(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】冷凍冷蔵庫等の開扉装置
(51)【国際特許分類】
F25D 23/02 20060101AFI20230123BHJP
【FI】
F25D23/02 306M
F25D23/02 306Q
(21)【出願番号】P 2018110016
(22)【出願日】2018-06-08
【審査請求日】2021-05-07
(31)【優先権主張番号】P 2018025858
(32)【優先日】2018-02-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514137573
【氏名又は名称】ガリレイパネルクリエイト株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】593126167
【氏名又は名称】佐伯金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【氏名又は名称】渡邉 彰
(72)【発明者】
【氏名】大橋 克麻
(72)【発明者】
【氏名】黒田 義憲
(72)【発明者】
【氏名】羽淵 崇之
(72)【発明者】
【氏名】延原 薫
【審査官】西山 真二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04911508(US,A)
【文献】実開平02-100190(JP,U)
【文献】実公昭54-26932(JP,Y2)
【文献】独国特許出願公開第102015006213(DE,A1)
【文献】特開平09-088407(JP,A)
【文献】特開2004-176935(JP,A)
【文献】特開2001-033150(JP,A)
【文献】特開平09-014815(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02860479(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25D 23/02
E05F 11/16 - 11/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱パネルよりなりかつ所定箇所に方形状の開口が形成されている壁と、前記壁における前記開口の縁部に取り付けられている開口枠と、一方の側縁部が前記開口枠の一方の側枠部にヒンジを介して取り付けられている断熱扉と、前記断熱扉の後面の縁部および前記開口枠のうちいずれか一方に同他方に密着しうるように設けられているパッキンとを備えている冷凍冷蔵庫等において、前記断熱扉を前記パッキンが前記開口枠または前記断熱扉の後面の縁部に密着している閉状態から開けるための開扉装置であって、
前記開口枠における他方の側枠部の前面の
下端部にブラケットを介して左右方向にのびる軸線周りに回動自在に取り付けられている基軸部、前記基軸部から
上方にのびている押圧アーム部、および前記基軸部から前記押圧アーム部と所定角度をなすように前方にのびている
フットレバー部を有しており、前記
フットレバー部を
足で踏んで前記押圧アーム部と反対側の作動方向に回動させることにより前記押圧アーム部が前方に傾動させられる開扉部材と、
前記断熱扉における戸先側縁部の所定箇所に設けられかつ前記押圧アーム部が前方に傾動させられた際に前記押圧アーム部の先端側部分と接触して前方に押圧される被押圧部
と、
前記フットレバー部を作動方向と逆方向に回動するように付勢する付勢部材とを備えており、
前記押圧アーム部は、略垂直帯板状のものであって、平坦な前面を有しており、
前記被押圧部は、前記押圧アーム部が前方に傾動させられた際に前記押圧アーム部の前面の先端側部分と接触しうるように、前記断熱扉における戸先側縁面の所定高さ位置に取り付けられた被押圧部材によって構成されており、
前記押圧アーム部が前方に傾動させられるのに伴い、前記押圧アーム部の前面の先端側部分における前記被押圧部材との接触箇所が、前記押圧アーム部の先端に向かって移動するようになっている、冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【請求項2】
前記ブラケットが、前記開口枠における前記他方の側枠部の前面と、前記壁における前記他方の側枠部に隣接する箇所に取り付けられた取付フレームの前面とにまたがって取り付けられており、
前記ブラケット、前記取付フレーム、および前記開扉部材は、前記断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも使用しうるように、それぞれ垂直中心線に対して左右対称となされている、請求項
1記載の冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【請求項3】
前記被押圧部材が、前記断熱扉の戸先側縁面の所定高さ位置に扉側ブラケットを介して取り付けられており、
前記被押圧部材および前記扉側ブラケットは、前記断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも上下反転させて使用しうるように、前後方向にのびる水平中心線に対して上下対称となされている、請求項
1または2記載の冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、断熱パネルよりなる壁に形成された開口の側縁部に断熱扉が取り付けられている冷凍冷蔵庫等において、前記断熱扉を閉状態から開けるために用いられる開扉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば断熱パネルによって壁や天井等が構成されているプレハブ冷凍冷蔵庫において、壁の所定箇所に方形状の開口が形成され、壁における開口の縁部に開口枠が取り付けられ、開口枠の一方の側枠部に断熱扉の一側部がヒンジによって取り付けられており、開口枠の前側面に鋼材よりなる磁着部が設けられているとともに、断熱扉の後面の縁部に磁着部に磁着しうるマグネットパッキンが設けられており、また、断熱扉の前面の所定位置にハンドルが設けられ、このハンドルを掴んで手前に引くことにより、断熱扉が閉状態から前方に開けられるようになっているものが知られている(例えば下記特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、開口を通って出入庫する際、荷物等で手が塞がっていることも少なくなく、一旦荷物等を離してからハンドルを手で掴んで断熱扉を開けた後、再び荷物等を手にするのは非常に不便であった。
【0004】
ハンドル等を手で掴んで操作することなく断熱扉を開けることができる冷蔵庫の開扉装置として、例えば下記の特許文献2に記載のものが提案されている。
この開扉装置は、冷蔵庫本体に、モータ等によって進退駆動させられる押圧ロッドを備えた開扉ユニットが設置されてなるものであって、例えば断熱扉の前面に設けられたスイッチを操作することによって、開扉ユニットの押圧ロッドが前進駆動させられて断熱扉の縁部を押圧することにより断熱扉が開くようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平9-14815号公報
【文献】特開2001-33150号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2記載の開扉装置の場合、開扉ユニットの構造が複雑であり、コストが嵩むという問題があった。
また、開口枠を取り囲む壁や天井が断熱パネルによって構成されているプレハブ冷凍冷蔵庫等に上記特許文献2のような機械駆動式の開扉装置を設置する場合、開扉ユニットを断熱パネルに取り付ける必要が生じるため、取付構造が複雑となって、取付作業に手間がかかる上、断熱パネルの断熱性能が損なわれるおそれがあった。
【0007】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、ハンドル等を手で掴んで操作することなく断熱扉を容易に開けることができる上、構造が単純であってコストが嵩まず、開口枠を取り囲む断熱パネルの断熱性能を損なわずに簡単に設置することができる、冷凍冷蔵庫等の開扉装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記の目的を達成するために、以下の態様からなる。
なお、この発明を特定するに当たり、「冷凍冷蔵庫等」の語には、冷凍冷蔵庫、貯蔵庫、物流センター、食品加工室、低温倉庫、クリーンルーム、植物工場等が含まれるものとする。
また、この発明を特定するに当たり、「前」とは断熱扉が開く側(
図3,7の
各右側、
図4,8の
各下側)、「後」とは断熱扉が閉まる側(
図3,7の
各左側、
図4,8の
各上側)をそれぞれいうものとし、また、「左右」とは前から見た場合の左右(
図1,2,4,5
,6,8,9の各左右)をいうものとする。
【0009】
1)断熱パネルよりなりかつ所定箇所に方形状の開口が形成されている壁と、前記壁における前記開口の縁部に取り付けられている開口枠と、一方の側縁部が前記開口枠の一方の側枠部にヒンジを介して取り付けられている断熱扉と、前記断熱扉の後面の縁部および前記開口枠のうちいずれか一方に同他方密着しうるように設けられているパッキンとを備えている冷凍冷蔵庫等において、前記断熱扉を前記パッキンが前記開口枠または前記断熱扉の後面の縁部に密着している閉状態から開けるための開扉装置であって、
前記開口枠における他方の側枠部の前面の所定高さ位置にブラケットを介して左右方向にのびる軸線周りに回動自在に取り付けられている基軸部、前記基軸部から上方または下方にのびている押圧アーム部、および前記基軸部から前記押圧アーム部と所定角度をなすように前方にのびているレバー部を有しており、前記レバー部を前記押圧アーム部と反対側の作動方向に回動させることにより前記押圧アーム部が前方に傾動させられる開扉部材と、
前記断熱扉における戸先側縁部の所定箇所に設けられかつ前記押圧アーム部が前方に傾動させられた際に前記押圧アーム部の先端側部分と接触して前方に押圧される被押圧部とを備えている、冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0010】
2)前記基軸部が、前記他方の側枠部の前面の下端部に前記ブラケットを介して取り付けられており、前記押圧アーム部が前記基軸部から上方にのびており、前記レバー部が足で踏むことによって作動方向に回動させられるフットレバー部よりなる、上記1)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0011】
3)前記押圧アーム部の先端側部分および前記被押圧部のうちいずれか一方に、同他方と転がり接触させられる転動体が設けられている、上記1)または2)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0012】
4)前記被押圧部が、前記断熱扉の戸先側縁面の所定高さ位置に取り付けられた被押圧部材よりなる、上記1)~3)のいずれか1つの冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0013】
5)さらに、前記レバー部を作動方向と逆方向に回動するように付勢する付勢部材を備えている、上記1)~4)のいずれか1つの冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0014】
6)前記ブラケットが、前記開口枠における前記他方の側枠部の前面と、前記壁における前記他方の側枠部に隣接する箇所に取り付けられた取付フレームの前面とにまたがって取り付けられており、
前記ブラケット、前記取付フレーム、および前記開扉部材は、前記断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも使用しうるように、それぞれ垂直中心線に対して左右対称となされている、上記1)~5)のいずれか1つの冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【0015】
7)前記被押圧部が、前記断熱扉の戸先側縁面の所定高さ位置に扉側ブラケットを介して取り付けられた被押圧部材よりなり、
前記被押圧部材および前記扉側ブラケットは、前記断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも上下反転させて使用しうるように、前後方向にのびる水平中心線に対して上下対称となされている、上記1)~6)のいずれか1つの冷凍冷蔵庫等の開扉装置。
【発明の効果】
【0016】
上記1)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置にあっては、例えば足や腕などを使って開扉部材のレバー部を作動方向に回動させると、押圧アーム部が前方に傾動して断熱扉の被押圧部が前方に押圧され、それによって断熱扉が開くようになっている。つまり、上記1)の開扉装置によれば、ハンドル等を手で掴んで操作することなく、梃子の原理を利用して、断熱扉を容易に開けることができるので、利便性に優れている。
また、上記1)の開扉装置によれば、基軸部、押圧アーム部およびレバー部を有しかつブラケットを介して開口枠の他方の側枠部の前面に取り付けられている開扉部材と、断熱扉の戸先側縁部に設けられている被押圧部とによって構成されているため、構造が単純であって、コストが抑えられ、また、開口枠を取り囲む断熱パネルの断熱性能を損なわずに簡単に設置することができる。
【0017】
上記2)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、例えば荷物等で手が塞がっている場合でも、フットレバー部を足で踏むだけで断熱扉を開けることができるので、開扉操作が極めて容易であり、利便性が高い。
【0018】
上記3)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、押圧アーム部の先端側部分または被押圧部に転動体が設けられているので、前方に傾動する押圧アーム部の先端部分により被押圧部が押圧されて断熱扉が開く動作が、より滑らかに行われる。
【0019】
上記4)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、被押圧部が断熱扉の戸先側縁面に取り付けられた被押圧部材よりなるので、断熱扉自体を特別な構造とする必要がなく、容易に被押圧部を構成することができ、コストが抑えられる。
【0020】
上記5)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、押圧アーム部が前方に傾動するように作動方向に回動させられた状態のレバー部から足や腕などを離すと、付勢部材の付勢力によってレバー部が作動方向と逆方向に回動し、それによって押圧アーム部が側枠部の前面に沿う上向きまたは下向きの位置まで自動的に戻るため、断熱扉が閉まる際に押圧アーム部の先端部分と被押圧部とが干渉することがなく、また、押圧アーム部が人や物の通過の妨げとなるおそれがない。
【0021】
上記6)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、開扉部材の基軸部を開口枠における他方の側枠部の前面に取り付けるためのブラケットが、同側枠部の前面と、壁における同側枠部に隣接する箇所に取り付けられた取付フレームの前面とにまたがって取り付けられているので、開扉部材の取付強度が向上し、また、繰り返し使用しても変形したり破損したりし難く、耐久性が向上する。
また、上記6)の開扉装置によれば、ブラケット、取付フレーム、および開扉部材が、それぞれ垂直中心線に対して左右対称となされているので、これらの装置構成部材を、断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも使用することが可能であり、したがって、製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【0022】
上記7)の冷凍冷蔵庫等の開扉装置によれば、被押圧部を構成する被押圧部材および同部材を断熱扉の戸先側縁面の所定高さ位置に取り付ける扉側ブラケットが、前後方向にのびる水平中心線に対して上下対称となされているので、これらの装置構成部材を、断熱扉が右開きおよび左開きいずれの場合でも、上下反転させて使用することが可能であり、したがって、製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】この発明の第1の実施形態に係る開扉装置を備えたプレハブ式冷凍冷蔵庫の部分正面図である。
【
図4】
図1のIII-III線に沿う拡大断面図である。
【
図5】この発明の第2の実施形態に係る開扉装置を備えたプレハブ式冷凍冷蔵庫の部分正面図である。
【
図6】この発明の第3の実施形態に係る開扉装置の正面図である。
【
図9】同開扉装置を断熱扉が
左開きの場合に適用した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の実施形態を、
図1~
図9を参照しながら以下に説明する。
【0025】
[第1の実施形態]
図1~
図4には、この発明の第1の実施形態が示されている。第1の実施形態は、この発明をプレハブ式冷凍冷蔵庫の開扉装置に適用したものである。
【0026】
図1に示すように、プレハブ式冷凍冷蔵庫(1A)は、複数の断熱パネル(20)を連結してなる前壁(2)を有している。
図4に詳しく示すように、断熱パネル(20)は、例えば、ステンレス鋼板やアルミニウム板等よりなる2枚の表面板(201)の対向する縁部間にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂形材よりなる枠材(202)が介在固定されるとともに、両表面板(201)および枠材(202)によって形成された内部空間に合成樹脂発泡体やロックウール等よりなる芯材(203)が充填されてなる。
【0027】
前壁(2)の所定箇所には、縦長方形の開口(21)が形成されている。開口(21)は、その下縁が開放するように形成されている。前壁(2)における開口(21)の縁部には、開口枠(3)が取り付けられている。開口枠(3)は、上枠部材(3a)および左右側枠部材(3b)(3c)よりなる三方枠となされている。各枠部材(3a)(3b)(3c)は、前壁(2)の開口(21)の上縁面および左右側縁面をそれぞれ被覆している内側枠部(31)と、内側枠部(31)の前端縁部分から開口(21)と反対側に向かってのびかつ前壁(2)前面の開口(21)周縁部を被覆している前側枠部(32)とよりなる横断面略L形のものとなされている(
図4参照)。また、内側枠部(31)の後部から前壁(2)後面の開口(21)周縁部にかけて、アルミニウム板やステンレス鋼板等よりなる横断面L形の被覆部材(34)が取り付けられている。
【0028】
開口枠(3)の一方の側枠部(図では右側枠部(3c))に、上下2つのヒンジ(5)を介して、断熱扉(4)の一方の側縁部(図では右側縁部)が取り付けられている。この片開き式の断熱扉(4)によって、前壁(2)の開口(21)が開閉自在に閉塞されるようになっている。
図4に詳しく示すように、断熱扉(4)は、前壁(2)を構成している断熱パネル(20)と同様に、例えば、ステンレス鋼板やアルミニウム板等よりなる2枚の表面板(41)の対向する縁部間にポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等の合成樹脂形材よりなる枠材(42)が介在固定されるとともに、両表面板(41)および枠材(42)によって形成された内部空間に合成樹脂発泡体やロックウール等よりなる芯材(43)が充填されてなる。断熱扉(4)の下縁部には、ゴムやエラストマー等よりなるヒレ状の垂下パッキン(44)が取り付けられている。詳しい図示は省略したが、ヒンジ(5)は、断熱扉(4)を所定角度範囲内で開いた状態から自重によって閉扉しうる自閉機構を備えている。断熱扉(4)の上縁部および開口枠(3)の上枠部
材(3a)には、ドアセルファー(6)が設けられている。断熱扉(4)の前後各面には、戸先側縁部(図では左側縁部)の高さ中間位置に、ハンドル(7)が取り付けられている。
【0029】
図4に詳しく示すように、断熱扉(4)後面の上縁部および左右側縁部、より具体的には、断熱扉(4)の枠材(42)に後方開口凹状に形成されたパッキン取付部(421)に、軟質ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等よりなりかつ内部にゴム磁石等のマグネット(451)が収容されたマグネットパッキン(45)が取り付けられている。また、開口枠(3)の各枠部材(3a)(3b)(3c)における前側枠部(32)前面の開口(21)側部分に、鋼板等の磁性材料よりなる磁着部材(35)(磁着部)が設けられている。そして、断熱扉(4)が閉まる際、磁着部材(35)がマグネットパッキン(45)に磁着され、それによって前壁(2)の開口(20)が断熱扉(4)で密閉される。
【0030】
図2~
図4に詳しく示すように、開扉装置(10)は、開口枠(3)におけるヒンジ(5)が取り付けられていない方の側枠部(図では左側枠部材(3b))前面の下端部にブラケット(12)を介して左右方向にのびる軸線周りに回動自在に取り付けられている基軸部(11a)、基軸部(11a)から上方にのびている押圧アーム部(11b)、および基軸部(11a)から押圧アーム部(11b)と所定角度をなすように前方にのびているレバー部(11c)を有する開扉部材(11)を備えている。この開扉部材(11)のレバー部(11c)を、押圧アーム部(11b)と反対側の作動方向(図では下方)に回動させることにより、押圧アーム部(11b)が前方に傾動させられるようになっている。この実施形態では、レバー部は、足で踏むことによって作動方向に回動させられるフットレバー部(11c)よりなる。
また、開扉装置(10)は、断熱扉(4)における戸先側縁部(図では左側縁部)の下部に設けられかつ押圧アーム部(11b)が前方に傾動させられた際に押圧アーム部(11b)の先端側部分と接触して前方に押圧される被押圧部(13)を備えている。被押圧部は、断熱扉(4)の戸先側縁面(図では左側縁面)の下部に取り付けられた被押圧部材(130)よりなる。
さらに、開扉装置(10)は、フットレバー部(11c)を作動方向と逆方向(図では上方)に回動するように付勢するねじりコイルばね(14)(付勢部材)を備えている(
図3参照)。
【0031】
ブラケット(12)は、垂直板状の被取付部(121)と、被取付部(121)の下端に連なって設けられかつ前方に開口したコ字形の横断面を有する保持部(122)と、被取付部(121)の反開口(20)側の縁(図では左側縁)から後方にのびているカバー部(123)とを備えており、例えばアルミニウム板等の金属板を曲げ加工することにより形成される。
ブラケット(12)の被取付部(121)は、開口枠(3)の左側枠材(3b)における前側枠部(32)の前面の左側部分に、ビス(124)によって止められている。ここで、開口枠(3)の左右側枠材(3b)(3C)における前側枠部(32)には、右開き仕様および左開き仕様いずれの場合でも簡単に施工できるように、予めヒンジ取付用ビス穴(図示略)が形成されている。そして、ヒンジ(5)が取り付けられない側のビス穴は、例えばカバープレート(36)によって隠されている(
図1参照)。従って、被取付部(121)は、前側枠部(32)に特別な加工を施すことなく、前側枠部(32)の下部のヒンジ取付用ビス穴をそのまま利用して簡単にビス止めすることができる。
保持部(122)の左右側壁の上部には、水平なピン(16)が渡し止められている。
カバー部(123)により、前側枠部(32)の左側面が覆われるようになっている。なお、カバー部をブラケット(12)に設けない場合もある。
【0032】
開扉部材(11)の基軸部(11a)は、略四角形の左右側壁(111)、左右側壁(111)の上縁どうしを連結する上壁(112)、左右側壁(111)の前縁どうしを連結する前壁(113)を備えている。上壁(112)の前部から前壁(113)の上部にかけての部分は、円弧状となされている。左右側壁(111)の中心部に挿通穴(図示略)があけられており、これらの挿通穴に前記のピン(16)が緩く挿通されることにより、基軸部(11a)がピン(16)を中心として回動自在となされている。開扉部材(11)の基軸部(11a)の左右側壁(111)と、ブラケット(12)の保持部(122)の左右側壁との間には、それぞれワッシャ(17)が介在されている。
押圧アーム部(11b)は、例えばアルミニウム等の金属よりなる略垂直帯板状のものであって、その下端が、基軸部(11a)の上壁(112)に溶接等によって接合されている。押圧アーム部(11b)の左右側縁および上端縁は、後方に折り曲げられており、それによって押圧アーム部(11b)の後面側が凹状となされている。押圧アーム部(11b)の後面の先端部分には、開口枠(3)の左側枠材(3b)の前側枠部(32)との接触による双方の損傷等を防止するため、ゴムやエラストマー等よりなるクッション材(114)が取り付けられている。
フットレバー部(11c)は、例えばアルミニウム等の金属よりなる概略L形の板状のものであって、押圧アーム部(11b)と所定の角度(図では約100°)をなすように、その後端が基軸部(11a)の前壁(113)に溶接等によって接合されている。フットレバー部(11c)の左右側縁および前端縁は、後方に折り曲げられており、それによってフットレバー部(11c)の下面側が凹状となされている。フットレバー部(11c)の下面の先端部分には、床面(GL)との接触による双方の損傷等を防止するため、ゴム等よりなるクッション材(115)が取り付けられている。
ねじりコイルばね(14)は、基軸部(11a)の左右側壁(111)間に位置するようにピン(16)に外嵌されており、その一端側のアーム(141)がフットレバー部(11c)の後端に弾性的に係合させられているとともに、その他端側のアーム(142)がブラケット(12)の保持部(122)の後壁に弾性的に係り合わせられている。
【0033】
被押圧部材は、断熱扉(4)の左側縁面の下端部に扉側ブラケット(18)を介して左右方向にのびる軸線周りに回転自在に取り付けられたローラ(130)(転動体)よりなる。このローラ(130)は、押圧アーム部(11b)が前方に傾動させられる際、押圧アーム部(11b)前面の先端側部分と転がり接触させられるようになっている。なお、ローラ(130)に代えて、例えば保持器により回転自在に保持されたボールを、被押圧部材として使用してもよい。
扉側ブラケット(18)は、垂直板状の被取付部(181)と、被取付部(181)の上端に連なって設けられかつ後方に開口したコ字形の横断面を有する保持部(182)とを備えており、例えばアルミニウム板等の金属板を曲げ加工することにより形成されている。
扉側ブラケット(18)の被取付部(181)は、断熱扉(4)の戸先側縁面(図では左側縁面)の下端部に、ビス(183)によって止められている。なお、断熱扉(4)の左右側縁面の上部および下部には、右開き仕様および左開き仕様いずれの場合でも簡単に施工できるように、予めヒンジ取付用ビス穴(図示略)が形成されている。従って、被取付部(181)は、断熱扉(4)に特別な加工を施すことなく、戸先側縁面の下部のビス穴をそのまま利用して簡単にビス止めすることができる。
保持部(182)の左右側壁の上部には、水平なピン(184)が渡し止められている。そして、このピン(184)に、ローラ(130)が緩く外嵌されて回転自在となされている。
なお、ローラ(130)は、押圧アーム(11b)の先端部分に取り付けられていてもよく、その場合、被押圧部材は、押圧アーム部の傾動に伴ってローラが転動しうる例えば垂直板状のものとすればよい。
また、被押圧部(13)は、上記のようにローラよりなる被押圧部材(130)によって構成される他、例えば、断熱扉(4)の後面の縁部に、傾動する押圧アーム部(11B)の先端側部分と接触しうる部分があれば、同部分をそのまま被押圧部としてもよい。
【0034】
上記の開扉装置(10)にあっては、開口枠(3)の磁着部材(35)が断熱扉(4)のマグネットパッキン(45)に磁着させられている閉状態で、開扉部材(11)のフットレバー部(11c)を足で踏むと、押圧アーム部(11b)が前方に傾動して、その先端側部分でローラ(130)よりなる被押圧部材を前方に押圧し、それによって断熱扉(4)が開くようになっている。この際、ローラ(130)が押圧アーム部(11b)前面の先端部分と転がり接触し、両者間の摩擦抵抗が少ないため、押圧アーム部(11b)の傾動がスムーズに行われ、ひいては、断熱扉(4)が滑らかに開けられる。従って、この装置(10)によれば、荷物等で両手が塞がっている場合でも、断熱扉(4)を容易に開けることができる。
そして、フットレバー部(11c)を踏んでいる状態から足を離すと、ねじりコイルばね(14)の弾性力(付勢力)がフットレバー部(11c)に作用して、フットレバー部(11c)が上方に回動させられ、それによって前傾していた押圧アーム部(11b)が垂直上方を向く位置まで自動的に戻る。したがって、断熱扉(4)が閉まる際に、押圧アーム部(11b)とローラ(130)および扉側ブラケット(18)とが干渉するおそれがなく、また、押圧アーム部(11b)が人や物の通過の妨げとなるおそれがない。
また、上記の開扉装置(10)は、開扉部材(11)、ブラケット(12)、ローラ(被押圧部材)(13)および扉側ブラケット(18)で構成されているため、構造が単純であり、コストが抑えられる上、冷凍冷蔵庫(1A)の前壁(2)を構成する断熱パネル(20)への取付施工が全く不要であって、断熱パネル(20)の断熱性能が損なわれるおそれがなく、また、開扉部材(11)の開口枠(3)への取付およびローラ(130)の断熱扉(4)への取付も、既存のヒンジ取付用ビス穴を利用して行うことができ、取付施工がきわめて簡単である。
【0035】
[第2の実施形態]
図5には、この発明の第2の実施形態が示されている。第2の実施形態も、この発明をプレハブ式冷凍冷蔵庫の開扉装置に適用したものである。但し、図示の冷凍冷蔵庫(1B)の開口枠(3)は、上枠部材(3a)および左右側枠部材(3b)(3c)に加えて、下枠部材(3d)を備えた四方枠となされている。
そして、第2の実施形態の開扉装置(10X)は、以下の点を除いて、
図1~
図4に示す第1の実施形態の開扉装置(10)と実質的に同じである。
すなわち、
図5に示す開扉装置(10X)では、開扉部材(11)の基軸部(11a)が、開口枠(3)におけるヒンジ(5)が取り付けられていない方の側枠部(図では左側枠材(3b))前面の高さ中間部にブラケット(12)を介して取り付けられている。押圧アーム部(11b)は、基軸部(11a)から
下方にのびている。そして、レバー部(11c)が、基軸部(11a)から押圧アーム部(11b)と所定角度をなすように前斜め上方にのびている。
つまり、この開扉装置(10X)の場合、レバー部(11c)を、足ではなく腕や手の平等の身体の一部を使って後方に押すことにより、押圧アーム部(11b)が前方に倒れて、その先端側部分でローラ(被押圧部材)(130)を前方に押圧し、断熱扉(4)が開くようになっている。
【0036】
[第3の実施形態]
図6~
図9には、この発明の第3の実施形態が示されている。第3の実施形態も、この発明をプレハブ式冷凍冷蔵庫の開扉装置に適用したものであって、同開扉装置(10Y)は、以下の点を除いて、
図1~
図4に示す第1の実施形態の開扉装置(10)と実質的に同一の構成を有し、同装置(10)と実質的に同一の作用効果を奏する。
【0037】
すなわち、この実施形態の開扉装置(10Y)では、
図6~
図8に示すように、断熱扉(4)が右開きの場合において、開扉部材(11Y)を開口枠(3)に取り付けるためのブラケット(12Y)が、開口枠(3)の左側枠部材(3b)における前側枠部(32)前面の下端部と、前壁(2)の前面の下端部における左側枠部材(3b)の前側枠部(32)に隣接する箇所に取り付けられた取付フレーム(19)の前面とにまたがって取り付けられている。これにより、開扉部材(11Y)の取付強度が向上し、また、繰り返し使用しても変形したり破損したりし難く、耐久性が向上する。
取付フレーム(19)は、後方に開口したリップ溝形のものであって、例えばアルミニウム等の金属材よりなり、前壁(2)の前面にビス等(図示略)によって接合固定されている。この取付フレーム(19)は、垂直中心線に対して左右対称となされている。取付フレーム(19)の前後方向の厚さは、左側枠部材(3b)の前側枠部(32)の厚さとほぼ同じ寸法に設定されており、それによって、左側枠部材(3b)の前側枠部(32)の前面と取付フレーム(19)の前面とがほぼ面一となされている。なお、取付フレーム(19)の形状は上記に限定されず、その他、例えば横断面方形や横断面溝形などであってもよい。
ブラケット(12Y)は、左側枠部材(3b)の前側枠部(32)の前面と取付フレーム(19)の前面とにまたがってビス(124)により接合固定されている垂直板状の被取付部(121)と、被取付部(121)の下端に連なって設けられた横断面コ字形の保持部(122)とよりなるものであって、垂直中心線に対して左右対称となされている。被取付部(121)の左右両側部には、上下に間隔をおいて複数のビス穴(図示略)が左右対称となるように形成されている。保持部(122)の左右側壁には、ピン(16)よりもやや下方位置に、水平な規制ピン(16X)が渡し止められている。この規制ピン(16X)は、フットレバー部(11c)を足で踏んで断熱扉(4)を開いた際に、フットレバー部(11c)と当接することにより、フットレバー部(11c)がさらに下方に移動するのを規制するものであり、それによって、フットレバー部(11c)の先端部分と床面(GL)との接触による双方の損傷等が防止される(
図7参照)。
また、この実施形態では、基軸部(11a)、押圧アーム部(11b)およびフットレバー部(11c)よりなる開扉部材(11Y)も、垂直中心線に対して左右対称となされている。
【0038】
上述したブラケット(12Y)、取付フレーム(19)および開扉部材(11Y)は、
図9に示すように、断熱扉(4)が左開きの場合でも、そのまま使用することができる。
すなわち、前壁(2)の前面の下端部における右側枠部材(3c)の前側枠部(32)に隣接する箇所に取付フレーム(19)がビスによって取り付けられ、開扉部材(11Y)を開口枠(3)に取り付けるためのブラケット(12Y)が、右側枠部材
(3c)における前側枠部(32)前面の下端部と、取付フレーム(19)の前面とにまたがって取り付けられている。そして、ブラケット(12Y)の保持部(122)に、開扉部材(11Y)の基軸部(11a)がピン(16)によって回動自在に取り付けられている。
したがって、この実施形態の開扉装置(10Y)によれば、ブラケット(12Y)、取付フレーム(19)および開扉部材(11Y)を、断熱扉(4)が右開きおよび左開きいずれの場合でも使用することが可能であり、それによって製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【0039】
加えて、第3の実施形態の開扉装置(10Y)では、
図6~
図8に示すように、扉側ブラケット(18Y)が、断熱扉(4)の戸先側である左側縁面の下端部にビス(183)によって接合固定された垂直板状の被取付部(185)と、被取付部(185)の前縁から左右方向外方(同図では左方)に向かって略直角に折れ曲がるように側方突出状に設けられた側方突出壁部(186)と、側方突出壁部(186)の先端部分に連なって設けられかつ側面より見て後方に開口したコ字形の横断面を有する保持部(187)とを備えている。側方突出壁部(186)は、上下辺が先端に向かって互いに近づくように傾斜した横向き等脚台形状となされている。
この実施形態の扉側ブラケット(18Y)は、第1の実施形態の扉側ブラケット(18)と比べて小型かつ軽量であり、したがって、断熱扉(4)側に特別な補強構造を設けなくても、断熱扉(4)の戸先側縁面に簡単に取り付けることが可能である。
そして、扉側ブラケット(18Y)の保持部(187)に、被押圧部(13)を構成する略直方体の被押圧部材(130Y)の一部が嵌め入れられて、保持部(187)の上下壁にビス等によって接合固定されている。被押圧部材(130Y)は、表面の滑り性が高い樹脂材料よりなる。押圧アーム部(11b)の前面と接触させられる被押圧部材(130Y)の後側面は、その上下部分が凸状の湾曲面となされている。
これらの扉側ブラケット(18Y)および被押圧部材(130Y)は、前後方向にのびる水平中心線に対して上下対称となされている。
【0040】
上述した扉側ブラケット(18Y)および被押圧部材(130Y)についても、
図9に示すように、断熱扉(4)が左開きの場合に、そのまま使用することができる。
すなわち、まず、断熱扉(4)の戸先側である右側縁面の下端部に、扉側ブラケット(18Y)の被取付部(185)が取り付けられる。この場合、扉側ブラケット(18Y)は、
図6に示す断熱扉(4)が右開き仕様の場合から、上下反転した状態で使用される。そして、この扉側ブラケット(18Y)の保持部(187)に、被押圧部材(130Y)の一部が嵌め入れられて取り付けられている。
したがって、第3の実施形態の開扉装置(10Y)によれば、扉側ブラケット(18Y)および被押圧部材(130Y)についても、断熱扉(4)が右開きおよび左開きいずれの場合でも使用することが可能であり、それによって製造・管理すべき部品点数が低減し、コストも抑えられる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
この発明は、断熱パネルよりなる壁の開口の側縁部に断熱扉が取り付けられている冷凍冷蔵庫等において、断熱扉を容易に開けるための開扉装置として、好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0042】
(1A)(1B):プレハブ式冷凍冷蔵庫
(2):前壁
(20):断熱パネル
(21):開口
(3):開口枠
(3b):右側枠部材(一方の側枠部)
(3c):左側枠部材(他方の側枠部)
(35):磁着部材
(4):断熱扉
(45):マグネットパッキン(パッキン)
(5):ヒンジ
(10)(10X)(10Y):開扉装置
(11)(11Y):開扉部材
(11a):基軸部
(11b):押圧アーム部
(11c):フットレバー部,レバー部
(12)(12Y):ブラケット
(13):被押圧部
(130):ローラ(転動体、被押圧部材)
(130Y):被押圧部材
(14):ねじりコイルばね(付勢部材)
(18)(18Y):扉側ブラケット
(19):取付ブラケット