(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-19
(45)【発行日】2023-01-27
(54)【発明の名称】糖尿病治療に有用な6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン化合物
(51)【国際特許分類】
C07D 217/04 20060101AFI20230120BHJP
C07D 217/16 20060101ALI20230120BHJP
A61K 31/472 20060101ALI20230120BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230120BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230120BHJP
【FI】
C07D217/04 CSP
C07D217/16
A61K31/472
A61P3/10
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2022541699
(86)(22)【出願日】2021-10-06
(86)【国際出願番号】 US2021053691
(87)【国際公開番号】W WO2022076503
(87)【国際公開日】2022-04-14
【審査請求日】2022-07-05
(32)【優先日】2020-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594197872
【氏名又は名称】イーライ リリー アンド カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100103182
【氏名又は名称】日野 真美
(74)【代理人】
【識別番号】100139310
【氏名又は名称】吉光 真紀
(72)【発明者】
【氏名】ブエノ メレンド,アナ ベレン
(72)【発明者】
【氏名】ラインスワラ,ジャヤナ パンカジクマール
(72)【発明者】
【氏名】ルアーノ プラザ,ジェマ
(72)【発明者】
【氏名】ブエゾ,ヌリア ディアス
【審査官】鳥居 福代
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/201683(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/114824(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第110294744(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 217/00
A61K 31/47
A61P 3/00
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式の化合物であって、
式中
【化1】
、
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH
3、CH
3CHCH
3、および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択され、
R7が、
【化2】
からなる群から選択される、化合物、または
その薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記化合物が、以下の式のものであり、
【化3】
式中、
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH3および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、または
その薬学的に許容される塩。
【請求項3】
R4が、CH
3である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
R5が、CH
3である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
R6が、Hである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
R1が、Fである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
R3が、Hである、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
R2が、NHCH
2CH(CH
3)
2である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
R2が、CH
3である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記化合物が、
【化4】
からなる群から選択される、請求項1に記載の化合物、
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記化合物が、
【化5】
である、請求項10に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
前記化合物が、
【化6】
である、請求項1に記載の化合物、
またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記化合物が、
【化7】
である、請求項12に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
前記化合物が、
【化8】
である、請求項1に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
請求項1に記載の、化合物、またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
【請求項16】
GLP1、GIP、およびグルカゴンからなる群から選択される受容体の正のアロステリック調節剤としての使用のための、請求項
15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
療法における使用のための、
請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項18】
2型糖尿病の治療における使用のための、
請求項15に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン化合物、グルカゴン様ペプチド-1受容体アゴニスト、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)アゴニスト、グルカゴンアゴニスト、および2型糖尿病を治療するための化合物の治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
アロステリック調節剤は、リガンド結合環境を修飾することによって、リガンドのそれらの受容体との相互作用を遠隔的に改変する薬剤である。このタイプの調節の一例は、アロステリック(二次)部位への調節剤の結合が、リガンドのオルソステリック(一次)結合部位に伝達される受容体タンパク質における立体構造変化をもたらす場合である。調節剤がリガンドのオルソステリック結合部位とのリガンドの相互作用を促進または増強する場合、アロステリック効果の性質は正であると言われる。アロステリック効果は、オルソステリック結合部位でのリガンド結合の特徴分析および結晶化に有用であり得る。
【発明の概要】
【0003】
提供される化合物は、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)受容体の正のアロステリック調節剤(PAM)である。提供される化合物は、グルコース依存性インスリン分泌性ポリペプチド(GIP)受容体の正のアロステリック調節剤(PAM)である。提供される化合物は、グルカゴン受容体の正のアロステリック調節剤(PAM)である。GLP-1は、腸内分泌L細胞によって分泌されるペプチドホルモンのインクレチンファミリーの一員である。GLP-1は、グルコース依存的にベータ細胞からのインスリンの放出を誘導する。GLP-1アゴニストは、2型糖尿病を治療するために承認されているが、代替GLP-1アゴニスト治療および結合特徴分析の必要性がある。GIP結合特徴分析が望まれている。
【0004】
一実施形態では、本発明は、GLP-1Rおよび/またはGIPRおよび/またはグルカゴン受容体の強力な正のアロステリック調節剤である、新規化合物を提供する。
【0005】
一実施形態では、本発明は、以下の式の化合物であって、
式中、
【化1】
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH
3、CH
3CHCH
3、および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択され、
R7が、
【化2】
からなる群から選択される、化合物、または
その薬学的に許容される塩を提供する。
【0006】
一実施形態では、本発明は、以下の式の化合物であって、
【化3】
式中、
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH3および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択される、化合物、または
その薬学的に許容される塩を提供する。
【0007】
一実施形態では、R4がCH3である式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0008】
一実施形態では、R5がCH3である式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0009】
一実施形態では、R6がHである式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0010】
一実施形態では、R1がFである式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0011】
一実施形態では、R3がHである式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0012】
一実施形態では、R4がCH3であり、R5がCH3であり、R6がHである式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0013】
一実施形態では、R4がCH3であり、R5がCH3であり、R6がHであり、R1がFであり、R3がHである式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0014】
一実施形態では、R2がNHCH2CH(CH3)2である式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0015】
一実施形態では、R2がCH3である式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0016】
一実施形態では、化合物が
【化4】
からなる群から選択される式Iの化合物、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0017】
一実施形態では、式:
【化5】
式Ibの化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0018】
一実施形態では、式:
【化6】
の化合物、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0019】
一実施形態では、式:
【化7】
Icの化合物、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0020】
一実施形態では、化合物が塩酸塩である、式Iの化合物である。
【0021】
一実施形態では、化合物が、または
【化8】
である、式IIの化合物、
またはその薬学的に許容される塩である。
【0022】
一実施形態では、式Iまたは式IIの、化合物、またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物である。
【0023】
一実施形態では、哺乳動物における2型糖尿病を治療するための方法であって、哺乳動物に、有効量の式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法である。
【0024】
一実施形態では、療法における使用のための式Iの、化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0025】
一実施形態では、2型糖尿病の治療における使用のための、式Iまたは式IIの、化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0026】
一実施形態では、2型糖尿病の治療のための医薬品の製造における式Iまたは式IIの、化合物、またはその薬学的に許容される塩の、使用である。
【0027】
式IIおよび式Iは、すべての個々のエナンチオマー、およびその混合物、ならびにそのラセミ体および薬学的に許容される塩を含む。
【0028】
別の実施形態では、本発明はまた、式Iもしくは式IIの化合物、またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤のうちの少なくとも1つと、を含む、薬学的に許容される組成物を提供する。好ましい実施形態では、薬学的に許容される組成物は、経口投与用に製剤化される。
【0029】
別の実施形態では、本発明は、2型糖尿病について哺乳動物を治療する方法を提供し、方法は、治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤のうちの少なくとも1つと、を含む、薬学的に許容される組成物を投与することを含む。好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0030】
別の実施形態では、本発明はまた、2型糖尿病について哺乳動物を治療するための方法を提供し、方法は、治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式Iもしくは式IIによる化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0031】
式Iの化合物は、2型糖尿病を含む、式Iまたは式IIの化合物が有用である疾患または状態の治療に使用される他の化合物と組み合わせて使用され得る。
【0032】
別の実施形態では、本発明はまた、哺乳動物における血中グルコースレベルを低下させる方法を提供し、方法は、治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式IIもしくは式Iによる化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0033】
別の実施形態では、本発明はまた、哺乳動物における高血糖症を治療する方法を提供し、方法は、治療を必要とする哺乳動物に、有効量の式Iによる化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む。
【0034】
一実施形態では、本発明は、療法に使用するための、式Iによる化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0035】
別の実施形態では、本発明はまた、哺乳動物における2型糖尿病の治療における使用のための、式Iによる化合物、またはその薬学的に許容される塩を提供する。
【0036】
一実施形態では、本発明は、哺乳動物における2型糖尿病の治療のための医薬品の製造のための、式Iによる化合物、またはその薬学的に許容される塩の、使用を提供する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される塩」という用語は、臨床的および/または獣医学的使用のために許容されると見なされる本発明の化合物の塩を指す。薬学的に許容される塩およびそれらを調製するための一般的な方法論の例は、“Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use” P.Stahl,et al.,2nd Revised Edition,Wiley-VCH,2011およびS.M.Berge,et al.,“Pharmaceutical Salts”,Journal of Pharmaceutical Sciences,1977,66(1),1-19に見出され得る。
【0038】
薬学的組成物およびそれらの調製のためのプロセスの例は、“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,Loyd,V.,et al.Eds.,22nd Ed.,Mack Publishing Co.,2012に見出され得る。一実施形態では、薬学的組成物は、経口投与用に製剤化することができる。好ましくは、薬学的組成物は、錠剤、カプセル、または溶液として製剤化される。錠剤、カプセル、または溶液は、治療を必要とする患者を治療するための有効量にて本発明の化合物を含むことができる。
【0039】
「有効量」という用語は、患者への単一または複数用量投与後、診断中または治療中の患者において所望の効果を提供する、本発明の化合物、またはその薬学的に許容される塩の量または用量を指す。主治医は、当業者として、従来技術の使用によって、および類似の状況下で得られた結果を観察することによって、有効量を容易に決定することができる。化合物の有効量または用量の決定において考慮される因子としては、化合物またはその塩が投与されるか;使用される場合、他の薬剤の同時投与;哺乳動物の種;その大きさ、年齢、および一般的な健康状態;障害の関与の程度または重症度;個々の哺乳動物の応答;投与の様式;投与される調製物の生物学的利用能の特徴;選択される用量レジメン;ならびに他の関連する状況が挙げられる。本発明の化合物は、約0.01~約15mg/kg体重の範囲内に入る1日当たりの投薬量で有効である。
【0040】
本明細書で使用される場合、「治療している」、「治療する」、または「治療」という用語は、インスリン分泌の増加を含み得る高血糖などの既存の症状、障害、または状態の進行または重症度を低下、低減、または逆転させることを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「患者」という用語は、哺乳動物を指す。好ましくは、患者は、ヒトである。
【0042】
本発明の化合物は、化合物を生物学的に利用可能にする任意の経路によって投与される薬学的組成物として製剤化することができる。好ましくは、そのような組成物は経口投与用である。そのような薬学的組成物およびそれを調製するためのプロセスは、当技術分野で周知である(例えば、Remington,J.P.,“Remington:The Science and Practice of Pharmacy”,L.V.Allen,Editor,22nd Edition,Pharmaceutical Press,2012参照)。
【0043】
式Iの化合物およびその薬学的に許容される塩は、本発明の治療的使用において有用であり、特定の立体配置が好ましい。
【0044】
一実施形態は、すべての個々のエナンチオマー、それらの混合物、およびラセミ体を企図するが、式Icの化合物、またはその薬学的に許容される塩が特に好ましい。一実施形態では、式Ibの化合物、またはその薬学的に許容される塩が特に好ましい。一実施形態では、式Iaの化合物、またはその薬学的に許容される塩が特に好ましい。
【0045】
当業者は、個々のエナンチオマーを、本発明の化合物の合成における任意の好都合な時点で、選択的結晶化技術、キラルクロマトグラフィー(例えば、J.Jacques,et al.,“Enantiomers,Racemates,and Resolutions”,John Wiley and Sons,Inc.,1981、およびE.L.Eliel and S.H.Wilen,“Stereochemistry of Organic Compounds”,Wiley-Interscience,1994を参照されたい)、または超臨界流体クロマトグラフィー(SFC)(例えば、T.A.Berger,“Supercritical Fluid Chromatography Primer”,Agilent Technologies,July 2015を参照されたい)のような方法によって分離または分割し得る。
【0046】
本発明の化合物の薬学的に許容される塩は、例えば、当該分野で周知の標準的条件下、適切な溶媒中で、本発明の化合物の適当な中性形態と適切な薬学的に許容される酸または塩基との反応により形成することができる(例えば、 Bastin,R.J. et al.; Org.Process.Res.Dev.,4,427-435,2000およびBerge,S.M.,et al.;J.Pharm.Sci.,66,1-19,1977を参照されたい)。
【0047】
本明細書で使用される特定の略語は、Daub G.H.,et al.,“The Use of Acronyms in Organic Chemistry”Aldrichimica Acta,1984,17(1),6-23に従って定義される。特定の略語は、以下のように定義される:「ACN」は、アセトニトリルを指し、「ATP」は、アデノシン三リン酸を指し、「BOC」は、tert-ブトキシカルボニルを指し、「BSA」は、ウシ血清アルブミンを指し、「cAMP」は、環状アデノシン-3’,5’-一リン酸を指し、「DCM」は、ジクロロメタンまたは塩化メチレンを指し、「DIPEA」は、N,N-ジイソプロピルエチルアミンを指し、「DMF」は、N,N-ジメチルホルムアミドを指し、「DMSO」は、ジメチルスルホキシドを指し、「EC50」は、予め定義された陽性対照化合物と比較した標的活性の50%の応答をもたらす薬剤の濃度(絶対的EC50)を指し、「ES/MS」は、エレクトロスプレー質量分析を指し、「EtOAc」は、酢酸エチルを指し、「HATU」は、1-[ビス(ジメチルアミノ)メチレン]-1H-1,2,3-トリアゾロ[4,5-b]ピリジニウム3-オキシドヘキサフルオロリン酸塩を指し、「HEK」は、ヒト胎児腎臓を指し、「HEPES」は、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸を指し、「h」は、それぞれ、複数時間または1時間を指し、「MeOH」は、メタノールまたはメチルアルコールを指し、「min」は、1分または複数分を指し、「MTBE」は、メチルtert-ブチルエーテルを指し、「Pd(dppf)Cl2・DCM」は、1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン-パラジウム(II)二塩化物ジクロロメタン複合体を指し、「RT」は、室温を指し、「SCX」は、強カチオン交換を指し、「SFC」は、超臨界液体クロマトグラフィーを指し、「THF」は、テトラヒドロフランを指す。
【0048】
本発明の化合物は、様々な手順によって調製され得、それらのいくつかを以下の調製および実施例において例証する。以下の各ステップの生成物は、抽出、蒸発、沈殿、クロマトグラフィー、濾過、粉砕、および結晶化を含む、従来の方法によって回収することできる。個々の異性体、エナンチオマー、およびジアステレオマーを、合成における任意の好都合な時点で、選択的結晶化技術またはキラルクロマトグラフィー(例えば、J.Jacques,et al.,“Enantiomers,Racemates,and Resolutions”,John Wiley and Sons,Inc.,1981およびE.L.Eliel and S.H.Wilen,“Stereochemistry of Organic Compounds”,Wiley-Interscience,1994参照)のような方法によって分離または分解し得る。本発明の範囲を限定することなく、本発明をさらに例証するために、以下の調製および実施例が提供される。
【0049】
【化9】
スキーム1は、2つの経路を介した式Iの化合物の合成を示す。第1の経路では、ステップ1aにおいて、重要な中間体1を有機溶媒中のHClを使用して脱保護し、続いてKIおよび有機塩基の存在下、高温で塩化アルキル2でアルキル化して、中間体3を得る。ステップ2aにおいて、中間体3は次いで、ワンポット宮浦ホウ素化/鈴木カップリングを受ける:ビス(ピナコラート)ジボロン、Pd(dppf)Cl
2・DCM、および酢酸カリウムを高温で使用して、ハロゲン化アリール4をボロン酸エステル5に変換し、その後、中間体3および水性三塩基性リン酸カリウムを反応に添加して、式Iの化合物を得る。あるいは、ボロン酸塩5は、同様の宮浦ホウ素化条件下で別のステップにおいてハロゲン化アリール4から調製され、次いでステップ2aにおいて中間体3との鈴木カップリングを受けて、式Iの化合物を得る。
【0050】
第2の経路では、ステップ1bにおいて、中間体1は、第2世代XPhosプレ触媒および2-メチル-2-ブタノール中の水性三塩基性リン酸カリウムを高温で使用してボロン酸塩5との鈴木カップリングを受け、これはまたBOC保護基を除去し、アミン中間体6を得る。ステップ2bにおけるトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを用いた中間体6およびカルボニル中間体7での還元的アミノ化は、式Iの化合物をもたらす。
【0051】
LC-ES/MSは、AGILENT(登録商標)HP1200液体クロマトグラフィーシステムで実施される。ELSDを有していても有していなくてもよいHPLCに接続された質量選択性検出器四重極質量分析計において、エレクトロスプレー質量分析測定(正および/または負のモードで取得)が実施される。LC-ES/MS条件(低pH):カラム:PHENOMENEX(登録商標)GEMINI(登録商標)NX C18 2.0×50mm 3.0mm、110Å、勾配:1.5分で5~95%B、次いで0.5分間95%B カラム温度:50℃+/-10℃、流速:1.2mL/分、1mL注入体積、溶媒A:0.1%HCOOHを含む脱イオン水、溶媒B:0.1%ギ酸を含むACN、波長200~400nmおよび212~216nm。HPLCがELSDを備えている場合、設定は、45℃エバポレーター温度、40℃ネブライザー温度、および1.6SLMガス流速である。代替LC-MS条件(高pH):カラム:Waters xBridge(登録商標)C18カラム2.1×50mm、3.5mm、勾配:1.5分で5~95%B、次いで0.50分間95%B、カラム温度:50℃+/-10℃、流速:1.2mL/分、1μL注入体積、溶媒A:10mM NH4HCO3、pH9、溶媒B:ACN、波長:200~400nmおよび212~216nm、ELSDを有した場合:45℃エバポレーター温度、40℃ネブライザー温度、および1.60SLMガス流速。
【0052】
調製1
N-[2-(3-メトキシフェニル)エチル]アセトアミド
【化10】
3-メトキシフェネチルアミン(48g、308mmol)をDCM(384mL)に溶解し、トリエチルアミン(64.4mL、462mmol)を加え、0~5℃に冷却する。塩化アセチル(24.1mL、339mmol)を滴下し、周囲温度で1時間撹拌する。水を加え、層を分離する。有機層を0.5MのHClおよび飽和NaHCO
3で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、表題化合物(59g、99%)を黄色の油として得る。ES/MS m/z:194[M+H]
+.
【0053】
調製2
6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン
N-[2-(3-メトキシフェニル)エチル]アセトアミド(5g、26mmol)をACN(74mL)に溶解する。塩化ホスホリル(2.9mL、31.0mmol)を加え、反応物を75℃で3時間加熱する。混合物を周囲温度に冷却し、水性K3PO4(2M、200mL)に注ぎ、30分間撹拌した。EtOAcで2回抽出する。有機層を組み合わせ、飽和水性NaClで洗浄し、MgSO4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、表題化合物(4.6g、91%)を褐色の油として得る。ES/MS m/z:176[M+H]+.
【0054】
調製3
(1R)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化11】
6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロイソキノリン(4.6g、26mmol)をACN(90mL)に溶解する。ギ酸/トリエチルアミン5:2複合体(17mL、40mmol)、続いて(S,S)-N-(p-トルエンスルホニル)-1,2-ジフェニルエタンジアミン(クロロ)(p-シメン)ルテニウム(II)(86mg、0.13mmol)を加えた。穏やかな窒素流下で周囲温度で17時間撹拌する。EtOAcで希釈し、水性K
2CO
3(3M)、および飽和水性NaClで2回洗浄する。有機物をNa
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。粗材料を水(2mL)中で撹拌する。水(2mL)中の二炭酸ジ-tert-ブチル(0.2g、0.9mmol)を加え、2.5時間激しく撹拌する。水性KHSO
4(1M溶液、20mL)を加え、2分間撹拌し、層を分離する。有機層を水性K
2CO
3(3M)および飽和水性NaClで洗浄する。有機物をMgSO
4上で乾燥させて、濾過し、真空中で濃縮した。粗生成物をDCMに溶解し、Celite(登録商標)上で濃縮し、次いでヘキサン中0~50%のEtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(6.26g、82%)を無色の油として得る。ES/MS m/z:222[M+H-t-Bu]
+.
【0055】
調製4
(1R)-5-ブロモ-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化12】
(1R)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(60g、216mmol)および酢酸ナトリウム(17.4mL、324mmol)を酢酸(300mL)に溶解し、30分間撹拌する。N-ブロモスクシンイミド(42.3g、238mmol)を加え、周囲温度で1時間撹拌する。水を加え、ヘキサンで2回抽出する。有機層を組み合わせ、飽和水性NaHCO
3で洗浄する。有機物をMgSO
4上で乾燥させて、濾過し、真空中で濃縮した。ヘキサン中の10~15%EtOAcの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって粗生成物を精製する。精製された材料をヘキサン(40mL)で粉砕し、一晩撹拌する。固体を濾過して、分析用キラルSFC(カラム:Chiralpak(登録商標)AD10×46cm、5μm、移動相:アイソクラティック1:9(イソプロパノール+0.2%イソプロパンアミン):CO
2、流速:5mL/分、カラム温度:40℃、出口圧力:150バール、保持時間:0.79分(所望の異性体)、0.97分)によって表題化合物(21.5g、28%)を白色の固体、98%eeとして得る。ES/MS m/z:300,302[M+H]
+.
【0056】
調製5
(1R)-5-ブロモ-6-メトキシ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、塩酸塩
【化13】
(1R)-5-ブロモ-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(7.4g、21mmol)をDCM(100mL)に溶解し、塩化水素(1,4-ジオキサン中4M、26mL、104mmol)を加える。周囲温度で17時間撹拌する。濾過し、固体をEtOAcで洗浄する。固体を高真空下で乾燥させて、表題化合物(5.93g、95%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:256,258[M+H]
+.
【0057】
調製6
(1R)-5-ブロモ-2-[1-(4-イソプロピルフェニル)エチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン(異性体1および異性体2)
【化14】
再封止可能なチューブにおいてラセミ1-(1-クロロエチル)-4-イソプロピル-ベンゼン(2g、8.76mmol)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(2mL、11.5mmol)、およびヨウ化カリウム(1.3g、7.8mmol)を無水N,N-ジメチルアセトアミド(100mL)に溶解し、周囲温度で10分間撹拌する。(1R)-5-ブロモ-6-メトキシ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン、塩酸塩(2g、6.83mmol)を一度に加える。バイアルにキャップをして、60℃で96時間撹拌する。周囲温度に冷却し、水/飽和NaHCO
3(1:1)とEtOAcとに分配する。水層をEtOAcで2回抽出する。有機層を組み合わせ、水および飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。DCM中の17%EtOAcで溶出するシリカゲルのフラッシュクロマトグラフィーによって粗材料を精製して、表題化合物のジアステレオマーの混合物(2g、67%)を淡褐色の固体として得る。ES/MS m/z:402,404[M+H]
+.
【0058】
ジアステレオマー混合物を、上記のように調製された別のロットのジアステレオマー混合物(1.5g)と組み合わせる。ジアステレオマーの混合物(3.5g、8.2mmol)を4:1のMeOH/DCM(100mL)に溶解する。混合物をキラルSFC(カラム:Chiralpak(登録商標)IG(25×2cm、5μm)、移動相:CO2中アイソクラティック10%(0.2%ジメチルエチルアミンを含むエタノール)、温度:40℃、流速:65g/分、出口圧力:120バール)によって分離し、異性体1(第1溶出、1.08g、33%)および異性体2(第2溶出、0.91、28%)を白色の固体として得る。
【0059】
分析用キラルSFC(カラム:Chiralpak IG(登録商標)(10cm×4.6mm、5μm)、移動相:CO2中5~25%(0.2%イソプロパンアミンを含むエタノール)、温度:40℃、流速:4mL/分、出口圧力:120バール)は、異性体1(保持時間1.4分)が95%deであり、異性体2(1.6分の保持時間)が>98%deであることを示す。
【0060】
調製7
4-ブロモ-2-フルオロ-6-(イソブチルアミノ)フェノール
【化15】
2-アミノ-4-ブロモ-6-フルオロフェノール(700mg、3.40mmol)および2-メチルプロパナール(0.5mL、5mmol)をTHF(5.7mL)に溶解する。酢酸(3.4mL、59mmol)およびメタノール(34mL)を加え、0℃で2分間撹拌する。2-メチルピリジンボラン複合体(640mg、5.08mmol)を加え、60℃で17時間撹拌する。減圧下で溶媒を除去し、SCXカラムで残留物を精製し、MeOH(2M)中のNH
3の溶液で化合物を溶出する。ヘキサン中の0~30%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって材料を精製して、表題化合物(380mg、43%)を粘着性の油として得る。ES/MS m/z:260,262[M-H]
+.
【0061】
実施例1
2-フルオロ-6-(イソブチルアミノ)-4-[(1R)-2-[1-(4-イソプロピルフェニル)エチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]フェノール、二塩酸塩
【化16】
4-ブロモ-2-フルオロ-6-(イソブチルアミノ)フェノール(200mg、0.76mmol)および無水1,4-ジオキサン(2mL)を混合する。混合物に窒素を通して15分間バブリングし、ビス(ピナコラート)ジボロン(240mg、0.9263mmol)、Pd(dppf)Cl
2・DCM(32mg、0.038mmol)、および酢酸カリウム(116mg、1.15mmol)を加える。混合物に窒素を通して5分間バブリングし、反応容器を封止し、90℃で17時間撹拌する。混合物を周囲温度に冷却し、(1R)-5-ブロモ-2-[1-(4-イソプロピルフェニル)エチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン、異性体2(210mg、0.52mmol)、(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩(23mg、0.026mmol)、および三塩基性リン酸カリウム(水中1M、1.5mL、1.5mmol)を加える。反応容器を封止し、混合物を90℃で4時間撹拌する。反応混合物を周囲温度に冷却し、EtOAcを加える。有機物を5%水性クエン酸で洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。MeOH中の2N NH
3で溶出するSCXカラムで残留物を精製する。DCM中の0~30%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって生成物をさらに精製する。ヘキサン中の0~40%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって生成物を再度精製する。生成物をSFC(カラム:Luna(登録商標)HILIC(30×150mm、5μm)、CO
2中の10%~20%の(10mMのMeOH中NH
4HCO
3、pH8)の勾配)によってさらに精製して、表題化合物の遊離塩基(68mg、17%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:505[M+H]
+.
【0062】
表題化合物の遊離塩基(68mg、0.14mmol)をACN(3mL)に溶解し、塩化水素(エーテル中2M、0.40mL、0.8mmol)を加える。2分間撹拌し、40℃の窒素流で溶媒を除去する。真空中で96時間乾燥させて、表題化合物(77mg、97%)を暗褐色の固体として得た。ES/MS m/z:505[M+H]+.
【0063】
調製8
2-アセトアミド-2-[(2-クロロ-3-メトキシ-フェニル)メチル]プロパン二酸ジエチル
【化17】
1-(ブロモメチル)-2-クロロ-3-メトキシ-ベンゼン(63.9g、271mmol)、アセトアミドマロン酸ジエチル(60.1g、271mmol)、炭酸カリウム(75.0g、542mmol)、およびヨウ化カリウム(45.0g、271mmol)をACN(958mL)中で混合し、混合物を2時間窒素下で加熱還流する。アセトアミドマロン酸ジエチル(6.6g、29.8mmol)を加え、さらに36時間還流する。溶媒を体積の1/3に濃縮し、水およびEtOAcを加える。有機層を分離し、水層をEtOAcで2回抽出する。有機層を組み合わせ、水および飽和水性NaClで洗浄し、Na
2SO
4上で乾燥させ、濃縮して、表題化合物(105.7g、100%)を白色の泡として得る。ES/MS m/z:372[M+H]
+.
【0064】
調製9
5-クロロ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸、塩酸塩
【化18】
2-アセトアミド-2-[(2-クロロ-3-メトキシ-フェニル)メチル]プロパン二酸ジエチル(105.6g、284mmol)、酢酸(211mL)、および塩酸(H
2O中37%、528mL、6400mmol)を混合し、混合物を18時間窒素下で加熱還流する。混合物を50℃に冷却し、ホルムアルデヒド(水中37%、284mL、3790mmol)を滴下し、100℃で2時間撹拌する。混合物を0℃に冷却し、30分間撹拌する。得られた固体を濾過し、水で洗浄し、乾燥させて、表題化合物(68.8g、87%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:242[M+H]
+.
【0065】
調製10
5-クロロ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル(異性体1および異性体2)
【化19】
5-クロロ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸塩酸塩(60.5g、218mmol)をメタノール(860mL)に懸濁し、窒素下で5℃で撹拌する。塩化チオニル(77.6g、653mmol)を滴下し、混合物を窒素下で20時間還流する。混合物を周囲温度に冷却し、溶媒を真空中で除去する。残留物をEtOAcで粉砕し、次いで濾過し、固体をEtOAcで洗浄する。固体を真空下で40℃で一晩乾燥させて、表題化合物の塩酸塩(58.8g、92%)をラセミ混合物として得る。
【0066】
固体の一部分(15.00g、49.80mmol)を飽和水性K2CO3(15mL)に懸濁し、周囲温度で30分間撹拌する。固体を濾過し、水で洗浄する。白色の固体を真空中で40℃で乾燥させる。固体をDCMに溶解し、DCM中の0~5%MeOHの勾配を使用してシリカプラグを通して濾過して、表題化合物(12.18g)をラセミ混合物として得る。ES/MS m/z 256[M+H]+。
【0067】
ラセミ混合物(10.15g)の一部分をキラルSFC(カラム:Chiralpak(登録商標)IG(25×2cm、5μm)、移動相:CO2中15%(MeOH+0.2%ジメチルエチルアミン)、温度:周囲、流速:80g/分、出口圧力:120バール)によって分離し、表題化合物の異性体1(第1溶出、2.69g、26%)および異性体2(第2溶出、4.10、40%)を得る。分析用キラルSFC(カラム:Chiralpak(登録商標)IG(10cm×4.6mm、5μm)、移動相:CO2中15~55%(メタノール+0.2%イソプロパンアミン)、温度:40℃、流速:4mL/分、出口圧力:120バール)は、異性体1(保持時間:1.58分)が>98%eeであり、異性体2(保持時間:1.66分)が95%eeであることを示す。
【0068】
調製11
5-クロロ-6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸O2-tert-ブチルO3-メチル
【化20】
二炭酸ジ-tert-ブチル(3.5g、16mmol)を、DCM(70mL)中の5-クロロ-6-メトキシ-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-3-カルボン酸メチル(異性体1、3.6g、14mmol)の溶液に加え、周囲温度で4時間撹拌する。溶媒を減圧下で除去し、DCM中の0~20%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって残留物を精製する。固体をヘキサンで洗浄し、濾過して、表題化合物(4.55g、90%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:256[M+H-BOC]
+.
【0069】
調製12
5-クロロ-3-(ヒドロキシメチル)-6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化21】
水素化ホウ素リチウム(THF中2.0M、13mL、26mmol)を、無水THF(40mL)中の5-クロロ-6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2,3-ジカルボン酸O2-tert-ブチルO3-メチル(4.55g、12.8mmol)の溶液に周囲温度で加え、6時間撹拌する。水を加え、混合物を周囲温度で10分間撹拌する。水で希釈し、EtOAcで2回抽出する。有機層を組み合わせ、水、飽和水性NaHCO
3、および飽和水性NaClで洗浄する。有機物を無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物を真空中で周囲温度で17時間乾燥させて、表題化合物(4.4g、100%)をワックス状の固体として得る。ES/MS m/z:272[M+H-Boc]
+.
【0070】
調製13
5-クロロ-6-メトキシ-3-(メトキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化22】
水素化ナトリウム(油中60%、2.1mg、0.053mmol)を、無水DMF(87mL)中の5-クロロ-3-(ヒドロキシメチル)-6-メトキシ-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(4.4g、13mmol)およびヨードメタン(8.1mL、130mmol)の0℃溶液に加え、反応物を10分間撹拌する。気体発生が観察されなくなるまで水を滴下し、混合物を水と酢酸エチルとに分配する。有機層を水および飽和水性NaClで洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物をDCM中の0~10%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(4.5g、94%)をワックス状の固体として得る。ES/MS m/z:242[M+H-t-Bu]
+.
【0071】
調製14
4-[6-メトキシ-3-(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル]-2-メチル-フェノール、塩酸塩
【化23】
再封止可能なチューブにおいて5-クロロ-6-メトキシ-3-(メトキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(2.68g、7.84mmol)および2-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール(2.45g、9.42mmol)を2-メチル-2-ブタノール(54mL)に溶解し、撹拌しながら窒素流で30分間パージする。クロロ(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1,1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)(第2世代XPhosプレ触媒、325mg、0.39mmol)および三塩基性リン酸カリウム(水中1M、16mL、16mmol)を加え、容器を封止し、混合物を85℃で2時間加熱する。混合物を周囲温度に冷却し、Celite(登録商標)を通して濾過し、EtOAcですすぐ。有機層を水および飽和水性NaClで洗浄し、無水Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。DCM中の0~10%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。材料をDCM(30mL)に溶解し、塩化水素(1,4-ジオキサン中4M、10mL、40mmol)を加え、混合物を周囲温度で1.5時間撹拌する。溶媒を除去し、次いで固体をEtOAcで粉砕し、濾過する。固体をEtOAcで洗浄して、表題化合物(2.6g、91%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:314[M+H]
+.
【0072】
実施例2
4-[2-[(2-ヒドロキシ-4-イソプロピル-フェニル)メチル]-6-メトキシ-3-(メトキシメチル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]-2-メチル-フェノール、塩酸塩
【化24】
4-[6-メトキシ-3-(メトキシメチル)-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル]-2-メチル-フェノール、塩酸塩(157mg、0.45mmol)をDCM(3mL)に懸濁し、4-イソプロピルサリチルアルデヒド(0.11mL、0.71mmol)およびトリエチルアミン(0.19mL、1.35mmol)を加える。20分後、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(294mg、1.35mmol)を加え、混合物を周囲温度で16時間撹拌する。4-イソプロピルサリチルアルデヒド(0.060mL、0.39mmol)およびトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(151mg、0.69mmol)を加え、混合物を6時間撹拌する。混合物をDCMで希釈し、飽和水性NH
4Clで洗浄する。水層をDCMで抽出する。有機層を組み合わせ、Na
2SO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物をDCM中の0~25%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製する。ヘキサン/EtOAc3:1、続いて2:1で溶出するシリカゲルにおけるクロマトグラフィーによってさらに精製する。SCXカラム上に充填し、MeOH中の2N NH
3で化合物を溶出する。化合物をDCM(1mL)に溶解し、塩化水素(エーテル中2M、0.50mL、1.0mmol)を加える。濃縮乾固し、高真空下、40℃で48時間乾燥させて、表題化合物(138mg、73%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:462[M+H]
+.
【0073】
調製15
2-フルオロ-6-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール
【化25】
4-ブロモ-2-フルオロ-6-メチル-フェノール(24g、94mmol)、ビス(ピナコラート)ジボロン(28g、110mmol)、および酢酸カリウム(13g、130mmol)を脱気された無水1,4-ジオキサン(200mL)に溶解する。Pd(dppf)Cl
2・DCM(5g、6.0mmol)を加える。混合物に窒素を通して5分間バブリングし、85℃で2時間撹拌する。反応混合物をDCMで希釈し、Celite(登録商標)を通して濾過する。混合物を真空中で濃縮し、EtOAcおよび水で希釈する。層を分離し、有機層を水で洗浄し、無水MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。残留物をヘキサン中の0~10%MTBEの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(14.5g、61%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:251[M-H]
+.
【0074】
実施例3
2-フルオロ-4-[(1R)-2-[1-(4-イソプロピルフェニル)エチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]-6-メチル-フェノール、塩酸塩
【化26】
窒素を(1R)-5-ブロモ-2-[1-(4-イソプロピルフェニル)エチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン(異性体2、31mg、0.077mmol)、2-フルオロ-6-メチル-4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)フェノール(30mg、0.12mmol)、三塩基性リン酸カリウム(1M水性溶液、0.17mL、0.17mmol)、および2-メチル-2-ブタノールの混合物に通して5分間バブリングする。(2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピル-1-1’-ビフェニル)[2-(2’-アミノ-1,1’-ビフェニル)]パラジウム(II)メタンスルホン酸塩(XPhos Pd G3、4mg、0.5μmol)を加え、混合物を100℃に3時間加熱する。混合物を室温に冷却し、SCXカラムに注ぐ。カラムをMeOH、次いでMeOH(2M)中のNH
3で溶出する。溶媒をNH
3/MeOH溶出から真空中で除去する。残留物をヘキサン中の7~30%EtOAcの勾配を使用するシリカゲルクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物の遊離塩基(28mg)を得、次いでACNを加え、塩化水素(ジエチルエーテル中2M、0.20mL、0.31mmol)を加える。溶媒を窒素流で除去し、材料を一晩高真空下40℃で乾燥させて、表題化合物(26mg、85%)を白色の固体として得る。ES/MS m/z:448[M+H]
+.
【化27】
【0075】
調製17
2-ベンジルオキシ-1-ブロモ-3-フルオロ-5-ヨード-ベンゼン
【化28】
2-ブロモ-6-フルオロ-4-ヨード-フェノール(3.66g、11.5mmol)および炭酸カリウム(3.2g、23mmol)をDMF(23mL)に溶解し、室温で5分間撹拌する。臭化ベンジル(2.1mL、18mmol)を注射器によって加え、室温で2時間撹拌する。AcOEtおよび水を加え、層を分離し、有機層を水で洗浄し、MgSO
4上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮して、褐色の油を得る。ヘキサン中の0~20%のDCMの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物(4.53g、96%収率)を白色の固体として得る。
【0076】
調製18
(1R)-6-メトキシ-1-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化29】
マイクロ波チューブにおいて調製4(1000mg、2.81mmol)、4,4,5,5-テトラメチル-2-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-1,3,2-ジオキサボロラン(1000mg、3.94mmol)、および酢酸カリウム(520mg、5.30mmol)を脱気された1,4-ジオキサン(20mL)中で組み合わせる。トリス(ベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)(160mg、0.17mmol)およびトリシクロヘキシルホスフィン(120mg、0.42mmol)を加える。混合物を5分間脱気し、キャップをし、電子レンジにおいて150℃で1時間加熱する。ヘキサン中の0~20%のメチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を黄色の油(942mg、75%収率)として得る。MS(ESI)m/z:304[M+H-(t-Bu)]
+.
【0077】
調製19
(1R)-5-(4-ベンジルオキシ-3-ブロモ-5-フルオロ-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化30】
再封止可能なチューブにおいて(1R)-6-メトキシ-1-メチル-5-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(3380mg、8.38mmol)、2-ベンジルオキシ-1-ブロモ-3-フルオロ-5-ヨード-ベンゼン(4100mg、10.07mmol)、炭酸ナトリウム(2.7g、25.0mmol)を1,4-ジオキサン(67mL)および水(17mL)に溶解する。溶液に窒素を通して5分間バブリングし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(500mg、0.43mmol)を加える。チューブにキャップをし、90℃で5時間撹拌する。濃縮し、Celite(登録商標)上に吸着し、ヘキサン中の0~30%のメチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を白色の固体(3.07g、90%収率)として得る。MS(ESI)m/z:502[M+H-(t-Bu)]
+.
【0078】
調製20
(1R)-5-(4-ベンジルオキシ-3-フルオロ-5-イソプロペニル-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化31】
再封止可能なチューブにおいて(1R)-5-(4-ベンジルオキシ-3-ブロモ-5-フルオロ-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(150mg、0.27mmol)、2-イソプロペニル-4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン(100mg、0.59mmol)、炭酸ナトリウム(85mg、0.80mmol)を1,4-ジオキサン(4mL)および水(0.27mL)に溶解する。窒素を5分間バブリングし、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0))(17mg、0.015mmol)を加え、キャップをし、90℃で18時間撹拌する。濃縮し、Celite(登録商標)上に吸着し、ヘキサン中の20~60%のメチルtert-ブチルエーテルの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色の油(200mg、49%収率)として得る。MS(ESI)m/z:418[M+H-Boc]
+.
【0079】
調製21
(1R)-5-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル
【化32】
(1R)-5-(4-ベンジルオキシ-3-フルオロ-5-イソプロペニル-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸tert-ブチル(270mg、0.25mmol)をメタノール(5mL)に溶解し、パラジウム(C上10%、400mg、0.36mmol)を加える。混合物を水素雰囲気(1気圧)下、室温で18時間撹拌する。Celite(登録商標)上で濾過し、エタノールで洗浄する。溶媒を真空中で除去して、表題化合物を褐色の油(134mg、収率60%)として得る。MS(ESI)m/z:374[M+H-(t-Bu)]
+
【0080】
調製22
2-フルオロ-6-イソプロピル-4-[(1R)-6-メトキシ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル]フェノール
【化33】
(1R)-5-(3-フルオロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピル-フェニル)-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-2-カルボン酸塩(134mg、0.25mmol)をDCM(1.2mL)に溶解し、塩酸(ジオキサン中4M、0.3mL、1mmol)を加える。混合物を室温で2時間撹拌する。溶媒を除去し、メタノール、続いてメタノール中の2N NH
3で溶出するSCXによって精製する。塩基性画分を組み合わせ、溶媒を除去して、表題化合物(120mg、68質量%、99%収率)を得る。MS(ESI)m/z:330[M+H]
+
【0081】
調製23
4-[(1R)-2-[(4,4-ジメチルシクロヘキシル)メチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]-2-フルオロ-6-イソプロピル-フェノール
【化34】
4,4-ジメチルシクロヘキサン-1-カルバルデヒド(77mg、0.49mmol)をDCM(3mL)中の2-フルオロ-6-イソプロピル-4-[(1R)-6-メトキシ-1-メチル-1,2,3,4-テトラヒドロイソキノリン-5-イル]フェノール(120mg、0.25mmol)の溶液に加える。混合物を室温で30分間撹拌し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(100mg、0.47mmol)を加える。反応物を室温で4時間撹拌する。水およびジクロロメタンを加える。水層をジクロロメタンで抽出する。有機層を組み合わせ、飽和水性NaClで洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮する。ヘキサン中の0%~20%アセトンの勾配で溶出するフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、表題化合物を無色の油(90mg、78%収率)として得る。MS(ESI)m/z:454[M+H]
+
【0082】
実施例4
4-[(1R)-2-[(4,4-ジメチルシクロヘキシル)メチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]-2-フルオロ-6-イソプロピル-フェノール、塩酸塩の合成
【化35】
4-[(1R)-2-[(4,4-ジメチルシクロヘキシル)メチル]-6-メトキシ-1-メチル-3,4-ジヒドロ-1H-イソキノリン-5-イル]-2-フルオロ-6-イソプロピル-フェノール(90mg、0.19mmol)をACN(1mL)に溶解し、塩酸(ジエチルエーテル中2M、0.18mL、0.36mmol)を加える。混合物を室温で5分間超音波処理する。溶媒を除去し、材料を45℃で真空中18時間乾燥させて、表題化合物を黄褐色の固体(90mg、94%収率)として得る。MS(ESI)m/z:454[M+H]
+.
【0083】
生物学的アッセイ
ヒトGIP受容体増強剤アッセイ
GIP受容体(GIPR)機能的活性は、ヒトGIPR(NCBIアクセッション番号NP_000155)を発現するHEK293クローン細胞株におけるcAMP形成を使用して決定される。アッセイは、EC
20用量のGIPRアゴニストGIP(1-42)の存在下での化合物が誘導したcAMP生成を測定する。hGIPR受容体発現細胞を、1X GlutaMAX(商標)(Gibcoカタログ番号35050)、0.1%ウシカゼイン(Sigma C4765-10ML)、250μM IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン、Acrosカタログ番号228420010)、および20mM HEPES(Gibcoカタログ番号15630)で補足されたDMEM(Gibcoカタログ番号31053)中の25pMのGIP(1-42)(Labcyte Echo直接希釈)および用量応答の試験化合物(DMSO中10点濃度応答曲線、3倍Labcyte Echo直接希釈、384ウェルプレートCorningカタログ番号3570)で、20μLアッセイ体積で処理する(最終DMSO濃度は1.0%である)。37℃で30分のインキュベーション後に、得られる細胞内cAMPの増加を、CisBio cAMP Dynamic 2 HTRF Assay Kit(62AM4PEJ)を使用して定量的に決定する。簡潔には、細胞溶解バッファー(10μL)中のcAMP-d2コンジュゲート、続いて同様に細胞溶解バッファー(10μL)中の抗体、抗cAMP-Eu
3+-クリプテートを添加することによって、細胞内のcAMPレベルを検出する。得られる競合アッセイを室温で少なくとも60分間インキュベートし、次いでPerkinElmer Envision(登録商標)機器を、320nmでの励起ならびに665nmおよび620nmでの発光で使用して検出する。Envision単位(665nm/620nmでの発光*10,000)は存在するcAMPの量に反比例し、cAMP標準曲線を使用して、これを1ウェル当たりのnM cAMPに変換する。各ウェルにおいて生成されるcAMPの量(nM)は、観察される最大応答のパーセントに変換される。相対的EC
50値および最大割合(%)(E
max)を、4パラメータロジスティック方程式に適合させた、最大応答割合対添加化合物濃度を使用する非線形回帰分析によって導く。実施例1および3の化合物が上記のcAMPアッセイにおいて試験される場合のEC
50およびE
maxデータを表1に示す。これらのデータは、実施例1および3の化合物がヒトGIP受容体の正のアロステリック調節剤であることを示す。
【表1】
【0084】
ヒトGLP-1受容体増強剤アッセイ
GLP-1受容体(GLP-1R)機能的活性は、ヒトGLP-1R(NCBIアクセッション番号NP_002053)を発現するHEK293クローン細胞株におけるcAMP形成を使用して決定される。アッセイは、EC
20用量のGLP-1Rアゴニストであるオキシントモジュリンの存在下での化合物が誘導したcAMP生成を測定する。GLP-1R発現細胞を、2mM L-グルタミン(Gibcoカタログ番号25030)、0.25%ウシ胎児血清(Gibcoカタログ番号16000-044)、0.05%画分Vウシ血清アルブミン(Gibcoカタログ番号15260)、1xペニシリン/ストレプトマイシン(HyCloneカタログ番号SV30010)、250μM IBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン、Acrosカタログ番号228420010)、および20mM HEPES(HyCloneカタログ番号SH30237.01)で補足されたDMEM(Gibcoカタログ番号31053)中の5nMのGLP-1Rアゴニストオキシントモジュリン(Bachemカタログ番号H-6058)および用量応答の試験化合物(DMSO中10点濃度応答曲線、3倍Labcyte Echo直接希釈、384ウェルプレートCorningカタログ番号3570)で、20μLアッセイ体積で処理する(最終DMSO濃度は0.56%である)。室温で60分のインキュベーション後に、得られる細胞内cAMPの増加を、CisBio cAMP Hybrid HTRF Assay Kit(60MISZZZ)を使用して定量的に決定する。簡潔には、細胞溶解バッファー(10μL)中のDynamic 2 cAMP-d2コンジュゲート、続いて同様に細胞溶解バッファー(10μL)中のHiRange抗体、抗cAMP-Eu
3+-クリプテートを添加することによって、細胞内のcAMPレベルを検出する。得られる競合アッセイを室温で少なくとも60分間インキュベートし、次にPerkinElmer Envision(登録商標)機器を、320nmでの励起ならびに665nmおよび620nmでの発光で使用して検出する。Envision単位(665nm/620nmでの発光*10,000)は、存在するcAMPの量に反比例し、cAMP標準曲線を使用して1ウェル当たりのnM cAMPに変換される。各ウェルにおいて生成されるcAMPの量(nM)は、観察される最大応答のパーセントに変換される。相対的EC
50値および最大割合(%)(E
max)を、4パラメータロジスティック方程式に適合させた、最大応答割合対添加化合物濃度を使用する非線形回帰分析によって導く。実施例2の化合物が上記のcAMPアッセイにおいて試験される場合のEC
50およびE
maxデータを表2に示す。このデータは、実施例2の化合物がヒトGLP-1受容体の正のアロステリック調節剤であることを示す。
【表2】
【0085】
本発明によって企図される特定の実施形態は、以下である:
1.以下の式の化合物であって、
式中
【化36】
、
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH
3、CH
3CHCH
3、および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択され、
R7が、
【化37】
からなる群から選択される、化合物、または
その薬学的に許容される塩。
2.以下の式の化合物であって、
【化38】
式中、
R1が、FおよびHからなる群から選択され、
R2が、CH3および-NHCH
2CH(CH
3)
2からなる群から選択され、
R3が、Hおよび-CH
2OCH
3からなる群から選択され、
R4が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R5が、HおよびCH
3からなる群から選択され、
R6が、HおよびOHからなる群から選択される、化合物、または
その薬学的に許容される塩。
3.R4が、CH
3である、実施形態1~2のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
4.R5が、CH
3である、実施形態1~3のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
5.R6が、Hである、実施形態1~4のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
6.R1が、Fである、実施形態1~5のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
7.R3が、Hである、実施形態1~6のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
8.R2が、NHCH
2CH(CH
3)
2である、実施形態1~7のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
9.R2が、CH
3である、実施形態1~7のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
10.化合物が、
【化39】
からなる群から選択される、実施形態1の化合物、
またはその薬学的に許容される塩。
11.化合物が、
【化40】
である、実施形態10の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
12.化合物が、
【化41】
である、実施形態1の化合物、
またはその薬学的に許容される塩。
13.化合物が、
【化42】
である、実施形態12の化合物、またはその薬学的に許容される塩。
14.化合物が、塩酸塩である、実施形態1~13のいずれか1つの化合物。
15.実施形態1~14のいずれか1つの、化合物、またはその薬学的に許容される塩と、少なくとも1つの薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤と、を含む、薬学的組成物。
16.哺乳動物における2型糖尿病を治療するための方法であって、哺乳動物に、有効量の実施形態1~14のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
17.療法における使用のための、実施形態1~14のいずれか1つの、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
18.2型糖尿病の治療における使用のための、実施形態1~14のいずれか1つの化合物、またはその薬学的に許容される塩。
19.2型糖尿病の治療のための医薬品の製造における、実施形態1~14のいずれか1つの、化合物、またはその薬学的に許容される塩の使用。
20.GLP1、GIP、およびグルカゴンからなる群から選択される受容体の正のアロステリック調節における使用のための、実施形態1~14のいずれか1つの、化合物、またはその薬学的に許容される塩。
21.GLP1受容体の正のアロステリック調節における使用のための、実施形態2~14のいずれか1つの、化合物、またはその薬学的に許容される塩。