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特許7213952光学ガラス、光学ガラスで製造されるガラスプリフォーム又は光学素子及び光学機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】光学ガラス、光学ガラスで製造されるガラスプリフォーム又は光学素子及び光学機器
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/068 20060101AFI20230120BHJP
   G02B 1/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C03C3/068
G02B1/00
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2021507798
(86)(22)【出願日】2018-08-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-12-09
(86)【国際出願番号】 CN2018101160
(87)【国際公開番号】W WO2020034215
(87)【国際公開日】2020-02-20
【審査請求日】2021-04-06
(73)【特許権者】
【識別番号】512264046
【氏名又は名称】成都光明光▲電▼股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】CHENGDU GUANG MING GUANG DIAN GLASS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.359,Sec.3,Chenglong Avenue,Long quan yi District,Chengdu,Sichuan China
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】スン ウェイ
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105174714(CN,A)
【文献】特表2016-533312(JP,A)
【文献】特開2003-238195(JP,A)
【文献】特開2012-229148(JP,A)
【文献】特開2009-073716(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0222786(US,A1)
【文献】特開2018-052800(JP,A)
【文献】特開2009-167075(JP,A)
【文献】特開2005-272183(JP,A)
【文献】特開昭56-160340(JP,A)
【文献】特開2012-236754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、5~25%のBと、25~45%のLaと、15~35%のGdと、0~10%のYと、0~10%のYbと、2~15%のNbと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0.5~10%のTiOと、0~10%のWOとを含み、NbとTiOの重量比Nb/TiOは2.17~8.5であり、LaとGdとの重量比La/Gdは1.28~1.503937であり、且つTaを含有せず、ZrO とSiO の重量比はZrO /SiO ≧1であることを特徴とする光学ガラス。
【請求項2】
La、Gd、Y及びYbの合計含有量は50~75%であり、TiO、Nb及びWOの合計含有量は1~20%であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項3】
前記光学ガラスは、ZnO、BaO、CaO、SrO、MgO、Sb、LiO、NaO及びKOからなる群から選択される1種以上をさらに含み、且つ含有量として、ZnOは0~15%で、BaOは0~10%で、CaOは0~10%で、SrOは0~10%で、MgOは0~10%で、Sbは0~1%で、LiO、NaO及びKOは合計0~10%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の光学ガラス。
【請求項4】
酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、5~25%のBと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0~15%のZnOと、0~10%のBaOと、0~10%のCaOと、0~10%のSrOと、0~10%のMgOと、合計1~20%のTiO、Nb及びWOと、合計0~10%のLiO、NaO及びKOと、0~1%のSbと、合計50~75%のLa、Gd、Y及びYbとからなることを特徴である請求項1又は2に記載の光学ガラス。
【請求項5】
酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、8~22%のB、3~10%のSiO、3~12%のZrO、合計5~15%のTiO、Nb及びWO、及び/又は合計55~70%のLa、Gd、Y及びYbを含むことを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項6】
NbとSiOの重量比Nb/SiOは0.75~2であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項7】
NbとSiOの重量比Nb/SiOは1~1.5であることを特徴とする請求項6に記載の光学ガラス。
【請求項8】
LaとGdとの重量比La/Gdは1.3~1.503937であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項9】
LaとGdとの重量比La/Gdは1.4~1.5であることを特徴とする請求項8に記載の光学ガラス。
【請求項10】
及び/又はWOを含有しないことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項11】
結晶化上限温度は1350℃未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項12】
結晶化上限温度は1300℃未満であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項13】
屈折率はnd>1.87であり、アッベ数はvd>38.0であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項14】
屈折率はnd>1.88であり、アッベ数はvd>39.0であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項15】
耐水性Dwは3級以上であり、耐酸性Dは3級以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項16】
耐水性Dwは2級以上であり、耐酸性Dは2級以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項17】
耐水性Dwは1級であり、耐酸性Dは1級であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項18】
脈理はC級以上であり、泡の程度はA級以上であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項19】
脈理はB級以上であり、泡の程度はA級以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学ガラス。
【請求項20】
脈理はA級であり、泡の程度はA00級であることを特徴とする請求項19に記載の光学ガラス。
【請求項21】
透過率が70%となる時に対応する波長λ70は420nm以下であり、ガラス透過率が5%となる時に対応する波長λは360nm以下であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項22】
透過率が70%となる時に対応する波長λ70は390nm以下であり、ガラス透過率が5%となる時に対応する波長λは350nm以下であることを特徴とする請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項23】
密度は5.3g/cm未満であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の光学ガラス。
【請求項24】
密度は5.23g/cm未満であることを特徴とする請求項2に記載の光学ガラス。
【請求項25】
請求項1から2のいずれか一項に記載の光学ガラスで製造されることを特徴とするガラスプリフォーム又は光学素子。
【請求項26】
請求項2に記載の光学素子を含むことを特徴とする光学機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学ガラスの技術分野に関し、具体的には、光学ガラス、光学ガラスで製造されるガラスプリフォーム又は光学素子及び光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、デジタルカメラ、撮像装置、投影装置などの発展に伴い、光学素子への要求が高まっており、従って、より高性能な光学ガラスの開発・製造が求められている。このうち、高屈折率低分散光学ガラスからなるレンズと、高屈折率高分散光学ガラスからなるレンズとを組み合わせると、色収差を補正し、光学系を小型化することができ、特に屈折率ndが1.87より大きく、アッベ数vdが38.0より大きい高屈折率低分散光学ガラスに対して、市場の要求が日増しに高まっている。
【0003】
上記光学特性指数を満たすための配合の基本系はB-La-Zr-Taであることがより良く、ガラスを形成しやすく、生産に役立つが、Taは高価であり、生産コストを抑えることに不利である。また、一般的に、高屈折低分散ガラスの配合系では、ガラスの屈折率を高めるように、比較的多くの希土類酸化物を導入する必要があるが、異なる配合系では、ランタン系酸化物を多く導入するほど、ガラス形成のしやすさに影響を与え、含有量が多くなると、ガラスが結晶化しやすくなり、結晶化上限温度が高くなり、量産プロセスの製造に困難をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来技術に存在する高屈折低分散光学ガラスが失透しやすく、量産の困難性が高く、コストが高いという技術的問題を解決するため、光学ガラス、光学ガラスで製造されるガラスプリフォーム又は光学素子及び光学機器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、光学ガラスが提供される。この光学ガラスは、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、5~25%のBと、25~45%のLaと、15~35%のGdと、0~10%のYと、0~10%のYbと、2~15%のNbと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0.5~10%のTiOと、0~10%のWOとを含み、NbとTiOの重量比Nb/TiOは2.17~8.5であり、且つTaを含有しない。
【0006】
さらに、La、Gd、Y及びYbの合計含有量は50~75%であり、TiO、Nb及びWOの合計含有量は1~20%である。
【0007】
さらに、光学ガラスは、ZnO、BaO、CaO、SrO、MgO、Sb、LiO、NaO及びKOからなる群から選択される1種以上をさらに含み、且つ含有量として、ZnOは0~15%で、BaOは0~10%で、CaOは0~10%で、SrOは0~10%で、MgOは0~10%で、Sbは0~1%で、LiO、NaO及びKOは合計0~10%である。
【0008】
さらに、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、光学ガラスは、5~25%のBと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0~15%のZnOと、0~10%のBaOと、0~10%のCaOと、0~10%のSrOと、0~10%のMgOと、合計1~20%のTiO、Nb及びWOと、合計0~10%のLiO、NaO及びKOと、0~1%のSbと、合計50~75%のLa、Gd、Y及びYbとからなる。
【0009】
さらに、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、光学ガラスは、8~22%のB、3~10%のSiO、3~12%のZrO、合計5~15%のTiO、Nb及びWO、及び/又は合計55~70%のLa、Gd、Y及びYbを含む。
【0010】
さらに、NbとSiOの重量比Nb/SiOは0.75~2で、好ましくは1~1.5である。
【0011】
さらに、LaとGdとの重量比La/Gdは1.28~1.625であり、好ましくはLa/Gdは1.3~1.6で、より好ましくは1.4~1.5である。
【0012】
さらに、光学ガラスはY及び/又はWOを含有しない。
【0013】
さらに、ZrOとSiOの重量比はZrO/SiO≧1である。
【0014】
さらに、光学ガラスの結晶化上限温度は1350℃未満で、好ましくは1300℃未満である。
【0015】
さらに、光学ガラスの屈折率はnd>1.87で、好ましくはnd>1.88であり、アッベ数はvd>38.0で、好ましくはvd>39.0である。
【0016】
さらに、光学ガラスの耐水性Dwは3級以上で、好ましくは2級以上で、より好ましくは1級であり、耐酸性Dは3級以上で、好ましくは2級以上で、より好ましくは1級である。
【0017】
さらに、光学ガラスの脈理はC級以上で、好ましくはB級以上で、より好ましくはA級であり、泡の程度はA級以上で、好ましくはA級以上で、より好ましくはA00級である。
【0018】
さらに、光学ガラスの透過率が70%となる時に対応する波長λ70は420nm以下で、好ましくは390nm以下であり、ガラスの透過率が5%となる時に対応する波長λは360nm以下で、好ましくは350nm以下である。
【0019】
さらに、光学ガラスの密度は5.3g/cm未満で、好ましくは5.23g/cm未満である。
【0020】
本発明の別の態様によれば、ガラスプリフォーム又は光学素子が提供される。このガラスプリフォーム又は光学素子は上記いずれかの光学ガラスで製造される。
【0021】
本発明のさらに別の態様によれば、上記いずれかの光学素子である光学素子を含む光学機器が提供される。
【発明の効果】
【0022】
本発明の技術的解決手段を用いれば、光学ガラスの成分、含有量及び特定成分間の使用量比率を厳密に制御することにより、本発明の光学ガラスはTaを使用しない場合に、耐失透性を有し且つ性能が優れている高屈折低分散光学ガラスを得ることができ、また、本発明の光学ガラスは生産コストが低く、量産しやすい。
【発明を実施するための形態】
【0023】
なお、矛盾しない場合、本願における実施例及び実施例における特徴は互いに組み合わせることができる。以下、実施例と結び付けて本発明を詳細に説明する。
【0024】
本明細書において、特に断りのない限り、各成分の含有量は、すべて酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対する質量%で表す。ここで、「酸化物に換算した組成」とは、本発明のガラス構成成分である原料を溶融時にすべて酸化物に分解し転化すると仮定した場合に、この生成された酸化物の全質量を100質量%としてガラス中に含有される各成分を表す時の組成である。
【0025】
以下、各成分が光学ガラスにおいて果たす基本的な作用を説明するが、成分間の特定の含有量の配合比率による相乗作用又は予想もしない効果を不適切に限定するものではない。
【0026】
ガラス成分
は、ガラスの骨格を形成する成分であり、本発明においては、ガラスの溶融性、耐失透性を向上させ、ガラスの分散を低下させる働きを有する。しかし、その導入量が25%を超えると、ガラスの安定性が低下し、且つ屈折率が低下し、その導入量が5%未満であると、ガラスの溶融性が低下し、本発明に必要な光学定数に達することができない。したがって、本発明のBの含有量は5~25%であり、好ましくはBの含有量は8~22%である。
【0027】
SiOは、ガラスの骨格を構成する成分であり、耐失透性を向上させ、作業温度範囲を増大させる働きを有し、また、ガラスの化学的安定性を向上させ、ガラスの熱安定性を改善するなどの働きを有する。その含有量が15%を超えると、ガラスの溶融性が低下し、且つ本発明に必要な屈折率を得ることができない。本発明において、SiOの含有量は0.5~15%で、好ましくはSiOの含有量は3~10%である。
【0028】
ZrOは屈折率と安定性を高める成分である。中間酸化物としてガラスを形成するため、耐失透性及び化学的耐久性を向上させる働きも有する。ZrOの含有量が1%未満であると、上記の所期の効果を得ることができず、ZrOの含有量が15%を超えると、失透傾向が強くなり、ガラス化が困難となる傾向がある。本発明において、ZrOの含有量は1~15%であり、好ましくはZrOの含有量は3~12%である。
【0029】
本発明者らの研究によると、ZrO/SiO≧1に制御することにより、密度軽量化の効果を得ることができる。好ましくは、ZrO/SiOは3以下で、好ましくは0.7~2で、より好ましくは1~1.5である。
【0030】
TiOもガラスの屈折率を高める働きを有し、且つガラスのネットワークの形成に関与することができ、適量導入すると、ガラスをより安定させる。しかし、過剰に含有させると、ガラスの分散が著しく増加するとともに、ガラスの可視光領域における短波長部分の透過率が低下し、ガラスが着色する傾向が増加する。本発明において、TiOの含有量は0.5~10%で、好ましくは0.5~7%である。
【0031】
Nbは、屈折率及び分散性を高める成分であり、ガラスの耐結晶性及び化学的安定性を向上させる働きも有する。TiOもガラスの屈折率を高める働きを有し、且つガラスのネットワークの形成に関与することができ、適量導入すると、ガラスをより安定させる。WOは屈折率を高める働きを有し、発明者らの研究によると、本発明におけるTiO、Nb及びWOの合計含有量を1~20%の範囲に制御し、TiO、Nb及びWOの合計含有量が1%未満であると、本発明の効果が得られなくなり、その含有量が20%を超えると、ガラスの分散が著しく高まり、ガラスの可視光領域における短波長部分の透過率が低下し、着色の傾向が大きくなり、本発明のガラスの光学特性が得られなくなる。また、TiO、Nb及びWOは、他の成分と合わされて、本発明のガラスの密度を効果的に低下させることができ、合計含有量は5~15%であることが好ましく、本発明において、WOを含有しないことが好ましい。
【0032】
本発明はガラス成分にTaを導入しないが、Nb又はTiOを導入し、好ましくはTiOとNbをガラス成分として共存させ、より好ましくはNb/TiOを2.17~8.5に制御し、さらに好ましくはNb/TiOを3.8~6.5にし、さらに好ましくはNb/TiOを4~5.5にすることにより、高屈折低分散を実現し、ガラスの着色度を効果的に抑制するとともに、ガラスの結晶化上限温度を効果的に低下させ、また、ガラスの安定性を良好にすることができる。
【0033】
La、Gd、Y及びYbは、いずれもガラスの屈折率を高める主成分であり、屈折率を高めることができるが、分散を著しく増大させることはない。本願において、一定量の上記希土類酸化物を添加すると、結晶化上限温度を低下させ、ガラスの耐失透性を向上させ、化学的安定性を改善することができ、溶融過程でガラスの泡が生じにくいなどの作用のため、上記技術的効果を実現し、発明の目的を達成するように、本発明の高屈折低分散ガラスの配合系におけるLa、Gd、Y及びYbの合計含有量は50%以上、且つ75%以下とし、範囲は好ましくは55-70%とし、より好ましくは60-67%である。
【0034】
しかし、一般的に、ランタン系酸化物を多く導入するほど、ガラス形成性に影響を与え、含有量が多くなると、ガラスが結晶化しやすくなり、結晶化上限温度が高くなり、量産プロセスの製造に困難をもたらし、そのため、一般的に高屈折低分散性のランタン系酸化物の含有量が60%以下であればこそ、ガラスが結晶化しにくいことを保証することができる。本発明の高屈折低分散ガラスでは、ランタン系酸化物LaとGdとの重量比La/Gdが1.28~1.625である様に成分及び含有量を制御することにより、ランタン系酸化物の含有量が60%以下である場合や、60%を超える場合にも、ガラスの結晶化上限温度が上昇しないことを保証することができる。結晶化上限温度は1350℃未満で、好ましくは1300℃未満で、より好ましくは1280℃未満であると、成分のガラス形成性が良好で、溶融過程でガラスの泡が生じにくいことを確保することができ、さらに、良好な光学性能及び成形性能などを保証することができる。好ましくは、La/Gdは1.3~1.6で、より好ましくは、La/Gdは1.4~1.5である。
【0035】
ZnOはガラスの屈折率及び分散を調整することができ、適量のZnOはガラスの安定性や溶融性を改善し、プレス成形性を改善する働きを有するが、その含有量が高すぎると、屈折率が低下し、本発明の要件を満たさないとともに、ガラスの耐失透性が低下し、結晶化上限温度が上昇する。したがって、本発明のZnOの含有量は0~15%で、好ましくは0~10%で、より好ましくは0~5%である。
【0036】
BaO、CaO、SrO及びMgOのようなアルカリ土類金属の酸化物は、ガラスの化学的安定性を低下させ結晶化上限温度を上昇させることができるが、それぞれの含有量が10%を超えると、ガラスの耐失透性が低下するため、本発明において、BaOは0~10%で、CaOの含有量は0~10%で、SrOの含有量は0~10%で、MgOの含有量は0~10%である。
【0037】
LiO、NaO及びKOは、分相を抑制し、ガラスの安定性を向上させる成分である。その含有量が10%を超えると、化学的安定性が著しく低下するか、又は屈折率が低下する傾向があり、好ましくはLiO、NaO及びKOの合計含有量は0~10%である。
【0038】
本発明の代表的な実施形態によれば、光学ガラスが提供される。この光学ガラスは、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、5~25%のBと、25~45%のLaと、15~35%のGdと、0~10%のYと、0~10%のYbと、2~15%のNbと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0.5~10%のTiOと、0~10%のWOとを含み、NbとTiOの重量比Nb/TiOは2.17~8.5であり、且つTaを含有しない。
【0039】
本発明の技術的解決手段を用いれば、光学ガラスの成分、含有量及び特定成分間の使用量比率を厳密に制御することにより、本発明の光学ガラスはTaを使用しない場合に、優れた耐失透性及び光学性能を有し、量産しやすく、且つ生産コストが低い。
【0040】
本発明の代表的な実施形態によれば、光学ガラスは、ZnO、BaO、CaO、SrO、MgO、Sb、LiO、NaO及びKOからなる群から選択される1種以上をさらに含み、且つ含有量として、ZnOは0~15%で、BaOは0~10%で、CaOは0~10%で、SrOは0~10%で、MgOは0~10%で、Sbは0~1%で、LiO、NaO及びKOは合計0~10%である。
【0041】
本発明の代表的な実施形態によれば、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、光学ガラスは、5~25%のBと、0.5~15%のSiOと、1~15%のZrOと、0~15%のZnOと、0~10%のBaOと、0~10%のCaOと、0~10%のSrOと、0~10%のMgOと、合計1~20%のTiO、Nb及びWOと、合計0~10%のLiO、NaO及びKOと、0~1%のSbと、合計50~75%のLa、Gd、Y及びYbとからなる。ここで、LaとGdとの重量比La/Gdは1.28~1.625である。光学ガラスの成分、含有量及び特定成分間の使用量比率を厳密に制御することにより、本発明の光学ガラスはTaを使用しない場合に、より高い耐失透性及び優れた光学性能を有し、量産しやすく、且つ生産コストが低い。
【0042】
好ましくは、本発明の代表的な実施形態によれば、酸化物に換算した組成のガラスの全質量に対して、質量パーセントで、前記光学ガラスは、8~22%のB、3~10%のSiO、3~12%のZrO、合計5~15%のTiO、Nb及びWO、及び/又は合計55~70%のLa、Gd、Y及びYbを含む。
【0043】
本発明において、Yは、ガラスの溶融性、耐失透性を改善することができるとともに、ガラスの結晶化上限温度を低下させることができるが、その含有量が一定量を超えると、ガラスの安定性、耐失透性が低下する。WOは屈折率を高める働きを有するが、WOの含有量が10%を超えると、失透傾向が強くなり、ガラス化が困難になる傾向があり、分散が顕著に高まるとともに、ガラスの可視光領域における短波長側の透過率が低下し、着色の傾向が大きくなる。従って、本発明ではWOの含有量は0~10%であることが好ましい。本発明の代表的な実施形態によれば、光学ガラスはY及び/又はWOを含有しないことが好ましい。
【0044】
本発明において、Nbの含有量とSiOの含有量の比Nb/SiOを0.75~2に制御することにより、ガラスの溶融性を増加させ、ガラスの安定性を効果的に増加させ、脈理を生成しにくくし、ガラスの均質性を高くすることができるだけでなく、また、透過率を悪化させずガラスの屈折率、耐結晶性及び化学的耐久性を向上させる働きを有し、特にNb/SiOが1~1.5である場合に、効果が特に顕著である。
【0045】
Sb、SnO、CeO成分を少量添加することにより、ガラスの清澄効果を高めることができるが、Sbの含有量が1%を超えると、ガラスは清澄性能が低下する傾向があるとともに、その強い酸化作用が成形金型の劣化を促進する。従って、本発明において、Sbの添加量は、好ましくは0~1%、より好ましくは0~0.5%である。SnOは清澄剤として添加されてもよいが、その含有量が1%を超えると、ガラスが着色され、又は、ガラスを加熱し、軟化してプレス成形などの再成形を行う時、Snが結晶核生成の起点となり、失透する傾向が生じる。したがって、本発明のSnOの含有量は、好ましくは0~1%で、より好ましくは0~0.5%であり、さらに好ましくは添加しない。CeOは作用及び添加量比率がSnOと一致し、その含有量は、好ましくは0~1%で、より好ましくは0~0.5%であり、さらに好ましくは添加しない。
【0046】
本発明の光学ガラスの性能に影響を与えず、一定量のP、Al、Bi、GeO、Lu及びFなどの成分を適宜導入することができる。
【0047】
本発明の光学ガラスは、高屈折率低分散ガラスであり、高屈折率低分散ガラスで製造されるレンズは、よく高屈折率高分散ガラスで製造されるレンズと組み合わせて、色収差補正に用いられ、また、光学ガラスをレンズとして使用する場合に、屈折率を高めるほどレンズを薄型化することが可能であり、光学機器の小型化に役立ち、本発明の光学ガラスの屈折率はnd>1.87で、好ましくはnd>1.88であり、アッベ数はvd>38.0で、好ましくはvd>39.0である。
【0048】
光学ガラス素子は、製造及び使用の過程において、その研磨面が水、酸など様々な浸食媒体の作用に抵抗する能力が光学ガラスの化学的安定性と呼ばれ、それは、主にガラスの化学成分によって決定される。本発明の光学ガラスの耐水性Dw(粉末法)は3級以上で、好ましくは2級以上で、より好ましくは1級である。耐酸性D(粉末法)は3級以上で、好ましくは2級以上で、より好ましくは1級である。ガラスの上限結晶化温度は、温度勾配炉法を用いてガラスの結晶化性能を測定し、ガラスを180*10*10mmのサンプルに作製し、側面を研磨し、温度勾配(5℃/cm)を持つ炉内に入れて1400℃に昇温し、4時間保温した後に、取り出して室温まで自然に冷却し、顕微鏡でガラスの結晶化状況を観察し、ガラスにおける結晶の出現に対応する最高温度をガラスの上限結晶化温度とする。ガラスの結晶化上限温度が低いほど、ガラスは高温時の安定性が高くなり、生産のプロセスパフォーマンスが良好になる。本発明の代表的な実施形態によれば、好ましくは、光学ガラスの結晶化上限温度は1350℃未満で、好ましくは1300℃未満で、より好ましくは1280℃未満である。
【0049】
本発明のガラスの短波長分光透過特性は着色度(λ70/λ)で表される。λ70は、ガラスの透過率が70%になる時に対応する波長であり、λは、ガラスの透過率が5%になる時に対応する波長であり、ただし、λ70の測定は、互いに平行で光学研磨された2つの対向面を有する厚さが10±0.1mmであるガラスを用いて、280nmから700nmの波長域内の分光透過率を測定し、透過率が70%を示す波長である。分光透過率又は透過率とは、ガラスの上記表面に強度Iinの光を垂直に入射し、ガラスを透過して1つの平面から強度Ioutの光を出射する場合の、Iout/Iinで表される量であり、ガラスの上記表面での表面反射損失の透過率も含む。ガラスの屈折率が高いほど、表面反射損失が大きくなる。したがって、高屈折率ガラスにおいて、λ70の値が小さいということは、ガラス自体の着色が極めて少ないことを意味する。光学ガラスの透過率が70%となる時に対応する波長(λ70)λ70は420nm以下で、好ましくは390nm以下であり、ガラスの透過率が5%となる時に対応する波長(λ)は360nm以下で、好ましくは350nm以下である。
【0050】
光学ガラスの密度は、温度20℃における単位体積あたりの質量であり、単位はg/cmであり、本発明の光学ガラスの密度は5.3未満で、好ましくは5.23未満である。
【0051】
脈理の程度とは、点光源とレンズで構成される脈理検査装置を用い、脈理が最も見えるような方向から、標準試料と比較検査を行い、それぞれがA、B、C、D級の4級に分けられ、A級は、所定の検出条件で、目に見える脈理がないものであり、B級は、所定の検出条件で、薄くて分散した脈理があるものであり、C級は、所定の検出条件で、平行な脈理がわずかにあるものであり、D級は、所定の検出条件で、粗い脈理があるものである。従来の技術において、このような製品は、Taのような貴金属の酸化物を用いない条件で、耐結晶性が低いため、20mm以上の厚さの製品を製造すれば、結晶脈理が発生しやすい。一方、厚い仕様の製品は大口径(60mmより大きい)レンズの製造に必要な仕様である。現在、光学技術の発展により、大口径レンズに対するニーズがますます多くなり、さらに製造メーカが厚さ20mm以上のブランク製品を提供することを要求している。
【0052】
光学ガラスの泡品質は、GB/T 7962.8-2010に規定される測定方法に従って測定する。泡の程度とは、ガラス中の許容される泡の含有量の級であり、泡はガラス製品の外観品質に影響を与えるだけでなく、さらに、ガラスの光学性能、透明度、機械的強度などに影響を与え、ガラスに多くの悪影響を与えるため、ガラスの泡の程度を制御することは非常に重要であり、本発明は希土類酸化物La、Gd、Y及びYbとの合計含有量を制御することにより、さらに、ガラスの泡の程度がA級以上で、好ましくはA級以上で、より好ましくはA00級であることを実現することができる。
【0053】
本発明の別の態様によれば、ガラスプリフォーム又は光学素子が提供される。このガラスプリフォーム又は光学素子は上記いずれかの光学ガラスで製造される。本発明の光学プリフォームは、高屈折率低分散の特性を有し、本発明の光学素子は、高屈折率低分散の特性を有し、光学性能に優れた各種のレンズ、プリズムなどの光学素子を低コストで提供することができる。レンズの例としては、レンズ面が球面又は非球面である凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなど、各種のレンズが挙げられる。このようなレンズは、高屈折率高分散ガラスで製造されるレンズと組み合わせることにより、色収差を補正することができ、色収差補正用のレンズとして好適である。また、光学系のコンパクト化にも有効なレンズである。また、プリズムにとって言えば、屈折率が高いため、撮像光学系に組み込まれることにより、光路を曲げ、必要な方向に向くことで、コンパクトで広角な光学系を実現することができる。
【0054】
本発明のさらに別の態様によれば、上記いずれかの光学素子である光学素子を含む光学機器が提供される。本発明の光学機器はデジタルカメラ、ビデオカメラなどであってもよい。
【0055】
以下、実施例と結び付けて本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0056】
実施例
光学ガラスの実施例
表1~表9に示す組成を有するガラスを得るために、原料として炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、酸化物、硼酸などを用い、光学ガラスの成分に対応する原料を、比率で各原料を秤量して、十分に混合して調合原料とし、この調合原料を白金製坩堝内に入れ、1200~1450℃に加熱し、溶融、撹拌、清澄をして、均質な溶融ガラスを形成し、この溶融ガラスを適度に降温した後、予熱した金型に入れ、650~700℃で2~4時間保持した後、徐冷し、光学ガラスを得る。また、各ガラスの特性を以下に示す方法により測定し、測定結果を表1~表9に示す。
【0057】
(1)結晶化上限温度
温度勾配炉法を用いてガラスの結晶化性能を測定し、ガラスを180*10*10mmのサンプルに作製し、側面を研磨し、温度勾配(5℃/cm)を持つ炉内に入れて1400℃に昇温し、4時間保温した後に、取り出して室温まで自然に冷却し、顕微鏡でガラスの結晶化状況を観察し、ガラスにおける結晶の出現に対応する最高温度をガラスの結晶化上限温度とする。
【0058】
(2)屈折率nd及びアッベ数vd
屈折率と分散係数は、GB/T7962.1-2010に規定された方法に従って測定する。
【0059】
(3)化学的安定性
GB/T 17129の測定方法に従って耐水性Dw及び耐酸性Dを測定する。
【0060】
(4)脈理の程度
MLL-G-174Bに規定された方法に従って測定する。
【0061】
(5)泡の程度
光学ガラスの泡品質は、GB/T7962.8-2010に規定された測定方法に従って測定する。
【0062】
(6)ガラスの着色度(λ70、λ
2つの対向する光学研磨面を有する厚みが10±0.1mmのガラスサンプルを用いて分光透過率を測定し、その結果に基づいて算出する。
【0063】
(7)密度
GB/T7962.20-2010に規定された方法に従って測定する。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】
【表5】
【0069】
【表6】
【0070】
【表7】
【0071】
【表8】
【0072】
【表9】
【0073】
光学プリフォームの実施例
表1における実施例1で得られた光学ガラスを所定の大きさに切断し、そして表面に窒化ホウ素粉末からなる離型剤を均一に塗布し、続いて加熱して、軟化し、プレス成形を行い、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなど、各種のレンズ、プリズムのプリフォームを作製する。
【0074】
光学素子の実施例
上記光学プリフォームの実施例で得られたプリフォームをアニールし、ガラス内部の歪みを低減するとともに、屈折率などの光学特性が所期の値になるように微調整する。
【0075】
次に、各プリフォームを研削し、研磨し、凹メニスカスレンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、両凹レンズ、平凸レンズ、平凹レンズなど、各種のレンズ、プリズムを作製する。得られた光学素子の表面には、反射防止膜を塗布してもよい。
【0076】
以上は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を限定するものではなく、当業者にとって、本発明は様々な変更及び変更が可能である。本発明の精神及び原則内で行われた任意の修正、同等の置換、改善などは、いずれも本発明の範囲内に含まれるべきである。