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  • 特許-SiCデバイスの製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】SiCデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C30B 29/36 20060101AFI20230120BHJP
【FI】
C30B29/36 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022186495
(22)【出願日】2022-11-22
(62)【分割の表示】P 2022090458の分割
【原出願日】2022-06-02
【審査請求日】2022-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002004
【氏名又は名称】昭和電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100163496
【弁理士】
【氏名又は名称】荒 則彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 正人
(72)【発明者】
【氏名】周防 裕政
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-254521(JP,A)
【文献】特開2007-320790(JP,A)
【文献】特開2013-100217(JP,A)
【文献】特表2020-511391(JP,A)
【文献】特開2010-254520(JP,A)
【文献】特開2001-226199(JP,A)
【文献】特開2010-150133(JP,A)
【文献】特開2013-211500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C30B 1/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiC基板にSiCエピタキシャル層が形成されたSiCエピタキシャルウェハを用いてSiCデバイスを作製する工程を有し、
前記SiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1の範囲内である第1領域が占める割合が、全面積の70%以上である、SiCデバイスの製造方法。
【請求項2】
前記第1領域が占める割合が、全面積の80%以上である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項3】
前記第1領域が占める割合が、全面積の90%以上である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項4】
前記第1領域が占める割合が、全面積の95%以上である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項5】
前記SiC基板は、直径が149mm以上である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項6】
前記SiC基板は、直径が199mm以上である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項7】
前記SiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値が3.00cm-1以下である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項8】
前記SiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値が2.75cm-1以下である、請求項1に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項9】
前記SiCデバイスがパワーデバイスである、請求項1~8のいずれか一項に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項10】
前記SiCデバイスが高周波デバイスである、請求項1~8のいずれか一項に記載のSiCデバイスの製造方法。
【請求項11】
前記SiCデバイスが高温動作デバイスである、請求項1~8のいずれか一項に記載のSiCデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて絶縁破壊電界が1桁大きく、バンドギャップが3倍大きい。また、炭化珪素(SiC)は、シリコン(Si)に比べて熱伝導率が3倍程度高い等の特性を有する。そのため炭化珪素(SiC)は、パワーデバイス、高周波デバイス、高温動作デバイス等への応用が期待されている。このため、近年、上記のような半導体デバイスにSiCエピタキシャルウェハが用いられるようになっている。
【0003】
SiCエピタキシャルウェハは、SiC基板の表面にSiCエピタキシャル層を積層することで得られる。以下、SiCエピタキシャル層を積層前の基板をSiC基板と称し、SiCエピタキシャル層を積層後の基板をSiCエピタキシャルウェハと称する。SiC基板は、SiCインゴットから切り出される。
【0004】
特許文献1には、結晶成長中の結晶欠陥を避けるために、周辺領域と内側領域との間の平均吸収係数の差を10cm-1以下としたSiC基板が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2020-511391号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、SiC単結晶をレーザーで加工することが行われている。例えば、レーザーでSiC単結晶にクラックを入れることで、SiC単結晶を分割できる。例えば、SiCインゴットからSiC基板を切り出す際、SiC基板からさらに薄い基板を切り出す際、SiC基板をチップ化する際に、レーザー加工が用いられている。レーザー加工は、ワイヤーソーを用いた加工より切削損失が少ないという利点を有するが、切断面の粗さが粗くなる場合や予期せぬ割れが生じる場合がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、レーザー加工時に加工しやすい、SiC基板及びSiCインゴットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、レーザー光に対する吸収係数の面内バラツキの小さいSiC基板及びSiCインゴットを作製し、これを用いることで加工成功率が高まることを見出した。本発明は、上記課題を解決するため、以下の手段を提供する。
【0009】
(1)第1の態様にかかるSiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である第1領域が占める割合が、全面積の70%以上である。
【0010】
(2)上記態様にかかるSiC基板は、前記第1領域が占める割合が、全面積の80%以上でもよい。
【0011】
(3)上記態様にかかるSiC基板は、前記第1領域が占める割合が、全面積の90%以上でもよい。
【0012】
(4)上記態様にかかるSiC基板は、前記第1領域が占める割合が、全面積の95%以上でもよい。
【0013】
(5)上記態様にかかるSiC基板は、直径が149mm以上でもよい。
【0014】
(6)上記態様にかかるSiC基板は、直径が199mm以上でもよい。
【0015】
(7)上記態様にかかるSiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値が3.00cm-1以下でもよい。
【0016】
(8)上記態様にかかるSiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値が2.75cm-1以下でもよい。
【0017】
(9)第2の態様にかかるSiCインゴットは、SiC基板を切り出し、その切断面を評価した際に、1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である第1領域が占める割合が、前記切断面の全面積の70%以上である。
【発明の効果】
【0018】
上記態様にかかるSiC基板及びSiCインゴットは、レーザー加工時に加工しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態に係るSiC基板の平面図である。
図2】SiC基板の吸収係数とSiC基板にクラックを入れるのに必要なレーザーの出力の関係を示すグラフである。
図3】SiCインゴットの製造装置の一例である昇華法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態にかかるSiC基板等について、図を適宜参照しながら詳細に説明する。以下の説明で用いる図面は、本実施形態の特徴をわかりやすくするために便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などは実際とは異なっていることがある。以下の説明において例示される材質、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0021】
図1は、本実施形態に係るSiC基板10の平面図である。SiC基板10は、例えば、n型SiCからなる。SiC基板10のポリタイプは、特に問わず、2H、3C、4H、6Hのいずれでもよい。SiC基板10は、例えば、4H-SiCである。
【0022】
SiC基板10の平面視形状は略円形である。SiC基板10は、結晶軸の方向を把握するためのオリエンテーションフラットOFもしくはノッチを有してもよい。SiC基板10の直径は、例えば、149mm以上であり、好ましくは199mm以上である。SiC基板10の直径が大きいほど、レーザー加工で安定な切断が難しいため、本実施形態の構成を満たすSiC基板10は、直径が大きいほど有用性が高い。
【0023】
本実施形態に係るSiC基板10は、第1領域1を有する。第1領域1は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である。図1では、第1領域1をSiC基板10と中心を同じとする円形で図示したが、この例に限られない。例えば、第1領域1の中心とSiC基板10の中心とずれていてもよいし、第1領域1の形状は不定形でもよい。以下、吸収係数αは、300Kの温度条件における値である。
【0024】
吸収係数αは、SiC基板10の波長1064nmの光に対する吸収率AとSiC基板10の厚さLから求められる。SiC基板10の波長1064nmの光に対する吸収率Aは、反射率T、透過率RからA=1-T-Rで求められる。反射率Tは、SiC基板10への入射光の強度IとSiC基板10からの反射光の強度Iとを用いて、T=I/Iで求められる。透過率Rは、SiC基板10への入射光の強度IとSiC基板10を透過する透過光の強度Iとを用いて、R=I/Iで求められる。また吸収率Aは、A=exp(-α・L)で表すことができるため、吸収率AとSiC基板10の厚さLから吸収係数αを求めることができる。
【0025】
SiC基板10の面内の各点で吸収係数αを求めることで、吸収係数αの面内分布を得ることができる。例えば、吸収係数αの面内分布を測定する際に、各測定点のスポット径を1mmとし、隣接する測定点の間隔を10mmとする。測定点数がX、吸収係数がα0±0.125cm-1に収まる測定点数がYのとき、SiC基板10の全面積に対する第1領域1が占める割合Zは、Z=Y/X×100(%)により求めることができる。α0は例えば、全測定点の吸収係数の平均値とすることができるが、Zを最大化するように自由に選択することができる。
【0026】
SiC基板10の全面積に対する第1領域1が占める割合は、例えば、70%以上である。またSiC基板10の全面積に対する第1領域1が占める割合は、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましい。
【0027】
SiC基板10の全面積に対する第1領域1の占める割合が高いほど、レーザー加工で切断した切断面の表面粗さが粗くなることや、レーザー加工での切断時にSiC基板10に予期せぬ割れが生じることを抑制できる。これは、レーザー光の吸収係数の面内バラツキが小さいことで、レーザー加工が安定化するためである。レーザー加工で多く用いられるYAG(イットリウム、アルミニウム、ガーネット)レーザーのレーザー光の波長は1064nmである。
【0028】
図2は、SiC基板10の吸収係数とSiC基板10にクラックを入れるのに必要なレーザーの出力の関係を示すグラフである。図2に示すように、SiC基板10の吸収係数が高くなるほど、クラックを入れるために必要なレーザーの出力が高くなる。図2に示すように、吸収係数の差が0.25cm-1の範囲内であれば、一定のレーザー出力で、SiC基板10にクラックを入れることができる。レーザーの出力が切断中に変動しないことで、切断面の表面粗さが粗くなることや予期せぬ割れが生じることを抑制できる。
【0029】
SiC基板10における波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値は、例えば、3.00cm-1以下であり、2.75cm-1以下であることが好ましい。吸収係数は、SiC基板10に含まれる不純物濃度が高いほど、高くなる。上述のように、SiC基板10の吸収係数が高くなるほど、クラックを入れるために必要なレーザーの出力が高くなるため、吸収係数の最大値が小さいSiC基板10は少ないエネルギーで加工できる。
【0030】
ここで、SiC基板10の切断は、例えば、SiC基板10のチップ化、SiC基板10からさらに薄い基板を切り出す場合等がある。
【0031】
次いで、本実施形態に係るSiC基板10の製造方法の一例について説明する。SiC基板10は、SiCインゴットをスライスして得られる。SiCインゴットは、例えば、昇華法によって得られる。SiCインゴットの成長条件を制御することで、本実施形態に係るSiC基板10を作製できる。
【0032】
図3は、SiCインゴットの製造装置30の一例である昇華法を説明するための模式図である。図3において台座32の表面と直交する方向をz方向、z方向と直交する一方向をx方向、z方向及びx方向と直交する方向をy方向とする。
【0033】
昇華法は、黒鉛製の坩堝31内に配置した台座32にSiC単結晶からなる種結晶33を配置し、坩堝31を加熱することで坩堝31内の原料粉末34から昇華した昇華ガスを種結晶33に供給し、種結晶33をより大きなSiCインゴット35へ成長させる方法である。種結晶33は、例えば、[11-20]方向に対して4度のオフセット角を有するSiC単結晶であり、C面を成長面として台座32に設置される。
【0034】
坩堝31の周囲には、例えば、断熱材を配置してもよい。坩堝31は、例えば、二重石英管の内部に配置される。二重石英管の内部は、アルゴンガスやドーパントガス(窒素ガス)が供給され、真空ポンプで排気することで圧力が制御されている。二重石英管の外側にはコイル36が配置され、コイル36に高周波電流を流すことで、坩堝31が加熱される。
【0035】
坩堝31内には、台座32から坩堝31の内側壁に向かって拡径するテーパー部材37を配置してもよい。テーパー部材37を用いることで、結晶成長する単結晶の径を拡大することができる。拡径しながら結晶成長を行うことで、ファセットと呼ばれる高窒素濃度領域を、SiCインゴット35からSiC基板10を取得する際の有効領域外に配置することができる。
【0036】
吸収係数の面内バラツキの小さいSiC基板10は、SiCインゴット35の作製、SiC基板10の切り出し、SiC基板10の測定、測定結果のフィードバックという処理を複数回繰り返し、SiCインゴット35の成長条件を変更することで作製できる。変更する成長条件は、例えば、SiCインゴット35を作製する際の温度分布及び原料粉末34に含まれる不純物濃度分布である。
【0037】
SiCインゴット35を作製する際は、SiCインゴット35のxy方向の外周部の温度を内側より高くし、原料粉末34のxy方向の外周側の不純物の濃度を内側より高くする。
【0038】
SiCインゴット35に含まれる不純物には、n型のドーパントとして意図的に導入された窒素と、炉内部材や原料粉末34から意図せずに結晶中に取り込まれる不純物がある。意図せずに結晶中に含まれる不純物は、例えば、ボロン、アルミニウム、チタン、バナジウム等である。
【0039】
SiCインゴット35への不純物の導入経路は、例えば、第1経路、第2経路、第3経路がある。第1経路は、ドーパントガスが坩堝31の側壁を通過してSiCインゴット35に導入される経路である。第2経路は、坩堝31内の部材からのデガスに含まれる不純物がSiCインゴット35に導入される経路である。第3経路は、原料粉末34に含まれる不純物がSiCインゴット35に導入される経路である。
【0040】
第1経路及び第2経路において、不純物はxy方向の外側からSiCインゴット35に導入される。そのため、製造条件を制御しなければ、SiCインゴット35の外周部は、内側より不純物濃度が高くなりやすい。SiCインゴット35の外周部の温度を高くすることで、第1経路又は第2経路で外周部に導入される不純物を減らすことができる。
【0041】
一方で、第3経路において、不純物はz方向の下方からSiCインゴット35に導入される。第1経路又は第2経路から外周部に導入される不純物を減らすために、SiCインゴット35の外周部の温度を内側より高くすると、第3経路から外周部に導入される不純物の量も内側より少なくなり、第3経路からSiCインゴット35に導入される不純物がxy面内でばらつく。そこで、原料粉末34のxy方向の外周側の不純物の濃度を内側より高くすることで、SiCインゴット35の外周部の温度を内側より高くした場合でも、SiCインゴット35に導入される不純物のxy方向の面内バラツキを小さくできる。
【0042】
坩堝31の側壁を通過するドーパントガス量、坩堝31内の部材からのデガス量は、坩堝31毎に異なり一定ではない。そのため、製造装置毎に適切な温度条件及び不純物濃度条件は異なる。SiCインゴット35のxy方向の温度分布、原料粉末の不純物濃度分布は、複数回のフィードバックを繰り返すことで最適化される。
【0043】
フィードバックする際に測定するのは、SiC基板10の吸収係数の面内分布である。吸収係数の面内分布は、上述の手順に従って測定する。SiC基板10において、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である領域の面積が全面積の70%未満の場合は、製造条件を変更する。
【0044】
このように、複数回のSiCインゴット35の結晶成長を繰り返し、それぞれの結果をフィードバックすることで、SiCインゴット35の結晶成長条件を確定する。そして、確定した成長条件でSiCインゴット35を作製し、このSiCインゴット35を切断することで、本実施形態に係るSiC基板10を作製できる。
【0045】
本実施形態に係るSiC基板10は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である領域の面積が全面積の70%以上である。そのため、一定のレーザー出力でSiC基板10をレーザー加工することができる。レーザーの出力が切断中に変動しないことで、切断面の表面粗さが粗くなることや予期せぬ割れが生じることを抑制できる。
【0046】
ここまでSiC基板10をレーザー加工する場合を例示したが、SiCインゴット35をレーザー加工する場合も同様である。例えば、SiCインゴット35からSiC基板10を切り出す場合が、SiCインゴット35をレーザー加工する場合に該当する。SiCインゴット35の状態は、SiCインゴット35からSiC基板10を切り出して評価することで求められる。SiCインゴット35の状態は、切り出されたSiC基板10の切断面を評価することで求められる。どこを切断面とするかは、取得したい基板の種類によるが、例えば(0001)平面から[11-20]方向に対して4°傾けた面である。狙いのSiC基板の厚さは例えば400μm等である。
【0047】
SiCインゴット35をレーザー加工する場合は、SiC基板を切り出し、その切断面を評価した際に、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である第1領域が占める割合が、切断面の全面積の70%以上であることが好ましい。切断面における第1領域が占める割合は、全面積の80%以上であることがより好ましく、90%以上であることがさらに好ましく、95%以上であることが特に好ましい。切断箇所が上記の条件を満たすと、レーザー加工時に切断面の表面粗さが粗くなることや予期せぬ割れが生じることを抑制できる。
【0048】
また切断面において、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値は、例えば、3.00cm-1以下であり、2.75cm-1以下であることが好ましい。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施の形態について詳述したが、本発明は特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲内に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【実施例
【0050】
「実施例1」
SiCインゴットの作製、SiC基板の切り出し、SiC基板の測定、測定結果のフィードバックという処理を複数回繰り返し、SiCインゴットの成長条件を決定した。当該成長条件で作製したSiCインゴットを切断し、SiC基板を作製した。
【0051】
作製したSiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1である第1領域が占める割合が全面積の72%であった。このSiC基板に対してレーザーを照射した。レーザーは、波長1064nmのYAGレーザーを用いた。
【0052】
実施例1のSiC基板に対してレーザー照射を行うことで、割れや欠けが生じることなく、SiC基板にクラックを入れることができた。そして、SiC基板10を厚み方向に2分割することができた。
【符号の説明】
【0053】
1…第1領域、10…SiC基板、30…製造装置、31…坩堝、32…台座、33…種結晶、34…原料粉末、35…SiCインゴット、36…コイル、37…テーパー部材
【要約】
【課題】レーザー加工時に加工しやすい、SiCデバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本実施形態にかかるSiCデバイスの製造方法は、SiC基板にSiCエピタキシャル層が形成されたSiCエピタキシャルウェハを用いてSiCデバイスを作製する工程を有する。前記SiC基板は、波長が1064nmの光に対する吸収係数の最大値と最小値との差が0.25cm-1の範囲内である第1領域が占める割合が、全面積の70%以上である。
【選択図】図1
図1
図2
図3