(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-01-20
(45)【発行日】2023-01-30
(54)【発明の名称】放射パネルの連結構造
(51)【国際特許分類】
E04B 9/00 20060101AFI20230123BHJP
E04B 9/04 20060101ALI20230123BHJP
F24F 5/00 20060101ALI20230123BHJP
F24F 1/0093 20190101ALI20230123BHJP
F24D 3/16 20060101ALI20230123BHJP
【FI】
E04B9/00 F
E04B9/04 E
F24F5/00 101B
F24F1/0093
F24D3/16 L
F24D3/16 J
(21)【出願番号】P 2018206293
(22)【出願日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】特許業務法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】前羽 誠
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-021645(JP,A)
【文献】特開2018-155436(JP,A)
【文献】特開2008-275227(JP,A)
【文献】特許第5306843(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00,9/04
F24F 5/00
F24F 1/0093
F24D 3/16
E04B 1/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱媒流体が通過するパイプが一方面に配置されるパネル本体を複数並列してフレーム材により連結する放射パネルの連結構造であって、
前記各パネル本体は、並列方向両側にそれぞれ設けられた第1の重畳部および第2の重畳部と、前記第1の重畳部および第2の重畳部の一方面からそれぞれ突出する第1の突片および第2の突片とを備えており、一の前記パネル本体の前記第1の重畳部の一方面に、他の前記パネル本体の前記第2の重畳部が重なり合うように配置され、
前記フレーム材は、前記第1の突片および第2の突片と係合する係合部が形成されており、前記各パネル本体の一方面側に並列方向に沿って配置されることにより、前記係合部が前記第1の突片および第2の突片と係合して前記各パネル本体が連結され、
前記第1の突片および第2の突片が互いに接近する方向への前記各パネル本体の相対移動が、前記第1の重畳部の一方面側で規制されるように構成され、
前記第1の突片および第2の突片の間に介在されて間隔を保持する介在部が、前記第1の突片および第2の突片の少なくとも一方に設けられ、
他の前記パネル本体の他方面側には、一の前記パネル本体の外端面が係合する段差部を有しな
く、
前記介在部は、前記第1の突片および第2の突片の突出方向に間隔をあけて複数設けられている放射パネルの連結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射パネルの連結構造に関し、より詳しくは、建物の天井に設けられて室内の冷房または暖房を行う放射パネルの連結構造に関する。
【背景技術】
【0002】
室内の冷暖房を行うため、天井に放射パネルを施工することが従来から行われている。例えば、特許文献1には、並列に配置された複数枚のパネルの群の片面側に、流体が通るパイプと各パネルを連結するためのフレーム材とが配置された、冷暖房装置用の熱交換ユニットが開示されている。フレーム材は各パネルを横切る方向に延びており、フレーム材と各パネルとは、各パネルの幅方向両端で、フレーム材と各パネルとを互いに重なる方向に相対動させると弾性変形して嵌まり合う連結手段によって連結されている。
【0003】
より詳細には、連結手段は、各パネルに形成された爪片と、フレーム材に形成された係合部とを備えており、隣接するパネル間で、各爪片に連接された水平な重合部同士が互い重なり合った状態で、各爪片が係合部に係合するように構成されている。互いに重なり合う際に上側となる重合部には段差部が形成されており、下側の重合部の端面が段差部の内面に当接することで、各パネルの位置決めが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の連結手段は、連結施工時に重合部の端面と段差部との間に隙間が生じると、この隙間が下方に露出するために、体裁が悪くなるおそれがある。このため、段差部の形成に高い寸法精度が要求されると共に、施工作業に熟練を要していた。
【0006】
また、段差部を設けることで、この段差に相当する分だけ爪片の長さが長くなることから、多数のパネルを使用する場合には、材料費用が高くなるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明は、低コストで美観が良好な放射パネルの連結構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、熱媒流体が通過するパイプが一方面に配置されるパネル本体を複数並列してフレーム材により連結する放射パネルの連結構造であって、前記各パネル本体は、並列方向両側にそれぞれ設けられた第1の重畳部および第2の重畳部と、前記第1の重畳部および第2の重畳部の一方面からそれぞれ突出する第1の突片および第2の突片とを備えており、一の前記パネル本体の前記第1の重畳部の一方面に、他の前記パネル本体の前記第2の重畳部が重なり合うように配置され、前記フレーム材は、前記第1の突片および第2の突片と係合する係合部が形成されており、前記各パネル本体の一方面側に並列方向に沿って配置されることにより、前記係合部が前記第1の突片および第2の突片と係合して前記各パネル本体が連結され、前記第1の突片および第2の突片が互いに接近する方向への前記各パネル本体の相対移動が、前記第1の重畳部の一方面側で規制されるように構成され、前記第1の突片および第2の突片の間に介在されて間隔を保持する介在部が、前記第1の突片および第2の突片の少なくとも一方に設けられ、他の前記パネル本体の他方面側には、一の前記パネル本体の外端面が係合する段差部を有しなく、前記介在部は、前記第1の突片および第2の突片の突出方向に間隔をあけて複数設けられている放射パネルの連結構造により達成される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、低コストで美観が良好な放射パネルの連結構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】(A)本発明の一実施形態に係る放射パネルの連結構造が設置された天井部を下方から見た概略斜視図、および、(B)放射パネルの連結構造の底面図である。
【
図5】放射パネルの連結構造の設置方法を説明するための図である。
【
図6】放射パネルの連結構造の要部を分離した状態で示す断面図である。
【
図7】放射パネルの連結構造の要部を分離した状態で示す斜視図である。
【
図8】放射パネルの連結構造の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【
図9】放射パネルの連結構造の他の変形例の要部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1(A)は、本発明の一実施形態に係る放射パネルの連結構造が設置された天井部を下方から見た概略斜視図である。
図1(A)に示すように、室の天井部には、複数の放射パネルを連結したパネル連結体1が、パネル連結体1の長手方向(A方向)に沿って列状に配置されて複数列を構成しており、パネル連結体1の各列の間に照明部2が設けられている。
図1(B)に底面図で示すように、各パネル連結体1は、長手方向(A方向)と直交方向に並列配置された複数のパネル本体4を連結して構成されている。
【0014】
図2は、放射パネルの連結構造の平面図である。
図2に示すように、各パネル本体4は、アルミニウム等からなる素材を押出加工することにより形成された平面視矩形状の部材であり、複数が並列配置されて、フレーム材5により連結される。フレーム材5は、本実施形態においては各パネル本体4の長手方向の中央部を横断するように配置されており、一のパネル連結体1に対して1つのみ設けられているが、複数のフレーム材5を各パネル本体4の長手方向に間隔をあけて配置して、パネル連結体1を構成することもできる。
【0015】
パネル本体4の上面である一方面には、パイプ3が配置される。パイプ3は、互いに平行延びる複数の直線部3aを備えており、本実施形態では、1つのパネル本体4に対して1つの直線部3aが配置される。各直線部3aは、隣接同士が端部で折り返して流路が蛇行するように、Uターン部3bにより連結される。連結されたパイプ3の両端部には、継手7を介して配管8が接続される。このように、熱媒流体が通過するパイプ3がパネル本体4の一方面に配置されて、各パネル本体4が連結されることで、放射パネルの連結構造が構成される。
【0016】
図3は、
図2のIII-III視断面図である。
図3に示すように、パネル本体4の短手方向(B方向)の中央部には、パイプ3の直線部3aを収容するパイプ受け部13が形成されている。パイプ受け部13は、パネル本体4の平坦部分を断面半円状に陥没させて形成されている。本実施形態のパネル本体4は、パイプ受け部13と同様に断面半円状に形成された複数の湾曲部22,22’が、パイプ受け部13と平行にそれぞれ間隔をあけて配置されている。湾曲部22,22’は、美粧目的で形成された一種のダミーであり、下方から見たときにパイプ受け部13と共に縞模様となって、装飾性が付与される。
【0017】
パネル本体4の並列方向(
図3のB方向)の両側には、互いに平行な平坦状の第1の重畳部23aおよび第2の重畳部23bがそれぞれ設けられている。第1の重畳部23aは、湾曲部22’を並列方向に沿った内方に折り返すように形成されている。一方、第2の重畳部23bは、湾曲部22から並列方向に沿った外方に張り出すように形成されている。
【0018】
図4は、
図3の要部拡大図である。
図3および
図4に示すように、第1の重畳部23aおよび第2の重畳部23bの端部には、それぞれの一方面から直交方向に突出する第1の突片15aおよび第2の突片15bが設けられている。第1の突片15aおよび第2の突片15bは、パイプ受け部13に沿って延びる帯板状に形成されており、それぞれの先端部に鉤部15a1,15b1を備えている。
【0019】
並列配置された複数のパネル本体4は、一のパネル本体4の第1の重畳部23aの一方面に、隣接する他のパネル本体4の第2の重畳部23bが重なり合うように配置され、第1の突片15aおよび第2の突片15bは、間隔をあけて互いに平行に配置される。第2の突片15bの基端部には、第2の重畳部23bと反対側に突出する介在部12が、第2の重畳部23bの下面である他方面と面一になるように設けられている。介在部12は、第1の重畳部23aと第2の重畳部23bとが重なり合った状態で、先端が第1の突片15aに当接することにより、第1の突片15aと第2の突片15bとの間に介在され、第1の突片15aおよび第2の突片15bの間隔を保持する。
【0020】
図3および
図4に示すように、フレーム材5は、例えば溝型鋼を使用することができ、断面コ字状の開口がパネル本体4を向くように配置される。各フレーム材5の開口を形成する一対の側板5a(
図3および
図4では一方の側板のみを示している)には、切欠状の係合部26Aが形成されている。係合部26Aは、フレーム材5の長手方向両側に段部26a,26aを有しており、各段部26a,26aに対して、第1の突片15aおよび第2の突片15bの鉤部15a1,15b1が、それぞれ係合する。係合部26Aは、並列方向のパネル本体4の幅に合わせて複数形成されている。フレーム材5の両端部には、切欠状の係合部26B,26Cがそれぞれ形成されており、第1の突片15aおよび第2の突片15bの一方のみが、係合部26B,26Cの段部26b,26cにそれぞれ係合する。
【0021】
各係合部26Aの間には、パイプ受け部13に収容されたパイプ3を保持する切欠状の保持部30が形成されている。保持部30の中央には押圧部30aが形成されており、第1の突片15aおよび第2の突片15bが係合部26Aに係合した状態で、押圧部30aが直線部3aを押圧することにより、直線部3aが固定される。本実施形態においては、保持部30が直線部3aに直接接触して保持するように構成しているが、保持部材30が押さえ部材等を介して直線部3aを保持するように構成することも可能である。
【0022】
フレーム材5の上部は、ねじ止めや溶接等により野縁18に固定される。野縁18の支持方法は特に限定されないが、例えば、
図5(A)に示すように、H型鋼等からなる横梁19の水平部19aに野縁18の端部を載置して金具等により固定する方法や、
図5(B)に示すように、天井スラブ(図示せず)から垂下した吊りボルト20で野縁18を吊支ずる方法を挙げることができる。フレーム材5は、必ずしも野縁18に固定する必要はなく、建物の天井における他の位置に固定してもよい。
【0023】
上記の構成を備える放射パネルの連結構造は、
図6に断面図で示すように、各パネル本体4のパイプ受け部13に直線部3aを収容した後、各パネル本体4を、
図5の右側から順にフレーム材5に押し当てて、第1の突片15aおよび第2の突片15bをそれぞれ係合部26A,26Aに係合させる。これにより、フレーム材5に対して先に取り付けられたパネル本体4の第2の重畳部23bに、後から取り付けるパネル本体4の第1の重畳部23aが重なると共に、第1の突片15aと第2の突片15bの間に介在部12が介在される。放射パネルの連結構造の組立手順は、特に限定されるものではなく、例えば
図7に斜視図で示すように、2つのパネル本体4,4の第1の重畳部23aおよび第2の重畳部23bを互いに重なり合わせた状態で、第1の突片15aおよび第2の突片15bを係合部26Aに同時に係合させるようにしてもよい。
【0024】
本実施形態の放射パネルの連結構造は、第1の重畳部23aの一方面側(
図3の上面側)において、介在部12が第1の突片15aと第2の突片15bとの間に介在されることにより、第1の突片15aおよび第2の突片15bが互いに接近する方向への各パネル本体4の相対移動が規制されるため、第1の重畳部23aの他方面側(
図3の下面側)において、従来のように段差部の隙間等が生じるおそれがない。したがって、若干の寸法誤差や組立誤差が生じた場合でも各パネル本体4の間で美観を損ねることがなく、更には、段差部が不要になることで材料費を低減できることから、美観が良好な放射パネルの連結構造を低コストで構成することができる。
【0025】
介在部12は、第1の突片15aと第2の突片15bとの間に介在されて間隔を保持できるものであればよく、その配置は特に限定されるものではない。例えば、本実施形態の介在部12は、第2の突片15bの基端部に設けられているが、
図8(a)に示すように、介在部12を第2の突片15bの突出方向中央部に設けてもよい。介在部12は、第2の突片15bに設ける代わりに、
図8(b)に示すように第1の突片15aに設けてもよい。
【0026】
また、
図8(c)に示すように、複数の介在部12-1,12-2を、第2の突片15bの突出方向に間隔をあけて設けることも可能であり、これによって、第1の突片15aおよび第2の突片15bの間隔の保持を、低コストで確実に行うことができる。各介在部12-1,12-2は、必ずしも第1の突片15aまたは第2の突片15bのいずれか一方のみに設ける必要はなく、
図8(d)に示すように、一方の介在部12-1を第1の突片15aに設け、他方の介在部12-2を第2の突片15bに設けてもよい。
【0027】
各パネル本体4の相対移動の規制は、室内側から見えないように、第1の重畳部23aの一方面側(
図3の上面側)で行われる構成であればよく、その具体的な構成は上記の各実施形態に限定されるものではない。例えば、
図9(a)に示すように、第1の重畳部23aの一方面に係合突起16を設けて、この係合突起16が第2の突片15bと係合する構成にすることができる。係合突起16は、
図9(b)に示すように、第2の重畳部23bの他方面に凹部23b1を形成することで、第2の重畳部23bと係合する構成にすることもできる。
図9(a)および(b)に示す構成は、
図8(a)~(d)に示す構成と適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 パネル連結体
4 パネル本体
5 フレーム材
12 介在部
15a 第1の突片
15b 第2の突片
16 係合突起
23a 第1の重畳部
23b 第2の重畳部
26A 係合部