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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】濾過及び/又は拡散装置を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 63/02 20060101AFI20230120BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
B01D63/02
B01D63/00 500
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021536162
(86)(22)【出願日】2019-09-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2019073407
(87)【国際公開番号】W WO2020048948
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-07-27
(31)【優先権主張番号】18192571.0
(32)【優先日】2018-09-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】500313950
【氏名又は名称】ガンブロ ルンディア アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バウマイスター,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】ヒルシグ,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バイアー,トビアス
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-196707(JP,A)
【文献】特開平09-290138(JP,A)
【文献】特開2010-234308(JP,A)
【文献】特開昭64-070107(JP,A)
【文献】特開2009-154910(JP,A)
【文献】特開平06-170181(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第00803281(EP,A1)
【文献】国際公開第2017/088845(WO,A1)
【文献】特開2016-137468(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0029785(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/22
B01D 61/00-71/82
C02F 1/44
A61M 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状ハウジング(15)内に配置された中空糸膜の束(10)を含む濾過及び/又は拡散装置の製造方法であって、中空糸膜の束(10)の第1の端部を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより該束(10)の第1の端部を密封することを含み、管状ハウジング(15)の第1の端部を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第1の端部に対応する管状ハウジング(15)の第1の端部を密封することを含み、それによって、当該束(10)の第1の端部及び管状ハウジング(15)の第1の端部を密封し、端壁(45)の形成中に管状ハウジング(15)からのポッティング樹脂の漏出を防止するポッティングキャップ(36)を形成し、その後当該束(10)の端部をポッティング樹脂に埋め込むことにより、管状ハウジング(15)内に端壁(45)を形成することを含むポッティング工程、ここで、ポッティング樹脂はポリウレタンであり、及びポッティングされた束(10)の端部を、ポッティング樹脂を硬化させ、端壁(45)を形成した後に凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取ることにより、繊維を再度開繊させることを含むその後の工程をさらに含む、方法。
【請求項2】
中空糸膜の束(10)の第2の端部を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより中空糸膜の束(10)の第2の端部を密封することをさらに含み、管状ハウジング(15)の第2の端部を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第2の端部に対応する管状ハウジング(15)の第2の端部を密封することを含み、それによって、当該束(10)の第1の端部及び管状ハウジング(15)の第1の端部を密封し、端壁(45)の形成中に管状ハウジング(15)からのポッティング樹脂の漏出を防止するポッティングキャップ(36)を形成し、その後当該束(10)の端部をポッティング樹脂に埋め込むことにより、管状ハウジング(15)内に端壁(45)を形成することを含むポッティング工程、及びポッティングされた束(10)の端部を、ポッティング樹脂を硬化させ、端壁(45)を形成した後に凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取ることにより、繊維を再度開繊させることを含むその後の工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポッティング工程に先立ち、中空糸膜の束(10)の第1及び第2の端部と、管状ハウジング(15)の第1及び第2の端部とが密封される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
管状ハウジング(15)内に配置された中空糸膜の束(10)を含む濾過及び/又は拡散装置の製造方法であって、管状ハウジング(15)の両端が各々ポッティング環(20)を特徴とし、ポッティング環(20)は管状ハウジング(15)のそれぞれの端に取り付けられた個別の管状構成部分であり、当該管状ハウジング(15)の第1の端部上のポッティング環(20)の口を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第1の端部に対応する管状ハウジング(15)の第1の端部を密封すること、当該管状ハウジング(15)の第2の端部上のポッティング環(20)の口を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第2の端部に対応する管状ハウジング(15)の第2の端部を密封することを含み、それによって、当該束(10)の端部及び管状ハウジング(15)の端部を密封し、端壁(45)の形成中に管状ハウジング(15)からのポッティング樹脂の漏出を防止するポッティングキャップ(36)を形成し、その後当該束(10)の端部をポッティング樹脂に埋め込むことにより、管状ハウジング(15)内に端壁(45)を形成することを含むポッティング工程、ここで、ポッティング樹脂はポリウレタンであり、及びポッティングされた束(10)の端部を、ポッティング樹脂を硬化させ、端壁(45)を形成した後に凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取ることにより、繊維を再度開繊させることを含むその後の工程、を含む、方法。
【請求項5】
ポッティング環(20)の直径は、ポッティング環(20)の一方の端部上で、他方の端部上よりも大きく、より大きな直径は管状ハウジング(15)の外径に一致し、より小さな直径は、束(10)の直径に一致する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ポッティング環(20)及び熱可塑性樹脂の溶融物(35)が、同じ熱可塑性樹脂を含む、請求項4又は5に記載の方法。
【請求項7】
管状ハウジング(15)内に配置された中空糸膜の束(10)を含む濾過及び/又は拡散装置の製造方法であって、管状ハウジング(15)の各端部において、支持リング(40)が管状ハウジング(15)内に配置され、支持リング(40)は管状ハウジング(15)の内側のレッジに取り付けられた個別の環状構成部分であり、管状ハウジング(15)の対応する端部において管状ハウジング(15)の口から突出した管状の突起(41)を特徴とし、管状の突起(41)を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第1の端部に対応する当該管状ハウジング(15)の第1の端部を密封すること、管状の突起(41)を熱可塑性樹脂の溶融物(35)に浸漬し、該溶融物を凝固させることにより当該束(10)の第2の端部に対応する当該管状ハウジング(15)の第2の端部を密封することを含み、それによって、当該束(10)の端部及び管状ハウジング(15)の端部を密封し、端壁(45)の形成中に管状ハウジング(15)からのポッティング樹脂の漏出を防止するポッティングキャップ(36)を形成し、その後当該束(10)の端部をポッティング樹脂に埋め込むことにより、管状ハウジング(15)内に端壁(45)を形成することを含むポッティング工程、ここで、ポッティング樹脂はポリウレタンであり、及びポッティングされた束(10)の端部を、ポッティング樹脂を硬化させ、端壁(45)を形成した後に凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取ることにより、繊維を再度開繊させることを含むその後の工程、を含む、方法。
【請求項8】
管状の突起(41)の材料がポリエチレンである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
管状の突起(41)の材料が支持リング(40)の残りの材料と異なる、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
支持リング(40)の残りの材料がポリプロピレンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
熱可塑性樹脂がポリオレフィンである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
ポリオレフィンがポリエチレンである、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、濾過及び/又は拡散装置、例えば、毛細管透析装置又は限外濾過装置を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
毛細管透析装置を製造するための一般的な方法は、中空糸膜の束を作り、束を管状ハウジングに移し、束に存在する中空糸の末端を封鎖し、ポッティングキャップでハウジングの口を閉じ、束の両端をポッティング剤でポッティングして、管腔から中空糸膜の外表面を分離する、管状のハウジング内の端壁手段を作り、端壁の一部を切り取ることによって個々の中空糸の末端を再度開繊することを含む。
【0003】
WO2013/190022A1号は、端壁手段と管状ハウジングの第1及び第2末端のハウジングとの間に支持リングが配置された毛細管透析装置を開示する。支持リングは、管状ハウジングの内側のレッジ上に配置され、ポッティング材料と連結させて、端壁手段を形成する。
【0004】
中空糸膜の端部は、繊維束の端部を、ポッティング樹脂、例えば、ポリウレタンを用いてポッティングする前に密封しなければならない。これは、ポッティング樹脂が毛細管力によって中空糸に吸い込まれ、糸を詰まらせることがないようにするために必要である。中空糸膜は、個々の繊維の端部を溶融することによって密封することができる。
【0005】
JP2003/062433A号は、中空糸膜にポッティング剤を浸透させることなく、中空糸膜の束の末端部分のポッティングを効率的に行うことができる中空糸膜モジュールを製造する方法を開示する。この製造方法では、円筒形のケースに中空糸膜の束を挿入し、その端部が円筒形のケースから突き出るようにし、端部をつぶして密封し、円筒形のケースの開口部にポッティングし、つぶして密封した部分はその後切り取る。
【0006】
US4341005A号は、中空糸流体分画セルの製造方法を開示し、該方法は、風車の周縁部にセルの長軸方向の壁の一連の半分の部分を置き、その部分が満杯又はわずかにあふれるまで流体が満たされた透過性の中空糸をその周りに巻き、風車上の繊維が充填された各部分に別の接合する半殻を置き、セルコアを組み立て、各部分間の経路を切断し、そこから流体を排出し、繊維の経路の周りに初期流体ポッティング化合物を入れ、セルの各端部において繊維の周りにポッティング化合物を遠心的に流延し、ポッティング化合物の領域内の各端部で繊維を切り取り、その中空コアを再露出させる。
【0007】
EP0803281A1号は、(1)天然又は合成高分子物質で作られた中空糸型分離膜の束であって、その少なくとも1つの末端部分に開口部を有する束、及び(2)熱可塑性樹脂、例えばポリエチレン又はポリプロピレンで作られ、該高分子物質の溶融又は分解温度以下の温度で該束に結合させ、該高分子材料との相溶性を示さず、かつ相互の束縛界面の持続を可能にする半結合状態で該束の開口部を水密で密封するように適合させた密封部分を含むフィルター要素を開示する。密封部分の作製方法の1つは、中空糸型分離膜の原料の溶融温度以下の温度で、くぼんだ金属ダイ内で密封部分の原料としての熱可塑性樹脂を溶融させ、第1の密封を行うために密封部分の原料の溶融物に束状の中空糸型分離膜の開放末端を密封部分の原料の溶融物に挿入し、第2の密封を行うために溶融物が中空糸型分離膜の原料の溶融温度以下の温度にある間に、密封部分の原料の溶融物に束状の中空糸型分離膜の開放末端を再び挿入し、束を冷やすことを含む。
【0008】
JPH06262043A号は血液透析器を開示しており、血液と接触する隔壁の面は滑らかに形成された曲面を有する。血液透析器を製造するために、中空糸膜の束をハウジングに配置し、束の端部を第1の液体樹脂、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、又はエチレンビニルアルコールに浸す。第1の液体樹脂の表面を曲面に形成し、中空糸膜の外側の空間の中の樹脂の液面は中空糸膜の管腔より低く、樹脂は硬化させる。次に、隔壁を形成するための第2の樹脂、例えばポリウレタン樹脂を、中空糸膜の端部の間、及び中空糸膜の端部とハウジングの間の空間に注ぎ、第2の樹脂を硬化させて隔壁を形成し、中空糸束の端部をハウジングに固定する。その後、硬化した第1の樹脂を隔壁の表面から剥離させる。
【0009】
例えば、要求される複数の工程の1つ以上を排除することにより濾過及び/又は拡散装置の製造方法を簡素化し、又は2つ以上の方法の工程を単一の方法の工程に組み合わせることにより製造方法を効率化することが望まれるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】国際公開第2013/190022号
【文献】特開第2003-062433号公報
【文献】米国特許第4341005号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0803281号明細書
【文献】特開平06-262043号公報
【発明の概要】
【0011】
本開示は、管状のハウジング内に中空糸膜の束を含む濾過及び/又は拡散装置を製造するための方法を提供する。この方法では、線維の端部と管状のハウジングの口を熱可塑性樹脂で密封する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示の方法の実施形態の異なる段階における濾過及び/又は拡散装置の概略図である。
図2】本開示の方法の別の実施形態の段階における濾過及び/又は拡散装置の詳細の部分図である。
図3】本開示の方法のさらなる実施形態の段階における濾過及び/又は拡散装置の縦断面の概略部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、中空糸膜を含む濾過及び/又は拡散装置を製造するための方法を提供する。濾過及び/又は拡散装置の例には、毛細管透析器、血液濾過器、プラズマフィルター、及び限外濾過装置が含まれる。この方法は、管状のハウジング内に配置された中空糸膜の束を提供することを含む。
【0014】
本開示は、管状ハウジング内に配置された中空糸膜の束を含む濾過及び/又は拡散装置の製造方法を提供し、この方法は、中空糸膜の束の第1の端部を、熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させることによって、中空糸膜の束の第1の端部を密封することを含む。
【0015】
1つの実施形態において、前記方法はさらに、管状ハウジングの第1の端部を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させることによって、束の第1の端部に対応する管状ハウジングの第1の端部を密封することを含む。
【0016】
さらなる実施形態では、前記方法はまた、束の第2の端部を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させることによって、中空糸膜の束の第2の端部を密封することを含む。
【0017】
さらに別の実施形態では、前記方法はまた、管状ハウジングの第2の端部を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させることによって、束の第2の端部に対応する管状ハウジングの第2の端部を密封することを含む。
【0018】
束内の繊維の長さは管状ハウジングの長さよりも長く、繊維束の端部はハウジングの両端部においてハウジングから突出している。1つの実施形態において、繊維束の長さは、ハウジングの長さを4~16mm、例えば8~14mm上回る。その結果、束の端部はハウジングの両端においてハウジングの口から2~8mm、例えば4~7mm突出する。
【0019】
束に存在する中空糸膜の組成は特に限定されない。天然又は合成ポリマーを含む非常に様々な膜が、本開示の方法に使用するのに適している。例としては、セルロース又はその誘導体、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアミド(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を含む繊維が挙げられる。1つの実施形態において、繊維は、少なくとも1種の疎水性ポリマーと少なくとも1種の親水性ポリマーとのブレンドを含む。特定の実施形態において、繊維は、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、又はポリアリールエ-エルスルホンをポリビニルピロリドンと組み合わせて含む。
【0020】
1つの実施形態において、中空糸膜は180μm~250μmの範囲の内径を有する。別の実施形態において、内径は185μm~195μmの範囲にある。さらに別の実施形態において、内径は210μm~220μmの範囲にある。
【0021】
1つの実施形態において、中空糸膜の壁厚は20μm~55μmの範囲にある。1つの実施形態において、壁厚は33μm~37μmである。別の実施形態において、壁厚は38~42μmである。さらに別の実施形態では、壁厚は43μm~47μmである。さらに別の実施形態では、壁厚は48μm~52μmである。
【0022】
中空糸膜膜は、対称的な壁構造又は非対称の壁構造を有することができる。1つの実施形態において、膜壁は対称的なスポンジ構造を有する。別の実施形態において、膜壁は非対称のスポンジ構造を有する。方法のさらに別の実施形態において、膜壁は非対称の壁構造を有し、指状の構造を有する層、すなわち5μmを超える大きさを有するマクロボイド(macrovoid)を特徴とする層を含む。
【0023】
1つの実施形態において、中空糸膜の束における繊維の数は、6,000~12,000の範囲、例えば、9,000~12,000の範囲である。1つの実施形態において、束の直径は、20~50mm、例えば、20~30mm、又は30~45mmの範囲である。ほとんどの場合、中空の繊維膜の束の直径は、ハウジングの管状部分の内径に対応し、すなわち、束の繊維はハウジングの断面全体に広がる。
【0024】
濾過及び/又は拡散装置のための適切な管状ハウジングは当技術分野で知られており、一般的には射出成形によって製造される。方法の1つの実施形態において、ハウジングは透明な熱可塑性ポリマーで構成される。1つの実施形態において、ハウジングはポリカーボネートから構成される。別の実施形態では、ハウジングはポリプロピレンから構成される。
【0025】
管状のハウジングは、中央管状部分及び中央管状部分の両端のヘッダー部分を含む。1つの実施形態において、ヘッダー部分の直径は管状部分の直径と同じである。別の実施形態では、ヘッダー部分の直径は管状部分の直径よりも大きい。ハウジングの寸法は、異なるサイズの範囲にわたって変化してもよい。1つの実施形態において、ハウジングの長さは、120~350mm、例えば、130~170mm、又は240~300mmの範囲である。1つの実施形態において、ハウジングの内径は、20~50mm、例えば、20~30mm、又は30~45mmの範囲である。
【0026】
管状のハウジングは、その外壁に少なくとも1つの流体ポートを備える。流体ポートは、濾過及び/又は拡散装置の流体入口及び/又は流体出口として機能するように構成される。1つの実施形態において、管状ハウジングは、2つの流体ポートを含む。
【0027】
方法の1つの実施形態では、管状ハウジングの口は、ハウジングの一端を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させ、次いで、ハウジングの他端を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、溶融物を凝固させることによって密封される。溶融した熱可塑性樹脂は、凝固の際に、繊維束内の個々の繊維の端部を密封し、ハウジングの口を密封する連続的ポリマーを形成し、端壁手段の形成の間、ハウジングからのポッティング樹脂の漏出を防止するポッティングキャップを形成する。
【0028】
方法の1つの実施形態において、2段階の手順が使用される。第1の工程では、中空糸の束の端部にある繊維の端部だけを熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、繊維束の端部に付着した熱可塑性樹脂の第1のブロックを作製することにより密封する。第2の工程では、熱可塑性樹脂の第1のブロックで束の端部に対応するハウジングの口もまた、熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬して、第1のブロックを包囲する熱可塑性樹脂の第2のブロックを製造することにより密封する。
【0029】
適切な熱可塑性樹脂は、ハウジング及び束に存在する中空糸膜の両方のガラス転移温度より低いガラス転移温度を有する。1つの実施形態において、熱可塑性樹脂はポリオレフィンである。特定の実施形態において、熱可塑性樹脂はポリエチレンである。別の実施形態において、熱可塑性樹脂はポリエステルである。適切なポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)が挙げられる。特定の実施形態において、熱可塑性樹脂は、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート(PETG)である。
【0030】
浸漬工程における熱可塑性樹脂の溶融物の初期温度、すなわち、ハウジングの端部が溶融物に浸漬される前の熱可塑性樹脂の溶融物の初期温度は、熱可塑性樹脂の融点よりも高く、例えば、該融点より少なくとも20K、又は少なくとも50K高く、又は該融点より少なくとも100K高いことさえある。
【0031】
1つの実施形態において、溶融物の深さは1~5mm、例えば、1~3mmの範囲である。方法の1つの実施形態において、熱可塑性樹脂の溶融物は、ハウジングの外径よりもわずかに大きい直径を有するるつぼに提供される。方法の別の実施形態において、熱可塑性樹脂の溶融物は、金属板の円形の凹部内に提供され、その円形の凹部は、ハウジングの外径よりわずかに大きい直径を有する。1つの実施形態において、円形の凹部は2~10mmの範囲の深さを有する。
【0032】
方法の1つの実施形態において、熱可塑性樹脂の溶融物をそれぞれるつぼ又は金属板の円形の凹部に投与することにより、溶融物をそれぞれるつぼ又は金属板に提供する。1つの実施形態において、溶融物の温度は、250℃~360℃の範囲であり、例えば、280℃~320℃の範囲である。
【0033】
方法の別の実施形態において、熱可塑性樹脂の固体粒子、例えば、粉末又は粒状物をるつぼ又は金属板の円形の凹部に投与し、それぞれるつぼ又は金属板の円形の凹部を加熱して熱可塑性樹脂を溶融させることにより、溶融物をそれぞれるつぼ又は金属板に提供する。1つの実施形態において、それぞれ、るつぼ又は金属板の円形の凹部の温度は、250℃~360℃の範囲であり、例えば、280℃~320℃の範囲である。
【0034】
1つの実施形態において、るつぼ又は金属板は、それぞれステンレス鋼で構成される。他の実施形態において、るつぼ又は金属板は、それぞれアルミニウムから構成される。特定の実施形態において、るつぼ又は金属板は、それぞれ非粘着性被膜で被覆されて、離型を容易にする。1つの実施形態において、被膜は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE、Teflon(R))をベースとし、別の実施形態では、被膜は、シリカをベースとする非粘着性被膜である。
【0035】
1つの実施形態において、それぞれるつぼ又は金属板は、冷却要素又はヒートシンク、例えば、それぞれるつぼの壁に取り付けられたか、若しくは埋め込まれたか、又は金属板に取り付けられたか、若しくは埋め込まれた冷却コイルを備える。冷却要素は、管状ハウジングの端部が溶融物に浸漬された後、溶融物から熱を取り除いて、その凝固を促進する。
【0036】
方法の別の実施形態において、ハウジングの末端が溶融物に浸漬された後に、空気又は別の不活性流体を濾過及び/又は拡散装置の管状ハウジングに導入して、溶融物を冷却する。1つの実施形態において、冷却流体は、管状ハウジングの流体ポートのうちの少なくとも1つを介して導入される。
【0037】
方法の1つの実施形態において、管状ハウジングの端部は、ポッティング環を特徴とし、すなわち、ポッティング環は、ハウジングの両端が熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬される前に、ハウジングの両端に取り付けられる。ポッティング環は、管状ハウジングの端部に取り付けることができ、長手方向においてハウジングの延長部を提供する別個の管状の構成部品である。ポッティング環は、ハウジングから突出した繊維束の端部を包囲する。1つの実施形態において、ポッティング環の直径は、環の一方の端の方が他方の端よりも大きい。1つの実施形態では、より大きな直径は、ハウジングの外径に一致し、より小さな直径は、繊維束の直径に一致する。1つの実施形態において、ポッティング環の内面は円錐形である。1つの実施形態において、ポッティング環は、ハウジングの各端部において5~10mmまでハウジングの長さを延長する。1つの実施形態において、線維束の端部は、ポッティング環の口から1~3mm突き出ている。別の実施形態において、繊維束の端部はポッティング環の口と同一平面である。ポッティング環は、ポリマー材料、例えば、熱可塑性樹脂から構成される。1つの実施形態において、ポッティング環は、ポリオレフィン、例えば、ポリエチレンから構成される。特定の実施形態において、ポッティング環及び熱可塑性樹脂の溶融物は、同じ熱可塑性樹脂を含む。
【0038】
方法の1つの実施形態において、ポッティング環の口を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、管状ハウジングの端部の代わりに密封する。密封されたポッティング環は、それがない場合、その後のポッティング工程に必要とされるポッティング形式に取って代わる。
【0039】
方法の別の実施形態において、支持リングは、ハウジングの各ヘッダー部分、すなわち、管状ハウジングの各端部に存在し、支持リングはハウジング内に配置される。支持リングは、管状ハウジングの内側のレッジに取り付けることができる個別の環状の構成部品である。支持リングはポリマー材料から構成される。支持リングは、端壁手段とハウジングの内壁面との間に配置され、繊維束を包囲し、この束をハウジングのヘッダー部分の中心に置く。支持リングは、繊維束の端部をポッティング樹脂でポッティングすることによって作られる端壁手段の中に少なくとも部分的に埋め込まれる。
【0040】
1つの実施形態において、支持リングは、支持リングからハウジングの端部の方向に延び、ハウジングの口から0~5mm、例えば0~3mm突出する管状の突起を備える。管状の突起は、繊維束を包囲する円筒状中空部を提供する。1つの実施形態において、支持リングはポリオレフィン、例えば、ポリプロピレンから構成される。さらなる実施形態において、管状の突起の材料は、支持リングの残りの材料とは異なる。例えば、支持リングの本体はポリプロピレンで構成され、一方管状の突起はポリエチレンで構成される。
【0041】
1つの実施形態において、線維束の端部は、支持リングの管状の突起の口から1~3mm突出する。別の実施形態において、繊維束の端部は支持リングの管状の突起の口と同一平面である。
【0042】
方法の1つの実施形態において、支持リングの管状の突起の口を熱可塑性樹脂の溶融物に浸漬し、管状ハウジングの端部の代わりに密封する。密封された管状の突起は、それがない場合、その後のポッティング工程に必要とされるポッティング形式に取って代わる。
【0043】
一旦ハウジングの両端が凝固した溶融物で密封されると、ポッティング工程を続いて行うことができる。ポッティング工程は、繊維束の端部をポッティング樹脂、例えば、ポリウレタンに埋め込むことによる、管状ハウジング内での端壁の形成を含む。
【0044】
ポッティング樹脂が硬化され、端壁が形成された後、ポッティングされた繊維束の端部を凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取り、繊維を再度開繊する。
【0045】
ポッティング環を採用する方法の1つの実施形態において、密封されたポッティング環の一部もまた、ポッティングされた繊維束の端部及び凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取られ、ポッティング環の残りの部分は、それらが取り付けられるハウジングの端部から除去される。
【0046】
管状の突起を有する支持リングを採用する方法の別の実施形態において、管状ハウジングから突出する密封された管状の突起の部分も、ポッティングされた繊維束の端部及び凝固したポッティング樹脂の一部と共に切り取られる。
【0047】
続いて、流体ポートを特徴とする端部キャップが、濾過及び/又は拡散装置の組立てを完了するために、管状ハウジングの各端部に取り付けられる。
【0048】
本発明の方法の利点は、繊維の端部及びハウジングの口の閉鎖が、単一の方法の工程で同時に行われることである。従来技術の方法では、これらの工程は2つの別々の工程で連続的に行われる。したがって、本開示の方法は、従来技術の方法よりも簡便かつ迅速である。
【0049】
本発明の範囲から逸脱することなく、上記の特徴及び以下に記載する特徴は、特定された組合せだけでなく、他の組合せにおいても、或いは単独で使用することができることが理解される。
【実施例
【0050】
本開示の方法については、以下の実施例及び添付図を参照して説明する。
【0051】
図1は、本開示の方法の実施形態の異なる段階における濾過及び/又は拡散装置の概略図である。上から下へ、図1は、
1. 2つの流体ポート16を特徴とし、292.5mmの全長を有する管状ハウジング15、
2. 各端部においてハウジングの口に取り付けられ、全長を310.6mmまで延長するポッティング環20を有する管状ハウジング15、
3. ポッティング環20を有する管状ハウジング15、及びハウジング15内に配置された中空糸膜の束10。束10の端部は、ポッティング環20の口から突出し、全長を312mmに延長する。
4. 熱可塑性ポリマーの溶融物を用いて、繊維の端部及びポッティング環20の口を閉鎖した後のポッティング環20を備えた管状のハウジング15、及びハウジング15内に配置された中空糸膜の束10。凝固したポリマー溶融物36はポッティング環20と共に、ハウジング15の両端にポッティングキャップを形成し、全長を314mmに延長する。
5. ポッティングし、ポッティング工程で形成された端壁45の一部を切り取り、ポッティング環20を除去することにより束10内の繊維の端部を再開した後の、管状ハウジングの中に配置された中空糸膜の束10を有する管状ハウジング15。切り取り後の装置の全長は297mmである。
【0052】
図2は、本開示の方法の別の実施形態の段階における濾過及び/又は拡散装置の詳細の部分図である。図2は、流体ポート16を特徴とする管状ハウジング15及びハウジング15内に配置された中空糸膜の束10の一部を示す。束10の繊維の端部は、ハウジング15の口から突出する。熱可塑性ポリマーの溶融物35を、繊維束10の外径よりも大きい内径を有するるつぼ30に配置する。図2は、繊維束10の端部が熱可塑性ポリマーの溶融物35に浸漬されて、束10内の繊維の端部が閉じる前の状況のスナップショットである。次に、溶融物35を凝固させ、束10の端部に付着した凝固した溶融物をるつぼ30から除去する。
【0053】
図3は、本開示の方法のさらなる実施形態の段階における濾過及び/又は拡散装置の縦断面の概略部分図である。図3は、流体ポート16を特徴とする管状ハウジング15及びハウジング15内に配置された中空糸膜の束10の一部を示す。束10の繊維の端部は、ハウジング15の口から突出する。ハウジング15の口から突出する管状の突起41を備える支持リング40を、ハウジング15の内側に取り付ける。図3は、中空糸膜の束10の端部及び支持リング40の管状の突起41の口を熱可塑性ポリマーの凝固した溶融物36によって閉鎖し、ポッティングキャップを形成し、その後、ポッティング樹脂を用いて束10の端部をポッティングすることによって端壁45を形成した後の状況を示す。支持リング40は端壁に部分的に埋め込まれ、端壁45のための追加のアンカーを提供する。次の方法の工程において、束10の端部を凝固したポリマー溶融物36及び端壁45の一部と共に切り取り、束10の繊維を再度開繊する。切断部46の位置を図3に示す。ハウジング15の端部にはブラケット50が適用され、支持リング40をその外側で安定させ、スパッと切れた切り口を容易にする。
【0054】
[実施例]
ポリエーテル-スルホン及びポリビニルピロリドンをベースとする中空糸膜の束を、ポリカーボネートで構成され、口の外径が59mmのハウジングに配置した。束の端部はハウジングの口から1mm突出していた。ポリエチレン(Purell(R)2410T、BASF SE)を280℃に加熱して溶融物を生成した。溶融物6.5gを直径61mm及び深さ3mmのるつぼに移した。繊維束を含むハウジングの一端を、繊維の端部がるつぼの底から約1mmに位置するまで溶融物に浸漬し、次いでポリエチレン溶融物を凝固させた。20秒後、ハウジングをるつぼから取り除いた。溶融物は凝固して連続したブロックになり、繊維の端部及びハウジングの口を密封し、これによりポッティングキャップを形成した。
【0055】
ハウジングの第2の端部を用いてこの手順を繰り返した。その後、ハウジング内の線維束の端部をポリウレタンでポッティングし、端壁を形成した。束中の線維は、端壁及びポリエチレンブロックの一部と共に、埋め込まれた線維の端部を切り取ることによって再度開繊した。最終的に、端部キャップをハウシングの両端に取り付け、濾過及び/又は拡散装置を得た。
【符号の説明】
【0056】
10 中空糸膜の束
15 管状フィルタケーシング
16 流体ポート
20 ポッティング環
30 るつぼ
35 ポリマー溶融物
36 凝固したポリマー溶融物
40 支持リング
41 管状の突起
45 端壁
46 端部切断の位置
50 ブラケット
図1
図2
図3