実行される照射治療について上記の試験によって得られた結果を示している。
・参照30:治療なしのSc.Aβの注射(対照1)。
・参照31:治療なしのAβ25-35の注射(対照2)。
・参照43:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部とに1日に1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射(図11図16の参照32および図17図22の参照42に相当)。
・参照44:上記の「装置A」を使用して、頭部にのみ1日1回、20分間の治療を伴う注射。
・参照45:上記の「装置A」を使用して、腹部にのみ1日1回、20分間の治療を伴う注射。
・参照46:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部とに1日に1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。治療は、頭部と腹部とに1000ヘルツのパルスモードで確立される。
・参照47:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部とに1日に1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。治療は、頭部と腹部とに対して10ヘルツのパルスモードで確立される。
・参照48:上記の「装置B」を使用して、頭部と腹部とに1日に1回、10分間の治療を伴うAβ25-35の注射。治療は、頭部と腹部との連続モード(0ヘルツ)で確立される。
【0089】
参照43、46、および47に対応する治療が最も効果的であり、10~1000ヘルツの周波数によりパルスモードで確立された治療が最も効果的であることを示している。0ヘルツでの参照48に対応する処理も、使用するパルスレーザーの存在により効果的である。参照44および45に対応する結果は、本発明の装置がこれらの2つの領域に照射治療を行うために頭部に位置する部分と腹部に位置する部分とを含まなければならない本発明の本質的な特徴を確認する。
【0090】
ここで図29図33を参照すると、これらの図は、以下の動作条件下で1日に1回実行される照射治療について上記の試験によって得られた結果を示している。
・参照30:治療なしのSc.Aβの注射(対照1)。
・参照31:治療なしのAβ25-35の注射(対照2)。
・参照49:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部とに1日に1回10分間の治療を行う。治療は、頭部と腹部とに対して10ヘルツのパルスモードで確立される。
・参照50:上記の「装置F」(磁場なし)を使用して、頭部と腹部とに1日に1回10分間の治療を行う。治療は、頭部が10ヘルツ、腹部が1000ヘルツのパルスモードで確立される。
【0091】
図11図16の参照32および図38に対応する結果と同様に、磁場の存在により、特に脳炎症のマーカでより良い結果が得られることがわかる(図29および図30)。
【0092】
最後に、図34および図35を参照すると、これらの図は、以下の動作条件下で1日に1回実行される照射治療について上記の試験によって得られた結果を示している。
・参照30:治療なしのSc.Aβの注射(対照1)。
・参照31:治療なしのAβ25-35の注射(対照2)。
・参照51:上記の「装置A」を使用して、頭部と腹部とに同時に1日10分間の治療を行う。治療は、頭部と腹部とに対して10ヘルツのパルスモードで確立される。
【0093】
Aβ25-35の注入により、アストロサイトの活性化(静止アストロサイトと比較して分岐の延長により視覚的に検出可能)およびミクログリア細胞の活性化(典型的なアメーバ様形態により視覚的に検出可能)が見られた。本発明の「装置A」による治療は、活性化された星状細胞およびミクログリア細胞の数を著しく減少させた。
【0094】
[実施例2]
材料および方法
材料
動物
この研究には、JANUARY(Saint-Berthevin、France)から入手した5週齢で体重30~35gのSWISSマウス96匹が使用された。マウスは、行動試験期間を除き、水と食物とを自由に摂取できるグループで飼育された(#04C、Safe Diet、Augy France)。動物飼育施設は、12時間/12時間の昼夜サイクルにわたって、一定の温度および湿度に維持された。マウスは、尾に永続的なマーカで印を付けることで識別された。
【0095】
マウスの健康、外観、活動、および体重を研究中毎日監視した。
【0096】
使用された治療装置
使用された経皮照射装置「RGn530」は、上部1と下部9とを備え、各部分は経皮照射モジュール10を含む。各経皮照射モジュール10は以下を含む。
・850ナノメートルの波長、15kHzの固有パルス列、90~110ナノ秒のパルス持続時間、1~11ワットのピークパルス電力、4.24ボルトの供給電圧で、赤外スペクトルで放射するビームを生成する1つのレーザーダイオード14a。
・640ナノメートルの波長の赤色スペクトルで放射するビームを生成する1つの発光ダイオード14b。
・850ナノメートルの波長の赤外スペクトルで放射するビームを生成する1つの発光ダイオード14c。
・200ミリテスラの静磁場および円形磁場。
治療は、頭部と腹部とに対して10ヘルツのパルスモードで確立された。
【0097】
この例で述べたレーザーダイオードのパルス電力Pmaxは、11~13ワット(130~150ナノ秒の持続時間に対応)である。
【0098】
この例で述べたレーザーダイオードのパルス電力Pminは、3~5ワット(40~60ナノ秒の持続時間に対応)である。
【0099】
方法
β-アミロイドペプチドの調製および注射
マウスを最初に2.5%イソフルランで5分間麻酔した。
【0100】
拘束後、直径28mm、長さ4mmのステンレス鋼製シリンジを使用して、側脳室に注射した。3μLの容量を30秒かけて徐々に注入し、注入後30秒で針を取り外した(Haley et al.、1957.Br J Pharmacol Chemother.12(1):12-5)。
【0101】
上記のプロトコルに従って、各動物に9nmolのβアミロイドペプチド(Aβ25-35-CAS131602-53-4フランス、ジェネペップ-使用する溶媒:滅菌再蒸留水)または「スクランブル」コントロールペプチド(Sc.Aβ-フランス、ジェネペップ-使用する溶媒:滅菌再蒸留水)を注射した(Maurice et al.、1996.Brain Res.731(1-2):249-53、Maurice et al.、1998.Neuroscience.83(2):413-28、Meunier et al.2006.Br J Pharmacol.149(8):998-1012、Meunier et al.、2013.Eur J Pharmacol.698(1-3):193-9、Villard et al.、2009.Neuropsychopharmacology.34(6):1552-66;およびVillard et al.、2011.J Psychopharmacol.25(8):1101-17)。
【0102】
行動試験
短期空間記憶の評価のためのY迷路試験
研究の8日目に、すべてのマウスを短期間の空間記憶を評価するためにY迷路試験で試験した。
【0103】
Y-迷路試験は、伊藤ら(1993.Eur J Pharmacol.236(3):341-5)および平松ら(1999.Eur J Pharmacol.367(2-3):151-5)によると、灰色のポリ塩化ビニルで製造された。各アームの長さは40cm、高さ13cm、下部の幅3cm、端の幅10cmである。アームは同じ角度で収束する。
【0104】
各マウスをアームの端に置き、8分間迷路内を自由に動かせて放置した。同じアームへの復帰を含む、1つのアームへの一連の侵入が観察された。交替は、3つのアームのそれぞれへの連続した進入として定義される。交替の最大数は、進入の総数から2を引くことで計算される。交替の割合は、交替の数を交替の最大数に100を掛けた値で割った値に対応する。考慮されるパラメータは、交替の割合、またはメモリインデックス、進入の総数、または探索インデックスである(Maurice et al.、1996.Brain Res.731(1-2):249-53、Maurice et al.、1998.Neuroscience.83(2):413-28、Meunier et al.2006.Br J Pharmacol.149(8):998-1012、Meunier et al.、2013.Eur J Pharmacol.698(1-3):193-9、Villard et al.、2009.Neuropsychopharmacology.34(6):1552-66、and Villard et al.、2011.J Psychopharmacol.25(8):1101-17)。
【0105】
極端な行動(つまり、交互の割合<20%または>90%)の動物は、データから除外される。この研究では、試験動物はデータから除外されなかった。
【0106】
長期文脈記憶の評価のための受動回避試験
研究の9日目と10日目に、すべてのマウスをステップスルー受動回避(STPA)試験で試験し、長期の文脈記憶を評価した。
【0107】
試験装置は、2つの区画を有する箱(サイズ15×20×15cm)で構成されている。1つの区画には白い壁があり、もう1つの区画には黒い壁とメッシュの床がある。ギロチンドアが区画を分離する。装置の40cm上に配置された60ワットのランプが白い区画を照らす。スクランブルされた電気ショック(0.3mA、3秒間)が、スクランブルされた電気ショックジェネレータ(Lafayette Instruments、Lafayette、米国)を介して送信される。
【0108】
ギロチンドアは、トレーニング段階中は閉じたままである。この段階では、動物は白い区画に入れられる。5秒後にドアが開く。マウスが黒い区画に入り、脚をスクリーンに乗せると、スクリーンの床に電気ショックが3秒間送信される。ステップスルー待ち時間(Step-Through Latency:STL)および発声回数が観察される。
【0109】
保持試験は、トレーニングの24時間後に繰り返される。各マウスは白い区画に配置される。5秒後にギロチンドアが開かれ、最大300秒間、進入待ち時間および回避待ち時間が観察される(Meunier et al.、2006.Br J Pharmacol.149(8):998-1012、Villard et al.、2009.Neuropsychopharmacology.34(6):1552-66、and Villard et al.、2011.J Psychopharmacol.25(8):1101-17)。
【0110】
トレーニングおよび保持試験中に10秒未満の待ち時間が観察された動物は、データから除外される。この研究では、試験動物はデータから除外されなかった。
【0111】
サンプル採取
研究プロトコルの10日目に、動物は安楽死せずに断頭により殺された。
【0112】
1グループあたり12匹の動物について、血液をEDTAチューブに収集し、血漿を分離した。
【0113】
1グループあたり12匹の動物について、氷で冷却された金属プレート上で脳をすばやく摘出し、2つの海馬、皮質、および脳の残りの部分を分離した。すべての組織をドライアイスで凍結し、-80℃で保存した。
【0114】
開腹後、盲腸を完全に切開し、その内容物を2本のエッペンドルフチューブに分注した。
【0115】
脂質過酸化の測定
Hermes-Lima et al.(1995.Free Radic Biol Med.19(3):271-80)に記載されているように、各グループの10日目に収集された12個の海馬のうち6個を使用して脂質過酸化活性を測定した。
【0116】
解凍後、サンプルを冷メタノール(1/10重量/v)で均質化し、1000gで5分間遠心分離した。次いで、上清をエッペンドルフチューブに収集した。各ホモジネートの反応体積を1mM FeSO、0.25mM HSOおよび1mMキシレノールオレンジを含む溶液に加え、室温で30分間培養した。
【0117】
580nmの吸光度(A5801)を読み取った後、10μLのクメンヒドロペルオキシド[1mM](CHP)をサンプルに加えた。室温で30分間培養した後、580nmの吸光度を測定した(A5802)。脂質過酸化のレベルは、式(A5801/A5802×[CHP nmol])に従ってCHP換算で計算され、対照グループ(対照ペプチド(Sc.Aβ)-治療なし)のレベルの割合として組織の質量で表される。
【0118】
TNFαレベルの測定
各グループについて10日目に収集された海馬を使用して、ELISA(製品番号EMTNFA、ThermoScientific、USA)によりTNFαの量を測定した。
【0119】
解凍後、サンプルを緩衝液(150mM Tris-NaCl、pH7.5)で均質化し、20秒間超音波処理した。遠心分離(4°C、16500gで15分間)後、上清または血漿をメーカの指示に従ってELISAに使用した。各試験について、吸光度を450nmで測定し、標準曲線を使用してTNFαの濃度を計算した。
【0120】
結果は、組織のmgあたりのpgで表される。すべてのサンプルは重複して試験された。
【0121】
統計分析
回避潜時および腸内微生物叢の組成分析を除くすべての値は、平均±平均の標準偏差として表される。
【0122】
各治療に使用される統計分析は、一元配置分散分析(ANOVA、F値)の後にダネットの多重比較試験(Dunnett’s multiple comparison test)が続く。回避遅延測定の分析は、使用される最大閾値のため、ガウス分布に従わない。したがって、ノンパラメトリッククラスカルワリスANOVA(H値)が使用された。p<0.05の値は統計的に有意であると見なされた。
【0123】
腸内微生物叢の組成の特定
プロトコルの10日目に収集された盲腸サンプル中の細菌集団を、ユニバーサルプライマによって増幅された16S rRNA可変領域V12-V4のハイスループットシーケンス(MiSeq technology、Illumina、USA)によって分析した。
【0124】
各サンプルについて、配列ライブラリを使用して、存在する分類単位を特定した。ファーミキューテス門、テネリキューテス門、およびデフェリバクター門については、結果のヒストグラム表示を使用し、統計分析にはマン・ホイットニー試験を使用した。
【0125】
研究プロトコル
「RGn530」装置による経皮照射の対照および異なる治療計画に対応する研究グループが定義された(表1)。
【0126】
各グループについて、コントロールペプチドまたはβアミロイドペプチドをプロトコルの1日目に注射した。プロトコルの1~9日目に、さまざまなグループに対して表1に定義されている治療を1日に1回適用した。
【0127】
8日目に、短期間の空間記憶がY迷路試験で評価されたプロトコルの9日目と10日目に、受動的回避試験で長期文脈記憶を評価した。プロトコルの10日目の試験後、動物を屠殺し、サンプルを採取した。
【0128】
【表1】
【0129】
結果
短期空間記憶に対する治療の効果(Y迷路試験)
Aβ25-35を注射すると、対照ペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウスと比較して、短期の空間記憶が大幅に減少する。
【0130】
「RGn530」装置を使用した経皮照射治療は、頭部と腹部とで3分間持続するが、Aβ25-35の注入後に観察される短期の空間記憶の減少は大きく変わらない。
【0131】
「RGn530」装置を使用した頭部および腹部レベルでの6分間(シェービングの有無にかかわらず)および9分間の経皮照射治療により、Aβ25-35の注入後に観察される短期空間記憶の減少が大幅に且つ完全に修正される。
【0132】
頭部および腹部で4.5分間持続する「RGn530」装置(PmaxおよびPmin)による経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察される短期の空間記憶の減少を大幅かつ部分的に修正する。
【0133】
マウスの運動能力の低下は観察されなかった。
【0134】
統計分析:一元配置分散分析
Alt%F(7;95)22.91、p>0.001
Loc%F(7;95)0.9366、p>0.05
【0135】
結果を図36に示す。
【0136】
長期文脈記憶に対する治療の効果(受動的回避試験)
Aβ25-35を注射すると、対照ペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウスと比較して、長期の文脈記憶が大幅に減少する。
【0137】
頭部および腹部で3分間持続する「RGn530」装置による経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察される長期の文脈記憶の減少を有意に変化させない。
【0138】
「RGn530」装置を使用した頭部および腹部のレベルで6分間(シェービングの有無にかかわらず)および9分間の経皮照射治療により、Aβ25-35の注射後に観察される長期記憶の減少が大幅に且つ完全に修正される。
【0139】
頭部および腹部で4.5分間続く「RGn530」装置(PmaxおよびPmin)による経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察された長期文脈記憶の減少を有意ではなく部分的な方法で修正する。
【0140】
ステップスルー待ち時間(step-through latency:STL)と脱出待ち時間(escape latency:EL)のプロファイルに違いは見られなかった。
【0141】
結果を図37に示す。
【0142】
統計分析:ノンパラメトリッククラスカルワリスANOVA
STL H=62.05、p>0.0001
EL H=57.03、p>0.05
【0143】
海馬の酸化ストレスに対する治療の効果(脂質過酸化試験)
Aβ25-35の注射は、対照ペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウスと比較して、酸化ストレスレベルの大幅な増加をもたらす。
【0144】
頭部および腹部で3分間持続する「RGn530」装置による経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察される酸化ストレスレベルの増加を有意に変化させない。
【0145】
「RGn530」装置を使用した頭部および腹部のレベルにおける6分間(シェービングの有無にかかわらず)および9分間の経皮照射治療により、Aβ25-35の注入後に観察される酸化ストレスレベルの増加が大幅に且つ完全に修正される。
【0146】
「RGn530」装置(Pmaxを使用)による頭部および腹部での4.5分間の経皮照射治療により、Aβ25-35の注入後に観察される酸化ストレスレベルの増加が大幅かつ完全に修正される。
【0147】
「RGn530」装置(Pminを使用)による頭部と腹部での4.5分間の経皮照射治療は、Aβ25-35の注入後に観察される酸化ストレスレベルの増加を大幅に部分的に修正する。
【0148】
ステップスルー待ち時間(STL)と脱出待ち時間(EL)のプロファイルに違いは見られなかった。
【0149】
結果を図38に示す。
【0150】
統計分析:一元配置分散分析
(7;47)8.705、p<0.001
【0151】
海馬の炎症に対する治療の効果(TNFαレベル)
Aβ25-35の注射は、対照ペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウスと比較して、TNFαのレベルを大幅に増加させる。
【0152】
頭部および腹部で3分間持続する「RGn530」装置による経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察されたTNFαレベルの増加を大幅に部分的に修正する。
【0153】
「RGn530」装置を使用した頭部および腹部レベルで6分間(シェービングの有無にかかわらず)および9分間の経皮照射治療により、Aβ25-35の注入後に観察されるTNFαレベルの増加が大幅に修正される。
【0154】
「RGn530」装置(PminまたはPmax)による頭部および腹部での4.5分間の経皮照射治療は、Aβ25-35の注射後に観察されるTNFαレベルの増加を大幅かつ完全に修正する。
【0155】
結果を図39に示す。
【0156】
統計分析:一元配置分散分析
(7;47)220.9 p<0.0001
【0157】
腸内微生物叢の組成に対する治療の影響(ファーミキューテス門、テネリキューテス門、およびデフェリバクター門の豊富さ)
Aβ25-35の注射は、対照ペプチド(Sc.Aβ)を注射したマウスと比較して、盲腸内のファーミキューテス門、テネリキューテス門、およびデフェリバクター門の量に有意な変動をもたらす。特に、Aβ25-35の注射後、ファーミキューテス門の存在量は大幅に減少するが、テネリキューテス門の存在量は著しく増加する。
【0158】
頭部および腹部で6分間(シェービングあり)続く「RGn530」装置による経皮照射治療は、Aβ25-35の注入後に観察されたファーミキューテス門の盲腸の存在量の増加をもたらす。
【0159】
さらに、頭部および腹部で6分間(シェービングあり)持続する「RGn530」装置による経皮照射治療は、Aβ25-35ペプチドを注射したマウスと比較して、テネリキューテス門とデフェリバクター門の存在量を減少させる。
【0160】
結果を図40に示す。
【0161】
結論
Aβ25-35の注入により、短期の空間記憶と長期の文脈記憶が減少する。Aβ25-35の注射は、酸化ストレスのレベルとTNFαのレベルの増加にもつながる。
【0162】
これらの行動および生化学的欠損は、「RGn530」装置を使用した毎日の経皮照射治療により軽減される。シェービングも電力の変化(Pmin対Pmax)も、得られる結果に影響しない。
【0163】
「RGn530」装置を使用した毎日の経皮照射治療により、盲腸内のファーミキューテス門の量が増加し、Aβ25-35の注射後に観察される変動が減少する。一方、同じ毎日の経皮照射治療は、Aβ25-35ペプチドを注射した未治療マウスで観察される存在量と比較して、テネリキューテス門およびデフェリバクター門の存在量の減少をもたらす。
【0164】
特に興味深いのは、この研究で使用したアルツハイマー病モデルで観察されたファーミキューテス門、テネリキューテス門、およびデフェリバクター門の豊富さの変動は、他の2つの神経変性疾患、すなわちハンチントン病およびパーキンソン病と関連している(Tremlett et al.、2017.Ann Neurol.81(3):369-382)。したがって、腸内細菌叢の組成に対する治療の効果に関するこの発見およびこの研究の観察は、ハンチントン病およびパーキンソン病の治療における本発明による装置の使用を示唆している。この分析によれば、アルツハイマー病に類似したファーミキューテス門の存在量の減少につながる抗生物質治療は、運動能力の低下、パーキンソン病の症状と関連している(Parashar et al.、2017.Parkinsonism Relat Disord.38:1-7)。
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