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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】固着用水性組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20230123BHJP
   A01N 59/02 20060101ALI20230123BHJP
   A01N 59/16 20060101ALI20230123BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20230123BHJP
   A01N 59/08 20060101ALI20230123BHJP
   A01P 1/00 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
C09D1/00
A01N59/02 Z
A01N59/16 Z
A01N59/00 C
A01N59/08
A01P1/00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2022091173
(22)【出願日】2022-06-03
【審査請求日】2022-06-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502131202
【氏名又は名称】ニチリンケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 豊昭
(72)【発明者】
【氏名】橋本 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】奥村 英之
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-215988(JP,A)
【文献】特開2012-091089(JP,A)
【文献】国際公開第2019/058674(WO,A1)
【文献】特開2017-171608(JP,A)
【文献】国際公開第2020/137157(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/083171(WO,A1)
【文献】特表2003-511177(JP,A)
【文献】特開2014-118358(JP,A)
【文献】特開2015-134726(JP,A)
【文献】蒲生秀典,抗ウイルス材料・表面に関する科学技術の最近の動向,STI Horizon,2021年,Vol.7, No.1,p.28-33
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,A01N
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸イオン100質量部に対し、アルミニウムを4.0~35質量部、および鉄を3.0~35質量部含有する固着用水性組成物であって、持続性抗ウイルス用の水性組成物。
【請求項2】
硫酸イオン100質量部に対し、カリウムを0.010~0.50質量部含有する、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項3】
硫酸イオン100質量部に対し、チタンを0.003~0.50質量部含有する、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項4】
pHが0.5~5.0である、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項5】
さらに酸化タングステンを含有する、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項6】
硫酸イオンの含有量が1.0~50000ppmである、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項7】
硫酸イオンの含有量が100~5000ppmであり、アルミニウムの含有量が10~600ppmであり、鉄の含有量が5.0~400ppmである、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項8】
アルミニウム100質量部に対する鉄の含有量が10~200質量部であり、カリウムの含有量が0.10~8.0質量部であり、チタンの含有量が0.030~8.0質量部である、請求項1記載の固着用水性組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の固着用水性組成物を用いて、被処理材料の表面に金属硫酸塩を固着させる工程を含む、抗ウイルス持続性加工方法。
【請求項10】
前記被処理材料が、繊維、皮革、樹脂、金属、プラスチック、フィルム、ガラス、木材、石材、れんが、コンクリート、紙、セラミック、炭素繊維、およびタイルからなる群より選ばれる1以上の材料を用いて構成されている、請求項9記載の抗ウイルス持続性加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理対象物の表面に固着し抗菌抗ウイルス効果を発揮する水性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン等の光触媒は、十分な光(紫外線)エネルギーがある場所では優れた消臭効果や抗菌効果を発揮するが、室内等の紫外線が届きにくい環境下では、その効果を十分に発揮することができない。また、光触媒を被処理対象物の表面に定着させるためにバインダーを必要とする場合が多く、その施工には熟練した技術が必要とされる。
【0003】
特許文献1には、光の照射の有無に関わりなく、実用的な抗菌性能を示す抗菌性材料が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5957175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被処理対象物の表面に固着し、優れた抗菌抗ウイルス効果を長期間発揮させ得る水性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意検討した結果、硫酸イオン、アルミニウム、および鉄を所定の比率で含有する水性組成物が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、本発明は
〔1〕硫酸イオン100質量部に対し、アルミニウムを4.0~35質量部、および鉄を3.0~35質量部含有する固着用水性組成物、
〔2〕硫酸イオン100質量部に対し、カリウムを0.010~0.50質量部含有する、上記〔1〕記載の固着用水性組成物、
〔3〕硫酸イオン100質量部に対し、チタンを0.003~0.50質量部含有する、上記〔1〕または〔2〕記載の固着用水性組成物、
〔4〕pHが0.5~5.0である、上記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の固着用水性組成物、
〔5〕さらに酸化タングステンを含有する、上記〔1〕~〔4〕のいずれかに記載の固着用水性組成物、
〔6〕硫酸イオンの含有量が1.0~50000ppmである、上記〔1〕~〔5〕のいずれかに記載の固着用水性組成物、
〔7〕硫酸イオンの含有量が100~5000ppmであり、アルミニウムの含有量が10~600ppmであり、鉄の含有量が5.0~400ppmである、上記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の固着用水性組成物、
〔8〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の固着用水性組成物を固着してなる抗菌抗ウイルス性物品、
〔9〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の固着用水性組成物を用いて、被処理対象物の表面に金属硫酸塩を固着させる工程を含む、抗菌抗ウイルス性物品の製造方法、
〔10〕上記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の固着用水性組成物を用いて、被処理対象物の表面に金属硫酸塩を固着させる工程を含む、抗菌抗ウイルス加工方法、
〔11〕表面に金属硫酸塩を固着させた抗菌抗ウイルス性物品であって、前記金属がアルミニウムおよび鉄を含み、前記金属硫酸塩中のアルミニウムの含有量が0.1~20質量%であり、前記金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量が10~200質量部である、抗菌抗ウイルス性物品、
〔12〕前記金属硫酸塩の粒子の平均粒子径が1.0~1000nmである、上記〔11〕記載の抗菌抗ウイルス性物品、
〔13〕前記物品が、繊維、皮革、樹脂、金属、プラスチック、フィルム、ガラス、木材、石材、れんが、コンクリート、紙、セラミック、炭素繊維、およびタイルからなる群より選ばれる1以上の材料を用いて構成されている、上記〔11〕または〔12〕記載の抗菌抗ウイルス性物品、に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、被処理対象物の表面に固着し、優れた抗菌抗ウイルス効果を長期間発揮させ得る水性組成物が提供される。該水性組成物は、バインダーを必要とせず、被処理対象物に噴霧、塗布、含浸等することにより、簡便に使用することができる。また、該水性組成物を用いて、被処理対象物の表面に金属硫酸塩を固着させた物品は、その効果発現のために紫外線照射を必要としないため、室内でも高い抗菌、抗ウイルス、消臭等の効果を発揮する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係る固着用水性組成物(以下、単に水性組成物と称することがある)は、硫酸イオン100質量部に対し、アルミニウムを4.0~35質量部、および鉄を3.0~35質量部含有する。水性組成物中もしくは金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量は、10~200質量部が好ましく、20~100質量部がより好ましく、45~75質量部がさらに好ましい。また、任意成分として、カリウム、チタン、酸化タングステン等を含有していてもよい。
【0010】
理論に拘束されることは意図しないが、本実施形態に係る水性組成物が抗菌抗ウイルス効果を長期間発揮させ得るメカニズムとしては、以下のように考えられる。
【0011】
前記金属硫酸塩中の鉄、チタン等の遷移元素による酸化還元反応により、硫酸ラジカル(・SO4 -)(遷移元素の還元)および/または空気中の水分子と酸素分子からスーパーオキシドイオン(・O2 -)(遷移金属の酸化)、さらにはヒドロキシルラジカル(・OH)と過酸化水素(H22)が生成され、あるいは硫酸塩の強いプロトン放出能力により、酸性条件下で空気中の水分子と酸素分子とから、金属硫酸塩中の鉄、チタン等の遷移元素による酸化還元反応により、スーパーオキシドイオン(・O2 -)やヒドロペルオキシルラジカル(・OOH)、さらには過酸化水素(H22)およびヒドロキシルラジカル(・OH)が生成される。これらの一連の反応により発生した、酸化力を有するヒドロキシルラジカルや硫酸ラジカル、スーパーオキシドイオンが、汚染物質を分解し除去する効果を発揮するものと考えられる。
【0012】
硫酸アルミニウムは、本実施形態に係る水性組成物を被処理対象物に固着させる場合のバインダーとしての役割を果たす。すなわち、本実施形態に係る水性組成物を被処理対象物に噴霧、塗布、もしくは含浸等した後、乾燥することにより、水不溶性の酸化アルミニウムおよび硫酸化合物等に変化して被処理対象物上に多孔性の薄膜を形成し、鉄等の必須金属成分を対象物上に固着させる。この酸化アルミニウムおよび硫酸イオンの働きによる多孔性の薄膜による有効成分の固着により、本発明の効果を持続的に発揮することができると考えられる。
【0013】
被処理対象物に固着した金属硫酸塩の潮解性により、金属硫酸塩の表面に存在する水和層に汚染物質を吸着、吸収し、汚染物質の酸化分解が効率的に進行すると考えられる。また、硫酸イオンは加熱や経時変化によってほとんど分解せず極めて安定であり、かつ使用時には極めて微量である。したがって、本実施形態に係る水性組成物の製造を安全に行うことができ、かつ、該水性組成物を用いて加工された物品も安全に長期間使用することができる。
【0014】
本実施形態における「汚染物質」としては、例えば、臭気性の化合物、菌類(細菌および真菌)、ウイルス等が挙げられる。
【0015】
臭気性の化合物としては、例えば、アンモニア、アミン化合物、硫化水素、チオール化合物、スルフィド化合物、カルボン酸化合物(特に低級カルボン酸)、アルデヒド化合物(特にホルムアルデヒド)等が挙げられる。
【0016】
「細菌」とは、ウイルスよりも大きく、硬い細胞壁を持つ単細胞の微生物である。細菌としては、例えば、ボツリヌス菌、ウェルシュ菌、セレウス菌、枯草菌、破傷風菌、炭疽菌等の芽胞形成菌や、ブドウ球菌、大腸菌、サルモネラ菌、レジオネラ菌、緑膿菌、コレラ菌、結核菌、レンサ球菌、腸炎ビブリオ等が挙げられる。
【0017】
「真菌」とは、菌類のうち、細菌および変形菌(粘菌)を除くものの総称であって、カビ類、キノコ類、酵母類等が含まれる。
【0018】
「ウイルス」とは、中心の核酸(DNAもしくはRNAのいずれか)がカプシドと呼ばれる殻に包まれた単純な構造を有している構造体のことをいう。ウイルスとしては、例えば、インフルエンザウイルス、コロナウイルス、肝炎ウイルス、風疹ウイルス、ヘルペスウイルス、エボラウイルス、HIV等のエンベロープウイルス;ネコカリシウイルス、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルス、ポリオウイルス等のノンエンベロープウイルスが挙げられる。本実施形態に係る水性組成物の有効成分は、ウイルスの構成成分(蛋白質、脂質、核酸等)を酸化分解するので、エンベロープウイルス、ノンエンベロープウイルスのいずれにも効果的に作用するものと考えられる。
【0019】
アルミニウムは、水性組成物中において、アルミニウムイオン(III)として存在していてもよく、酸化物、水酸化物、その他の塩として存在していてもよいが、アルミニウムイオン(III)として存在していることが好ましい。
【0020】
鉄は、水性組成物中において、鉄イオン(II)、鉄イオン(III)、または鉄イオン(IV)として存在していてもよく、酸化物、水酸化物、その他の塩として存在していてもよいが、鉄イオン(II)、鉄イオン(III)、または鉄イオン(IV)として存在していることが好ましく、鉄イオン(II)として存在していることがより好ましい。
【0021】
水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するアルミニウムの含有量は、4.0質量部以上であり、5.0質量部以上が好ましく、6.0質量部以上がより好ましく、7.0質量部以上がさらに好ましく、8.0質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するアルミニウムの含有量は、35質量部以下であり、30質量部以下が好ましく、25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、18質量部以下が特に好ましい。
【0022】
水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対する鉄の含有量は、3.0質量部以上であり、3.5質量部以上が好ましく、4.0質量部以上がより好ましく、4.5質量部以上がさらに好ましく、5.0質量部以上がさらに好ましく、5.5質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対する鉄の含有量は、35質量部以下であり、30質量部以下が好ましく25質量部以下がより好ましく、20質量部以下がさらに好ましく、15質量部以下がさらに好ましく、13質量部以下が特に好ましい。
【0023】
水性組成物中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、55質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量は、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、75質量部以下がさらに好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、68質量部以下が特に好ましい。
【0024】
本実施形態に係る水性組成物は、カリウムを含有することが好ましい。天然カリウム中に微量に存在する質量数40の不安定なカリウム(カリウム40)が安定な元素に変化する際に放出する電子線や電磁波が、空気中の水分子と衝突し、ヒドロキシルラジカルや過酸化水素の生成を促進すると考えられる。
【0025】
水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するカリウムの含有量は、0.010質量部以上が好ましく、0.020質量部以上がより好ましく、0.030質量部以上がさらに好ましく、0.040質量部以上がさらに好ましく、0.050質量部以上がさらに好ましく、0.060質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するカリウムの含有量は、0.50質量部以下が好ましく、0.40質量部以下がより好ましく、0.30質量部以下がさらに好ましく、0.20質量部以下がさらに好ましく、0.17質量部以下が特に好ましい。
【0026】
水性組成物中のアルミニウム100質量部に対するカリウムの含有量は、0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましく、0.30質量部以上がさらに好ましく、0.40質量部以上がさらに好ましく、0.50質量部以上がさらに好ましく、0.55質量部以上がさらに好ましく、0.60質量部以上がさらに好ましく、0.65質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中のアルミニウム100質量部に対するカリウムの含有量は、8.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.6質量部以下がさらに好ましく、1.4質量部以下が特に好ましい。
【0027】
本実施形態に係る水性組成物は、チタンを含有することが好ましい。チタンは、鉄とともに、過酸化水素の還元反応に寄与すると考えられる。
【0028】
水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するチタンの含有量は、0.003質量部以上が好ましく、0.008質量部以上がより好ましく、0.012質量部以上がさらに好ましく、0.016質量部以上がさらに好ましく、0.020質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対するチタンの含有量は、0.50質量部以下が好ましく、0.35質量部以下がより好ましく、0.25質量部以下がさらに好ましく、0.17質量部以下がさらに好ましく、0.090質量部以下が特に好ましい。
【0029】
水性組成物中のアルミニウム100質量部に対するチタンの含有量は、0.030質量部以上が好ましく、0.050質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上がさらに好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましく、0.22質量部以上がさらに好ましく、0.30質量部以上がさらに好ましく、0.40質量部以上がさらに好ましく、0.50質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中のアルミニウム100質量部に対するチタンの含有量は、8.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.6質量部以下がさらに好ましく、1.4質量部以下が特に好ましい。
【0030】
本実施形態に係る固着用水性組成物は、酸化タングステンを含有してもよい。酸化タングステンは、汚染物質が酸化されやすい方向に平衡を移動させ、本発明の効果をより向上させると考えられる。
【0031】
水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対する酸化タングステンの含有量は、0.0001質量部以上が好ましく、0.001質量部以上がより好ましく、0.005質量部以上がさらに好ましく、0.010質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中の硫酸イオン100質量部に対する酸化タングステンの含有量は、1.0質量部以下が好ましく、0.50質量部以下がより好ましく、0.10質量部以下がさらに好ましく、0.050質量部以下が特に好ましい。
【0032】
水性組成物中のアルミニウム100質量部に対する酸化タングステンの含有量は、0.0002質量部以上が好ましく、0.002質量部以上がより好ましく、0.010質量部以上がさらに好ましく、0.020質量部以上が特に好ましい。また、水性組成物中のアルミニウム100質量部に対する酸化タングステンの含有量は、2.0質量部以下が好ましく、1.0質量部以下がより好ましく、0.20質量部以下がさらに好ましく、0.10質量部以下が特に好ましい。
【0033】
本実施形態に係る水性組成物は、その他の金属やゼオライト等を含有していてもよい。その他の金属としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銀、白金、バナジウム、亜鉛、コバルト、セリウム、銅、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ガリウム、ランタン、ホウ素、クロム、リチウム、ケイ素等が挙げられる。
【0034】
水性組成物中の硫酸イオンの含有量は、目的に応じて適宜変更することができるが、1.0ppm以上が好ましく、1.0~100000ppmがより好ましい。例えば、水性組成物を被処理対象物に対して使用する際は、本発明の効果の観点から、1.0ppm以上が好ましく、10ppm以上がより好ましく、30ppm以上がさらに好ましく、100ppm以上がさらに好ましく、250ppm以上がさらに好ましく、500ppm以上が特に好ましい。また、水性組成物を保存する際は、10ppm以上が好ましく、30ppm以上がより好ましく、100ppm以上がさらに好ましく、250ppm以上がさらに好ましく、500ppm以上が特に好ましい。一方、水性組成物中の硫酸イオンの含有量の上限値は特に制限されないが、例えば、100000ppm以下、50000ppm以下、10000ppm以下、5000ppm以下、3000ppm以下、2000ppm以下、1000ppm以下とすることができる。
【0035】
水性組成物中のアルミニウムの含有量は、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、水性組成物を被処理対象物に対して使用する際は0.5~1000ppmが好ましく、5.0~800ppmがより好ましく、10~600ppmがさらに好ましく、30~500ppmがさらに好ましく、60~400ppmがさらに好ましく、70~300ppmが特に好ましい。
【0036】
水性組成物中の鉄の含有量は、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、水性組成物を被処理対象物に対して使用する際は0.3~500ppmが好ましく、5.0~400ppmがより好ましく、10~300ppmがさらに好ましく、30~200ppmがさらに好ましく、45~150ppmが特に好ましい。
【0037】
水性組成物中のカリウムの含有量は、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、水性組成物を被処理対象物に対して使用する際は0.01~100ppmが好ましく、0.05~50ppmがより好ましく、0.10~10ppmがさらに好ましく、0.30~5.0ppmがさらに好ましく、0.52~2.0ppmが特に好ましい。
【0038】
水性組成物中のチタンの含有量は、目的に応じて適宜変更することができるが、例えば、水性組成物を被処理対象物に対して使用する際は0.005~100ppmが好ましく、0.01~50ppmがより好ましく、0.03~10ppmがさらに好ましく、0.10~5.0ppmがさらに好ましく、0.15~2.0ppmが特に好ましい。
【0039】
本実施形態に係る水性組成物は、水に、鉄塩、アルミニウム塩、硫酸または硫酸塩、また、必要に応じてカリウム塩、チタン化合物、酸化タングステン粉末、その他の金属化合物を投入し、適宜攪拌することにより得ることができる。このとき、鉄塩、アルミニウム塩、および硫酸もしくは硫酸塩は水性溶媒に溶解し、酸化タングステン粉末は水性溶媒中に分散する。
【0040】
また、本実施形態に係る水性組成物は、土壌から抽出される鉄およびアルミニウムを含む組成物を使用することができる。例えば、70℃以上に加熱した20%硫酸水溶液に、鉄鉱を含む赤黄土を添加して約1日以上静置し、ろ過や遠心分離法により除去し、必要に応じて中和し、土壌由来の水性組成物を得ることができる。
【0041】
本実施形態に係る水性組成物の製造に使用する水としては、純水、イオン交換水、硬水、軟水または水道水等が挙げられるが、当該組成物中の金属成分との化学反応を回避し、製品の品質を保証する観点から、純水およびイオン交換水が好ましい。
【0042】
本実施形態に係る水性組成物のpHは、0.5以上が好ましく、0.9以上がより好ましく、1.5以上がさらに好ましく、2.0以上がさらに好ましく、2.5以上が特に好ましい。一方、実施形態に係る水性組成物のpHは、5.0以下が好ましく、4.5以下がより好ましく、4.0以下がさらに好ましく、3.5以下がさらに好ましく、3.0以下がさらに好ましく、2.9以下が特に好ましい。
【0043】
本実施形態に係る水性組成物は、他剤と配合してその効果を相加的または相乗的に増強することができる。このような他剤としては、例えば、他の抗菌抗ウイルス剤、防カビ剤、消臭剤、帯電防止剤、防汚剤、表面処理剤等が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る水性組成物は、通常使用し得る適当な添加物、例えば、芳香成分および乾燥助剤等を適宜配合してもよい。
【0045】
本実施形態に係る水性組成物においては、鉄およびアルミニウムの2成分の濃度を検査して品質を管理することにより、安定した効果を有する製品を供給することが可能となる。当該2成分以外の金属成分の配合およびそれらの濃度は、当該組成物の性状や効果に著しく不利な作用を及ぼさない限り、特段の制限はない。
【0046】
<使用方法>
本実施形態に係る水性組成物は、被処理材料に対して、抗菌抗ウイルス効果、防カビ効果、消臭効果等を付与するための加工剤として使用することができる。
【0047】
本実施形態に係る水性組成物は、バインダーを必要とせず、被処理対象物に噴霧、塗布、含浸等することにより、簡便に使用することができる。
【0048】
本実施形態に係る固着用水性組成物を付着させる被処理材料としては、特に限定されないが、繊維、皮革、樹脂、金属、プラスチック、フィルム、ガラス、木材、石材、れんが、コンクリート、紙、セラミック、炭素繊維、タイル等が挙げられる。本実施形態に係る固着用水性組成物は、これらの被処理材料のいずれに対しても強固に固着し、抗菌抗ウイルス活性が長期間持続する。
【0049】
本実施形態に係る抗菌抗ウイルス性物品は、前記の水性組成物および被処理材料を用い、公知慣用の製造方法により製造することができる。例えば、前記の固着用水性組成物をスプレー剤型とし、前記の被処理材料に噴霧し、その後乾燥させる方法;前記の固着用水性組成物を前記の被処理材料に含浸させ、その後乾燥させる方法;前記の被処理材料に、印刷等の方法により前記の固着用水性組成物を塗工し、その後乾燥させる方法等が挙げられる。
【0050】
本実施形態に係る水性組成物は、室内の壁、天井、床、配管をはじめ、その他吹付け可能な場所(例えば、車内、電車の車輌内、航空機の機内、家具類、装置類、電子機器類、空調設備、実験器具、工具、その他の備品等)に対して噴霧施工等を行ない、抗菌抗ウイルス加工に使用することができる。
【0051】
なお、本実施形態に係る水性組成物の、消臭、抗菌、および抗ウイルスの効果の作用機序は前記のとおりであり、光触媒作用による二酸化チタンとは異なり、その効果発現に紫外線照射を必要とせず、室内でも使用することができる。
【0052】
本実施形態に係る水性組成物の噴霧、塗布等による使用量は、水性組成物中の必須金属成分の濃度により異なるが、例えば、硫酸イオンの濃度が100~5000ppmである水性組成物の場合は、付与面積あたり1~100mL/m2が好ましく、2~50mL/m2がより好ましく、5~20mL/m2がさらに好ましく、8~10mL/m2が特に好ましい。該使用量は、被処理材料の種類、構造、特性、使用場所の構造や汚染状況等に応じて適宜選択することができる。
【0053】
本実施形態に係る水性組成物の噴霧は、例えば、エアーコンプレッサーを備えたスプレーガンを用いて行なうことができる。スプレーガンのエアー圧は、0.1~2.0MPaが好ましく、0.2~1.0MPaがより好ましい。スプレーガンのノズル径は、水性組成物を均一に噴霧し、かつ根詰まりを防止する観点から、0.1~1.0mmが好ましく、0.2~0.8mmがより好ましく、0.3~0.7mmがさらに好ましい。
【0054】
上記の方法により製造された抗菌抗ウイルス性物品は、前記の被処理材料に金属硫酸塩が固着している。前記の金属はアルミニウムおよび鉄を含み、カリウムおよび/またはチタンを含むことが好ましく、さらにその他の金属を含有していてもよい。その他の金属としては、特に限定されないが、例えば、ナトリウム、マグネシウム、カルシウム、マンガン、銀、バナジウム、亜鉛、コバルト、セリウム、銅、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ガリウム、ランタン、ホウ素、クロム、リチウム、ケイ素等が挙げられる。なお、金属硫酸塩は、水和物等の溶媒和物であってもよい。
【0055】
金属硫酸塩の粒子の平均粒子径は、1.0~1000nmが好ましく、10~1000nmがより好ましく、20~800nmがさらに好ましい。
【0056】
金属硫酸塩中のアルミニウムの含有量は、0.1~20質量%が好ましく、0.5~15質量%がより好ましく、1.0~10質量%がさらに好ましく、2.0~10質量%がさらに好ましく、3.0~10質量%がさらに好ましく、4.0~9.5質量%が特に好ましい。
【0057】
金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量は、10質量部以上が好ましく、20質量部以上がより好ましく、30質量部以上がさらに好ましく、40質量部以上がさらに好ましく、45質量部以上がさらに好ましく、50質量部以上がさらに好ましく、55質量部以上が特に好ましい。また、金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対する鉄の含有量の含有量は、200質量部以下が好ましく、150質量部以下がより好ましく、120質量部以下がさらに好ましく、100質量部以下がさらに好ましく、90質量部以下がさらに好ましく、80質量部以下がさらに好ましく、75質量部以下がさらに好ましく、70質量部以下がさらに好ましく、68質量部以下が特に好ましい。
【0058】
金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対するカリウムの含有量は、0.10質量部以上が好ましく、0.20質量部以上がより好ましく、0.30質量部以上がさらに好ましく、0.40質量部以上がさらに好ましく、0.50質量部以上がさらに好ましく、0.55質量部以上がさらに好ましく、0.60質量部以上がさらに好ましく、0.65質量部以上が特に好ましい。また、金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対するカリウムの含有量は、8.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.6質量部以下がさらに好ましく、1.4質量部以下が特に好ましい。
【0059】
金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対するチタンの含有量は、0.030質量部以上が好ましく、0.050質量部以上がより好ましく、0.10質量部以上がさらに好ましく、0.15質量部以上がさらに好ましく、0.22質量部以上がさらに好ましく、0.30質量部以上がさらに好ましく、0.40質量部以上がさらに好ましく、0.50質量部以上が特に好ましい。また、金属硫酸塩中のアルミニウム100質量部に対するチタンの含有量は、8.0質量部以下が好ましく、4.0質量部以下がより好ましく、3.0質量部以下がさらに好ましく、2.0質量部以下がさらに好ましく、1.6質量部以下がさらに好ましく、1.4質量部以下が特に好ましい。
【実施例
【0060】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0061】
(水性組成物の調製)
80℃に加熱した20%硫酸水溶液5kgに細かく砕いた土壌3kgを添加して撹拌し、容器内を窒素充填して24時間静置した。沈殿画分をろ過により除去して土壌の酸抽出液を得て、これを水で希釈して土壌由来の水性組成物1(原液)を得た。
【0062】
水性組成物1中の金属元素の種類と含有量について、エネルギー分散型X線分光(EDS)法、ICP質量分析法、原子吸光法、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)法により総合的に分析した。分析結果を下表に示す。表1に記載の金属元素以外に、ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、亜鉛、ケイ素、リン等が検出された。
【0063】
【表1】
【0064】
水性組成物1をイオン交換水により50倍に希釈して、被処理材料を加工するための水性組成物2(希釈液)を得た。硫酸イオンの含有量は850ppm、pHは2.6であった。硫酸イオンの含有量は、エネルギー分散型X線分光(EDS)法、ICP質量分析法、原子吸光法、熱重量・示差熱同時測定(TG-DTA)法により総合的に分析した。
【0065】
(試験布の作製)
水性組成物2に、試験布(綿100%)を1時間以上含浸させた後、吊り下げて、室温で一夜以上自然乾燥させ含浸布を得た。得られた含浸布から所定の大きさに切り出したものを試験布1とした。
【0066】
(試験ガラスの作製)
板ガラス(5cm×5cm、厚さ2mm)の表面をアルコールで拭き乾燥させた後に、エアーコンプレッサー((株)マキタ製、AC700型)およびエアー圧0.5~0.7MPa、ノズル径0.5mmのスプレーガン((株)近畿製作所製)を用いて、水性組成物2(約2mL)を噴霧して乾燥させ、試験ガラス1を得た。
【0067】
(試験タイルの作製)
磁器タイル((株)INAX製、SP型、100mm角平、5mm厚)の表面をアルコールで拭き乾燥させた後に、エアーコンプレッサー((株)マキタ製、AC700型)およびエアー圧0.5~0.7MPa、ノズル径0.5mmのスプレーガン((株)近畿製作所製)を用いて、水性組成物2(約2mL)を噴霧して乾燥させ、試験タイル1を得た。
【0068】
<抗菌試験1>
JIS L 1902:2015「繊維製品の抗菌性試験方法及び抗菌効果」に準拠し、抗菌活性を評価した。試験菌として黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)ATCC 6538P、および、大腸菌(Escherichia coli)NBRC 3301を用いた。前記含浸布から切り出した試料布および無加工標準綿布のそれぞれ0.4g(縦18mm×横18mm)をバイアル瓶に入れ、バイアル瓶をアルミニウム箔で包みオートクレーブ滅菌した後、クリーンベンチ内で乾燥させた。乾燥後、滅菌キャップでバイアル瓶を密栓した。この滅菌した試料布1または無加工標準綿布が入ったバイアル瓶中に、1/20濃度のニュートリエント培地で調製した試験菌懸濁液0.2mLを接種し、37±1℃で培養した。18時間培養後、バイアル瓶に菌の洗い出し液を加えて菌を振盪分散させ、洗い出し液中の生菌数を混釈平板培養法で測定した。無加工標準綿布に試験菌を接種して18時間培養後に回収した菌数、および試験布に試験菌を接種して18時間培養後に回収した菌数を指標として抗菌活性を評価した。
【0069】
無加工標準綿布に大腸菌を1.7×104個植菌して18時間培養した場合、3.4×107個に増殖し、黄色ブドウ球菌を1.5×104個植菌して18時間培養した場合、7.6×106個に増殖した。この試験条件において、水性組成物2を含浸させた試験布1に同条件で試験菌を植種して18時間培養した場合の生菌数は、いずれも20個以下であり、大腸菌および黄色ブドウ球菌はほぼ完全に殺菌された。
【0070】
<抗菌試験2>
JIS Z 2801:2010「抗菌加工製品-抗菌性試験方法・抗菌効果」に準拠し、「フィルム密着法」により抗菌活性を評価した。試験条件は下記の通り。
試験菌:黄色ぶどう球菌(Staphylococcus aureus)NBRC 12732、および、大腸菌(Escherichia coli)NBRC 3972
菌液:1/500普通ブイヨン培地に試験菌を懸濁
試験片:5cm×5cm、厚さ2mmの板ガラス(無加工および試験ガラス1)
被覆フィルム:4cm×4cm、厚さ0.09mmのシート状ポリエチレンフィルム
菌液の接種:試験片の表面に菌液0.4mLを接種後、ポリエチレンフィルムを被せ密着
試験片の培養:菌液を接種した試験片を35℃、相対湿度90%以上の条件で24時間培養
生菌数測定:接種直後および24時間培養後の試験片3個(n=3)の生菌数を測定
抗菌活性値(R)の算出:R=U-A(U:接種24時間後の無加工試験片の生菌数対数値の平均値、A:接種24時間後の抗菌加工試験片の生菌数対数値の平均値)
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
水性組成物2で噴霧加工した試験ガラス1は、大腸菌および黄色ブドウ球菌に対して、いずれも良好な抗菌活性を示した(表2、表3)。
【0074】
<抗ウイルス性試験>
試験方法:ISO18184 Textiles-Determination of antiviral activity of textile productsによる。ただし、洗濯方法はJIS L 0217:1995の103法による(洗剤はJAFET標準配合洗剤を使用)。
ウイルス感染価の測定方法:Plaque assay
評価方法:無加工標準綿布の接種直後で感染価の常用対数値を測定した。同じく無加工標準綿布の接種2時間後で感染価の常用対数値を測定し、Vbとした。この試験条件において、作製直後の試験布1、洗濯を10回行なった後の試験布1、室温で暗所にて3ヶ月放置した後の試験布1についてもそれぞれ同様に接種2時間後で感染価の常用対数値を測定し、Vcとした。そして、Vb-Vcを抗ウイルス活性値とした。インフルエンザウイルスおよびネコカリシウイルスを用いた抗ウイルス性試験の結果を下表に示す。なお、下記の試験は、いずれもJIS L 1922:2016「繊維製品の抗ウイルス性試験方法」14.3.1(a)、(b)、および(c)に記載の試験成立条件を満たしていることを確認した。
【0075】
(インフルエンザウイルス Influenza A virus(H3N2):ATCC VR-1679)
【0076】
【表4】
【0077】
【表5】
【0078】
【表6】
【0079】
(ネコカリシウイルス Feline calicivirus:ATCC VR-782)
【0080】
【表7】
【0081】
水性組成物2を含浸させた試験布1は、エンベロープウイルス(インフルエンザウイルス)およびノンエンベロープウイルス(ネコカリシウイルス)に対して、いずれも良好な抗ウイルス活性を示した(表4、表7)。また、水性組成物の有効成分は、洗濯を繰り返したり、長期間放置しても試験布に強固に固着しており、抗ウイルス活性が持続していることがわかる(表5、表6)。
【0082】
<臭気性化合物の除去>
試験タイルおよび5Lテドラーバッグを用いる検知管法で試験した。試料タイル1をテドラーバックに入れ、臭気性の化合物(アンモニア、硫化水素、酢酸、ホルムアルデヒド)を表6に記載の所定の初期濃度で注入し、24時間後のバック中の臭気成分の濃度を検知管法で測定した。同時に試験試料を入れない試験(空試験)における臭気成分の自然減少度を測定し、これとの比較により消臭効果を評価した。結果を下表に示す。
【0083】
【表8】
【0084】
水性組成物2で噴霧加工した試験タイル1は、いずれの臭気性化合物も2時間後までに顕著に減少させ、24時間にはさらに減少し、継続して消臭効果を発揮していることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の固着用水性組成物を用いることにより、優れた抗菌抗ウイルス効果を長期間発揮させ得るさまざまな物品の製造および加工が可能となる。
【要約】
【課題】被処理対象物の表面に固着し、優れた抗菌抗ウイルス効果を長期間発揮させ得る水性組成物を提供すること。
【解決手段】硫酸イオン100質量部に対し、アルミニウムを4.0~35質量部、および鉄を3.0~35質量部含有する固着用水性組成物。
【選択図】なし