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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】柱と横架材との接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/26 20060101AFI20230120BHJP
   E04B 1/58 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
E04B1/26 G
E04B1/58 507L
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022040518
(22)【出願日】2022-03-15
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】595118892
【氏名又は名称】株式会社ポラス暮し科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】原田 直希
(72)【発明者】
【氏名】上廣 太
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061011(JP,A)
【文献】登録実用新案第3064764(JP,U)
【文献】特開2007-303070(JP,A)
【文献】特開2010-106612(JP,A)
【文献】特開2021-055465(JP,A)
【文献】特開2001-207535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/26
E04B 1/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱と、該柱の柱頭に載置され前記柱に接続される横架材との接合構造であって、
前記横架材は梁であり、
前記柱は、水平断面が長方形の扁平柱とされ、前記水平断面の長辺の方向が、前記梁の長手方向に直交し、前記柱頭の上端面の一方の短辺側が前記梁の一方の側面よりも突出して前記上端面の一部が表出した状態で前記梁と接続されおり、
前記梁の一方の側面に締結部材にて固定される垂直板と、該垂直板の下縁に接続され前記梁の下面と面一となり前記上端面の一部に当接する水平板とを具備し、前記垂直板と水平板の幅長が前記柱の短辺の幅長と同等に設定されて形成され、前記垂直板と前記水平板とは一対のリブ板で側縁同士が連結される方形箱形状とされるとともに、前記垂直板に穿設され前記締結部材が貫通する孔が前記垂直板の中央を避け左右側縁のリブ板に寄り左右で対となってそれぞれ配置されている接合部材を具備することを特徴とする柱と横架材との接合構造。
【請求項2】
請求項1記載の柱と横架材との接合構造であって、
前記接合部材の垂直板の上方となる前記梁の側面には、該梁よりも梁せいの小さい寸法とされる架け梁が前記梁に直交してさらに接続されることを特徴とする柱と横架材との接合構造。
【請求項3】
請求項1または2に記載の柱と横架材との接合構造であって、
前記接合部材の水平板には、前記垂直板との接続下縁に沿う方向を長径とする長穴が穿設されていることを特徴とする柱と横架材との接合構造。
【請求項4】
柱と、該柱の柱頭に載置され前記柱に接続される横架材との接合構造であって、
前記横架材は梁であり、前記柱は前記梁の幅長を一辺の長さとする正方形断面の柱よりなり、
前記柱と前記梁とを接続した状態で、前記柱の側面に固定される基部と、該基部に固定され前記梁を貫通する軸部を備え、該梁と前記柱との接続状態を補強し連結するホールダウン金物と、
前記柱の側面に締結部材にて固定される垂直板と、該垂直板の上縁に接続され前記柱の上端面と面一となり前記梁の下面に当接する水平板とを具備し、前記垂直板と水平板の幅長が前記柱の側面における幅長と同等に設定されて形成され、前記垂直板と前記水平板とは一対のリブ板で側縁同士が連結される方形箱形状とされるとともに、前記垂直板に穿設され前記締結部材が貫通する孔は、前記垂直板の中央を避け左右側縁のリブ板に寄る位置とされ左右で対となってそれぞれ配置されており、前記水平板には、前記垂直板との接続上縁に沿う方向を長径とする長穴が穿設される接合部材と、
を備え、
前記ホールダウン金物の基部が固定され前記軸部が沿う前記柱の側面に前記接合部材の垂直板が固定され、前記軸部が前記水平板の長穴を貫通することを特徴とする柱と横架材との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木造建築物における柱と横架材との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
木造軸組工法において、柱と横架材である梁とを接合するには、柱と柱との間に梁を架け渡し、梁の両端を柱の対向側面に仕口を介して接合する方法と、柱の上端面に梁を乗せて架け渡すとともに柱の上端面と梁の下面とを仕口を介して接合する方法とがある。また、柱は横架材である土台上に立てられ、これらも仕口を介して接合される構造となる。これら柱と横架材との接合部分は、仕口のみの接合では接合状態を維持する強度が得られないことから、すなわち耐震、耐風のために、例えば特許文献1のような金属板を固定し補強を行ったり、特許文献2、3、4のような貫通する金物など部材を用いる構造を採用している。
ところが、これら構造は、互いの接合状態が解かれることを抑制する構造であり、耐震性や耐風性に対して有効ではあるものの、近年では建物の重量が増し、すなわち建物構造として3階建てなど重量が増していることから、その荷重を受ける各柱は、土台に対してのめり込みが問題となっており、このような問題に対応しているとは言えない。この問題に対して、柱の下端(柱脚)と土台の上面との間に柱の下端面の面積よりも大きい金属板を介設し、土台にかかる柱脚からの荷重を広い面積に変えて、土台への柱のめり込み防止とするものが特許文献5などにある。
【0003】
しかしながら、上述した柱と横架材との接合構造において、横架材としての梁である場合に、この梁が柱の柱頭に載り、柱頭の仕口と梁の下面とで接合する構成があるが、この接合部分においても、梁に対して柱がめり込むことがある。すなわち上記したように、建物自体の重量が増していることで、径年劣化として、上階の荷重が梁を介して柱の柱頭にかかり、梁の下面よりも面積の小さな柱への荷重によって柱頭が梁下面にめり込み、梁の下面が変形するおそれがある。このような柱頭と梁との接合部分に対して、めり込みの防止を、上述した各特許文献に記載の技術を適用することは可能ではあるものの、それぞれが柱脚と土台との接合を補強する金具や部材とされているものである。すなわち、それら金具や部材は、通常の施工において、地面に近い土台上には持ち上げられるものの、梁や柱頭など頭上高くへの取り付けなどに考慮されておらず、金具自体に重量があり、これを持ち上げ、支え、ビス止めするなど容易に施工することは困難であって、取り扱いに危険を伴うという欠点を有している。
【0004】
一方、上述した土台など横架材へのめり込みを抑制するために、柱の断面積を大きくする工法がある。これは、土台など横架材の幅長と同等の幅長を短辺とする長方形断面の柱である扁平柱を用い、この扁平柱の長辺を横架材の長手方向に沿わせて組み、施工するものである。通常、断面の形状が正方形である柱に比べ、長方形断面であることで、支持する面積、すなわち柱頭及び柱脚における端面の上階からの荷重を受ける面積が増え、耐荷重試験など良好な結果を得られ、さらには上記しためり込みも抑えられるという効果を有している。このような扁平柱を用いることで、1階よりも2階の一部が張り出す構造、所謂オーバーハング構造においても採用されることが可能となり、張り出す上階を支えるために、オーバーハングとなる部分の真下である階下の柱を大きな断面積である長方形断面の扁平柱にて支え、このことから建築物の仕様を耐荷重効果のある構成とされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭57-176502号公報
【文献】特開2002-235373号公報
【文献】特開2006-241745号公報
【文献】特開2015-161060号公報
【文献】特開平08-260569号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような扁平柱を使用する構成とすると、通常の柱であれば納まる柱の周囲の各寸法が、扁平であり断面長方形であることで、梁に沿う長辺方向に突出するものとなり、例えば壁面から扁平柱が突出する、通常の位置より壁面が突出する、或いは、壁面の位置を扁平柱に合わせて調整する建物構成となる。そのため、扁平柱を90度向きを変えて、すなわち長方形断面の長辺の方向を、梁の長手方向に対して直交させて梁と接続する構成とすることがある。ところが、扁平柱の向きを変えると、扁平柱の上端面が梁よりも突出することとなる。
また、梁には、離間して隣り合う梁との間に架け渡される架け梁が接続される。この架け梁は、柱の上方に位置して、梁の側面に直交し、この側面との間で仕口にて接続される。この架け梁は、梁に接続される端部が、上記した扁平柱の突出部分の上端面に載置するように、梁せいを有したものとされる。
つまり、梁と架け梁の端部とで柱(扁平柱)に接続され、上階の荷重を柱(扁平柱)で受けるような構成とされている。これは、梁が柱上端面に対して対向する面積が異なることで、柱(扁平柱)の上端面が梁にめりこむことを防ぐ目的もある。
しかしながら、架け梁の梁せいは、通常であれば梁せいの大きくなった梁と同等とする必要はなく、上記のような梁せいの大きい梁のためにそのような仕様とするには過剰な構成となり、架け梁の構成を変える要請があった。
また、このような梁せいの大きい梁を使用することで、上記架け梁とともに、その下部における扁平柱の柱間、梁-土台間の空間が、他とは異なるものとなり、筋交いなどの長さや角度、ホールダウン金物のボルトと柱との干渉、断熱材の切断、サッシや窓などの建具の納まりを構成させる場合、その他、柱-柱間、梁-土台間が、他の構成部分と寸法等が変わり、施工が煩雑になるという不具合がある。
【0007】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、断面長方形状の扁平柱を使用する場合に、この柱と梁との接続部分、さらに架け梁との組み合わせにおいて、上階からの荷重の支持を柱頭で受けることを可能とする構造を備えた柱と横架材との接合構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
次に、上記の課題を解決するための手段を、実施の形態に対応する図面を参照して説明する。
本発明の請求項1記載の柱と横架材との接合構造は、柱13と、該柱13の柱頭17に載置され前記柱13に接続される横架材との接合構造であって、
前記横架材は梁15であり、
前記柱13は、水平断面が長方形の扁平柱とされ、前記水平断面の長辺の方向が、前記梁15の長手方向に直交し、前記柱頭17の上端面21の一方の短辺側が前記梁15の一方の側面23よりも突出して前記上端面21の一部が表出した状態で前記梁15と接続されており、
前記梁15の一方の側面23に締結部材41にて固定される垂直板33と、該垂直板33の下縁に接続され前記梁15の下面19と面一となり前記上端面21の一部に当接する水平板35とを具備し、前記垂直板33と水平板35の幅長が前記柱13の短辺の幅長と同等に設定されて形成され、前記垂直板33と前記水平板35とは一対のリブ板37で側縁同士が連結される方形箱形状とされるとともに、前記垂直板33に穿設され前記締結部材41が貫通する孔が前記垂直板33の中央を避け左右側縁のリブ板37に寄り左右で対となってそれぞれ配置されている接合部材31を具備することを特徴とする。
【0009】
この柱と横架材との接合構造では、梁15に接続される柱13が扁平柱であって、梁15の長手方向に対して扁平柱の水平断面の長辺の方向を直交とする向きとされる。柱13の柱頭17の上端面21は、梁15の一方の側面23から突出し、この上端面21の一部が上向きに表出して梁15と接続となる。
接合部材31は、梁15の一方の側面23にビスなどの締結部材41にて垂直板33が固定され、これにより水平板35が梁15の下面19と面一となり、すなわち梁15の下面19の面積を増やすように配置される。そして、梁15の下面19とともに柱頭17の上端面21に載置となり、この接合部材31と梁15とで上階の荷重を柱13に伝えることが可能となる。これにより、梁15に対し、さらに架け梁45を接続させる場合には、架け梁45の梁せいを梁15と同等にせずに接合部材31の上方における側面23に接続でき、すなわち、架け梁45を柱13の上端面21に載せるような構成としなくてもよく、架け梁45の構成として梁せいを小さいものとして設計、施工でき、資材のコストを削減可能となる。また、柱13の柱頭17に対する梁15側の載置面積が増え、梁15の下面19へめりこむようなことが抑制され、径年変形などを抑えることが可能となる。
また、締結部材41の貫通する孔の位置を中央を避けた位置としたことで、梁15と柱13とを接合する仕口を補強する金物との干渉を防ぐことが可能となる。
さらに、簡素な構造で、軽量化を図ることができ、このことから作業性を向上することができ、取り扱いが容易なものとなって、施工作業者は片手でも扱え、柱頭17や梁15側である頭上となる位置であっても容易に作業することができ、この柱頭17部分と梁15との接続部分に補強構造を得ることが可能となる。
【0010】
本発明の請求項2記載の柱と横架材との接合構造は、請求項1記載の柱と横架材との接合構造であって、
前記接合部材31の垂直板33の上方となる前記梁15の側面23には、該梁15よりも梁せいの小さい寸法とされる架け梁45が前記梁15に直交してさらに接続されることを特徴とする。
【0011】
この柱と横架材との接合構造では、柱13の柱頭17の上方となる梁15の一方の側面23に接合部材31が固定される。接合部材31の垂直板33の上方となる梁15の側面23には、梁15に接続される架け梁45の端部が位置する。すなわち、架け梁45は、梁せいを梁15と同等としなくとも、梁15の荷重を接合部材31で柱13に伝えることになり、架け梁45の構成としては梁15に対して接続するための仕口があればよい。このことから架け梁45を過剰な設計で構成し接続せずともよく、すなわち梁せいを小さく設定しても可能であって、資材としてコストダウンにもなる。
【0012】
本発明の請求項3記載の柱と横架材との接合構造は、請求項1または2に記載の柱と横架材との接合構造であって、
前記接合部材31の水平板35には、前記垂直板33との接続下縁に沿う方向を長径とする長穴が穿設されていることを特徴とする。
【0013】
この柱と横架材との接合構造では、水平板35を貫通する他の部材、例えばホールダウン金物51の軸55などが柱13と横架材とにわたって設けられている場合に、このホールダウン金物51の軸部55などが貫通可能となり、互いに干渉することなく、接合部材31は上階の荷重の支持を、ホールダウン金物51は梁15と柱13の接続状態の補強を行うことが可能となる。
【0014】
本発明の請求項4記載の柱と横架材との接合構造は、柱13と、該柱13の柱頭17に載置され前記柱13に接続される横架材との接合構造であって、
前記横架材は梁15であり、前記柱13は前記梁15の幅長を一辺の長さとする正方形断面の柱13よりなり、
前記柱13と前記梁15とを接続した状態で、前記柱13の側面に固定される基部53と、該基部53に固定され前記梁15を貫通する軸部55を備え、該梁15と前記柱13との接続状態を補強し連結するホールダウン金物51と、
前記柱13の側面に締結部材41にて固定される垂直板33と、該垂直板33の上縁に接続され前記柱13の上端面21と面一となり前記梁15の下面19に当接する水平板35とを具備し、前記垂直板33と水平板35の幅長が前記柱13の側面における幅長と同等に設定されて形成され、前記垂直板33と前記水平板35とは一対のリブ板37で側縁同士が連結される方形箱形状とされるとともに、前記垂直板33に穿設され前記締結部材41が貫通する孔は、前記垂直板33の中央を避け左右側縁のリブ板37に寄る位置とされ左右で対となってそれぞれ配置されており、前記水平板35には、前記垂直板33との接続上縁に沿う方向を長径とする長穴が穿設される接合部材31と、
を備え、
前記ホールダウン金物51の基部53が固定され前記軸部55が沿う前記柱13の側面27に前記接合部材31の垂直板33が固定され、前記軸部55が前記水平板35の長穴43を貫通することを特徴とする。
【0015】
この柱と横架材との接合構造では、接合部材31が柱13の側面にビスなどの締結部材41にて垂直板33が固定され、これにより水平板35が柱13の上面と面一となり、すなわち柱13の上端面21の面積を増やすように配置される。そして、梁15は、柱13の柱頭17の上端面21と水平板35との上に載置となり、この接合部材31と柱上端面21とで上階の荷重を支えることが可能となる。これにより、柱13の柱頭17が梁15へめりこむようなことが抑制され、径年変形などを抑えることが可能となる。
また、締結部材41の貫通する孔の位置を中央を避けた位置としたことで、梁15と柱13とを接合する仕口を補強する金物との干渉を防ぐことが可能となるとともに、長穴によって、水平板35を貫通するホールダウン金物51の軸部55が貫通可能となり、互いに干渉することなく、接合部材31は上階の荷重の支持を、ホールダウン金物51は梁15と柱13の接続状態の補強を行うことが可能となる。
さらに、簡素な構造で、軽量化を図ることができ、このことから作業性を向上することができ、取り扱いが容易なものとなって、施工作業者は片手でも扱え、柱頭17や梁側である頭上となる位置であっても容易に作業することができ、この柱頭17部分と梁15との接続部分に補強構造を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る請求項1記載の柱と横架材との接合構造によれば、梁の側面に固定される接合部材によって、梁の下面と接合部材の水平板とが面一となり、これにより梁の下面の面積が増加することとなり、柱の上端面に載置となることから、この接合部材と梁とで上階の荷重を柱に伝えることが可能となる。これにより、梁に対し、さらに架け梁を接続させる場合には、架け梁の梁せいを梁と同等にせずに接合部材の上方における側面に接続でき、すなわち、架け梁を柱の上端面に載せるような構成としなくてもよく、架け梁の構成として梁せいを小さいものとして設計、施工でき、資材のコストを削減可能となる。また、柱の柱頭が梁の下面へめりこむようなことが抑制され、径年変形などを抑えることが可能となる。
また、締結部材の貫通する孔の位置を中央を避けた位置としたことで、梁と柱とを接合する仕口を補強する金物との干渉を防ぐことが可能となる。
さらに、簡素な構造で、軽量化を図ることができ、このことから作業性を向上することができ、取り扱いが容易なものとなって、施工作業者は片手でも扱え、柱頭や梁側である頭上となる位置であっても容易に作業することができ、この柱頭部分と梁との接続部分に補強構造を得ることが可能となる。
【0017】
本発明に係る請求項2記載の柱と横架材との接合構造によれば、柱の柱頭の上方となる梁の側面に、接合部材が固定されるとともに、この接合部材の垂直板の上方に架け梁が接続され、上階の荷重は梁と接合部材とで柱へ伝え、架け梁は梁に接続するのみとすることができる。このことから架け梁を柱上端面に接する大きさ、すなわち梁せいを備える過剰な設計で構成し接続しなくてよく、すなわち梁せいを小さく設定しても可能であって、資材としてコストダウンにもなる。
【0018】
本発明に係る請求項3記載の柱と横架材との接合構造によれば、水平板を貫通する他の部材、例えばホールダウン金物の軸などが柱と横架材とにわたって設けられている場合に、このホールダウン金物の軸部などが貫通可能となり、接合部材とホールダウン金物との互いの干渉を防ぎ、接合部材は上階の荷重の支持を、ホールダウン金物は梁と柱の接続状態の補強を、それぞれに行うことが可能となる。また、長穴としたことで、ホールダウン金物の軸部が中心を通らない配置であっても対応することができる。
【0019】
本発明に係る請求項4記載の柱と横架材との接合構造によれば、柱の側面に固定される接合部材によって、柱の上端面と接合部材の水平板とが面一となり、これにより柱の上端面の面積が増加することとなって梁が載置されることから、この接合部材と柱とで上階の荷重を支えることが可能となる。これにより、柱の柱頭が梁へめりこむようなことが抑制され、径年変形などを抑えることが可能となる。
また、締結部材の貫通する孔の位置を中央を避けた位置としたことで、梁と柱とを接合する仕口を補強する金物との干渉を防ぐことが可能となるとなるとともに、長穴によって、水平板を貫通するホールダウン金物の軸が貫通可能となり、互いに干渉することなく、接合部材は上階の荷重の支持を、ホールダウン金物は梁と柱の接続状態の補強を行うことが可能となる。
さらに、簡素な構造で、軽量化を図ることができ、このことから作業性を向上することができ、取り扱いが容易なものとなって、施工作業者は片手でも扱え、柱頭や梁側である頭上となる位置であっても容易に作業することができ、この柱頭部分と梁との接続部分に補強構造を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】(a)は本実施形態に係る柱と横架材との接合構造を備えた木造軸組構造建築物の躯体を表す斜視図、(b)は(a)の一部を拡大した斜視図である。
図2】本実施形態に係る柱と横架材との接合構造を拡大した要部斜視図である。
図3】本実施形態に係る柱と横架材との接合構造に用いられる接合部材の斜視図である。
図4】本実施形態に係る柱と横架材との接合構造の分解斜視図である。
図5】他の実施形態の柱と横架材との接合構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る実施形態を図面を参照して説明する。
図1は、(a)は本実施形態に係る柱と横架材との接合構造を備えた木造軸組構造建築物の躯体を表す斜視図、(b)は(a)の一部を拡大した斜視図、図2は、本実施形態に係る柱と横架材との接合構造を拡大した要部斜視図である。
本実施形態に係る柱と横架材との接合構造は、木造建築物11である木造軸組構造の柱13と横架材15であり、柱上端である柱頭17とその上に載置される横架材としての梁15との接合の構造である。
柱13は、水平断面が長方形の扁平柱とされる。この長方形状の寸法は、本実施形態では、短辺が105mm、長辺が120mmや150mmなどとされる。柱13の上端である柱頭17には、図示しないが、仕口の一方であるほぞが形成される。
【0022】
横架材である梁15は、幅長に対し、高さ寸法である梁せいが長く、垂直断面形状が縦長の長方形とされる。本実施形態では、梁15の幅長は、柱13の短辺の長さに合わせて設定され、梁幅が105mm、高さである梁せいが180mmや210mm、240mmなどの縦長の長方形である。梁15の下面19には、柱頭17との接合のための仕口の他方であるほぞ穴が形成される。
【0023】
本実施形態においては、図1(a)に示すような建築物の躯体において、2階の一部が1階よりも張り出す部分のある所謂オーバーハング構造の2階を支える1階の柱13と梁15の部分に適用される。
柱13と梁15とは、柱13の水平断面の長辺の方向が、梁15の長手方向に対して直交する方向とされて接合される。接合された状態で、柱頭17の上端面21における一方の短辺側が、梁15の一方の側面23よりも突出し、上端面21の他方の短辺側が梁15の他方の側面25に沿い、この他方の側面25と柱13の他方の短辺側である側面27が面一とされる。つまり、梁15の下面19に対し、柱13の上端面21は、一方の短辺側が上向きに表出し、他方の短辺側が梁15の下面19と対向配置となる。
【0024】
図3は、本実施形態に係る柱と横架材との接合構造に用いられる接合部材31の斜視図である。
接合部材31は、本実施形態では、厚さ3.2mmの亜鉛メッキ鋼板SGH400などの金属板よりなり、垂直板33と水平板35とリブ板37とを具備する。
垂直板33及び水平板35は、柱13の短辺と同等の幅長に設定され、すなわち105mmに形成され、縁同士を接続して略L字状の一体構造となるように1枚の金属板を折曲形成にて得ており、この折曲部分である縁部分からそれぞれの外縁である各先端縁部分までを60mmに設定され形成されている。
リブ板37は、垂直板33と水平板35のそれぞれの左右側縁を連結する構成で、本実施形態では、水平板35の左右側縁から折曲形成にて垂直上方向へ延ばし垂直板33に沿うように形成され、2面が開放したような方形箱状に形成される。
本実施形態の接合部材31は、厚さが3.2mmの板材からなることで、重量が約340gに抑えられる。
【0025】
接合部材31の垂直板33には、複数の孔39が穿設されている。各孔39は、締結部材であるビス41が貫通する孔径とされる。本実施形態では、これら孔39は、垂直板33の中央を避ける位置とされ、左右のリブ板37に寄る位置とされる。各孔39は図3に示す中央線(一点鎖線C)を中心に左右で対となる線対称の位置とされ、本実施形態では、上部をやや中央寄り、下部をやや側縁寄りとして2組、径4つの孔39で構成されている。
【0026】
水平板35には、長穴43が穿設されいてる。長穴43は、後述するホールダウン金物の軸が貫通可能な穴径を短径とする長穴で、長径の方向を垂直板33との接続下縁に沿う幅方向として形成される。
【0027】
このように構成された接合部材31は、柱13と梁15との接続部分における柱13の上端面21の上方である梁15の側面23に垂直板33が固定される。すなわち、梁15の側面23に対して締結部材であるビス41で固定される。この固定位置によれば、梁15と接続される柱13の上端面21に水平板35が載置する位置であり、水平板35は梁15の下面19と面一となる。つまり、梁15の下面19の面積が増設されることになり、柱13の上端面21の全てに対して梁15よりも上方の荷重を受けさせることが可能となる。なお、水平板35と柱13の上端面21とはビスなどで固定されない。
【0028】
梁15の側面23にビス41が打たれる位置は垂直板33の各孔39の位置であるが、各孔39が垂直板33の左右に寄った位置とされることで、柱13と梁15との接続のための仕口であるほぞを避けた位置にビス41が挿通されることになる。各ビス41の位置を中央から左右に寄せた位置にすることで、接合部材31は梁15の一部として構成され、柱13との固定とはならない。これによりビス41と接合部材31とを介して梁15が柱13に固定されず、つまり梁15より上方の荷重は柱13の上端面21で支持することとなる。
【0029】
また、一対のリブ板37で垂直板33と水平板35とを側縁同士で固定していることで、剛性が向上し、単純なL字形状の金物部材に比べ、梁15を介する上階からの荷重を受けても大きく変形せずに上階の荷重を支えることが可能となる。
【0030】
図4は、本実施形態に係る柱と横架材との接合構造の分解斜視図である。
また、このような接合部材31を設けた梁15と柱13との接合構造においては、梁15に架け梁45を接続する構成とすることも可能となる。
梁15には、他の梁との間において架け梁45が架け渡され、この架け梁45は、両端が梁15の側面23に仕口を介して接続される。
上述した接合部材31を設けることにより、この接合部材31の上方における梁15の側面23に、架け梁45が接続されることとなる。架け梁45は、梁15の梁せいよりも小さい梁せいとされて設定され、柱13の上端面21に載置されるような梁せいが不要となる。本実施形態においては、架け梁45は垂直断面の形状が一辺105mmの正方形状とされている。
【0031】
このように構成された柱13と横架材15との接合構造によれば、柱13の柱頭17に梁15が載置され、柱13の上端面21と梁15の下面19とに形成される仕口にて互いが接続され、この接続部分における梁15の側面23に接合部材31が固定される。接合部材31は、垂直板33が梁15の側面23に沿って当接され、各孔39を介してビス41が打たれて固定される。固定された接合部材31は、水平板35が梁15の下面19を増設するように、この下面19と面一となる。そして、接合部材31の水平板35は、梁15の下面19とともに、柱13の上端面21に載置される。すなわち、柱13の上端面21は、梁15の下面19と接合部材31の水平板35とが載置され、柱13は、その上端面21の全面積で梁15よりも上方である上階の荷重を受けることになる。これにより、柱13の柱頭17が梁下面19に向けてめり込むことも抑制される。
【0032】
また、梁15に接続される架け梁45は、梁15の梁せいよりも小さい梁せいで構成されており、架け梁45は柱13の上端面21に載置しないが、梁15に接合部材31が設けられ、この接合部材31とともに梁15が柱13に載置状態となり荷重を伝えることで、架け梁45は上階の荷重を受ける構成ではあるが、主となる梁15と同じ梁せいである必要がなくなる。梁せいは、30mm毎に構造計算としてのランクが変わるが、接合部材31を上記したように60mmとしたことで、架け梁45を2ランク下げて構成させることが可能となる。すなわち、本発明の接合構造によれば、接合部材31を設けることで架け梁45のランクを2つ下げることができ、部材としてのコストを大幅に削減することが可能となる。
【0033】
図5は、他の実施形態の柱と横架材との接合構造を示す斜視図である。
柱13と横架材15との接合構造においては、ホールダウン金物51を使用した接合構造においても、上述同様の接合部材31を用いて構成することが可能である。
この実施形態においては、図5に示すように、柱13と梁15との接続部分における柱頭17と梁下面19との内隅部分に接合部材31を配置し用いている。接合部材31は、上述した接合部材31を上下反転させて用い、すなわち水平板35を垂直板33の上縁側に位置させて用いる。
【0034】
ホールダウン金物51は、柱13の側面27に基部である羽根部53が固定され、羽根部53から垂直上方向に延びる軸部55が梁15を貫通し、柱13と梁15との接続を補強している。そして、接合部材31は、柱13の側面27にビス41にて固定される。接合部材31の水平板35に穿設された長穴43は、ホールダウン金物51の軸部55が貫通する。
【0035】
この接合構造によれば、接合部材31の水平板35が柱13の上端面21と面一となり、すなわち柱13の上端面21を増やすことになる。これにより、柱13は、梁15を支える面積を増やすことになり、梁15よりも上方となる上階の荷重を柱13の上端面21と接合部材31の水平板35とで受けることになる。梁15の下面19に対し、柱13のみではなく柱13に固定された接合部材31が存在することで、梁15への柱13の柱頭17のめり込みが抑制されることになる。
【0036】
また、ホールダウン金物51の配置位置が、柱13の側面27及び梁15の貫通位置において、中央から左または右に寄るような場合に、水平板35の長穴の長径により対応させることが可能となる。
【0037】
このように、本発明の柱13と横架材15との接合構造においては、接合部材31を梁15と柱13の柱頭17との接続部分における梁15の側面23、或いは柱13の側面27という垂直面に固定されて、水平板35が柱13の上端面21、或いは梁15の下面19に当接する構成となり、柱13に掛かる梁15よりも上方の上階の荷重を水平板35とともに受けることとなって、梁下面19に対して小面積な構成である柱13の上端面21を水平板35とで面積を増やすことになる。これにより、径年変化での梁15の変形を抑制することが可能となる。
【0038】
また、従来のような土台と柱13とにわたって固定される金物や部材は、厚さ12mmの板材で、大きさが105×155mmとされ、重量が7.6kg~10.5kgであるが、本発明の接合構造に用いる接合部材31は、板厚が3.2mm、大きさが60×60×105mm、重量が約340gと小さく軽く構成されており、片手で容易に持ち上げられ扱いが容易なものとされる。従来品は、重く大きく、取り扱いが容易でなく、柱頭17など頭上への取付作業には不向きで、落下に危険を伴うものであるが、本発明の接合部材31であれば、容易に柱頭17側、梁15側へと持ち上げられ、取り扱いが容易であり、施工作業の煩雑さが軽減される。また、梁15の側面23にビス止めで設置可能な構成としたことで、取付作業が容易なものとなる。
【0039】
従って、本実施形態に係る柱13と横架材15との接合構造によれば、梁15より上方の荷重を、扁平柱が全面積で支えることが可能となり、構造計算としての柱13の水平断面積を大きく設定が可能となり、また、梁15の下方、及び柱13間の構成、さらには架け梁45の下部の構成を、柱13の水平断面積形状が梁15の長手方向に直交する方向であることと、架け梁45の梁せいが小さくなることで、従来と変わらずに施工でき、すなわち筋交いや断熱材などの設置についての構成を大きく変更することなく施工でき、煩雑さが軽減できるものである。また、架け梁45の梁せいを小さくすることが可能なことで、資材のコスト削減も図れるものである。
【符号の説明】
【0040】
13…柱
15…横架材(梁)
17…柱頭
19…下面
21…上端面
23…側面
27…側面
31…接合部材
33…垂直板
35…水平板
37…リブ板
39…孔
41…締結部材(ビス)
43…長穴
45…架け梁
51…ホールダウン金物
53…基部(羽根部)
55…軸部
【要約】
【課題】断面長方形状の柱と梁との接続部分、さらに架け梁との組み合わせにおいて、上階からの荷重の支持を柱頭で受けることを可能とする。
【解決手段】柱13の柱頭17に載置され接続される梁15と、柱13は扁平柱とされ、長辺の方向が、梁15の長手方向に直交し、柱頭17の上端面21の一方の短辺側が梁15の一方の側面23よりも突出して上端面21の一部が表出した状態で梁15と接続されおり、梁15の側面23にビス41で固定される垂直板33と、垂直板33の下縁に接続され梁15の下面19と面一となり上端面21の一部に当接する水平板35とを具備し、垂直板33と水平板35の幅長が柱13の短辺の幅長と同等に設定され、垂直板33と水平板35とは一対のリブ板37で連結され方形箱形状とされるとともに、締結部材41が貫通する孔は垂直板33の中央を避け左右側縁のリブ板37に寄り左右で対となって配置される接合部材31を具備する。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5