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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】ハウジング形管継手
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/06 20060101AFI20230120BHJP
   F16L 17/067 20060101ALI20230120BHJP
   F16L 55/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
F16L21/06
F16L17/067
F16L55/00 S
【請求項の数】 21
(21)【出願番号】P 2021544530
(86)(22)【出願日】2021-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2021008643
(87)【国際公開番号】W WO2021199903
(87)【国際公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-07-30
(31)【優先権主張番号】P 2020062953
(32)【優先日】2020-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390010227
【氏名又は名称】株式会社三五
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬場 一美
(72)【発明者】
【氏名】若松 仁
(72)【発明者】
【氏名】太田 真志
【審査官】▲高▼藤 啓
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-008223(JP,U)
【文献】実開昭59-042388(JP,U)
【文献】特表2007-522420(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第04119171(DE,A1)
【文献】特開2019-183894(JP,A)
【文献】実公昭36-023288(JP,Y1)
【文献】特開2011-012717(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0163906(US,A1)
【文献】特表2018-537638(JP,A)
【文献】特表2010-527430(JP,A)
【文献】特開平05-052283(JP,A)
【文献】特開2015-158273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 21/06
F16L 17/06-17/08
F16L 55/00
F16L 55/00
F24F 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管端の側の外径が前記管端の反対側の外径よりも大きい段差部が軸方向における所定の距離だけ管端から離れた位置に全周に亘って形成された一対の管材を前記管端同士が互いに対向している状態において液密又は気密に接続するハウジング形管継手であって、
シール部材と、第1ケーシングと、第2ケーシングと、締結部材と、を備え、
前記シール部材は、弾性材料によって形成され、環状の形状を有し、円筒状の部分である外周部と前記外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備えることにより径方向における内側に開口部を有する略U字状の横断面を有し、且つ2つの前記リム部の前記外周部とは反対側の端部において前記管材の外周面に対向する面であるリップ面を有するリップ部を備え、
前記第1ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の円弧状の部材である第1セグメントの組み合わせによって構成され、全体として円筒状の部分である外周部と前記外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備えることにより径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する環状の形状を有し、
前記第2ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の略円弧状の部材である第2セグメントの組み合わせによって構成され、全体として環状の形状を有し、
個々の前記第2セグメントは、円弧状の部分である本体部と前記本体部の両端において前記第2ケーシングの径方向における外側に向かって延在するように立設された部分であるフランジ部とを備え、
前記本体部は、前記第2ケーシングの径方向における最外面の一部を構成する外周部と前記第2ケーシングの軸方向における前記外周部の両端から前記第2ケーシングの径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備えることにより径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有し、
前記第1セグメントの板厚である第1板厚は前記第2セグメントの板厚である第2板厚に等しいか又は前記第2板厚よりも大きく、
前記第1セグメントと前記第2セグメントとが予め互いに固定されており、
前記第1セグメントの前記リム部に含まれる所定の部位と前記第2セグメントの前記リム部に含まれる所定の部位とが固定されている、
ハウジング形管継手。
【請求項2】
請求項1に記載されたハウジング形管継手であって、
前記シール部材の前記リム部に対向する円弧状の形状を有する部位において前記第1セグメントの前記リム部と前記第2セグメントの前記リム部とが固定されている、
ハウジング形管継手。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載されたハウジング形管継手であって、
前記フランジ部は、前記締結部材によって隣り合う前記第2セグメント同士が締結される際に、前記締結部材による締結力が作用する部分である締結部分よりも径方向における外側に位置する部分が前記締結部分よりも先に互いに当接するように構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記段差部は、前記管材の全周に亘って環状に形成された凸部である環状突起の前記管端とは反対側の側面によって構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項5】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記段差部は、前記管材の全周に亘って環状に形成された凹部である環状溝部の前記管端側の側面によって構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項6】
請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記管材は前記管端側の端部に形成された所定の外径である第1外径を有する部分である第1部分及び前記第1部分以外の部分であり且つ前記第1外径よりも小さい所定の外径である第2外径を有する部分である第2部分を有し、
前記段差部は、前記第1部分と前記第2部分との間に形成された段差として前記段差部が構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項7】
請求項1乃至請求項の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記シール部材を覆うように複数の前記第1セグメントが前記シール部材に外嵌されており、複数の前記第1セグメントを覆うように複数の前記第2セグメントが配置されており、前記シール部材、複数の前記第1セグメント及び複数の前記第2セグメントが脱落せず、且つ複数の前記第2セグメントの前記リム部によって囲まれる空間及び複数の前記第1セグメントの前記リム部によって囲まれる空間を通して一対の前記管材の前記管端を前記シール部材の軸方向における両側から前記シール部に挿入することが可能な程度に、隣り合う前記第2セグメント同士が前記締結部材によって係止されている状態である第2状態にて提供される、
ハウジング形管継手。
【請求項8】
請求項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記ハウジング形管継手の軸方向における両端の2つの開口部の少なくとも一方に嵌合された栓を更に備え、
前記栓は、弾性材料によって形成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項9】
請求項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記栓の側面における隣り合う前記第2セグメントの前記フランジ部の基端部の間に画定される間隙に対向する領域には前記間隙に嵌合するように突設された突部が形成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項10】
請求項又は請求項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記栓の側面における前記シール部材の前記リップ面に接触する領域の少なくとも一部には潤滑材が予め塗布されている、
ハウジング形管継手。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
一対の前記管材の前記管端が前記シール部材の軸方向における両側から挿入されて前記シール部材の内部において一対の前記管材の前記管端同士が互いに対向しており、前記シール部材を覆うように複数の前記第1セグメントが前記シール部材に外嵌されており、且つ複数の前記第1セグメントを覆うように複数の前記第2セグメントが配置されている状態において、隣り合う前記第2セグメントの前記フランジ部に形成された着座面に着座する前記締結部材によって隣り合う前記第2セグメント同士を締結することにより、複数の前記第2セグメントが互いに近付いて前記第2ケーシングが集成され、複数の前記第1セグメントが互いに近付いて前記第1ケーシングが集成され、複数の前記第2セグメントの前記外周部によって複数の前記第1セグメントが前記シール部材に向かって押圧され、前記第1ケーシングの前記外周部によって前記シール部材が一対の前記管材に向かって押圧されると共に前記シール部材の前記外周部及び前記リム部の外面形状が前記第1ケーシングによって拘束されて一対の前記管材が液密又は気密に接続され、且つ複数の前記第2セグメントがそれぞれ備える2つの前記リム部の内面と一対の前記管材がそれぞれ備える前記段差部の外面とが当接することにより一対の前記管材が互いに離隔しないように係止されている状態である第1状態を達成することが可能であるように構成された、
ハウジング形管継手。
【請求項12】
請求項11に記載されたハウジング形管継手であって、
前記第1状態において複数の前記第2セグメントの2つの前記リム部の間に前記第1ケーシングの2つの前記リム部の少なくとも一部が嵌合されるように複数の前記第2セグメントが構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項13】
請求項11又は請求項12に記載されたハウジング形管継手であって、
前記第1状態において複数の前記第1セグメントの境界の位置と複数の前記第2セグメントの境界の位置とが互いに重ならないように複数の前記第1セグメントと複数の前記第2セグメントとが前記シール部材の軸周りに所定の角度だけずれて配置されている、
ハウジング形管継手。
【請求項14】
請求項11乃至請求項13の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記第2セグメントの前記フランジ部は、前記第1状態において隣り合う前記第2セグメント同士が前記フランジ部の周縁部にて当接し且つ隣り合う前記第2セグメント同士の前記着座面は所定の距離を空けて互いに対向するように構成されており、
隣り合う前記第2セグメントの互いに対向する前記着座面の間に配設されたスペーサを更に備える、
ハウジング形管継手。
【請求項15】
請求項14に記載されたハウジング形管継手であって、
前記スペーサは、隣り合う前記第2セグメントの互いに対向する前記着座面の一方に固定されている、
ハウジング形管継手。
【請求項16】
請求項14又は請求項15に記載されたハウジング形管継手であって、
前記スペーサは、筒状の形状を有するカラーによって構成されており、
前記締結部材は、隣り合う前記第2セグメントの互いに対向する前記着座面に穿孔された貫通孔及び前記スペーサに挿通される挿通部材を含む、
ハウジング形管継手。
【請求項17】
請求項16に記載されたハウジング形管継手であって、
前記挿通部材は、隣り合う前記第2セグメントの互いに対向する前記着座面の一方に固定されている、
ハウジング形管継手。
【請求項18】
請求項17に記載されたハウジング形管継手であって、
前記スペーサ及び前記挿通部材は、同一の前記着座面に固定されている、
ハウジング形管継手。
【請求項19】
請求項11乃至請求項18の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記シール部材は、前記シール部材の前記外周部の内周面から径方向における内側に向かって延在する部分であるストッパー部を更に備え、
前記ストッパー部は、前記第1状態において前記管端の少なくとも一部に当接するように構成されている、
ハウジング形管継手。
【請求項20】
請求項19に記載されたハウジング形管継手であって、
前記ストッパー部は、前記第1状態において前記管端の一部のみに当接するように構成されており、
一対の前記管材と前記ストッパー部とが当接していない領域において前記管端同士の間に形成される間隙により、前記シール部材の前記外周部、前記リム部及び前記リップ部によって画定される空間と前記管材の内部空間とが連通されている、
ハウジング形管継手。
【請求項21】
請求項1乃至請求項20の何れか1項に記載されたハウジング形管継手であって、
前記第1ケーシング及び/又は前記第2ケーシングが受けた圧力、応力及び歪みのうちの少なくとも1つに対応する検出信号を出力するように構成されたセンサ及び当該検出信号に対応する情報をデータとして記録するように構成されたRFタグを更に備える、
ハウジング形管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジング形管継手に関する。より具体的には、本発明は、シール部材の形状を拘束する機能及び管材を係止する機能を十分に高いレベルにて両立することが可能であり、設計上の自由度が高く、小型であり且つ軽量なハウジング形管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば金属製の管材の接続に用いられるメカニカル継手としては、対向する一対の管材の端面(管端)を跨ぐように配設され且つ双方の管材の端面の近傍に形成された環状の突起(凸部)又は溝(凹部)に係止されるように構成された所謂「ハウジング形管継手」が広く採用されている。図20は、従来技術に係るハウジング形管継手(以降、「従来継手」と称呼される場合がある。)の構成の一例を示す分解斜視図である。図20に例示する従来継手200は、一対の円弧状継手セグメント201及び202と、円弧状継手セグメント201の両端部に形成されたボルト座203及び203と、円弧状継手セグメント202の両端部に形成されたボルト座204及び204と、各円弧状継手セグメント201及び202に形成された空間207と、空間207において2つの管205及び206の端部をシールするように設けられた弾性リング208(シール部材)と、空間207の両側に径方向における内側に向かって延在し2つの管205及び206の端部に形成された周方向溝205a及び206aに係合するように設けられた2つの締付部209及び210(リム部)と、ボルト座203及び204に設けられた開口203a及び204aに挿通されて円弧状継手セグメント201及び202を互いに結合するボルトナット固定手段211(締結部材)とによって構成されている。
【0003】
上記従来継手200は、ボルトナット固定手段211によって円弧状継手セグメント201及び202の空間207に配置された弾性リング208を2つの管205及び206の端部における外周面に圧接することにより2つの管205及び206の端部をシールすると共に、各継手セグメント201及び202に設けられた締付部209及び210を2つの管205及び206の端部に設けられた周方向溝205a及び206aに係着させることにより2つの管205及び206を互いに固定することができる。このようなハウジング形管継手としては、特に建築業界においては、鋳物製のハウジング形管継手が一般的に使用されている。鋳物製のハウジング形管継手は、長年に亘る使用実績及び高い信頼性が認められている一方で質量及びサイズが何れも大きく、設置スペース及び施工作業の面における改善が継続的に求められている。
【0004】
当該技術分野においては、上記課題に対する解決策として、鋳造に代えて金属(例えばステンレス鋼等)製の薄板の成形加工によってハウジング形管継手を構成する技術が提案されている。例えば、特許文献1(特許第498723号公報)には、ケーシングの内部に装着されたシール部材としての弾性リングと、ケーシングの外面を囲むように取り付けられた締め付けバンドと、締め付けバンドを締め付ける締付手段とを有するハウジング形管継手において、全体形状がC形リング状で断面形状が逆U形に成形されたケーシングを金属板によって形成することにより、着脱作業が簡便で軽量コンパクト化が可能なハウジング形管継手を提供する技術が開示されている。
【0005】
しかしながら、上記構成においては金属板によって形成されたケーシングが弾性リングの形状を拘束してシール性を維持する機能及び管材を係止する機能の両方を担っている。このため、例えば施工時及び/又は施工後に一対の管材の位置関係が変動した場合等においてケーシングが変形すると、弾性リングの形状の拘束が不十分となり、シール性を維持することが困難となる虞がある。また、弾性リングの形状を拘束するためにはケーシングの形状を弾性リングの形状に合わせる必要があるので、ケーシングが管材を係止するための環状の突起(凸部)又は溝部(凹部)が管材の外周面に形成される位置も弾性リングの形状に合わせる必要があり、設計上の自由度が制限される。更に、ケーシングの全体形状がC形リング状であるため、施工作業においてハウジング形管継手を管材に装着することが困難であるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第4987236号公報
【文献】特開2013-210043号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、当該技術分野においては、ハウジング形管継手を構成するケーシングを鋳物から金属板の成形品へと置き換えることによる小型軽量化が試みられているものの、シール部材の形状を拘束する機能及び管材を係止する機能を十分に高いレベルにて両立することが可能な技術は未だに確立されていない。即ち、当該技術分野においては、シール部材の形状を拘束する機能及び管材を係止する機能を十分に高いレベルにて両立することが可能であり、設計上の自由度が高く、小型であり且つ軽量なハウジング形管継手が要求されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題に鑑み、本発明者は鋭意研究の結果、ハウジング形管継手を構成するケーシングを、シール部材に外嵌されてシール部材の形状を拘束するインナーケーシングとインナーケーシングの外側に設けられてシール部材の内部において管端同士が互いに対向する一対の管材と係合すると共にインナーケーシングをシール部材に向かって押圧するアウターケーシングとに分け、これらのインナーケーシング及びアウターケーシングを金属板から一体物として成形された複数のセグメントによって構成すると共に、インナーケーシングの板厚をアウターケーシングの板厚以上とすることにより、上記要求に応えることができることを見出した。
【0009】
具体的には、本発明に係るハウジング形管継手(以降、「本発明継手」と称呼される場合がある。)は、一対の管材を管端同士が互いに対向している状態において液密又は気密に接続するハウジング形管継手である。本発明継手は、シール部材と第1ケーシングと第2ケーシングと締結部材とを備える。本発明継手によって接続される一対の管材は、互いに対向している管端の側の外径が当該管端の反対側の外径よりも大きい段差部が軸方向における所定の距離だけ当該管端から離れた位置に全周に亘って形成された一対の管材である。
【0010】
シール部材は、弾性材料によって形成され、環状の形状を有し、円筒状の部分である外周部と外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、シール部材は、径方向における内側に開口部を有する略U字状の横断面を有する。更に、シール部材は、2つのリム部の外周部とは反対側の端部において管材の外周面に対向する面であるリップ面を有するリップ部を備える。
【0011】
第1ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の円弧状の部材である第1セグメントの組み合わせによって構成される。第1ケーシングは、全体として円筒状の部分である外周部と外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、第1ケーシングは、全体として、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する環状の形状を有する。
【0012】
第2ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の略円弧状の部材である第2セグメントの組み合わせによって構成される。第2ケーシングは、全体として環状の形状を有する。個々の第2セグメントは、円弧状の部分である本体部と本体部の両端において第2ケーシングの径方向における外側に向かって延在するように立設された部分であるフランジ部とを備える。本体部は、第2ケーシングの径方向における最外面の一部を構成する外周部と第2ケーシングの軸方向における外周部の両端から第2ケーシングの径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、本体部は、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する。
【0013】
また、第1セグメントの板厚である第1板厚は、第2セグメントの板厚である第2板厚に等しいか又は第2板厚よりも大きい。
【0014】
上記のような構成を有する本発明継手は、内部において一対の管材の管端同士が互いに対向するシール部材に複数の第1セグメントを外嵌し、複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置し、隣り合う第2セグメント同士を締結部材によって締結することにより、第1ケーシングによってシール部材の形状を拘束し且つ第2ケーシングによって一対の管材を係止すると共に第1ケーシングをシール部材に向かって押圧することができるように構成されている。即ち、本発明継手が備える第1ケーシング及び第2ケーシングは上述したインナーケーシング及びアウターケーシングにそれぞれ該当する。
【0015】
具体的には、先ず、一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入してシール部材の内部において一対の管材の管端同士を互いに対向させ、シール部材を覆うように複数の第1セグメントをシール部材に外嵌し、更に複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置する。この状態において、隣り合う第2セグメントのフランジ部に形成された着座面に着座する締結部材によって隣り合う第2セグメント同士を締結する。これにより、複数の第2セグメントが互いに近付いて第2ケーシングが集成され、複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシングが集成される。この際、複数の第2セグメントの外周部によって複数の第1セグメントがシール部材に向かって押圧され、第1ケーシングの外周部によってシール部材が一対の管材に向かって押圧される。本発明継手によれば、このようにして、シール部材の外周部及びリム部の外面形状が第1ケーシングによって拘束されて一対の管材が液密又は気密に接続され、且つ複数の第2セグメントがそれぞれ備える2つのリム部の内面と一対の管材がそれぞれ備える段差部の外面とが当接することにより一対の管材が互いに離隔しないように係止されている状態である第1状態を達成することができる。
【発明の効果】
【0016】
上記のように、本発明継手においては、シール部材に外嵌されてシール部材の形状を拘束する第1ケーシング(インナーケーシング)と第1ケーシングの外側に設けられてシール部材の内部において管端同士が互いに対向する一対の管材の外周面と係合すると共に第1ケーシングをシール部材に向かって押圧する第2ケーシング(アウターケーシング)とによってケーシングが構成されている。即ち、本発明継手によれば、シール部材の形状を拘束する機能及び管材を係止する機能が第1ケーシング及び第2ケーシングによって個別に実現されるので、これらの機能を十分に高いレベルにて両立し且つ設計上の自由度を高めることができる。更に、第1ケーシング及び第2ケーシングが金属板から一体物として成形された複数のセグメントによって構成されるので、小型であり且つ軽量なハウジング形管継手を提供することができる。加えて、第1セグメントの板厚である第1板厚が第2セグメントの板厚である第2板厚に等しいか又は第2板厚よりも大きいことにより、第1セグメントによりシール部材の形状を確実に拘束して、本発明継手の液密性能又は気密性能を効果的に高めることができる。
【0017】
本発明の他の目的、他の特徴及び付随する利点は、以下の図面を参照しつつ記述される本発明の各実施形態についての説明から容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1実施形態に係るハウジング形管継手(第1継手)によって接続される一対の管材の幾つかの例を示す模式図である。
図2】第1継手を構成するシール部材の構成の一例を示す模式図である。
図3】第1継手を構成する第1ケーシングの構成の一例を示す模式的な斜視図である。
図4】第2ケーシングを構成する第2セグメントの構成の1つの例を示す模式的な斜視図である。
図5】第2ケーシングを構成する第2セグメントの構成のもう1つの例を示す模式的な斜視図である。
図6】第1状態にある第1継手の構成の1つの例を示す模式図である。
図7図6に例示した第1継手の構成部材の位置関係を示す模式図である。
図8】第1状態にある第1継手の構成のもう1つの例を示す模式図である。
図9図8に例示した第1継手の模式的な側面図(a)及び側断面図(b)である。
図10】第1状態が達成される前の第1継手の状態の例を示す模式図である。
図11】フランジ部の撓みに対する反発力により第2ケーシングによる第1ケーシングの押圧力を増大させるように構成された第1継手が備える第2セグメントのフランジ部の構成の一例を示す模式的な部分拡大図である。
図12】本発明の第2実施形態に係るハウジング形管継手(第2継手)の構成の一例を示す模式図である。
図13】本発明の第3実施形態に係るハウジング形管継手(第3継手)の構成の一例を示す模式図である。
図14】本発明の第5実施形態に係るハウジング形管継手(第5継手)の構成の一例を示す模式図である。
図15】本発明の第6実施形態に係るハウジング形管継手(第6継手)の構成の1つの例を示す模式図である。
図16】第6継手の構成のもう1つの例を示す模式図である。
図17】本発明の第7実施形態に係るハウジング形管継手(第7継手)の構成の1つの例を示す模式図である。
図18】第7継手の構成のもう1つの例を示す模式図である。
図19】本発明の第9実施形態に係るハウジング形管継手(第9継手)を構成する第2セグメントの構成の一例を示す模式図である
図20】従来技術に係るハウジング形管継手(従来継手)の構成の一例を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
《第1実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第1継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0020】
〈構成〉
第1継手は、一対の管材を管端同士が互いに対向している状態において液密又は気密に接続するハウジング形管継手である。第1継手は、シール部材と第1ケーシングと第2ケーシングと締結部材とを備える。第1継手によって接続される一対の管材は、互いに対向している管端の側の外径が当該管端の反対側の外径よりも大きい段差部が軸方向における所定の距離だけ当該管端から離れた位置に全周に亘って形成された一対の管材である。換言すれば、第1継手によって接続される一対の管材は、互いに対向している管端から軸方向における所定の距離だけ離れた位置に全周に亘る段差部を備える。当該段差部は、当該管端の側において少なくとも段差部に隣接する部分の外径が当該管端の反対側において少なくとも段差部に隣接する部分の外径よりも大きいように形成されている。
【0021】
図1は、第1継手によって接続される一対の管材の幾つかの例を示す模式図である。(a)に例示する管材11においては、管材11の全周に亘って環状に形成された凸部である環状突起の管端とは反対側の側面によって段差部が構成されている。尚、(a)に示す例においては管材11の管壁の一部を径方向における外側に向かって突出させることにより環状突起が形成されているが、環状突起の構成はこれに限定されるものではない。例えば別個の環状の部材に管材を挿通し、当該環状の部材を管材の外周面における所定の位置に固定することによって環状突起を構成してもよい。一方、(b)に例示する管材12においては、管材12の全周に亘って環状に形成された凹部である環状溝部の管端側の側面によって段差部が構成されている。
【0022】
(c)に例示する管材13は、管端側の端部に形成された所定の外径である第1外径d1を有する部分である第1部分13A及び第1部分13A以外の部分であり且つ第1外径d1よりも小さい所定の外径である第2外径d2を有する部分である第2部分13Bを有する。そして、第1部分13Aと第2部分13Bとの間に形成された段差として段差部が構成されている。(a)乃至(c)に例示した管材11乃至13の何れにおいても、管端の側の外径が当該管端の反対側の外径よりも大きい段差部10Dが、軸AXの方向における所定の距離dだけ管端から離れた位置P1に全周に亘って形成されている。換言すれば、管材11乃至13の何れにおいても、軸AXの方向における所定の距離dだけ管端から離れた位置P1に全周に亘る段差部10Dが形成されている。更に、段差部10Dは、管端の側において少なくとも段差部10Dに隣接する部分の外径が管端の反対側において少なくとも段差部10Dに隣接する部分の外径よりも大きいように形成されている。
【0023】
シール部材は、弾性材料によって形成され、環状の形状を有し、円筒状の部分である外周部と外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、シール部材は、径方向における内側に開口部を有する略U字状の横断面を有する。更に、シール部材は、2つのリム部の外周部とは反対側の端部において管材の外周面に対向する面であるリップ面を有するリップ部を備える。
【0024】
シール部材の具体的な構成は、上記要件を満たし、シール部材の軸方向における両側から挿入される一対の管材の管端の外周面と上記リップ面とが密着して液密又は気密を達成し、且つハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。シール部材を形成する弾性材料もまたハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、シール部材を形成する弾性材料はゴムである。
【0025】
図2は、第1継手を構成するシール部材の構成の一例を示す模式図である。(a)はシール部材の斜視図であり、(b)は(a)に示す矢印の方向から観察されるシール部材の側面図であり、(c)は軸AXを含む平面によるシール部材の断面図である。尚、(c)においては、断面よりも奥に存在する部分が破線によって描かれている。(a)に例示するように、シール部材110は環状の形状を有するガスケットである。
【0026】
シール部材110は、円筒状の部分である外周部110Pと、外周部110Pの軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部110Rと、を備える。更に、シール部材110は、2つのリム部110Rの外周部とは反対側の端部において図示しない管材の外周面に対向する面であるリップ面110Sを有するリップ部110Lを備える。尚、図2に例示するシール部材110においては、2つのリップ部110Lが2つのリム部110Rの外周部とは反対側の端部から互いに近付く向きに延在している。これにより、シール部材110の横断面は、(c)に例示するように、径方向における内側に開口部を有する略U字状の横断面の開口部がリップ部によって狭められて略C字状の横断面となっている。この場合、シール部材110におけるリップ面110Sは、これらのリップ部110Lの外面(シール部材110の径方向における内側に対向する表面)によって構成される。
【0027】
但し、図2に示したシール部材110はあくまでも例示であり、シール部材が備える2つのリップ部は必ずしも2つのリム部の外周部とは反対側の端部から互いに近付く向きに延在している必要は無い。例えば、シール部材の外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部の先端の表面がリップ面を構成していてもよい。この場合、2つのリム部の先端部分がリップ部をも兼ねており、シール部材は径方向における内側に開口部を有する略U字状の横断面を有する。
【0028】
第1ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の円弧状の部材である第1セグメントの組み合わせによって構成される。第1セグメントとして成形される金属板を構成する材料は、ハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、当該金属板を構成する材料は例えばステンレス鋼等の鉄である。また、第1セグメントを金属板から一体物として成形するための方法も特に限定されない。このような成形方法の具体例としては、例えばプレス加工等の塑性加工を挙げることができる。
【0029】
第1ケーシングは、全体として円筒状の部分である外周部と外周部の軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、第1ケーシングは、全体として、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する環状の形状を有する。上述したように、第1ケーシングは、複数の第1セグメントの組み合わせによって構成される。即ち、個々の第1セグメントは、第1ケーシングの軸を中心とする複数の平面によって分割された第1ケーシングの一部分に相当する。尚、第1セグメントの数は特に限定されないが、過度に多い第1セグメントによって第1ケーシングを構成すると、施工作業において第1継手を集成する作業の複雑化及び労力の増大に繋がる虞がある。典型的には、第1セグメントの数は2つである。
【0030】
図3は、第1継手を構成する第1ケーシングの構成の一例を示す模式的な斜視図である。図3に例示する第1ケーシング120は、プレス加工によってステンレス鋼板から一体物として成形された2つの半円弧状の部材である第1セグメント120Sの両端同士をそれぞれ突き合わせることによって構成される。第1ケーシング120は、全体として円筒状の部分である外周部120Pと、外周部120Pの軸方向における両端から径方向における内側に向かって延在する2つのリム部120Rとを備える。その結果、第1ケーシング120は、全体として、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する環状の形状を有する。これにより、第1セグメント120Sは、シール部材110に外嵌されてシール部材110の外周部110P及びリム部110Rの外面形状を拘束することができる。
【0031】
第2ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の略円弧状の部材である第2セグメントの組み合わせによって構成される。第2セグメントとして成形される金属板を構成する材料もまた、上述した第1セグメントと同様に、ハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、当該金属板を構成する材料は例えばステンレス鋼等の鉄である。また、第2セグメントを金属板から一体物として成形するための方法も特に限定されない。このような成形方法の具体例としては、例えばプレス加工等の塑性加工を挙げることができる。
【0032】
第2ケーシングは、全体として環状の形状を有する。個々の第2セグメントは、円弧状の部分である本体部と本体部の両端において第2ケーシングの径方向における外側に向かって延在するように立設された部分であるフランジ部とを備える。本体部は、第2ケーシングの径方向における最外面の一部を構成する外周部と第2ケーシングの軸方向における外周部の両端から第2ケーシングの径方向における内側に向かって延在する2つのリム部とを備える。これにより、本体部は、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する。上述したように、第2ケーシングは、複数の第2セグメントの組み合わせによって構成される。第2セグメントの数は特に限定されないが、過度に多い第2セグメントによって第2ケーシングを構成すると、施工作業において第1継手を集成する作業の複雑化及び労力の増大に繋がる虞がある。典型的には、第2セグメントの数は2つである。
【0033】
図4は、第2ケーシングを構成する第2セグメントの構成の1つの例を示す模式的な斜視図である。図4に例示する第2セグメント131Sは、図1の(a)に例示したように環状突起によって段差部10Dが構成されている管材11の接続に用いられる。また、図4においては、2つの第2セグメント131Sによって第2ケーシングが構成される場合を例示する。
【0034】
図4の(a)及び(b)に示すように、個々の第2セグメント131Sは、円弧状の部分である本体部131Bと本体部131Bの両端において第2ケーシングの径方向における外側に向かって延在するように立設された部分であるフランジ部131Fとを備える。本体部131Bは、第2ケーシングの径方向における最外面の一部を構成する外周部131Pと第2ケーシングの軸方向における外周部131Pの両端から第2ケーシングの径方向における内側に向かって延在する2つのリム部131Rとを備える。その結果、本体部131Bは、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する。これにより、2つの第2セグメント131Sは、隣り合う第2セグメント131Sのフランジ部131Fに形成された着座面に着座する締結部材によって締結されて第2ケーシングとして集成された状態において、リム部131Rの内面と管材11が備える段差部10Dの外面とが当接することにより一対の管材が互いに離隔しないように係止することができる。図4の(c)においては、上記のように第2セグメント131Sが備えるリム部131Rの内面と管材11が備える段差部10Dの外面とが当接している状態を判り易く示すことを目的として、片方の第2セグメント131Sと管材11のみが描かれている。
【0035】
一方、図5は、第2ケーシングを構成する第2セグメントの構成のもう1つの例を示す模式的な斜視図である。図5に例示する第2セグメント132Sは、図1の(b)に例示したように環状溝部によって段差部10Dが構成されている管材12の接続に用いられる。図5においても、2つの第2セグメント132Sによって第2ケーシングが構成される場合を例示する。
【0036】
図5の(a)及び(b)に例示する第2セグメント132Sもまた、上述した第2セグメント131Sと同様に、円弧状の部分である本体部132Bと本体部132Bの両端において第2ケーシングの径方向における外側に向かって延在するように立設された部分であるフランジ部132Fとを備える。本体部132Bは、第2ケーシングの径方向における最外面の一部を構成する外周部132Pと第2ケーシングの軸方向における外周部132Pの両端から第2ケーシングの径方向における内側に向かって延在する2つのリム部132Rとを備える。その結果、本体部132Bは、径方向における内側に向かって開口する略U字状の横断面を有する。これにより、2つの第2セグメント132Sは、隣り合う第2セグメント132Sのフランジ部132Fに形成された着座面に着座する締結部材によって締結されて第2ケーシングとして集成された状態において、リム部132Rの内面と管材12が備える段差部10Dの外面とが当接することにより一対の管材が互いに離隔しないように係止することができる。図5の(c)においては、上記のように第2セグメント132Sが備えるリム部132Rの内面と管材12が備える段差部10Dの外面とが当接している状態を判り易く示すことを目的として、片方の第2セグメント132Sと管材12のみが描かれている。
【0037】
締結部材は、隣り合う第2セグメントのフランジ部に形成された着座面に着座して隣り合う第2セグメントを互いに近付けることが可能である限り、特に限定されない。典型的には、締結部材は、互いに螺合可能に構成されたボルトとナットとの組である。この場合、隣り合う第2セグメントの双方のフランジ部に形成された着座面に穿孔された貫通孔に挿通されたボルトとナットとを螺合させて双方のフランジ部を締め付けることにより第2ケーシングを集成することができる。
【0038】
尚、上述したように、第1セグメントは、シール部材に外嵌されてシール部材の外周部及びリム部の外面形状を拘束して第1継手の液密性能又は気密性能を高める必要があり、用途によっては(例えば、6MPa程度にも及ぶ)非常に高い液圧に耐えることが求められる。そこで、第1継手においては、第1セグメントの板厚である第1板厚が第2セグメントの板厚である第2板厚に等しいか又は第2板厚よりも大きい。ここでいう「第1板厚」及び「第2板厚」は、それぞれ第1セグメントによるシール部材の形状の拘束性能に影響を及ぼす部分における厚さ及び第2セグメントによる一対の管材の係止性能に影響を及ぼす部分における厚さであってもよい。或いは、「第1板厚」及び「第2板厚」は、それぞれ第1セグメント全体における平均的な厚さ及び第2セグメント全体における平均的な厚さであってもよい。
【0039】
以上のような構成を有する第1継手は、内部において一対の管材の管端同士が互いに対向するシール部材に複数の第1セグメントを外嵌し、複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置し、隣り合う第2セグメント同士を締結部材によって締結することにより、第1ケーシングによってシール部材の形状を拘束し且つ第2ケーシングによって一対の管材を係止すると共に第1ケーシングをシール部材に向かって押圧することができるように構成されている。即ち、第1継手が備える第1ケーシング及び第2ケーシングは前述したインナーケーシング及びアウターケーシングにそれぞれ該当する。
【0040】
具体的には、先ず、一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入してシール部材の内部において一対の管材の管端同士を互いに対向させ、シール部材を覆うように複数の第1セグメントをシール部材に外嵌し、更に複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置する。この状態において、隣り合う第2セグメントのフランジ部に形成された着座面に着座する締結部材によって隣り合う第2セグメント同士を締結する。これにより、複数の第2セグメントが互いに近付いて第2ケーシングが集成され、複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシングが集成される。この際、複数の第2セグメントの外周部によって複数の第1セグメントがシール部材に向かって押圧され、第1ケーシングの外周部によってシール部材が一対の管材に向かって押圧される。第1継手によれば、このようにして、シール部材の外周部及びリム部の外面形状が第1ケーシングによって拘束されて一対の管材が液密又は気密に接続され、且つ複数の第2セグメントがそれぞれ備える2つのリム部の内面と一対の管材がそれぞれ備える段差部の外面とが当接することにより一対の管材が互いに離隔しないように係止されている状態である第1状態を達成することができる。尚、シール部材を覆うように複数の第1セグメントがシール部材に予め外嵌された状態にて、シール部材が提供されてもよい。
【0041】
図6の(a)は、上述した第1状態にある第1継手の構成の1つの例を示す模式的な斜視図である。図6の(b)は、(a)に示す矢印の方向から観察される第2ケーシングのみを示す模式的な正面図であり、第2ケーシングの内部空間を画定する内周面が破線によって描かれている。図6の(b)に例示するように、第1継手101Aにおいては、図4に例示した2つの第2セグメント131Sによって第2ケーシングが構成されている。即ち、第1継手101Aは、図1の(a)に例示したように環状突起によって段差部10Dが構成されている管材11の接続に用いられる。図7の(a)は、第1継手101Aにおける一対の管材11、シール部材110及び第1ケーシング120の位置関係を示す模式図である。図7の(b)は、第1継手101Aにおける第2セグメント131Sの外周部131P及びリム部131Rと一対の管材11に形成された段差部10D及び第1ケーシング120との位置関係を示す模式図である。尚、図6の(a)並びに図7の(a)及び(b)においては締結部材140が省略されている。また、図7の(a)においては、第2セグメント131Sについては、その輪郭及び着座面に穿孔された貫通孔のみが描かれている。
【0042】
図6及び図7に例示されているように、第1状態にある第1継手101Aにおいては、一対の管材11の管端がシール部材110の軸AXの方向における両側から挿入されてシール部材110の内部において一対の管材11の管端同士が互いに対向している。そして、シール部材110を覆うように(複数の第1セグメントからなる)第1ケーシング120をシール部材110に外嵌する。更に、第1ケーシング120を覆うように2つの第2セグメント131Sを配置する。この状態において、隣り合う第2セグメント131Sのフランジ部131Fの着座面に穿孔された貫通孔に挿通されたボルト141B及びボルト141Bと螺合するナット141Nからなる締結部材140によって隣り合う第2セグメント131S同士を締結する。
【0043】
上記の結果、2つの第2セグメント131Sが互いに近付き、図6の(b)に示すように第2ケーシング131が集成され、複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシング120が集成される。この際、2つの第2セグメント131Sの外周部131Pによって複数の第1セグメントがシール部材110に向かって押圧され、第1ケーシング120の外周部によってシール部材110が一対の管材11に向かって押圧される。その結果、シール部材110の外周部及びリム部の外面形状が第1ケーシング120によって拘束されて一対の管材11が液密又は気密に接続され、且つ2つの第2セグメント131Sがそれぞれ備える2つのリム部131Rの内面と一対の管材11がそれぞれ備える段差部10Dの外面とが当接することにより一対の管材11が互いに離隔しないように係止されている状態である第1状態が達成される。
【0044】
一方、図8の(a)は上述した第1状態にある第1継手の構成のもう1つの例を示す模式的な斜視図であり、図8の(b)は(a)に示す黒塗りの矢印の方向から観察される第1継手を示す模式的な正面図である。図8に例示するように、第1継手101Bにおいては、図5に例示した2つの第2セグメント132Sによって第2ケーシングが構成されている。即ち、第1継手101Bは、図1の(b)に例示したように環状溝部によって段差部10Dが構成されている管材12の接続に用いられる。図9の(a)は図8の(a)に示す白抜きの矢印の方向から観察される第1継手101Bを示す模式的な側面図であり、図9の(b)は(a)に示す軸AXを含み紙面に垂直な平面による第1継手101Bの模式的な側断面図である。尚、図9の(a)においては締結部材140が省略されている。
【0045】
上記説明から明らかであるように、図8及び図9に例示した第1継手101Bは、環状突起によって段差部10Dが構成されている管材11及び管材11の接続に好適な第2セグメント131Sによって構成される第2ケーシングに代えて、環状溝部によって段差部10Dが構成されている管材12及び管材12の接続に好適な第2セグメント132Sによって構成される第2ケーシングが採用されている点を除き、図6及び図7に例示した第1継手101Aと同様の構成を有する。従って、第1継手101Aに関して上述した手順と同様の手順により、シール部材110の外周部及びリム部の外面形状が第1ケーシング120によって拘束されて一対の管材12が液密又は気密に接続され、且つ2つの第2セグメント132Sがそれぞれ備える2つのリム部132Rの内面と一対の管材12がそれぞれ備える段差部10Dの外面とが当接することにより一対の管材12が互いに離隔しないように係止されている状態である第1状態を達成することができる。
【0046】
上述したように、締結部材による締結により、複数の第2セグメントが互いに近付いて第2ケーシングが集成され、複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシングが集成される。即ち、締結部材による締結が完了するまでは第1セグメント同士及び第2セグメント同士の間には隙間(イニシャルギャップ)が存在する。また、一対の管材を液密又は気密に接続する観点からは、締結部材による締結によって複数の第1セグメントが互いに近付いて第1ケーシングが集成された状態(第1状態)において、シール部材が管材の表面により強く密着していることが望ましい。従って、シール部材の外径は締結部材による締結が完了した時点における第1ケーシングの外周部の内径よりも大きいことが望ましい。これによれば、第1状態においても、第1ケーシングの外周部によってシール部材が一対の管材に向かって圧縮され、反発力によってシール部材が管材の表面により強く密着することができる。シール部材の外径と第1ケーシングの外周部の内径との差の具体的な大きさは例えば第1継手によって接続される管材によって構成される配管に要求される液密性能又は気密性能の高さ等に応じて適宜定めることができる。
【0047】
図10は、図8の(b)に例示した第1継手101Bに対応する図であり、上記のように締結部材による締結が完了している第1状態が達成される前の第1継手101Bの状態の一例を示す模式図である。図10に示すように、第1状態が達成される前は、第2セグメント132S同士の間に隙間(イニシャルギャップ)Gが存在している。その後、図示しない締結部材によって隣り合う第2セグメント132S同士が互いに締め付けられると、フランジ部132F同士が接触する位置まで隣り合う第2セグメント132S同士が近付いて第2ケーシングの集成が完了する。即ち、第1状態が達成される。上述したように無負荷状態におけるシール部材の外径を第1ケーシングの外周部の内径よりも大きくすることにより、第1状態においても第1ケーシングの外周部によってシール部材が一対の管材に向かって圧縮され、反発力によってシール部材が管材の表面により強く密着し、より高い液密性能又は気密性能にて一対の管材を接続することができる。
【0048】
第1状態における液密性能又は気密性能を更に高める観点からは、上記のように第1ケーシングの外周部によって圧縮されたシール部材の反発力以外にも、シール部材を管材の表面に強く密着させる力が作用することが望ましい。例えば、第2セグメントが備えるフランジ部は、締結部材によって隣り合う第2セグメント同士が締結される際に、締結部材による締結力が作用する部分である締結部分よりも径方向における外側に位置する部分が締結部分よりも先に互いに当接するように構成されていてもよい。
【0049】
図11は、上記のような構成を有する第1継手が備える第2セグメントのフランジ部の構成の一例を示す模式的な部分拡大図である。図10に例示した第1継手101Bにおいては、隣り合う第2セグメント132Sのフランジ部132Fの互いに対向する面は平行である。一方、図11に例示する第1継手101Cにおいては、隣り合う第2セグメント133Sのフランジ部133Fの互いに対向する面が径方向において外側ほど互いの距離がより小さくなるように角度(θt)にて傾いている。その結果、図中に矢印及び破線によって示す位置において隣り合う第2セグメント133S同士が図示しない締結部材によって互いに締め付けられると、互いに対向する2つのフランジ部133Fが最も近い箇所(C)が最初に当接する。締結部材による締結が更に進行すると、上記箇所Cを支点として上記角度θtが小さくなるように2つのフランジ部133Fが撓む。このフランジ部133Fの撓みによって生ずる反発力により、2つの第2セグメント133Sの本体部133Bは互いに近付く向きに付勢される。その結果、シール部材を管材の表面に押圧する力が増大し、シール部材を管材の表面により強く密着させて、第1状態における液密性能又は気密性能を更に高めることができる。
【0050】
尚、図11に示した例においては、隣り合う第2セグメント同士が締結部材によって互いに近付くように締め付けられる際に最初に当接する箇所Cがフランジ部の最外端に位置している。しかしながら、隣り合う第2セグメント同士が締結部材によって互いに近付くように締め付けられる際に最初に当接する箇所Cは、締結部材による締結力が作用する箇所よりも径方向において外側に位置する限り、必ずしもフランジ部の最外端に位置する必要は無い。即ち、上述したように、締結部材によって隣り合う第2セグメント同士が締結される際に、締結部材による締結力が作用する部分である締結部分よりも径方向における外側に位置する部分が締結部分よりも先に互いに当接するように構成されていればよい。また、図11に示した例においては隣り合う第2セグメントのフランジ部の互いに対向する面が平面である(図中では直線として描かれている)が当該面は曲面であってもよい。例えば、隣り合う第2セグメントのフランジ部の互いに対向する面は、互いに向かって凸状に反った曲面として構成されていてもよい。
【0051】
ところで、上述したように、シール部材は第1ケーシングによって管材に向かって押圧されると共に第1ケーシングの外周部及びリム部によって画定される空間に嵌合されて形状を拘束される。従って、シール部材と第1ケーシングとの位置関係は一意に定まる。一方、第1ケーシングは、第2ケーシングによってシール部材に向かって押圧されるので、第2ケーシングとシール部材との間に挟持されて所定の位置に固定される。しかしながら、第1継手の内部の所定の位置にシール部材及び第1ケーシングを確実に固定する観点からは、第1継手の内部において第1ケーシングが軸方向に動かないように物理的に固定されていることが望ましい。このように第1ケーシングを固定する手法の具体例としては、例えば、第2ケーシングを構成する第2セグメントの2つのリム部の対向する内面の間に第1ケーシングを嵌合させること等を挙げることができる。
【0052】
また、第1継手によって接続される管材の用途によっては管材の内圧が著しく高く、例えばシール部材のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられる等して、第1ケーシングのみによってはシール部材の形状を拘束し維持することが困難となる場合も想定される。シール部材の形状を拘束し維持することができない場合、例えばシール部材のリップ面と管材の外周面との密着が弱まり、液密性能又は気密性能の低下または第1継手からの液体又は気体の漏出等の問題に繋がる虞がある。このような問題を回避するための対策としては、例えば、第1ケーシングを構成する第1セグメントのリム部を肉厚化したり、より高い機械的強度を有する材料によって第1セグメントを形成したりすることが考えられる。しかしながら、このような対策は、例えば第1セグメントの製造コストの増大等の問題に繋がり、結果として第1継手の製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。
【0053】
そこで、好ましい態様に係る第1継手においては、第1状態において複数の第2セグメントの2つのリム部の間に第1ケーシングの2つのリム部の少なくとも一部が嵌合されるように複数の第2セグメントが構成される。このような構成によれば、シール部材の形状を拘束する第1ケーシングの外周部のみならずリム部の少なくとも一部も第2ケーシングによって外嵌されるので、上述したように第1セグメントの高強度化を必要とすること無く、シール部材の形状を拘束する能力を高めることができる。その結果、第1継手としての液密性能又は気密性能を高めることができる。尚、上述した第1継手に関する説明において参照した図7の(b)及び図9の(b)に例示した第1継手101A及び101Bは、上記好ましい態様に係る第1継手が備える上記技術的特徴を備えている。
【0054】
ところで、図11を参照しながら前述したように、締結部材によって隣り合う第2セグメント同士が締結される際に生ずるフランジ部の撓みによって生ずる反発力により2つの第2セグメントの本体部を互いに近付く向きに付勢してシール部材を管材の表面により強く密着させて第1状態における液密性能又は気密性能を更に高めることができる。この場合、第2セグメントの本体部とフランジ部との境界に大きな曲げ応力が作用する。また、上記のようにフランジ部の撓みを生じさせない構成においても、第1継手によって接続される管材によって構成される配管の内部の圧力の上昇に起因するシール部材の膨張に伴って第2セグメントの本体部が径方向における外側に押圧される場合がある。この場合もまた、第2セグメントの本体部とフランジ部との境界に大きな曲げ応力が作用する。このように大きな応力が第2セグメントの特定の部位に作用した場合、第2セグメントが変形して所期の液密性能若しくは気密性能及び/又は管材係止性能を維持することが困難となる虞がある。
【0055】
更に、上述したように、第1継手によれば、複数の第2セグメントがそれぞれ備える2つのリム部の内面と一対の管材がそれぞれ備える段差部の外面とが当接することにより一対の管材が互いに離隔しないように係止することができる。ところが、例えば第1継手によって接続される管材によって構成される配管の内部の圧力の上昇又は第1継手から管材を抜き取る向きに作用する外力等に起因して一対の管材を互いに離隔させようとする力が管材に作用する場合がある。この場合、第2セグメントの本体部が備える2つのリム部の管材が備える段差部の外面と当接している部位が互いに離隔する向きに押圧される。その結果、リム部の当該部位及び/又は本体部の外周部とリム部との境界に大きな曲げ応力が作用する。このように大きな応力が第2セグメントの特定の部位に作用した場合もまた、第2セグメントが変形して所期の液密性能若しくは気密性能及び/又は管材係止性能を維持することが困難となる虞がある。加えて、第1継手が使用される用途によっては著しく高い耐圧性能及び/又は管材係止性能が求められる場合がある。
【0056】
上記のような課題を解決するためには、例えば第2セグメントにおける少なくとも応力が集中する部位を肉厚化したり、より高い機械的強度を有する材料によって当該部位を形成したりして、当該部位の機械的強度を高めることが考えられる。しかしながら、このような対策は、例えば第2セグメントの製造コストの増大等の問題に繋がり、結果として第1継手の製造コストの増大等の問題に繋がる虞がある。
【0057】
そこで、もう1つの好ましい態様に係る第1継手においては、第2セグメントの少なくとも大きな応力が作用することが想定される部位に硬化処理を施してもよい。前述したように、第2セグメントは金属板から一体物として成形され、典型的には当該金属板は例えばステンレス鋼等の鉄の板である。従って、上記のように第2セグメントの少なくとも特定の部位に硬化処理を施すための具体的な手法としては、例えば高周波焼入れ及びレーザ焼入れ等の焼入れ処理を挙げることができる。また、硬化処理は第2セグメントの少なくとも大きな応力が作用することが想定される部位に施される。従って、上述したような焼入れ処理を始めとする硬化処理は、第2セグメントの大きな応力が作用することが想定される部位のみに施してもよく、或いは第2セグメントの全体に施してもよい。これによれば、第2セグメントの特定の部位を肉厚化したり、より高い機械的強度を有する材料によって当該部位を形成したりすること無く、即ち、第2セグメントの製造コストの大幅な増大等の問題を招くこと無く、第2セグメントの機械的強度を効果的に高め、結果として第1継手の液密性能又は気密性能、管材係止性能及び信頼性を更に高めることができる。
【0058】
〈効果〉
以上説明してきたように、第1継手においては、シール部材に外嵌されてシール部材の形状を拘束する第1ケーシング(インナーケーシング)と第1ケーシングの外側に設けられてシール部材の内部において管端同士が互いに対向する一対の管材の外周面と係合すると共に第1ケーシングをシール部材に向かって押圧する第2ケーシング(アウターケーシング)とによってケーシングが構成されている。即ち、第1継手によれば、シール部材の形状を拘束する機能及び管材を係止する機能が第1ケーシング及び第2ケーシングによって個別に実現されるので、これらの機能を十分に高いレベルにて両立し且つ設計上の自由度を高めることができる。更に、第1ケーシング及び第2ケーシングが金属板から一体物として成形された複数のセグメントによって構成されるので、小型であり且つ軽量なハウジング形管継手を提供することができる。加えて、第1セグメントの板厚である第1板厚が第2セグメントの板厚である第2板厚に等しいか又は第2板厚よりも大きいので、第1セグメントによりシール部材の形状を確実に拘束して、第1継手の液密性能又は気密性能を効果的に高めることができる。
【0059】
《第2実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第2実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第2継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0060】
上述したように、第1ケーシングは複数の第1セグメントの組み合わせによって構成され、第2ケーシングは複数の第2セグメントの組み合わせによって構成される。シール部材の管材への押圧及びシール部材の形状の拘束を全周に亘ってより均一に行う観点からは、第1ケーシングを構成する複数の第1セグメントの境界と第2ケーシングを構成する複数の第2セグメントの境界とが重ならないことが望ましい。
【0061】
〈構成〉
そこで、第2継手は、上述した第1継手であって、第1状態において複数の第1セグメントの境界の位置と複数の第2セグメントの境界の位置とが互いに重ならないように複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとがシール部材の軸周りに所定の角度だけずれて配置されている、ハウジング形管継手である。即ち、第2継手においては、複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとはシール部材の軸周りにおいて互いに割り出しされた位置にある。
【0062】
図12は、第2継手の構成の一例を示す模式図である。図12に例示する第2継手102は上述した第1状態にあり、管材10の軸方向から観察される第2継手102の側面図に内部に収容されている第1ケーシングを構成する第1セグメント120Sの位置が斜線部によって示されている。図12に例示するように、第1継手102においては、第1状態において2つの第1セグメント120Sの境界の位置と2つの第2セグメント130Sの境界の位置とが互いに重ならないように2つの第1セグメント120Sと2つの第2セグメント130Sとが図示しないシール部材の軸(即ち、管材10の軸)周りに所定の角度(θs)だけずれて配置されている。
【0063】
〈効果〉
上記のような構成を有する第2継手においては、複数の第1セグメントの境界の位置と複数の第2セグメントの境界の位置とが互いに重ならないので、シール部材の外周部において、第1セグメント及び第2セグメントの何れにも覆われていない領域が存在しない。従って、シール部材の管材への押圧及びシール部材の形状の拘束を全周に亘ってより均一に行うことができる。即ち、第2継手によれば、より高い信頼性を有するハウジング形管継手を提供することができる。
【0064】
《第3実施形態》
以下、本発明の第3実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第3継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0065】
上述したようにシール部材を覆うように複数の第1セグメントをシール部材に外嵌し、更に複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置する作業を施工現場等において行うことは施工作業の複雑化及び労力の増大に繋がる虞がある。
【0066】
そこで、第3継手は、上述した第1継手又は第2継手であって、第1セグメントと第2セグメントとが予め互いに固定されている、ハウジング形管継手である。第1セグメントと第2セグメントとが互いに固定される部位は特に限定されず、例えば第1セグメントの外周部に含まれる所定の部位と第2セグメントの外周部に含まれる所定の部位とを固定してもよく、或いは第1セグメントのリム部に含まれる所定の部位と第2セグメントのリム部に含まれる所定の部位とを固定してもよい。
【0067】
但し、例えば前述したように第1継手によって接続される管材の内圧が著しく高い場合等においてシール部材のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられることを防止する観点からは、第1セグメントのリム部に含まれる所定の部位と第2セグメントのリム部に含まれる所定の部位とが固定されていることが望ましい。より好ましくは、第1セグメントのリム部と第2セグメントのリム部とはシール部材のリム部に沿った形状を有する領域において互いに固定されていることが望ましい。換言すれば、シール部材のリム部に対向する円弧状の形状を有する部位において第1セグメントのリム部と第2セグメントのリム部とが固定されていることが望ましい。
【0068】
尚、当然のことながら、シール部材のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられることを防止する観点からは、第1セグメントのリム部と第2セグメントのリム部とが固定されている部位の面積が大きいことが望ましい。例えば、上記のように当該部位がシール部材のリム部に対向する円弧状の形状を有する場合、第1セグメントのリム部と第2セグメントのリム部とが固定されている部位の円弧状の形状における中心角はできる限り大きいことが望ましい。
【0069】
また、第1セグメントと第2セグメントとを互いに固定するための具体的な手法はハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、第1セグメントと第2セグメントとは例えばアーク溶接、スポット溶接及びレーザ溶接等の溶接によって互いに固定される。或いは、接着剤による接着又はカシメ加工等の手法によって第1セグメントと第2セグメントとを互いに固定してもよい。
【0070】
図13は、第3継手の構成の一例を示す模式図である。図13に例示する第3継手103は、第1セグメントと第2セグメントとが予め互いに固定されている点を除き、図9及び図10に例示した第1継手101Bと同様の構成を有する。図13の(a)は、図10と同様に、軸AXの方向から観察される第3継手103の模式的な正面図である。一方、図13の(b)は、図9の(b)と同様に、軸AXを含み紙面に垂直な平面による第3継手103の模式的な側断面図である。
【0071】
図13に例示する第3継手103においては、第1セグメント120Sと第2セグメント132Sとが固定されている。具体的には、黒塗りの領域によって示す部位(以降、「固定部位」と称呼される場合がある。)145において、第1セグメント120Sのリム部と第2セグメント132Sの本体部132Bのリム部132Rとが固定されている。固定部位145は、シール部材110のリム部に対向する円弧状の形状を有する部位である。当該円弧状の形状における中心角は、第2セグメント132Sのリム部132Rの軸AX周りの周方向における殆ど全域に亘って固定部位145が位置するように設定されている。これにより、第1セグメント120Sのリム部と第2セグメント132Sのリム部132Rとがより強固に固定され、シール部材110のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられることをより確実且つ効果的に防止することができる。尚、図13において黒塗りの領域によって示される固定部位145はあくまでも模式的な例示であり、実際の第3継手における固定部位の位置、形状及び大きさを正確に反映するものではない。
【0072】
〈効果〉
上記のように、第3継手においては、第1セグメントと第2セグメントとが予め互いに固定されている。従って、前述したようにシール部材を覆うように複数の第1セグメントをシール部材に外嵌し、更に複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントを配置する作業を施工現場等において行う必要が無く、予め互いに固定された第1セグメントと第2セグメントとの組をシール部材に外嵌すればよい。その結果、施工作業の単純化及び労力の低減を達成することができる。このような利点は、複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとがシール部材の軸周りにおいて互いに割り出しされた位置に配置される第2継手の集成において特に有用である。尚、この場合、複数の第1セグメントと複数の第2セグメントとの割り出しの量(シール部材の軸周りにおける角度θs)は、予め互いに固定された第1セグメントと第2セグメントとの組をシール部材に外嵌することが可能である程度の大きさとすることが望ましい。この割り出しの量の具体的な大きさは、例えばシール部材の大きさ、形状及び柔軟性等に応じて適宜定めることができる。
【0073】
また、第1セグメントのリム部に含まれる所定の部位と第2セグメントのリム部に含まれる所定の部位とを固定することにより、例えば前述したように第3継手によって接続される管材の内圧が著しく高い場合等においてもシール部材のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられて第3継手の液密性能又は気密性能が低下する虞を低減することができる。特に、シール部材のリム部に対向する円弧状の形状を有する部位において第1セグメントのリム部と第2セグメントのリム部とを固定することにより、シール部材のリム部によって第1ケーシングのリム部が押し広げられて第3継手の液密性能又は気密性能が低下する虞をより確実且つ効果的に低減することができる。
【0074】
《第4実施形態》
以下、本発明の第4実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第4継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0075】
当業者に周知であるように、従来技術に係るハウジング形管継手(従来継手)は、ケーシングを構成する複数のセグメントがシール部材に外嵌され且つ締結部材(ボルト及びナット)によって互いに締結された状態にて提供されることが一般的である。従って、施工現場においては、作業者が先ず従来継手から締結部材を外すことによってケーシングを複数のセグメントに分解し、シール部材を取り外す必要がある。次に、接続しようとする一対の管材をシール部材の両側から挿入し、一対の管材の管端を跨ぐように複数のセグメントをシール部材に外嵌し、締結部材によって複数のセグメントを締め付ける。この際、シール部材を圧縮すると共に複数のセグメントによってケーシングを集成しつつ各々のセグメントのリム部を一対の管材に形成された段差部に係合させるように各構成部材の位置関係を保ちながら締結部材を締結する必要がある。このように従来継手の装着には、多くの労力及び時間が必要とされ、結果として施工コストの増大に繋がる。
【0076】
〈構成〉
そこで、第4継手は、上述した第1継手乃至第3継手の何れかであって、一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入することが可能な程度に隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態である第2状態にて提供されるハウジング形管継手である。
【0077】
より詳しくは、第2状態とは、シール部材を覆うように複数の第1セグメントがシール部材に外嵌されており、複数の第1セグメントを覆うように複数の第2セグメントが配置されており、シール部材、複数の第1セグメント及び複数の第2セグメントが脱落せず、且つ複数の第2セグメントのリム部によって囲まれる空間及び複数の第1セグメントのリム部によって囲まれる空間を通して一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側からシール部に挿入することが可能な程度に、隣り合う第2セグメント同士が締結部材によって係止されている状態である。
【0078】
〈効果〉
上記のように、第4継手は一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入することが可能な程度に隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態である第2状態にて提供される。従って、上述した従来継手のようにケーシングを構成する複数のセグメントがシール部材に外嵌され且つ締結部材によって互いに締結された状態から従来継手を分解したり締結部材による締結を緩めたりすること無く、一対の管材をシール部材に直ちに挿入することができる。その結果、施工作業の単純化及び労力の低減を達成することができ、施工コストの削減に繋がる。
【0079】
尚、第4継手は一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入することが可能な程度に隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態である第2状態にあるので、シール部材の軸方向における両方又は一方の側から管材の管端が予め挿入された状態にて提供することも可能である。これによれば、施工現場における作業工数を更に削減することができるので、施工コストを更に削減することができる。
【0080】
《第5実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第5実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第5継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0081】
上述したように、第4継手は一対の管材の管端をシール部材の軸方向における両側から挿入することが可能な程度に隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態(第2状態)にて提供されるので、一対の管材を直ちにシール部材に挿入することができる。従って、施工作業の単純化及び労力の低減を達成することができる。
【0082】
しかしながら、上記のように隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態(第2状態)にある第4継手を例えば施工現場等に運搬する場合、第4継手を構成する各部材同士が振動等によって互いに衝突して異音及び/又は傷が発生する虞がある。また、上述したようにシール部材の軸方向における両方又は一方の側から管材の管端が予め挿入された状態にて第4継手が提供される場合は、例えば運搬時の振動等に起因して第4継手を構成する各部材と管材とが互いに衝突して異音及び/又は傷が発生する虞がある。更に、施工の前に第4継手の開口部から異物等が混入することを防止する観点からは、第4継手の開口部が予め塞がれた状態にて第4継手を施工に供することが望ましい。
【0083】
〈構成〉
そこで、第5継手は、上述した第4継手であって、ハウジング形管継手の軸方向における両端の2つの開口部の少なくとも一方に嵌合された栓を更に備えるハウジング形管継手である。尚、上記栓は第5継手の内部においてシール部材にも嵌合していることが望ましい。第5継手が単独にて提供される場合は、2つの開口部の両方に栓が嵌合されていることが望ましい。一方、上述したようにシール部材の軸方向における一方の側から管材の管端が予め挿入された状態にて第5継手が提供される場合は、2つの開口部のうち管材が挿入されていない方の開口部に栓が嵌合される。この場合、管材の第5継手とは反対側の管端もまた何等かの手段によって塞がれていることが望ましいことは言うまでも無い。
【0084】
上記栓は、弾性材料によって形成されている。上記栓を形成する弾性材料は特に限定されず、例えば天然ゴム及び合成ゴム等の各種ゴムを採用することができる。尚、上記栓は施工時に取り外されるので、ハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る材料である必要は無い。
【0085】
更に、施工の前に第4継手の開口部から異物等が混入することをより確実に防止する観点からは、上記栓の側面における隣り合う第2セグメントのフランジ部の基端部の間に画定される間隙もまた塞がれていることが望ましい。そこで、好ましい態様に係る第5継手においては、上記栓の側面における隣り合う第2セグメントのフランジ部の基端部の間に画定される間隙に対向する領域には当該間隙に嵌合するように突設された突部が形成されている。上記突部の形状及び大きさは、上記栓が第5継手の開口部に嵌合されている状態において隣り合う第2セグメントのフランジ部の基端部の間に画定される間隙に嵌合され圧縮されて隣り合う第2セグメントのフランジ部の間隔を押し広げる向きに反発力を作用することが可能であるように定められる。
【0086】
ところで、シール部材のリップ面と管材の外周面との密着性を高めることを目的として、シール部材の内径は管材の外径よりも小さいように設計される。従って、シール部材に管材を挿入する際には、弾性材料によって形成されたシール部材の内径を広げながらシール部材に管材の管端を押し込む必要がある。この作業を容易にするため、施工現場においてシール部材のリップ面に潤滑剤が塗布されることが一般的である。ハウジング形管継手の軸方向における両端の2つの開口部の少なくとも一方に嵌合された栓を更に備える第5継手において、当該栓のシール部材のリップ面に接触する領域に予め潤滑剤を塗布しておけば、施工現場においてシール部材のリップ面に潤滑剤を塗布する必要が無くなる。
【0087】
そこで、もう1つの好ましい態様に係る第5継手においては、上記栓の側面におけるシール部材のリップ面に接触する領域の少なくとも一部に潤滑材が予め塗布されている。上記潤滑剤としては、当該技術分野において広く使用されている潤滑剤を採用することができる。このような潤滑剤の具体例としては、例えばグリス及び潤滑油等を挙げることができる。
【0088】
図14は、第5継手の構成の一例を示す模式図であり、(a)は第5継手105の外観を示す斜視図であり、(b)及び(c)はそれぞれ第5継手が備える栓150の構成の一例を示す模式的な正面図及び側面図である。栓150はゴム製のキャップである。(a)に例示する第5継手105は、図示しないシール部材の軸方向における一方の側から管材10が予め挿入された状態にあり、栓150は管材10とは反対側の開口部を塞ぐように第5継手105に挿入されて開口部と嵌合している。
【0089】
(b)及び(c)に例示するように、略円柱状の形状を有する栓150の側面の軸を挟んで対向する位置には突部150Pが形成されている。そして、(a)に例示するように、第2ケーシング130を構成する隣り合う第2セグメント130Sのフランジ部の基端部の間に画定される間隙に対向する領域には突部150Pが形成されており、当該間隙に嵌合している。また、(c)において斜線部によって例示するように、栓150の表面におけるシール部材のリップ部110Lのリップ面に接触する領域には潤滑材150Lとしてのグリスが予め塗布されている。
【0090】
〈効果〉
上記のように、第5継手においては、弾性材料によって形成された栓が軸方向における両端の2つの開口部の少なくとも一方に嵌合されている。従って、開口部が塞がれると共に第5継手を構成する各部材(例えば、第2ケーシングを構成する第2セグメント等)の動きを拘束することができる。その結果、隣り合う第2セグメント同士が緩く係止されている状態(第2状態)にあるにも拘わらず、第5継手を例えば施工現場等に運搬する場合において、第5継手を構成する各部材同士が振動等によって互いに衝突して異音及び/又は傷が発生する虞を低減することができる。また、図14の(a)に例示したようにシール部材の軸方向における一方の側から管材の管端が予め挿入された状態にて第5継手が提供される場合においては、例えば運搬時の振動等に起因して第5継手を構成する各部材と管材とが互いに衝突して異音及び/又は傷が発生する虞を低減することができる。
【0091】
更に、施工の前に第5継手の開口部から異物等が混入することを防止することもできる。好ましい態様に係る第5継手においては、上記栓の側面における隣り合う第2セグメントのフランジ部の基端部の間に画定される間隙に対向する領域には当該間隙に嵌合するように突設された突部が形成されている。これにより、隣り合う第2セグメントのフランジ部の基端部の間に画定される間隙に上記突部が嵌合して、施工の前に第5継手の開口部から異物等が混入することをより確実に防止することもできる。加えて、上記栓の側面におけるシール部材のリップ面に接触する領域の少なくとも一部に潤滑材を予め塗布しておくことにより、施工現場においてシール部材に管材を挿入する際にシール部材のリップ面に潤滑剤を塗布する作業を省略することができる。
【0092】
《第6実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第6実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第6継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0093】
前述したように、第2ケーシングは、金属板から一体物として成形された複数の略円弧状の部材である第2セグメントの組み合わせによって構成される。また、第2セグメントとして成形される金属板を構成する材料は、例えばステンレス鋼等の鉄である。更に、第2セグメントを金属板から一体物として成形するための方法の具体例としては、例えばプレス加工等の塑性加工を挙げることができる。
【0094】
上記のような加工方法によって成形される第2セグメントは、例えば要求される機械的強度の達成等を目的として、上述した図4及び図5等に例示したような所謂「クラムシェル構造」を有するように成形されることが一般的である。このようなクラムシェル構造を有する第2セグメントが締結部材によって締結されて第2ケーシングが集成される場合、隣り合う第2セグメントのフランジ部は互いの周縁部にて当接する。その結果、これらのフランジ部に形成された着座面は所定の距離を空けて互いに対向することとなる。即ち、隣り合う第2セグメントのフランジ部の着座面の間には空間があり、フランジ部の内部から支持されていない着座面に締結部材による締結力が作用することとなる。
【0095】
従って、例えば締結部材を締結する力が過大である場合等において、着座面及び/又は着座面の周囲の部分が変形して第2ケーシングの形状が歪み、その結果として、第2ケーシングによる第1セグメントの押圧力が不均一となったり、第2ケーシングと管材との係合が不十分となったりする虞がある。
【0096】
〈構成〉
そこで、第6継手は、上述した第1継手乃至第5継手の何れかであって、第1状態において隣り合う第2セグメント同士がフランジ部の周縁部にて当接し且つ隣り合う第2セグメント同士の着座面は所定の距離を空けて互いに対向するように第2セグメントのフランジ部が構成されている、ハウジング形管継手である。このような構成を有する第2セグメントの具体例としては、例えば上述したクラムシェル構造を有する第2セグメント等を挙げることができる。
【0097】
また、第6継手は、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に配設されたスペーサを更に備える。上記スペーサを形成する材料は、少なくともこれらの着座面が互いに近付くことを制限することが可能な機械的強度を有し且つハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、上記スペーサを形成する材料は例えばステンレス鋼等の鉄である。また、上記スペーサの形状及び大きさもまた、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に介在して少なくともこれらの着座面が互いに近付くことを制限することが可能であり且つハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り、特に限定されない。このようなスペーサの形状の具体例としては、例えば柱状、板状及び筒状等、種々の形状を挙げることができる。
【0098】
ところで、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に上記スペーサを配置する作業を第6継手の製造時及び/又は第6継手を用いる施工時等において行うことは作業の複雑化及び労力の増大に繋がる虞がある。そこで、好ましい態様に係る第6継手においては、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の一方に上記スペーサが固定されている。第2セグメントの着座面に上記スペーサを固定するための具体的な手法は、ハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、上記スペーサは例えばプロジェクション溶接等の溶接によって着座面に固定される。これによれば、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に上記スペーサを配置する作業が不要となるので、第6継手の製造時及び/又は第6継手を用いる施工時における作業の単純化及び労力の低減を達成することができる。
【0099】
より好ましい態様に係る第6継手においては、筒状の形状を有するカラーによって上記スペーサが構成されており、締結部材は隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面に穿孔された貫通孔及び上記スペーサに挿通される挿通部材を含む。この場合、典型的には、上記スペーサはステンレス鋼によって形成された円筒状のカラーであり、締結部材は互いに螺合可能に構成されたボルトとナットとの組であり、上記挿通部材は上記ボルトである。
【0100】
また、上記態様に係る第6継手においては、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の一方に上記挿通部材が固定されていることが好ましい。第2セグメントの着座面に上記挿通部材を固定するための具体的な手法は、ハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、上記挿通部材は例えばプロジェクション溶接等の溶接によって着座面に固定される。これによれば、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に上記挿通部材を配置する作業が不要となるので、第6継手の製造時及び/又は第6継手を用いる施工時における作業の単純化及び労力の低減を達成することができる。
【0101】
尚、上記のように隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の一方にスペーサ及び挿通部材が固定されている場合、第6継手の製造時及び/又は第6継手を用いる施工時における作業の単純化及び労力の低減を達成する観点からは、スペーサ及び挿通部材の両方が同一の着座面に固定されていることが望ましい。これによれば、第6継手の製造時において、例えばプロジェクション溶接を始めとする溶接等の手法によって、スペーサ及び挿通部材の両方を着座面の両面(外面及び内面)に同時に固定することができる。また、第6継手を用いる施工時において、スペーサの着座面とは反対側の端部から突出している挿通部材の先端を、対向する着座面に穿孔された貫通孔に容易に挿通して、隣り合う第2セグメント同士を容易に締結することができる。
【0102】
図15は、第6継手の構成の1つの例を示す模式図である。図15の(a)は第6継手106Aの第2ケーシング132を構成する第2セグメント132Sのフランジ部に形成された着座面に垂直な方向から観察される第6継手106Aの模式的な側面図であり、第2ケーシング132の内部に収容されている第1ケーシング120及びスペーサ130Cが破線によって描かれている。図15の(b)は、(a)に示す軸AXを含み紙面に垂直な平面による第6継手106Aの模式的な側断面図である。図15の(c)は(a)に示す軸AXの方向から観察される第6継手106Aの模式的な正面図である。(c)においては、第2ケーシング132の内部に収容されている各構成部材を示すことを目的として、一方の第2セグメント132Sは省略され、他方の第2セグメント132Sのフランジ部及びその近傍の部分は断面図になっている。尚、図15の(a)乃至(c)の何れにおいても締結部材140は省略されており、(b)においては管材12が描かれている。
【0103】
図15に例示するように、第6継手106Aにおいて第2ケーシング132を構成する第2セグメント132Sは図5に例示した第2セグメント132Sと同様の構成にクラムシェル構造を有する。また、第6継手106Aは、隣り合う第2セグメント132Sの互いに対向する着座面の間に配設されたスペーサ130Cを更に備える。スペーサ130Cはステンレス鋼によって形成された円筒状のカラーである。更に、図15に示す例においては、第2ケーシング132を構成する2つの第2セグメント132Sのうちの一方の第2セグメント132Sの両端の着座面の両方にスペーサ130Sが固定されている。即ち、隣り合う第2セグメント132Sの互いに対向する着座面の一方にスペーサ130Cが固定されている。
【0104】
尚、上述したように図15の(a)乃至(c)の何れにおいても締結部材140は省略されているが、ボルトとナットとの組からなる締結部材の挿通部材としてのボルトが第2セグメント132Sの互いに対向する着座面に穿孔された貫通孔及びスペーサ130Cに挿通される。そして、当該ボルトにナットが螺合されて2つの第2セグメント132Sが締結されて第2ケーシング132が集成される。この挿通部材としてのボルトもまた隣り合う第2セグメント132Sの互いに対向する着座面の一方に例えばプロジェクション溶接等の溶接によって固定することができる。上述した図5に例示した第2セグメント132Sの着座面の周囲には、挿通部材としてのボルトのヘッド部を着座面に溶接するためのプロジェクション(突起部)141Pが描かれている。
【0105】
また、同一の着座面の両面(外面及び内面)にプロジェクションを設けておき、外面側のプロジェクションに挿通部材としてのボルトのヘッド部を当接させ且つ内面側のプロジェクションにスペーサを当接させた状態においてプロジェクション溶接によって両者を同時に着座面の両面に固定すると効率的である。
【0106】
図16は、第6継手の構成のもう1つの例を示す模式図である。図16の(a)及び(b)は、第6継手106Bを構成する第2セグメントの模式的な斜視図であり、前述した第1継手を構成する第2セグメントの1つの例を示した図5の(a)及び(b)にそれぞれ対応する。また、図16の(c)は、軸AXの方向から観察される第6継手106Bの模式的な正面図であり、上述した第6継手106Aに関する説明において参照した図15の(c)に対応する。
【0107】
図16の(a)及び(b)に例示するように、第6継手106Bを構成する第2セグメント132Sにおいては、着座面に穿孔された貫通孔の周縁部における着座面の外面及び内面に複数のプロジェクション141P及び142Pがそれぞれ設けられている。これによれば、例えば、外面側のプロジェクション141Pに挿通部材としてのボルト141Bのヘッド部を当接させ且つ内面側のプロジェクション142Pにスペーサ130Cを当接させた状態においてプロジェクション溶接によって両者を同時に着座面の両面に固定することができる。このようにして、図16の(c)に例示する第6継手106Bを効率的に製造することができ、また第6継手106Bを用いる施工時における作業性を向上させることができる。
【0108】
〈効果〉
以上説明してきたように、第6継手においては、第1状態において隣り合う第2セグメント同士がフランジ部の周縁部にて当接し且つ隣り合う第2セグメント同士の着座面は所定の距離を空けて互いに対向するように第2セグメントのフランジ部が構成されている。また、第6継手は、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間に配設されたスペーサを更に備える。従って、第6継手によれば、例えば締結部材を締結する力が過大である場合等においても、着座面及び/又は着座面の周囲の部分が変形して第2ケーシングの形状が歪む虞を低減することができる。その結果、第2ケーシングによる第1セグメントの押圧力が不均一となったり、第2ケーシングと管材との係合が不十分となったりする虞を低減することができる。
【0109】
また、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の一方にスペーサ及び/又は締結部材を構成する挿通部材を固定してもよい。このような態様によれば、隣り合う第2セグメントの互いに対向する着座面の間にスペーサ及び/又は挿通部材を配置する作業が不要となるので、第6継手の製造時及び/又は第6継手を用いる施工時における作業の単純化及び労力の低減を達成することができる。
【0110】
《第7実施形態》
以下、図面を参照しながら本発明の第7実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第7継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0111】
一対の管材を液密又は気密に接続するためには対向する一対の管材の端面(管端)を跨ぐようにシール部材を配設する必要がある。ところが、前述したように、ハウジング形管継手においては、シール部材のリップ面と管材の外周面との密着性を高めることを目的として、シール部材の内径は管材の外径よりも小さいように設計される。従って、シール部材に管材の管端を挿入する際には、弾性材料によって形成されたシール部材の内径を広げながらシール部材に管材の管端を押し込む必要がある。この作業を容易にするため、シール部材のリップ面には潤滑剤が塗布される。
【0112】
上記作業の具体的な手順としては、先ず一方の管材をシール部材に貫通させ、当該管材の管端に他方の管材の管端を当接させた状態において、シール部材の位置を他方の管材の側へずらすことによって、これら一対の管材の管端を跨ぐ位置にシール部材が配設されることが一般的である。しかしながら、このような手順においては、一対の管材の管端同士が互いに対向する位置とシール部材とが必ずしも好適な位置関係とはならない虞がある。その結果、ハウジング形管継手が本来備える液密性能又は気密性能が十分に発揮されない場合がある。
【0113】
そこで、例えば、特許文献2(特開2013-210043号公報)には、シール部材の外周部の内周面から径方向における内側に向かって延在するストッパーを設けることが開示されている。これによれば、シール部材の両側から挿入される一対の管材の管端を当該ストッパーに当接させることにより、シール部材の内部における好適な位置に一対の管材を配置することができる。このような構成は本発明に係るハウジング形管継手(本発明継手)にも適用することができる。
【0114】
〈構成〉
即ち、第7継手は、上述した第1継手乃至第6継手の何れかであって、シール部材の外周部の内周面から径方向における内側に向かって延在する部分であるストッパー部をシール部材が更に備える、ハウジング形管継手である。更に、ストッパー部は、第1状態において管端の少なくとも一部に当接するように構成されている。
【0115】
上記ストッパー部の具体的な構成は、上記要件を満たし且つハウジング形管継手としての使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。典型的には、上記ストッパー部は、シール部材を構成する材料と同じ材料によってシール部材と一体的に形成される。
【0116】
図17は、第7継手の構成の1つの例を示す模式図である。図17の(a)は管材12の軸AXを含む平面による第7継手107Aの模式的な側断面図であり、図17の(b)は(a)に示す直線LSを含み軸AXに垂直な平面による第7継手107Aの模式的な横断面図である。尚、(b)においては、第7継手107Aが備えるシール部材110と管材12との位置関係を判りやすく示すことを目的として、上記横断面には含まれない管材12が破線によって描かれている。
【0117】
(a)に例示するように、第7継手107Aが備えるシール部材110は、シール部材110の外周部110Pの内周面から径方向における内側に向かって延在する部分であるストッパー部111Tを備える。ストッパー部111Tは、シール部材110と一体的に、ゴムによって形成されている。(b)に例示するように、ストッパー部111Tは、第1状態において管材12の管端に当接するように構成されている。
【0118】
従って、第7継手107Aによって一対の管材12を液密又は気密に接続する際には、一対の管材12の管端をシール部材110の両側からそれぞれ挿入して、シール部材110が備えるストッパー部111Tに当接させる。これにより、第7継手107Aによれば、一対の管材12の管端同士が互いに対向する位置とシール部材110とを好適な位置関係に容易且つ確実に配置することができる。
【0119】
ところで、シール部材110は、管材の内部に流れる流体(液体又は気体)の圧力によってシール性(液密性能又は気密性能)が高まる所謂「セルフシール構造」を有している。このセルフシール構造によってシール性を高めるためには、シール部材110の外周部110P、リム部110R及びリップ部110Lによって画定される空間(以降、「セルフシール空間」と称呼される場合がある。)に管材12の内部に流れる流体が流れ込む必要がある。
【0120】
そこで、好ましい態様に係る第7継手においては、第1状態において管端の一部のみに当接するようにストッパー部が構成されている。従って、一対の管材の管端とストッパー部とが当接していない領域において一対の管材の管端同士の間に形成される間隙により、シール部材の外周部、リム部及びリップ部によって画定される空間(セルフシール空間)と管材の内部空間とが連通される。その結果、上記間隙を経由して、管材の内部に流れる流体がセルフシール空間へと容易且つ確実に流れ込み、当該流体の圧力によりシール部材を膨張させて、シール性を高めることができる。
【0121】
図18は、上述した図17の(b)に対応するものであり、上記態様に係る第7継手の構成のもう1つの例を示す模式的な横断面図である。図18に例示する第7継手107Bが備えるストッパー112Tは第1状態において管端の一部のみに当接するように構成されている。より具体的には、ストッパー112Tは、図17に例示したストッパー111Tのように管材12の管端と全周に亘って当接するのではなく、管材12の管端における特定の部分(図18に示す例においては、シール部材110の軸の周りにそれぞれ120°ずれた3つの部分)のみにおいて管材12の管端と当接する。従って、一対の管材12の管端とストッパー部112Tとが当接していない領域においては、一対の管材12の管端同士の間に間隙が形成される。この間隙により、上述したセルフシール空間と管材12の内部空間とが連通される。その結果、上記間隙を経由して、管材12の内部に流れる流体がセルフシール空間へと容易且つ確実に流れ込み、当該流体の圧力によりシール部材110が膨張して、シール部材110のリップ面と管材12の外周面との密着が強まり、シール性が高まる。
【0122】
〈効果〉
以上のように、第7継手においては、シール部材の外周部の内周面から径方向における内側に向かって延在する部分であるストッパー部をシール部材が更に備え、第1状態において管端の少なくとも一部に当接するようにストッパー部が構成されている。従って、第7継手によって一対の管材を液密又は気密に接続する際には、一対の管材の管端をシール部材の両側からそれぞれ挿入してシール部材が備えるストッパー部に当接させることにより、各々の管材のシール部材に対する位置合わせを容易且つ確実に行うことができる。その結果、第7継手によれば、一対の管材の管端同士が互いに対向する位置とシール部材とを好適な位置関係に容易且つ確実に配置することができるので、第7継手が本来備える液密性能又は気密性能を十分且つ確実に発揮することができる。
【0123】
また、第1状態において管端の一部のみに当接するようにストッパー部が構成されていてもよい。このような態様によれば、一対の管材の管端のストッパー部と当接していない領域の間に形成される間隙により、シール部材の外周部、リム部及びリップ部によって画定される空間(セルフシール空間)と管材の内部空間とが連通される。その結果、上記間隙を経由して、管材の内部に流れる流体がセルフシール空間へと容易且つ確実に流れ込み、当該流体の圧力によりシール部材を膨張させて、シール性を高めることができる。
【0124】
《第8実施形態》
以下、本発明の第8実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第8継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0125】
ハウジング形管継手によって一対の管材を液密又は気密に接続するに当たっては、ケーシングを構成するセグメントが適正な締結力によって締結されて所定の圧力がかかっていることが重要である。しかしながら、施工現場における作業において個々のハウジング形管継手のケーシングを構成するセグメントを締結した際のトルク等を確実に記録し管理することは決して容易ではなく、施工作業の複雑化及び労力の増大を招く虞がある。また、例えばハウジング形管継手によって接続される管材によって構成される配管の内部の圧力の過剰な上昇等に起因して、ケーシングに過大な応力が作用してケーシングの歪(変形)が生じ、当該配管を液密又は気密に維持することが困難となる虞がある。従って、当該配管の信頼性を確保する観点からは、ケーシングに作用する応力及び/又は結果として生ずるケーシングの歪(変形)等を早期に検知することが望ましい。しかしながら、これらの応力及び/又は歪をタイムリーに計測することもまた容易ではなく、当該配管を維持するための労力の増大を招く虞がある。
【0126】
〈構成〉
そこで、第8継手は、上述した第1継手乃至第7継手の何れかであって、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングが受けた圧力、応力及び歪みのうちの少なくとも1つに対応する検出信号を出力するように構成されたセンサ及び当該検出信号に対応する情報をデータとして記録するように構成されたRFタグを更に備える、ハウジング形管継手である。上記センサの具体例としては、例えば、感圧センサ、応力センサ及び歪ゲージ等を挙げることができる。このようなセンサ及びRFタグの詳細については、当業者に周知であるので、ここでの説明は省略する。尚、これらのセンサを配設する部位については、これらのセンサによって検知しようとする情報に応じて適宜定められる。例えば、複数の第2セグメントを締結した際のトルクに関する情報を検知する場合は、第2セグメントのフランジ部に形成された着座面におけるナットが接触する領域に感圧センサを配設することができる。また、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングの変形に関する情報を検知する場合は、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングの変形が生じ得る領域に応力センサ及び/又は歪センサを配設することができる。
【0127】
上記のように、第8継手は、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングが受けた圧力、応力及び歪みのうちの少なくとも1つに対応する検出信号を出力するように構成されたセンサを更に備える。加えて、第8継手は、上記センサからの検出信号に対応する情報をデータとして記録するように構成されたRFタグを更に備える。即ち、第8継手においては、第1ケーシング及び/又は第2ケーシングを構成するセグメントが締結される際のトルク、第8継手によって接続される管材によって構成される配管の使用中に第1ケーシング及び/又は第2ケーシングに作用する応力及び/又は結果として生ずる第1ケーシング及び/又は第2ケーシングの歪(変形)等に対応する情報として、上記センサからの検出信号に対応する情報をデータとしてRFタグに自動的に記録することができる。尚、第8継手が備えるセンサ及びRFタグは、例えば信号線等によって電気的に接続された別個の装置として構成されていてもよく、或いは一体の装置として構成されていてもよい。
【0128】
〈効果〉
当業者に周知であるように、RFタグに記録されているデータは、例えば対応するリーダー(読み取り装置)によって迅速且つ簡便に読み出すことができる。従って、第8継手によれば、施工作業の複雑化及び労力の増大並びに第8継手によって接続される管材によって構成される配管を維持するための労力の増大等の問題を招くこと無く、個々のハウジング形管継手のケーシングを構成するセグメントの締結状態及び/又はケーシングの変形の有無等を確実に把握することができる。
【0129】
《第9実施形態》
以下、本発明の第9実施形態に係るハウジング形管継手(以降、「第9継手」と称呼される場合がある。)について説明する。
【0130】
これまで説明において例示してきた第1継手乃至第8継手においては、第2セグメントのフランジ部にそれぞれ形成された着座面には1つの貫通孔が穿孔されており、隣り合う第2セグメントのフランジ部同士が1つの締結部材によって締結されている。このような構成においては所期の液密性能及び/又は気密性能を達成するために必要とされる軸力を1つの締結部材によって達成する必要があるため、大きな締結部材及びフランジ部を採用せざるを得ない。その結果、例えば図6の(a)及び図8に例示したように、管継手が全体として大型化しがちである。
【0131】
一方、実際の配管施工においては、例えば配管の断熱等を目的として、ケーシングの構成部材を締結して管継手を集成した後に配管及び管継手の外側を断熱材で覆う必要がある場合がある。このような場合、上記のように大きな締結部材及びフランジ部が採用される構成を有する管継手によって構成される配管においては、管継手を覆うために使用される断熱材の面積が増え、施工コストの増大に繋がる虞がある。また、大きな締結部材及びフランジ部を有する大きな管継手を断熱材によって覆うため、当該部分の体積が更に大きくなり、配管の設置スペースを圧迫することに繋がる虞がある。
【0132】
〈構成〉
そこで、第9継手は、所期の液密性能及び/又は気密性能を達成するために必要とされる軸力が複数の締結部材によって達成されるように構成される。具体的には、第9継手は、上述した第1継手乃至第8継手の何れかであって、個々の着座面において複数の締結部材によって隣り合う第2セグメント同士が締結されることにより第2ケーシングが構成されている、ハウジング形管継手である。
【0133】
第9継手を構成する第2セグメントの個々の着座面において隣り合う第2セグメント同士を締結する締結部材の数は特に限定されない。例えば、第9継手が使用される用途において必要とされる液密性能及び/又は気密性能を達成することが可能であり且つ当該用途において許容される体積に収めることが可能である限りにおいて、任意の数の締結部材を採用することができる。
【0134】
図19は、第9継手を構成する第2セグメントの構成の一例を示す模式図である。具体的には、図19の(a)は、第9継手を構成する第2セグメント134Sの両端に形成された2つのフランジ部134Fを結ぶ方向及び軸AXの方向の両方に垂直な方向における径方向の外側から観察した場合における第2セグメント134Sの模式図である。一方、図19の(b)は、前述した第1継手を構成する第2セグメント132Sの両端に形成された2つのフランジ部132Fを結ぶ方向及び軸AXの方向の両方に垂直な方向における径方向の外側から観察した場合における第2セグメント132Sの模式図である。
【0135】
図19の(b)に例示する第2セグメント132Sにおいては、両端部にあるフランジ部132Fにそれぞれ形成された着座面には1つの貫通孔が穿孔されており、隣り合う第2セグメント132Sのフランジ部132F同士は図示しない1つの締結部材によって締結される。従って、所期の液密性能及び/又は気密性能を達成するために必要とされる軸力を1つの締結部材によって達成する必要があるため、大きな締結部材及びフランジ部を採用せざるを得ない。その結果、例えば図8に例示したように、管継手が全体として大型化しがちである。
【0136】
一方、図19の(a)に例示する第9継手を構成する第2セグメント134Sにおいては、両端部にあるフランジ部134Fにそれぞれ形成された着座面には2つの貫通孔が穿孔されており、隣り合う第2セグメント134Sのフランジ部134F同士は図示しない2つの締結部材によって締結される。従って、所期の液密性能及び/又は気密性能を達成するために必要とされる軸力を2つの締結部材に分散させることができるため、より小さい締結部材及びフランジ部を採用することができる。その結果、図19の(b)において黒塗りの矢印によって示すように、第2セグメント134Sを小型化することができる。即ち、第9継手を全体として小型化することができる。
【0137】
〈効果〉
以上のように、第9継手においては、個々の着座面において複数の締結部材によって隣り合う第2セグメント同士が締結されることにより第2ケーシングが構成されている。従って、所期の液密性能及び/又は気密性能を達成するために必要とされる軸力を複数の締結部材に分散させることができるため、より小さい締結部材及びフランジ部を採用することができる。その結果、第2セグメントを小型化することができ、第9継手を全体として小型化することができる。これにより、配管及び管継手の外側を断熱材で覆う必要がある場合においても、管継手を覆うために使用される断熱材の面積を低減して施工コストを削減することができる。また、第9継手が使用される配管の設置スペースを圧迫する虞を低減することもできる。
【0138】
以上、本発明を説明することを目的として、特定の構成を有する幾つかの実施形態及び当該実施形態の好ましい態様につき、時に添付図面を参照しながら説明してきたが、本発明の範囲は、これらの例示的な実施形態及び好ましい態様に限定されると解釈されるべきではなく、特許請求の範囲及び明細書に記載された事項の範囲内で、適宜修正を加えることが可能であることは言うまでも無い。
【0139】
また、本発明に係るハウジング形管継手(本発明継手)は、例えば各種建築物及びインフラ設備等における配管はもとより、他の分野における配管にも広く適用することができる。例えば、用途に応じてシール部材の耐熱性、液密性能又は気密性能及び耐食性等を適宜調整することにより、モビリティ(例えば、車両、船舶及び航空機等)における給排気システムを構成する配管への適用も可能である。更に、本発明継手によって接続される管材の構成は、想定される用途における使用条件及び使用環境に耐え得る限り特に限定されない。例えば、ステンレス鋼等の鉄を始めとする金属製の薄肉管のみならず、例えば鋳物管、樹脂管及びコンクリート管等を含む多種多様な管材を本発明継手によって接続することができる。
【符号の説明】
【0140】
10…管材、10D…段差部、11、12及び13…管材、13A…第1部分、13B…第2部分、101A、101B、101C、102、103、105、106A、106B、107A及び107B…ハウジング形管継手(本発明)、110…シール部材、110P…外周部(シール部材)、110R…リム部(シール部材)、110L…リップ部(シール部材)、110S…リップ面(シール部材)、111T及び112T…ストッパー部(シール部材)、120…第1ケーシング、120S…第1セグメント、120P…外周部(第1セグメント)、120R…リム部(第1セグメント)、130、131及び132…第2ケーシング、130S、131S、132S、133S及び134S…第2セグメント、131P、132P及び134P…外周部(第2セグメント)、131R、132R及び134R…リム部(第2セグメント)、131B、132B、133B及び134B…本体部(第2セグメント)、131F、132F、133F及び134F…フランジ部(第2セグメント)、130C…スペーサ、140…締結部材、141B…ボルト、141N…ナット、141P及び142P…プロジェクション(突起部)、145…固定部位、150…栓,150P…突部、200…ハウジング形管継手(従来技術)、201,202…セグメント、203,204…ボルト座、203a及び204a…開口、205及び206…管、205a及び206a…周方向溝、207…空間、208…弾性リング(シール部材)、209及び210…締付部(リム部)、並びに211…ボルトナット固定手段(締結部材)。
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