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特許7213906分子酸素を用いたエポキシドへの液相選択酸化
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】分子酸素を用いたエポキシドへの液相選択酸化
(51)【国際特許分類】
   C07D 301/06 20060101AFI20230120BHJP
   C07D 303/04 20060101ALI20230120BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20230120BHJP
【FI】
C07D301/06
C07D303/04
C07B61/00 300
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021051582
(22)【出願日】2021-03-25
(62)【分割の表示】P 2019539755の分割
【原出願日】2018-01-24
(65)【公開番号】P2021102639
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2021-04-08
(31)【優先権主張番号】62/449,868
(32)【優先日】2017-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513074862
【氏名又は名称】ライオンデル ケミカル テクノロジー、エル.ピー.
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】サンダー・ナジー
(72)【発明者】
【氏名】バーバラ・キミッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジャスティン・イー・ターナー
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス・ブルースキー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ・アール・ホルヴァト
【審査官】三木 寛
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0065055(US,A1)
【文献】米国特許第06768013(US,B1)
【文献】Topics in Current Chmistry,1999年,Vol.206,p.61-78
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 301/06
C07D 303/04
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相中で分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドを生成するステップであって、前記選択的酸化はエポキシ化触媒の存在下で実行され、および前記液相はパーフルオロ溶媒を含み、および
前記分子酸素に対するオレフィン化合物のモル比は、1:100~100:1の範囲にある、選択的酸化を実行するステップを含み、
前記分子酸素は、気相から液相へと供給され、及び
前記パーフルオロ溶媒は、パーフルオロデカリンであり、及び
前記エポキシ化触媒は、タルクに担持された、硝酸カリウムを含んだ銀触媒であり、
前記選択的酸化は、少なくとも1時間行われ、且つ
前記選択的酸化は、100℃~300℃の範囲の温度で行われる、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記エポキシ化触媒は該エポキシ化触媒組成物の総量に基づいて50wt%超~80wt%の銀成分を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パーフルオロ溶媒は、50℃以上の沸点を有するところの請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記選択的酸化は、担体を含む不均一系エポキシ化触媒の存在下で実行されるところの請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記オレフィン化合物は、エチレン、プロピレン、ブテン、1-オクテン、ブタジエン、塩化アリル、アリルアルコール、スチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるところの請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記エポキシドへの前記選択性は、40%以上であるところの請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項7】
エポキシドへの少なくとも過半数の前記選択的酸化は、連続的に実行されるところの請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記選択的酸化は、前記オレフィン化合物および分子酸素を供給する酸化剤を発泡させて、前記パーフルオロ溶媒を含みおよび蒸留部を備えた反応器中に投入することで実行されるところの請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記エポキシドを連続的に取り出して副生成物の形成を減少させるステップをさらに含むところ請求項1~3の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
液相中で分子酸素を用いてプロピレンを選択的に酸化して酸化プロピレンの生成を実行するステップであって、前記選択的酸化はエポキシ化触媒の存在下で実行され、および前記液相はパーフルオロ溶媒を含み、
前記分子酸素に対するプロピレンのモル比は、1:100~100:1の範囲にある、選択的酸化を実行するステップを含み、
前記分子酸素は、気相から液相へと供給され、及び
前記パーフルオロ溶媒は、パーフルオロデカリンであり、及び
前記エポキシ化触媒は、タルクに担持された、硝酸カリウムを含んだ銀触媒であり、
前記選択的酸化は、少なくとも1時間行われ、且つ
前記選択的酸化は、100℃~300℃の範囲の温度で行われる、
ことを特徴とする、方法。
【請求項11】
パーフルオロ溶媒の発生源と;および
前記パーフルオロ溶媒の前記発生源と流体的に連結され、および前記パーフルオロ溶媒を含む液相において、分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドを生成するように構成された液相反応器であって、前記選択的酸化はエポキシ化触媒の存在する状態で実行される液相反応器とを含み、
記分子酸素に対するオレフィン化合物のモル比は、1:100~100:1の範囲にあり、
前記分子酸素は、気相から液相へと供給され、
前記パーフルオロ溶媒は、パーフルオロデカリンであり、及び
前記エポキシ化触媒は、タルクに担持された、硝酸カリウムを含んだ銀触媒であり、
前記選択的酸化は、少なくとも1時間行われ、且つ
前記選択的酸化は、100℃~300℃の範囲の温度で行われる、
ことを特徴とする、システム。
【請求項12】
前記銀触媒は、ゼロ酸化状態にある銀元素及び/又は陽イオン酸化状態にある銀陽イオンを含むこと特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、特許協力条約に基づいて2017年1月24日に出願された米国仮出願第62/449,868号に対する優先権の利益を主張し、その全文は参考として本明細書に組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援による研究または開発に関する陳述
該当なし。
【0003】
マイクロフィッシュ付属書への参照
該当なし。
【0004】
本開示は分子酸素を用いたエポキシドへの液相選択酸化に関し;より具体的には、本開示は高沸点非反応溶媒の存在下で分子酸素を用いたエポキシドへの液相選択酸化のためのシステムおよび方法に関し;更により具体的には本開示はパーフルオロ溶媒の存在下で分子酸素を用いたエポキシドへの液相選択酸化のためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0005】
過酸化水素、t-ブチルペルオキシド(TBHP)、エチルベンゼンペルオキシド(EBHP)、およびクメンヒドロペルオキシドなど分子酸素以外の酸素源を使用したプロピレンなどオレフィンのエポキシドへの液相選択酸化は周知であり、およびエポキシドを1つ以上の副産物と共に生成するのに使用され得るモリブデン化合物またはチタン酸シリカなど、均一系および不均一系の触媒を利用することにより実施し得る。TBHPの場合のt-ブチルアルコール、またはEBHPの場合のメチルベンジルアルコールなど、このような副産物は必ずしも望ましいとはいえない。酸化プロピレンなどのエポキシドを生成する場合、副産物のない処理が望ましい。概念的にはそれは、分子酸素を利用することで達成され得る。
【0006】
例えば200~300℃、含銀触媒の存在下でのエチレンの気相エポキシ化など、分子酸素を利用する気相エポキシ化が周知である。しかし気相中でのエチレン以外のオレフィンのエポキシ化は、アリル位での二重結合に対する反応性水素原子の存在に関連した反応の処理選択性が低いために困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
望ましくは選択的酸化が連続的であり得る液相中で選択的酸化を可能にするシステムと方法など;分子酸素を用いた選択的エポキシ化のためのシステムおよび方法の必要が、引き続き存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここでは、液相中で分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドの生成を実行するステップであって、該液相はパーフルオロ溶媒を含み、および該選択的酸化は触媒の存在する状態で実行されることを特徴とする選択的酸化を実行するステップ:を含む方法が開示される。実施形態において該パーフルオロ溶媒は、大気圧でおよそ80~300℃の範囲の沸点を有する。実施形態においては、該パーフルオロ溶媒はパーフルオロメチルデカリン、パーフルオロデカリン、パーフルオロペルヒドロフェナントレン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(FC-75)、それらの異性体、およびそれらの組み合わせからなる群から、制限なしで選択される。実施形態においては、該パーフルオロ溶媒は非反応性溶媒である。
【0009】
実施形態ではエポキシドへの選択的酸化は、均一系触媒、不均一系触媒、またはその両方の存在下で実行される。実施形態ではエポキシドへの選択的酸化は、均一系触媒の存在下で実行される。実施形態では該均一系触媒は、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、クローム、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、およびそれらの組み合わせの複合体からなる群から選択された1つ以上の成分を含む遷移金属化合物からなる群から選択される。実施形態ではエポキシドへの選択的酸化は、不均一系触媒の存在下で実行される。実施形態では該不均一系触媒は、担体と、および銀、金、銅、ルテニウム、モリブデン、タングステン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された金属と、を含む。実施形態では該担体は、金属酸化物、アルカリ土類炭酸塩、およびフィロケイ酸塩からなる群から選択された1つ以上の成分を含む。実施形態では該金属酸化物は、アルミナ、シリカチタニア、ジルコニア、およびそれらの混合物からなる群から選択される。実施形態では該アルカリ土類炭酸塩は、炭酸カルシウムを含む。実施形態では該フィロケイ酸塩は、タルク、高陵石、葉ろう石、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0010】
実施形態では該オレフィン化合物は、エチレン、プロピレン、ブテン、1-オクテン、ブタジエン、塩化アリル、アリルアルコール、スチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では該オレフィン化合物は、プロピレンを含む。実施形態においては、制限なしで、該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該パーフルオロ溶媒は、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロデカリン、パーフルオロペルヒドロフェナントレン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)、それらの異性体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態においては、該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該パーフルオロ溶媒は、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態ではエポキシドへの該選択的酸化は、不均一系触媒の存在下で実行される。実施形態では該不均一系触媒は形状をもたない。実施形態では該不均一系触媒は形状を持つ。実施形態では該不均一系触媒は粉末形状である。実施形態では該不均一系触媒は担体を含み、および該担体はフィロケイ酸塩からなる群から選択された少なくとも1つの成分を含む。実施形態では該フィロケイ酸塩は、タルク、高陵石、葉ろう石、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では該不均一系触媒は銀を含む。実施形態では該銀は、酸化状態ゼロを有する。実施形態では該不均一系触媒は、約1重量パーセント~約70重量パーセントの銀を含む。実施形態では該触媒は1族金属塩をさらに含む。実施形態では該1族金属塩は、硝酸カリウムである。実施形態では該触媒は、約0.05~約10重量パーセントの1族金属塩を含む。実施形態では該触媒はレニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、金、銅、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、モリブデン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された促進剤をさらに含む。
【0011】
実施形態では選択的酸化を実行するステップは、少なくとも0.1時間、少なくとも1時間、少なくとも3時間のあいだ、または約0.1~約3時間の範囲において、約50~約300℃の範囲の温度に加熱するステップを含む。実施形態では、本開示の方法によって提供されたエポキシドへの該選択性は(エポキシドに転化された反応オレフィン化合物のモルパーセントとして定義された選択性)、約40%以上である。実施形態では、本開示の方法によって提供されたエポキシドへの該選択性は(エポキシドに転化された反応オレフィン化合物のモルパーセントとして定義された選択性)、約50%以上である。実施形態では、本開示の方法によって提供されたエポキシドへの該選択性は(エポキシドに転化された反応オレフィン化合物のモルパーセントとして定義された選択性)、約60%以上である。実施形態では該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該エポキシドは酸化プロピレンを含む。実施形態では少なくとも過半数の選択的酸化は、連続的に実行される。実施形態では選択的酸化は、該オレフィン化合物および分子酸素を含む気体を、パーフルオロ溶媒を含みおよび蒸留部を備えた反応器中に供給することで実行される。実施形態では該方法はエポキシドを連続的に取り出して副生成物の形成を減少させるステップをさらに含む。
【0012】
また、ここでは以下を含む方法が開示される:液相中で分子酸素を用いてプロピレンを選択的に触媒酸化して酸化プロピレンの生成を実行するステップであって、該選択的酸化は触媒の存在下で実行され、および該液相はパーフルオロ溶媒を含むことを特徴とする選択的触媒酸化を実行するステップ。
【0013】
また、ここでは以下を含むシステムが開示される:パーフルオロ溶媒の発生源と;およびパーフルオロ溶媒の該発生源と流体的に連結され、および触媒の存在下においておよびパーフルオロ溶媒を含む液相中において、分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドの生成を実行するように構成された液相エポキシ化反応器と。
【0014】
複数の実施形態が開示されているが、依然として他の実施形態が以下の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。明らかなように、本明細書に開示された特定の実施形態は、これらすべて本明細書に提示された特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱することなく、様々な明白な様態で修正することができる。したがって、詳細な説明は、本質的に例示的なものであり、限定的ではないと見なされるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここでは分子酸素を用いた液相エポキシ化のシステムおよび方法が開示される。意外にも、パーフルオロ溶媒は液相エポキシ化反応の反応媒体としての使用に特に適することが報告されている。特に好適なパーフルオロ溶媒は、高レベルの分子酸素を溶解可能な高沸点非反応溶媒であり得る。
【0016】
この「エポキシドへの選択的酸化」および「エポキシ化」という語は、ここでは互換的に使用される。
【0017】
ここでは、触媒の存在で、パーフルオロ炭化水素を含む液相中で分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドを生成する方法が開示される。用語「エポキシド」は、次の式を持つ化合物のクラスを指す:
【0018】
【数1】
【0019】
ここでR1、R2、およびR3は各々個別に水素、アルキルであり、およびR4は水素、アルキル、またはアリールである。
【0020】
上記に示したように、本開示によるオレフィン化合物の該選択的酸化は、1つ以上のパーフルオロ炭化水素を含むパーフルオロ溶媒を含む液相の存在下で実行される。本開示に言う「パーフルオロ」化合物は、C-F結合(C-H結合ではない)およびC-C結合を含むオルガノフルオリン化合物であるが、またその他のヘテロ原子をも含み得る。該パーフルオロ溶媒は、エポキシ化条件下では非反応性である。実施形態ではパーフルオロ溶媒中の分子酸素の該溶解度は、高い。
【0021】
該酸素溶解度レベルは、圧力、温度、他の成分の有無などを含む多くの変数の関数であり、定量化は困難である。パーフルオロ溶媒中の酸素の溶解度は、例えば以下で論じられている:Ronald W. Millard (1994) Oxygen Solubility, Rheology and Hemodynamics of Perfluorocarbon Emulsion Blood Substitutes, Artificial Cells, Blood Substitutes, and Biotechnology, 22:2, 235-244; and A.M.A. Dias, M. Freire, J.A.P. Coutinho, and I.M. Marrucho (2004) Solubility of Oxygen in Liquid Perfluorocarbons, Fluid Phase Equilibria, 222-223, 325-330。特定の実施例に縛られることを恐れずにいえば、実施形態において、パーフルオロ溶媒100mLは、25℃、大気圧において少なくとも30mL、35mL、40mL、45mL、または50mLの酸素を溶解する。溶液容量のオストワルド係数は、平衡状態に達した後の溶解された気体の容量を液体溶液の容量で除算したものとして定義され得る。実施形態では該パーフルオロ溶媒は溶質分圧101.325kPaでオストワルド係数がL2,1(T,p)であり、つまり約0.4~約0.6の範囲、あるいは約0.4、約0.45または約0.5である。実施形態では該パーフルオロ溶媒は溶質分圧101.325kPaで溶モル分率がxであり、つまり約3×10-3~約5.5×10-3の範囲、あるいは約3.9x10-3、約4x10-3、または約4.2x10-3である。
【0022】
反応混合物の成分を円滑に分離するために、該液相成分はエポキシ化反応の生成物と液相成分の生成物との間で想定される沸点の差に基づいて選択され得る。実施形態では該液相/フルオロ溶媒は、生成されるエポキシドの沸点を超える沸点を有する1つ以上のオルガノフルオリン化合物を含む。実施形態では該パーフルオロ溶媒は、約80℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、または160℃以上の沸点を有する。実施形態では該パーフルオロ溶媒は、大気圧で約80℃~約160℃、約100℃~約250℃、約140℃~約215℃、約100℃~約160℃、約140℃~約160℃、または約80℃~約300℃の範囲、またはその中の任意の範囲約の沸点を有する。
【0023】
上記に述べたように本開示の実施形態によると、該液相は1つ以上のパーフルオロ炭化水素を含む。実施形態では該液相は、式Cを持つ1つ以上のオルガノフルオリン化合物を含む。実施形態では液相の該パーフルオロカーボンは、ヘテロ原子を持つ炭化水素を含む1つ以上の炭化水素を含み、ここですべてのC-H結合はC-F結合によって置き換えられる。当該のパーフルオロカーボンは式Cを持ち得、ここでXはフッ素以外のハロゲンである。
【0024】
パーフルオロ炭化水素は、脂肪族または脂環式であり得る。好適なパーフルオロカーボンとして、制限なしでパーフルオロメチルデカリン、パーフルオロデカリン、パーフルオロペルヒドロフェナントレン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)[またFC-75としても周知で]、その異性体、およびそれらの組み合わせを含む。
【0025】
実施形態では、本開示の実施形態によってエポキシ化された該オレフィン化合物、「オレフィン炭化水素」、オレフィン、またはアルケンは、一般式RC=CRを持つ少なくとも1つのオレフィン二重結合を有する任意の有機オレフィン化合物であり、ここでR、R、R、およびRは同一であったり相違したり、置換または非置換であったりし得、および各々個別に水素、アルキ、アルケニル、アリール、アルカリル、シクロアルキル、またはアルキルシクロアルキル、ハイドロカルビルの族から選択される。実施形態ではR、R、R、Rはそれぞれ、30未満の炭素原子を有する。実施形態ではR、R、R、およびRはそれぞれ、14程度の炭素原子を有する。加えてR、R、R、およびRのうち任意のものは互いに結合されて、シクロアルキル、シクロアルケニルまたはアルキルシクロアルキル、サイクリックハイドロカルビル、または芳香族環基など、置換または非置換の環構造を形成し得る。そのような置換または非置換の環構造は、実施形態では14程度の炭素原子、または全部で5~12の炭素原子を含み得る。該オレフィン化合物は直鎖、分岐鎖、または環状であり得る。環状オレフィン化合物は、単環式、二環式、および多環式の化合物を含む。該オレフィン化合物は、モノオレフィン、ジオレフィン、またはポリオレフィンであり得る。2つ以上のオレフィン結合が存在する場合、該化合物は共役または非共役であり得る。実施形態では該オレフィン化合物は、ハライド(例えばCl、F、Br、I)、エーテル基、エステル基、および/またはアリル水酸基の1つ以上によって置き換えられ得る。
【0026】
実施形態ではエポキシ化される該オレフィン化合物は、2~約20の炭素原子を含む脂肪族または脂環式の炭化水素である。実施形態ではエポキシ化される該オレフィン化合物は、一つの二重結合を含む。
【0027】
本開示に従ってエポキシ化され得るオレフィン化合物の具体例として、エチレン、プロピレン、ブテン、1-オクテン、ブタジエン、塩化アリル、アリルアルコール、スチレン、およびそれらの組み合わせがあるが、それだけに限らない。実施形態では該オレフィンはプロピレンを含み、および該エポキシドは酸化プロピレンを含む。
【0028】
本開示による液相エポキシ化は、オキシダント(本開示では「酸化剤」とも呼ぶ)の存在下で実行される。本開示によると該酸化剤は分子酸素(O)であり、分子酸素を含み、またはさもなければ分子酸素を供給する。該分子酸素は、不純物のない状態または不活性希釈剤との混合物として供給され得る。
【0029】
実施形態では該分子酸素と該オレフィン化合物は、溶媒に接触する前に混合気相において合成される。実施形態では該オレフィン化合物と分子酸素は、個別に反応に投入される。オレフィン化合物、分子酸素、またはその両方は、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、希ガス(例えばヘリウム、アルゴン)などに限定されないがそのようなエポキシ化に対して不活性な1つ以上の希釈剤またはキャリヤガスを含む混合気相として投入され得る。反応混合物における酸素に対するオレフィン化合物のモル比は、触媒の種類、反応温度、反応圧、反応モード(連続式またはバッチ式)などに応じて変化し得る。実施形態では酸素に対するオレフィン化合物の該モル比は、約1:100~約100:1または約1:30~約30:1の範囲にある。
【0030】
実施形態では本開示による液相エポキシ化は、当業者に周知の任意の好適なエポキシ化触媒の存在下で実行される。実施形態では該エポキシ化は、均一系触媒、不均一系触媒、またはその両方の存在下で実行される。実施形態では該液相エポキシ化は、均一系触媒の存在下で実行される。実施形態では該均一系触媒は、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、クローム、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、およびそれらの組み合わせの複合体からなる群から選択された1つ以上の成分を含む遷移金属化合物からなる群から選択される。「遷移金属」という用語は、周期律表でスカンジウムから亜鉛まで、イットリウムからカドミウムまで、およびルテチウムから水銀までの元素から選択された金属原子を表す。
【0031】
実施形態では該エポキシ化触媒は、担体材料と金属成分とを含む不均一系触媒である。実施形態では該金属成分は、銀、金、銅、ルテニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。実施形態では該金属成分は、パラジウム、金、プラチナ、銀、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、またはそれらの組み合わせに限定されないがそのような貴金属である。実施形態では該貴金属は銀である。実施形態では該銀は、エポキシ化触媒組成物中にゼロ酸化状態(例えば銀元素)で存在する。あるいはまたはそれと組み合わせて、銀は、陽イオン酸化状態で存在し得る。ゼロ酸化状態と陽イオン酸化状態の両方に存在する場合、実施形態はゼロ酸化状態において、陽イオン酸化状態より多くの銀を含む。さらに、該銀は銀陽イオンとして担体材料の上に堆積し得、および次いで減少されて銀元素になり得ると考えられる。
【0032】
実施形態では該エポキシ化触媒は、当業者に周知の担体を含む。実施形態では該触媒担体は、金属酸化物、アルカリ土類炭酸塩、およびフィロケイ酸塩からなる群から選択された1つ以上の成分を含む。実施形態では該エポキシ化触媒は、金属酸化物担体を含む。実施形態では該金属酸化物は、アルミナ、シリカチタニア、ジルコニア、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0033】
実施形態では該エポキシ化触媒は、アルカリ土類酸化物担体を含む。実施形態では該アルカリ土類炭酸塩は、炭酸カルシウムを含む。
【0034】
実施形態では該エポキシ化触媒は、「Epoxidation Processes and Catalysts for Use Therein」という名称で2016年7月18日に出願された米国特許出願第62/363,401号にほぼ記載の通りであり、本開示に反しないすべての目的のため、その開示全体をここに組み込む。実施形態では該エポキシ化触媒は、フィロケイ酸塩固体成分(例えばフィロケイ酸塩)を含むフィロケイ酸塩担体を含み、このフィロケイ酸塩固体成分は同義語として「フィロケイ酸塩」、「結晶性フィロケイ酸塩」、および「層状ケイ酸塩」とも呼ばれ得る。異なる多種多様なフィロケイ酸塩が、担体材料として利用され得る。フィロケイ酸塩は概して層状ケイ酸塩であり、この層状ケイ酸塩は板状または雲母状と特徴付け得、および他の無機物と比較して柔らかく、柔軟で、弾性がある。フィロケイ酸塩は概して、ニ価または三価の陽イオンによって形成されたより高い配位数を持つ八面体または他の多面体シートが交互に並ぶシリコン原子の周囲の酸素原子と、およびケイ酸塩群と水酸化物群との酸素原子と、によって形成された四面体シートを含む。四面体層は概してシリカ酸化物を含むが、ここで該四面体の頂点は他の四面体と共有する3つの酸素原子を含み、外側に向ってのびる相互接続された6員環を形成する。八面体または他の多面体シートは、頂点の酸素原子でキレートされたニ価および三価の陽イオンと、シリカ酸化物の四面体層によって形成された6員環の中心に存在し得る水酸化物と、によって形成される。本開示のフィロケイ酸塩は概して、フィロケイ酸塩が明らかな極大値のあるエックス線回折パターンを与える規則構造を持つという意味で結晶性である。
【0035】
八面体層または多面体層は概して、2つの主分類を含む:水酸化物で占められた八面体結合部位を持つニ価陽イオンを含むブルーサイト型構造、および3つおきに空位の陽イオン部位のある三価陽イオンを含み、および結合部位が水酸化物に占有されたギブサイト型構造。八面体層のこのような主分類は、2つの主要クラスを生み出す:ジ八面体型およびトリ八面体型。ジ八面体群のフィロケイ酸塩について、該八面体シートはアルミニウム陽イオンなどの三価陽イオンを含む。ジ八面体群内では、該群は2つの構造型t-oとt-o-tを持つ。t-o構造型は四面体シートと八面体シートの交互層を含み、および1:1のジ八面体群フィロケイ酸塩としても周知である。t-o-t構造型は四面体シート、八面体シート、および四面体シート、の交互群を含む。トリ八面体群のフィロケイ酸塩は、鉄やマグネシウムなどのニ価陽イオンを含む八面体シートを有する。ジ八面体群のフィロケイ酸塩と同様、上記のようにトリ八面体フィロケイ酸塩はt-o-t構造型またはt-o構造型を備え得る。
【0036】
該フィロケイ酸塩は概して、フィロケイ酸塩の4つの族に分類される:蛇紋石族、粘土鉱物族、雲母族、または緑泥石族。フィロケイ酸塩の該蛇紋石族は、化学式MgSi(OH)を持ち、および例えばアンチゴライト、クリソタイル、およびリザーダイトを含む。このようなフィロケイ酸塩の蛇紋石族は概して単斜晶シンメトリを示すが、しかしまた例えば斜方晶または六方晶のシンメトリを示し得る。フィロケイ酸塩の雲母族は強複屈折性の化合物を含み、ほぼ完全な底面劈開を備え、および単斜晶シンメトリを備える。このような化合物は次の一般化学式を有する:X-6Z20(OH,F)、ここでXはK、Na、Ca、または他の1族か2族の金属であり、YはAl、Mg、またはFeであり、およびZはSiまたはAであるが、またFe3+またはTiでもあり得る。「1族金属」という用語は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、およびセシウムから選択された金属原子を表す。「2族金属」という用語は、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、およびバリウムから選択された金属原子を表す。雲母族フィロケイ酸塩は、ジ八面体型またはトリ八面体型のいずれかであり得る。雲母族フィロケイ酸塩のいくつかの非限定的具体例として、例えば黒雲母、白雲母、金雲母、鱗雲母、真珠雲母、フェンジャイト、加水白雲母、金雲母、チンワルド雲母、および海緑石がある。フィロケイ酸塩の緑泥石族は、次の一般式を持つ化合物を含む:(Mg,Fe)(Si,Al)10(OH)・(Mg,Fe)(OH)、ここでMg、Fe、Ni、Mn、Li、Ca、またはZnなどの1つ以上の元素はケイ酸塩格子に置き換えられ、t-o-t構造を持ち、ここで(Mg,Fe)(OH)ユニットは、t-o-tの各繰り返しの間に間隔をあけて配置される。このような化合物は単斜晶であるが、しかしまた、いくつかは三斜晶多形体を備える。緑泥石フィロケイ酸塩のいくつかの非限定的具体例として、例えばベイリークロア、シャモス石、クリノクリア、クーク石、ドンバサイト、ゴニュライト、ニマイト、オディナイト、オルソシャモサイト、ペナンタイト、リピドライト、またはスドウアイトがある。
【0037】
いくつかの実施形態において、該フィロケイ酸塩は粘土鉱物フィロケイ酸塩である。粘土鉱物フィロケイ酸塩は、可変量の鉄、マグネシウム、1族金属、2族金属、または他の陽イオンを含む含水アルミニウムフィロケイ酸塩である。該粘土鉱物フィロケイ酸塩は、1:1の四面体~八面体シートまたは2:1の四面体~八面体シートであり得る、八面体水酸化物シートと四面体のケイ酸塩シートまたはアルミナシートを含む。このような粘土鉱物フィロケイ酸塩において、該八面体および四面体のシートは、同一方向(例えばシートの同一側面)を指すケイ酸塩シートまたはアルミナシートの非共有酸素原子を持つMgまたはAlなどの小型陽イオンによって結合される。適切な結合パターンを採用するために、四面体シートはねじれたり、波形になり得、他方該八面体シートは平らになる。粘土鉱物フィロケイ酸塩は、単斜晶形または三斜晶形を含むがこれらに限定されない多様な結晶形をとり得る。粘土鉱物フィロケイ酸塩のいくつかの非限定的具体例として、例えばハロイサイト、高陵石、イライト、モンモリロナイト、蛭石、タルク、海泡石、パリゴルスカイト、および葉ろう石がある。
【0038】
実施形態では該エポキシ化触媒は、タルク、高陵石、葉ろう石、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された粘土鉱物フィロケイ酸塩担体を含む。いくつかの実施形態において、該フィロケイ酸塩の固体成分はタルクである。タルクはt-o-t構造を持つトリ八面体型フィロケイ酸塩であり、およびいずれのシートにも正味荷電はなく、式MgSi10(OH)を有する。タルクは、単斜晶または三斜晶の結晶シンメトリを有する。特定の実施形態において、該担体は粉末タルクを含む。
【0039】
いくつかの実施形態において、該フィロケイ酸塩は高陵石である。高陵石はt-o構造を持つジ八面体型フィロケイ酸塩であり、pHによって荷電され、層間陽イオンはなく、式AlSi(OH)を有する。高陵石はカオリンとして周知の広範な無機物族の一部であり、このカオリンはディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、および高陵石を含む。加えて高陵石は、三斜晶結晶シンメトリを持つ。他の実施形態において、該フィロケイ酸塩の固体成分は葉ろう石である。葉ろう石はt-o-t構造を持つジ八面体型フィロケイ酸塩であり、正味荷電はなく、式AlSi10(OH)を有する。葉ろう石は、単斜晶または三斜晶の結晶シンメトリを有する。
【0040】
該金属成分は、当業者に周知のように触媒中に組み込まれ得る。実施形態では該金属成分は、担体材料で該金属成分を担持することにより触媒に組み込まれてエポキシ化触媒組成物を形成する。金属成分を担体材料に堆積させるため、金属塩などの幅広い発生源が利用され得る。いくつかの非限定的な塩の具体例として、例えばシュウ酸、アセテート、クエン酸塩、マロン酸エステル、錯化剤、安定剤、およびそれらの組み合わせを含み得る。金属成分の追加的発生源として、米国特許第5,861,519号に記載の発生源を含み、本開示に反しないすべての目的のため、その開示全体を参照によってここに組み込む。実施形態では金属成分の該発生源は、金属酸化物を含む。他の実施形態において、該発生源は金属カルボン酸塩である。さらに他の実施形態において、該発生源は1つ以上の安定剤または錯化剤を含む金属酸化物を含む。例えば実施形態では該安定剤または錯化剤は、エチレンジアミンやエタノールアミンなどの脂肪酸またはアミン含有アルキル基である。
【0041】
実施形態では該エポキシ化触媒は、該エポキシ化触媒組成物の総量に基づいて1wt%~80wt%、10wt%~70wt%、または40wt%~60wt%の範囲の量の金属成分を含む。実施形態では該不均一系エポキシ化触媒は、約10wt%~約70wt%の銀を含む。ただし実施形態では該エポキシ化触媒組成物は、金属成分担持の減少を含む。例えば実施形態では該エポキシ化触媒組成物は、該エポキシ化触媒組成物の総量に基づいて1wt%~50wt%、10wt%~48wt%、40wt%~47wt%、または55wt%未満の範囲の量の金属成分を含む。
【0042】
実施形態では該エポキシ化触媒組成物は1族金属塩をさらに含む。1族金属塩の非限定的具体例は、1族金属硝酸塩を含む。実施形態では該1族金属硝酸塩は硝酸リチウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、またはそれらの組み合わせを含む。実施形態では該金属塩はカリウム塩であり、ここで該アニオンは、硝酸塩および亜硝酸塩などの窒素オキシアニオン(例えば窒素原子および酸素原子の両方を含むアニオンまたは陰イオン)、または炭酸塩および重炭酸などの炭素オキシアニオン(例えば炭素原子および酸素原子の両方を含むアニオンまたは陰イオン)、またはそれらの前駆体(例えばエポキシ化または触媒の準備または前処理の条件において、転位または他の化学反応を受け、および窒素または炭素のオキシアニオンを形成することの可能なアニオン)である。実施形態では該エポキシ化触媒は、1族金属塩硝酸カリウム、亜硝酸カリウム、炭酸カリウム、またはそれらの組み合わせを含む。米国特許第5,861,519号;第5,703,254号;または第5,625,084号に記載されているように、該触媒はカリウム塩を用いて処理され得、本開示に反しないすべての目的のため、それぞれの開示全体をここに組み込む。
【0043】
該エポキシ化触媒組成物に存在する場合、該エポキシ化触媒組成物は、エポキシ化触媒の総重量に基づいて0.01wt%~10wt%、0.05wt%~10wt%、0.5wt%~8wt%、または1wt%~6wt%の範囲の量の1族金属塩を含み得る。該量は、反応物のIDと濃度、触媒中の触媒金属(例えば銀、金)の量、担体の表面積と形態、処理条件などの変数に応じて変化する。実施形態では該エポキシ化触媒は、触媒の総重量に基づいて約0.15~約5重量パーセント、約0.5~約3重量パーセント、または約1.0~約2.5重量パーセントの追加されたカリウム塩(陽イオン、Kとして計算)の濃度範囲のカリウム塩を含む。
【0044】
エポキシ化触媒組成物はさらに、追加の促進剤金属または活性剤金属を含み得る。いくつかの実施形態において、追加の促進剤金属または活性剤金属は、金属成分と同時に担体材料の上に堆積される。他の実施形態において、追加の促進剤金属または活性剤金属は、金属成分の堆積後に担体材料の上に堆積される。
【0045】
追加の該促進剤として、レニウム、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、スカンジウム、イッテルビウム、他のランタノイド金属、またはそれらの組み合わせなどの促進剤金属を含み得る。実施形態では該エポキシ化触媒は、レニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、金、銅、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、モリブデン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された促進剤を含む。実施形態では該促進剤金属は銀である。「ランタノイド」という用語は、周期律表のランタニドからイッテルビウムまでの元素から選択された金属原子を表す。いくつかの実施形態において、このような市販されている金属塩は、そのような促進剤金属を含むエポキシ化触媒組成物を準備するために使用され得る。該エポキシ化触媒組成物に存在する場合、該エポキシ化触媒組成物は、エポキシ化触媒の総重量に基づいて0.01wt%~5wt%、0.5wt%~2wt%、または0.1wt%~1wt%の範囲の量の追加の促進剤を含み得る。
【0046】
実施形態では該不均一系触媒は形状をもたないまたは「成形され」ていない。実施形態では該不均一系エポキシ化触媒は形状を持つまたは「成形され」ている。実施形態では該不均一系エポキシ化触媒は粉末形状である。利用した担体/キャリアに拘わらず、該触媒は粒子、チャンク、小片などの形状に加工され得る。例えば固定床反応器について、該触媒は例えば球、ペレット、円筒、タブレット、または環など所望の形状に成形され得る。該触媒は、例えば約2nm~約2cmの範囲など、当業者には周知の任意の好適な寸法をそなえ得る。
【0047】
エポキシ化触媒組成物の1つ以上の成分は、空気の存在下で気温を上昇させた状態でカ焼され得る。カ焼温度は、例えば約150℃~約800℃、約200~約400℃、または約250~約350℃の範囲であり得る。
【0048】
該エポキシ化触媒は、エポキシ化するのに有効な量で存在し得る。オレフィン/触媒の比は適用事例に応じて変化し得る。例えばオレフィンの触媒に対する比は、均一系触媒系と不均一系触媒触媒系とでは大きく異なり得る。ただし非限定的な具体例によれば、エポキシ化触媒の該量は、オレフィン化合物(例えばプロピレン)のモル当たりの触媒金属(例えば銀元素)の少なくとも0.00005モルまたは0.0001モルであり得る。その上限値は特に制限されず、および触媒量が増加するとエポキシドの生成量は増加し得る。ただしエポキシ化触媒量の上限値は、追加する触媒のコストを考慮することで調整され得る。実施形態ではエポキシ化触媒の該量は、オレフィン化合物(例えばプロピレン)のモル当たりの触媒金属(例えば銀金属)の1モル以下である。
【0049】
実施形態では該オレフィン化合物と酸化剤は、該オレフィン化合物を少なくとも部分的にエポキシ化するのに有効な条件下において、パーフルオロ溶媒液相を含む液相エポキシ化反応器に投入(例えば発泡)される。該方法は、当業者に周知のように、1つ以上の添加剤を反応混合物、オレフィン、エポキシド、またはそれらの組み合わせに投入するステップをさらに含み得る。添加剤の非限定的具体例として、水分、二酸化炭素、含窒素化合物、NOガス(例えばNOおよびNO)、有機ハロゲン化物、CO、PH、SO、SO、およびそれらの組み合わせがある。
【0050】
実施形態では該オレフィン化合物は、反応混合物の総重量に基づいて0.1wt%~50wt%、1wt%~20wt%、または2wt%~10wt%の範囲の量でエポキシ化反応に投入される。実施形態では該オレフィン化合物は、該液相の少なくとも0.1、1、またはそれより高い重量パーセントのレベルで存在する。実施形態では該酸素は、反応混合物の総重量に基づいて1wt%~11wt%、2wt%~10wt%、または4wt%~9wt%の範囲の量でエポキシ化反応に投入される。実施形態では酸素は、該液相の少なくとも1、5、または10重量パーセントのレベルで液相エポキシ化反応器に投入される。実施形態では該オレフィン化合物および該エポキシ化触媒組成物は、酸素投入の前にまたは酸素投入と同時に反応器に投入される。
【0051】
エポキシドへの液相選択酸化の圧力は、適用事例に応じて変化する。例えば該処理圧力は、処理温度および構成などに依存する。エポキシドへの該液相選択酸化は、ほぼ大気圧下で実行され得る。実施形態では該液相エポキシ化は、約0psig(101.3kPa)~約500psig(3447kPa)、0psig(101.3kPa)~約450psig(3204kPa)、または0psig(101.3kPa)~約400psig(2859kPa)の範囲の圧力下で実行される。該エポキシ化は、利用される試薬、触媒、およびパーフルオロ溶媒に応じて任意の好適な温度で実行され得る。該パーフルオロ溶媒は、該温度および反応圧力の液体である。実施形態では該エポキシ化は、約50~300℃、約100~300℃、約200~300℃、または約150~250℃の範囲の温度で実行される。実施形態では選択的酸化は、少なくとも0.1時間、少なくとも1時間、少なくとも3時間のあいだ、または約0.1時間~約3時間の範囲のあいだ、約50~約300℃の範囲の温度に加熱するステップを含む。
【0052】
実施形態では該エポキシ化はバッチ式に実行される。実施形態では該エポキシ化は連続的に実行される。実施形態では少なくとも過半数の液相エポキシ化は、連続的に実行される。実施形態では該液相エポキシ化は、オプションとして溶媒を再生利用する連続撹拌槽型反応器(CSTR)中で実行される。実施形態では該液相エポキシ化は、気泡塔反応器、蒸発反応器またはトリクルベッド反応器中で実行される。実施形態では該エポキシ化は、反応蒸留反応器または反応蒸留部で実行される。
【0053】
本開示の液相エポキシ化方法は、エポキシドを連続的、半連続的、または定期的に取り出して副生成物の形成を減少させるステップをさらに含み得る。エポキシド生成物の取り出しは、当業者に周知の任意の手段を介して行われ得る。例えばエポキシド(例えば酸化プロピレン)は、蒸発反応器または気泡塔反応器と組み合わせた蒸留塔の頂部から取り出し得る。
【0054】
実施形態では該液相エポキシ化は、0.5~90%、5~70%、5~30%、または10~50%の範囲の転化を示す。「転化」という用語は、転化された入力のパーセンテージを指す。本開示に言う転化は、以下の数式を介して計算される:転化(%)=エポキシド(wt)/供給されたオレフィン化合物(wt)*100。実施形態ではエポキシドへの該選択性は、約40%以上である。実施形態ではエポキシドへの該選択性は、約50%以上である。実施形態ではエポキシドへの該選択性は、約60%以上である。本開示に言う選択性は、エポキシド生成物に転化された反応オレフィン化合物のモルパーセントとして定義される。
【0055】
上記方法は、当業者が適用するようなプロセス化学の原理および技能を用いて、バッチ式または連続式の準備生産、パイロット規模の生産、または大規模生産のためにさらに修正され、最適化され得る。
【0056】
またここでは、液相エポキシ化のシステムも開示される。実施形態では該システムは、上述のようにパーフルオロ溶媒の発生源と、およびパーフルオロ溶媒を含む液相で動作可能で、および分子酸素を用いてオレフィン化合物の選択的酸化を引き起こしてエポキシドを生成するように構成された反応器と、を含む。
【0057】
該液相エポキシ化反応器は、諸条件(前述のように)下で本開示のエポキシ化触媒および液相パーフルオロ溶媒の存在しり状態で、エポキシ化するオレフィン炭化水素/化合物を酸化剤、つまり分子酸素を含むまたはさもなければ分子酸素を供給する酸化剤に接触させ得て、その結果該オレフィン炭化水素の少なくとも一部分が対応するエポキシドに転化されることの可能な、当業者に周知の任意の反応器であり得る。実施形態においてそのような液相エポキシ化反応器は、連続撹拌槽型反応器(CSTR)、気泡塔反応器、蒸発式反応器、固定床反応器、および反応蒸留反応器からなる群から選択され得る。
【0058】
実施形態では該液相エポキシ化反応器は、試薬(例えば酸化剤、エポキシ化されるオレフィン化合物、パーフルオロ溶媒、触媒)を反応器に投入するための1つ以上の入口、および生成物(例えばエポキシド)をそこから取り出すための1つ以上の出口を備える。実施形態では該システムは、該液相エポキシ化反応器中で、ガス状酸化剤とオレフィン化合物を、ある容量のパーフルオロ溶媒に投入するように構成される。例えばガス状酸化剤およびガス状オレフィン化合物は、発泡されてパーフルオロ溶媒を含む反応器中に投入され得る。該反応器は、エポキシ化が実行される反応蒸留塔または蒸留塔の反応部であり得る。反応蒸留は、同じ槽内で化学反応および多成分蒸留が同時に行われるユニット操作である。該エポキシ化触媒は、反応器中(例えば蒸留塔の反応蒸留部中)に入れられ得るか、または試薬と共に投入され得る。不均一系触媒は、当業者に周知の任意の手段によって反応器の反応部中に保持され得る。例えばエポキシ化触媒は、米国特許出願第2014/0248006号に記載のように、触媒充填を介して所定の位置に保有され得、本開示に反しないすべての目的のため、その開示全体を参照によってここに組み込む。
【0059】
本開示の液相エポキシ化システムは、エポキシドを連続的、半連続的、または定期的に取り出して副生成物の形成を減少させる装置をさらに含み得る。エポキシド生成物を取り出すための該装置は、エポキシ化反応器の外部にあったり、またはエポキシ化反応器と一体化され得る。例えば反応蒸留塔は、エポキシ化が行われる反応部と、および反応部に隣接して位置し、エポキシド生成物を試薬または副生成物から分離させるように構成された剥離部と、を含み得る。
【0060】
実施形態においてエポキシ化反応器から取り出された反応生成物は、当業者に周知のように処理され、それからエポキシド生成物が分離され得る。CSTRを利用する適用事例中などの実施形態では、パーフルオロ溶媒は再生利用され得る。
【0061】
本開示の該システムおよび方法は、溶媒としてパーフルオロ炭化水素の利用を介して分子酸素を用いたオレフィンの液相エポキシ化を提供する。液相エポキシ化において採用されたエポキシ化触媒は、均一系(例えばMn、Cu、Mo、W、Feの錯体)、または不均一系(例えば担持されたAg、Cu、RuまたはAu)から選択され得る。実施形態において担持銀触媒は、分子酸素を用いた液相エポキシ化のために採用される。理論によって制限されることを望むことなく、液相エポキシ化は、分子酸素の存在下で従来の気相エポキシ化と比較してラジカル工程の数が減少するため、結果としてエポキシドへの酸化選択性を向上し得る。
【実施例
【0062】
実施例1:分子酸素を用いた1-オクテンの液相エポキシ化
パーフルオロ溶媒の存在下で液相エポキシ化を研究するため、実験を実施した。パーフルオロデカリン30mL(58g)および1ーオクテン4mL(2.84g)が、タルク(C-95AMTAL、入手先:Texas州AllamoreのAmerican Talc Company;Ag57%)に担持された銀触媒0.5gと共に125mLのステンレス製オートクレーブに投入され、およびKNOを用いて後処理された。反応器はO8%を含む窒素を用いてパージされ、および次いで同じガスを用いて500psigに与圧された。反応器が密閉されると、40rpmで撹拌されながら200℃まで加熱された。反応器は200℃で3時間後に冷却され、減圧および在庫調べして、無色パーフルオロ溶媒フェーズ(「パーフルオロデカリンフェーズ」)約32gを淡黄色フェーズ(「オクテンフェーズ」)の小型(~2mL)第2層と共に得た。ガスクロマトグラフィー(GC)分析は、主反応生成物としての1,2-エポキシオクタンの構造を示した。概算見積りに基づいて、1,2-エポキシオクタンの選択性は、5%までの転化で60%超であった。表1は、GC分析の結果を示す。
【0063】
【表1】
【0064】
上に開示された特定の実施形態はあくまで例証である、本開示は、本教示の利益を享受する当業者には明らかな、相違するけれども等価の方法で修正されおよび実施され得る。さらに、ここに示した構造または設計の詳細に対して、以下の請求項に記載された内容以外のいかなる制限も意図するものではない。それゆえ、上に開示された特定の例示的な実施形態は変更または修正され得、およびそのような変更はすべて本開示の範囲および精神の中にあると見なされる、ことが明白である。実施形態の諸特長の組み合わせ、総合、および/または省略から生ずる代替実施形態もまた、該開示の範囲内である。組成物および方法は様々な成分またはステップを「有する(having)」、「含む(comprising)」、「備える(containing)」、または「含む(including)」という広義の用語で記載されているが、該組成物および方法はまた様々な成分またはステップの「本質的にからなる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」という用語でも記載され得る。請求項における任意の要素に対して「オプションとして(optionally)」という用語の使用は、該要素が必要であること、またはあるいは該要素が必要でないことを意味し、両方の選択肢は該請求項の範囲内にある。
【0065】
本開示の数値および範囲は多少変化し得る。下限値と上限値のある数値範囲が開示された場合、任意の数値およびその範囲内の任意の含まれる範囲は明確に開示される。特に、本開示のすべての値範囲(「約a~約b」、または等価の「約a~b」、または等価の「約a-b」の形式)は、より広い値範囲内に包含されるすべての値と範囲を規定すると理解されるべきである。また、請求項中の用語は、別途特許権者によって明示的および明確に定義されるのでない限り、明白で普通の意味を持つ。さらに、請求項中で使用された不定冠詞「a」、「an」は、本開示では紹介される一つまたは複数の要素を意味すると定義される。本仕様と1つ以上の特許または他の文書において語または用語の使用に任意の矛盾がある場合、本仕様に整合する定義を採用すべきである。
【0066】
本開示の実施形態は以下を含む:
【0067】
A:液相中で分子酸素を用いてオレフィン化合物をエポキシドに選択的に酸化してエポキシドの生成を実行するステップであって、該選択的酸化は触媒の存在下で実行され、および該液相はパーフルオロ溶媒を含むことを特徴とする、選択的酸化を実行するステップを含む、方法。
【0068】
B:液相中で分子酸素を用いてプロピレンを選択的に酸化して酸化プロピレンを生成するステップであって、該選択的酸化は触媒の存在下で実行され、および該液相はパーフルオロ溶媒を含むことを特徴とする、選択的酸化を実行するステップを含む、方法。
【0069】
C:パーフルオロ溶媒の発生源と;およびパーフルオロ溶媒の該発生源と流体的に連結され、およびパーフルオロ溶媒を含む液相において、分子酸素を用いてオレフィン化合物を選択的に酸化してエポキシドを生産するように構成された液相反応器であって、該選択的酸化は触媒の存在下で実行されることを特徴とする液相反応器とを含む、システム
【0070】
実施形態A、B、およびCの各々は、以下の追加要素のうち1つ以上を備え得る:要素1:該パーフルオロ溶媒は、約50℃以上の沸点を有する。要素2:該パーフルオロ溶媒はパーフルオロメチルデカリン、パーフルオロデカリン、パーフルオロペルヒドロフェナントレン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(FC-75)、それらの異性体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。要素3:該パーフルオロ溶媒は非反応性溶媒であり、および該パーフルオロ溶媒100mLは、25℃、大気圧において少なくとも35mL、40mL、または45mLの酸素を溶解する。要素4:選択的酸化は、均一系触媒、不均一系触媒、またはその両方の存在下で実行される。要素5:選択的酸化は、均一系触媒の存在下で実行され、および該均一系触媒は、マンガン、モリブデン、タングステン、鉄、クローム、ニッケル、コバルト、銅、ルテニウム、およびそれらの組み合わせの複合体からなる群から選択された1つ以上の成分を含む遷移金属化合物からなる群から選択される。要素6:選択的酸化は、不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒は、担体と、および銀、金、銅、ルテニウム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された金属と、を含む。要素7:選択的酸化は、担体を含む不均一系触媒の存在下で実行され、および該担体は、金属酸化物、アルカリ土類炭酸塩、およびフィロケイ酸塩からなる群から選択された1つ以上の成分を含む。要素8:選択的酸化は、金属酸化物担体を含む不均一系触媒の存在下で実行され、および該金属酸化物担体は、アルミナ、シリカチタニア、ジルコニア、およびそれらの混合物からなる群から選択される。要素9:選択的酸化は、アルカリ土類炭酸塩担体を含む不均一系触媒の存在下で実行され、および該アルカリ土類炭酸塩は炭酸カルシウムを含む。要素10:選択的酸化は、フィロケイ酸塩担体を含む不均一系触媒の存在下で実行され、および該フィロケイ酸塩担体は、タルク、高陵石、葉ろう石、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。要素11:該オレフィン化合物は、エチレン、プロピレン、ブテン、1-オクテン、ブタジエン、塩化アリル、アリルアルコール、スチレン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。要素12:該オレフィン化合物は、プロピレンを含む。要素13:該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該パーフルオロ溶媒は、パーフルオロメチルデカリン、パーフルオロデカリン、パーフルオロペルヒドロフェナントレン、パーフルオロ(ブチルテトラヒドロフラン)(FC-75)、それらの異性体、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。要素14:該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該パーフルオロ溶媒は、パーフルオロデカリン、パーフルオロメチルデカリン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。要素15:該選択的酸化は、不均一系触媒の存在下で実行される。要素16:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒はある形状に加工されてない。要素17:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒は粉末形状である。要素18:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒はある形状に加工されている。要素19:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒は銀を含む。要素20:該選択的酸化は銀を含む不均一系触媒の存在下で実行され、および該銀はゼロ酸化状態にある。要素21:該選択的酸化は、約10重量パーセント~約70重量パーセントの銀元素を含む不均一系触媒の存在下で実行される。要素22:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該不均一系触媒は1族金属塩をさらに含む。要素23:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該触媒は硝酸カリウムをさらに含む。要素24:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該触媒は約0.05~約10重量パーセントの1族金属塩をさらに含む。要素25:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、および該触媒は約0.05~約10重量パーセントの1族金属塩をさらに含む。要素26:該選択的酸化は不均一系触媒の存在下で実行され、該触媒は約0.05~約10重量パーセントの1族金属塩をさらに含み、および該触媒は、レニウム、タングステン、亜鉛、ニッケル、金、銅、ナトリウム、カリウム、リチウム、ルビジウム、セシウム、モリブデン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択された促進剤をさらに含む。要素27:選択的酸化は、少なくとも0.1時間、1時間、または3時間のあいだ、少なくとも100℃、200℃、または300℃の温度に加熱するステップを含む。要素28:エポキシドへの該選択性(エポキシドに転化された反応オレフィン化合物のモルパーセントとして定義された選択性)は、約40%、50%、または60%以上である。要素29:該オレフィン化合物はプロピレンを含み、および該エポキシドは酸化プロピレンを含む。要素30:エポキシドへの少なくとも過半数の選択的酸化は、連続的に実行される。要素31:選択的酸化は、該オレフィン化合物および分子酸素を供給する酸化剤を発泡させて、パーフルオロ溶媒を含み蒸留部を備えた反応器に投入することで実行される。要素32:エポキシドを連続的に取り出して副生成物の形成を減少させるステップをさらに含む。
【0071】
本開示の一部の実施形態が示されて説明されたが、その修正は、本開示の教示を逸脱することなく当業者によって可能である。本開示に記載の実施形態はあくまで例示であり、および制限する意図はない。該開示の範囲内において、該開示の多くの変更および修正が可能である。
【0072】
他の多数の修正、等価物、および代替物は、上記開示が十分に認識されれば、当業者に明らかになるであろう。適用可能な場合、以下の請求項は、そのような修正、等価物、および代替物をすべて受け入れるように解釈することが意図されている。従って、該保護の範囲は上記の説明によって制限されず、しかし以下に続く請求項によってのみ、請求項の主題のすべての等価物を含む範囲によってのみ制限される。それぞれのすべての請求項は、本開示の実施形態として仕様に組み込まれる。したがって該請求項はさらなる説明であり、および該開示の詳細な説明の追加である。すべての特許の開示、特許申請、ここに引用された公報は、引用によってここに組み込む。