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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】放射性同位体の量を決定する方法
(51)【国際特許分類】
   G01T 1/167 20060101AFI20230120BHJP
   G01T 1/178 20060101ALI20230120BHJP
   G21F 5/005 20060101ALI20230120BHJP
   G21F 1/10 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
G01T1/167 C
G01T1/167 D
G01T1/178
G21F5/005
G21F1/10
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020534378
(86)(22)【出願日】2018-12-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 FR2018053358
(87)【国際公開番号】W WO2019122674
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-10-20
(31)【優先権主張番号】1762878
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】522120004
【氏名又は名称】オラノ・リサイクレイジ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジャッキー・ジュアンノ
【審査官】右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-180936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/167
G01T 1/178
G21F 5/005
G21F 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージに収容されているソースタームの第1の放射性同位体の量を決定するための方法であって、前記第1の放射性同位体は、第1のガンマ線を放射することに適しており、第2のガンマ線も、前記第1の放射性同位体または前記ソースタームの第2の放射性同位体のいずれかによって放射されることに適しており、前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線は、各々異なる減衰率に従って、前記パッケージのマトリックスおよび前記ソースターム自体によって、減衰されることに適しており、前記方法は、
a)少なくとも1つのガンマ線検出器によって、前記パッケージに関する2つの正反対の位置に従って、放射される前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線に関連付けられている正味のカウントを測定するステップと、
b)i)減衰がない場合前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線の前記カウントの比並びにii)ステップa)の結果に基づき、前記パッケージマトリックスによる前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線の前記減衰率を決定するステップと、
c)ステップ)で決定される前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線のうちの一方または他方の前記減衰率に基づき、前記ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の前記量、有利には質量を決定するステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記第2のガンマ線は、前記第2の放射性同位体によって放射され、前記方法は、減衰がない場合に前記第1の放射性同位体および前記第2の放射性同位体によって放射される前記第1のガンマ線と前記第2のガンマ線との間の理論的カウント比を決定するステップa1)も含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線の前記放射比は、時間が経過しても一定である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の放射性同位体は、前記第1の放射性同位体の放射性崩壊の結果である、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の放射性同位体の半減期T2は、前記第1の放射性同位体の半減期T1より実質的に短い、請求項2から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ソースタームは、前記第1の放射性同位体と同じ質量数の、第3の放射性同位体をさらに含み、前記第1の放射性同位体と前記第2の放射性同位体との間の同位体組成は知られている、請求項2から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法は、前記同位体組成の決定を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線のうちの一方または他方を計数するために、前記第1の放射性同位体および前記第2の放射性同位体のうちの一方または他方の変換係数c/s/g(秒およびグラムあたりのカウント)を決定するステップをさらに含む、請求項5または7に記載の方法。
【請求項9】
前記変換係数も、前記ソースタームに関する前記少なくとも1つのガンマ線検出器の距離Dに基づき決定される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のガンマ線および前記第2のガンマ線のうちの一方または他方の前記減衰率は、前記パッケージマトリックスの特徴を示すポリエチレンとウランとの混合物を含む同等のスクリーンを表し、前記同等のスクリーンは、スクリーン厚さと称される厚さ、およびポリエチレン含有量によって特徴付けられる、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップa)は、前記ソースタームの第1の放射性同位体の前記量、有利には前記質量の2つの推定値がステップc)に従って取得されるように、2つのガンマ線検出器により実行される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記2つの推定値の比が前記ガンマ線検出器に関する前記ソースタームのオフセットに対応する場合、前記推定値の平均値は、補正係数によって補正される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の放射性同位体はプルトニウム241を含み、前記第2の放射性同位体はウラン237を含み、前記第3の放射性同位体はアメリシウム241を含む、請求項6と組み合わされた、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から13のいずれか一項に記載の、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定するための方法を実装することに適している測定デバイス(10)であって、前記デバイスは、
- 少なくとも1つのガンマ線検出器(13、14)と、
- 前記ソースタームのドッキングステーション(11)であって、スケール(12)を備えているドッキングステーション(11)と、
- 前記ガンマ線検出器によって捕集されたガンマ線のカウントを処理することが意図されているコンピュータであって、前記ガンマ線のカウントに基づき、前記ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の前記量を決定することに適しているコンピュータプログラムも備えるコンピュータと
を備える、測定デバイス(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソースターム(source term)に含まれる第1の放射性同位体の量を決定するための方法に関する。特に、本発明は、第1の放射性同位体の質量を決定するためのガンマ線分光法測定を実装するものであり、第1の放射性同位体はプルトニウム241である。
【背景技術】
【0002】
放射性廃棄物、および特に、放射性技術廃棄物のパッケージは、一般的に、放射性廃棄物を貯蔵することを目的としてバレル内に組み立てられる。
【0003】
この技術的廃棄物は、原子力産業の工場およびプラント、たとえば、ウランおよび/またはプルトニウムなどの核物質を使用して核燃料を生産するための、特に「MOX」(「混合酸化物」)燃料を生産するための工場の運転から得られる。したがって、そのような工場からの技術的廃棄物、たとえば、手袋、スリーブ、または有機ポリマーもしくはより具体的にはポリエチレンから作られ、グローブボックスで使用される他の任意の物体は、少量の残留プルトニウムおよび他の放射性同位体を含むことに適している。
【0004】
また、バレル内に収容されている放射性同位体の質量および性質(放射能レベルおよび期間)に応じて、バレルは地表面または地下のいずれかに貯蔵される。地表面または地下にそれぞれ貯蔵され得る、放射性同位体が「少ない」バレルと放射性同位体が「豊富な」バレルとは、ある程度区別することが可能である。
【0005】
地下貯蔵のコストは、地表面貯蔵に比べて著しく高いので、その放射性同位体含有量を最小にするためにバレル内の廃棄物パッケージの組み立てを最適化すること、したがって、何よりもまず、放射性同位体が「少ない」パッケージと「豊富な」パッケージとを区別することが勧められる。
【0006】
次いで、中性子数測定は、廃棄物パッケージ内の放射性同位体、およびより具体的には残留プルトニウムの質量を評価するための最適な方法である。
【0007】
しかしながら、このタイプの測定は十分ではない。
【0008】
実際、許容できる精度を得るために、中性子測定は、パッケージ毎に比較的長い計数時間(少なくとも900秒)を必要とする。その結果、パッケージの管理、およびそのバレル内への組み立ては、サイクル時間およびコストの両方に関して影響を受けることがわかる。
【0009】
さらに、中性子数測定には費用がかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、廃棄物用バレルの設計および管理を最適化することに適している、特にパッケージに収容されている、放射性同位体の質量を評価する方法を提案することである。
【0011】
本発明のさらなる目的は、従来技術から知られている方法に比べてコストが低い、放射性同位体の質量を評価するための方法を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的は、少なくとも一部は、パッケージに収容されているソースタームの第1の放射性同位体の量を決定するための方法であって、前記第1の放射性同位体は、第1のガンマ線を放射することに適しており、第2のガンマ線も、第1の放射性同位体またはソースタームの第2の放射性同位体のいずれかによって放射されることに適しており、第1のガンマ線および第2のガンマ線は、各々異なる減衰率に従って、パッケージのマトリックスおよびソースターム自体によって、減衰されることに適しており、この方法は、
a)少なくとも1つのガンマ線検出器によって、パッケージに関する2つの正反対の位置に従って、放射される第1のガンマ線および第2のガンマ線に関連付けられている正味のカウントを測定するステップと、
b)減衰がない場合に、ステップa)の結果に基づき、第1のガンマ線および第2のガンマ線のカウントの比を知った上で、パッケージマトリックスによる第1のガンマ線および第2のガンマ線の減衰率を決定するステップと、
c)ステップc)で決定される第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方または他方の減衰率に基づき、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量、有利には質量を決定するステップとを含む、方法によって達成される。
【0013】
ステップb)の減衰がない場合の第1のガンマ線および第2のガンマ線の相対的カウントが理論的カウントであることは明らかである。
【0014】
一実施形態によれば、第2のガンマ線は、第2の放射性同位体によって放射され、この方法は、減衰がない場合に第1の放射性同位体および第2の放射性同位体によって放射される第1のガンマ線と第2のガンマ線との間の理論的カウント比を決定するステップa1)も含む。
【0015】
そのようなステップa1)を実行するには、測定の日付における同位体組成を知っている必要がある場合がある。
【0016】
一実施形態によれば、第1のガンマ線および第2のガンマ線の放射比は、時間が経過しても安定している。
【0017】
一実施形態によれば、注目している放射線は、同一の放射性元素から取得されてもよく、この場合、スクリーン(screen)がない場合の理論的カウント比は、時間が経過しても一定である。
【0018】
一実施形態によれば、第2の放射性同位体は、第1の放射性同位体の放射性崩壊の結果である。
【0019】
一実施形態によれば、第2の放射性同位体の半減期T2は、第1の放射性同位体の半減期T1より実質的に短い。
【0020】
一実施形態によれば、ソースタームは、第1の放射性同位体と同じ質量数の、第3の放射性同位体をさらに含み、第1の放射性同位体と第2の放射性同位体との間の同位体組成は知られている。
【0021】
一実施形態によれば、この方法は、同位体組成の決定を含む。
【0022】
一実施形態によれば、この方法は、第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方または他方を計数するために、第1の放射性同位体および第2の放射性同位体のうちの一方または他方の変換係数c/s/gを決定するステップをさらに含む。
【0023】
一実施形態によれば、変換係数も、ソースタームに関する少なくとも1つのガンマ線検出器の距離Dに基づき決定される。
【0024】
一実施形態によれば、第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方または他方の減衰率は、パッケージマトリックスの特徴を示すポリエチレンとウランとの混合物を含む同等のスクリーンを表し、前記同等のスクリーンは、スクリーン厚さと称される厚さ、およびポリエチレン含有量によって特徴付けられる。
【0025】
一実施形態によれば、ステップa)は、ソースタームの第1の放射性同位体の量、有利には質量の2つの推定値がステップc)に従って取得されるように、2つのガンマ線検出器により実行される。
【0026】
一実施形態によれば、2つの推定値の比がガンマ線検出器に関するソースタームのオフセットを伝えた後、前記推定値の平均値は、補正係数によって補正される。
【0027】
一実施形態によれば、第1の放射性同位体はプルトニウム241を含み、第2の放射性同位体はウラン237を含み、第3の放射性同位体はアメリシウム241を含む。
【0028】
本発明は、本発明による、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定するための方法を実行することに適している測定デバイスにも関し、このデバイスは、
- 少なくとも1つのガンマ線検出器と、
- ソースタームのドッキングステーションであって、スケールを備えているドッキングステーションと、
- ガンマ線検出器によって捕集されたガンマ線のカウントを処理することが意図されているコンピュータであって、ガンマ線のカウントに基づき、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定することに適しているコンピュータプログラムも備えるコンピュータとを備える。
【0029】
添付の図面を参照しつつ、非限定的な例を用いて与えられる、本発明による、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定するための方法の下記の説明において、さらなる特徴および利点が示される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による、ソースタームの第1の放射性同位体の量を決定するために使用されることに適している測定デバイスを表す図である。
図2】ガンマ放射線の長さ(横軸、単位KeV)の関数としてポリエチレンおよびウランを含む混合物の減衰率(縦軸、単位cm-1)を表すグラフであり、特に、曲線A、B、およびCはそれぞれ、純粋ウラン、50/50ウラン-ポリエチレン混合物、および純粋ポリエチレンのガンマ放射線の減衰を表す、グラフである。
図3】パッケージに含まれるソースターム、および補正係数を決定するための一例として用いられるガンマ線検出器を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、パッケージに含まれるソースタームの第1の放射性同位体の量を推定するためのガンマ線分光法測定を実装する。
【0032】
「ソースターム」とは、放射性生成物の性質および量を表す。
【0033】
次いで、第1の放射性同位体の量または質量の推定は、第1の放射性同位体および第2の放射性同位体によってそれぞれ放射される2つのガンマ線の相対的強度の測定に基づいており、パッケージによって形成されるマトリックスによる前記ガンマ線の減衰率について補正される。
【0034】
次いで、本発明は、特にプルトニウムおよびウラン酸化物の混合物で汚染されているポリエチレン対象物を収容する廃棄物パッケージ内に収容されるソースタームのプルトニウム241の質量を推定することに特に適している。
【0035】
図1において、本発明の範囲内で使用されることに適しているデバイス10を見ることができる。
【0036】
次いで、測定デバイス10は、パッケージの質量を測定することが意図されているスケール12を任意選択的に装備するドッキングステーション11を備える。
【0037】
測定デバイス10は、ソースタームを収容するパッケージによって放射されるガンマ放射線を測定するように構成され、ドッキングステーション12上に位置決めされている、少なくとも1つのガンマ線検出器(ガンマ放射線検出器とも称される)、たとえば、2つのガンマ線検出器13および14も備える。
【0038】
2つのガンマ線検出器13および14は、たとえば、ソースタームのいずれかの側に位置決めされる(言い換えると、パッケージに関して正反対の位置)。
【0039】
次いで、ガンマ線検出器13、14は、複数のCZTタイプの検出サブユニット(たとえば、4つのサブユニット)を備え得る。
【0040】
測定デバイス10は、コンピュータプログラムを含むコンピュータまたはコンピューティングデバイスも装備し得る。
【0041】
次いで、コンピュータプログラムは、以下の説明において詳述される方法によりソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定するためにガンマ線検出器によって捕集されるガンマ放射線カウントを処理することが意図されている。
【0042】
ソースタームは、パッケージ、または放射性元素によって汚染されている、特に第1の放射性同位体によって汚染されている放射性廃棄物のバレル内に含まれ得る。
【0043】
汚染廃棄物は、たとえばポリエチレンに関する以下の説明に含まれる有機ポリマー材料から作られた手袋、スリーブ、または任意の他の廃棄物を含み得る。
【0044】
したがって、パッケージは、有機ポリマー材料と放射性元素とが混合されているマトリックスを形成する。
【0045】
本発明の第1の実施形態によれば、放射性元素は、特に第1の放射性同位体、および任意選択で、第2の放射性同位体を含み得る。
【0046】
第1のガンマ線は、第1の放射性同位体によって放射される。
【0047】
第2のガンマ線も、第1の放射性同位体、または第2の放射性同位体が考慮される場合には第2の放射性同位体のいずれかによって放射される。
【0048】
以下の説明では、第2のガンマ線は、第2の放射性同位体によって放射されるものとして考慮される。当業者は、本明細書の説明に基づき、後者を単一の放射性同位体、この場合には第1の放射性同位体によって放射される第1のガンマ線および第2のガンマ線の場合に適合させることができる。
【0049】
第1のガンマ線および第2のガンマ線のカウントは、検出器13および14によって実行される。
【0050】
第2の放射性同位体は、第1の変換率(変換率は分岐因子「Γ」とも称される)に従う第1の放射性同位体の崩壊の結果であり得る。しかしながら、本発明の範囲は、この態様に限定されてはならず、無関係の第1の放射性同位体および第2の放射性同位が考慮され得る。
【0051】
任意選択で、放射性廃棄物は、少なくとも第3の放射性同位体、特に、第1の放射性同位体と同じ質量数の第3の放射性同位体も含み得る。したがって、第1の放射性同位体および第3の放射性同位体は、以下の説明において「同位体組成」と称されるそれぞれの質量比率が第1の放射性同位体の量を決定するための方法の実装のために知られていると仮定される混合物を形成する。
【0052】
第1の放射性同位体および第3の放射性同位体からなる混合物の同位体組成は、前記放射性同位体の放射性崩壊の法則を適用し、混合物の存続時間を考慮することによって決定され得る。
【0053】
以下の説明において、放射性元素は、第1の放射性同位、第2の放射性同位体、および第3の放射性同位体を含むこと、第1の放射性同位と第3の放射性同位体との間の同位体組成が知られていることが受け入れられる。しかしながら、本発明の実施形態は、第3の同位体の存在を必ずしも暗示するとは限らない。
【0054】
たとえば、第1の放射性同位体は、148KeVの第1のガンマ線を放射するプルトニウム241であるが、第1の放射性同位体の崩壊αによって得られる、第2の放射性同位体は、その一方で、208KeVの第2のガンマ線を放射する、ウラン237である。この例では、プルトニウム241は、βタイプの放射線を放出することによって、第3の放射性同位体を形成するアメリシウム241に崩壊する。
【0055】
ガンマ線検出器によって捕集される第1のガンマ線および第2のガンマ線のカウントは、理論的にソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を推定することを可能にする。
【0056】
しかしながら、カウントは、一般的に、パッケージマトリックスによって、またソースタームの質量および幾何学的形状に依存する変化する自己吸収現象によって減衰する。言い換えると、パッケージは全体として(マトリックスおよびソースターム)は、減衰率によって、ガンマ放射線波長の各々について特徴付けられるガンマ放射線スクリーンを形成する。
【0057】
また、特に有利には、それぞれ第1の遮蔽率(screening rate)および第2の遮蔽率と称される、第1のガンマ線および第2のガンマ線の減衰率は異なる。
【0058】
この点に関して、図2は、ポリエチレンおよびウランからなる混合物に対するガンマ放射線の減衰率を表すグラフである。特に、図2における位置1および位置2はそれぞれ、異なる第1のガンマ線および第2のガンマ線の所与のスクリーンに対する減衰率を示している。したがって、ポリエチレンおよびウランの密度、さらにはそれぞれの第1のガンマ線吸収係数および第2のガンマ線吸収係数がわかれば、ポリエチレンおよびウランのそれぞれの比率ならびにスクリーン厚さに従って前記ガンマ線の減衰率を確定することが可能である。
【0059】
そこで、本発明による方法は、遮蔽がない場合に第1の放射性同位体および第2の放射性同位体によって放射される第1のガンマ線と第2のガンマ線との間の理論的カウント比を決定するステップa1)を含む。
【0060】
カウントは、検出器のレベルにおける理論的カウントであり、注目しているエネルギーにおける検出器の効率、検出サブユニットの数、それだけでなく同位体組成にも、
- 第3の放射性同位体が考慮され、
- および/または考慮される放射線が、無関係の2つの放射性元素から得られた
後に、関わることは理解される。
【0061】
特に、検出サブユニットの効率および数により、第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方および/または他方に対する、第1の放射性同位体に関連する変換係数c/s/gを決定することが可能になる。
【0062】
「変換係数c/s/g」は、単位時間および第1の放射性同位体の単位質量(したがってソースタームの単位質量)当たりの所与のガンマ線のカウントの数を計数する係数を表す。
【0063】
その結果、第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方または他方の補正されたカウントが知られた後、第1の放射性同位体の質量は、第1のガンマ線および第2のガンマ線のうちの一方または他方の補正されたカウントを、注目するガンマ線の変換係数c/s/gおよびガンマ線検出器による測定時間で除算したものに対応する。
【0064】
「補正されたガンマ線のカウント」は、スクリーンがない場合に検出器によって返されるであろうカウントの数を表す。言い換えると、補正されたカウントは、スクリーンによるいかなる減衰も考慮していない。
【0065】
本発明の説明の残り部分は、第2のガンマ線の場合に限られる。
【0066】
第1の放射性同位体および第2の放射性同位体の相対的比率を知ることで、第1のガンマ線および第2のガンマ線の、遮蔽がない場合の単位時間当たりおよび単位質量当たりの理論的カウントに重みを付けることが可能である。
【0067】
次いで、第1の放射性同位体および第2の放射性同位体の相対的比率は、たとえば、それぞれ、第1の放射性同位体および第2の放射性同位体の半減期T1およびT2を伴う放射性崩壊の法則を適用することによってアクセス可能である。
【0068】
有利には、第1の放射性同位体と第2の放射性同位体との間の関係があり、娘の放射性期間が実質的に親の放射性期間より実質的に短いと、その放射能量は類似しており、その場合理論的カウント比は時間が経過しても一定である。
【0069】
本発明による方法は、また、少なくとも1つのガンマ線検出器によって、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体および第2の放射性同位体によってそれぞれ放射される第1のガンマ線および第2のガンマ線に関連付けられている正味カウントを測定するステップa)も含む。測定は、有利には、パッケージに関して2つの正反対の位置に従って実行される。
【0070】
第1のガンマ線および第2のガンマ線に関連付けられている正味カウントは実際の減衰したカウントに対応することは理解される。
【0071】
有利には、ステップa)では、2つの検出器13および14を使用する。
【0072】
測定は、たとえば、45秒から60秒の間、特に45秒の所定の捕集時間内のガンマ放射線の捕集を含み得る。
【0073】
正味カウントは、バックグラウンドノイズから推論される総カウントに基づき取得され、実際にはガンマ線検出によって測定され、前記ガンマ線検出器がガンマ放射線をその容量の最大値まで捕集しないアイドル時間に対して調整され得る。
【0074】
ステップa)は、第2のガンマ線および第1のガンマ線の正味カウントの比を計算することも含み得る。
【0075】
次いで、ステップa)の後に、ソースタームのマトリックスによって第1のガンマ線および第2のガンマ線の減衰比を決定するステップb)が続く。
【0076】
この点で、ステップa)で測定された、正味カウント比により、マトリックスによって形成されるスクリーンの減衰率を決定することが可能になる。
【0077】
この操作は、コンピュータプログラムレベルで自動化されてよく、パラメータを使用して図2のグラフを確定する。
【0078】
次いで、前記パラメータは、ポリエチレン、ウランのそれぞれの密度、第1のガンマ線および第2のガンマ線のそれぞれのエネルギーにおけるウランおよびポリエチレンの吸収係数を含む。
【0079】
コンピュータプログラムは、反復法を用い、第1のガンマ線および第2のガンマ線の正味カウントの比に基づき、スクリーンのポリエチレン含有量(パーセンテージとして)、スクリーンの厚さ、および注目している2つのガンマ線の各々に対する減衰率を決定することを可能にする数学的解法を含み得る。
【0080】
当業者に知られている数学的解析ステップは、本発明では説明されない。
【0081】
さらに、決定された減衰率による第2のガンマ線の正味カウントの比により、上で定義されている前記第2のガンマ線の補正されたカウントにアクセスすることが可能になる。
【0082】
最後に、本発明による方法は、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の質量を決定するステップc)を含む。
【0083】
このステップc)は、第2のガンマ線に関連付けられている補正されたカウントを最初に計算することを含み得る。たとえば、第2のガンマ線の補正されたカウント(同等のスクリーンによる減衰に対する)は、検出器による前記第2のガンマ線の正味カウントをスクリーンによって加えられる減衰で除算した(注目しているエネルギーにおける減衰率で除算した)ものに対応する。
【0084】
したがって、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の質量は、次いで、第2のガンマ線に関連付けられている補正されたカウントを測定時間および変換係数c/s/gによって形成される積で除算することによって決定される。
【0085】
かさばったパッケージの場合、主「ホット」スポットは、前記ソースタームに対してオフセットされ、第1のガンマ線および第2のガンマ線のカウント推定誤差を生成し得る。
【0086】
『主「ホット」スポット』は、ソースタームの最も放射能の高いゾーンを表す。
【0087】
また、この方法で2つのガンマ線検出器13および14を使用した後、第2のガンマ線のカウントの2つの推定値が得られる。これら2つの推定値の比の1に対する偏差は、主ホットスポットのオフセットを伝える。
【0088】
この問題を解決するために、解決法は、検出器の各々に対する第1の放射性同位体の質量の推定値の比による平均推定質量値の補正表を含む。
【0089】
この点に関して、次の表は、補正係数を決定するための方法を示している。この例では、本明細書においては局在化されていると考えられる、ソースタームは、100カウントを放射すると仮定され、2つのガンマ線検出器は、ソースターム15の両方の側に対称的に、軸XX’に沿って整列するように配設される(図3)。
【0090】
【表1】
【0091】
「オフセットcm」列は、ソースターム15の中心に対する主ホットスポットのオフセットに対応する。
【0092】
「d0°」列および「d180°」列は、ガンマ線検出器に関する主ホットスポットの距離に対応する。
【0093】
「最小値」列および「最大値」列は、それぞれ、ガンマ線検出器の各々の実際のカウントに対応する。「平均値」列および「C比」列は、それぞれ、「最小値」列および「最大値」列の平均値および比である。
【0094】
「係数」列は、「平均値」列および補正されたカウント(この場合には100カウント)のデータの比であり、2つのガンマ線検出器の推定値の比が主ホットスポットのオフセットを伝えた後に適用されるべき補正係数に対応する。
【0095】
オフセット推定値では、たとえば、ソース線形(source linear)を考慮して、当業者が、その一般的知識に用いて、実行することができるさらなるモデルも使用し得る。
【0096】
次いで、本発明では、妥当な回数内で、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の質量を測定することが可能である。
【0097】
そこで、この測定回数は、放射線への被検体の曝露を制限するが、廃棄物バレル内のソースタームの管理および組み立てに要するサイクル時間を短縮することを可能にする。
【0098】
本発明は、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定することに適している測定デバイス10にも関し、このデバイスは、
- 少なくとも2つのガンマ線検出器13および14と、
- ソースタームのドッキングステーション11であって、スケール12を備えているドッキングステーション11と、
- ガンマ線検出器によって捕集されたガンマ線のカウントを処理することが意図されているコンピュータ15であって、ガンマ線のカウントに基づき、ソースタームに含まれる第1の放射性同位体の量を決定することに適しているコンピュータプログラムも備えるコンピュータ15とを備える。
【符号の説明】
【0099】
10 測定デバイス
11 ドッキングステーション
12 スケール
13、14 ガンマ線検出器
図1
図2
図3