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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】スロットルグリップ装置
(51)【国際特許分類】
   B62K 23/04 20060101AFI20230123BHJP
   F02D 11/02 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
B62K23/04
F02D11/02 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019104840
(22)【出願日】2019-06-04
(65)【公開番号】P2020196386
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000213954
【氏名又は名称】朝日電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】大城 幸男
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-038290(JP,A)
【文献】特開2018-176999(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第104015855(CN,A)
【文献】特開2009-108879(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62K 23/04
F02D 11/02
G05G 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、
前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、
前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、
前記連動部材を回転自在に保持するケースと、
を具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、
前記スロットルグリップの基端部に形成され、径方向に突出した鍔部と、
前記連動部材に形成され、前記スロットルグリップが初期位置にあるとき、前記鍔部に形成された被押圧部を押圧して前記係合部を被係合部に押圧し得る押圧手段と、
を具備したことを特徴とするスロットルグリップ装置。
【請求項2】
前記ケースを収容しつつ車両のハンドルバーに固定可能とされるとともに、前記スロットルグリップの基端部を挿通させる開口が形成されたカバー部材を具備するものとされ、前記鍔部は、前記開口の内側縁部と干渉して前記スロットルグリップの基端部を当該開口から抜け止め可能とされたことを特徴とする請求項1記載のスロットルグリップ装置。
【請求項3】
前記被押圧部は、厚さ寸法が前記鍔部の他の部位より大きく設定されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置。
【請求項4】
前記押圧手段は、
前記スロットルグリップの被押圧部と接触可能な接触部と、
前記接触部を付勢して前記被押圧部を押圧し得る付勢手段と、
を具備したことを特徴とする請求項1~3の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【請求項5】
前記接触部は、少なくとも前記被押圧部と接触する部位が球面を成すことを特徴とする請求項4記載のスロットルグリップ装置。
【請求項6】
前記押圧手段は、前記被押圧部に対して前記スロットルグリップの回転方向に向かって押圧することを特徴とする請求項1~5の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スロットルグリップの回転操作に基づいて車両のエンジンが制御されるスロットルグリップ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の二輪車においては、スロットルグリップの回転角度をポテンショメータ等のスロットル開度センサにて検出し、その検出値を電気信号として当該二輪車が搭載する電子制御装置等に送るよう構成されたスロットルグリップ装置が普及されるに至っている。そして、かかる検出信号に基づき電子制御装置が所定の演算を行い、その演算結果に基づいてエンジンの点火時期、吸気バルブ若しくはスロットルバルブの開閉が制御されるようになっている。
【0003】
従来のスロットルグリップ装置として、例えば特許文献1にて開示されたものが挙げられる。かかる従来のスロットルグリップ装置は、スロットルグリップに形成された係合部を連動部材に形成された被係合部に係合することにより、これら別体のスロットルグリップと連動部材とを連結させ、連動部材の回転角度を検出することによりスロットルグリップの回転角度を検出してエンジン制御が行われるようになっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-81564号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術においては、別体のスロットルグリップ及び連動部材を連結して構成されていたので、スロットルグリップの交換が容易であるとともに、機械的遊びを設定できるといった技術的メリットを有するものの、これらスロットルグリップと連動部材との間の隙間によってガタが生じてしまうという不具合があった。すなわち、スロットルグリップが初期位置にあるとき、エンジン等の振動によってガタによる異音が生じてしまい、ユーザによってはこれが不快であると感じる場合があり、問題となる虞がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、スロットルグリップ及び連動部材を別体としてスロットルグリップの交換を容易としつつ当該スロットルグリップと連動部材との間のガタを抑制することができるスロットルグリップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、運転者による回転操作が可能とされたスロットルグリップと、前記スロットルグリップに形成された係合部と係合し得る被係合部を有するとともに、当該スロットルグリップに連動して回転し得る連動部材と、前記連動部材の回転角度を検出することにより前記スロットルグリップの回転角度を検出し得る回転角度検出手段と、前記連動部材を回転自在に保持するケースとを具備し、前記回転角度検出手段で検出された前記スロットルグリップの回転角度に応じて車両のエンジンを制御可能とされたスロットルグリップ装置であって、前記スロットルグリップの基端部に形成され、径方向に突出した鍔部と、前記連動部材に形成され、前記スロットルグリップが初期位置にあるとき、前記鍔部に形成された被押圧部を押圧して前記係合部を被係合部に押圧し得る押圧手段とを具備したことを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載のスロットルグリップ装置において、前記ケースを収容しつつ車両のハンドルバーに固定可能とされるとともに、前記スロットルグリップの基端部を挿通させる開口が形成されたカバー部材を具備するものとされ、前記鍔部は、前記開口の内側縁部と干渉して前記スロットルグリップの基端部を当該開口から抜け止め可能とされたことを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載のスロットルグリップ装置において、前記被押圧部は、厚さ寸法が前記鍔部の他の部位より大きく設定されたことを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記押圧手段は、前記スロットルグリップの被押圧部と接触可能な接触部と、前記接触部を付勢して前記被押圧部を押圧し得る付勢手段とを具備したことを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項4記載のスロットルグリップ装置において、前記接触部は、少なくとも前記被押圧部と接触する部位が球面を成すことを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載のスロットルグリップ装置において、前記押圧手段は、前記被押圧部に対して前記スロットルグリップの回転方向に向かって押圧することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明によれば、スロットルグリップの基端部に形成され、径方向に突出した鍔部と、連動部材に形成され、スロットルグリップが初期位置にあるとき、鍔部に形成された被押圧部を押圧して係合部を被係合部に押圧し得る押圧手段とを具備したので、スロットルグリップ及び連動部材を別体としてスロットルグリップの交換を容易としつつ当該スロットルグリップと連動部材との間のガタを抑制することができる。
【0014】
請求項2の発明によれば、ケースを収容しつつ車両のハンドルバーに固定可能とされるとともに、スロットルグリップの基端部を挿通させる開口が形成されたカバー部材を具備するものとされ、鍔部は、開口の内側縁部と干渉してスロットルグリップの基端部を当該開口から抜け止め可能とされたので、鍔部が、スロットルグリップと連動部材との間のガタを抑制する機能と、カバー部材の開口からの抜け止め機能とを兼ね備えることができる。
【0015】
請求項3の発明によれば、被押圧部は、厚さ寸法が鍔部の他の部位より大きく設定されたので、押圧手段による押圧力を確実に受けることができ、スロットルグリップと連動部材との間のガタをより確実且つ安定して抑制することができる。
【0016】
請求項4の発明によれば、押圧手段は、スロットルグリップの被押圧部と接触可能な接触部と、接触部を付勢して被押圧部を押圧し得る付勢手段とを具備したので、付勢手段の付勢力によってスロットルグリップの機械的遊びを設けることができるとともに、スロットルグリップの連動部材に対する脱着を円滑に行わせて当該スロットルグリップの交換を容易に行わせることができる。
【0017】
請求項5の発明によれば、接触部は、少なくとも被押圧部と接触する部位が球面を成すので、被押圧部に対して接触部を点接触させることができ、被押圧部に対する接触部の押圧を安定して行わせることができるとともに、スロットルグリップの連動部材に対する脱着をより円滑に行わせることができる。
【0018】
請求項6の発明によれば、押圧手段は、被押圧部に対してスロットルグリップの回転方向に向かって押圧するので、スロットルグリップを回転操作すると、連動部材が空転することなく回転し、運転者にとって違和感無くスロットルグリップの操作を行わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係るスロットルグリップ装置が適用される車両のスロットルグリップ及びスイッチケースを示す側面図及び正面図
図2】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップを示す斜視図及び正面図
図3】同スロットルグリップ装置のユニットを示す斜視図
図4】同ユニットを示す3面図
図5図1におけるV-V線断面図
図6図1におけるVI-VI線断面図
図7図1におけるVII-VII線断面図
図8】同スロットルグリップ装置のケースを示す斜視図
図9】同スロットルグリップ装置の連動部材を示す斜視図
図10】同連動部材を示す3面図
図11】同スロットルグリップ装置のケースを示す斜視図
図12】同スロットルグリップ装置の押圧手段及びその接触部を示す斜視図及び3面図
図13】同スロットルグリップ装置における連動部材に抵抗手段及び付勢手段が組み付けられた状態を示す斜視図
図14】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップが初期位置にあるときの押圧手段と被押圧部との位置関係を示す平面図
図15】同スロットルグリップ装置のスロットルグリップが回転したときの押圧手段と被押圧部との位置関係を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係るスロットルグリップ装置は、図1に示すように、二輪車のハンドルバーHに取り付けられたスロットルグリップGの回転角度を検出し、その検出信号を二輪車が搭載するECU等電子制御装置に送るためのもので、図1~13に示すように、スロットルグリップGと、ケース1と、連動部材2と、抵抗手段3と、付勢手段4と、回転部材6と、磁気センサ7(回転角度検出手段)と、押圧手段10とを有して構成されている。
【0021】
ケース1は、二輪車(車両)のハンドルバーHの先端側(スロットルグリップGの基端側)に取り付けられたカバー部材S内(図1参照)に配設されたもので、本スロットルグリップ装置を構成する各種部品を収容するとともに、連動部材2及び回転部材6等を回転自在に保持するものである。かかるケース1は、図6、7に示すように、回転部材6を回転自在に収容する収容部1aと、連動部材2を回転自在に収容する収容部1bと、抵抗手段3のバネs(図13参照)を収容する凹部1cと、抵抗手段3の突起部3a(図13参照)を嵌合する嵌合凹部1dとが形成された成形部品から成る。なお、符号9は、ケース1の開口側を塞ぐための蓋部材を示している。
【0022】
スロットルグリップGは、カバー部材Sから延設されるとともに、運転者が把持しつつ回転操作が可能とされたもので、初期位置から軸回りに所定方向の回転が可能とされている。かかるスロットルグリップGの基端部には、図2に示すように、一対の溝形状から成る係合部Gaと、径方向に突出した鍔部Gbと、鍔部Gbに形成された被押圧部Gbaとが形成されており、係合部Gaが連動部材2の被係合部2a(図3、4、9、10等参照)に対して回転方向に係合することにより、スロットルグリップGと連動部材2とが連結されるようになっている。
【0023】
より具体的には、本実施形態に係る鍔部Gbは、図2に示すように、スロットルグリップGの基端部の側面から径方向に向かって一体的に突出形成された部位から成り、その一部(端部)には、後で詳述する押圧手段10の先端10aaと接触して押圧力を受ける被押圧部Gbaが形成されている。かかる被押圧部Gbaは、厚さ寸法(ハンドルグリップGの軸方向に対する寸法)が鍔部Gbの他の部位より大きく設定されており、押圧手段10の先端10aaと確実に接触可能とされている。
【0024】
連動部材2は、スロットルグリップGに形成された係合部Gaと係合し得る被係合部2aを有するとともに、当該スロットルグリップGの回転操作に連動してケース1内で回転し得るものである。具体的には、本実施形態に係る連動部材2は、図9、10に示すように、被係合部2aと、収容部2bと、収容部2cと、ギア2dと、係合溝2eとを有した円環状部材から成る。なお、本実施形態に連動部材2には、後で詳述する摺動面Nが形成されている。
【0025】
被係合部2aは、スロットルグリップGの係合部Ga(溝形状)と対応した位置にそれぞれ形成された凸形状から成り、当該被係合部2aが係合部Gaに嵌入して係合した状態で連動部材2にスロットルグリップGの基端側が接続されている。これにより、スロットルグリップGの回転に伴って連動部材2も回転し得るようになっている。かかる被係合部2aは、連動部材2の表面(ケース1に組み付けられた際、図3、4に示すように、外部に臨ませ得る一方の面)に形成されるとともに、他方の面には、収容部2bが形成されている。
【0026】
さらに、連動部材2の被係合部2aは、図9、10に示すように、連動部材2の回転方向に対して壁面2aaと壁面2abとを有しており、これら壁面2aa及び壁面2abに係合部Gaが嵌合し得るようになっている。そして、スロットルグリップGが初期位置から回転すると、係合部Gaが壁面2abを押圧して連動部材2を同方向に回転させるとともに、スロットルグリップGを握る手の力を緩めると、連動部材2が付勢手段4の付勢力により初期位置に向かって回転することとなり、係合部Gaが壁面2abと接触した状態を維持しつつスロットルグリップGが初期位置に戻ることとなる。
【0027】
収容部2bは、連動部材2の周方向に向かって弧状に形成された溝形状から成り、その内部には、後で詳述する押圧手段10が収容可能とされている。また、収容部2bは、連動部材2の裏面に形成された凹形状から成るとともに、挿通孔2baを介して連動部材2の表面側と連通されている。かかる挿通孔2baには、後述する押圧手段10の先端10aa側が挿通され、連動部材2の表面側に対して出没自在とされる。
【0028】
さらに、本実施形態に係る連動部材2には、その裏面側において円環状に形成された収容部2cを有しており、図5~7に示すように、かかる収容部2cに付勢手段4の一部が収容可能とされている。また、連動部材2には、所定範囲に亘ってギア2dが形成されており、図14、15に示すように、かかるギア2dが回転部材6の外周に形成されたギアと噛み合う状態で組み付けられており、連動部材2の回転に伴って回転部材6が回転するようになっている。
【0029】
回転部材6は、上述のように連動部材2と連動して回転し得るもので、ケース1の収容部1aに収容されるとともに、軸L(図5、14、15参照)を中心として回転自在とされている。しかして、連動部材2が回転すると、その回転角度に応じた回転角度にて回転部材6が回転するようになっている。かかる回転部材6には、磁石mが取り付けられており、当該回転部材6の回転に伴って磁石mから生じる磁界の方向が変化するよう構成されている。
【0030】
磁気センサ7(回転角度検出手段)は、図5に示すように、回転部材6の軸Lの延長線上の位置に配設されたセンサから成り、回転部材6に取り付けられた磁石mから生じる磁気の変化(磁界の方向の変化)を検出することにより、スロットルグリップGの回転角度を検出可能とされている。具体的には、磁気センサ7は、磁石mの磁場変化(磁束密度の変化)に応じた出力電圧を得ることができるもので、例えばホール効果を利用した磁気センサであるホール素子(具体的には、磁石mの磁場(磁束密度)に比例した出力電圧を得ることができるリニアホールIC)等により構成されている。なお、本実施形態に係る磁気センサ7は、所定の電気回路が印刷されたプリント基板8に形成されている。
【0031】
しかして、スロットルグリップGが回転するのに伴って連動部材2が同方向に回転すると、回転部材6も連動してギア比(連動部材2及び回転部材6のギア比)に応じて回転し、当該回転部材6に取り付けられた磁石mも同方向に同一角度だけ回転する。これにより、その回転角度によって磁場が変化するので、当該回転角度に応じた出力電圧を得ることができ、当該出力電圧に基づき連動部材2の回転角度(即ち、スロットルグリップGの回転角度)を検出することが可能とされている。このように検出されたスロットルグリップGの回転角度は、二輪車に搭載されたECU(エンジン・コントロール・ユニット)に対して電気信号として送信され、送信されたスロットルグリップGの回転角度に応じて車両のエンジンが制御され得るようになっている。
【0032】
付勢手段4は、ねじりコイルバネから成り、スロットルグリップGが回転したとき、連動部材2を初期位置に向かって付勢するためのリターンスプリングである。すなわち、付勢手段4は、その一端4bが連動部材2の係合溝2eに係止され且つ、他端4aがケース1の係合溝1e(図14、15参照)に係止されて組み付けられており、スロットルグリップGを回転させると、付勢手段4の付勢力に抗して連動部材2が回転するので、その付勢力がスロットルグリップGに伝わり、スロットルグリップGを初期位置に戻す力が作用するのである。
【0033】
抵抗手段3は、スロットルグリップGの回転時に抵抗力を生じさせて回転負荷を生じさせ得るもので、図13に示すように、連動部材2の周方向に亘って形成された摺動面Nに対して当接状態にて組み付けられた円環状の摩擦部材から成る。かかる抵抗手段3は、その突起部3aがケース1の嵌合凹部1dに嵌合しつつスプリングsの付勢力により連動部材2の摺動面Nに対して押圧されて組み付けられており、連動部材2が回転すると、摺動面Nに対して摺動して摩擦力を生じさせ、所望の回転負荷を生じさせることができるのである。
【0034】
しかして、内部に必要部品が組み付けられたケース1は、図3、4に示すように、ユニット5を構成するとともに、図5~7に示すように、カバー部材S内にネジ等で固定されつつ収容される。かかるカバー部材Sは、ケース1(ユニット5)を収容しつつ車両のハンドルバーHに固定可能とされるとともに、図5~7及び図11に示すように、スロットルグリップGの基端部を挿通させる開口Saと、突端がハンドルバーHに当接して支持させる位置決め突起と、ハンドルバーHを挿通させる開口Scとが形成されている。
【0035】
本実施形態に係る鍔部Gbは、開口Saの内側縁部と干渉してスロットルグリップGの基端部を当該開口Saから抜け止め可能とされている。すなわち、スロットルグリップGをカバー部材S内のケース1に組み付けられた連動部材2に係合させると、図7に示すように、スロットルグリップGの基端部に形成された鍔部Gbがカバー部材Sの開口Saの内側縁部に位置するようになっているので、スロットルグリップGに対して同図中右側に引き抜く荷重を付与しても、鍔部Gbが開口Saの内側縁部と干渉して抜け止めが図られるのである。
【0036】
ここで、本実施形態においては、スロットルグリップGが初期位置にあるとき、鍔部Gbに形成された被押圧部Gbaを押圧して係合部Gaを被係合部2aに押圧し得る押圧手段10を具備している。かかる押圧手段10は、図12に示すように、スロットルグリップGの被押圧部Gbaと接触可能な接触部10aと、接触部10aを付勢して係合部Gaを被係合部2aに押圧させ得る付勢手段10bと、接触部10a及び付勢手段10bを収容するとともに、連動部材2の収容部2bに取り付けられる収容ケース10cとを有して構成されており、連動部材2に形成された収容部2bに収容されている。
【0037】
接触部10aは、図12に示すように、ピン状部材から成り、その先端10aa(被押圧部Gbaと接触する部位)が球面を成して構成されるとともに、連動部材2に形成された挿通孔2ba(図3参照)に挿通して組み付けられている。すなわち、挿通孔2baは、連動部材2の裏面側に形成された収容部2bと当該連動部材2の表面側とを連通する孔から成り、押圧手段10が収容部2bに収容されると、接触部10aの先端10aa側が挿通孔2baを挿通して連動部材2の表面側に位置し、当該先端10aaが被押圧部Gbaと接触し得るよう構成されている。
【0038】
接触部10aにおける先端10aaとは反対側には、バネ受け部10abが一体形成されている。かかるバネ受け部10baは、収容ケース10cに収容された付勢手段10bの付勢力を受けて先端10aaに接触した被押圧部Gbaに付勢力を伝達して押圧させる部位から成る。付勢手段10bは、その一端がバネ受け部10abに当接して組み付けられたコイルスプリングから成り、収容ケース10cに収容されるとともに、接触部10aを連動部材2の回転方向に付勢し得るようになっている。
【0039】
これにより、押圧手段10は、被押圧部Gbaに対してスロットルグリップGの回転方向に向かって押圧することとなる。また、付勢手段10bで付勢された接触部10aが被押圧部Gbaを連動部材2の回転方向に付勢することにより、当該被押圧部Gbaが同方向に押圧されることにより、スロットルグリップGの係合部Gaが被係合部2aの壁面2abに押圧されるようになっている。これにより、本実施形態に係る押圧手段10は、初期位置にあるスロットルグリップGを連動部材2及びスロットルグリップGの回転側に向かって押圧するようになっている。
【0040】
しかして、スロットルグリップGが初期位置にあるとき、図14に示すように、接触部10aが被押圧部Gbと接触しつつ付勢手段10bの付勢力にて当該被押圧部Gbを連動部材2の回転方向(同図中のa方向の回転側)に向かって押圧するので、係合部Gaが被係合部2aの壁面2abに押し付けられて位置決めされることとなる。これにより、スロットルグリップのGの係合部Gaと連動部材2の被係合部2a(壁面2ab)との間の隙間をなくして両部材間のガタをなくすことができる。
【0041】
また、スロットルグリップGを初期位置から回転(図14中a方向の回転)させると、図15に示すように、係合部Gaが被係合部2aの壁面2abを押圧して連動部材2を同方向に回転させるとともに、接触部10aの先端10aaと被押圧部Gbとの接触は維持される。なお、スロットルグリップGを握る手の力を緩めると、連動部材2が付勢手段4の付勢力により初期位置に向かって回転することとなり、係合部Gaが壁面2abと接触した状態を維持しつつスロットルグリップGが初期位置に戻る。
【0042】
本実施形態によれば、スロットルグリップGの基端部に形成され、径方向に突出した鍔部Gbと、連動部材2に形成され、スロットルグリップGが初期位置にあるとき、鍔部Gbに形成された被押圧部Gbaを押圧して係合部Gaを被係合部2aに押圧し得る押圧手段10とを具備したので、スロットルグリップG及び連動部材2を別体としてスロットルグリップGの交換を容易としつつ当該スロットルグリップGと連動部材2との間のガタを抑制することができる。
【0043】
特に、本実施形態においては、押圧手段10がスロットルグリップGの鍔部Gbに形成された被押圧部Gbaを押圧してガタを抑制しているので、押圧手段10が係合部2aを押圧するものに比べ、スロットルグリップGに対する押圧力を効率的に付与させることができるとともに、鍔部Gbの大きさや形状を任意とすることにより、設計の自由度を向上させることができる。さらに、本実施形態においては、押圧手段10がスロットルグリップGの鍔部Gbに形成された被押圧部Gbaを押圧してガタを抑制しているので、ユニット5の薄型化を図ることができる。
【0044】
また、ケース1を収容しつつ車両のハンドルバーHに固定可能とされるとともに、スロットルグリップGの基端部を挿通させる開口Saが形成されたカバー部材Sを具備するものとされ、鍔部Gbは、開口Sの内側縁部と干渉してスロットルグリップGの基端部を当該開口Saから抜け止め可能とされたので、鍔部Gbが、スロットルグリップGと連動部材2との間のガタを抑制する機能と、カバー部材Sの開口Saからの抜け止め機能とを兼ね備えることができる。
【0045】
さらに、本実施形態に係る被押圧部Gbaは、厚さ寸法が鍔部Gbの他の部位より大きく設定されたので、押圧手段10による押圧力を確実に受けることができ、スロットルグリップGと連動部材2との間のガタをより確実且つ安定して抑制することができる。またさらに、本実施形態に係る押圧手段10は、被押圧部Gbaに対してスロットルグリップG(連動部材2)の回転方向に向かって押圧するので、スロットルグリップGを回転操作すると、連動部材2が空転することなく回転し、運転者にとって違和感無くスロットルグリップGの操作を行わせることができる。
【0046】
加えて、本実施形態に係る押圧手段10は、スロットルグリップGの被押圧部Gbaと接触可能な接触部10aと、接触部10aを付勢して被押圧部Gbaを押圧し得る付勢手段10bとを具備したので、付勢手段10bの付勢力によってスロットルグリップGの機械的遊びを設けることができるとともに、スロットルグリップGの連動部材2に対する脱着を円滑に行わせて当該スロットルグリップGの交換を容易に行わせることができる。
【0047】
特に、本実施形態に係る接触部10aは、少なくとも被押圧部Gbaと接触する部位が球面を成すので、被押圧部Gbaに対して接触部10aを点接触させることができ、被押圧部Gbaに対する接触部10aの押圧を安定して行わせることができるとともに、スロットルグリップGの連動部材2に対する脱着をより円滑に行わせることができる。なお、本実施形態に係る接触部10aは、その先端10aa(すなわち、被押圧部Gbaと接触する部位)が球面を成すものとされているが、他の形状を成すものとしてもよい。
【0048】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば押圧手段10における付勢手段10bをコイルスプリングとは異なる他の付勢手段としてもよい。また、付勢手段4を他の汎用的な弾性体(コイルスプリングや板バネなど他の形態のバネ、又は樹脂やゴム等)としてもよい。さらに、本実施形態に係るスロットルグリップは、初期位置から一方向のみ回転操作が可能とされているが、初期位置から正回転及び逆回転に回転操作可能なものとしてもよい。
【0049】
また、本実施形態に係る鍔部Gbは、カバー部材Sにおける開口Saの内側縁部と干渉してスロットルグリップGの基端部を当該開口Saから抜け止め可能とされているが、かかる抜け止め機能を有さない部位であってもよい。さらに、磁気センサ7に代えてスロットルグリップGの回転角度を検出し得る他のセンサ(磁気を使用しないセンサ等)としてもよい。なお、適用される車両は、本実施形態の如く二輪車に限定されるものではなく、ハンドルバーHを有した他の車両(例えばATVやスノーモービル等)に適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0050】
スロットルグリップの基端部に形成され、径方向に突出した鍔部と、連動部材に形成され、スロットルグリップが初期位置にあるとき、鍔部に形成された被押圧部を押圧して係合部を被係合部に押圧し得る押圧手段とを具備したスロットルグリップ装置であれば、外観形状が異なるもの或いは他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1 ケース
1a 収容部
1b 収容部
1c 凹部
1d 嵌合凹部
2 連動部材
2a 被係合部
2aa 壁面
2ab 壁面
2b 収容部
2ba 挿通孔
2c 収容部
2d ギア
2e 係合溝
3 抵抗手段
3a 突起部
4 付勢手段
5 ユニット
6 回転部材
7 磁気センサ(回転角度検出手段)
8 プリント基板
9 蓋部材
10 押圧手段
10a 接触部
10aa 先端
10ab バネ受け部
10b 付勢手段
10c 収容ケース
N 摺動面
G スロットルグリップ
Ga 係合部
Gb 鍔部
Gba 被押圧部
H ハンドルバー
S カバー部材
Sa 開口
Sb 位置決め突起
Sc 開口
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