(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】流体回路用選定システム及び流体回路用選定方法
(51)【国際特許分類】
G06F 30/18 20200101AFI20230123BHJP
F15B 11/06 20060101ALI20230123BHJP
G06F 30/20 20200101ALI20230123BHJP
【FI】
G06F30/18
F15B11/06 Z
G06F30/20
(21)【出願番号】P 2018113155
(22)【出願日】2018-06-13
【審査請求日】2021-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000102511
【氏名又は名称】SMC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 満
(72)【発明者】
【氏名】張 護平
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勇登
【審査官】田中 幸雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-114913(JP,A)
【文献】国際公開第2008/139800(WO,A1)
【文献】国際公開第2006/051919(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 30/18
F15B 11/06
G06F 30/10
G06F 30/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定システムであって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定処理部と、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースと、
前記データベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定処理部と、
前記組合せ選定処理部で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う再選定処理部と、を有する、流体回路用選定システム。
【請求項2】
請求項1記載の流体回路用選定システムにおいて、
前記複数の機器に含まれるバルブを入力操作に従って選定するバルブ選定処理部と、
前記複数の機器に含まれるサイレンサを入力操作に従って選定するサイレンサ選定処理部と、を有する、流体回路用選定システム。
【請求項3】
少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定システムであって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定処理部と、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースと、
前記データベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定処理部と、
前記組合せ選定処理部で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第1再選定処理部と、
選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後の圧力が前回選定された機器による復帰工程後の圧力以上の場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第2再選定処理部と、を有する、流体回路用選定システム。
【請求項4】
請求項3記載の流体回路用選定システムにおいて、
前記複数の機器に含まれるバルブを入力操作に従って選定するバルブ選定処理部と、
前記複数の機器に含まれるサイレンサを入力操作に従って選定するサイレンサ選定処理部と、を有する、流体回路用選定システム。
【請求項5】
請求項4記載の流体回路用選定システムにおいて、
前記第2再選定処理部は、入力操作に従って選定された前記バルブ及び前記サイレンサを除く機器について、サイズアップによる再選定を行うことを特徴とする流体回路用選定システム。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の流体回路用選定システムにおいて、
前記流体回路は、
ピストンによって区画される第1エア室と第2エア室とを有するシリンダと、
前記ピストンの駆動工程と復帰工程とで切り換わるバルブと、
前記第1エア室と前記バルブ間の第1流路と、
前記第2エア室と前記バルブ間の第2流路と、を有し、
前記第1流
路にタンクが設けられ、
前記第2流路に、2つの速度制御弁が直列に設置されている、流体回路用選定システム。
【請求項7】
少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定方法であって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定ステップと、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定ステップと、
前記組合せ選定ステップで選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う再選定処理ステップと、を
、コンピュータを用いて実行させる、流体回路用選定方法。
【請求項8】
少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定方法であって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定ステップと、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定ステップと、
前記組合せ選定ステップで選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第1再選定ステップと、
選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後の圧力が前回選定された機器による復帰工程後の圧力以上の場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第2再選定ステップと、を
、コンピュータを用いて実行させる、流体回路用選定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアシリンダの流体回路等の流体回路用選定システム及び流体回路用選定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の流体圧シリンダ駆動装置は、排出圧力を再利用して流体圧シリンダを復帰させることで省エネを図りつつ、復帰に必要な時間を可及的に短縮すること、並びに、排出圧力を再利用して流体圧シリンダを復帰させるための回路を簡素化することを課題としている。
【0003】
当該課題を解決するため、特許文献1記載の流体圧シリンダ駆動装置は、切換弁、高圧エア供給源、排気口及びチェック弁を備える。切換弁の第1位置において、ヘッド側シリンダ室が高圧エア供給源に連通すると共に、ロッド側シリンダ室が排気口に連通する。切換弁の第2位置において、ヘッド側シリンダ室がチェック弁を介してロッド側シリンダ室に連通すると共に、ヘッド側シリンダ室が排気口に連通する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1記載の流体圧シリンダ駆動装置のような排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路を実現するためには、適正な機器のサイズを選定しなければ、要求条件と仕様を満たすことは難しい。
【0006】
すなわち、上述のような排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路において、各種機器(流体制御弁、配管、チェック弁、パイロットチェック弁、バルブ、サイレンサ、タンク等)のサイズによっては、性能が低下するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路に使用される駆動装置のサイズを適正に選定することができる流体回路用選定システム及び流体回路用選定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 本発明の第1の態様は、少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定システムであって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定処理部と、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースと、
前記データベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定処理部と、
前記組合せ選定処理部で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う再選定処理部と、を有する。
【0009】
[2] 本発明の第2の態様は、少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定システムであって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定処理部と、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースと、
前記データベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定処理部と、
前記組合せ選定処理部で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第1再選定処理部と、
選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後の圧力が前回選定された機器による復帰工程後の圧力以上の場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第2再選定処理部と、を有する。
【0010】
[3] 本発明の第3の態様は、少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定方法であって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定ステップと、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定ステップと、
前記組合せ選定ステップで選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う再選定処理ステップと、を有する。
【0011】
[4] 本発明の第4の態様は、少なくともシリンダと、前記シリンダに接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定方法であって、
前記シリンダを選定するシリンダ選定ステップと、
予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースから前記複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して前記機器を選定する組合せ選定ステップと、
前記組合せ選定ステップで選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、復帰工程後の圧力が最低使用圧力以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第1再選定ステップと、
選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間が予め設定された上限ストローク時間を超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後の圧力が前回選定された機器による復帰工程後の圧力以上の場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う第2再選定ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路に使用される駆動装置のサイズを適正に選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1Aは、第1流体回路のバルブを第1状態とした場合の回路図であり、
図1Bは、第1流体回路の駆動工程の状態を示す説明図である。
【
図2】
図2Aは、第1流体回路のバルブを第2状態とした場合の回路図であり、
図2Bは、第1流体回路の復帰工程の状態を示す説明図である。
【
図4】
図4Aは、第2流体回路のバルブを第1状態とした場合の回路図であり、
図4Bは、第2流体回路の駆動工程の状態を示す説明図である。
【
図5】
図5Aは、第2流体回路のバルブを第2状態とした場合の回路図であり、
図5Bは、第2流体回路の復帰工程の状態を示す説明図である。
【
図6】本実施の形態に係る流体回路用選定システムの構成を示すブロック図である。
【
図7】
図7Aはシリンダデータベースの内訳の例を示す説明図であり、
図7Bは配管データベースの内訳の例を示す説明図であり、
図7Cはタンクデータベースの内訳の例を示す説明図である。
【
図8】
図8Aは速度制御弁データベースの内訳の例を示す説明図であり、
図8Bはチェック弁データベースの内訳の例を示す説明図であり、
図8Cはバルブデータベースの内訳の例を示す説明図であり、
図8Dはサイレンサデータベースの内訳の例を示す説明図である。
【
図9】機器組合せデータベースの内訳の例を示す説明図である。
【
図10】第2の機器組合せデータベースの内訳の例を示す説明図である。
【
図11】
図11Aはシリンダ駆動システムの物理モデルを示す説明図であり、
図11Bは絞りの基礎方程式を示す説明図であり、
図11Cはシリンダの基礎方程式を示す説明図である。
【
図12】
図12Aは特性計算で使用される管路モデルを示す説明図であり、
図12Bは管路の基礎方程式を示す説明図であり、
図12Cは管路をn個に分割した際のi番目の要素の管路離散モデルを示す説明図であり、
図12Dは前記i番目の要素の管路離散モデルにおける基礎方程式を示す説明図である。
【
図14】特性計算処理部でのシミュレーション計算例の結果を示すグラフである。
【
図15】選定システムの処理動作を示すフローチャート(その1)である。
【
図16】機器の組合せNO.1~18における駆動工程でのストローク時間及び復帰工程後圧力を示すグラフである。
【
図17】選定システムの処理動作を示すフローチャート(その2)である。
【
図18】機器の組合せNO.18~21における駆動工程でのストローク時間及び復帰工程後圧力を示すグラフである。
【
図19】選定システムの処理動作を示すフローチャート(その3)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る流体回路用選定システム及び流体回路用選定方法について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照しながら説明する。
【0015】
本実施の形態に係る流体回路用選定システム(以下、選定システム100と記す)について、
図1A~
図19を参照しながら説明する。
【0016】
この選定システム100は、各種データベースに記憶されたシリンダ、チューブ、機器等のサイズに関するデータに基づいて、排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路に使用される駆動装置のサイズを選定するシステムである。
【0017】
ここで、選定対象である排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路の例について、
図1A~
図5Bを参照しながら説明する。
【0018】
先ず、第1流体回路10Aは、
図1Aに示すように、第1配管12a(B)、第2配管12b(A)、バルブ16(H)を含む。
【0019】
シリンダ30は
、図3に示すように、シリンダチューブ32、ヘッドカバー34、ロッドカバー36、
並びに図1Aに示すように、ピストン3
8、ピストンロッド40等から構成される。シリンダチューブ32の一端側はロッドカバー36によって閉塞され、シリンダチューブ32の他端側はヘッドカバー34によって閉塞される。シリンダチューブ32の内部にピストン38(
図1A参照)が往復移動自在に配設されている。シリンダチューブ32の内部空間は、例えば
図1Aに示すように、ピストン38とロッドカバー36との間に形成される第1エア室42aと、ピストン38とヘッドカバー34との間に形成される第2エア室42bとに区画される。
【0020】
ピストン38に連結されたピストンロッド40は第1エア室42aを縦断し、その端部がロッドカバー36を通って外部に延びる。シリンダ30は、ピストンロッド40の押し出し時(伸長時)に図示しないワークの位置決め等の仕事を行い、ピストンロッド40の引き込み時には仕事をしない。
【0021】
シリンダ30の第1エア室42aとバルブ16(H)との間に第1配管12a(B)が設けられ、シリンダ30の第2エア室42bとバルブ16(H)との間に第2配管12b(A)が設けられている。
【0022】
第2配管12b(A)の途中には、2つの速度制御弁(第1速度制御弁50a(F)及び第2速度制御弁50b(G))が介設されている。第1速度制御弁50a(F)は、メータアウトと呼ばれる形式の可変絞り弁であり、第2エア室42bから排出されるエアの流量を手動により調整可能な制御弁である。一方、第2速度制御弁50b(G)は、メータインと呼ばれる形式の可変絞り弁であり、第2エア室42bに供給されるエアの流量を手動により調整可能な制御弁である。第1速度制御弁50a(F)を操作することによって、第2エア室42bに蓄積されたエアを第1エア室42aに向けて供給する量と外部に排出する量との割合を調整することができる。
【0023】
第1速度制御弁50a(F)は、第1チェック弁52aと第1絞り弁54aとが並列に接続されて構成されている。第1チェック弁52aは、バルブ16(H)を介してシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流通を許容し、シリンダ30の第2エア室42bからバルブ16(H)に向かうエアの流通を阻止する。第1絞り弁54aは、シリンダ30の第2エア室42bからバルブ16(H)に向かうエアの流量を調整する。
【0024】
第2速度制御弁50bは、第2チェック弁52bと第2絞り弁54bとが並列に接続されて構成されている。第2チェック弁52bは、シリンダ30の第2エア室42bからバルブ16(H)に向かうエアの流通を許容し、バルブ16(H)を介してシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流通を阻止する。第2絞り弁54bは、バルブ16(H)を介してシリンダ30の第2エア室42bに向かうエアの流量を調整する。
【0025】
また、この第1流体回路10Aは、第2配管12b(A)のうち、シリンダ30と第1速度制御弁50a(F)との間の任意のポイントに、第3チェック弁52c(E)が接続されている。この第3チェック弁52c(E)は、第2配管12b(A)からバルブ16(H)に向かうエアの流通を許容し、バルブ16(H)から第2配管12b(A)に向かうエアの流通を阻止する。
【0026】
一方、バルブ16(H)は、第1ポート60a~第5ポート60eを有し、第1位置と第2位置との間で切り換え可能な5ポート2位置電磁弁として構成される。第1ポート60aは第1配管12a(B)に繋がっており、第2ポート60bは第2配管12b(A)に繋がっている。第3ポート60cはエア供給源62に繋がっている。第4ポート60dはサイレンサ63(I)が付設された排気口64に繋がっており、第5ポート60eは上述した第3チェック弁52c(E)に繋がっている。また、第1ポート60aと第4ポート60dが繋がり、且つ、第2ポート60bと第3ポート60cが繋がっている。第3チェック弁52c(E)からバルブ16(H)の第5ポート60eまでの第3配管12c(C)は1つのエア貯留部として機能する。
【0027】
そして、
図1Aに示すように、バルブ16(H)が第1位置にあるとき、第1ポート60aと第4ポート60dが繋がり、且つ、第2ポート60bと第3ポート60cが繋がる。一方、
図2Aに示すように、バルブ16(H)が第2位置にあるときは、第1ポート60aと第5ポート60eが繋がり、且つ、第2ポート60bと第4ポート60dが繋がる。
【0028】
なお、バルブ16(H)は、非通電時はばねの付勢力により第2位置に保持され、通電時に第2位置から第1位置に切り換わる。なお、バルブ16(H)に対する通電又は非通電は、図示しない上位装置であるPLC(Programmable Logic Controller)からバルブ16(H)への通電指令の出力(通電)又は通電停止指令の出力(非通電)によって行われる。
【0029】
ピストンロッド40が押し出されるシリンダ30の駆動工程では、バルブ16(H)が第1位置とされ、ピストンロッド40が引き込まれるシリンダ30の復帰工程ではバルブ16(H)が第2位置とされる。
【0030】
第1配管12a(B)の任意のポイントには、タンク68(D)が介設されている。タンク68(D)は、エアを蓄積するエアタンクとして作用するように容積を大きくとってある。
【0031】
なお、
図1A~
図2Bは、第1流体回路10Aを回路図によって概念的に示したもので、シリンダ30の内部に組み込まれる流路も、便宜上、シリンダ30の外側に配設されているかの如く描かれている。
【0032】
実際には、
図1Aの一点鎖線で囲まれた部分、すなわち、第3チェック弁52cを含む第2配管12b(A)の一部及びタンク68(D)を含む第1配管12a(B)の一部は、シリンダ30の内部に組み込まれている。
【0033】
また、例えば、
図1Aの一点鎖線で囲まれた領域の第1配管12a(B)は、
図3に示すように、ロッドカバー36とシリンダチューブ32とヘッドカバー34とに亘って設けられ、そのうちシリンダチューブ32に設けられる部分がタンク68(D)となっている。タンク68(D)は、例えば、シリンダチューブ32を内側チューブと外側チューブからなる二重構造とし、両者の間に形成される空間によって構成してもよい。
【0034】
第1流体回路10Aは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、
図1A~
図2Bを参照しながら、その作用について説明する。なお、
図1Aに示すように、バルブ16(H)が第1位置にあり、ピストンロッド40が最も引き込まれた状態を初期状態とする。
【0035】
先ず、
図1A及び
図1Bに示すように、駆動工程は、初期状態において、エア供給源62からのエアが第2配管12b(A)を介して第2エア室42bに供給され、第1エア室42a内のエアが第1配管12a(B)を介して排気口64から外部に排出されるようになる。このとき、第2速度制御弁50b(G)では、エアが第2絞り弁54bによって流量が調整され、第1速度制御弁50a(F)では、第1チェック弁52aを介して第2エア室42bに供給される。また、エア供給源62からのエアは、第2配管12b(A)から第3チェック弁52c(E)を介して第3配管12c(C)に供給される。
【0036】
これにより、第2エア室42bの圧力が上昇し始めると共に、第1エア室42aの圧力が下降し始める。第2エア室42bの圧力がピストン38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第1エア室42aの圧力を上回ると、ピストンロッド40の押し出し方向への移動が始まる。そして、
図1Bに示すように、ピストンロッド40は最大位置まで伸長し、大きな推力でその位置に保持される。
【0037】
ピストンロッド40が伸長してワークの位置決め等の作業が行われた後、
図2A及び
図2Bに示すように、バルブ16(H)が第1位置から第2位置に切り換えられる。すなわち、ピストンロッド40の復帰工程が開始される。
【0038】
この復帰工程では、第2エア室42bに蓄積されたエアの一部が第3チェック弁52c(E)を通って第1エア室42aに向けて流通し、それと同時に、第2エア室42bに蓄積されたエアの他の一部が第1速度制御弁50a(F)、第2速度制御弁50b(G)及びバルブ16(H)を介して排気口64から排出される。このとき、第1速度制御弁50a(F)では、エアが第1絞り弁54aによって流量が調整され、第2速度制御弁50b(G)では、第2チェック弁52bを介してバルブ16(H)に向けて流通する。
【0039】
一方、第1エア室42aに向けて供給されるエアは、主にタンク68(D)に蓄積される。ピストンロッド40の引き込みが始まる前は、第1エア室42aと配管通路とを含めて第3チェック弁52c(E)から第1エア室42aまでの間にエアが存在し得る領域のうち、最も大きな空間を占めるのはタンク68(D)であるからである。
【0040】
その後、第2エア室42bのエア圧が減少し、第1エア室42aのエア圧が上昇して、第1エア室42aのエア圧が第2エア室42bのエア圧よりも所定以上大きくなると、ピストンロッド40の引き込みが始まる。そして、ピストンロッド40が最も引き込まれた初期状態に復帰する。
【0041】
次に、第2流体回路10Bは、
図4Aに示すように、上述した第1流体回路10Aとほぼ同様の構成を有するが、第3配管12c(C)が第1配管12a(B)の任意のポイントM1と第2配管12b(A)の任意のポイントM2との間に設けられている点で異なる。
【0042】
すなわち、第2流体回路10Bは、第1配管12a(B)の途中から第3配管12c(C:バイパス流路)が分岐し、該第3配管12c(C)は第2配管12b(A)の途中に合流している。すなわち、第1配管12a(B)の任意のポイントM1と第2配管12b(A)の任意のポイントM2との間に第3配管(C)が設けられている。
【0043】
第3配管12c(C)には、第2配管12b(A)の任意のポイントM2に近い側に第4チェック弁52d(E)が介設され、第1配管12a(B)の任意のポイントM1に近い側にパイロットチェック弁56(E)が介設されている。第4チェック弁52d(E)は、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を許容し、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を阻止する。
【0044】
パイロットチェック弁56(E)は、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を許容する。また、パイロットチェック弁56(E)は、所定圧力以上のパイロット圧が作用していないときは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を阻止し、所定圧力以上のパイロット圧が作用しているときは、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を許容する。換言すれば、パイロットチェック弁56(E)は、パイロット圧が作用していないときは、第1エア室42aから第2エア室42bに向かうエアの流通を許容すると共に、第2エア室42bから第1エア室42aに向かうエアの流通を阻止する逆止弁として機能し、パイロット圧が作用しているときは、エアがいずれの方向にも流通可能となり、逆止弁として機能しない。
【0045】
第1配管12a(B)の任意のポイントM1とバルブ16(H)との間の第1配管12a(B)に第5チェック弁52e(E)が介設されている。第5チェック弁52e(E)は、第1配管12a(B)の任意のポイントM1からバルブ16(H)に向かうエアの流通を許容し、バルブ16(H)から第1配管12a(B)の任意のポイントM1に向かうエアの流通を阻止する。第5チェック弁52e(E)とバルブ16(H)との間の第1配管12a(B)から分岐してパイロットチェック弁56(E)に至るパイロット流路58が設けられている。
【0046】
第2流体回路10Bのバルブ16(H)も、第1ポート60a~第5ポート60eを有し、第1位置と第2位置との間で切り換え可能な5ポート2位置電磁弁として構成される。第1ポート60aは第1配管12a(B)に繋がっており、第2ポート60bは第2配管12b(A)に繋がっている。
【0047】
第3ポート60cは第1サイレンサ63a(I)が付設された第1排気口64aに繋がっている。第4ポート60dはエア供給源62に繋がっており、第5ポート60eは第2サイレンサ63b(I)が付設された第2排気口64bに繋がっている。
【0048】
なお、
図4Aの一点鎖線で囲まれた部分、すなわち、タンク68(D)、第4チェック弁52d(E)とパイロットチェック弁56(E)を含む第3配管12c(C:バイパス流路)、第5チェック弁52e(E)を含む第1配管12a(B)の一部
、第2配管12b(A)の一部
及びパイロット流路58は、シリンダ30の内部に組み込まれている。
【0049】
第2流体回路10Bは、基本的には以上のように構成されるものであり、以下、
図4A~
図5Bを参照しながら、その作用について説明する。なお、
図4Aに示すように、バルブ16(H)が第1位置にあり、ピストンロッド40が最も引き込まれた状態を初期状態とする。
【0050】
先ず、
図4A及び
図4Bに示すように、駆動工程は、初期状態において、エア供給源62からのエアが第2配管12b(A)を介して第2エア室42bに供給され、第1エア室42a内のエアが第1配管12a(B)を介して第2排気口64bから外部に排出されるようになる。このとき、第2速度制御弁50b(G)では、エアが第2絞り弁54bによって流量が調整され、第1速度制御弁50a(F)では、第1チェック弁52aを介して第2エア室42bに供給される。
【0051】
これにより、第2エア室42bの圧力が上昇し始めるとともに、第1エア室42aの圧力が下降し始める。第2エア室42bの圧力がピストン
38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第1エア室42aの圧力を上回ると、ピストンロッド40の押し出し方向への移動が始まる。そして、
図4Bに示すように、ピストンロッド40は最大位置まで伸長し、大きな推力でその位置に保持される。
【0052】
ピストンロッド40が伸長してワークの位置決め等の作業が行われた後、
図5Aに示すように、バルブ16(H)が第1位置から第2位置に切り換えられる。すなわち、ピストンロッド40の復帰工程が開始される。
【0053】
復帰工程では、
図5A及び図5Bに示すように、エア供給源62からのエアが第5チェック弁52e(E)とバルブ16(H)との間の第1配管12a(B)内に流れ込み、第5チェック弁52e(E)によって流れを阻まれた該第1配管12a(B)内のエアの圧力が上昇する。そして、第1配管12a(B)に接続されたパイロット流路58の圧力も所定以上になり、パイロットチェック弁56(E)が逆止弁として機能しなくなる。
【0054】
パイロットチェック弁56(E)が逆止弁としての機能を失うと、第2エア室42bに蓄積されたエアの一部は、第2配管12b(A)の任意のポイントM2を経て、第4チェック弁52d(E)とパイロットチェック弁56(E)を含む第3配管12c(C:バイパス流路)を通り、第1配管12a(B)の任意のポイントM1から第1エア室42aに向けて供給される。それと共に、第2エア室42bに蓄積されたエアの他の一部は、第2配管12b(A)を介して第1排気口64aから外部に排出される。このとき、第1速度制御弁50a(F)では、エアが第1絞り弁54aによって流量が調整され、第2速度制御弁50b(G)では、第2チェック弁52bを介してバルブ16に向けて流通する。これにより、第2エア室42bの圧力が下降し始めるとともに、第1エア室42aの圧力が上昇し始める。このとき、第1エア室42aに向けて供給されるエアは、主にタンク68(D)に蓄積される。
【0055】
第2エア室42bの圧力が減少し、第1エア室42aの圧力が上昇して、第2エア室42bの圧力が第1エア室42aの圧力に等しくなると、第4チェック弁52d(E)の作用により、第2エア室42bのエアが第1エア室42aに向けて供給されなくなり、第1エア室42aの圧力の上昇が止まる。一方、第2エア室42bの圧力は下降し続ける。そして、第1エア室42aの圧力がピストン38の静止摩擦抵抗に打ち勝つ分だけ第2エア室42bの圧力を上回ると、ピストンロッド40の引き込み方向への移動が始まる。
【0056】
ピストンロッド40が引き込み方向へ移動を始めると、第1エア室42aの容積が増加するため、第1エア室42aの圧力は下降するが、タンク68(D)の存在によって第1エア室42aの容積は実質的に大きなものとなっており、圧力が下降する割合は小さい。そして、第2エア室42bの圧力はそれより大きな割合で下降するので、第1エア室42aの圧力が第2エア室42bの圧力を上回る状態は継続する。また、一旦、移動を始めたピストン38の摺動抵抗は静止状態でのピストン38の摩擦抵抗よりも小さいので、ピストンロッド40の引き込み方向への移動は支障なく行われる。こうして、ピストンロッド40が最も引き込まれた初期状態に戻る。再びバルブ16(H)が切り換えられるまでこの状態が維持される。
【0057】
次に、本実施の形態に係る選定システム100について、
図6~
図19を参照しながら説明する。以下の説明では、第2配管12bを配管A、第1配管12aを配管B、第3配管12cを配管C、タンク68をタンクD、第1速度制御弁50aを速度制御弁F、第2速度制御弁50bを速度制御弁G、バルブ16をバルブH、サイレンサ63をサイレンサIと記す。また、第1流体回路10Aに適用した第3チェック弁52c、第2流体回路10Bに適用した第4チェック弁52d、第5チェック弁52e及びパイロットチェック弁56をそれぞれチェック弁Eと記す。
【0058】
選定システム100は、
図6に示すように、各種データベースDB1~DB8と、コンピュータ102と、入力装置104(キーボード、マウス等)と、ディスプレイ106とを有する。
【0059】
各種データベースの内訳は、例えばシリンダデータベースDB1、配管データベースDB2、タンクデータベースDB3、速度制御弁データベースDB4、チェック弁データベースDB5、バルブデータベースDB6、サイレンサデータベースDB7、機器組合せデータベースDB8等が挙げられる。
【0060】
シリンダデータベースDB1は、シリンダ30に関するデータが、例えばサイズ(例えばボア径D、ロッド径d)の小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。シリンダ30に関するデータとしては、例えば
図7Aに示すように、品番、ボア径D、ロッド径d、固定絞り音速コンダクタンスC0、静止摩擦力Fs、動摩擦力Fd、クーロン摩擦係数、ロッド、ピストン質量、シリンダ最低使用圧力Pmin等が挙げられる。
【0061】
配管データベースDB2は、配管(配管A、配管B、配管C)に関するデータが、例えばサイズ(例えば配管外径、配管内径)の小さい順に配列され、それぞれ品番毎に区分けされて格納されている。配管に関するデータとしては、例えば
図7Bに示すように、品番、配管外径De、配管内径Di、材質等が格納されている。
【0062】
タンクデータベースDB3は、タンクDに関するデータが、例えば容積の小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。タンクDに関するデータとしては、例えば
図7Cに示すように、品番、容積、サイズ(最大外径、最大長さ)等が格納されている。
【0063】
速度制御弁データベースDB4は、速度制御弁F及び速度制御弁Gに関するデータが、例えばサイズの小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。速度制御弁F、Gに関するデータとしては、例えば
図8Aに示すように、品番、サイズ、音速コンダクタンス等が格納されている。
【0064】
チェック弁データベースDB5は、チェック弁Eに関するデータが、例えばサイズの小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。チェック弁Eに関するデータとしては、例えば
図8Bに示すように、品番、サイズ、音速コンダクタンス等が格納されている。
【0065】
バルブデータベースDB6は、バルブHに関するデータが、例えばサイズの小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。バルブHに関するデータは、例えば
図8Cに示すように、品番、サイズ、音速コンダクタンス、応答時間等が格納されている。
【0066】
サイレンサデータベースDB7は、サイレンサIに関するデータが、例えばサイズの小さい順に配列され、それぞれ品番が付されて格納されている。サイレンサIに関するデータは、例えば
図8Dに示すように、品番、サイズ、音速コンダクタンス等が格納されている。
【0067】
機器組合せデータベースDB8は、例えば
図9に示すように、各種機器の組合せデータが配列され、それぞれ組合せNO.が付されて格納されている。組合せデータは、例えば
図1Aに示す第1流体回路10A並びに
図4Aに示す第2流体回路10Bに沿って示すと、配管A、配管B、配管C、タンクD、チェック弁E、速度制御弁F及び速度制御弁Gに対応して各サイズが配列されたデータ形態となっている。各組合せデータは、必ず1つの機器のサイズが異なるように構成されている。
【0068】
なお、バルブHについては、選定した速度制御弁と同じ流量特性を有するバルブHをバルブデータベースDB6から選定する。この選定は、例えばオペレータが入力装置104を使用して選定する。サイレンサIについても、選定した速度制御弁の2倍の流量特性を有するサイレンサIをサイレンサデータベースDB7から選定する。この選定も、例えばオペレータが入力装置104を使用して選定する。
【0069】
もちろん、
図10に示す第2の機器組合せデータベースDB8aに示すように、バルブH及びサイレンサIについても、他の機器と同様に、組合せNO.に対応したサイズを登録してもよい。この場合、バルブH及びサイレンサIの選定が自動的に行われるため、オペレータの入力操作によるバルブH及びサイレンサIの選定を省略することができる。
【0070】
一方、コンピュータ102は、
図6に示すように、演算部110と、記憶部112と、入出力インターフェース114等を有する。演算部110は、CPU等を備えるプロセッサを有し、プロセッサが記憶部112に記憶されるプログラムを実行することにより各種機能を実現する。
【0071】
本実施の形態において、演算部110は、シリンダ選定処理部120と、条件入力部122と、第1組合せ選定処理部124Aと、第2組合せ選定処理部124Bと、特性計算処理部126と、第1再選定処理部128Aと、第2再選定処理部128Bと、バルブ選定処理部130と、サイレンサ選定処理部132と、開度別演算処理部134と、選定結果出力部136と、通信制御部138として機能する。
【0072】
なお、記憶部112には、例えば揮発性メモリと、不揮発性メモリとが備えられている。揮発性メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等により構成されている。
【0073】
シリンダ選定処理部120は、オペレータの操作入力に基づいて、先ず、シリンダデータベースDB1から、例えばシリンダタイプ(丸形、角形、薄形、ガイド付き等)の情報を読み出し、シリンダ品番と共にディスプレイ106に表示する。もちろん、入力されたボア径、シリンダ長さ等に基づいて、シリンダデータベースDB1から適合するシリンダ30を選定し、シリンダ品番と共にディスプレイ106に表示してもよい。さらに、シリンダ選定処理部120は、オペレータの操作に基づいて入力されたシリンダ品番を記憶部112に格納する。
【0074】
条件入力部122は、入力装置104を通じて入力された各種パラメータを通信制御部138を介して記憶部112に格納する。各種パラメータは、用途/動作方向条件(用途:搬送、圧入、クランプ、取付姿勢/駆動工程方向:水平/押出、水平/引込、垂直上向/上昇、垂直下向/下降)、ストローク/圧力条件(ストローク、上限ストローク時間Tmax、供給圧力PS)、配管条件(配管長さ(左)L1、配管長さ(右)L2)、負荷条件(駆動工程負荷質量Mw、復帰工程負荷質量Mr、圧入力、クランプ力、外部ガイド:不使用、使用転がり、使用すべり、任意、摩擦係数)等が挙げられる。
【0075】
第1組合せ選定処理部124A及び第2組合せ選定処理部124Bは、機器組合せデータベースDB8から組合せNO.を小さい順に読み出して、読み出した組合せNO.に対応する配管A、配管B、配管Cの各データを配管データベースDB2から読み出す。また、第1組合せ選定処理部124A及び第2組合せ選定処理部124Bは、読み出した組合せNO.に対応するタンクDのデータをタンクデータベースDB3から読み出し、チェック弁Eのデータをチェック弁データベースDB5から読み出す。このとき、第1流体回路10Aに対しては、第3チェック弁52cに対応したチェック弁Eのデータが読み出され、第2流体回路10Bに対しては、第4チェック弁52d、第5チェック弁52e及びパイロットチェック弁56に対応したチェック弁Eのデータが読み出される。また、第1組合せ選定処理部124A及び第2組合せ選定処理部124Bは、読み出した組合せNO.に対応する速度制御弁F、速度制御弁Gの各データを速度制御弁データベースDB4から読み出す。そして、第1組合せ選定処理部124A及び第2組合せ選定処理部124Bは、上述の各種データを読み出した後、特性計算処理部126を起動する。
【0076】
特性計算処理部126は、選定されたシリンダ駆動システム(流体回路10)の各種特性をシミュレーションにて求める。このシミュレーションは、
図11A~
図11C並びに
図12A~
図12Dに示すシリンダ30、配管A、配管B、配管C、タンクD、チェック弁E、速度制御弁F及び速度制御弁G等の基礎方程式を連立して数値計算を行う。
【0077】
すなわち、特性計算処理部126は、上述したシリンダ、配管、タンク、チェック弁、速度制御弁の各サイズ等に基づいてシミュレーションを実施することで、駆動工程でのストローク時間Ts及び復帰工程での復帰工程後圧力Prを得る。必要があれば、さらにバルブ及びサイレンサを含めて数値計算を行って、駆動工程でのストローク時間Ts及び復帰工程での復帰工程後圧力Prを得る。
【0078】
具体的には、
図11Aに示すシリンダ駆動システムの物理モデルは、
図11Bの絞りの基礎方程式として、絞りの
質量流量qmは式(1a),(1b)で表すことができる。つまり、チョーク流れの場合、すなわち、p2/p1≦bであるとき、式(1a)で表され、亜音速流れの場合、すなわち、p2/p1>bであるとき、式(1b)で表される。
【0079】
図11Bに示す式(1a),(1b)から速度制御弁、バルブ、サイレンサ等の
質量流量の式が得られる。空気の温度変化を考慮すると、
図11Cのシリンダの基礎方程式として、シリンダについて状態方程式(2)~(4)、エネルギ方程式(5)~(7)及び運動方程式(8)が成り立つ。
【0080】
図12Aの管路モデルについて、
図12Bにおける管路(配管)の基礎方程式は連続式(9)、状態方程式(10)、運動方程式(11)及びエネルギ方程式(12)として表される。
【0081】
図12Cのように管路をn個に分割して、i番目の要素について考えると基礎方程式は、
図12Dに示すように、連続式(13)、状態方程式(14)、運動方程式(15)及びエネルギー方程式(16)として表される。なお、
図11A~
図11C並びに
図12A~
図12Dに示す基礎方程式の記号及び添字については、
図13に説明が記載されている。
【0082】
また、特性計算処理部126でのシミュレーション計算によるグラフを
図14に示す。
図14において、
点線L1はピストン38の変位を示し、
一点鎖線L2はシリンダ30のヘッド側圧力を示し、実線L3はシリンダ30のロッド側圧力を示す。Tsは駆動工程でのストローク時間、Prは復帰工程での復帰工程後圧力を示す。
【0083】
一方、第1再選定処理部128Aは、選定されたシリンダ30並びに選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下である場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う。すなわち、第1再選定処理部128Aは、第1組合せ選定処理部124Aで使用する選定のためのインデックス(組合せNO.)を+1して、第1組合せ選定処理部124Aを起動する。なお、上記一部の機器は、配管A、配管B、配管C、タンクD、チェック弁E、速度制御弁F及び速度制御弁Gである。
【0084】
第2再選定処理部128Bは、選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後圧力Prが前回選定された機器による復帰工程後圧力Pr以上の場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う。すなわち、第2再選定処理部128Bは、第2組合せ選定処理部124Bで使用する選定のためのインデックス(組合せNO.)を+1して、第2組合せ選定処理部124Bを起動する。
【0085】
バルブ選定処理部130は、オペレータの操作入力に基づいて、先ず、バルブデータベースDB6から、例えば外部パイロットバルブ回路(単体の直接配管形、単体のベース配管形等)の情報を読み出し、バルブ品番と共にディスプレイ106に表示する。さらに、バルブ選定処理部130は、オペレータの操作に基づいて入力されたバルブ品番を記憶部112に格納する。
【0086】
サイレンサ選定処理部132は、バルブ選定処理部130によって選定されたバルブHに接続可能なサイレンサIを選定する。この選定は、例えばバルブ-サイレンサ対応テーブル等を使用して選定する。バルブ選定処理部130は、選定されたサイレンサIの品番を記憶部112に格納する。
【0087】
開度別演算処理部134は、速度制御弁Gの開度別に、ピストン38の駆動工程におけるストローク時間Ts、平均速度、終端速度、運動エネルギー/許容エネルギー、90%推力確立時間等を演算する。また、開度別演算処理部134は、速度制御弁Fの開度別に、ピストン38の復帰工程における復帰工程後圧力Pr、ストローク時間、平均速度、終端速度、運動エネルギー/許容エネルギー等を演算する。
【0088】
選定結果出力部136は、各種選定処理部によって選定された結果を通信制御部138を通じてディスプレイ106に出力し、ディスプレイ106に選定結果を表示する。
【0089】
選定結果としては、例えば品番、削減率、削減空気消費量、空気消費量、駆動工程(速度制御弁G)に関する結果、復帰工程(速度制御弁F)に関する結果、横荷重/許容横荷重である。
【0090】
品番は、選定されたシリンダ、バルブ、配管、タンク、速度制御弁、チェック弁、サイレンサに対応する各品番である。
【0091】
駆動工程(速度制御弁G)に関する結果は、開度別のストローク時間Ts、平均速度、終端速度、運動エネルギー/許容エネルギー、90%推力確立時間等である。復帰工程(速度制御弁F)に関する結果は、復帰工程後圧力Pr、ストローク時間Ts、平均速度、終端速度、運動エネルギー/許容エネルギー等である。
【0092】
通信制御部138は、上述した各種選定処理部等からの指示に基づいて、入出力インターフェース114を介して、各種データベースからシリンダ、配管、機器等のデータをダウンロードし、記憶部112に記憶する。また、通信制御部138は、入力装置104によって入力されたデータを、入出力インターフェース114を介して記憶部112に記憶する。また、通信制御部138は、上述した各種選定処理部等の処理によって記憶部112に格納されたデータ(例えばグラフデータや表データ等)を入出力インターフェース114を介してディスプレイ106に出力する。
【0093】
次に、本実施の形態に係る選定システム100の処理動作について、
図15~
図17を参照しながら説明する。
【0094】
先ず、
図15のステップS1において、シリンダ選定処理部120は、オペレータの操作入力に基づいて、シリンダデータベースDB1から、例えばシリンダタイプ(丸形、角形、薄形、ガイド付き等)の情報を読み出し、シリンダ品番と共にディスプレイ106に表示する。シリンダ選定処理部120は、オペレータの操作に基づいて入力されたシリンダ品番を記憶部112に格納する。
【0095】
ステップS2において、条件入力部122は、入力装置104を通じて入力された各種条件を、通信制御部138を介して記憶部112に格納する。
【0096】
ステップS3において、第1組合せ選定処理部124Aは、機器組合せデータベースDB8から組合せNO.を小さい順に選択し、選択した組合せNO.に対応する配管A、配管B、配管Cの各データを配管データベースDB2から読み出す。また、第1組合せ選定処理部124Aは、選択した組合せNO.に対応するタンクDのデータをタンクデータベースDB3から読み出し、チェック弁Eのデータをチェック弁データベースDB5から読み出す。また、第1組合せ選定処理部124Aは、選択した組合せNO.に対応する速度制御弁F、速度制御弁Gの各データを速度制御弁データベースDB4から読み出す。その後、第1組合せ選定処理部124Aは、特性計算処理部126を起動する。
【0097】
ステップS4において、特性計算処理部126は、選定されたシリンダ30、配管A、配管B、配管C、タンクD、チェック弁E、速度制御弁F、速度制御弁Gの各サイズ等に基づいてシミュレーションを実施することで、駆動工程でのストローク時間Ts及び復帰工程での復帰工程後圧力Prを得る。
【0098】
ステップS5において、第1再選定処理部128Aは、上記ステップS4にて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmax以下であるか否かを判別する。この判別結果が肯定であれば(ステップS5:YES)、次のステップS6に進み、第1再選定処理部128Aは、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下であるか否かを判別する。
【0099】
上記ステップS5での判別結果が否定(ステップS5:NO)、あるいは、ステップS6での判別結果が肯定であれば(ステップS6:YES)、ステップS7に進み、機器のサイズアップによる再選定を行う。すなわち、第1再選定処理部128Aは、第1組合せ選定処理部124Aで使用する選定のためのインデックス(組合せNO.)を+1し、第1組合せ選定処理部124Aを起動して、ステップS3以降の処理を繰り返す。
【0100】
上述したステップS3~S6の処理においては、例えば
図16に示すように、機器の選定が行われる。すなわち、例えば組合せNO.=1~5にかけては、動作しないことが判明し、選定候補から外れる。組合せNO.=6~11のうち、NO.6及び11については、ストローク時間Tsが上限ストローク時間Tmax以下であるが、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下であるため、選定候補から外れる。NO.7~10についても、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下であるため、選定候補から外れる。
【0101】
同様に、組合せNO.=12~14にかけては、動作しないことが判明し、選定候補から外れる。組合せNO.=15~17については、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下であるため、選定候補から外れる。そして、NO.18については、ストローク時間Tsが上限ストローク時間Tmax以下であり、且つ、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pminより大きいため、選定候補となる。
【0102】
一方、
図15の上記ステップS6での判別結果が否定であれば(ステップS6:NO、
図16の例では、NO.18の段階)、
図17のステップS8に進み、バルブ選定処理部130は、オペレータの操作入力に基づいて、先ず、バルブデータベースDB6から、例えば外部パイロットバルブ回路(単体の直接配管形、単体のベース配管形等)の情報を読み出し、バルブHの品番と共にディスプレイ106に表示する。このとき、バルブ選定処理部130は、オペレータの操作に基づいて入力された例えばバルブHの品番を記憶部112に格納する。
【0103】
ステップS9において、サイレンサ選定処理部132は、バルブ選定処理部130によって選定されたバルブHに接続可能なサイレンサIをサイレンサデータベースDB7から選定する。このとき、サイレンサ選定処理部132は、オペレータの操作に基づいて入力された例えばサイレンサIの品番を記憶部112に格納する。
【0104】
ステップS10において、第2組合せ選定処理部124Bは、機器組合せデータベースDB8のうち、上記ステップS3において選択していない組合せNO.を小さい順に選択し、選択した組合せNO.に対応する配管A、配管B、配管Cの各データを配管データベースDB2から読み出す。また、第2組合せ選定処理部124Bは、選択した組合せNO.に対応するタンクDのデータをタンクデータベースDB3から読み出し、チェック弁Eのデータをチェック弁データベースDB5から読み出す。また、第2組合せ選定処理部124Bは、選択した組合せNO.に対応する速度制御弁F、速度制御弁Gの各データを速度制御弁データベースDB4から読み出す。その後、第2組合せ選定処理部124Bは、特性計算処理部126を起動する。
【0105】
ステップS11において、特性計算処理部126は、選定されたシリンダ30、配管A、配管B、配管C、タンクD、チェック弁E、速度制御弁F、速度制御弁G、バルブH及びサイレンサIの各サイズ等に基づいてシミュレーションを実施することで、駆動工程でのストローク時間Ts及び復帰工程での復帰工程後圧力Prを得る。
【0106】
ステップS12において、第2再選定処理部128Bは、上記ステップS11にて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmax以下であるか否かを判別する。この判別結果が肯定であれば、次のステップS13に進み、第2再選定処理部128Bは、現在の組合せNO.を「NO.X」、1つ前の組合せNO.を「NO.X-1」としたとき、NO.X-1の復帰工程後圧力Prが、NO.Xの復帰工程後圧力Pr以下であるか否かを判別する。
【0107】
上記ステップS12での判別結果が否定(ステップS12:NO)、あるいは、上記ステップS13での判別結果が肯定(ステップS13:YES)であれば、ステップS14に進み、第2再選定処理部128Bは、機器のサイズアップによる再選定を行う。すなわち、第2再選定処理部128Bは、第2組合せ選定処理部124Bで使用する選定のためのインデックス(組合せNO.)を+1して、第2組合せ選定処理部124Bを起動し、ステップS10以降の処理を繰り返す。
【0108】
そして、第2組合せ選定処理部124Bは、ステップS13での判別結果が否定であれば、ステップS15において、現在の組合せNO.の1つ前の組合せNO.に対応する機器の組合せを最終的に選定する。
【0109】
すなわち、上述したステップS11~S14の処理においては、例えば
図18に示すように、機器の選定が行われる。すなわち、例えば組合せNO.=18~21については、ストローク時間Tsが上限ストローク時間Tmax以下であり、且つ、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pminより大きいため、いずれも選定候補となる。しかし、組合せNO.=18~21のうち、ある組合せNO.に対応する復帰工程後圧力Prが、1つ前の組合せNO.に対応する復帰工程後圧力Pr未満である組合せNO.はNO.21のみである。従って、ステップS15では、組合せNO.21の1つ前の組合せNO.20を最終的に選定する。
【0110】
その後、
図19のステップS16において、開度別演算処理部134は、特性計算処理部126を起動して、速度制御弁
F及びGの開度別に、ピストン38の駆動工程におけるストローク時間Ts、平均速度、終端速度、運動エネルギー/許容エネルギー、90%推力確立時間等を演算する。
【0111】
ステップS17において、予め設定された開度別のシミュレーションが終了した否かを判別する。終了していなければ(ステップS17:NO)、ステップS18に進み、開度別演算処理部134は、速度制御弁F及びGの開度を変更し、ステップS16以降の処理を実施する。
【0112】
この開度別の演算では、予め設定された開度別のシミュレーションが実施される。もちろん、全ての開度についてのシミュレーションを実施してもよいし、予め設定された複数の開度についてのシミュレーションを実施してもよい。
【0113】
そして、上記ステップS17において、予め設定された開度別のシミュレーションが終了したと判別された場合は(ステップS17:YES)、ステップS19に進み、選定結果出力部136は、各種選定部によって選定された結果を通信制御部138を通じてディスプレイ106に出力し、ディスプレイ106に選定結果を表示する。
【0114】
このように、本実施の形態に係る流体回路用選定システム100は、少なくともシリンダ30と、シリンダ30に接続される複数の機器とを有する流体回路10のための流体回路用選定システムであって、シリンダ30を選定するシリンダ選定処理部120と、予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースDB8と、データベースDB8から複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して機器を選定する組合せ選定処理部124A(124B)と、組合せ選定処理部124A(124B)で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下である場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う再選定処理部128A(128B)と、を有する。
【0115】
流体圧シリンダ駆動装置のような排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路10を実現するためには、適正な機器のサイズを選定しなければ、要求条件と仕様を満たすことは難しい。
【0116】
すなわち、上述のような排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路10において、駆動装置(速度制御弁、配管、チェック弁、バルブ、サイレンサ、タンク等)のサイズによっては、性能が低下するおそれがある。
【0117】
そこで、予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースDB8を使用して機器を選定する。さらに、組合せ選定処理部124A(124B)で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下である場合に、前記機器のサイズアップによる再選定を行う。これにより、排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路に使用される駆動装置のサイズを適正に選定することができる。
【0118】
本実施の形態は、複数の機器に含まれるバルブHを入力操作に従って選定するバルブ選定処理部130と、複数の機器に含まれるサイレンサIを入力操作に従って選定するサイレンサ選定処理部132と、を有する。
【0119】
データベースDB8にバルブHの情報やサイレンサIの情報が格納されていない場合に有効である。また、1つのバルブHで様々なサイズの機器に対応できる場合、いつも同じバルブHを選定するよりは、入力操作によって、他のバルブHを適用してみることで、性能向上等を確認することができる。
【0120】
また、本実施の形態に係る流体回路用選定システム100は、少なくともシリンダ30と、シリンダ30に接続される複数の機器とを有する流体回路のための流体回路用選定システムであって、シリンダ30を選定するシリンダ選定処理部120と、予め複数の機器の組み合わせ情報が少なくともサイズ順に登録されたデータベースDB8と、データベースDB8から複数の機器の組み合わせ情報をサイズ順に読み出して機器を選定する組合せ選定処理部124A(124B)と、組合せ選定処理部124A(124B)で選定された一部の機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、復帰工程後圧力Prが最低使用圧力Pmin以下である場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う第1再選定処理部128Aと、選定された全ての機器を含めてシミュレーションにて得られたストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後圧力Prが前回選定された機器による復帰工程後圧力Pr以上の場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う第2再選定処理部128Bと、を有する。
【0121】
これにより、排気エアを再利用した省エネタイプの流体回路に使用される駆動装置のサイズを適正に選定することができる。特に、第1再選定処理部128Aに加えて、第2再選定処理部128Bによって、機器の選定に関する最適化を行うことができる。すなわち、ストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超える場合、あるいは、今回選定された機器による復帰工程後圧力Prが前回選定された機器による復帰工程後圧力Pr以上の場合に、機器のサイズアップによる再選定を行う。その結果、ストローク時間Tsが予め設定された上限ストローク時間Tmaxを超えることなく、且つ、上限ストローク時間Tmaxに最も近い時間に設定することができ、しかも、復帰工程後圧力Prが最も大きい機器の組み合わせを選定することができる。
【0122】
本実施の形態において、第2再選定処理部128Bは、入力操作に従って選定されたバルブH及びサイレンサIを除く機器について、サイズアップによる再選定を行う。
【0123】
バルブHやサイレンサIについては、すでに入力操作によって選定されているため、第2再選定処理部128Bでの機器の最適化については、バルブHやサイレンサIを固定とした状態で実施し、バルブH及びサイレンサIを除く機器について、サイズアップによる再選定を行う。これにより、選定時間の短縮化を図ることが可能となる。
【0124】
本実施の形態において、流体回路10は、ピストン38によって区画される第1エア室42aと第2エア室42bとを有するシリンダ30と、ピストン38の駆動工程と復帰工程とで切り換わるバルブ16(H)と、第1エア室42aとバルブ16(H)間の第1配管12a(B)と、第2エア室42bとバルブ16(H)間の第2配管12b(A)と、を有し、第1配管12a(B)のうち、第1エア室42a寄りにタンク68(D)が設けられ、第2配管12b(A)に、2つの速度制御弁50a(F)、50b(G)が直列に設置されている。
【0125】
ピストン38の駆動工程では、バルブ16(H)から第2エア室42bへの供給流量を一方の速度制御弁50b(G)の可変絞り弁54bで調整することができ、ピストン38の復帰工程では、第2エア室42bからバルブ16(H)への排気流量を他方の速度制御弁50a(F)の可変絞り弁54aで調整することができる。すなわち、シリンダ30への供給流量とシリンダ30からの排気流量とをそれぞれ独立に調整することができる。これは流体回路10の要求特性である駆動工程でのストローク時間Tsの短縮化、復帰工程後での流体圧シリンダ内の圧力Prの増大化につながる。しかも、第2配管12b(A)に、2つの速度制御弁50a(F)、50b(G)を直列に設置するだけでよいため、構造の簡単化も図ることができる。
【0126】
本発明に係る流体回路用選定システム及び流体回路用選定方法は、上述の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することのない範囲で、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【符号の説明】
【0127】
10A…第1流体回路 10B…第2流体回路
12a…第1配管(B) 12b…第2配管(A)
12c…第3配管(C) 16…バルブ(H)
30…シリンダ 50a…第1速度制御弁(F)
50b…第2速度制御弁(G) 52a~52e…チェック弁(E)
56…パイロットチェック弁(E) 63…サイレンサ(I)
64…排気口 68…タンク(D)
100…選定システム 120…シリンダ選定処理部
122…条件入力部 124A…第1組合せ選定処理部
124B…第2組合せ選定処理部 126…特性計算処理部
128A…第1再選定処理部 128B…第2再選定処理部
130…バルブ選定処理部 132…サイレンサ選定処理部
134…開度別演算処理部 136…選定結果出力部
DB1…シリンダデータベース DB2…配管データベース
DB3…タンクデータベース DB4…速度制御弁データベース
DB5…チェック弁データベース DB6…バルブデータベース
DB7…サイレンサデータベース DB8…機器組合せデータベース