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特許7213882ケトン食療法に適合したフェンフルラミン製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ケトン食療法に適合したフェンフルラミン製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230120BHJP
   A61P 25/08 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230120BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230120BHJP
   A23L 33/00 20160101ALI20230120BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/08
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/38
A23L33/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020538761
(86)(22)【出願日】2018-09-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 US2018052567
(87)【国際公開番号】W WO2019067405
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】62/563,255
(32)【優先日】2017-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/564,225
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/579,450
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/582,173
(32)【優先日】2017-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/593,029
(32)【優先日】2017-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/627,329
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/669,833
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/696,801
(32)【優先日】2018-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/140,120
(32)【優先日】2018-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515314845
【氏名又は名称】ゾゲニクス インターナショナル リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【弁理士】
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】アブ-イーサ ハウラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒックマン デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】モリソン グレン
(72)【発明者】
【氏名】ボイド ブルックス エム.
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/035267(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/138138(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/112702(WO,A1)
【文献】米国特許第04452815(US,A)
【文献】特表2004-538309(JP,A)
【文献】Seizure,2014年,Vol.23,p.751-755
【文献】Pediatr Drugs,2016年,Vol.18,p.197-208
【文献】Curr. Med. Res. Opin.,1979年,Vol.6, Suppl.1,p.28-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00- 9/72
A61K 31/00-31/80
A61K 33/00-33/44
A61K 47/00-47/69
A61P 1/00-43/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケトン食療法を開始または維持している、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、およびドーゼ症候群からなる群より選択されるサブタイプのてんかんと診断された患者か、または、CDKL5変異および/もしくはMECP2変異を示す患者を治療するための製剤であって、
該製剤は、フェンフルラミン塩酸塩、濃度2mg/mLのメチルパラベンナトリウム、濃度0.2mg/mLのエチルパラベンナトリウム、濃度1.0mg/mLのスクラロース、濃度5.0mg/mLのヒドロキシエチルセルロース、濃度1.0mg/mLの香味剤、濃度10.2mg/mLのクエン酸カリウム一水和物、濃度5.5mg/mLのクエン酸一水和物、および水を含み、
フェンフルラミン塩酸塩が該製剤中に0.5mg/mL~5mg/mLの範囲の濃度で存在し、かつケトン食療法の遵守を促進し、
該製剤は、患者に数日間にわたって与えられるケトン食療法と組み合わせて、数日間にわたって患者に投与される、該製剤。
【請求項2】
ケトン食療法の付与と前記製剤の投与が数週間にわたる、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記患者がサブタイプのてんかんと診断された患者であり、該サブタイプのてんかんがドラベ症候群である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記患者がサブタイプのてんかんと診断された患者であり、該サブタイプのてんかんが、レノックス・ガストー症候群である、請求項2に記載の製剤。
【請求項5】
フェンフルラミン塩酸塩の濃度が、フェンフルラミン遊離塩基の2.2mg/mLに対応する2.5mg/mLである、請求項2に記載の製剤。
【請求項6】
ケトン食療法の付与と前記製剤の投与が数ヵ月間にわたる、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤の投与が、前記ケトン食療法の各食事と同時、前記ケトン食療法の各食事の直前、または前記ケトン食療法の各食事の直後であり、前記患者がサブタイプのてんかんと診断された患者であり、該サブタイプのてんかんが、ドラベ症候群もしくはレノックス・ガストー症候群である、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
前記患者が18歳未満である、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
香味剤が、チェリーフレーバーパウダーである、請求項1に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
サブタイプのてんかん(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ドーゼ(Doose)症候群)を有する患者を治療する方法が記載され、ここで、該患者が、ケトン食療法と組み合わせてフェンフルラミン製剤により治療される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
本発明は、アンフェタミン誘導体、特にフェンフルラミンを用いて、サブタイプのてんかん(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ドーゼ症候群)を治療することに関する。
【0003】
フェンフルラミン、すなわち3-トリフルオロメチル-N-エチルアンフェタミンは、構造:
を有するアンフェタミン誘導体である。
【0004】
フェンフルラミンは、1973年に米国で初めて販売され、肥満の予防と治療のためにフェンテルミンと組み合わせて投与されていた。しかし、1997年には、その使用が心筋線維化と肺高血圧の発症に関連していたため、米国市場から姿を消した。その後、この薬は世界的に販売が中止され、治療分野での使用はもはや示されていない。
【0005】
フェンフルラミンを取り巻く健康上の懸念にもかかわらず、その製品のさらなる治療用途を特定するための試みがなされてきた。AicardiとGastaut(New England Journal of Medicine (1985), 313:1419(非特許文献1)およびArchives of Neurology (1988) 45:923-925(非特許文献2))は、フェンフルラミンによる治療に応答した自己誘発光過敏性発作の4症例を報告した。
【0006】
Clemensは、Epilepsy Research (1988) 2:340-343(非特許文献3)の中で、抗けいれん治療に抵抗性の図形過敏誘発発作を患っている少年に関する研究を報告した。フェンフルラミンは、これらの自己誘発発作を終わらせるのに成功したと報告されており、この著者は、その理由として、フェンフルラミンが光過敏性トリガー機構をブロックしたためであると結論づけた。
【0007】
Neuropaediatrics, (1996); 27(4):171-173(非特許文献4)において、BoelとCasaerは、フェンフルラミンが難治性てんかんを有する子供に及ぼす効果に関する研究を報告した。彼らは、フェンフルラミンを0.5~1mg/kg/日の用量で投与すると、結果的に、患者が経験する発作の回数が減少すると結論づけた。
【0008】
定期刊行物(Epilepsia, 43(2):205-206, 2002(非特許文献5))中で発表された、Epilepsiaに対するレターにおいて、BoelとCasaerは、フェンフルラミンは難治性てんかんを有する患者に対して治療効果があると考えられるとコメントした。
【0009】
てんかんは、反復性の発作を起こしやすいことによって特徴づけられる脳の疾患である。多くのてんかんの原因として、限定するものではないが、以下が含まれる:出生時外傷、周産期感染、低酸素、感染症、毒素の摂取、脳の腫瘍、遺伝性疾患または変性疾患、頭部損傷または外傷、代謝障害、脳血管障害、およびアルコール離脱。
【0010】
てんかんには、多くのサブタイプがあり、特徴決定されている。例えば、国際抗てんかん連盟(「ILAE」)の分類と用語に関する委員会によって採用された最新の分類システムは、以下のてんかん症候群のリストを提供している(Berg et. al., “Revised terminology and concepts for organization of seizures,” Epilepsia, 51(4):676-685 (2010)(非特許文献6)を参照されたい)。
【0011】
I. 発症年齢別に分類された電気臨床的症候群:
A. 新生児期(1.良性家族性新生児てんかん(BFNE)、2.早期ミオクロニー脳症(EME)、3.太田原症候群);
B. 乳児期(1.遊走性焦点性発作を伴う乳児てんかん、2.ウエスト(West)症候群、3.乳児ミオクロニーてんかん(MEI)、4.良性乳児てんかん、5.良性家族性乳児てんかん、6.ドラベ症候群、7.非進行性疾患のミオクロニー脳症);
C. 小児期(1.熱性けいれんプラス(FS+)(乳児期に発症することがある)、2.早発良性小児後頭葉てんかん(Panayiotopoulos)症候群、3.ミオクロニー脱力(以前には、失立)発作を伴うてんかん、4.中心側頭棘波を示す良性てんかん(BECTS)、5.常染色体優性夜間前頭葉てんかん(ADNFLE)、6.遅発性小児後頭葉てんかん(ガストー型)、7.ミオクロニー欠神てんかん、8.レノックス・ガストー症候群、9.睡眠時持続性棘徐波(CSWS)を示すてんかん性脳症、10.ランドウ・クレフナー(Landau-Kleffner)症候群(LKS)、11.小児欠伸てんかん(CAE));
D. 青年期-成人期(1.若年欠神てんかん(JAE)、2.若年ミオクロニーてんかん(JME)、3.全般強直間代発作のみを示すてんかん、4.進行性ミオクローヌスてんかん(PME)、5.聴覚症状を伴う常染色体優性てんかん(ADEAF)、6.その他の家族性側頭葉てんかん);
E. 年齢との関連性が低いもの(1.多様な焦点を示す家族性焦点性てんかん(小児期から成人期)、2.反射てんかん)。
【0012】
II. 特有の群: A. 海馬硬化症を伴う内側側頭葉てんかん(HSを伴うMTLE)、B. ラスムッセン(Rasmussen)症候群、C. 視床下部過誤腫による笑い発作、D. 片側けいれん片麻痺てんかん、E. 1.推定される原因(既知の構造的または代謝性疾患の有無)、次に2.主な発作の発現様式(全般性対焦点性)により識別される、その他のてんかん。
【0013】
III. 構造的-代謝性の原因に起因し組織化されたてんかん: A. 皮質形成異常(片側巨脳症、異所形成など)、B. 神経皮膚症候群(結節性硬化症複合体、スタージ・ウェーバー(Sturge-Weber)など)、C. 腫瘍、D. 感染、E. 外傷。
【0014】
IV. 血管腫: A. 周産期脳障害、B. 脳卒中、C. その他の原因。
【0015】
V. 原因不明のてんかん。
【0016】
VI. てんかん発作を伴うがそれ自体は従来の分類ではてんかん型として診断されない、疾患: A. 良性新生児発作(BNS)、B. 熱性発作(FS)。
【0017】
Berg et. al, “Revised terminology and concepts for organization of seizures,” Epilepsia, 51(4):676-685 (2010)(非特許文献6)を参照されたい。
【0018】
例えば、上記リストのパートVから見て取れるように、まだ完全には特徴決定されていないサブタイプのてんかんが依然として存在し、そのため、該リストは完全にはほど遠いものである。
【0019】
当業者は、これらのサブタイプのてんかんが、異なる刺激によって誘発され、異なる生物学的経路によって制御され、遺伝的であろうと環境的であろうと、異なる原因を有することを認識するであろう。言い換えれば、当業者は、1つのてんかんサブタイプに関連する教示が他のサブタイプに必ずしも当てはまらないことを認識するであろう。これには、異なるてんかんサブタイプは異なる抗けいれん薬に対して異なって応答するという認識が含まれる。
【0020】
ドラベ症候群は、乳児期に始まる難治性てんかんの稀な破滅型である。初期には、患者は長引く発作を経験する。2年目には、別のタイプの発作が起こり始め、通常は、おそらく繰り返される脳の低酸素が原因で、発達の緩やかな低下が同時に起こる。これは、言語と運動能力の発達不良につながる。
【0021】
ドラベ症候群を有する子供は、1日に複数回の発作を経験する可能性がある。てんかんの発作は、ドラベ症候群の罹患者に死をもたらす可能性がかなり高く;ドラベ症候群と診断された患者の約10~15%は、特に2~4歳の間の、小児期に死亡する。さらに、患者は、整形外科的発達の問題、成長障害、慢性感染症など、多数の関連疾患のリスクを抱えている。
【0022】
特に懸念されるのは、ドラベ症候群を有する子供はてんかん重積状態のエピソードの影響を特に受けやすいことである。この重度で難治性の状態は、即時の医療的介入を必要とする、一般的には入院を伴う、医学的緊急事態として分類される。てんかん重積状態は致命的であり得る。それはまた、おそらく脳組織の損傷につながる、脳低酸素に関連している可能性がある。ドラベ症候群を有する子供の度重なる入院は、患者だけでなく家族や介護者にとっても、明らかにつらいことである。ケトン食療法は、難治性てんかん重積状態を含めて、てんかん重積状態の発生と重症度の軽減に関連しており、第2次または第3次の補助療法として使用されている(Williams, T. et al. Clinical Neurophysiology Practice, Volume 2, 154-160 (2017)(非特許文献7))。
【0023】
また、ドラベ症候群などの、てんかんを有する患者の治療費も高くなるが、それは、罹患した子供が絶え間ない監視を必要とし、彼らがティーンエージャーになると、多くが施設への入所を必要とするためである。
【0024】
現在、多くの抗けいれん療法を用いてドラベ症候群を有する患者の発作の事例を減らすことができるが、そのような療法で得られる結果は一般に不十分であり、こうした療法はせいぜい発作の部分的停止をもたらすにすぎない。ドラベ症候群に関連する発作は通常、従来の治療に対して抵抗性がある。さらに、クロバザム、クロナゼパムなどの多くの抗けいれん薬には望ましくない副作用があり、こうした副作用は小児患者にとって特に深刻である。
【0025】
スチリペントールは、ドラベ症候群の治療薬としてヨーロッパ、カナダ、オーストラリアで承認されており、また、米国での販売が最近承認されたばかりである。それはGABAA受容体モジュレーターとしてそれ自体に若干の抗けいれん活性があるが、それは主に、他の抗けいれん薬の代謝を阻害し、それによってそれらの活性を長引かせることにより作用する。それは、クロバザムおよびバルプロエートと併用すると表示されている。しかし、スチリペントールの使用に関しては、肝シトクロムP450酵素に対するその阻害効果のため、依然として懸念が残る。さらに、スチリペントールと多数の薬物との相互作用は、併用療法(これは通常ドラベ症候群を有する患者に必要である)に問題があることを意味する。その上、スチリペントールの有効性は限られており、発作がなくなるとしても、そうした患者はごくわずかである。
【0026】
ドラベ症候群の治療のための、2種類またはそれ以上の抗てんかん薬を使用する多剤療法は、患者に多大な負担をかける可能性があり、それは、複数の投薬からの副作用または有害事象が相加的であり得、その結果として、この療法の有効性が制限されるためである。
【0027】
ドラベ症候群の非薬理学的治療には、患者の食事を調節することが含まれていた。1921年には、発作を管理すべく絶食の代謝効果を引き出すためにケトン食療法が利用された(Wilder et al. The effect of ketogenemia on the course of epilepsy. Mayo Clin. Bull., 1921, 2:307-14(非特許文献8))。抗てんかん薬の使用が増加するにつれて、その食事療法は選ばれた患者での使用に限定されるようになった。しかしながら、ここ数十年間で、治療センターは古典的なケトン食療法を採用してきている。この食事療法は、炭水化物の3倍または4倍の脂肪をタンパク質と組み合わせて摂取することからなる。
【0028】
ケトン食療法は現在、難治性てんかんを管理するための確立された代替手段となっている。例えば、Caraballoらの研究では、高頻度の発作と抗てんかん薬への治療抵抗性を特徴とするレノックス・ガストー症候群(LGS)の対象に該食事療法が施された。食事療法を開始して18ヶ月後、この療法の状態におかれた患者の40%は、50%を上回る発作の減少を達成した。この研究は、ケトン食療法、特にジョンズ・ホプキンス(Johns Hopkins)のプロトコールが、LGS患者にとって効果的で忍容性の高い選択肢である、と結論づけた(Caraballo et al. Ketogenic diet in patients with Lennox-Gastaut syndrome. Seizure, 2014, 23(9):751-5(非特許文献9))。
【0029】
ケトン食療法中である患者は、多くの場合、広範囲の炭水化物カロリー摂取があり、数種類の薬を服用していることもある。液剤は、1日あたりの患者の食事に数グラムの炭水化物を追加する香味剤と甘味剤とを含むことが多い。しかし、食事療法の成功は、血液中のケトン体がエネルギーを供給する代謝状態であるケトーシスを促進するための炭水化物の制限に依存している。服薬の炭水化物カロリー含有量を監視できないと、食事療法が崩壊する可能性がある。
【0030】
したがって、てんかん(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ドーゼ症候群)を治療もしくは予防するための、ならびに/またはケトン食療法中であるサブタイプのてんかんの罹患者が経験する発作を治療、予防、および/もしくは軽減するための、改善された方法を提供する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0031】
【文献】Aicardi and Gastaut, New England Journal of Medicine (1985), 313:1419
【文献】Aicardi and Gastaut, Archives of Neurology (1988) 45:923-925
【文献】Clemens, Epilepsy Research (1988) 2:340-343
【文献】Boel and Casaer, Neuropaediatrics, (1996); 27(4):171-173
【文献】Boel and Casaer, Epilepsia, 43(2):205-206, 2002
【文献】Berg et. al., “Revised terminology and concepts for organization of seizures,” Epilepsia, 51(4):676-685 (2010)
【文献】Williams, T. et al. Clinical Neurophysiology Practice, Volume 2, 154-160 (2017)
【文献】Wilder et al. The effect of ketogenemia on the course of epilepsy. Mayo Clin. Bull., 1921, 2:307-14
【文献】Caraballo et al. Ketogenic diet in patients with Lennox-Gastaut syndrome. Seizure, 2014, 23(9):751-5
【発明の概要】
【0032】
本発明は、以前の治療レジメンでは効果がなかったサブタイプのてんかん(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、およびドーゼ症候群)と診断された患者においてケトン食療法の遵守を向上させる方法であり、該方法は、栄養性の/容易に消化できる/血糖性(glycemic)の炭水化物を欠くフェンフルラミン製剤の治療有効用量を対象に投与することを含み、該製剤は患者の炭水化物に対する渇望を軽減させる。
【0033】
いくつかの局面では、ケトン食療法を開始するかまたは維持している、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群を有する患者に、容易に消化できる炭水化物を含まないフェンフルラミン製剤を投与することを含む、該患者を治療する方法が本明細書に記載され、該投与は該患者の炭水化物に対する渇望を軽減させ、それによってケトン食療法のアドヒアランスを容易にする/促進する。
【0034】
本発明の一局面では、前記製剤は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群などの、サブタイプのてんかんを有する対象のためのケトン食療法に適合するように調製される。本発明の一局面では、フェンフルラミンの製剤の投与により、ドラベ症候群または他の難治性てんかんを有する患者におけるケトン食療法の遵守が改善される。
【0035】
別の局面では、てんかん治療用の液体フェンフルラミン製剤が本明細書に記載され、ここで、該製剤は、容易に消化できる炭水化物を含まず、炭水化物渇望を軽減させ、それによって、ケトン食療法のアドヒアランスを促進する。
【0036】
また、前記方法の態様を実施する際の使用を見出している組成物およびキットも提供される。
[本発明1001]
ケトン食療法の遵守を向上させるための製剤の使用であって、
該製剤が、治療有効用量のフェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩、塩基、もしくは酸を含み、かつ
該使用が、炭水化物に対する渇望のベースラインからの低下を患者が示すまで数日間にわたって該患者に該製剤を繰り返し投与するためである、
該使用。
[本発明1002]
前記患者がドラベ症候群と診断されている、本発明1001または1002の使用。
[本発明1003]
ケトン食療法を受けている状態に数週間にわたって前記患者を維持するためである、本発明1001~1003のいずれかの使用。
[本発明1004]
ケトン食療法を受けている状態に数ヶ月間にわたって前記患者を維持するためである、本発明1001~1004のいずれかの使用。
[本発明1005]
前記患者が、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、およびドーゼ(Doose)症候群からなる群より選択される難治性てんかんと診断されている、本発明1001~1004のいずれかの使用。
[本発明1006]
前記製剤が、前記ケトン食療法の各食事と同時に、前記ケトン食療法の各食事の直前に、または前記ケトン食療法の各食事の直後に使用するためのものである、本発明1001~1005のいずれかの使用。
[本発明1007]
前記製剤が、スクラロース、香味剤、緩衝剤、防腐剤、および粘稠化剤を含む、本発明1001~1006のいずれかの使用。
[本発明1008]
前記患者が18歳未満である、本発明1001~1007のいずれかの使用。
[本発明1009]
治療有効量のフェンフルラミン活性剤と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む、液体製剤であって、
該製剤が、容易に消化できる炭水化物を含まず、かつ、炭水化物渇望を軽減させ、したがって、ケトン食療法の遵守を促進し、
該フェンフルラミン活性剤が、フェンフルラミン塩基またはその薬学的に許容される塩もしくは複合体であり、該製剤が、スクラロースと香味剤と緩衝剤と防腐剤と粘稠化剤とを含む水性製剤である、
該液体製剤。
[本発明1010]
前記香味剤が、チェリー香味剤、オレンジ香味剤、ストロベリー香味剤、ラズベリー、ミックスベリー、ブドウ、マンダリン、スウィートタンジェリン、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1009の液体フェンフルラミン製剤。
[本発明1011]
前記緩衝剤が、クエン酸カリウム一水和物、無水クエン酸カリウム、リン酸カリウム、クエン酸一水和物、無水クエン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1010の液体フェンフルラミン製剤。
[本発明1012]
前記防腐剤が、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸、プロピオン酸、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1011の液体フェンフルラミン製剤。
[本発明1013]
前記粘稠化剤が、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ポビドン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、コポビドン、アカシアガム、グアーガム、ローカストビーンガム、ポリエチレンオキシド、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される、本発明1012の液体フェンフルラミン製剤。
[本発明1014]
フェンフルラミン塩酸塩、濃度2mg/mLのメチルパラベンナトリウム、濃度0.2mg/mLのエチルパラベンナトリウム、濃度1.0mg/mLのスクラロース、濃度5.0mg/mLのヒドロキシエチルセルロース、濃度1.0mg/mLのチェリーフレーバーパウダー、濃度10.2mg/mLのクエン酸カリウム一水和物、濃度5.5mg/mLのクエン酸一水和物、および水
を含む、液体フェンフルラミン製剤であって、
該フェンフルラミン塩酸塩が該製剤中に1.25mg/mLの濃度で存在する、
該液体フェンフルラミン製剤。
[本発明1015]
炭水化物に対する渇望のベースラインからの低下を患者が示すまで数日間にわたって該患者に前記製剤を繰り返して投与し、それによってケトン食療法を受けている状態に該患者を維持するためである、サブタイプのてんかんと診断された対象を治療するための、本発明1009~1014のいずれかの製剤の使用。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
本発明の治療方法を説明する前に、本発明は、記載された特定の方法に限定されず、したがって、当然のことながら、変化し得ることを理解されたい。また、本明細書で使用される用語は、特定の態様を説明することのみを目的としており、限定することを意図していない。それゆえ、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定されることも理解されたい。
【0038】
ある値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限の間の、文脈からそうでないことが明確に示されない限り下限の単位の小数第1位までの、各介在値も具体的に開示されることが理解される。規定範囲内の任意の規定値または介在値と、その規定範囲内の任意の他の規定値または介在値との間のより小さい範囲は、それぞれが本発明に包含される。これらのより小さい範囲の上限と下限は、独立して、その範囲に含まれても除外されてもよく、いずれか一方または両方の限度がより小さい範囲に含まれるか、どちらの限度も含まれない場合の各範囲もまた、規定範囲内の具体的に除外された限度に従って、本発明に包含される。規定範囲が限度の一方または両方を含む場合、含められた限度のいずれか一方または両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0039】
別に定義しない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者が一般的に理解しているのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似のまたは同等の任意の方法および材料が本発明の実施または試験に使用され得るが、いくつかの可能性のある好ましい方法および材料がここに記載される。本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物の引用に関連する方法および/または材料を開示しかつ説明するために、参照により本明細書に組み入れられる。矛盾がある場合には、組み込まれた刊行物の任意の開示内容にも本開示が優先することを理解されたい。
【0040】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈からそうでないことが明確に示されない限り、複数の指示対象を含むことに留意しなければならない。したがって、例えば、「投与する段階」への言及は複数のそのような段階を含み、また、「症状」への言及は、当業者に知られている1つまたは複数の症状およびその同等の症状などへの言及を含む。
【0041】
本明細書に記載の刊行物は、本出願の出願日前にそれらが開示されたというだけで提供される。本明細書のいかなる内容も、先行発明という理由でそのような刊行物に先行する権利が本発明にはないことを容認するものと解釈されるべきではない。さらに、提供された刊行日は実際の刊行日とは異なることがあり、別に確認する必要がある場合がある。
【0042】
本発明の特定の局面
長年にわたる広範囲の研究の後、予期せざることに、フェンフルラミンを本明細書に記載するとおりに投与して、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群を有する患者の発作を軽減または排除できることが見出された。これは、例えば、Ceulemans et al., Epilepsia (2012) 53(7):1131-1139の論文で確認され、その内容は本明細書に組み入れられる。
【0043】
疑義を避けるために、発作の「予防」という用語は、発作の完全なまたは部分的な予防(抑制)を意味する。理想的には、本発明の方法は発作の完全な予防をもたらす;実際、この理想は、本発明者らが治療した多くの患者で達成された。しかしながら、本発明は、発作の事例が少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも90%減少する方法をも包含する。
【0044】
ドラベ症候群を有する患者は、一般に、光過敏性または誘発性発作を経験することが知られている。先行技術、例えば、Aicardi and Gastaut (1988)およびBoel and Casaer (1996)-両方とも上で説明した-の教示から、フェンフルラミンは光過敏性または誘発性発作を軽減するであろうと予測された場合がある。しかし、いくつかの場合には、驚くべきことに、ドラベ症候群を有する患者が示したあらゆるタイプの発作、すなわち、光過敏性または誘発性発作だけでなく、それら以外の発作を、本発明の方法に従った治療により抑制できることが見出された。かくして、本発明の文脈では、「発作」という用語は、光過敏性または誘発性発作だけでなく、てんかん患者が経験する他のタイプの発作の一部または全部を包含するために使用される。
【0045】
てんかんサブタイプおよび/または関連症候群、例えば、全てが難治性(治療または管理が困難な)てんかんとして特徴決定されるドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、ドーゼ症候群およびウエスト症候群の指標となる遺伝的変異がいくつか存在する。
【0046】
多数のサブタイプのてんかんがあり、それらの特徴決定されている。例えば、次の疾患のリストがMeritt's Neurology(第12版)に提示されている:I.特発性てんかん症候群(焦点性または全般性)、A.良性新生児けいれん、1.家族性、2.非家族性、B.良性小児てんかん、1.中心部-中側頭部に棘波、2.後頭部に棘波、C.小児/若年性欠神てんかん、D.若年性ミオクロニーてんかん(覚醒時の全般性強直間代発作を含む)、E.特発性てんかん、その他の点では詳細不明、II.症候性てんかん症候群(焦点性または全般性)、A.ウエスト症候群(点頭てんかん)、B.レノックス・ガストー症候群、C.早期ミオクロニー脳症、D.持続性部分てんかん、1.ラスムッセン(Rasmussen)症候群(脳炎型)、2.限局型、E.後天性てんかん性失語症(ランドウ・クレフナー(Landau-Kleffner)症候群)、F.側頭葉てんかん、G.前頭葉てんかん、H.外傷後てんかん、I.他の症候性てんかん、焦点性または全般性、指定なし、III.分類不明または混合分類の他のてんかん症候群、A.新生児発作、B.熱性けいれん、C.反射てんかん、D。
【0047】
一局面において、本明細書では、栄養性の/容易に消化できる/血糖性の炭水化物を欠くフェンフルラミンの製剤を投与することを含む、難治性てんかん患者におけるケトン食療法の遵守を向上させる方法が提供され、該製剤は該患者の炭水化物に対する渇望を軽減させる。
【0048】
ある局面において、本明細書では、ケトン食療法を開始するかまたは維持しているドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群を有する患者に、フェンフルラミン製剤を投与することを含む、該患者を治療する方法が提供され、該製剤は、容易に消化できる炭水化物を含まず、かつ該投与は、該患者の炭水化物に対する渇望を軽減させ、それによってケトン食療法のアドヒアランスを容易にする/促進する。
【0049】
別の局面において、本明細書では、てんかん治療用の液体フェンフルラミン製剤が提供され、該製剤は、容易に消化できる炭水化物を含まず、かつ炭水化物渇望を軽減させ、それによってケトン食療法のアドヒアランスを促進する。
【0050】
本発明のさらなる局面によれば、本明細書では、ケトン食療法と組み合わせて、以下に記載される遺伝子のうちの1つ、一部、または全部に突然変異を示す患者に有効用量のフェンフルラミンを投与することによって、該患者を治療する方法が提供される。突然変異は、部分的もしくは完全な欠失変異、トランケーション変異、および/またはミスセンス変異を含むことができる。いくつかの態様では、患者は、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、およびドーゼ症候群からなる群より選択されるサブタイプのてんかんと診断されている。本発明のこの局面の特定の態様では、患者はドラベ症候群と診断されている。
【0051】
ある場合には、突然変異は、例えば、全般性発作、ミオクロニー発作、欠神発作、および熱性けいれんを含めて、様々な発作タイプによって特徴決定される疾患および症状に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:ALDH7A1、CACNA1A、CACNA1H、CACNB4、CASR、CHD2、CHRNA2、CHRNA4、CHRNB2、CLCN2、CNTN2、CSTB、DEPDC5、EFHC1、EPM2A、GABRA1、GABRB3、GABRD、GABRG2、GOSR2、GPR98、GRIN1、GRIN2A、GRIN2B、KCNMA1、KCNQ2、KCNQ3、KCTD7、MBD5、ME2、NHLRC1、PCDH19、PRICKLE1、PRICKLE2、PRRT2、SCARB2、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN4A、SCN9A、SLC2A1、TBC1D24。
【0052】
ある場合には、突然変異は、例えば、早期乳児てんかん性脳症を含めて、年齢に関係したてんかん性脳症に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:ALDH7A1、ARHGEF9、ARX、CDKL5、CNTNAP2、FH、FOXG1、GABRG2、GRIN2A、GRIN2B、KCNT1、MAGI2、MAPK10、MECP2、NRXN1、PCDH19、PLCB1、PNKP、PNPO、PRRT2、RNASEH2A、RNASEH2B、RNASEH2C、SAMHD1、SCN1A、SCN1B、SCN2A、SCN8A、SCN9A、SLC25A22、SLC2A1、SLC9A6、SPTAN1、STXBP1、TCF4、TREX1、UBE3A、ZEB2。
【0053】
ある場合には、突然変異は、例えば、神経細胞移動障害、重度の小頭症、橋小脳形成不全、ジュベール(Joubert)症候群と関連障害、全前脳症、およびRAS/MAPK経路の障害を含めて、奇形障害に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:AHI1、ARFGEF2、ARL13B、ARX、ASPM、ATR、BRAF、C12orf57、CASK、CBL、CC2D2A、CDK5RAP2、CDON、CENPJ、CEP152、CEP290、COL18A1、COL4A1、CPT2、DCX、EMX2、EOMES、FGF8、FGFR3、FKRP、FKTN、FLNA、GLI2、GLI3、GPR56、HRAS、INPP5E、KAT6B、KRAS、LAMA2、LARGE、MAP2K1、MAP2K2、MCPH1、MED17、NF1、NPHP1、NRAS、OFD1、PAFAH1B1、PAX6、PCNT、PEX7、PNKP、POMGNT1、POMT1、POMT2、PQBP1、PTCH1、PTPN11、RAB3GAP1、RAF1、RARS2、RELN、RPGRIP1L、SHH、SHOC2、SIX3、SLC25A19、SNAP29、SOS1、SPRED1、SRD5A3、SRPX2、STIL、TGIF1、TMEM216、TMEM67、TSEN2、TSEN34、TSEN54、TUBA1A、TUBA8、TUBB2B、VDAC1、WDR62、VRK1、ZIC2。
【0054】
ある場合には、突然変異は、X連鎖性知的障害のてんかんに関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:ARHGEF9、ARX、ATP6AP2、ATP7A、ATRX、CASK、CDKL5、CUL4B、DCX、FGD1、GPC3、GRIA3、HSD17B10、IQSEC2、KDM5C、MAGT1、MECP2、OFD1、OPHN1、PAK3、PCDH19、PHF6、PLP1、PQBP1、RAB39B、SLC16A2、SLC9A6、SMC1A、SMS、SRPX2、SYN1、SYP。
【0055】
ある場合には、突然変異は、例えば、神経セロイドリポフスチン症、リソソーム蓄積症、先天性グリコシル化異常症、ペルオキシソーム形成異常症、および白質萎縮症を含めて、細胞小器官の機能不全を特徴とする蓄積症および症状に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:AGA、ALG1、ALG12、ALG2、ALG3、ALG6、ALG8、ALG9、ALG11、ALG13、ARSA、ARSB、ASPA、B4GALT1、CLN3、CLN5、CLN6、CLN8、COG1、COG4、COG5、COG6、COG7、COG8、CTSA、CTSD、DDOST、DOLK、DPAGT1、DPM1、DPM3、EIF2B1、EIF2B2、EIF2B3、EIF2B4、EIF2B5、FUCA1、GALC、GALNS、GFAP、GLB1、GNE、GNPTAB、GNPTG、GNS、GUSB、HEXA、HEXB、HGSNAT、HYAL1、IDS、IDUA、MCOLN1、MFSD8、MGAT2、MLC1、MOGS、MPDU1、MPI、NAGLU、NEU1、NOTCH3、NPC1、NPC2、PEX1、PEX12、PEX14、PEX2、PEX26、PEX3、PEX5、PEX6、PEX7、PEX10、PEX13、PEX16、PEX19、PGM1、PLP1、PMM2、PPT1、PSAP、RFT1、RNASEH2A、RNASEH2B、RNASEH2C、SAMHD1、SDHA、SGSH、SLC17A5、SLC35A1、SLC35A2、SLC35C1、SMPD1、SUMF1、TMEM165、TPP1、TREX1。
【0056】
ある場合には、突然変異は、例えば、若年性ミオクロニーてんかん、小児欠神てんかん、良性ローランドてんかん、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群、太田原症候群、ウエスト症候群などの、てんかんを伴う症候性障害に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:ATP2A2、ATP6V0A2、BCKDK、CACNA1A、CACNB4、CCDC88C、DYRK1A、HERC2、KCNA1、KCNJ10、KIAA1279、KMT2D、LBR、LGI1、MAPK10、MECP2、MEF2C、NDE1、NIPBL、PANK2、PIGV、PLA2G6、RAI1、RBFOX1、SCN8A、SERPINI1、SETBP1、SLC1A3、SLC4A10、SMC3、SYNGAP1、TBX1、TSC1、TSC2、TUSC3、UBE3A、VPS13A、VPS13B。
【0057】
ある場合には、突然変異は、片頭痛の発生に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で生じ得る:ATP1A2、CACNA1A、NOTCH3、POLG、SCN1A、SLC2A1。
【0058】
ある場合には、突然変異は、過剰驚愕症に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子で発生し得る:ARHGEF9、GLRA1、GLRB、GPHN、SLC6A5。
【0059】
ある場合には、突然変異は、例えば、炭水化物代謝障害、アミノ酸代謝障害、尿素サイクル障害、有機酸代謝障害、脂肪酸酸化およびミトコンドリア代謝の障害、ポルフィリン代謝障害、プリンまたはピリジン代謝障害、ステロイド代謝障害、ミトコンドリア機能障害、ペルオキシソーム機能障害、およびリソソーム蓄積症などの、先天性代謝異常症に関連する遺伝子で発生する。突然変異は、以下の遺伝子のうちの1つまたは複数で発生し得る:ABAT、ABCC8、ACOX1、ACY1、ADCK3、ADSL、ALDH4A1、ALDH5A1、ALDH7A1、AMT、ARG1、ATIC、ATP5A1、ATP7A、ATPAF2、BCS1L、BTD、C12ORF65、CABC1、COQ2、COQ9、COX10、COX15、DDC、DHCR7、DLD、DPYD、ETFA、ETFB、ETFDH、FOLR1、GAMT、GATM、GCDH、GCSH、GLDC、GLUD1、GLUL、HPD、HSD17B10、HSD17B4、KCNJ11、L2HGDH、LRPPRC、MGME1、MMACHC、MOCS1、MOCS2、MTHFR、MTR、MTRR、NDUFA1、NDUFA2、NDUFAF6、NDUFS1、NDUFS3、NDUFS4、NDUFS7、NDUFS8、NDUFV1、PC、PDHA1、PDHX、PDSS1、PDSS2、PGK1、PHGDH、POLG、PRODH、PSAT1、QDPR、RARS2、SCO2、SDHA、SLC19A3、SLC25A15、SLC46A1、SLC6A8、SUCLA2、SUOX、SURF1、TACO1、TMEM70、VDAC1。
【0060】
フェンフルラミンは、セロトニンの再取り込みを阻害し、かつその小胞貯蔵の破壊により脳内のセロトニンの放出を引き起こすことが知られている。より最近の研究からのデータは、フェンフルラミンがσ1受容体のポジティブアロステリックモジュレーターであるという証拠を提供している。本発明では、フェンフルラミンの作用機序により、それは、サブタイプのてんかん、例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群の治療に適するものになった。本発明のさらなる局面によれば、ケトン食療法と組み合わせて有効用量のフェンフルラミンを患者に投与することにより、患者の脳内の1つまたは複数の標的を刺激または調節する方法が提供され、ここで、該1つまたは複数の標的は、シャペロンタンパク質、バイオアミン輸送体(BAT)、および5-HT受容体からなる群より選択される。
【0061】
本発明の方法では、フェンフルラミンは、サブタイプのてんかん、例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群の治療において、単剤療法として使用することができる。あるいは、フェンフルラミンは、抗けいれん薬などの1つまたは複数の共治療薬と同時に、連続して、または別々に共投与することができる。好ましい共治療薬は、カルバマゼピン、エトスクシミド、ホスフェニトイン、ラモトリギン、レベチラセタム、フェノバルビタール、プロガバイド、トピラメート、スチリペントール、バルプロ酸、バルプロエート、ベラパミル、およびベンゾジアゼピン、例えば、クロバザム、クロナゼパム、ジアゼパム、ロフラゼプ酸エチル、ロラゼパム、ミダゾラムからなる群より選択することができる。共治療薬の薬学的に許容される塩の使用も考えられる。ただし、カルバマゼピン、オクスカルバゼピン、ラモトリギン、フェニトイン、およびビガバトリンは、発作を改善するどころか悪化させる傾向があるため、通常、ドラベ症候群には禁忌である。
【0062】
本発明の局面によれば、サブタイプのてんかん(例えば、ドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群)と診断された対象、例えば患者に、治療有効用量のフェンフルラミン活性剤を投与することにより、該対象を治療する方法が提供される。フェンフルラミン活性剤には、フェンフルラミンまたはその薬学的に許容される塩もしくは複合体が含まれる。したがって、フェンフルラミンは、遊離塩基の形態で、または、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、マレアート、サルフェート、タータラート、アセテート、シトラート、トシラート、スクシナート、メシレート、およびベシレートからなる群より選択される、薬学的に許容される塩の形態で投与され得る。さらなる例示的な薬学的に許容される塩は、Berge et al., J. Pharm Sci. (1977) 68(1):1-19に見出すことができる。
【0063】
本発明の方法で使用するためのフェンフルラミンは、当業者に公知の薬学的に許容される方法に従って製造することができる。フェンフルラミンの合成方法の例は、以下の文書に記載されている:GB1413070、GB1413078、およびEP441160。
【0064】
本発明の態様では、フェンフルラミンの任意の有効用量を使用することができる。ある場合には、驚くほど低用量のフェンフルラミンが、特にドラベ症候群、レノックス・ガストー症候群、またはドーゼ症候群の患者の発作を抑制または排除するのに、効果的であることが本発明者らによって見出された。さらに、成人の肥満の治療に必要とされる用量(通常60~120mg/日)と比較して、驚くほど低用量のフェンフルラミンは、食欲と炭水化物に対する渇望を軽減する上でも効果的である。Wurtmanらは、30mg/日のデクスフェンフルラミンで治療された成人における炭水化物渇望の減少について記載した(Int. J. Eat. Disord., 1985, 4:89-99)。デクスフェンフルラミンの全体的な食欲抑制効果は、実験動物(Garratini et al. 1988)およびヒト(Goodall et al. 1992)においてl-フェンフルラミンのそれを上回っている。デクスフェンフルラミンは、16人の対象のグループで直接比較したとき、ラセミ混合物フェンフルラミンの食欲抑制作用の2倍の効力を保持することがわかった。30mgの用量のデクスフェンフルラミンは、フェンフルラミン60mgと同程度に食物の摂取を抑制した。これは、ラセミ混合物の食欲抑制活性の大半がd異性体にかかっていることを示唆している(Silverstone T., Drugs 43 (6):820-836. 1992)。したがって、デクスフェンフルラミンの30mg/日の用量に相当する用量は、本明細書に記載の製剤中で使用されるラセミ体フェンフルラミンの約60mg/日であろう。かくして、本発明の好ましい態様では、最大1日量は、遊離塩基または薬学的に許容される塩としてのフェンフルラミン約26mg/日(例えば、フェンフルラミン塩酸塩30mg/日)を超えず、約0.8mg/kg/日、0.7mg/kg/日、0.6mg/kg/日、0.5mg/kg/日、約0.4mg/kg/日、約0.3mg/kg/日、約0.25mg/kg/日、または約0.2mg/kg/日~約0.1mg/kg/日、約0.05mg/kg/日、または約0.01mg/kg/日を下回る1日量が使用される。言い換えれば、好ましい用量は、約30mg以下/日であり、約1mg未満/kg/日~約0.01mg未満/kg/日である。そのような用量は、体重減少を達成するための投与について提案されているフェンフルラミンの1日量よりも少ない量である。
【0065】
フェンフルラミン活性剤は、薬学的に許容されるビヒクル中にフェンフルラミン活性剤を含む適切な製剤として投与することができる。いくつかの局面では、前記方法は、フェンフルラミン活性剤を、遊離塩基または薬学的に許容される塩もしくは複合体のいずれかとして存在するフェンフルラミンの1mg/mL~5mg/mLの範囲の濃度で投与すること、および1日1回、1日2回、1日3回、または1日4回ベースで数日間、数週間、または数ヶ月間にわたって患者にそれを提供することを含むことができ、ここで、その用量は、遊離塩基または薬学的に許容される塩もしくは複合体のいずれかとしてのフェンフルラミンを0.2mg/kg/日または0.7mg/kg/日のレベルで最大26mg/日まで、患者に提供される。投薬は、好ましくは、12時間間隔で1日2回提供され、それによって、本発明の局面は、けいれん発作の頻度を50%もしくはそれ以上、60%もしくはそれ以上、70%もしくはそれ以上、80%もしくはそれ以上、90%もしくはそれ以上、95%もしくはそれ以上低減すること、または10日間、20日間、30日間、50日間、100日間、もしくはそれ以上にわたって患者の発作を完全に排除することである。
【0066】
本発明の別の局面によれば、対象は、ケトン食療法中であってもよいか、またはケトン食療法を始めていてもよい。「ケトン食療法」とは、患者がケトンを生成する朝食、昼食、夕食などのケトン生成食の形で栄養を摂取することを意味する。脂質を主成分とするケトン食療法は、小児のてんかん、特にミオクロニー発作および無動性発作の治療に使用されており(Wilder, R. M. Effect of ketonuria on the course of epilepsy. Mayo Clin. Bull., 1921, 2:307-ff)、通常の薬理学的手段では効果がない症例に有効であることが証明されている(Freeman, J. M., E. P. G. Vining. Intractable epilepsy. Epilepsia, 1992, 33:1132-1136)。1990年代初頭以来、子供での調査研究と臨床試験で、薬物耐性患者および特定の小児てんかん症候群におけるケトン食療法の有効性が実証されると、成人の薬物耐性てんかんを管理するためのケトン食療法の使用への世界的な関心が高まっていた。てんかんを患う約1950万人は、投薬治療によって管理できない発作を起こす。また、乳児けいれん(ウエスト症候群)、レノックス・ガストー症候群、ドラベ症候群、アンジェルマン(Angelman)症候群(特にLGITを伴う)およびミオクロニー・無動性てんかんを有する患者は、彼らのてんかんが投薬治療に効果を示さなくなったら、食事療法の試みから恩恵を受ける、という一般的な合意が存在する(Nangia et al., 2012, Thibert et al., 2012, Williams, et al., 前掲)。ケトン食療法は、てんかん重積状態の管理に必要な補助戦略を提供する。それは、他の併用治療と迅速かつ相乗的に作用するという潜在的な利点があり、制御された集中治療室の環境で開始して綿密な経過観察により監視および維持することが比較的容易であり、また、それは、難治性てんかん重積状態の治療に使用される麻酔薬の場合に見られる血行動態の不安定性にも寄与しない。
【0067】
遊離脂肪酸もしくはトリグリセリドの経口または非経口投与は、脂肪組織での再エステル化を防ぐために炭水化物とインスリンが低い場合に限って、血中ケトン体を増加させることができる。コーン油70%、カゼイン加水分解物20%、セルロース5%、マッカラム混合塩5%で構成された食餌を与えられたラットは、約2MMの血中ケトン体を生成する。コーン油の代わりにラードを使用すると、血中ケトン体が5mMほどに上昇する(Veech, 未発表)。セルロースはグルコースのポリマーであるため炭水化物ではあるが、それはヒトによって消化されないので、ケトン食から除外されることはない。消化できない炭水化物は、しばしば食物繊維と呼ばれており、増量剤および粘稠化剤として使用されている。
【0068】
4~6歳のてんかんの子供に適するとしてMarriott社Health Care Servicesの小児用食事療法マニュアル(1987年8月改訂)により推奨された、伝統的な1500カロリー/日のケトン食の例には、組み合わせた炭水化物とタンパク質の各gにつき3:1~4:1gの脂肪が含まれていた。ケトン食の3回の食事のそれぞれで、患者は、48~50gの脂肪、わずか6gのタンパク質および10~6.5gの炭水化物を食べなければならない。実際には、これは、食事ごとに、子供が1日あたり32g相当のマーガリン(約1/4スティック)を食べ、かつ92g(約100ml)のヘビークリーム(主に中鎖脂肪酸トリグリセリドで構成される)を飲む必要があることを意味する。この食事は、エネルギーのために炭水化物に代わって脂肪を体に代謝させ、それによって血中のアセト酢酸とD-3-ヒドロキシ酪酸のレベルを高めている。これらの化合物は「ケトン体」と呼ばれており、それゆえに、この食事を説明するために「ケトン食」という用語が使用される。
【0069】
食事療法のアドヒアランスと遵守は、ケトン食療法の実施を成功させる上で、さらにクリニックでの有効性評価を適切に管理する上で、依然として大きな障壁となっている。成人のケトン食療法の11種類の研究のメタ分析は、総アドヒアランス率が、全てのタイプのケトン食療法では45%、古典的なKDでは38%、改良されたアトキンスダイエット(Adkins diet)(典型的には、正味10~20g/日の炭水化物上限からなる -- 脂肪対タンパク質と炭水化物の比が1~2:1に等しい)では56%であると報告した(Ye et al., J. Clin. Neurol. 2015 Jan;11(1):26-31)。同様に、ケトン食療法で治療された139人の成人患者を対象とした最近の観察研究では、48%(139人中67人)が食事療法を中止した(39%)か、初期の経過観察後に失われた(9%)。約半数の患者は、中止の理由として遵守または制限的であることの難しさを挙げている(Williams, et al., 前掲)。脳は、体内のグルコース消費の約20%を占めており、それが必要とするエネルギー供給を厳しく規制しており;ケトン食療法は、飢餓(すなわち、エネルギー源としてのグルコースの供給源を奪われている)を模倣して、ケトーシス(主なエネルギー源として脂肪を代謝する)と呼ばれる代謝状態に身体をシフトさせる。ケトン食療法の非遵守または放棄の1つの原因は、脳信号から生じる炭水化物への渇望であり、脳信号は、不足していると認識された栄養素を含む食物の渇望を呼び起こす。
【0070】
通常、人体は炭水化物をエネルギー源としており;摂取された炭水化物はグルコースに分解され、グルコースは主に肝臓および筋肉組織に輸送されて、エネルギーとして消費されるか、グリコーゲンとして貯蔵される。食物性炭水化物を奪われた場合(通常、成人の場合は50g未満/日)、肝臓が唯一のグルコース供給源となって、体の器官、特に脳に供給し;上記のように、脳は総エネルギー消費量の約20%を占めている。しかしながら、一部の患者では、感知されたエネルギーの不均衡が炭水化物への、時には強烈な、渇望をもたらす。ある患者では、体と脳が新しいエネルギーバランスに順応するにつれて、渇望は経時的に落ち着いてくるが、他の患者では、炭水化物に対する渇望が続く。ケトン食療法で成功するには、患者が炭水化物を避けるか、その摂取量を厳密に制限する必要があり;ケトン食療法の不履行の結果は、体が再びグルコース代謝に戻り、発作抑制の効果が弱まって、渇望が続くことである。
【0071】
脳は興奮と抑制のバランスを維持しており、このバランスは興奮性グルタミン酸と抑制性GABAの2つの主要な神経伝達物質によって媒介されている。脳卒中、発作および神経変性において発生する過剰なグルタミン酸シグナル伝達は興奮毒性をもたらす。ケトン食療法の正確な作用機序は十分には理解されていないが、1つの長年の仮説は、存在し得る標的は解明されていないものの、ケトン体が薬理作用物質として直接作用する可能性があるというものである。最近、小胞性グルタミン酸トランスポーターVGLUT2によるシナプス小胞へのグルタミン酸輸送は、ケトン食の間に予想される濃度のケトン体アセト酢酸によって阻害されることが判明した(Juge N, et al. Neuron., 2010, 68:99-211)。アセト酢酸に曝露された培養ニューロンでは、グルタミン酸の放出が減少した。したがって、アセト酢酸によるグルタミン酸シグナル伝達の阻害は、ニューロンの興奮性を低下させる可能性がある。以前の研究からは、抑制性神経伝達物質GABAの産生増加は、ケトン食療法によってもたらされる脳代謝の変化に起因しうることが示唆された。理論に束縛されるものではないが、ケトン体が利用可能な場合にはグルタミンを介したグルタミン酸のリサイクリングがより効率的になると仮定され、また、これは、興奮性神経伝達のためのグルタミン酸のリパッケージングに影響を与えるよりさらにいっそう、抑制性神経伝達のためのGABAの再合成を改善すると仮定される。げっ歯類において、脳全体のGABAレベルの上昇は観察されていないが、より高いGABA産生は脳における抑制性シグナル伝達を増加させると予想される。このようなGABAシグナル伝達の変化は、アセト酢酸によってもたらされるグルタミン酸シグナル伝達の変化の仮説を補完することができる(Lutas and Yellen, Trends Neurosci., 2013, January; 36(1):32-40)。
【0072】
しかしながら、この目的に有効であるためには、患者は食事療法を厳密に守らなければならない。この食事療法は脂肪が非常に多く、タンパク質が少なく、炭水化物をほとんど排除する必要があるので、栄養的に完全な食事とするために、ビタミンとミネラルのサプリメントが含まれている。各患者の食事は、患者の年齢、サイズ、活動レベルに基づいて数学的に計算される。患者は通常その食事療法を1~2年間続け、その時点で徐々に食事療法をやめて普通の食事にもどる。この食事療法は、てんかんの子供に特に効果的であることがわかっている。主な欠点は、食事の味が非常に悪いことと、患者の遵守が患者とその家族の側の完全なコミットメントを要求することである。さらに、食事の高脂肪含量は、長期使用中に、アテローム性動脈硬化症などの血管疾患のリスクを増大させる可能性がある。
【0073】
本発明では、ドラベ症候群を有する患者に、化合物の有効用量を単独で投与することまたは非薬物療法と組み合わせて化合物の有効用量を投与することができる。併用療法は、有効用量の化合物を含む製剤が追加の治療と組み合わせて使用される方法である。本明細書で使用する場合、剤の用量、例えばフェンフルラミンの用量とは、その剤を含む対象製剤の治療上有効な用量を指す。「剤」、「化合物」、および「薬物」という用語は、本明細書では交換可能に使用される。一態様では、有効量の活性剤を含むフェンフルラミン製剤を単独で投与すること、またはケトン食などの低炭水化物食と組み合わせて有効量の活性剤を含むフェンフルラミン製剤を投与することができる。本明細書で使用する「有効量」とは、単剤療法または併用療法において、1回量または複数回量で個体に投与した場合、発作の発生を約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、または少なくとも約90%減少させるのに有効な対象化合物の量である。いくつかの態様では、本方法はさらに、ケトン食と同時に、フェンフルラミンを共投与することを含む。ある場合には、本方法は、ケトン食療法中の対象、例えば患者、に該化合物を投与することを含む。いくつかの態様では、本方法は、患者にケトン食療法を投与することをさらに含む。
【0074】
「共投与」および「~と組み合わせて」という用語は、2種類またはそれ以上の治療薬または療法を同時に、並行して、または特定の期限なしに連続して投与することを含む。一態様では、治療薬、例えばある量のフェンフルラミンは、別の療法、例えばケトン食療法と同じ時間に対象の体内に存在するか、または該療法と同じ時間に生物学的効果もしくは治療効果を発揮する。一態様では、治療薬、例えば有効用量のフェンフルラミンと、非薬物療法、例えばケトン食療法は、同じ時間に投与される。有効用量のフェンフルラミン製剤をケトン食療法の食事と同じ時間に投与することができる。他の態様では、治療薬と非薬物療法は異なる時間に投与される。有効用量のフェンフルラミン製剤を、例えば、ケトン食療法の食事の前または後に、投与することができる。特定の態様では、第1の治療薬または療法を、第2の治療薬または療法の投与前(例えば、数分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)に、投与と同時に、または投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に投与することができる。
【0075】
治療薬または非薬物療法の「併用投与」とは、本発明の薬物と非薬物療法の両方が治療効果を有するような時点で該化合物と追加の療法を投与することを意味する。そのような併用投与は、非薬物療法の投与に関して、薬物の同時(すなわち、同じ時間での)投与、事前投与、または事後投与を含み得る。化合物の投与経路は様々であり、代表的な投与経路を以下に記載する。当業者は、本開示の特定の薬物または療法に適した投与のタイミング、順序および投与量を決定するのに困難はないと考えられる。
【0076】
いくつかの態様では、対象化合物、例えばフェンフルラミンと、少なくとも1つの追加の化合物または療法、例えばケトン食療法の食事は、互いに24時間以内、例えば、互いに12時間以内、互いに6時間以内、互いに3時間以内、または互いに1時間以内に対象に投与される。特定の態様では、化合物と療法は、互いに1時間以内に投与される。特定の態様では、化合物と療法は実質的に同時に投与される。実質的に同時に投与されるとは、化合物と療法が互いに約10分以内もしくはそれ未満以内、例えば、互いに5分以内もしくはそれ未満以内、または1分以内もしくはそれ未満以内に対象に投与されることを意味する。
【0077】
本発明の方法は、任意の適切な対象に対しても実施することができる。本発明の対象は、「哺乳動物」または「哺乳類」であり得、これらの用語は、肉食目(例えば、イヌ、ネコ)、げっ歯目(例えば、マウス、モルモット、ラット)、霊長目(例えば、ヒト、チンパンジー、サル)を含めて、哺乳綱のクラス内にある生物を説明するために広く使用される。いくつかの場合には、対象はヒトである。本方法は、男女両方および任意の発達段階(すなわち、新生児、幼児、少年、青年、成人)のヒト対象に適用することができ、特定の態様では、ヒト対象は少年、青年、または成人である。本発明は、ヒト対象からのサンプルに適用できるが、本方法は、トリ、マウス、ラット、イヌ、ネコ、家畜、ウマなど、しかしこれらに限定されない他の動物対象(すなわち、「非ヒト対象」)からのサンプルにも適用できることを理解されたい。
【0078】
本発明の方法は、適切に診断された患者に対して実施することができる。本発明の典型的な態様では、患者は成人であるか、または年齢が約18歳またはそれ以下、約16歳またはそれ以下、約14歳またはそれ以下、約12歳またはそれ以下、約10歳またはそれ以下、約8歳またはそれ以下、約6歳またはそれ以下、約4歳またはそれ以下から約0ヶ月またはそれ以上、約1ヶ月またはそれ以上、約2ヶ月またはそれ以上、約4ヶ月またはそれ以上、約6ヶ月またはそれ以上、約1歳またはそれ以上である。したがって、診断された患者は通常、治療時に生後約1ヶ月またはそれ以上である。
【0079】
本発明の方法で投与されるフェンフルラミンの用量は、薬学的に許容される剤形に製剤化することができ、そうした製剤には、限定するものではないが、以下が含まれる:経口剤形、例えば、口腔内崩壊錠を含む錠剤、カプセル剤、ロゼンジ剤、経口溶液剤またはシロップ剤、経口乳濁液剤、経口ゲル剤、経口フィルム剤、バッカル液剤、粉剤(例えば懸濁用)など;注射剤形;経皮剤形、例えば、経皮パッチ、軟膏剤、クリーム剤など;吸入剤形;および/または経鼻的、経直腸的、経膣的に投与される剤形。そのような剤形は、1日1回の投与、または1日複数回の投与(例えば、1日2回、3回、もしくは4回の投与)用に製剤化することができる。
【0080】
本発明の方法で使用されるフェンフルラミンの剤形は、液体剤形であり得る。ある場合には、液体剤形は水性液体剤形である。液体剤形は、溶液、懸濁液、または乳濁液として経口的に利用可能である。本発明の一局面では、フェンフルラミン製剤は液体製剤として投与され、該液体製剤の正確な測定のために目盛りの付いた経口注射器を用いて投与される。ある場合には、該製剤は、油、非水性溶媒、および不溶解粒子を実質的に含まない。
【0081】
経口溶液剤形は、フェンフルラミンの治療有効用量を、対象のコンディション、性別、および全体的な疾患状態に基づいて対象に投与するのに適切であり得る。場合によっては、経口溶液剤形は、年齢または体重に基づいた投薬に適している。経口溶液剤形は、小児集団にも成人集団にも適切であり得る。ある場合には、経口液体剤形は、嚥下が困難な患者に使用される。
【0082】
本発明によれば、フェンフルラミン活性剤を含む製剤の治療上有効な用量が提供される。ある場合には、該製剤は、単回投与で治療効果を与えるのに適した治療薬の有効用量を含むことができる。治療上有効な用量は、測定および投与され得る可変的な液体投与量であり得る。いくつかの場合には、投与量の範囲は小児集団への投与に適した量を含む。特定の態様では、投与量の範囲は、0.2mL~12mL、例えば0.5mL~6 mLなどを含む。ある場合には、本発明の投与量は、炭水化物カロリー含有量においてケトン食療法に適合している。
【0083】
本発明の方法で使用されるフェンフルラミンの剤形は、フェンフルラミン活性剤を、1つまたは複数の薬学的に許容される希釈剤、担体、アジュバント、緩衝剤、所望の賦形剤などと、任意の混合順序で、製剤処方の分野の当業者に公知の方法で混合することにより調製することができる。液体剤形は、1つまたは複数の任意の薬学的賦形剤を含むことができ、該賦形剤には、懸濁化剤(例えば、ガム、キサンタン、セルロース、界面活性剤)、可溶化剤(例えば、エタノール、水、グリセリン、PEG、プロピレングリコール)、界面活性剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、Span、Tween、セチルピリジン)、防腐剤(例えば、パラベン、ソルベート、安息香酸)、酸化防止剤(例えば、アスコルビン酸、メタ重亜硫酸ナトリウム)、固結防止剤、消泡剤(例えば、シメチコン)、キレート剤(例えば、EDTA)、着色剤、フレーバー、酸性化剤(例えばクエン酸または酒石酸)などのフレーバー助剤、冷却剤(例えば、メントール、キシリトール)、または薬学的に適合したビヒクルもしくは担体が含まれる。
【0084】
本発明の態様に従う製剤の特徴は、甘味料である。「甘味料」という用語は、本発明による製剤の味をより良くするために該製剤に添加される甘味料、好ましくは天然または人工の甘味料を指す。特定の態様では、フェンフルラミン製剤用に選択される甘味料、ならびに該製剤中の甘味料の量は、ケトン食療法に適合している。本発明の態様によれば、甘味料の炭水化物カロリー含有量は、製剤100gあたり炭水化物からゼロ~40カロリーの範囲である。甘味料は、高甘味度の低カロリーまたはノンカロリー甘味料であり得る。本発明に従う甘味料には、合成甘味料、とりわけ、例えば、アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムカリウム、シクラメート、スクラロース;天然甘味料、例えば、ステビアおよびソーマチン;糖アルコール(ポリオール)、例えば、マンニトール、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、イソマルト;ならびに糖ベースの甘味料、とりわけ、例えば、スクロース/水溶液(USPスクロースシロップ;約85重量%のスクロースと約15重量%の水)、マルトース、コーンシロップ、フルクトースシロップ、および関連するフルーツシロップの甘味料が含まれる。製剤中の甘味料の濃度は、0.1%(1mg/ml)~4%(40mg/ml)の範囲であり得る。
【0085】
前記製剤は、香味剤をさらに含むことができる。香味剤は、製剤の全体的な香り、味、好ましさを増大させる可能性がある。適切な香味剤には、例えば、チョコレート、ペパーミント、スペアミント、ブドウ、チェリー、ストロベリー、オレンジ、レモン、ルートビア、スイカなど、または所望のpHもしくは温度で安定している他の香味剤が含まれる。剤形は、0.05%(0.5mg/ml)~1%(10mg/ml)、例えば、0.05%(0.5mg/ml)~0.1%(1mg/ml)の範囲の濃度で香味剤を含み得る。
【0086】
場合によっては、前記製剤は、pH改変剤、例えば緩衝剤を含む。pH改変剤は、製剤のpHを調節、変更または調整する薬学的に適切な作用剤を指す。緩衝剤とは、対象製剤と共に製剤化または送達されたときに、該製剤のpHを維持するように機能する薬学的に適切な作用剤を意味する。バッファーの濃度は、0.01モル~0.5モル、例えば0.03Mであり得る。適切なpH範囲は、pH4.5~6.5、例えば、4.5~5.5および5.0~5.1を含み得る。
【0087】
適切なpH改変剤には、限定するものではないが、以下が含まれる:重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、乳酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、他のマグネシウム塩、水酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム/重炭酸ナトリウム共沈物、アミノ酸とバッファーの混合物、グリシン酸アルミニウムとバッファーの混合物、アミノ酸の酸塩とバッファーの混合物、およびアミノ酸のアルカリ塩とバッファーの混合物。さらなるpH改変剤には、限定するものではないが、以下が含まれる:炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、酢酸カルシウム、グリセロリン酸カルシウム、塩化カルシウム、水酸化カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、および他のカルシウム塩。関心対象の緩衝剤としては、以下が挙げられる:クエン酸ナトリウム(クエン酸との組み合わせ)、酒石酸ナトリウム(酒石酸との組み合わせ)、酢酸ナトリウム(酢酸との組み合わせ)、炭酸ナトリウム(重炭酸ナトリウムとの組み合わせ)、ポリリン酸ナトリウム、ポリリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸三カリウム、メタリン酸カリウム。特定の態様では、緩衝剤は、例えば目標pHに応じて、クエン酸緩衝剤またはクエン酸-リン酸緩衝剤である。ある場合には、緩衝剤はクエン酸三カリウムとクエン酸である。例示的なバッファーには、クエン酸/リン酸バッファー、酢酸バッファー、クエン酸バッファー、またはリン酸バッファーが含まれる。
【0088】
さらに、様々な添加剤をそのような液体剤形に取り入れて、安定性、無菌性、および/または等張性を高めることができる(例えば、糖、塩化ナトリウムなど)。アンビシン(ambicin)などの抗菌防腐剤、抗酸化剤、キレート剤、および追加の緩衝剤を添加してもよい。製剤のpHを防腐剤の最適活性の範囲内に緩衝化することができる。様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン(パラヒドロキシ安息香酸エステルまたは4-ヒドロキシ安息香酸エステル)、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などは、微生物の活動の防止を強化することができる。防腐剤は、遊離酸またはナトリウムもしくはカリウム塩であり得る。
【0089】
適切な防腐剤には、例えば、以下が含まれる:パラベン(メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、安息香酸、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クレゾール、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、酢酸フェニル水銀、ホウ酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、ソルビン酸、チメロサール、プロピルパラベン、ミリスチル-γ-ピコリニウムクロライド、メチルパラベン、プロピルパラベンおよび第4級アンモニウム化合物。
【0090】
本製剤は、微生物の増殖を防止するのに有効な量の防腐剤を含むことができる。防腐剤または防腐剤の組み合わせ、例えば、遊離酸または水溶性塩(ナトリウムまたはカリウム塩)としてのメチルパラベンとエチルパラベンの組み合わせは、該製剤中に0.01%(0.2mg/ml)~0.5%(5mg/ml)、例えば、遊離酸基準で0.01%(0.1mg/ml)~0.2%(2mg/ml)の範囲の濃度で存在し得る。ある場合には、該製剤は、0.2%(2mg/ml)のメチルパラベンと0.02%(0.2mg/ml)のエチルパラベンの組み合わせ;または0.1%(1mg/ml)のメチルパラベンと0.01%(0.1mg/ml)のエチルパラベンの組み合わせを含む。メチルパラベンとエチルパラベン(遊離酸または水溶性塩のいずれかとして)は、20:1~2:1の範囲、例えば10:1(メチルパラベン:エチルパラベン)の比で存在し得る。
【0091】
さらに、粘稠化剤または粘度調整剤を製剤中で使用することができる。粘稠化剤は、例えば、懸濁している粒子の沈降を抑え、漏出の可能性を低くし、注入中のコントロールを改善し、製剤の製造を改善し、製剤の嗜好性を改善し、また、例えば経口注射器による、製剤の送達を改善するために使用され得る。ある場合には、粘稠化剤は、適切な粘度、例えば100~200cPの粘度範囲、例えば150cPの粘度を、製剤に提供する。
【0092】
本製剤で使用するための粘稠化剤には、ポリマーおよび非ポリマーの水混和性または水溶性粘稠化剤が含まれる。いくつかの場合には、個別にまたは組み合わせて使用される粘稠化剤として、メチルセルロース、ポリエチレングリコール(PEG)400、グリセリン、キサンタンガム、アルファ化デンプン、ヒドロキシエチルセルロース(250 HX)、ポビドン、ポビドンK-90などが挙げられる。場合によっては、粘稠化剤は、以下を含むことができる:アセチル化アジピン酸架橋デンプン、アセチル化リン酸架橋デンプン、アセチル化酸化デンプン、アセチル化デンプン、酸処理デンプン、寒天、アルギン酸またはその薬学的に許容される塩および誘導体、アルカリ処理デンプン、アルギン酸アンモニウム、アラビノガラクタン、漂白デンプン、アルギン酸カルシウム、カラギーナン、デキストリン、加工デンプン、リン酸架橋デンプン、酵素処理デンプン、ゲランガム、グアーガム、アラビアガム(アカシア)、グリセロール、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルリン酸架橋デンプン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルデンプン、カラヤガム、コンニャクガム、ローカストビーンガム、メチルエチルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレンオキシド、リン酸化デンプン、酸化デンプン、ペクチン、リン酸モノエステル化リン酸架橋デンプン、加工したキリンサイ(eucheuma)海藻、アルギン酸プロパン-1,2-ジオール、コポビドン、アルギン酸ナトリウム、オクテニルコハク酸デンプンナトリウム、タラガム、トラガカント、またはそれらの組み合わせ。セルロースまたは誘導体化セルロースなどの多糖ポリマーも炭水化物と見なされるが、セルロースを構成するグルコース単位間のβアセタール結合を考えると、それらはヒトによって消化されず、食物繊維と呼ばれるものを構成することに留意されたい。アラビアガムまたはキサンタンガムなどのガムは、複雑な多糖構造を持つ可溶性の食物繊維であり、もともとヒトにも動物にも消化されにくい。それらの非消化性を考えると、それらは、代謝のためにかなりの量の炭水化物を提示しないので、ケトン食療法と不適合ではない。いくつかの態様では、該製剤は、容易に消化できる炭水化物が実質的に存在しない粘稠化剤を含む。
【0093】
粘稠化剤は、所望の粘度範囲、例えば1%溶液の場合では1500~5000mPa.s(cP)をもたらす任意のグレードのものであり得る。特定の態様では、粘稠化剤の濃度は、0.2%(2mg/ml)~5%(50mg/ml)、例えば、0.3%(3mg/ml)~2%(20mg/mL)、0.4%(4mg/mL)~1%(10mg/mL)などの範囲である。
【0094】
本発明の製剤および投与量は、ケトン食療法に適合している。ある場合には、該製剤の単回投与の総炭水化物カロリー含有量は、ゼロ~5炭水化物カロリーの範囲である。特定の態様では、対象製剤の単一成分は、ゼロ~2炭水化物カロリーの炭水化物カロリー含有量を有する。いくつかの態様では、該製剤は、栄養性の/容易に消化できる/血糖性の炭水化物を欠いている。
【0095】
いくつかの態様では、前記製剤は、治療有効量のフェンフルラミン活性剤と薬学的に許容されるビヒクルとを含む液体フェンフルラミン製剤であり、該製剤は、容易に消化できる炭水化物を含まず、かつ、炭水化物渇望を軽減させ、したがって、ケトン食療法の遵守を促進する。いくつかの態様では、該活性剤は、フェンフルラミン塩基またはその薬学的に許容される塩もしくは複合体である。いくつかの態様では、フェンフルラミン活性剤はフェンフルラミンの薬学的に許容される塩である。いくつかの実施形態では、フェンフルラミンの薬学的に許容される塩はフェンフルラミン塩酸塩である。
【0096】
いくつかの態様では、液体フェンフルラミン製剤は水性製剤である。いくつかの態様では、該水性製剤は甘味料を含む。いくつかの態様では、甘味料は少なくとも低カロリーの甘味料である。いくつかの態様では、甘味料は容易に消化できる炭水化物の供給源ではない。いくつかの態様では、甘味料はノンカロリー甘味料である。いくつかの態様では、甘味料はスクラロースである。
【0097】
本発明において、フェンフルラミンは、上記のように、水溶液中で安定であり得る。場合によっては、フェンフルラミン製剤は、室温または5℃~60℃の範囲の温度で保存した場合、6~60ヶ月間安定である。ある場合には、該製剤はpH4~7の範囲に製剤化される。該製剤は、その保存可能期間の間、製剤の安定性を維持するのに適した容器に入れて保存することができる。
【0098】
本発明の方法で用いるフェンフルラミンの用量は、本発明の1つまたはそれ以上の方法でその用量を用いるための使用説明書を含む、キットの形で提供され得る。特定の態様では、該キットは、1つまたは複数の共治療薬を含む剤形をさらに含むことができる。
【0099】
本発明は、以下の実施例でさらに説明される。
【実施例
【0100】
以下の実施例は、本発明を構成および使用する方法の完全な開示および説明を当業者に提供するために提示され、本発明者らが自分たちの発明と見なすものの範囲を限定することを意図したものではなく、また、以下の実験が実施された全てのまたは唯一の実験であると表明することを意図したものでもない。使用される数値(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力が払われたが、若干の実験誤差および偏差を考慮する必要がある。特に明記しない限り、部は重量部であり、分子量は重量平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧またはほぼ大気圧である。
【0101】
実施例1
薬物製品[フェンフルラミン、経口溶液剤]の成分
原薬
賦形剤との原薬の適合性
製剤用賦形剤との溶液中フェンフルラミン塩酸塩の適合性は、開発安定性試験を通じて確立された。様々な成分の組み合わせを含む多数の製剤を、長期および加速保存条件で評価した。さらに、意図した市販製剤の、ICHに準拠した安定性試験のこれまでの結果は、製剤用賦形剤との原薬の適合性に関するさらなる証拠を提供する。
【0102】
原薬の物理化学的特性
フェンフルラミン塩酸塩原薬の物理化学的性質は、以下に要約される。該薬物製品の性能および製造性に関連する特性は、以下で説明される。
【0103】
固体の状態
フェンフルラミン塩酸塩は、針状の形態を持つ単一形(形態1)として存在する結晶性の物質である。この原薬は固体状態で化学的かつ物理的に安定しており、多形スクリーニング試験または加速および長期安定性試験で他の多形体は観察されていない。
【0104】
水溶解度
この原薬の水溶解度は、pHの関数として適度に変化する。25℃では、その溶解度はpH1.7での約25mg/mlからpH6.7での50mg/mL超までの範囲である。製剤中でのその濃度よりも10倍超高い溶解度のために、長期冷蔵などの通常の保存条件下では、溶液からの原薬の沈殿は起こりにくい。5℃で1ヶ月超および-20℃で数日間保存した薬物製品製剤は、フェンフルラミンアッセイで有意な変化を示さなかった。
【0105】
生理学的温度(37℃)および1.7~6.7のpH範囲での溶解度は、54mg/mL~96mg/mLの間で変化する。
【0106】
粒径
フェンフルラミン塩酸塩原薬は非微粉化原薬である。5つのGMPバッチ(Onyx社で製造された2つの臨床バッチとAptuit社で製造された3つの登録バッチ)から得られた粒径パラメータの範囲を表1に示す。製剤中のフェンフルラミン塩酸塩の濃度に比べてその溶解度が高いため、粒径が薬物製品製造プロセスに大きな影響を与えるとは予想されない。これは、製剤用ビヒクルへの原薬の迅速な溶解を一貫して示した製造経験により確認された。さらに、粒径中央値(D50)が60μmで、90パーセンタイル(D90)が250μmの原薬の実験バッチを、同じバッチの微粉化部分と比較して評価したところ、製剤用ビヒクルへの完全な溶解に必要とされる時間に差異は観察されなかった。
【0107】
(表1)フェンフルラミン塩酸塩の臨床バッチおよび登録バッチの粒径範囲
【0108】
溶液安定性
強制分解試験は、APIが水溶液中で非常に安定していることを示した。0.5mg/mL~5mg/mLの濃度範囲のフェンフルラミン塩酸塩の緩衝水溶液の熱安定性が初期の開発中に検討された。表2、表3、および表4に示すデータは、フェンフルラミン塩酸塩溶液が、pH6.8、60℃で保存した場合、少なくとも6ヶ月間安定であることを示している。
【0109】
(表2)0.5mg/mLフェンフルラミン塩酸塩緩衝水溶液pH6.8の安定性
【0110】
(表3)2.5mg/mLフェンフルラミン塩酸塩緩衝水溶液pH6.8の安定性
【0111】
(表4)5mg/mLフェンフルラミン塩酸塩緩衝水溶液pH6.8の安定性
【0112】
賦形剤
フェンフルラミン経口溶液剤中の賦形剤には、防腐剤、粘性増強剤、甘味料、緩衝剤、および香味剤が含まれる。該製剤に使用される全ての賦形剤は、認可された薬学的製品中でよく使われている賦形剤である。溶液中での原薬との適合性はリアルタイム安定性データにより実証された。
【0113】
薬物製品製剤の性能と製造性に影響を与える可能性のある各賦形剤の特性を、以下で簡単に説明する。
【0114】
メチルパラベンナトリウム
メチルパラベンナトリウム(p-ヒドロキシ安息香酸メチルナトリウム)は、米国薬局方-国民医薬品集(USP-NF)および欧州薬局方(Ph. Eur.)のモノグラフを含む公定書収載(compendial)の賦形剤である。それは、4-ヒドロキシ安息香酸メチルのナトリウム塩である。メチルパラベンは、遊離酸とナトリウム塩の両方として、経口、外用および注射用の薬学的製剤中で一般的に用いられる防腐剤であり、pH4~8の範囲でその抗菌活性を示す。パラベン防腐剤は、それらの抗菌作用の相乗効果が知られているため、通常は組み合わせで使用される。
【0115】
メチルパラベンナトリウムは、0.23%(0.2%のメチルパラベンに相当)の濃度で、0.023%のエチルパラベンナトリウム(0.02%のエチルパラベンに相当)と組み合わせて製剤中で使用される。これらの防腐剤レベルは、防腐剤効力試験(PET)のデータに基づいて選択された。フェンフルラミン製剤およびプラセボ中のメチルパラベンの濃度は、不活性成分データベースに載っているFDA承認の経口薬学的製品で使用される範囲内である。
【0116】
メチルパラベンとその塩の溶解度はpH依存性であり、酸への溶解度は低く、アルカリ性媒体への溶解度は高くなる。遊離酸の水への溶解度は、20℃で0.25%(1/400)、25℃で0.30%である(PubChem)。メチルパラベンナトリウムは、遊離酸よりも高い水溶解度を有し、薬物製品製剤中により迅速に溶解することがわかった。
【0117】
メチルパラベンのナトリウム塩は、製品がうっかり低温で長期間保存された場合に、防腐剤の沈殿のリスクを最小限に抑えるために選択された。メチルパラベンとエチルパラベンのナトリウム塩(組み合わせ)を用いると、初期の開発中に5℃で1ヶ月保存した後、薬物製品製剤中に沈殿の兆候は見られなかった。しかし、その後に、若干の沈殿(最大20%のメチルパラベン)が温度サイクル試験で観察されたが、防腐剤の効力への影響はなかった。長期保存安定性試験では、沈殿がまったく観察されなかった。
【0118】
メチルパラベンナトリウムは高pHで加水分解を受けるが、pH6未満では許容できる安定性を有する。この防腐剤の分解は、文献のデータ(Kamada, 1973)と一致して、より高いpHで増加することが観察された。防腐剤の分解を最小限に抑えるように薬物製品のpHを最適化した。フェンフルラミン経口溶液の意図した市販製剤は、目標のpH5.0に緩衝化したところ、これまでに分解物レベルの有意な増加は観察されていない;代表的な臨床製剤では最大24ヶ月の安定性データを、意図した市販製剤では18ヶ月の安定性データを示した。
【0119】
メチルパラベンナトリウムは適度に吸湿性であり、最大5%の水分を含む可能性がある。製造工程では、水分量の補正が必要である。
【0120】
メチルパラベンナトリウムは、わずかに舌をやくような味がする。
【0121】
エチルパラベンナトリウム
エチルパラベンナトリウム(p-ヒドロキシ安息香酸エチルナトリウム)は、米国薬局方-国民医薬品集および欧州薬局方のモノグラフを含む公定書収載の賦形剤である。それは、4-ヒドロキシ安息香酸エチルのナトリウム塩である。エチルパラベンとそのナトリウムおよびカリウム塩は、経口および外用薬学的製剤の防腐剤として使用されている。パラベンの水への溶解度は鎖長とともに低下するので、より一般的に使用されるプロピルパラベンと比較してエチルパラベンの水溶解度は高いため、フェンフルラミン経口溶液剤の第2のパラベン防腐剤として使用するためにエチルパラベンを選択した。
【0122】
最近まで、エチルパラベンは米国では遊離酸としてのみ入手可能であった。ヨーロッパでは、遊離酸とナトリウム塩の両方が入手可能であり、薬学的製品中で普通に使用されている。エチルパラベン遊離酸の溶解度は25℃で0.08%、20℃で0.07%である(PubChem)。エチルパラベンナトリウムは、遊離酸よりも水への溶解度が高く、薬物製品製剤中により速く溶解することがわかった。エチルパラベンナトリウムは、0.23%のメチルパラベンナトリウムと組み合わせて0.023%の濃度で、製剤中で使用される。これらの濃度は、防腐剤効力試験(PET)からのデータに基づいて選択された。この試験では、より低い濃度レベルも評価した。
【0123】
パラベンのナトリウム塩は、製品がうっかり低温で長期間保存された場合に、防腐剤の沈殿のリスクを最小限に抑えるために選択された。メチルパラベンとエチルパラベンのナトリウム塩(組み合わせ)を用いると、初期の開発中に5℃で1ヶ月保存した後、薬物製品製剤中に沈殿の兆候は見られなかった。しかし、その後に、若干の沈殿(最大5%のエチルパラベン)が温度サイクル試験で観察されたが、防腐剤の効力への影響はなかった。長期保存安定性試験では、沈殿がまったく観察されていない。
【0124】
メチルパラベンと同様に、エチルパラベンは溶液中で加水分解を受ける。pHが高くなると分解速度が増加する。薬物製品製剤のpHを、適度な溶解性を維持しながら、防腐剤の分解を最小限に抑えるように最適化した。防腐剤の分解産物の有意な増加は長期安定性試験で観察されていない。
【0125】
薬物製品製剤中の防腐剤系の性能は、経口製品のための公定書収載防腐剤効力試験(欧州薬局方5.1.3/米国薬局方<51>)を用いて確認した。
【0126】
ヒドロキシエチルセルロース(HEC)
ヒドロキシエチルセルロースは、米国薬局方、欧州薬局方および日本薬局方の調和合意したモノグラフを含む公定書収載の賦形剤である。それは一般に、粘度上昇(粘稠化)剤および懸濁化剤として薬学的液体製剤中で、ならびに結合剤およびコーティング剤として固体剤形において使用されている。フェンフルラミン経口溶液剤では、それは粘稠化剤として使用される。
【0127】
HECは非イオン性の半合成水溶性ポリマーである。それはセルロースの部分置換されたポリ(ヒドロキシエチル)エーテルであり、置換度と分子量に応じて広範囲の粘度を有し、様々なグレードで入手可能である。フェンフルラミン経口溶液剤で使用されるグレード(250HX)は、1%水溶液の場合では1500~2500mPa.sの指定された粘度範囲を有する。この高粘度グレードを使用すると、0.5%の濃度(1mlあたり5mgのHEC)で薬物製品の目標粘度範囲を達成することが可能である。その量は、FDA承認の経口投与製品での使用の範囲内である。
【0128】
HECは冷水と温水に溶解するが、他の親水性ポリマーと同様に、該粒子は、完全に膨潤してから最終的に溶解する前に含水した時点で凝集する傾向がある。それは、比較的高濃度のイオン成分に耐え、また、製剤に使用される他の賦形剤との不適合性も知られていない。
【0129】
HEC溶液は無色透明で味がない。
【0130】
HECは溶液中で安定であるが、低pHでは酸による加水分解を受けやすく、粘度の低下につながる可能性がある。アルカリ性条件下では酸化的分解を起こすことがある。
【0131】
スクラロース
スクラロースは、非栄養性甘味料としてFDAによって承認された半合成甘味料であり、食品および薬学的製剤中でよく使用されている。スクラロースは、フェンフルラミン製剤の甘味料として0.1%(1.0mg/mL)の濃度で使用され、これは、FDA承認の薬学的製品において使用される範囲内にある。
【0132】
スクラロースは水溶性であり、かつ、その溶液は無色でありかつ甘味がある。
【0133】
香味剤
チェリーフレーバーパウダーSN932130(International Flavors and Fragrances(IFF)社,オランダ)は、食品、飲料、薬学的製品に使用される独自開発の混合香味剤である。該製剤には0.1%(1mg/ml)の濃度で使用される。
【0134】
クエン酸カリウム
クエン酸カリウム(クエン酸三カリウム)はクエン酸の三カリウム塩である。それは、米国薬局方-国民医薬品集および欧州薬局方のモノグラフを含む公定書収載の賦形剤である。それは、アルカリ化剤または緩衝剤として食品、飲料、薬学的製品に使用されている。クエン酸カリウムは水に非常に溶けやすく、その水溶液は無色で塩味がする。クエン酸カリウムは、一般に安全とみなされる(GRAS)物質である。
【0135】
クエン酸
クエン酸はGRAS物質であり、米国薬局方-国民医薬品集および欧州薬局方のモノグラフを含む公定書収載の賦形剤である。それは緩衝剤、酸性化剤、およびフレーバー助剤として食品、飲料、薬学的製品に使用されている。フェンフルラミン経口溶液剤では、それはクエン酸カリウムと組み合わせて緩衝剤として使用される。
【0136】
クエン酸は水に溶けやすく、酸味があり、酸味の強さは濃度に依存する。
【0137】
灌注用水
欧州薬局方の灌注用水(米国薬局方の滅菌灌注用水の要件をも満たす)は、製剤用ビヒクルとして使用されており、薬物製品組成物の95%超を占める。
【0138】
実施例2
製剤[フェンフルラミン、経口溶液剤]開発
概説
ドラベ症候群(DS)の以前の非盲検臨床試験は、投与前に液体ビヒクルに分散させるための固体経口剤形(APIとラクトースのブレンドを含むカプセル)を用いて実施された。その後の開発活動は、経口投与用の液体製剤の製造を目的としたものであり、その液体製剤は、全投薬範囲にわたって小児または成人への使用に適するフェンフルラミン塩酸塩の単一濃度を有し、複数回使用ボトルに室温で保存される。その他の目標製品の特性とそれらの正当性については、以下で簡単に説明する。
【0139】
水性溶液剤:
水性の経口溶液剤は、一般的に、新生児ほどの幼児に受け入れられる剤形と考えられる。液体剤形は、年齢または体重に基づいた投薬に対して柔軟性を提供する。目標の投与量範囲(0.5mL~6mL)は、用量測定の正確さを損なうことなく、幼児に投与するのに適した少なさである。
【0140】
他の小児用経口剤形(懸濁液剤、分散性粉剤または顆粒剤、および口腔内崩壊錠)と比較して、経口溶液剤は、固体粒子が存在しないため、窒息や誤嚥のリスクが最も低くなる。
【0141】
経口溶液剤はまた、胃内投与および経鼻胃管投与に適合する可能性が最も高い。
【0142】
水性ビヒクルは、受け入れられる口当たりをもたらす。
【0143】
保存加工:
複数回投与容器に入った水性製剤は、微生物の増殖を防ぐ必要がある。
【0144】
緩衝化:
緩衝系は、pHを、防腐剤の有効性、溶解性、および安定性に適した範囲に維持するために必要である。
【0145】
甘味および香味の追加:
薬物製品は、活性成分由来および/または他の製剤成分由来、例えば防腐剤由来の潜在的な好ましくない味、および緩衝塩からの塩味をマスクすることにより、小児患者への受容性を改善するために、甘味および香味が追加される。
【0146】
わずかな粘性:
液体製剤の粘度を上げると、偶発的な漏出の可能性が減り、また、注入時のコントロールが改善されてあふれ出るのを防止できる。さらに、舌との接触面積が少なくなることにより、味のマスキングに寄与すると考えられる。
【0147】
非着色:
プラセボおよび活性溶液剤の盲検法を確実にするために、臨床製品に赤い色素を含めた。しかしながら、意図した市販製剤には、着色剤は不要である。
【0148】
0.5~5mg/mLのフェンフルラミン塩酸塩濃度を最初に評価した。用量測定の正確さと投与の容易さのために、意図した市販製品では目標濃度として2.5mg/mlを選択した。その理由は、1回の投与量が0.5ml以上で6ml以下になるからである。その後、第3相臨床試験での用量の盲検化ができるように、同じ液体製剤を用いて2つの追加の濃度(1.25mg/mlおよび5mg/ml)を開発した。
【0149】
フェンフルラミン塩酸塩の高い水溶性により、目標の製品濃度で水溶液を製剤化することが可能になった。
【0150】
強制分解試験は、APIが水溶液中で非常に安定していることを示した。これは、高温および中性pH(pH6.8緩衝溶液)で短期溶液安定性試験を実施することにより確認された。熱ストレス試験からの溶液安定性データは、0.5mg/ml~5mg/mlの濃度範囲をカバーした。フェンフルラミンは、pH6.8の水溶液中60℃で保存した場合、少なくとも6ヶ月間安定であった。
【0151】
したがって、APIの水への安定性を考慮に入れて、製剤開発は、このセクションで先に述べた目標の製品特性を付与するための機能的賦形剤の選択と、これらの賦形剤の適切な濃度範囲の特定に焦点を合わせた。
【0152】
賦形剤を選択するにあたって、選択肢は、一部の患者が発作のコントロールに役立つためにケトン食療法の状態に置かれている、ケトン食療法の制約に適応する賦形剤に意図的に限定された。水溶液中の可能性のある製剤用賦形剤とのAPIの適合性を評価するために、初期のプロトタイプ製剤の短期安定性試験を実施した。その後、臨床プログラムと並行して長期安定性試験で安定性を確認した。利用可能なデータは、提案された製剤が長期保存で安定である、という信用性を与える。
【0153】
製剤用ビヒクルの選択
水中原薬水溶性と溶液安定性とが優れているため、緩衝化された水性ビヒクルを選択した。
【0154】
防腐剤系の開発
複数回投与容器内の水溶液は、一般的に抗菌防腐が必要である。水性経口液でよく使用される2つの防腐剤系(ソルビン酸およびパラベン組み合わせ)を、フェンフルラミン経口溶液剤プロトタイプで防腐効果と安定性について評価した。防腐剤系を含む製剤は、防腐剤フリーの製剤とも比較した。防腐剤の最適活性の範囲内のpHに該製剤を緩衝化した。5つのプロトタイプ製剤は全て、欧州薬局方5.1.3に概要が示される経口液の防腐基準に最初に合格した。すなわち、細菌接種については14日間で少なくとも3対数減少、真菌については1対数減少、28日間で増加なし。表5は、個々の開発バッチの性能をまとめたものである。ソルビン酸含有製剤は、防腐剤フリーの製剤に等しい性能を示し、この防腐剤は製剤に機能的防腐効果を与えなかったことを示唆している。パラベンを含む製剤は、防腐剤フリーの製剤よりも真菌、酵母、カビに対する防腐効果が優れており、より要求の厳しい使用中および貯蔵寿命試験の終わりにより良い防腐を与える可能性が高かった。したがって、パラベンをベースとした防腐剤系が、さらなる開発と最適化のために選択された。
【0155】
(表5)フェンフルラミン塩酸塩経口液プロトタイプ製剤の防腐効果
【0156】
パラベン(p-ヒドロキシ安息香酸エステルまたは4-ヒドロキシ安息香酸エステル)は、pH4~8の範囲で有効な広域スペクトル防腐剤である。相乗効果のため、通常は組み合わせが使用される。メチルパラベンとエチルパラベンの組み合わせをフェンフルラミン塩酸塩溶液のプロトタイプ製剤で評価した。メチルパラベンは最もよく使用されており、パラベン防腐剤の中で水溶性が最も高い。エチルパラベンは、それほど使用されていないが、鎖長のより長い代替パラベン(プロピルパラベンおよびブチルパラベン)と比較して水への溶解度が高いために用いられた。2つのレベルの防腐剤濃度を評価した:0.2%(2mg/ml)のメチルパラベンと組み合わせた0.02%(0.2mg/ml)のエチルパラベン;および0.1%(1mg/ml)のメチルパラベンと組み合わせた0.01%(0.1mg/ml)のエチルパラベン。両レベルのプロトタイプは、ゼロ時点で欧州薬局方5.1.3の受け入れ基準を満たしていたが、低レベルのプロトタイプでは真菌種に関して一貫して弱点が観察された。これは、これらのプロトタイプが、予測された保存可能期間の終了まで十分な防腐効果を保持できない可能性があることを示唆している。これらのデータに基づいて、高い方の防腐剤レベル(遊離酸ベースで、0.2%のメチルパラベンと0.02%のエチルパラベン)を臨床製剤のために選択した。防腐剤効果に関する長期安定性データから、選択した防腐剤レベルの有効性を確認した。
【0157】
メチルパラベンとエチルパラベンは、それぞれ2.5mg/mlおよび0.8mg/mlの溶解度を有し、薬物製品製剤に使用される濃度で溶解しやすい。しかしながら、パラベン遊離酸を使用した場合には、防腐剤を溶解する上での困難が観察された。特にプロトタイプを2~8℃で保存した場合には、沈殿も検出された。その後、メチルパラベンとエチルパラベンの遊離酸を対応するナトリウム塩に置き換えた。それは、ナトリウム塩がより高い溶解度を有し、室温で製剤用ビヒクルにより速く溶解するためである。開発研究中または長期安定性試験中に、これらの塩に関して、溶解または沈殿の問題は観察されなかった。しかし、その後、少量の沈殿物(メチルパラベン含有量の20%未満およびエチルパラベン含有量の5%未満)が、薬物製品の冷蔵および/または冷凍を含む温度サイクル試験で観察された。沈殿物の存在は防腐剤効果に影響を与えず、全てのサンプルがPET受け入れ基準を満たした。薬物製品の保存条件は、管理された室温である。
【0158】
粘稠化剤の選択
100rpm(回転スピンドル粘度計を使用)で約100~200mPa・s(100~200cP)の粘度範囲を製品のための目標として設定した。この粘度範囲では、経口注射器を用いた正確な送達(水漏れなし)が可能であり、過剰な空気の閉じ込めなどの潜在的な製造上の問題が発生せず、製剤の嗜好性が向上する可能性があるためである。この範囲は、適切な粘度を示すようであった市販の小児用経口液体製品を評価した後で選択された。該製品の測定された粘度は、約150mPa.s(150cP)であった。
【0159】
最初に、ポリマーと非ポリマーの両方の水混和性または水溶性粘稠化剤を評価した。これらには、ポリエチレングリコール(PEG)400とグリセリンの組み合わせ、キサンタンガム、アルファ化デンプン、ヒドロキシエチルセルロース、およびポビドンが含まれていた。その後、親水性ポリマーのキサンタンガム、ポビドンK-90、およびヒドロキシエチルセルロースに評価の焦点を合わせたが、それは、PEG、グリセリンなどの液体賦形剤と比較して、それらの濃度依存性粘度の範囲が広いためである。
【0160】
フェンフルラミン塩酸塩製剤中の3種類のポリマーの粘度上昇効果を比較するために、各粘稠化剤の様々な濃度を含む小バッチを、緩衝化かつ保存加工されたビヒクル中に調製して、粘稠化剤と該製剤の他の成分との間の潜在的な相互作用が確実に考慮されるようにした。これらの実験は1Lのスケールで実施した。保存加工され緩衝化されたビヒクルを撹拌して渦を作り、この渦の中に乾燥粉末形態の粘稠化剤を徐々に加えた。各ポリマーの分散のしやすさ、凝集する傾向、(ビヒクルへの完全な溶解の尺度としての)その最大粘度に達するまでの時間の目視観察を行って記録し、溶液の粘度を測定した。
【0161】
試験した3種類の賦形剤は全て、保存加工され緩衝化されたビヒクルを、必要とされる粘度範囲にまで粘稠化させることができた。ヒドロキシエチルセルロースは、水和させて最終粘度に到達させるまでに要した時間が最も短く、渦の中にまき散らしたとき溶液中に均一に分散し、水和させるのに約10分かかった。キサンタンガムは、バルク溶液に添加するのに同様の時間を要したが、最終粘度に達するまでに約45分かかった。キサンタンガムは、高剪断混合を使用しないと均一に水和させることが難しいとわかり、一部の水和しなかった塊がバッチの廃棄につながることもあった。ポビドンは溶液に添加するまでにかなりの時間がかかったが、それは、必要とされる粉末の量がより多く、形成された塊を分散させるまでに数時間の混合を要したためである。ひとたび分散すると、ポビドンは最終粘度に達するまでに約10分かかった。
【0162】
目標粘度に必要なレベルの3種類の増粘剤(キサンタンガム、ポビドンK-90、およびヒドロキシエチルセルロース250 HXについて、それぞれ0.3%、5%、および0.5%)を含むプロトタイプを、薬物製品用に開発されているHPLCアッセイ法への干渉について評価した。ポビドン含有製剤は、おそらくポリマーの濃度が比較的高いために、HPLCカラムの閉塞を起こしてダメージを与えた。該製品をさらに希釈すれば、この方法の感度が低下したであろう。
【0163】
粘度データ、フェンフルラミン分析法に対する干渉の欠如、および処理工程の観察に基づいて、ヒドロキシエチルセルロースを薬物製品製剤の増粘剤として選択した。それは、分散および水和するのが最も容易であり、溶解するのが最も速く、添加量あたりの粘度上昇の点で最も効率的であったからである。選択された濃度は0.5%であり、これは約150cPの粘度をもたらす。
【0164】
甘味料の選択
ケトン食療法(低炭水化物療法)は、従来の抗てんかん薬治療が効きにくい発作のてんかん患者に使用されることがあるため、フェンフルラミン塩酸塩経口溶液剤のための甘味料選択の取り組みは、マンニトール、マルチトール、マルトデキストリン、ソルビトール、およびスクラロースを含む、高甘味度ノンカロリーまたは低カロリー甘味料に焦点を合わせた。糖アルコール(ポリオール)は、それらの潜在的な緩下剤効果と、子供でのそれらの受容性に関するデータの利用が限られているため、直ちに排除された。スクラロースは、その幅広い受容性、極めて低い濃度でのその使用を可能にする高い甘味力、および良好な味覚プロファイル(後味なし)のために選択された。FDAの不活性成分データベースに載っている経口液体製品中のスクラロースの濃度は、0.1%~4%の範囲である。フェンフルラミン塩酸塩のために選択された濃度(0.1%)は、使用範囲の下端にあり、該製品を幼児の口に合うようにするための甘味付けの必要性と、過剰摂取のリスクにさらすほどにそれを魅力的にしすぎる可能性とのバランスをとることを意図されていた。
【0165】
香味剤の選択
フェンフルラミン適合性は、ストロベリー、チェリー、およびオレンジのフレーバーを含む2成分混合物で評価した。柑橘類のフレーバーには、特に酸性pH値で、良好な味覚マスキング特性が一般的にあると考えられたため、初期の開発プロトタイプはオレンジフレーバーを用いて製剤化した。ところが、製剤のために選択されたpH範囲では、オレンジフレーバーは完全には溶解せず、わずかに濁った外観を呈した。香味剤をチェリーに変更したところ、それは該製剤に適合していることが判明し、改善された透明な外観をもたらした。チェリーフレーバーは、味覚プロファイルが広範なpH範囲に適合している、広く受け入れられているフレーバーである。供給元の推奨に基づいて、0.05%~0.5%の濃度範囲を評価した。特に慢性的な使用の場合には、ニュートラルまたはマイルドなフレーバーが一般的に好まれるため、臨床製品のために0.05%が最初に選択された。この製剤をガラス瓶に入れ、当初は短期保存期間を指定した。その後、濃度を0.1%に上げた。
【0166】
緩衝系の選択
pH4.5~6.5の範囲を製剤開発研究において検討した。目標pHに応じて、クエン酸バッファーまたはクエン酸-リン酸バッファーのいずれかを用いて、様々なプロトタイプを調製した。これらのプロトタイプを、安定性に関するフェンフルラミンアッセイおよび関連物質、ならびに防腐剤アッセイおよび関連物質について試験し、最大1ヶ月冷蔵した後で沈殿について視覚的に評価した。フェンフルラミン塩酸塩は、全pH範囲にわたって安定していたが、パラベン防腐剤の分解生成物が、製剤のpHの増加につれて、ますます多量に観察された。初期安定性データに基づいて、5.0の目標pH(範囲:4.5~5.5)が選択されたが、その理由は、それが、2~8℃で保存した製品に沈殿を生じさせずに、長期および加速安定性条件で防腐剤の分解を最小限に抑えたためである。薬物製品製剤中のバッファー成分はクエン酸三カリウムとクエン酸である。クエン酸カリウムをクエン酸ナトリウムの代わりに使用して、パラベンナトリウム塩との共通イオン効果を回避した。クエン酸ナトリウムを含むプロトタイプでは、パラベンナトリウム塩が沈殿の一因となった可能性がある。
【0167】
開発安定性試験
開発安定性試験は、臨床製剤の安定性を確認するために、該pH範囲の両端で、および防腐剤の低レベルと高レベルの両方で、選択された組成物を用いて実施した。製剤開発試験で評価された組成物のマトリックスを表6に示す。
【0168】
(表6)防腐剤組み合わせの組成
【0169】
長期および加速保存条件での製剤DB501625.024およびDB501625.026の安定性データを評価した。低パラベン製剤(DB501625.025およびDB501625.027)は、防腐効果についてのみ評価した。これらの開発安定性試験からの安定性データを以下で説明する。
【0170】
25℃/60%RHで18ヶ月保存した後、外観、薬物アッセイ、防腐剤アッセイ、pHまたは粘度に有意な変化または傾向は観察されなかった。防腐剤の分解生成物のわずかな増加が、高pH製剤(pH5.5)では経時的に観察されが、低pH製剤(pH4.5)では観察されなかった。この試験の最初の3ヶ月後には、総不純物の報告に違いが認められた。合成不純物はこの試験の最初の3ヶ月間の総不純物の合計に含めなかった。この報告の違いは、3ヶ月後の不純物のわずかな増加であるように見えるものを説明している。試験期間全体を通して、薬物関連不純物レベルの傾向または変化は観察されなかった。
【0171】
加速保存条件(40℃/75%RH)で9ヶ月保存した後、両方のpH値(4.5および5.5)で粘度のわずかな低下が観察された。防腐剤分解生成物の小さな上昇傾向が、高pH製剤でのみ観察された。その増加は、長期保存条件で観察された変化よりも大きく、高温での分解速度がより速いことを示唆している。40℃/75%RHで3ヶ月保存した後に、外観、薬物アッセイ、防腐剤アッセイ、またはpHに有意な変化または傾向は観察されなかった。
【0172】
防腐剤分解生成物のわずかな相違を除いて、目標pH範囲の下端と上端で製造された2つのバッチ間に、どちらの条件でも、相違は観察されなかった。2~8℃でガラス瓶に保存されたサンプルは、その条件で1ヶ月保存した後に、沈殿の兆候を示さなかった。
【0173】
製剤の受容性と嗜好性
対象患者集団における薬物製品の受容性は、その剤形を選択しかつ製剤を開発する上での主な考慮事項であった。経口溶液剤は、予想された全用量範囲にわたって小児用または成人用に適している。経口液体製剤の利点は、様々な投与量を測定して投与できる点である。体重または年齢に基づいた投与により、小さい子供はより少ない投与量を受け取り、不完全な摂取、それゆえの投与量不足、のリスクを低減する。投与量を最小限にするよう努力したが、同時に、予想された範囲にわたって用量の正確な測定を確実にする必要性も認識した。フェンフルラミン塩酸塩の単回投与量は0.4mL~6mLの範囲である。さらに、以下の要因が製剤の嗜好性と受容性に寄与する。
【0174】
フェンフルラミン経口溶液剤は、どの油、非水性溶媒、未溶解粒子も含まない水性ベースの製剤である。したがって、テクスチャ関連の問題は発生しないと考えられる。
【0175】
前記製剤には甘味が追加されており、かつ一般的に受け入れられるフレーバー(チェリー)で香味付けされている。フレーバーと甘味料の濃度は、可能な限りニュートラルな味に近づくように低くしてある。
【0176】
原薬の濃度は低い(2.5mg/mL)。このような低濃度では、原薬の味の検出可能性は、特に香味剤と甘味剤が存在すると、一般に低くなる。
【0177】
前記製剤はわずかに粘性があり、これは一般的に、舌での接触面積が小さい(あまり広がらない)ため、味のマスキングと味の良さを助ける。
【0178】
前記製剤の全体的な受容性と嗜好性は、意図した市販製剤を含む臨床試験の一部として子供において調べた。嗜好性と受容性に関する質問を非盲検継続投与試験(Study 1503)の最初の2~3ヶ月に行った。
【0179】
製剤バリエーションの概要
2つの製剤組成物のバリエーションを臨床開発において使用した。赤色の臨床組成物は、1.25、2.5および5mg/mLのフェンフルラミン塩酸塩ならびにプラセボを含んでいた。無色の臨床組成物は、同じ濃度のフェンフルラミン塩酸塩を含んでいた。表7は、臨床試験で使用された2つの製剤の比較を示す。このセクションでは、製剤のバリエーションの概要についても説明する。表7は、各製剤のこれまでに製造されたバッチとそれらの使用を示す。
【0180】
(表7)フェンフルラミン塩酸塩経口溶液薬物製品の製剤バリエーション
a 1.25mg/mL、2.5mg/mL、5mg/mL、またはプラセボ
【0181】
実施例3
剤形の説明
経口投与用のフェンフルラミン溶液剤は、水性ビヒクル中に2.5mg/mLのフェンフルラミン塩酸塩(2.16mg/mLのフェンフルラミンに相当)を含む無色のチェリー風味の経口溶液である。
【0182】
この溶液は、子供が開けられない開封明示クロージャーを用いてキャップされた複数回投与用の高密度ポリエチレン(HDPE)製ボトルに含まれる。この製品は、薬物製品と一緒に分配される適切なサイズの経口注射器を使って投与される。分注に先立って、プレスインボトルアダプターをボトルの開口部に挿入する。
【0183】
組成
フェンフルラミン経口溶液剤の組成を表8に示す。
【0184】
(表8)フェンフルラミン経口溶液剤の組成
【0185】
容器クロージャー
フェンフルラミン経口溶液剤の一次容器は、28mmスクリューネック付きの白色HDPE丸型ボトルである。薬物製品を詰めるために6つの異なるボトルサイズを用いることができる。これらは、30、60、120、250、360、および500mLである。全てのボトルは同様のデザインと構造のものである。
【0186】
ボトルクロージャーは、開封明示バンドおよび印刷された開封指示を含む、子供には開けられないプラスチック製(多層)のキャップである。
【0187】
次の表は、対象となる他の製剤を示す。
【0188】
(表9)フェンフルラミン経口溶液剤の組成
【0189】
(表10)フェンフルラミン経口溶液剤の組成
【0190】
(表11)フェンフルラミン経口溶液剤の組成
【0191】
(表12)フェンフルラミン経口溶液剤の組成
【0192】
前述は、本発明の原理を単に例示するものである。当業者であれば、本明細書に明示的な記載または表示がないが、本発明の原理を具体化しかつその精神および範囲内に含まれる様々なアレンジメントを創案できることが理解されよう。さらに、ここに記載のあらゆる例および条件言語は、主に、読者が本発明の原理および当該技術を促進するために本発明者らが貢献した概念を理解するのに役立つことを目的としたものであり、そのような具体的に記載された例および条件に限定されることはないと解釈されるべきである。さらに、本発明の原理、局面、および態様、ならびにそれらの具体例を示す本明細書の全ての記述は、それらの構造的均等物と機能的均等物の両方を包含することが意図される。その上、そのような均等物は、現在知られている均等物と、将来開発される均等物(すなわち、構造に関係なく、同じ機能を果たすように開発された任意の要素)の両方を含むことが意図される。したがって、本発明の範囲は、本明細書に表示および記載された例示的な態様に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲および精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。